JP6734727B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品又は該吸収性物品の吸収体等として好ましく用いられる吸収性物品に関する。
一般に吸収性物品は、使用者の身体側に位置する表面シート、下着等の衣類側に位置する裏面シート及び両シート間に介在配置された吸収体を備えている。斯かる構成の吸収性物品において、吸収体の柔軟性を向上させる技術として、吸収体を移動可能な粒状の要素から形成することが知られており、例えば特許文献1には、使い捨て吸収性物品の吸収体の身体側に、柔軟な小包体及び該小包体に包まれる相互に移動可能な粒子状要素を備えた順応構造体を設けることが提案されている。特許文献1には、粒子状要素として、ポリプロピレン製のペレットやポリスチレン製の発泡ビーズを用いることが記載されている。
また特許文献2には、吸収性物品に、周囲の大気から水分を吸収し得る多孔質粒子を含有させることが記載されており、具体例として、高吸収性ポリマー粒子を含有する吸収体に該多孔質粒子をさらに含有させた形態、表面シートと吸収体との間に多孔質粒子が配置された形態などが記載されている。この多孔質粒子は、吸収性物品の着用中において着用者の股間部周辺の湿度を制御するための乾燥剤と機能し得るもので、外側表面の疎水基と、少なくとも部分的に親水性の内側とを有する。特許文献2には、多孔質粒子の具体例として、シリカゲル粒子、モンモリロナイト粘土粒子、ゼオライト粒子、モレキュラーシーブ、活性炭などにブラズマ処理を施したものなどが記載されている。
再表2004/000188号公報 特表2013−511362号公報
吸収性物品には、着用中における体液の吸収前後において、着用者の液排泄部に対応した形状に変形し得る高度な変形性を有することが要望されているところ、斯かる要望特性を満たすためには、構成部材のうちで通常特に剛性の高い吸収体の改良が有効であり、特に吸収体の柔軟性の向上が重要である。
特許文献1及び2に記載の吸収性物品は、移動可能な粒子を具備していることで、そのような粒子を具備していない通常の吸収性物品に比して柔軟性が向上しており、ある程度の変形性を有しているが、液排泄後の着用者の身体の動きに起因して変化する液排泄部及びその周辺の複雑な3次元形状に対して、追従性良く変形し得るレベルまでは到達しておらず、変形性には改良の余地がある。
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
本発明は、肌当接面側に配された表面シート、非肌当接面側に配された裏面シート、及びこれら両シート間に配された粒子収容部を備えた吸収性物品であって、前記粒子収容部に、表面が疎水性、内部が親水性で、且つ液に接触しても膨潤しない非膨潤粒子が含まれている吸収性物品を提供するものである。
本発明の吸収性物品によれば、吸液前及び吸液後の何れにおいても、複雑な立体形状への変形性に優れており、例えば、吸液前及び吸液後の何れにおいても、歩行動作時等における、着用者の液排泄部のより複雑な3次元形状変化に対応した変形性に優れる等の効果が奏される。また、本発明の吸収性物品によれば、排泄された体液の吸収性に優れているため、一旦内部に吸収した体液が表面シート側に戻る、いわゆる液戻りなどの不都合が効果的に防止される。
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンの一例の肌当接面側(表面シート側)を一部破断して模式的に示す平面図である。 図2は、図1のI−I線断面を模式的に示す横断面図である。 図3(a)及び図3(b)は、それぞれ、図1に示すナプキンにおける粒子収容部を構成する収容袋の一例を模式的に示す平面図である。 図4は、本発明の吸収性物品の他の実施形態の図2相当図である。 図5は、本発明の吸収性物品のさらに他の実施形態の図2相当図である。 図6は、本発明の吸収性物品のさらに他の実施形態の図2相当図である。
以下、本発明の吸収性物品をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1Aが示されている。ナプキン1Aは、肌当接面側に配された表面シート2、非肌当接面側に配された裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に配された粒子収容部4を備えている。粒子収容部4には、図2に示すように非膨潤粒子41が収容されている。
本明細書において、「肌当接面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば粒子収容部4)の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌当接面」は、吸収性物品又はその構成部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側、即ち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
ナプキン1Aは、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有すると共に、前方部A、排泄部対向部B及び後方部Cを縦方向Xに有している。排泄部対向部Bは、その横方向Yの中央部に、着用者の排泄部(膣口等)が対向配置される部分であり、前方部Aは、排泄部対向部Bよりも着用者の腹側即ち前側に配される部分であり、後方部Cは、排泄部対向部Bよりも着用者の背側即ち後側に配される部分である。
ナプキン1Aは、図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体6と、吸収性本体6における排泄部対向部Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部6W,6Wとを有している。
尚、本発明の吸収性物品における排泄部対向部は、ナプキン1Aのように吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域を意味し、ナプキン1Aを例にとれば、一方のウイング部6Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部6Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域である。また、ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折り曲げ線(図示せず)について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに囲まれた領域を意味する。
吸収性本体6は、表面シート2、裏面シート3及び粒子収容部4に加えてさらに、排泄された経血等の体液を吸収可能な吸収体5を具備する。即ち吸収性本体6は、図1及び図2に示すように、着用者の肌から最も近い位置に配され、吸収性本体6(ナプキン1A)の肌当接面を形成する表面シート2と、着用者の肌から最も遠い位置に配され、吸収性本体6(ナプキン1A)の非肌当接面を形成する裏面シート3と、両シート2,3間に介在された粒子収容部4及び液保持性の吸収体5とを具備し、吸収体5は、粒子収容部4と裏面シート3との間に配されている。つまりナプキン1Aにおいては、着用者の肌から近い順に、表面シート2、粒子収容部4、吸収体5、裏面シート3の順で積層配置されている。
表面シート2及び裏面シート3は吸収体5の周縁から延出し、その両シート2,3の延出部どうしは、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されて周縁シール部7を形成している。また、その両シート2,3の延出部は、排泄部対向部Bにおいて周辺部(前方部A及び後方部C)よりも横方向Yの外方に大きく延出して一対のウイング部6W,6Wを形成している。ウイング部6Wの非肌当接面には、該ウイング部6Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部6Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌当接面(外面)側に折り返されて用いられる。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
表面シート2としては、液透過性のシートとして、この種の吸収性物品に従来使用されているもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、各種の単層又は多層構造の不織布や、樹脂フィルムに散点状に開孔を形成したもの等を用いることができる。表面シート2は、肌対向面に凹凸を有していても有していなくても良い。また、裏面シート3としては、液不透過性若しくは撥水性又は表面シート2と同じく液透過性のシートを用いることができる。液不透過性若しくは撥水性の裏面シート3としては、この種の吸収性物品に従来使用されているもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート、耐水圧の高い積層不織布等が用いられる。裏面シート3に関し、液不透過性とは、液難透過性も含む概念であり、裏面シート3が液を全く通さない場合の他、撥水性のシート等からなる場合なども含まれる。液透過性の裏面シート3としては、表面シート2と同じものを用いることができる。
吸収体5は、図2に示すように、液保持性の吸収性コア50と、該吸収性コア50の外面(肌当接面及び非肌当接面)を被覆するコアラップシート51を含んで構成されている。吸収性コア50は単層構造であり、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状をなしている。コアラップシート51は、吸収性コア50の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続した液透過性シートであり、図2に示すように、吸収性コア50の肌当接面の全域を被覆し、且つ吸収性コア50の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア50の下方に巻き下げられて、吸収性コア50の非肌当接面の全域を被覆している。尚、コアラップシートはこのような1枚のシートでなくても良く、例えば、吸収性コア50の肌当接面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア50の非肌当接面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとを含んで構成されていても良い。吸収性コア50とコアラップシート51との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。尚、コアラップシート51は無くても良く、吸収体5は吸収性コア50のみから構成されていても良い。
吸収性コア50は、パルプなどの繊維材料が積繊されてなる繊維集合体であり、公知の積繊装置を用いて常法に従って製造することができる。吸収性コア50を構成する繊維材料として主に用いられるのは親水性繊維である。親水性繊維としては、化学繊維に代表される、本来的に疎水性の繊維を親水化処理したものと、木材パルプに代表される、本来的に親水性の繊維とが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
吸収性コア50は、繊維材料に加えてさらに、液を吸収して膨潤する高吸収性ポリマーを含有していても良い。高吸収性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の高吸収性ポリマー、即ち液を吸収して膨潤する吸収性粒子を用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでも良い。高吸収性ポリマーとしては、この種の吸収性物品において使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
コアラップシート51としては、液透過性シートを用いることができ、典型的なものは紙又は不織布である。コアラップシート51として使用可能な不織布としては、この種の吸収性物品において構成部材として使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、エアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの不織布は、親水化処理が施された繊維からなる親水性不織布であっても良い。
ナプキン1Aの主たる特徴の1つである粒子収容部4について説明する。ナプキン1Aにおいては、粒子収容部4は収容袋40からなり、この収容袋40の内部に非膨潤粒子41が多数収容されている。収容袋40は、吸収体5と同様に扁平で、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状をなし、前方部Aから後方部Cにわたって延在している。収容袋40と吸収体5とは、図1に示す如き平面視における形状及び寸法が互いにほぼ同じであり、吸収体5の肌当接面の全域が収容袋40によって被覆されている。
収容袋40は、液透過性シートからなる。収容袋40の典型的な形態として、液透過性シートを扁平な袋状に成形したものが挙げられる。収容袋40は、例えば図3(a)に示すように、一枚の長方形状の液透過性シート21をその長手方向の中央位置22で2つ折りして折り曲げ、重なった縁部23〜25どうしを接合して扁平な袋状としたものであっても良く、また、図3(b)に示すように、筒状の液透過性シート26の両端の開口部27,28をそれぞれ接合して扁平な袋状としたものであっても良い。収容袋40を形成する液透過性シートとしては、コアラップシート51として使用可能なものを用いることができる。
収容袋40は、表面シート2と吸収体5との間に固定されている。収容袋40の固定方法は特に制限されず、例えば、表面シート2及び吸収体5の一方又は双方と接着剤で固定する方法が挙げられる。別の収容袋40の固定方法として、収容袋40の周縁部を、ナプキン1Aの周縁シール部7を構成する表面シート2と裏面シート3との間に挟んで固定する方法が挙げられる。周縁シール部7において、両シート2,3どうしを、収容袋40の周縁部を介在させた状態で接合する方法としては、両シート2,3間に接着剤を配しての接着剤による接合、ヒートシール、高周波シール、超音波シール、熱シール等、又はこれらの2以上の組み合わせ等の、任意の接合方法を採用できる。
収容袋40即ち粒子収容部4には非膨潤粒子41が多数収容されている。ここでいう「非膨潤」とは、液に接触しても膨潤しない性質を有することを意味し、より具体的には、下記の膨潤試験1を行ったときに、粒径の増大倍率が2倍未満であること意味する。尚、本明細書においては特に断りの無い限り、アスペクト比が100以上のものは繊維とし、粒子としない。アスペクト比は、長さが最長となる方向を軸方向とし、該軸方向の最長長さの、該軸方向に直交する方向の最長長さに対する倍率である。
<膨潤試験1>
吸収性物品から粒子収容部を取り出し、取り出した粒子収容部内の粒子の粒径の増大倍率を測定する。具体的な測定方法としては、次の方法を挙げることができる。
吸収性物品から粒子収容部を取り出す際には、必要に応じ、コールドスプレーなどで、粒子収容部を固定しているホットメルト接着剤の接着力を弱める。粒子収容部に収容されている粒子をビーカーに入れる。尚、吸収性物品から粒子収容部及び粒子を取り出す手段は、後述する全ての測定において共通である。次に、シャーレ(Fineシャーレ マーク無 90φ×20H 東京硝子器械株式会社製 型番:132−02−12−10)の裏面に1cm角の格子(5×5)を印し、それぞれに1〜25の番号をつける。そのシャーレの内面にスプレーのり(スリーエムジャパン株式会社製 スプレーのり55)で薄く接着剤を塗付する。接着剤を塗付したシャーレの内側に、ビーカーから取り出した粒子1.0gを、粒子の偏りがないように、且つ、個々の粒子が確認できるように薄く広げる。次に、シャーレをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製 型番:VHX−1000・レンズ5〜50倍)に固定し、シャーレに入れた粒子を動かさないようする。視野にシャーレに印した1cm角の1格子が入るように、マイクロスコープの倍率を調整し(20倍程度)、倍率を固定する。そのままマイクロスコープで撮影し、この画像を放置前の画像とする。この操作をマイクロスコープの台座を移動させ、1〜25までの格子全てで行う。続いて、生理食塩水(日本薬局方生理食塩水大塚生食注 大塚製薬株式会社製)20gをシャーレに粒子が移動しないようゆっくり入れる。シャーレに入れた粒子をそのまま動かさないように放置し、30分後にマイクロスコープで撮影する。この画像を放置後の画像とする。マイクロスコープの台座を移動させ、1〜25までの格子全てで、放置後の画像の撮影を行う。放置の前後の画像を、公知の画像処理ソフト(商品名「Image−Pro Plus」米国Media Cybernetics社製)を用いて、それぞれ二値化し、粒径を測定する。画像を比較し、放置前の粒子と、放置前の粒子の位置と同じ場所にある放置後の粒子を特定し、下記式(1)に従い各粒子の増大倍率を算出し、粒径の増大倍率とする。
粒子の増大倍率(倍)=放置後の粒子の粒径/放置前の粒子の粒径 ・・・(1)
粒径の増大倍率が2倍未満の粒子を非膨潤粒子とし、粒径の増大倍率が2倍以上の粒子を吸収性粒子とした。
ナプキン1Aは前述した通り、表面シート2と裏面シート3との間で吸収体5よりも表面シート2に近い位置に、粒子41が多数収容された粒子収容部4を具備しているため、その使用中に、粒子収容部4(収容袋40)内の粒子41が移動することによって、粒子収容部4が、着用者の肌の立体形状に対応する形状に柔軟に変形し得る。具体的には例えば、ナプキン1Aは、着用者の前後方向即ち縦方向Xに沿う軸周りにねじるような力が加わったときには、ねじられた形状にも変形可能である。また、このような変形は、粒子収容部4内の粒子41が、液(生理食塩水)に接触しても膨潤しない非膨潤性を有していることにより、吸液前のみならず吸液後においても可能である。即ち仮に、粒子収容部4内に収容されている粒子が、吸収性コア50に用いられる高吸収性ポリマーの如き、液(生理食塩水)を吸収して膨潤する吸収性粒子のみである場合は、吸液後に該吸収性粒子が膨潤して流動性が低下することによって、吸液前に対して吸液後の粒子収容部4の変形性が低下するが、ナプキン1Aにおいては、粒子収容部4内に収容されているのは体液に接触しても膨潤し難い非膨潤粒子41のみであるため、吸液後においても粒子全体としての流動性が維持され、粒子収容部4の変形性延いてはナプキン1Aの変形性が維持され得る。
しかしながら、このような移動可能な粒状の要素を具備する吸収性物品について、本発明者らが種々検討した結果、該吸収性物品の吸液後の変形性については改良の余地があることが判明した。即ち、本発明者らの知見によれば、吸収性物品の変形性の向上を目的として、吸収性物品に多数の粒子を移動可能に配置した場合において、着用者が排泄した体液がそれらの粒子と接触すると、粒子どうしの間に体液の液膜が形成されることで粒子の移動性が低下し、その結果吸収性物品の変形性が低下し得る。つまり、吸液前は高度な変形性を有する吸収性物品であっても、一旦体液を吸収した後は、複雑な立体形状に対応し得る十分な変形性を有していないという事態が起こり得る。このような事態は、移動可能な粒状の要素として、液に接触しても膨潤しない非膨潤粒子を使用した場合でも起こり得ることがわかった。
このような、吸液後の粒子の液膜形成に起因する移動性の低下を防止する方法として、疎水性の粒子を使用して、粒子どうしの間に液膜が形成され難くすることが考えられる。しかし、疎水性の粒子は体液の吸収性に乏しいため、液膜が形成されやすいが体液の吸収性に優れる親水性の粒子を使用した場合に比して、吸収性物品の体液吸収性能が低下するおそれがある。このように、液接触後の粒子の移動性即ち吸液後の吸収性物品の変形性と、吸収性物品の液吸収性とは、互いにトレードオフの関係にある。
以上を踏まえて本発明者らが種々検討した結果、吸収性物品の変形性を高めるために使用される、移動可能な粒状の要素としては、液(生理食塩水)に接触しても膨潤しない非膨潤性を有することに加えてさらに、表面が疎水性且つ内部が親水性であるものが良いとの知見を得た。本発明は斯かる知見に基づきなされたものであり、本発明の一実施形態であるナプキン1Aが具備する非膨潤粒子41は、表面が疎水性、内部が親水性である。非膨潤粒子41の表面が疎水性であることにより、粒子収容部4(収容袋40)内の非膨潤粒子41どうしの間に体液の液膜が形成され難く、そのため、吸液後も粒子全体としての流動性は吸液前と実質的に変わらない高い状態に維持され得る。また、非膨潤粒子41はその内部が親水性であるため、粒子全体が疎水性であるものに比して高い液吸収性を有し、これによってナプキン1Aは液吸収性にも優れたものとなる。従ってナプキン1Aは、吸液前及び吸液後の何れにおいても、複雑な立体形状への変形性に優れており、着用中は常時、着用者の肌へのフィット性や追従変形性に優れる等の効果を発現し、しかも、排泄された体液の吸収性にも優れ、液戻りなどの不都合を起こし難い。
粒子の表面が疎水性であるか否かは、粒子の表面の接触角を測定することで判断できる。粒子の表面の接触角が90度以上は疎水性、90度未満は親水性である。非膨潤粒子41の表面の接触角は、好ましくは90度以上、さらに好ましくは95度以上である。粒子の表面の接触角は下記の方法によって測定される。また、粒子の内部が親水性であるか否かは、下記の親水性評価試験によって判断できる。
<粒子の表面の接触角の測定方法>
吸収性物品から粒子収容部を取り出し、取り出した粒子収容部内の粒子に対する水の接触角を測定する。粒子収容部に収容されている粒子をシャーレに空け、評価対象の粒子を取り出す。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、粒子の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析や画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、粒子表面に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と粒子表面のなす角を算出し、接触角とする。評価対象の粒子は、ピンセットで粒子1粒を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。該粒子1粒につき1箇所の接触角を測定する。N=10粒の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を接触角と定義する。
<粒子の内部の親水性評価試験>
赤色色素0.05g/Lで着色した生理食塩水20gをシャーレに入れ、この生理食塩水に、評価対象の粒子1.0gを入れ、30分後にシャーレから粒子を取り出し、取り出した粒子を切断してその断面をマイクロスコープで観察する。シャーレに入れる前の粒子の同断面と比較して、粒子内部の赤色が強い場合、当該粒子内部は親水性と判断する。
非膨潤粒子41、即ち、表面が疎水性、内部が親水性で、且つ液に接触しても膨潤しない非膨潤性の粒子(移動可能な粒状の要素)としては、「親水性の粒子本体と、該粒子本体の表面に付着した滑剤層とを含んで構成された粒子」(以下、「特定粒子」ともいう)が挙げられる。この特定粒子は、粒子の表層部を形成するのが滑性の高い滑剤層であるため、吸液の前後を問わずに常時表面滑性が高く、特定粒子どうしが密集した状態にあっては互いに滑りやすいため、粒子収容部4(収容袋40)内での移動性に優れる。従って、非膨潤粒子41がこの特定粒子であれば、これを収容する粒子収容部4は、吸液後も高い変形性を示し、着用者の肌の立体形状に対応する形状に柔軟に変形し得る。また、この特定粒子は、粒子の表層部を形成するのが滑性の高い滑剤層であるため、表面滑性が高く、特定粒子を粒子収容部4に収容するときの移動性にも優れる。また、この特定粒子は、表層部以外の内部を構成する粒子本体が親水性であるため、液吸収性にも優れる。
前記特定粒子の滑剤層は、粒子表面を疎水性とする観点から、それ自体が疎水性であるものが好ましい。疎水性の滑剤層は、粒子本体の表面に疎水性滑剤を塗布する、疎水性滑剤中に粒子本体を浸漬する等の方法によって形成することができる。疎水性滑剤としては例えば、炭化水素化合物、シリコーン化合物、及び前述の化合物の複合物、例えば、主鎖がシリコーンで側鎖が炭化水素の化合物が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記特定粒子の疎水性滑剤として使用可能な炭化水素化合物としては、炭化水素のみで構成された化合物、オキシ基が含まれた炭化水素化合物、ヒドロキシル基が含まれた炭化水素化合物、ハロゲン基が導入されたハロゲン化アルキル化合物、炭素−フッ素結合を持つ有機フッ素化合物、エステル結合された炭化水素化合物、エーテル結合された炭化水素化合物、アミド結合された炭化水素化合物、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、及びこれ等の構成モノマーが共重合された化合物、及び前述の化合物の複合物、例えば、主鎖が炭化水素で側鎖がポリエチレンオキシドの化合物、主鎖が炭化水素で側鎖がフルオロカーボンの化合物が挙げられる。ここでいう「炭化水素」は、炭素と水素とからなる化合物を意味しており、鎖状炭化水素、例えば、パラフィン系炭化水素:アルカン(二重結合及び三重結合を含まない炭化水素)、オレフィン系炭化水素:アルケン(二重結合を1つ含む炭化水素)、アセチレン系炭化水素:アルキン(三重結合を1つ含む炭化水素)、及び二重結合及び三重結合から成る群から選択される結合を2つ以上含む炭化水素、並びに環状炭化水素、例えば、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素が挙げられる。いくつかの炭化水素には、脂肪酸、脂肪族アミド、脂肪酸エステル、高級アルコール、金属石鹸が挙げられ、脂肪酸リン酸エステル、脂肪酸スルホン酸エステルが挙げられる。
前記特定粒子の疎水性滑剤として使用可能なシリコーン化合物としては、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルは、オキシ基が含まれたシリコーンオイル、ヒドロキシル基が含まれたシリコーンオイル、ハロゲン基が導入されたハロゲン化シリコーンオイル、炭素−フッ素結合を持つ有機フッ素が導入されたシリコーンオイル、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、及びこれ等の構成モノマーが共重合されたシリコーンオイル、及び前述の化合物の複合物、例えば、主鎖がシリコーンで側鎖がポリエチレンオキシドの化合物、主鎖がシリコーンで側鎖がフルオロカーボンの化合物が挙げられる。ここでいう「シリコーン」及び「シリコーンオイル」は、ケイ素と水素とからなる化合物を意味しており、例えば、シロキサン結合をもつ化合物が挙げられる。
前記特定粒子の疎水性滑剤の中でも特に、パラフィン系炭化水素は、特定粒子どうしが密集した状態にあっては互いに滑りやすいため、粒子収容部4内での移動性に優れるため好ましい。また、前記特定粒子の疎水性滑剤の中でも特に、シリコーン化合物は、特定粒子どうしが密集した状態にあっては互いに滑りやすいため、また粒子収容部4(収容袋40)と特定粒子とが密着した状態にあっては特定粒子が滑りやすいため、粒子収容部4内での移動性に優れるため、さらに好ましい。
尚、粒子収容部4内の粒子の表層部(滑剤層)の組成などを分析する場合、吸収性物品から粒子収容部4を取り出し、下記手順により実施することができる。吸収性物品から粒子収容部4を取り出す際には、必要に応じ、コールドスプレーなどで、粒子収容部4を固定しているホットメルト接着剤の接着力を弱める。粒子収容部4に収容されている粒子をシャーレに空け、粒子を取り出す。粒子をヘキサンやメタノール、エタノールなどの洗浄液で洗浄し、その洗浄に用いた溶媒(滑剤を含む洗浄用溶媒)を乾燥させて取り出す。取り出した物質の構成物に合わせて適切なカラム及び溶媒を選択した上で、それぞれの成分を高速液体クロマトグラフィーで分画し、さらに各画分についてMS測定、NMR測定、元素分析等を行うことで、各画分の構造を同定する。また、滑剤が高分子化合物を含む場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの手法を併用することで、構成成分の同定を行うことがより容易になる。
前記特定粒子を構成する粒子本体としては、粒子本体の全体が親水性であるものを前提として、さらに滑剤層(疎水性滑剤層)の塗布が可能なものが好ましく用いられる。具体的には、粒子本体としては、無機材料からなる粒子、有機材料からなる粒子、無機材料と有機材料とからなる粒子が挙げられる。
前記の「無機材料からなる粒子」としては、(1)無機金属及びその化合物材料からなる粒子、(2)無機非金属及びその化合物材料からなる粒子、(3)無機金属及びその化合物と無機非金属及びその化合物材料とからなる粒子が挙げられる。
前記の「有機材料からなる粒子」としては(4)天然有機材料からなる粒子、(5)合成有機材料からなる粒子、(6)天然有機材料と合成有機材料とからなる粒子が挙げられる。
前記の「無機材料と有機材料とからなる粒子」としては、(7)前記(1)〜(6)の中から2種以上を組み合わせた材料からなる粒子が挙げられる。
前記(1)の「無機金属及びその化合物材料からなる粒子」としては、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩ビーズ、親水基処理されたアルミナビーズ等の酸化金属ビーズ等が挙げられる。
前記(2)の「無機非金属及びその化合物材料からなる粒子」としては、親水基処理されたガラスビーズ、親水基処理されたセラミックビーズ、親水基処理されたシリカビーズ、親水基処理されたグラフェンビーズ、親水基処理されたフラーレンビーズ、親水基処理されたカーボンナノチューブビーズ等が挙げられる。
前記(3)の「無機金属及びその化合物と無機非金属及びその化合物材料とからなる粒子」としては、ゼオライトビーズ、親水基処理されたアルミナ−シリカビーズ、親水基処理された銀−セラミックビーズ等が挙げられる。
前記(4)の「天然有機材料からなる粒子」としては、セルロースビーズ、キトサンビーズ、リグニンビーズ等が挙げられる。一例として、セルロースビーズには、木材パルプを原料とした粒子(例えばレンゴー株式会社製の商品名「ビスコパール」)が挙げられる。
前記(5)の「合成有機材料からなる粒子」としては、ポリウレタンビーズ、ポリアクリルビーズ、ナイロンビーズ、ポリフェノールビーズ、ポリ乳酸ビーズ、アセテートビーズ、メラミン樹脂等のアミノ樹脂ビーズ等が挙げられる。
前記(6)の「天然有機材料と合成有機材料とからなる粒子」としては、セルロース−アセテートビーズ、キチン−キトサンビーズ等が挙げられる。
前記(7)の「前記(1)〜(6)の中から2種以上を組み合わせた材料からなる粒子」としては、銀−セルロースビーズ等が挙げられる。
前記「親水基処理」とは、被処理物に親水性の官能基(以下「親水基」と記す)を付与する処理を示す。例えば前記「親水基処理されたアルミナビーズ」は、被処理物たるアルミナビーズに親水性の官能基が付与されたものである。親水基処理としては特に限定されず公知の方法が挙げられるが、例えば、親水性モノマー、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基などの官能基を有するモノマーを、前記粒子に共重合させ、化学結合させ、親水基を付与する方法等が挙げられ、また例えば、酸化処理、オゾン処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、プライマー処理、プラズマ処理などにより親水基を付与する方法が挙げられる。
前記特定粒子を構成する粒子本体の組成などを分析する場合、前記膨潤試験1又は後述する膨潤試験2において、粒子収容部に収容されていた前記特定粒子などの粒子及び生理食塩水の入ったシャーレから、膨潤が2倍未満の非膨潤粒子を容器に100個集め、真空乾燥させる。これにより、非膨潤粒子の表層部を構成していた滑剤層などが除去され、該非膨潤粒子の粒子本体が得られる。得られた粒子本体をヘキサンやメタノール、エタノールなどの洗浄液で洗浄した後、乾燥させて容器から取り出す。取り出した粒子本体の構成物に合わせて、各画分についてMS測定、NMR測定、IR測定、DSC測定、元素分析等を行うことで、各画分の構造を同定する。
前記粒子本体として有機材料からなる粒子を用いた吸収性物品は、使用後は可燃ゴミとして処理し易いという利点を有する。特に前記粒子本体として、有機材料からなり且つ生分解性及び/又は土壌分解性を有する粒子を用いた吸収性物品は、使用後は埋め立てゴミとして処理し易いという利点を有する。
粒子収容部4(収容袋40)に収容されている粒子の安息角は、該粒子の流動性の指標となり得る。一般に、粒子の安息角が小さいほど、該粒子は流動性が高く、従ってこれを多数収容する粒子収容部4の変形性が向上し得る。特に、粒子収容部4(収容袋40)に収容されている粒子の、吸液後の安息角は、該粒子の流動性の指標となり得る。一般に、粒子の吸液後の安息角が小さいほど、該粒子は吸液後に流動性が高く、従ってこれを多数収容する粒子収容部4の吸液後の変形性が向上し得る。粒子収容部4に収容されている粒子の吸液後の安息角は、好ましくは65度以下、さらに好ましくは60度以下である。尚、ナプキン1Aにおいては、粒子収容部4(収容袋40)に収容されている粒子は非膨潤粒子41のみであるから、非膨潤粒子41の吸液後の安息角が前記範囲にあることが好ましいということになる。また後述するように、本発明には、粒子収容部に非膨潤粒子以外の他の粒子(例えば吸収性粒子)が収容された形態が含まれるところ、斯かる形態の場合、非膨潤粒子及び他の粒子を包括した粒子としての吸液後の安息角が前記範囲にあることが好ましいということになる。粒子収容部4に前記特定粒子が多数収容されている形態は、吸液後の安息角が前記の好ましい範囲になり得る。吸液後の安息角は下記方法によって測定される。
<吸液後の安息角の測定方法>
評価対象の吸収性物品を平面状に広げて肌対向面側(表面シート側)が上を向くように水平に載置し、該吸収性物品の上に、筒内径22mmφ、筒高さ50mmのアクリル製円筒部が10mmφの注液用開口部上に位置するよう一体成形されたアクリル製注液プレートを、その注液孔が該吸収性物品の肌対向面(表面シート側)における排泄部対向領域の中央に位置するように重ねて置き、適当な重り板を乗せて(注液プレート自身を含む)荷重が3.5kg/m2となるよう調整する。この状態下に、注液プレートの円筒部内に、生理食塩水(濃度0.9%)を10g一度に注入し、10分待つ。吸収性物品から粒子収容部を取り出し、該粒子収容部に収容されている粒子の吸液後の安息角を測定する。吸収性物品から粒子収容部を取り出す際には、必要に応じ、コールドスプレーなどで、粒子収容部を固定しているホットメルト接着剤の接着力を弱める。粒子収容部4に収容されている粒子をシャーレに空け、粒子を取り出す。表面が平坦な試験台を、該表面が水平となるようにセットし、その水平な試験台の上に、測定対象の粒子を入れたシャーレを載置する。この状態では、シャーレにおいては多数の粒子が堆積している。次に、粒子収容部が載置された試験台を一定の速度で傾けていき、堆積していた粒子が崩れた時点での、試験台の水平方向に対する傾斜角度を計測する。斯かる計測を3回行い、それらの平均値を当該粒子の吸液後の安息角とする。
非膨潤粒子41の1kPa圧縮変形量が大きいと、これを多数収容する粒子収容部4(収容袋40)の変形性が向上し、ナプキン1Aが着用者の身体に追従性良く変形し得る。これは、ナプキン1Aの着用者の身体の動きに起因して、粒子収容部4内の非膨潤粒子41が流動したときに応力緩和が起こるためである。斯かる観点から、非膨潤粒子41の1kPa圧縮変形量は、好ましくは0.01mm以上、さらに好ましくは0.02mm以上である。斯かる1kPa圧縮変形量の好ましい範囲をより確実に達成する観点から、前記特定粒子を構成する粒子本体としては、有機材料からなる粒子が好ましく、セルロースビーズがより好ましい。1kPa圧縮変形量は下記方法によって測定される。
<1kPa圧縮変形量の測定方法>
前記膨潤試験1又は後述する膨潤試験2において、粒子収容部に収容されていた前記特定粒子などの粒子及び生理食塩水の入ったシャーレから、膨潤が2倍未満の非膨潤粒子を10個集め、真空乾燥させた後、非膨潤粒子の1kPa圧縮変形量を測定する。測定装置として、KES圧縮試験機(カトーテック株式会社製、KESFB3-AUTO-A)を用いて非膨潤粒子の1粒を下記条件で圧縮し、その際の応力−ひずみから1kPa圧縮変形量を求める。非膨潤粒子は、ピンセットで粒子1粒を圧縮試験機のサンプル台に載せて、水平に維持する。該非膨潤粒子1粒につき1回の1kPa圧縮時の変形量を測定する。N=10粒の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を非膨潤粒子の1kPa圧縮変形量と定義する。
圧縮速度:0.02mm/s
圧縮子:2cm円形板
非膨潤粒子41(前記特定粒子における粒子本体)は特に制限されず、例えば、球形状、俵型球形状、扁平球形状、多面体形状が挙げられる。また、これらの種々の形状に突起を含んだものも挙げられ、さらに、これらの種々の形状に欠落部(又は欠陥)を含んだものも挙げられる。例えば、テトラポッド形状や半球形状が挙げられる。また、粒子や繊維が複数個集まって同様な形状をする場合も挙げられ、さらに1つの非膨潤粒子41が複数個に分解や分裂した場合も挙げられる。また、非膨潤粒子41(前記特定粒子における粒子本体)の構造も特に制限されず、例えば中実、中空、多孔質が挙げられる。非膨潤粒子41(前記特定粒子における粒子本体)の形状及び構造は、これらを任意に組み合わせたものであり得る。
非膨潤粒子41(前記特定粒子における粒子本体)の平均粒径は、粒子収容部4(収容袋40)からの漏れ出しを防止する観点から、好ましくは0.05mm以上、さらに好ましく0.07mm以上、より好ましくは0.1mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さら好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下である。
非膨潤粒子41の平均粒径は、以下の方法で測定できる。即ち、粒子収容部4に収容されている多数の非膨潤粒子41の拡大写真を観察して、100個以上の非膨潤粒子41の粒径を計測し、それらの計測値の平均値を、非膨潤粒子41の平均粒径とする。尚、斯かる非膨潤粒子41の平均粒径の測定方法は、粒子収容部4に非膨潤粒子41のみが収容されている場合に好適な方法であり、粒子収容部4に非膨潤粒子41以外の他の粒子(吸収性粒子)が収容されている場合には、後述する測定方法によってそれら各粒子の平均粒径を測定するのが好ましい。
粒子収容部4(収容袋40)の厚み(粒子が収容されている状態での厚み)は、着用者に違和感を与えず、着用者の肌の形状に対するフィット性を高め、また流動の自由度の確保の観点から、好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上、そして、好ましくは100mm以下、さらに好ましくは25mm以下である。尚、粒子収容部4の厚みは次の方法で測定できる。
<粒子収容部の厚みの測定方法>
吸収性物品から粒子収容部を取り出し、取り出した粒子収容部内の粒子をなるべく均一になるように広げた後、粒子収容部の厚みを測定する。粒子収容部の肌当接面側に0.05kPaの圧力がかかるように、粒子収容部全体を覆うようにプラスチックの板と適宜錘を載せて、荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定する。厚み測定器にはオムロン株式会社製のレーザー変位計(型番:ZS−LDC)を用いることができる。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して、粒子収容部の厚みとする。
粒子収容部4(収容袋40)は、縦方向Xの全長及び横方向Yの全長のうちで長さが短い方(ナプキン1Aにおいては横方向Yの全長)よりも厚みが薄い扁平な形状を有していることが好ましく、特に、斯かる長さが短い方の半分の長さよりも厚みが薄いことが好ましい。
図4〜図6には、本発明の吸収性物品の他の実施形態1B〜1Dが示されている。後述する他の実施形態については、前述したナプキン1Aと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分には、ナプキン1Aについての説明が適宜適用される。
図4に示すナプキン1Bにおいては粒子収容部4(収容袋40)に、非膨潤粒子41(図4中の黒丸)に加えてさらに、液を吸収して膨潤する吸収性粒子42(図4中の白丸)が含まれている。吸収性粒子42は、前記膨潤試験1を行ったときに、粒径の増大倍率が2倍以上の粒子である。吸収性粒子42としては、この種の吸収性物品の吸収体に従来用いられている各種の高吸収性ポリマーを用いることができ、例えば、ナプキン1Aにおける吸収性コア50に使用可能なものを用いることができる。
ナプキン1Bの粒子収容部4には、非膨潤粒子41と吸収性粒子42とが混合状態で収容されている。混合状態とは、図4に示すように、ナプキン1Bの使用前の状態から、非膨潤粒子41と吸収性粒子42とが混在状態となっていることが好ましいが、使用前の状態では、非膨潤粒子41と吸収性粒子42とが層状に分離しており、ナプキン1Bの使用中に、両者が混在状態となるものであっても良い。
尚、既に粒子収容部4に収容されている粒子について、非膨潤粒子41であるか、吸収性粒子42であるか、又は両者41,42の混合物であるかを判定するには、下記の膨潤試験2を行う。下記の膨潤試験2の結果、非膨潤粒子比率が99.999%超の場合は、粒子収容部に含まれている粒子は非膨潤粒子のみであると判定し、非膨潤粒子比率が、1%未満の場合は、粒子収容部に含まれている粒子は吸収性粒子のみであると判定し、非膨潤粒子比率が、1%以上99.999%以下である場合に、粒子収容部に収容されている粒子が、非膨潤粒子と吸収性粒子との混合物であると判定する。
<膨潤試験2>
吸収性物品から粒子収容部を取り出し、取り出した粒子収容部内の粒子の非膨潤粒子比率を測定する。粒子収容部に収容されている粒子をビーカーに入れる。次に、シャーレ(Fineシャーレ マーク無 90φ×20H 東京硝子器械株式会社製 型番:132−02−12−10)の裏面に1cm角の格子(5×5)を印し、それぞれに1〜25の番号をつける。そのシャーレの内面にスプレーのり(スリーエムジャパン株式会社製 スプレーのり55)で薄く接着剤を塗付する。接着剤を塗付したシャーレの内側に、ビーカーから取り出した粒子1.0gを、粒子の偏りがないように、且つ、個々の粒子が確認できるように薄く広げる。次に、シャーレをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製 型番:VHX−1000・レンズ5〜50倍)に固定し、シャーレに入れた粒子を動かさないようする。視野にシャーレに印した1cm角の1格子が入るように、マイクロスコープの倍率を調整し(20倍程度)、倍率を固定する。そのままマイクロスコープで撮影し、この画像を放置前の画像とする。この操作をマイクロスコープの台座を移動させ、1〜25までの格子全てで行う。続いて、生理食塩水(日本薬局方生理食塩水大塚生食注 大塚製薬株式会社製)20gをシャーレに粒子が移動しないようゆっくり入れる。シャーレに入れた粒子をそのまま動かさないように放置し、30分後にマイクロスコープで撮影する。この画像を放置後の画像とする。マイクロスコープの台座を移動させ、1〜25までの格子全てで、放置後の画像の撮影を行う。放置の前後の画像を、前述の公知の画像処理ソフトを用いて、それぞれ二値化し、粒径を測定する。100個以上、好ましくは100000個以上の粒子について、画像を比較し、放置前の粒子と、放置前の粒子の位置と同じ場所にある放置後の粒子を特定し、前記式(1)に従い各粒子の増大倍率を算出し、計測した全粒子の個数に対して、粒径の増大倍率が2倍未満の粒子の割合(百分率)を非膨潤粒子比率(%)とした。尚、全粒子が100個に満たない場合は全粒子について測定する。また、粒子数を多く測定する場合は、適宜、数個の吸収性物品を用いて、同様の操作を行っても良い。また、粒子数を多く測定する場合は、画像解析をアルゴリズム化し、解析処理をマクロ化しても構わない。
吸収容量の確保並びに吸液前及び吸液後の変形性の向上の観点から、非膨潤粒子41及び吸収性粒子42が収容された粒子収容部4において、前記非膨潤粒子比率は、好ましくは1%以上、さらに好ましくは5%以上、より好ましくは25%以上、そして、好ましくは99.999%以下、さらに好ましくは99.99%以下、より好ましくは99.9%以下である。
粒子収容部4内で混合状態の非膨潤粒子41と吸収性粒子42とは、それらの粒径(平均粒径)が互いに略同一であることが好ましい。一方の粒子と他方の粒子との粒径の差が小さいと、粒径が大きい方の粒子間に形成される空隙に、粒径が小さい方の粒子が入り込むことが少なくなり、粒子収容部4(収容袋40)内の粒子全体の流動性が向上し、粒子収容部4やナプキン1Bの変形性が向上する。さらに、非膨潤粒子41の粒径と吸収性粒子42の粒径とが略同一であると、粒子収容部4内の粒子の流動性や粒子収容部4の変形性が、より確実に向上する。ここでいう略同一とは、非膨潤粒子41の粒径と吸収性粒子42の粒径とが同一、あるいは同一とみなせる程度の場合の両方を含み、具体的には、非膨潤粒子41の粒径が、吸収性粒子42の粒径の、0.225倍以上4.445倍以下の範囲内であることをいう。また、略同一は、粒径が大きい方の粒子間に形成される空隙に、粒径が小さい方の粒子が入り込まないようにする観点から、非膨潤粒子41の粒径は、吸収性粒子42の粒径の、好ましくは0.225倍以上、より好ましくは0.5倍以上であり、また好ましくは4.445倍以下、より好ましくは2倍以下である。粒子収容部4内で混合状態にある粒子41,42それぞれの粒径は、以下のようにして測定することができる。
<粒子収容部に収容されている複数種の粒子それぞれの粒径の測定方法>
吸収性物品から粒子収容部4を取り出し、該粒子収容部4に収容されている複数種の粒子それぞれの粒径を測定する。粒子収容部4に収容されている粒子をビーカーに入れる。次に、シャーレ(Fineシャーレ マーク無 90φ×20H 東京硝子器械株式会社製 型番:132−02−12−10)の裏面に1cm角の格子(5×5)を印し、それぞれに1〜25の番号をつける。そのシャーレの内面にスプレーのり(スリーエムジャパン株式会社製 スプレーのり55)で薄く接着剤を塗付する。接着剤を塗付したシャーレの内側に、ビーカーから取り出した粒子1.0gを、粒子の偏りがないように、且つ、個々の粒子が確認できるように薄く広げる。次に、シャーレをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製 型番:VHX−1000・レンズ5〜50倍)に固定し、シャーレに入れた粒子を動かさないようする。視野にシャーレに印した1cm角の1格子が入るように、マイクロスコープの倍率を調整し(20倍程度)、倍率を固定する。そのままマイクロスコープで撮影し、この画像を放置前の画像とする。この操作をマイクロスコープの台座を移動させ、1〜25までの格子全てで行う。続いて、生理食塩水(日本薬局方生理食塩水大塚生食注 大塚製薬株式会社製)20gをシャーレに粒子が移動しないようゆっくり入れる。シャーレに入れた粒子をそのまま動かさないように放置し、30分後にマイクロスコープで撮影する。この画像を放置後の画像とする。マイクロスコープの台座を移動させ、1〜25までの格子すべてで、放置後の画像の撮影を行う。放置の前後の画像を、前述の公知の画像処理ソフトを用いて、それぞれ二値化し、粒径を測定する。画像を比較し、放置前の粒子と、放置前の粒子の位置と同じ場所にある放置後の粒子を特定し、前記式(1)に従い各粒子の増大倍率を算出する。膨潤が2倍未満の粒子100個の、放置前の粒子の粒径の平均値を、非膨潤粒子41の粒径(平均粒径)とし、膨潤が2倍以上の粒子100個の、放置前の粒子の粒径の平均値を、吸収性粒子42の粒径(平均粒径)とする。
尚、粒子収容部4に収容されている非膨潤粒子41の表面の接触角を測定する場合には、吸収性物品から粒子収容部4を取り出し、粒子収容部4に収容されている非膨潤粒子の表面の接触角を前記<粒子の表面の接触角の測定方法>と同様の方法で測定する。非膨潤粒子41の1粒につき1箇所の接触角を測定する。その後該粒子を、生理食塩水(濃度0.9%)20gの入ったφ90のシャーレに入れ、粒径の増大倍率が2倍未満であることを確認したN=10粒の非膨潤粒子41の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を非膨潤粒子41の表面の接触角と定義する。
ナプキン1Bにおいて、非膨潤粒子41の嵩密度は、吸収性粒子42の嵩密度以下であることが好ましい。非膨潤粒子41の嵩密度が、吸収性粒子42の嵩密度以下であると、嵩密度の軽い非膨潤粒子41が、着用者の肌に近い側に移動し易くなり、非膨潤粒子41が、裏面シート3よりも表面シート2側に偏在し易くなる。これにより、吸液後における粒子収容部4内の粒子全体の移動性が確保され、吸液前及び吸液後のナプキン1Bの変形性が一層向上する。同様の観点から、非膨潤粒子41の嵩密度は、吸収性粒子42の嵩密度未満であることがさらに好ましい。粒子41,42の嵩密度は、下記方法によって測定することができる。
<粒子の嵩密度の測定方法>
前記膨潤試験1又は前記膨潤試験2のシャーレから、膨潤が2倍未満の非膨潤粒子を100個、膨潤が2倍以上の吸収性粒子を100個集め、真空乾燥させた後、それぞれの粒子の合計質量を、精密天秤(測定精度0.001mg)で測定し、それぞれの粒子の合計質量と非膨潤粒子の粒径と吸収性粒子の粒径とから、下記式(2)に従い粒子の嵩密度を算出し、それぞれの粒子の嵩密度とする。
粒子の嵩密度(g/cm)=粒子の合計質量/100/[(球の最密充填定数:0.74)×(粒子の粒径)] ・・・(2)
またナプキン1Bにおいては、図4に示すように、吸収体5は吸収性粒子42のみからなる。即ちナプキン1Bが具備する吸収体5は、粒子収容部4(収容袋40)と裏面シート3との間に介在配置された複数の吸収性粒子42のみからなり、パルプなどの繊維材料を含んでいない。吸収体5を構成する吸収性粒子42は、これを挟持するシート状部材である収容袋40及び裏面シート3の何れか一方又は両方に、接着剤を介して固定されている。粒子収容部4と裏面シート3との間に配されている吸収性粒子42の単位面積当たりの量(坪量)は、好ましくは0g/m超、さらに好ましくは0.1g/m以上、そして、好ましくは1000g/m以下、さらに好ましくは10g/m以下である。
ナプキン1Bによってもナプキン1Aと同様の効果が奏される。特にナプキン1Bは、粒子収容部4に吸収性粒子42が収容されていることにより、非膨潤粒子41のみが収容されている場合に比して粒子収容部4の液吸収性が向上しており、液戻りなどの液吸収に関する不都合をより一層効果的に防止し得る。また粒子収容部4には、体液に接触して膨潤する吸収性粒子42に加えて、体液に接触しても膨潤し難い非膨潤粒子41が収容され、両粒子41,42が混合状態となっているので、吸収性粒子42が吸液して膨潤しても、粒子収容部4内の粒子全体としての流動性は高い状態に維持され、優れた変形性が維持され得る。さらに、吸収体5が吸収性粒子42のみから構成されているため、繊維集合体からなる吸収性コア50を具備するナプキン1Aに比して、ナプキン1Bは厚みが薄く剛性が低い。そのためナプキン1Bは、粒子収容部4が有する高い変形性を十分に活かすことが可能であり、吸液前及び吸液後の何れにおいても、複雑な立体形状への変形性に優れ、吸液前及び吸液後の何れにおいても着用者の肌へのフィット性や追従変形性に優れる等の効果を奏し得る。
図5に示すナプキン1Cは、粒子収容部4に収容されているのが非膨潤粒子41のみであり、吸収性粒子42は収容されていない点以外は、ナプキン1Bと同じである。また、ナプキン1Cは、吸収体5が吸収性粒子42のみからなる点以外はナプキン1Aと同じとも言える。ナプキン1Cによってもナプキン1Aないし1Bと同様の効果が奏され、また同様の効果を向上させた効果(付加効果)が奏される。特に、付加効果としては、吸収体5が吸収性粒子42のみから構成されているため、繊維集合体からなる吸収性コア50を具備するナプキン1Aに比して、ナプキン1Cは厚みが薄く、ナプキン1Aより剛性が低い。そのためナプキン1Cは、粒子収容部4が有する高い変形性を十分に活かすことが可能であり、吸液前及び吸液後の何れにおいても、複雑な立体形状への変形性に優れ、吸液前及び吸液後の何れにおいても着用者の肌へのフィット性や追従変形性に優れる等の効果を奏し得る。さらに、付加効果としては、ナプキン1Cは、粒子収容部4に吸収性粒子42が収容されていないことによる利点として、吸液後の吸収性粒子42の膨潤が着用者の肌に伝わりにくいことが挙げられ、これはナプキン1Bより着用感の点でプラスに作用する。
図6に示すナプキン1Dにおいては、周縁シール部7の内側における表面シート2と裏面シート3との間が、粒子収容部4となっている。つまり、ナプキン1D自体が袋状の粒子収容部の形態をなしている。ナプキン1Dは、ナプキン1Aが具備していたウイング部を具備しておらず、図示していないが、平面視において縦方向に長い形状(例えば、長方形形状、長楕円形状など)をなしている。
ナプキン1Dの粒子収容部4には、非膨潤粒子41(図6中の黒丸)と吸収性粒子42(図6中の白丸)とが混合状態で収容されている。表面シート2及び裏面シート3のみで粒子41,42を収容する構成では、粒子41,42がナプキン1Dの外部に漏れ出すことが懸念される場合は、表面シート2の非肌当接面及び/又は裏面シート3の肌当接面に、シート2,3とは別体のシート材を配しても良い。斯かるシート材としては、紙又は単層若しくは多層構造の不織布を用いることができる。
ナプキン1Dによってもナプキン1Aないし1Cと同様の効果、または同様の効果を向上させた効果(付加効果)が奏される。特に、付加効果としては、ナプキン1Dは、粒子収容部4に吸収性粒子42が収容されていることにより、非膨潤粒子41のみが収容されている場合に比して粒子収容部4の液吸収性が向上しており、ナプキン1Aより液戻りなどの液吸収に関する不都合をより一層効果的に防止し得る。また、付加効果としては、粒子収容部4には、体液に接触して膨潤する吸収性粒子42に加えて、体液に接触しても膨潤し難い非膨潤粒子41が収容され、両粒子41,42が混合状態となっているので、吸収性粒子42が吸液して膨潤しても、粒子収容部4内の粒子全体としての流動性は高い状態に維持され、ナプキン1Aより優れた変形性が維持され得る。さらに、付加効果としては、吸収体5が吸収性粒子42のみから構成されているため、繊維集合体からなる吸収性コア50を具備するナプキン1Aに比して、ナプキン1Dは厚みが薄く、ナプキン1Aより剛性が低い。そのためナプキン1Dは、粒子収容部4が有する高い変形性を十分に活かすことが可能であり、吸液前及び吸液後の何れにおいても、複雑な立体形状への変形性に優れ、吸液前及び吸液後の何れにおいても着用者の肌へのフィット性や追従変形性に優れる等の効果を奏し得る。さらに、付加効果としては、ナプキン1Dは、表面シート2及び裏面シート3が粒子収容部4を兼ねており、構成部材が比較的少ない簡素な構成であるため、それ単独で通常の吸収性物品、例えば、生理用ナプキンとして使用できる他、別体の吸収性物品の構成部材として使用することもできる。後者の使用例として、生理用ナプキン、使い捨ておむつ、失禁パッド等の別の吸収性物品における表面シートと裏面シートとの間に、ナプキン1Dを配置する形態が挙げられ、この場合ナプキン1Dの作用によって、その別の吸収性物品は、吸液前及び吸液後の何れにおいても、複雑な立体形状への変形性に優れるものとなり、また液吸収性が向上し、液戻りなどの不都合を起こし難いものとなり得る。
以上、本発明について説明したが、本発明は前述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。例えば、前記実施形態においては、粒子収容部4(収容袋40)は、平面視において吸収体5と同形状・同寸法を有し、前方部Aから後方部Cにかけて吸収体5の縦方向Xの全長にわたって配されていたが、少なくとも排泄部対向部Bに配されていれば良い。本発明の吸収性物品は、人体から排出される体液(尿、経血、軟便、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、生理用ナプキンの他、使い捨ておむつ、生理用ショーツ等も包含される。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
〔実施例1〜3〕
図6に示すナプキン1Dと同様の構成、即ち、粒子収容部に非膨潤粒子及び吸収性粒子が収容された構成の生理用ナプキンを作製した。
表面シートとして、坪量18g/mのToray Advanced Materials Korea Inc.製の親水性のスパンボンド不織布を用い、裏面シートとして、坪量15g/mの透湿性且つ液不透過性のポリエチレン透湿フィルムを用いた。表面シートと対向する裏面シート間に、表面が疎水性で且つ内部が親水性の非膨潤粒子を3.6gと、吸収性粒子0.1gとを介在させ、両シートの両端の開口部をそれぞれ接合して、扁平な収容袋に粒子が収容された状態の粒子収容部を作製した(図3(b)参照)。
〔実施例4〕
図5に示すナプキン1Cと同様の構成、即ち、粒子収容部に非膨潤粒子のみが収容され、且つ粒子収容部と裏面シートとの間に吸収性粒子のみからなる吸収体が配された構成の生理用ナプキンを作製した。表面シート及び裏面シートは実施例1と同じものを使用した。
筒状の液透過性シート(Toray Advanced Materials Korea Inc.製の親水性のスパンボンド不織布、坪量18g/m)における相対向するシート間に、表面が疎水性で且つ内部が親水性の非膨潤粒子を3.6g介在させ、両シートの両端の開口部をそれぞれ接合して、扁平な収容袋に粒子が収容された状態の粒子収容部を作製した(図3(b)参照)。粒子収容部と裏面シートとの間に吸収性粒子を0.1g散布して吸収体とした。吸収体を構成する吸収性粒子は、ホットメルト接着剤を介して、粒子収容部を構成する収容袋と裏面シートの双方に固定した。
〔実施例5〕
図4に示すナプキン1Bと同様の構成、即ち、粒子収容部に非膨潤粒子及び吸収性粒子が収容され、且つ粒子収容部と裏面シートとの間に吸収性粒子のみからなる吸収体が配された構成の生理用ナプキンを作製した。収容袋に吸収性粒子0.1gを加えた以外は、実施例4と同様にした。
〔実施例6〕
図1に示すナプキン1Aと同様の構成、即ち、吸収体が、繊維集合体からなる吸収性コアに吸収性粒子を保持させたものをコアラップシートで被覆した構成である以外はナプキン1Cと同じ構成の生理用ナプキンを作製した。吸収性コアとして、フラッフパルプ150g/mと吸収性粒子1.67g/mとの均一混合物からなる総坪量151.67g/mの吸収性コアを用いた。コアラップシートとしては、坪量18g/mのToray Advanced Materials Korea Inc.製の親水性のスパンボンド不織布を用い、1枚のコアラップシートで吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面の全域を被覆した。
〔比較例1〕
粒子収容部に収容する粒子として、ガラスビーズ(アズワン株式会社販売、BZ−1)のみを用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。比較例1の粒子収容部に収容した粒子は、その全体が疎水性の非膨潤粒子(前記膨潤試験1を行ったときに、粒径の増大倍率が2倍未満の粒子)である。
〔比較例2〕
粒子収容部に収容する粒子として、セルロースビーズ(レンゴー株式会社製、ビスコパール)のみを用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。比較例2の粒子収容部に収容した粒子は、その全体が親水性の非膨潤粒子である。
〔比較例3〕
粒子収容部に収容する粒子として、発泡スチロールビーズ(株式会社クオリーメン製、補充用Mビーズ)のみを用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。比較例3の粒子収容部に収容した粒子は、その全体が疎水性の非膨潤粒子である。
〔比較例4〕
粒子収容部に収容する粒子として、高吸収性ポリマー(株式会社日本触媒製、アクアリックCA、粒径0.5mm、嵩密度0.5g/cm)の表面全体に疎水性滑剤としてのシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−6015)を1質量%塗布したもののみを用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。比較例4の粒子収容部に収容した粒子は、表面が疎水性、内部が親水性で、且つ液に接触すると膨潤する吸収性粒子(前記膨潤試験1を行ったときに、粒径の増大倍率が2倍以上の粒子)である。
〔比較例5〕
粒子収容部に収容する粒子として、シリカゲル(和光純薬工業株式会社製、シリカゲル小粒状(白色))のみを用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。比較例5の粒子収容部に収容した粒子は、その全体が親水性の非膨潤粒子である。
各実施例及び比較例で使用した吸収性粒子は、高吸収性ポリマー(株式会社日本触媒製、アクアリックCA、粒径0.5mm、嵩密度0.5g/cm、以下「SAP」ともいう)である。また、各実施例で使用した非膨潤粒子の詳細は下記の通り。
・実施例1の非膨潤粒子:セルロースビーズ(レンゴー株式会社製、ビスコパール)の表面全体に、疎水性滑剤としてのシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−6015)を3質量%塗布したもの。
・実施例2、4、5及び6の非膨潤粒子:セルロースビーズ(レンゴー株式会社製、ビスコパール)の表面全体に、疎水性滑剤としてのシリコンシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−6015)を1質量%塗布したもの。
・実施例3の非膨潤粒子:セルロースビーズ(レンゴー株式会社製、ビスコパール)の表面全体に、疎水性滑剤としての流動性パラフィン(和光純薬工業株式会社製)を1質量%塗布したもの。
〔評価試験〕
各実施例及び比較例の生理用ナプキンについて、液吸収性(加圧下吸収時間、漏れの有無)、液戻り量、吸液後の曲げ易さ(WET曲げ)、吸液後のひねり易さ(WETひねり)をそれぞれ下記方法により評価した。結果を下記表1に示す。
<加圧下吸収時間の測定方法>
評価対象の生理用ナプキンを平面状に広げて肌対向面側(表面シート側)が上を向くように水平に載置し、該ナプキンの上に、筒内径22mmφ、筒高さ50mmのアクリル製円筒部が10mmφの注液用開口部上に位置するよう一体成形されたアクリル製注液プレートを、その注液孔が該ナプキンの肌対向面(表面シート側)における排泄部対向領域の中央に位置するように重ねて置き、適当な重り板を乗せて(注液プレート自身を含む)荷重が3.5g/mとなるよう調整した。この状態下に、注液プレートの円筒部内に、生理食塩水(濃度0.9%)を10g一度に注入し、注入開始から、円筒部内の、生理食塩水が生理用ナプキンに吸収されて無くなるまでに要した時間を測定した。計測は3回行い、その平均値を当該ナプキンの加圧下吸収時間とし、下記表1に示した。加圧下吸収時間が短いほど、加圧下吸収速度が大きく、当該ナプキンが吸収性能に優れることを示す。
また、加圧下吸収時間の測定の際に、漏れの有無を評価した。即ち、評価対象の吸収性物品を平面状に広げて肌対向面側(表面シート側)が上を向くように水平に載置し、該吸収性物品の下にキムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)を1枚敷き、該吸収性物品の上に、筒内径22mmφ、筒高さ50mmのアクリル製円筒部が10mmφの注液用開口部上に位置するよう一体成形されたアクリル製注液プレートを、その注液孔が該吸収性物品の肌対向面(表面シート側)における排泄部対向領域の中央に位置するように重ねて置き、適当な錘板を乗せて(注液プレート自身を含む)荷重が3.5kg/mとなるよう調整した。この状態下に、注液プレートの円筒部内に、生理食塩水(濃度0.9%)を10g一度に注入した後、そのまま10分間放置した。その後直ちに、吸収性物品の下に敷いたキムタオルを確認し、濡れていないか確認をした。計測は3回行い、すべて濡れていなかった場合、漏れはなしとし、1回以上濡れた場合漏れはありとし、下記表1に示した。漏れの有無において、漏れがないことは吸収性能に優れることを示す。
<液戻り量の評価方法>
評価対象の生理用ナプキンを平面状に広げて肌対向面側(表面シート側)が上を向くように水平に載置し、該ナプキンの上に、筒内径22mmφ、筒高さ50mmのアクリル製円筒部が10mmφの注液用開口部上に位置するよう一体成形されたアクリル製注液プレートを、その注液孔が該ナプキンの肌対向面(表面シート側)における排泄部対向領域の中央に位置するように重ねて置き、適当な重り板を乗せて(注液プレート自身を含む)荷重が3.5kgg/mとなるよう調整した。この状態下に、注液プレートの円筒部内に、生理食塩水(濃度0.9%)を10g一度に注入した後、そのまま10分間放置する。その後直ちに、ナプキンにおける、生理食塩水が注ぎ込まれた部分に、秤量済みの吸収紙(アドバンテック東洋株式会社販売定量濾紙5A、55mmφ)10枚と、重量400gの直方体の重りとを載せて1分静置し、1分後の吸収紙重量より、該吸収紙が吸い取った、生理食塩水の量(g)を算出した。計測は3回行い、その平均値を当該ナプキンの液戻り量とし、下記表1に示した。液戻り量の値が小さいほど、液戻りが起こりにくく、当該ナプキンが吸収性能に優れることを示す。
<WET曲げの評価方法>
測定対象物(生理用ナプキン)に10gの生理食塩水を吸収させた後、30分間放置したものを試料とした。
「風合い評価の標準化と解析(第2版)」(著者;川端季雄、発行所;財団法人日本繊維機械学会、風合い計量と規格化研究委員会、発行日;昭和55年7月10日)の第27頁〜第28頁に記載の方法に準じて測定した。詳細には、試料をカトーテック株式会社製純曲げ試験機(商品名;KES−FB2)のチャックに、チャック間距離が10mmとなるように取り付けた。試料の取り付け方向は、試料の長手方向が曲げ方向となるようにした。重力の影響を少なくするために、試料は垂直に取り付けた。曲率K=−2.5〜+2.5cm−1の範囲で等速度曲率の純曲げを行なった。変形速度は0.50cm−1/secとした。この操作によって、試料の単位面積当たりの曲げモーメントMと曲率Kとの関係(M−K曲線)を求めた。その結果から、M−K曲線の傾斜である単位長さあたりの曲げ剛性B(gf・cm2/cm)を算出した。Bは、K=0.5cm−1と1.5cm−1との間の傾斜、及びK=−0.5cm−1と−1.5cm−1との間の傾斜を、Kの絶対値の増加過程の特性から測定し、それぞれBf、Bbとする。その平均値(Bf+Bb)/2を曲げ剛性の値とし、WET曲げとして下記表1に示した。WET曲げ(曲げ剛性値)が低いほど、当該試料(吸液後の生理用ナプキン)は曲げ易いことを示す。
<WETひねりの評価方法>
測定対象物(生理用ナプキン)に10gの生理食塩水を吸収させた後、30分間放置したものを試料とした。
10名の成人女性に、試料の長手方向(縦方向、MD方向)の両端部を手指で把持してこれをひねってもらい、下記評価基準に従ってひねり易さを評価してもらった。その評価点の平均値をWETひねりとして下記表1に示した。WETひねりが高いほど、当該試料(吸液後の生理用ナプキン)はひねり易いことを示す。
(評価基準)
・5点:ひねりやすい
・4点:ややひねりやすい
・3点:どちらでもない
・2点:ややひねりにくい
・1点:ひねりにくい
Figure 0006734727
実施例1〜6は、加圧下吸収時間が比較例1〜5よりも短く、また、比較例1,3〜5に比べ明らかに漏れがないことを示しており、さらに、液戻り量が比較例1,3,5よりも少なかった。これにより、実施例1〜6は、加圧下吸収時間、漏れ、液戻り量の全ての性能を達成し得るものであり、いずれの比較例よりも吸収性能に優れることが分かった。
加えて、実施例1〜6は、WET曲げ及びWETひねりの値から、比較例2,5よりも曲げ易く、かつ、ひねり易いことが分かった。よって、実施例1〜6は、吸収性能と変形性とを両立し、いずれの比較例よりも優れていることがわかった。
1A,1B,1C,1D 生理用ナプキン(吸収性物品)
A 前方部
B 排泄部対向部
C 後方部
2 表面シート
3 裏面シート
4 粒子収容部
40 収容袋
41 非膨潤粒子
42 吸収性粒子
5 吸収体
50 吸収性コア
51 コアラップシート
6 吸収性本体
7 周縁シール部

Claims (7)

  1. 肌当接面側に配された表面シート、非肌当接面側に配された裏面シート、及びこれら両シート間に配された粒子収容部を備えた吸収性物品であって、
    前記粒子収容部に、表面が疎水性、内部が親水性で、且つ液に接触しても膨潤しない非膨潤粒子が含まれており、
    前記非膨潤粒子は、親水性の粒子本体と、該粒子本体の表面に付着している滑剤層とを含んで構成されている吸収性物品。
  2. 前記粒子収容部に、液を吸収して膨潤する吸収性粒子が含まれている請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記粒子収容部と前記裏面シートとの間に、排泄された体液を吸収可能な吸収体が配されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記吸収体は、液を吸収して膨潤する吸収性粒子のみからなる請求項3に記載の吸収性物品。
  5. 前記滑剤層が疎水性である請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
  6. 前記粒子収容部に収容されている粒子の吸液後の安息角が65度以下である請求項1〜の何れか1項に記載の吸収性物品。
  7. 前記非膨潤粒子の0.1kPa圧縮変形量が0.01mm以上である請求項1〜の何れか1項に記載の吸収性物品。
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