JP6737164B2 - 液面形状の抽出方法、装置及びプログラム - Google Patents
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Description
従来から、鋳型内の溶鋼の流動状況、湯面挙動を適正化するのに必要な操業因子を明らかにするために、水モデル実験が用いられている(非特許文献1を参照)。水モデル実験とは、透明なアクリル樹脂板等を用いて鋳型を模した容器を作成し、溶鋼の代わりに水を満たすことで、溶鋼の流動状況、湯面挙動を模擬する実験である。このような水モデル実験において水面高さを定量測定する必要がある場合には、非特許文献1で示されるように、通常、フロートとレーザー変位計を利用し、レーザー変位計の設置位置での水面高さを測定することが行われるが、この場合、レーザー変位計で測定していない位置での水面高さを知ることはできなかった。
また、非特許文献2では、ビデオカメラ等の撮影画像から、画像処理技術により曲線を検出する手法が開示されている。非特許文献2では、微分フィルタで山岳の稜線を含むエッジを強調した上で、稜線の連続性を利用し動的計画法により稜線を抽出する手法が提案されている。
また、非特許文献2の手法では、動的計画法による曲線(液面)の抽出の際、画像中のノイズに反応し、液面を誤識別することがある。
このように気液界面を見誤ったり、液面を誤識別したりすると、正確な液体の流動状況、液面挙動を把握できなくなってしまう。
[1] 容器内の自由液面を撮影した、時間的に連続する複数の画像に基づいて液面形状を抽出する液面形状の抽出方法であって、
前記時間的に連続する画像を用いて作成される、各時間において水平方向の各位置で液面高さが単一に定まる原データを対象として、
前記原データと液面高さの計算値との差分に関する項と、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項とを含む評価関数で表される数理計画問題を解いて、前記水平方向の各位置、各時刻の液面高さを推定する液面高さ推定ステップを有し、
前記液面高さ推定ステップでは、
ベクトルを用いて表現された前記評価関数のうち、前記液面高さの計算値の時間差分に関する項と、前記液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列を用いた二次形式として表現して、前記係数行列を直交行列を用いて対角化する操作を通じて、前記直交行列の各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを決定する問題に変換し、
前記直交行列から固有ベクトルを選んで構成した部分行列で前記直交行列を置き換えた前記線形回帰モデルを決定する問題を解くことを特徴とする液面形状の抽出方法。
[2] 前記対角化による対角行列の固有値を小さい順に所定の数だけ選択し、前記選択した固有値に対応する固有ベクトルを前記直交行列から選んで部分行列とすることを特徴とする[1]に記載の液面形状の抽出方法。
[3] 前記対角化による対角行列の固有値のうち所定の閾値を下回るものを選択し、前記選択した固有値に対応する固有ベクトルを前記直交行列から選んで部分行列とすることを特徴とする[1]に記載の液面形状の抽出方法。
[4] 前記液面高さ推定ステップにおいて、前記水平方向及び時間方向において、前記液面高さ推定ステップで用いる原データを間引くことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の液面形状の抽出方法。
[5] 前記原データと液面高さの計算値との差分に関する項は、jを前記水平方向の各位置(j=1、2、・・・、M)、tを各時刻(t=1、2、・・・、T)とし、前記原データにおける液面高さyj(t)と、液面高さの計算値dj(t)との誤差絶対値|yj(t)−dj(t)|の前記水平方向の各位置、各時刻に関する和で表わされることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の液面形状の抽出方法。
[6] 前記液面高さの計算値の時間差分に関する項は、時間方向における液面高さの1階差分又は2階差分の二乗和で表わされることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の液面形状の抽出方法。
[7] 前記液面高さの計算値の空間差分に関する項は、空間方向における液面高さの1階差分又は2階差分の二乗和で表わされることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の液面形状の抽出方法。
[8] 容器内の自由液面を撮影した、時間的に連続する複数の画像に基づいて液面形状を抽出する液面形状の抽出装置であって、
前記時間的に連続する画像を用いて作成される、各時間において水平方向の各位置で液面高さが単一に定まる原データを対象として、
前記原データと液面高さの計算値との差分に関する項と、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項とを含む評価関数で表される数理計画問題を解いて、前記水平方向の各位置、各時刻の液面高さを推定する液面高さ推定手段を備え、
前記液面高さ推定手段は、
ベクトルを用いて表現された前記評価関数のうち、前記液面高さの計算値の時間差分に関する項と、前記液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列を用いた二次形式として表現して、前記係数行列を直交行列を用いて対角化する操作を通じて、前記直交行列の各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを決定する問題に変換し、
前記直交行列から固有ベクトルを選んで構成した部分行列で前記直交行列を置き換えた前記線形回帰モデルを決定する問題を解くことを特徴とする液面形状の抽出装置。
[9] 容器内の自由液面を撮影した、時間的に連続する複数の画像に基づいて液面形状を抽出するためのプログラムであって、
前記時間的に連続する画像を用いて作成される、各時間において水平方向の各位置で液面高さが単一に定まる原データを対象として、
前記原データと液面高さの計算値との差分に関する項と、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項とを含む評価関数で表される数理計画問題を解いて、前記水平方向の各位置、各時刻の液面高さを推定する液面高さ推定処理をコンピュータに実行させ、
前記液面高さ推定処理では、
ベクトルを用いて表現された前記評価関数のうち、前記液面高さの計算値の時間差分に関する項と、前記液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列を用いた二次形式として表現して、前記係数行列を直交行列を用いて対角化する操作を通じて、前記直交行列の各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを決定する問題に変換し、
前記直交行列から固有ベクトルを選んで構成した部分行列で前記直交行列を置き換えた前記線形回帰モデルを決定する問題を解くことを特徴とするプログラム。
図1に、実施形態に係る液面形状の抽出装置100の機能構成を示す。
図1に示すように、透明なアクリル樹脂板等を用いて鋳型を模した容器200を作成し、溶鋼の代わりに水201を満たす。そして、容器200の一面に対向させるようにしてカメラ300を設置し、カメラ300により、容器200内の自由液面を撮影した時間的に連続する画像、ここでは動画像を取得する。カメラ300で撮影する画像は、可視光画像に限らず、赤外線画像等としてもよい。
本実施形態において、液面高さ推定部103は、構築部103aと、変換部103bと、求解部103cと、間引き部103dとを備える。
構築部103aは、原データ作成部102で作成した原データを対象として、上述した評価関数Jで表される数理計画問題を構築する。
変換部103bは、ベクトルを用いて表現された評価関数Jのうち、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列Lを用いた二次形式として表現して、係数行列Lを直交行列Vを用いて対角化する操作を通じて、直交行列Vの各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを決定する問題に変換する。
求解部103cは、変換部103bで変換した線形回帰モデルを解く。このとき、直交行列Vから固有ベクトルを選んで部分行列を構成し、それを用いて前記線形回帰モデルの近似問題を解く。より詳しくは、前記直交行列Vから固有ベクトルを選んで構成した部分行列で直交行列Vを置き換えた前記線形回帰モデルを決定する問題を解く。
間引き部103dは、原データ作成部102で作成した原データを間引いて、液面高さを推定するのに用いるデータ点数を減らす。
図2は、実施形態に係る液面形状の抽出装置100による液面形状の抽出方法を示すフローチャートである。
ステップS1で、入力部101は、カメラ300で撮影した容器200内の自由液面の動画像データを入力する。
図3(a)に、非特許文献2のように動的計画法により曲線を抽出する手法(以下、単に動的計画法と呼ぶ)により作成した原データの例を示す。また、図4(a)に、ある時刻において、原データにおける液面形状401を原画像に重ね合わせて示す。
図4(a)に示すように、画像中のノイズに反応し、液面をなす曲線を誤識別することが原因で、幅方向の広い範囲(図中の左側の領域X)で液面の誤識別が生じている。このように広範囲に渡る誤識別は、空間方向のローパスフィルタ処理等で除去することが困難である。
図3(a)、図4(a)のような原データを対象として、式(1)の評価関数Jを最小にする幅方向の各位置j(j=1、2、・・・、M)、各時刻t(t=1、2、・・・、T)の液面高さdj(t)を計算する。yj(t)は、原データにおける液面高さ(動的計画法により求めた液面高さ)である。
そこで、ステップS4で、液面高さ推定部103の変換部103bは、式(3)の評価関数Jのうち、右辺第2項の液面高さの計算値の時間差分に関する項と、右辺第3項の液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列Lを用いた二次形式として表現して、係数行列Lを直交行列Vを用いて対角化する操作を通じて、直交行列Vの各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを解く問題に変換する。
まず、式(3)の評価関数Jを式(5)のようにベクトルを用いて表現する。ここで、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項を、係数行列Lを用いた二次形式として表現する。係数行列Lは、MT次の正方行列である。
なお、式(4)を直接解いた場合、計算時間が0.43sec程度であったのに対して、式(14)を解いた場合、計算時間は0.20sec程度まで短縮される。
また、固有値分解によらず、係数行列Lの分解にあたって、特異値分解等を用いた低階数近似法等を用いてもよい。
図5(a)に、式(3)の評価関数Jによる液面形状と、式(12)の線形回帰モデルによる液面形状との再構成誤差のRMSEを、基底数K、間引きのデータ分割数を変えて比較した結果を示す。分割数=nとは、入力データを(n−1)点飛ばしで等間隔に選ぶことにより、入力データをn分割したことを意味する。基底数Kの決め方としては、所望の検出精度を達成可能な条件に決めればよい。本水モデル試験の場合、画像解析による液面検出精度が1画素程度であるので、誤差σ=0.25[画素]程度(±2σ<1[画素])を達成すれば十分である。図5(a)の結果から、分割数n=2に選べば、基底数K=50としても、誤差σ=0.25[画素]程度(±2σ<1[画素])を達成することがわかる。また、基底数K=70とすれば、分割数n=3の場合でも、誤差σ=0.25を達成することができる。
このように、本発明は、元の数理計画問題から直接導出される線形回帰モデルを決定する問題の近似問題を解くものであるが、要求される推定精度に応じて適切なパラメータ(規定数K及び分割数n)を選択することにより、要求される推定精度を満足し、且つ、十分高速に湯面形状の抽出を行うことを可能とするものである。
式(1)の評価関数Jで表される数理計画問題の場合、式(1)の評価関数Jを式(15)のようにベクトルを用いて表現する。なお、式(15)における係数行列Lは、式(5)における係数行列Lと同じである。
式(17)を変形すると、式(18)が得られる。式(18)を解けば、式(19)が得られる。式(19)の最適解z*を用いて、d*=V^z*により液面高さを計算、推定する。
これにより、正確な液体の流動状況、液面挙動を把握することが可能となり、安価なコスト、簡易なセッティングで、連続鋳造機の鋳型を対象とする水モデル実験での水面高さの定量測定ができるようになる。この結果、実機では実施困難な各種実験を可能とし、良好な鋳片品質を可能とする操業因子を明らかにすることができる。
しかも、評価関数Jのうち、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列を用いた二次形式として表現して、係数行列Lを直交行列Vを用いて対角化する操作を通じて、直交行列Vの各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを決定する問題に変換し、直交行列Vから固有ベクトルを選んで構成した部分行列V^で直交行列Vを置き換えた前記線形回帰モデルを決定する問題を解くようにしたので、つまり、元の数理計画問題から直接導出される線形回帰モデルを決定する問題の近似問題を解くようにしたので、推定精度を維持しつつ計算量を低減させることができる。
さらに、本発明は、水モデル実験に限定されるものではなく、一般に、誤差やノイズを含む動画像から、なめらかな変化を有する自由液面形状を抽出するのに適用可能である。
また、本発明は、本発明の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
101:入力部
102:原データ作成部
103:液面高さ推定部
103a:構築部
103b:変換部
103c:求解部
103d:間引き部
104:出力部
200:容器
201:水
300:カメラ
Claims (9)
- 容器内の自由液面を撮影した、時間的に連続する複数の画像に基づいて液面形状を抽出する液面形状の抽出方法であって、
前記時間的に連続する画像を用いて作成される、各時間において水平方向の各位置で液面高さが単一に定まる原データを対象として、
前記原データと液面高さの計算値との差分に関する項と、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項とを含む評価関数で表される数理計画問題を解いて、前記水平方向の各位置、各時刻の液面高さを推定する液面高さ推定ステップを有し、
前記液面高さ推定ステップでは、
ベクトルを用いて表現された前記評価関数のうち、前記液面高さの計算値の時間差分に関する項と、前記液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列を用いた二次形式として表現して、前記係数行列を直交行列を用いて対角化する操作を通じて、前記直交行列の各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを決定する問題に変換し、
前記直交行列から固有ベクトルを選んで構成した部分行列で前記直交行列を置き換えた前記線形回帰モデルを決定する問題を解くことを特徴とする液面形状の抽出方法。 - 前記対角化による対角行列の固有値を小さい順に所定の数だけ選択し、前記選択した固有値に対応する固有ベクトルを前記直交行列から選んで部分行列とすることを特徴とする請求項1に記載の液面形状の抽出方法。
- 前記対角化による対角行列の固有値のうち所定の閾値を下回るものを選択し、前記選択した固有値に対応する固有ベクトルを前記直交行列から選んで部分行列とすることを特徴とする請求項1に記載の液面形状の抽出方法。
- 前記液面高さ推定ステップにおいて、前記水平方向及び時間方向において、前記液面高さ推定ステップで用いる原データを間引くことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液面形状の抽出方法。
- 前記原データと液面高さの計算値との差分に関する項は、jを前記水平方向の各位置(j=1、2、・・・、M)、tを各時刻(t=1、2、・・・、T)とし、前記原データにおける液面高さyj(t)と、液面高さの計算値dj(t)との誤差絶対値|yj(t)−dj(t)|の前記水平方向の各位置、各時刻に関する和で表わされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液面形状の抽出方法。
- 前記液面高さの計算値の時間差分に関する項は、時間方向における液面高さの1階差分又は2階差分の二乗和で表わされることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液面形状の抽出方法。
- 前記液面高さの計算値の空間差分に関する項は、空間方向における液面高さの1階差分又は2階差分の二乗和で表わされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液面形状の抽出方法。
- 容器内の自由液面を撮影した、時間的に連続する複数の画像に基づいて液面形状を抽出する液面形状の抽出装置であって、
前記時間的に連続する画像を用いて作成される、各時間において水平方向の各位置で液面高さが単一に定まる原データを対象として、
前記原データと液面高さの計算値との差分に関する項と、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項とを含む評価関数で表される数理計画問題を解いて、前記水平方向の各位置、各時刻の液面高さを推定する液面高さ推定手段を備え、
前記液面高さ推定手段は、
ベクトルを用いて表現された前記評価関数のうち、前記液面高さの計算値の時間差分に関する項と、前記液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列を用いた二次形式として表現して、前記係数行列を直交行列を用いて対角化する操作を通じて、前記直交行列の各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを決定する問題に変換し、
前記直交行列から固有ベクトルを選んで構成した部分行列で前記直交行列を置き換えた前記線形回帰モデルを決定する問題を解くことを特徴とする液面形状の抽出装置。 - 容器内の自由液面を撮影した、時間的に連続する複数の画像に基づいて液面形状を抽出するためのプログラムであって、
前記時間的に連続する画像を用いて作成される、各時間において水平方向の各位置で液面高さが単一に定まる原データを対象として、
前記原データと液面高さの計算値との差分に関する項と、液面高さの計算値の時間差分に関する項と、液面高さの計算値の空間差分に関する項とを含む評価関数で表される数理計画問題を解いて、前記水平方向の各位置、各時刻の液面高さを推定する液面高さ推定処理をコンピュータに実行させ、
前記液面高さ推定処理では、
ベクトルを用いて表現された前記評価関数のうち、前記液面高さの計算値の時間差分に関する項と、前記液面高さの計算値の空間差分に関する項とを係数行列を用いた二次形式として表現して、前記係数行列を直交行列を用いて対角化する操作を通じて、前記直交行列の各列ベクトルを基底関数とする線形回帰モデルを決定する問題に変換し、
前記直交行列から固有ベクトルを選んで構成した部分行列で前記直交行列を置き換えた前記線形回帰モデルを決定する問題を解くことを特徴とするプログラム。
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