以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1の実施形態)
本発明を適用した第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
図2に示すように、燃料タンク10は、燃料を給油するためのフューエルフィラーパイプ(インレットパイプ)11、ブリーザパイプ12を備えている。給油時には、フューエルフィラーパイプ11の燃料タンク10外側開口部(給油口)に、給油ガン80のノズルが差し込まれて、燃料が燃料タンク10内へ補給される。
ブリーザパイプ12は、下端が燃料タンク10内に開口し上端がフューエルフィラーパイプ11内の給油口付近に開口するように配置されている。ブリーザパイプ12は、給油口から給油が行われているときには、下端から上端へ向かって燃料タンク10内の気体(燃料蒸気を多量に含む空気)を流通する。ブリーザパイプ12の上端からフューエルフィラーパイプ11内へ排出された気体は、フューエルフィラーパイプ11内を給油口から下方へ向かって流れる流体流れに吸引されて、燃料タンク10内へ還流する。これにより、給油口から外部への燃料蒸気の放出を抑制している。
燃料タンク10には、その内部空間、つまり燃料液面と燃料タンク10の壁面とに囲まれる空間であって空気および燃料蒸気が存在している空間と、キャニスタ40とを連通する通気通路31を内部に形成する通気管30が接続されている。
通気管30の燃料タンク10側端部には、漏洩防止弁20が直列に接続されている。漏洩防止弁20は、燃料タンク10の姿勢が限度を超えて変化したとき、すなわち通常の車両走行時において起こり得る傾斜角度範囲を超えて傾いたときに、連通状態から遮断状態に切り替わるものである。
漏洩防止弁20は、例えば、燃料中に浮かぶように形成されたフロート弁体21および通気管30の開口周縁に形成された弁座(図示は省略)を備えている。通常時においては、漏洩防止弁20は燃料中に浸漬していないので、フロート弁体21は弁座から離れており、通気管30は、燃料タンク10の内部空間とキャニスタ40とを連通している。例えば、事故等により自動車の傾斜が急になり燃料タンク10内の燃料液面が傾いて漏洩防止弁20が燃料中に浸漬されると、フロート弁体21は浮力の作用により変位して弁座に着座し、燃料タンク10の内部空間とキャニスタ40との連通が遮断される。これにより、燃料タンク10内の燃料が、通気管30を介してキャニスタ40へ至り外部へ流出することを確実に抑止する。
キャニスタ40は、例えば金属材料あるいは樹脂材料から形成されるケーシング41内に、燃料蒸気を吸着捕集する機能を有するフィルタとして例えば活性炭44を高密度充填して形成されている。キャニスタ40は、活性炭44を挟んで通気ポート42および大気ポート43を備えている。通気ポート42は、通気管30に接続され通気管30を介して燃料タンク10の内部空間に連通している。大気ポート43は、大気に開放されている。
通気管30の途中には、通気通路31の通気状態を制御する通気制御弁装置である通気制御弁1が配置されている。通気制御弁1については後で詳述する。
燃料タンク10の天井部には、満タン制御弁60が設けられている。満タン制御弁60は、通気管30の途中、詳しくは通気管30の通気制御弁1とキャニスタ40との間の区間と燃料タンク10の内部空間とを連通する第2通気通路としての通気管70の燃料タンク10側端部に取り付けられている。
満タン制御弁60は、例えば、燃料中に浮かぶように形成されたフロート弁体61および通気管70の開口周縁に形成された弁座を備えている。燃料タンク10内の燃料量が満タン状態(規定された最大量の燃料を貯える状態)よりも少ない時においては、フロート弁体61は弁座から離れており、満タン制御弁60は連通状態となっている。したがって、燃料タンク10の内部空間は、満タン制御弁60、通気管70、通気管30を介してキャニスタ40と連通している。
燃料タンク10への給油時において、燃料タンク10内の燃料量が増えて満タン状態に近づき燃料液面が満タン制御弁60のハウジングの下端に到達すると、満タン制御弁60のフロート弁体61はハウジング内を上昇する燃料液面とともに上方へ移動して弁座に着座する。これにより、満タン制御弁60が通気管70内の通気通路を遮断する。
このとき以降の給油により、燃料タンク10の内部空間の圧力が上昇し、これにより、フューエルフィラーパイプ11内の燃料液面が給油口、つまり給油ガン80へ向かって上昇する。フューエルフィラーパイプ11内の燃料液面が給油ガン80の先端の空気孔81に到り燃料が空気孔81を塞ぐと、給油ガン80の給油動作が自動的に停止する。すなわち、給油ガン80のレバー82が給油作業者により引かれたままであっても、給油ガン80から燃料タンク10内への燃料流入が停止する。
以上説明したように、満タン制御弁60は、給油中において燃料タンク10内の燃料量が満タン状態となったら給油を自動停止させる役割を果たしている。なお、燃料タンク10内の燃料量が満タン状態となったときには、ブリーザパイプ12の下端も燃料中に位置するようになっており、ブリーザパイプ12を介して燃料タンク10の内部空間の気体が外部に排出されないようになっている。
満タン制御弁60が遮断状態となったときに、燃料タンク10の内部空間が漏洩防止弁20および通気管30を介してキャニスタ40と連通していると、給油ガン80の給油動作が自動的に停止した直後に、燃料タンク10の内部空間の圧力が低下する。これに伴い、フューエルフィラーパイプ11内の燃料液面が低下し、給油ガン80による追加給油が可能となってしまう。
そこで、通気管30に配設した通気制御弁1により、給油ガン80の給油動作が自動停止した以降、燃料タンク10の内部空間の圧力を維持してフューエルフィラーパイプ11内の燃料液面を給油停止位置に維持し、好ましくない追加給油を防止するようになっている。
次に、図1を用いて通気制御弁1について説明する。通気制御弁1は、燃料タンク10の内部空間と外部空間との間で通気するための通気通路31に設けられ、通気通路31の通気状態を制御する通気制御弁装置である。
図1に示すように、通気制御弁1は、ケーシング2、第1弁体であるリリーフ弁体3、第2弁体であるカット弁体4、第1弁体用弾性部材であるスプリング5、および、第2弁体用弾性部材であるスプリング6を備えている。
ケーシング2は、例えば樹脂製であり、ケース2Aとキャップ2Bとが例えば溶着や接着により相互に接合されて構成されている。ケース2Aは、円筒形状の円筒部201(筒状部に相当)、円筒部201の図示左端開口を閉塞するように設けられた円環板状の端板部202、および、端板部202の中央開口の周縁から図示左方に突出したパイプ部203が一体成形されている。円筒部201の内面には、円筒部201の軸線方向(図示XX方向)に延びる複数のリブ201aが突設されている。
端板部202の図示右方面には、開口を円環状に取り囲むように環状凸部204が突設されている。環状凸部204の突出方向先端部の内周面(具体的には、環状凸部204の内周面と先端面とを繋ぐ断面円弧状の傾斜面)は、リリーフ弁体3が着座可能な円環状のリリーフ弁座205(第1弁座に相当)となっている。
キャップ2Bは、円筒部201の図示右端開口を閉塞するように配置される円環板状の平板部206、平板部206の中央開口の周縁から図示右方に突出したパイプ部207、および、平板部206の図示左方面から円環状に突設された接続筒部208が一体成形されている。円筒部201の内周面と接続筒部208の外周面とが気密的に接合されて、ケース2Aとキャップ2Bとによりケーシング2が形成されている。
ケーシング2において、円筒部201、パイプ部203、環状凸部204、パイプ部207および接続筒部208は、同心上に配設されている。ケーシング2のうち、円筒部201の内方(円筒部201、端板部202および平板部206により取り囲まれた部分)には、ケーシング2外部とは隔絶された弁室2Cが形成されている。
弁室2Cには、リリーフ弁体3およびカット弁体4が配設されている。リリーフ弁体3は、例えば樹脂製であり、大径筒部301と小径筒部303との間を段差部302により接続した段付円筒状に形成され、円筒部201と同心上に配置されている。リリーフ弁体3は、円筒形状の大径筒部301の外周面がケーシング2のリブ201aに案内される(摺接する、あるいは、径方向への変位が規制される)ことで、軸線方向(XX方向)に変位可能となっている。
小径筒部303は、図示左方へ向かうほど径が小さくなる外周面を有しており、この外周面がリリーフ弁座205への着座部(リリーフ弁座205へ離着座する弁部)となる。大径筒部301には、図示右端面から凹んだ環状溝部301aが形成されている。環状溝部301a内には、コイル状のスプリング5が円筒部201と同心上に配設されている。
スプリング5は、図示左方端が環状溝部301aの底部に受けられ、図示右方端がキャップ2Bの平板部206(具体的には、平板部206の図示左方面のうち接続筒部208の基端の内周部)に受けられて、XX方向に圧縮配置されている。スプリング5は、弾性変形の復元力によってリリーフ弁体3をリリーフ弁座205へ着座する方向(図示左方向)へ付勢する付勢手段をなしている。
なお、平板部206の図示左方面および接続筒部208の内周面には、周方向に間隔を空けて複数のリブ状凸部が形成されている。このような構成により、平板部206および接続筒部208の肉厚が厚くなることを抑制しつつ、弁室2C内に気体が流通する際の流通抵抗を低減している。このような構成のため、スプリング5の図示右方端は、周方向の一部が複数個所で平板部206に当接している。
リリーフ弁体3には、円筒部201の軸線方向に延びる中空通路3Cが形成されている。リリーフ弁体3は、大径筒部301のうち、図示右方側の部分は、左方側よりも内径が小さい小内径部304となっている。中空通路3Cは、図示左方の端部3Dから小内径部304の図示左方端部に至るまでの間は、略同一径となっている。
小内径部304の図示左方端の近傍では、中空通路3Cの臨む内周面が、図示右方へ向かうほど縮径する傾斜面として形成されており、カット弁体4が着座可能な円環状のカット弁座305となっている。小内径部304には、図示左端面から凹んだ環状溝部304aが形成されている。
中空通路3Cには、カット弁体4が配設されている。カット弁体4は、例えば樹脂製であり、大径筒部401と小径筒部403との間を段差部402により接続した段付円筒状に形成され、円筒部201と同心上に配置されている。カット弁体4は、円筒形状の大径筒部401の外周面が、リリーフ弁体3の内周面(小内径部304を除く部分の内周面)に摺接して案内されることで、中空通路3C内を軸線方向(XX方向)に変位可能となっている。
大径筒部401の外周面には、周方向の複数個所に軸線方向(XX方向)に延びる溝部が形成されている。これにより、リリーフ弁体3に対するカット弁体4の摺動抵抗を低減するとともに、両弁体3、4間における異物等の噛み込みを抑制している。上記した溝部は、大径筒部401の外周面において、図示左方端部から段差部402には至らない軸方向長さをもって設けられている。
小径筒部403は、図示右方へ向かうほど径が小さくなる外周面を有しており、この外周面がカット弁座305への着座部(カット弁座305へ離着座する弁部)となる。円環板状の段差部402には、周方向の一部において軸線方向に貫通する貫通孔により、段差部402の図示左右両側の空間を連通する連通通路404が形成されている。また、小径筒部403には、尖端部中央を軸線方向に貫通する微小径貫通孔により、小径筒部403の図示左右両側の空間を連通する絞り連通路405が形成されている。
絞り連通路405の通路断面積は、連通通路404の通路断面積よりも極めて小さくなっている。そして、カット弁体4において、連通通路404はカット弁座305への着座部よりも外方に形成され、絞り連通路405はカット弁座305への着座部よりも内方にに形成されている。
リリーフ弁体3とカット弁体4との間には、コイル状のスプリング6が円筒部201と同心上に配設されている。スプリング6は、図示左方端がカット弁体4の段差部402外周縁部に受けられ、図示右方端がリリーフ弁体3の環状溝部304aの底部に受けられて、XX方向に圧縮配置されている。スプリング6は、弾性変形の復元力によってカット弁体4をカット弁座305から離座する方向(図示左方向)へ付勢する付勢手段をなしている。
ケーシング2のパイプ部203内に形成される通路は、図1に示した漏洩防止弁20を介して燃料タンク10の内部空間と繋がる内部空間側通路203Cである。一方、ケーシング2のパイプ部207内に形成される通路は、図1に示したキャニスタ40を介して燃料タンク10の外部空間と繋がる外部空間側通路207Cである。
通気制御弁1は、リリーフ弁体3およびカット弁体4の変位に応じて、通気通路31の一部をなす内部空間側通路203Cと外部空間側通路207Cとの間の通気状態を変更して、通気通路31の通気状態を制御する。
次に、上記構成に基づき通気制御弁1の作動について説明する。通気制御弁1は、図1図示左側を燃料タンク10側とし、図示右側をキャニスタ40側として、例えば、円筒部201の軸線方向(XX方向)が略水平方向となるように車両搭載されている。
通常時(車両走行時や、車両停止時であっても給油等により燃料タンク10内の圧力が後述する第1所定圧力にまで上昇しないとき)には、図1に示すように、スプリング5、6の付勢力により、リリーフ弁体3がリリーフ弁座205に着座するとともに、カット弁体4はケーシング2の端板部202に押し当てられて(図示左方に最大変位して)、カット弁体4がカット弁座305から離座した状態を形成する。
図1に示す状態では、内部空間側通路203Cと外部空間側通路207Cとは、カット弁体4の大径筒部401内および連通通路404を含むリリーフ弁体3の中空通路3Cを介して連通される。
このように、中空通路3Cを介して燃料タンク10の内部空間と外部空間との連通状態が形成されると、燃料タンク10の内外圧力差を解消するように通気通路31を気体が流通する。燃料タンク10の内部空間から外部空間へ気体が流通するときには、燃料タンク10内で発生して通気通路31を流れた燃料蒸気はキャニスタ40により捕捉され、外部空間に漏れ出すことはない。
燃料タンク10への給油時には、図2に示すように、燃料タンク10のフューエルフィラーパイプ11に給油ガン80が差し込まれ給油が開始されると、燃料が燃料タンク10内へ流入する。これに対応して、燃料タンク10内の空気は、満タン制御弁60から通気管70および通気管30の下流部を経由してキャニスタ40へ至る。キャニスタ40では空気中の燃料蒸気が活性炭44に吸収された後に大気ポート43から外部へ放出される。このとき、漏洩防止弁20から通気管30を経由する経路を介しても、燃料タンク10内の空気がキャニスタ40へ送られる。
また、給油に伴い発生した多量の燃料蒸気を含む燃料タンク10内の空気の一部はブリーザパイプ12を経由してフューエルフィラーパイプ11の口元へ至る。ブリーザパイプ12の上端開口から流出した燃料蒸気を多量に含む空気は、フューエルフィラーパイプ11内を流れる給油燃料の流れに吸引されて、燃料タンク10内へ還流する。これにより、燃料蒸気が給油口から外部へ流出することが抑制される。
給油が継続され、燃料タンク10内の燃料液面が満タン制御弁60のハウジング下端に到達してハウジング内を上昇すると、フロート弁体61が通気管70の通気通路を閉塞する。このときには、ブリーザパイプ12の下端開口も燃料により閉塞され、ブリーザパイプ12内の通気経路も遮断される。満タン制御弁60およびブリーザパイプ12を介する通気が停止すると、燃料液面はフューエルフィラーパイプ11を上昇して口元へ至り、燃料が給油ガン80の筒先の空気孔81を塞ぐ。これにより、給油ガン80の給油動作が自動的に停止(所謂オートストップ)し燃料タンク10内への燃料流入が停止する。
図2に示すように、給油が自動停止し、燃料タンク10内の燃料液面よりもフューエルフィラーパイプ11内の燃料液面が高い場合には、ヘッド圧(燃料タンク10内とフューエルフィラーパイプ11内の液面高さの差分の燃料液柱による圧力)の分だけ外部空間の圧力に対して燃料タンク10の内部空間の圧力が高くなる。
このように、燃料タンク10内の燃料液面レベルが満タンレベルとなり、給油が自動停止したときの燃料タンク10内の圧力が、本発明で言う第1所定圧力に相当する。燃料タンク10内の圧力が第1所定圧力にまで上昇した場合には、燃料タンク10の内部空間と外部空間との圧力差により、通気通路31を流れる気体の流速が上昇する。この通気通路31を流れ通気制御弁1を通過する気体の流体力によって、カット弁体4が変位する。
図1に示す状態において、内部空間側通路203Cから外部空間側通路207Cへ中空通路3Cを流れる気体流の速度が増大すると、速度増大した気体流の流体力が作用することで、図3に示すように、カット弁体4は、スプリング6の復元力に抗して図示右方へ最大変位し、カット弁座305に着座する。このとき、リリーフ弁体3はリリーフ弁座205に着座したままである。リリーフ弁体3はリリーフ弁座205に着座したまま、カット弁体4がカット弁座305に着座することで、通気制御弁1により通気通路31が遮断される。
燃料タンク10内の圧力が第1所定圧力となったときのケーシング2内の気体流によってカット弁体4が閉弁動作するようにスプリング6が設定され、上記気体流ではリリーフ弁体3が開弁動作しないようにスプリング5が設定されている。
図3に示すように、カット弁体4がカット弁座305に着座して通気通路31が遮断されると、燃料タンク10内の圧力が第1所定圧力に一旦保持される。カット弁体4がカット弁座305に着座して通気通路31が遮断された後には、内部空間側通路203Cから外部空間側通路207Cへ、絞り連通路405を介して僅かに気体が流通する。これに伴い、燃料タンク10内の圧力は第1所定圧力から緩やかに低下していく。燃料タンク10内の圧力が第1所定圧力よりも所定値だけ小さくなると、スプリング6の付勢によってカット弁体4がカット弁座305から離座して、通気通路31の遮断状態が解除される。
したがって、通気制御弁1による通気通路31の遮断直後においては、フューエルフィラーパイプ11内の燃料液面が下降せず、燃料タンク10内への追加給油が抑制される。そして、通気通路31の遮断から時間が経過して通気通路31の遮断が解除されると、フューエルフィラーパイプ11内の燃料液面は下降し、再給油が可能となり、また、燃料タンク10内外の通気も可能となる。
給油作業者による追加給油を確実に防止するためには、例えば、給油が自動停止して給油作業者が追加給油できないことを認識してから給油口にキャップを装着するまでの時間等を考慮して、絞り連通路405の通路断面積は、燃料タンク10の容積等との関係に基づいて、図3に示したカット弁体4の閉弁状態を、例えば1〜3分維持できるように設定することが好ましい。
図3に示すように、カット弁体4がカット弁座305に着座して通気通路31が遮断され、給油が自動停止した後に、燃料タンク10内において燃料蒸気等が大量発生し、燃料タンク10内の圧力が第1所定圧力よりも大きく上昇する場合がある。燃料タンク10の内部空間の圧力が第1所定圧力よりも高い第2所定圧力にまで上昇した場合には、内部空間と外部空間との圧力差よってリリーフ弁体3が変位する。
図3に示す状態において、カット弁体4により中空通路3Cを閉塞されたリリーフ弁体3は、リリーフ弁座205への着座部よりも内方領域で、内部空間側通路203Cと外部空間側通路207Cとの差圧を受圧する。内部空間側通路203Cの圧力が外部空間側通路207Cの圧力よりも第2所定圧力高くなると、受圧応力によって、図4に示すように、リリーフ弁体3はスプリング5の復元力に抗して図示右方へ最大変位し、リリーフ弁座205から離座する。
このとき、カット弁体4はカット弁座305に着座したままである。カット弁体4がカット弁座305に着座したまま、リリーフ弁体3がリリーフ弁座205から離座することで、弁室2Cを介して内部空間側通路203Cと外部空間側通路207Cとが連通し、通気通路31の遮断が解除される。燃料タンク10内の圧力が第2所定圧力となったときにリリーフ弁体3が開弁動作するようにスプリング5が設定されている。
したがって、給油が自動停止した後に、燃料蒸気の大量発生等によって燃料タンク10内の圧力が上昇したとしても、第2所定圧力以上に上昇することを抑止し、給油口からの燃料の溢れ出しを防止することができる。
上述の構成および作動によれば、通気制御弁1は、ケーシング2内にリリーフ弁体3を備え、リリーフ弁体3の中空通路3Cにカット弁体4を備えている。そして、給油時に燃料タンク10内の燃料液面が満タンレベルに到達して、満タン状態に伴い燃料タンク10内が第1所定圧力にまで上昇したときにカット弁体4を閉弁動作して、追加給油を抑制することができる。また、燃料蒸気の大量発生等により燃料タンク10内が第2所定圧力にまで上昇したときには、リリーフ弁体3を開弁動作して、給油口からの燃料の溢れ出しを防止することができる。
このような機能を有する通気制御弁1において、リリーフ弁体3の中空通路3Cは、内部空間側通路203C側の端部3Dからカット弁座305に着座する位置にまでカット弁体4を挿設可能な通路となっている。すなわち、リリーフ弁体3の内部に形成された中空通路3Cは、燃料タンク10の内部空間側の端部からカット弁体4を挿設して、カット弁座305に着座する位置にまでカット弁体4を変位させることが可能な通路となっている。
したがって、リリーフ弁体3を複数の部品で構成し、内部にカット弁体4を納めた後に複数の部品を結合させる必要がない。このようにして、内部にカット弁体4が配設されるリリーフ弁体3の構造を簡素化することができる。
また、通気制御弁1は、リリーフ弁体3がリリーフ弁座205に着座し、カット弁体4がカット弁座305に着座しているときにおいても、燃料タンク10の内部空間と外部空間との間の流体流れを絞るように内部空間と外部空間とを連通する絞り連通路405を備えている。
これによると、リリーフ弁体3のリリーフ弁座205の着座およびカット弁体4のカット弁座305への着座により通気通路31が遮断された状態において、燃料タンク10の内部空間と外部空間とは、絞り連通路405により連通している。内部空間と外部空間との間の流体流れは絞り連通路405によって絞られるので、内部空間の圧力が第1所定圧にまで上昇して通気通路31が遮断された後の内部空間の圧力は、遮断時圧力からゆっくりと低下することになる。したがって、通気通路31の遮断直後においては燃料タンク10の内部圧力を第1所定圧力付近に維持するとともに、通気通路31の遮断から時間が経過したときには、燃料タンク10の内部空間の圧力を外部空間の圧力にまで戻すことができる。
このようにして、給油が自動停止した直後は追加給油を抑制することができ、給油が自動停止してからある程度時間が経過した後は、再給油が可能となり、また、燃料タンク10内外の通気も可能となる。
また、通気制御弁1は、弾性変形の復元力によってリリーフ弁体3をリリーフ弁座205へ着座する方向へ付勢するスプリング5を備えている。これによると、リリーフ弁体3の開弁圧力を安定化させることができる。
また、通気制御弁1は、弾性変形の復元力によってカット弁体4をカット弁座305から離座する方向へ付勢するスプリング6を備えている。これによると、カット弁体4の閉弁圧を安定化させることができる。
また、リリーフ弁体3をリリーフ弁座205へ着座する方向へ付勢するスプリング5およびカット弁体4をカット弁座305から離座する方向へ付勢するスプリング6の両者を備えることで、ケーシング2の円筒部201の軸線方向(XX方向)がいずれの方向に延びていても、リリーフ弁体3の開弁圧力およびカット弁体4の閉弁圧力を安定化させることができる。したがって、通気制御弁1の搭載姿勢の自由度を大きくすることができる。
なお、上述した本実施形態の通気制御弁1の構成および作動の説明では、円筒部201の軸線方向(XX方向)が略水平方向となるように車両搭載されている場合について述べていたが、上記したように通気制御弁1の搭載姿勢はこれに限定されるものではない。例えば、円筒部201の軸線方向(XX方向)が略鉛直方向となるように車両搭載するものであってもよい。この場合には、各弁体3、4の開閉弁動作は、各スプリング5、6の付勢力に、各弁体3、4の自重の影響も加えられて行われる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図5および図6に基づいて説明する。第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、燃料タンク10に具備される漏洩防止弁20が複数となることに対応して、通気制御弁装置の構成が異なっている。
なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第2の実施形態において説明しない他の構成は、第1の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図6に示すように、通気管30は、本実施形態の通気制御弁装置である通気制御弁91よりも燃料タンク10側において分岐することで、一対の分岐管230を形成している。各分岐管230の燃料タンク10側の端部には、それぞれ個別の漏洩防止弁20が直列に接続されて燃料タンク10に取り付けられている。
図5に示すように、通気制御弁91は、ケース2Aのパイプ部9203がT字形状をなしている。パイプ部9203内に形成される内部空間側通路203Cは、外部空間側の一部は円筒部201の軸線方向(XX方向)に延び、内部空間側の残部は2つに分岐して円筒部201の軸線方向(XX方向)に直交する方向にそれぞれ延びて、一対の分岐管230内の通気通路にそれぞれ連通している。
本実施形態の通気制御弁91によっても、第1の実施形態の通気制御弁1と同様の作用効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図7に基づいて説明する。第3の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、通気制御弁装置がスプリング6を備えていない点が異なる。
なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第3の実施形態において説明しない他の構成は、第1の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図7に示すように、本実施形態の通気制御弁92は、スプリング6を備えていない点を除いて、第1実施形態の通気制御弁1と同様の構成である。通気制御弁92は、例えば、図示上方を重力方向における上方として車両搭載される。
したがって、燃料タンク10内の圧力が第1所定圧力にまで上昇した場合には、内部空間側通路203Cから外部空間側通路207Cへ中空通路3Cを上方へ向かって流れる気体流によるカット弁体4への作用力がカット弁体4の自重よりも大きくなり、カット弁体4が上方へ最大変位し、カット弁座305に着座する。このとき、リリーフ弁体3はリリーフ弁座205に着座したままである。リリーフ弁体3はリリーフ弁座205に着座したまま、カット弁体4がカット弁座305に着座することで、通気制御弁92により通気通路31が遮断される。
このように、スプリング6の復元力を用いない点を除いて、通気制御弁92は第1の実施形態の通気制御弁1と同様の作動をする。スプリング6を備えていないので、通気制御弁92は、搭載姿勢に制約を有する。通気制御弁92は、カット弁体4の自重が利用できるように、パイプ部203よりもパイプ部207が高い位置を取る搭載姿勢で用いられる。換言すれば、カット弁体4のカット弁座305からの離座方向が、鉛直方向に対する傾斜方向のうち下向きとなる限りにおいて、通気制御弁92の搭載姿勢を設定することができる。その中でも、円筒部201の軸線方向(XX方向)が略鉛直方向となることが最も好ましい。
本実施形態の通気制御弁92によっても、搭載姿勢の制約を除き、第1の実施形態の通気制御弁1と同様の作用効果を得ることができる。また、スプリング6を用いないことで、部品点数を削減することができる。
なお、スプリング5も備えず、リリーフ弁体3の開閉弁動作を、リリーフ弁体3の自重と受圧応力との関係で行うものであってもよい。これによれば、さらに部品点数を削減することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について図8に基づいて説明する。第4の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、絞り連通路を、カット弁体4ではなく、リリーフ弁体3とカット弁体4と間に設けた点が異なる。
なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第4の実施形態において説明しない他の構成は、第1の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図8に要部を示すように、本実施形態のカット弁体4には、第1の実施形態の絞り連通路405を設けていない。その代わりに、リリーフ弁体3のカット弁座305となる部分に溝部を形成し、この溝部内を、カット弁体4着座状態における絞り連通路4405としている。絞り連通路4405を形成する溝部は、例えば、カット弁座305となる円錐台状の傾斜面の母線に沿って延びる直線状溝として形成されている。
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
上記各実施形態では、リリーフ弁体3およびカット弁体4をいずれも段付き円筒形状としていたが、これに限定されるものではない。例えば、リリーフ弁体を段差部のない略円筒形状としてもかまわない。また、例えば、カット弁体を球状弁体としてもかまわない。
また、上記各実施形態では、ケーシング2の筒状部は円筒部201であったが、筒状部は円筒形状に限定されるものではない。例えば、断面形状が楕円状の筒状部であってもかまわない。
また、上記第1〜第3の実施形態では、カット弁体4の着座部よりも内方に設けた貫通孔により絞り連通路405を形成し、上記第4の実施形態では、リリーフ弁体3のカット弁座305となる部分に設けた溝部により絞り連通路4405を形成していたが、これらに限定されるものではない。
例えば、カット弁体4のカット弁座305への着座部に溝部を設けて、リリーフ弁体3とカット弁体4と間に絞り連通路を形成するものであってもよい。また、例えば、リリーフ弁体3のカット弁座305よりも外方に貫通孔を設けて絞り連通路を形成するものであってもよい。
また、上記各実施形態では、カット弁体4の段差部402に貫通孔を設けて連通通路404としていたが、これに限定されるものではない。例えば、カット弁体4の大径筒部401の外周面、および、リリーフ弁体3の小内径部304を除く部分の内周面の少なくともいずれかに、軸線方向の全域に延びる溝部を形成して、連通通路としてもかまわない。また、カット弁体4の着座部よりも外方であれば段差部以外に設けた貫通孔により連通通路を形成するものであってもよい。さらに、例えば、カット弁体4の大径筒部401に形成した貫通孔と、貫通孔形成部から段差部402にまで延設された溝部とを組み合わせて、連通通路を形成するものであってもよい。
また、上記各実施形態では、通気通路31の外方端にキャニスタ40が設けられ、通気通路31の内方端に漏洩防止弁20が設けられていたが、これに限定されるものではない。本発明を適用した通気制御弁装置は、燃料タンクの内部空間と外部空間とを繋ぐ通気通路に設けられるものであればよい。例えば、キャニスタを備えない通気通路に本発明の通気制御弁装置を適用するものであってもよい。