図1は、燃料電池の一例を示す分解斜視図である。燃料電池スタックは、複数の燃料電池をスタックして、その両端にエンドプレートを配置して各エンドプレートの間を締結することにより構成されている。
燃料電池は、一対のセパレータ1,2と、一対のガスケット3,4と、一対のガスケット3,4内に収容された一対のガス拡散層30,40と、膜電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)5とを有する。セパレータ1及びガスケット3は燃料電池のカソード側に配置され、セパレータ2及びガスケット4は燃料電池のアノード側に配置されている。
ガスケット3,4は、一対のセパレータ1,2の間を封止し、気密性を維持する。ガスケット3,4は、例えば、樹脂部材の射出成型により形成されたものでもよいし、複数の樹脂製のフィルム部材を接着することにより形成されたものでもよい。
ガスケット3,4は例えば矩形の板状部材であり、その中心には、ガス拡散層30,40を収容するための方形の収容孔37,47を有する。また、ガスケット3,4同士が積層されたとき、MEA5の外周部分がガスケット3,4の少なくとも一方に接合される。これにより、MEA5は一対のガス拡散層30,40により挟まれるため、カソード側のガス拡散層30、MEA5、及びアノード側のガス拡散層40は、この順に積層される。
ガス拡散層30,40は、炭素繊維などの繊維基材や、いわゆるエキスパンドメタルなどの金属板を加工した流路部材、発泡金属などの多孔質部材により構成される。カソード側ガス拡散層30は、一方の反応ガスである酸化剤ガス(空気)を拡散し、アノード側ガス拡散層40は、他方の反応ガスである水素ガスを拡散する。
符号P1はMEA5の断面を示す。MEA5は、電解質膜50、カソード電極51、及びアノード電極52を有する。電解質膜50は、例えば、湿潤状態で良好なプロトン電導性を示すイオン交換樹脂膜により構成される。このようなイオン交換樹脂膜としては、例えば、ナフィオン(登録商標)などの、イオン交換基としてスルホン酸基を有するフッ素樹脂系のものが挙げられる。
電解質膜50は、アノード電極52及びカソード電極51の間に挟持されている。アノード電極52及びカソード電極51は、それぞれ、触媒電極層であり、触媒担持導電性粒子により構成された、ガス拡散性を有する多孔質層として形成されている。例えば、アノード電極52及びカソード電極51は、白金担持カーボンの分散溶液である触媒インクの乾燥塗膜として形成される。
アノード電極52には、アノード側セパレータ2からアノード側ガス拡散層40を介し水素ガスが供給され、カソード電極51には、カソード側セパレータ1からカソード側ガス拡散層30を介し酸化剤ガスが供給される。MEA5は、酸化剤ガス及び水素ガスの電気化学反応により発電する。
一対のセパレータ1,2は、例えば金属板などにより構成される。カソード側セパレータ1には、酸化剤ガス(例えば空気)の供給孔13及び排出孔14と、水素ガスの供給孔16及び排出孔11と、冷却水の供給孔12及び排出孔15とが形成されている。
各供給孔12,13,16及び各排出孔11,14,15は、厚み方向に延びる貫通孔であり、その開口は、一例として矩形状を有する。酸化剤ガスの供給孔13及び排出孔14は、セパレータ1の向かい合う一組の対角の近傍にそれぞれ設けられ、水素ガスの供給孔16及び排出孔11は、セパレータ1の向かい合う他の一組の対角の近傍にそれぞれ設けられている。供給孔13には、発電反応に用いられる酸化剤ガスが供給され、排出孔14には、発電反応に用いられた酸化剤ガスが排出される。
カソード側セパレータ1において、カソード側ガスケット3内のガス拡散層30と対向する面1aには、例えばプレス金型による曲げ加工などによって流路溝群10が形成されている。流路溝群10は、酸化剤ガスの供給孔13及び排出孔14に連通し、酸化剤ガスを供給孔13から排出孔14に流す。このとき、酸化剤ガスは、カソード側ガス拡散層30を通りMEA5に供給され、発電に使用された後、カソード側ガス拡散層30を通り流路溝群10に戻る。なお、セパレータ1は、金属に限定されず、例えばカーボン成型により形成されてもよい。
また、供給孔16には、発電反応に用いられる水素ガスが供給され、排出孔11には、発電反応に用いられた水素ガスが排出される。供給孔12には、燃料電池を冷却する冷却水が供給され、排出孔15には、冷却水が排出される。
ガスケット3,4とアノード側セパレータ2には、スタック時に供給孔13及び排出孔14に重なり合う貫通孔が設けられている。より具体的には、ガスケット3,4には、酸化剤ガスが供給される供給孔33,43と、酸化剤ガスが排出される排出孔34,44とが設けられている。また、アノード側のセパレータ2には、酸化剤ガスが供給される供給孔23と、酸化剤ガスが排出される排出孔24とが設けられている。
各供給孔13,33,43,23は、燃料電池のスタック時に互いに重なり合うことにより酸化剤ガス供給マニホルドを構成する。酸化剤ガスは、矢印Ainで示されるように、酸化剤ガス供給マニホルド内を燃料電池スタックの積層方向に流れる。
また、各排出孔14,34,44,24は、燃料電池のスタック時に互いに重なり合うことにより酸化剤ガス排出マニホルドを構成する。酸化剤ガスは、矢印Aoutで示されるように、酸化剤ガス排出マニホルド内を燃料電池スタックの積層方向に流れる。
また、アノード側セパレータ2には、酸化剤ガスの供給孔23及び排出孔24と、水素ガスの供給孔26及び排出孔21と、冷却水の供給孔22及び排出孔25とが形成されている。
各供給孔22,23,26及び各排出孔21,24,25は、厚み方向に延びる貫通孔であり、その開口は、一例として矩形状を有する。酸化剤ガスの供給孔23及び排出孔24は、セパレータ2の向かい合う一組の対角の近傍にそれぞれ設けられ、水素ガスの供給孔26及び排出孔21は、セパレータ2の向かい合う他の一組の対角の近傍にそれぞれ設けられている。供給孔26には、発電反応に用いられる水素ガスが供給され、排出孔21には、発電反応に用いられた水素ガスが排出される。
アノード側セパレータ2において、アノード側ガスケット4内のガス拡散層40と対向する面2aには、例えばプレス金型による曲げ加工などによって流路溝群20が形成されている。流路溝群20は、水素ガスの供給孔26及び排出孔21に連通し、水素ガスを供給孔26から排出孔21に流す。このとき、水素ガスは、アノード側ガス拡散層40を通りMEA5に供給され、発電に使用された後、アノード側ガス拡散層40を通り流路溝群20に戻る。なお、セパレータ2は、金属に限定されず、例えばカーボン成型により形成されてもよい。
また、供給孔23には、発電反応に用いられる酸化剤ガスが供給され、排出孔24には、発電反応に用いられた酸化剤ガスが排出される。供給孔22には、燃料電池を冷却する冷却水が供給され、排出孔25には、冷却水が排出される。
ガスケット3,4には、スタック時に供給孔26及び排出孔21に重なり合う貫通孔が設けられている。より具体的には、ガスケット3,4には水素ガスが供給される供給孔36,46と、水素ガスが排出される排出孔31,41とが設けられている。
各供給孔16,36,46,26は、燃料電池のスタック時に互いに重なり合うことにより水素ガス供給マニホルドを構成する。水素ガスは、矢印Hinで示されるように、水素ガス供給マニホルド内を燃料電池スタックの積層方向に流れる。
また、各排出孔11,31,41,21は、燃料電池のスタック時に互いに重なり合うことにより水素ガス排出マニホルドを構成する。水素ガスは、矢印Houtで示されるように、水素ガス排出マニホルド内を燃料電池スタックの積層方向に流れる。
また、冷却水の各供給孔12,32,42,22は、燃料電池のスタック時に互いに重なり合うことにより冷却水供給マニホルドを構成し、冷却水の排出孔15,35,45,25は、燃料電池のスタック時に互いに重なり合うことにより冷却水排出マニホルドを構成する。冷却水は、冷却水供給マニホルド及び水素ガス供給マニホルド内を燃料電池スタックの積層方向に流れる。冷却水は、図示を省略するが、アノード側セパレータ2の面2aとは反対面内の流路溝を流れることにより燃料電池を冷却する。
このように、一対のセパレータ1,2はMEA5を挟持し、MEA5は、カソード側セパレータ1からカソード電極51に導かれた酸化剤ガスと、アノード側セパレータ2からアノード電極52に導かれた水素ガスとを用いて発電する。各セパレータ1,2のMEA5に対向する面1a,2aには、MEA5との間で受け渡される酸化剤ガス及び水素ガスを流す流路溝群10,20が備えられている。なお、本例において、燃料電池にはガス拡散層30,40が設けられているが、ガス拡散層30,40に代えて、他の多孔質層が設けられてもよい。
図2は、セパレータ1,2の一例を示す平面図である。図2には、カソード側セパレータ1の面1aに、アノード側セパレータ2の面2aの水素ガスの流路溝群20、供給孔26、及び排出孔21を重ねた状態が示されている。つまり、図2には、MEA5を挟持したときの一対のセパレータ1,2の面1a,2aにおける流路溝群10,20、供給孔13,26、及び排出孔14,21が示されている(点線参照)。
カソード側セパレータ1の面1aには、酸化剤ガスが流れる流路溝群10が形成されている。流路溝群10は、酸化剤ガスの供給孔13及び排出孔14に連通する。流路溝群10には、上流域流路溝群10b、中流域流路溝群10a、及び下流域流路溝群10cが含まれている。
中流域流路溝群10aは、第1流路溝群の一例であり、酸化剤ガスを供給孔13側から排出孔14側に案内する。中流域流路溝群10aは、一例として、セパレータ1の一組の対辺と平行に伸びる複数の流路溝から構成される。
上流域流路溝群10bは、第2流路溝群の一例であり、酸化剤ガスの供給孔13を中流域流路溝群10aに接続する。上流域流路溝群10bは、水素ガスの排出孔11に近い流路溝ほど、中流域流路溝群10aの延びる方向に対する角度が大きくなっている。
下流域流路溝群10cは、第3流路溝群の一例であり、酸化剤ガスの排出孔14を中流域流路溝群10aに接続する。下流域流路溝群10cは、水素ガスの供給孔16に近い流路溝ほど、中流域流路溝群10aの延びる方向に対する角度が大きくなっている。
また、アノード側セパレータ2の面2aには、水素ガスが流れる流路溝群20が形成されている。流路溝群20は、水素ガスの供給孔26及び排出孔21に連通する。流路溝群20には、上流域流路溝群20b、中流域流路溝群20a、及び下流域流路溝群20cが含まれている。
中流域流路溝群20aは、第1流路溝群の一例であり、水素ガスを供給孔26側から排出孔21側に案内する。中流域流路溝群20aは、一例として、セパレータ2の一組の対辺と平行に伸びる複数の流路溝から構成される。
上流域流路溝群20bは、第2流路溝群の一例であり、水素ガスの供給孔26を中流域流路溝群20aに接続する。上流域流路溝群20bは、酸化剤ガスの排出孔24に近い流路溝ほど、中流域流路溝群20aの延びる方向に対する角度が大きくなっている。
下流域流路溝群20cは、第3流路溝群の一例であり、水素ガスの排出孔21を中流域流路溝群20aに接続する。下流域流路溝群20cは、酸化剤ガスの供給孔23に近い流路溝ほど、中流域流路溝群20aの延びる方向に対する角度が大きくなっている。
カソード側セパレータ1の中流域流路溝群10aとアノード側セパレータ2の中流域流路溝群20aは、MEA5を挟んで対向する。また、カソード側セパレータ1の上流域流路溝群10bとアノード側セパレータ2の下流域流路溝群10cは、MEA5を挟んで対向し、カソード側セパレータ1の下流域流路溝群10cとアノード側セパレータ2の上流域流路溝群20bは、MEA5を挟んで対向する。
セパレータ1,2の面1a,2aを見たとき、つまり面1a,2aの正面視において、カソード側セパレータ1の上流域流路溝群10bとアノード側セパレータ2の下流域流路溝群10cは互いに交差する部分(以下、「交差部分」と表記)P2を有する。また、カソード側セパレータ1の下流域流路溝群10cとアノード側セパレータ2の上流域流路溝群20bも互いに交差する部分(以下、「交差部分」と表記)P3を有する。
上流域流路溝群10b,20b及び下流域流路溝群10c,20cは、交差部分P2,P3において溝幅が他部分より狭い。このため、交差部分P2,P3における水素ガス及び酸化剤ガスの流速は、他部分における流速より速くなる。以下の説明では、上流域流路溝群10b,20b及び下流域流路溝群10c,20cにおいて、溝幅が他部分より狭い部分を「狭幅部」と表記する。
図3は、アノード側流路溝及びカソード側流路溝の狭幅部の一例を示す図である。図3には、符号G1は、カソード側流路溝100の狭幅部100aを示し、符号G2は、アノード側流路溝200の狭幅部200aを示す。
また、符号G3は、カソード側流路溝100の狭幅部100aとアノード側流路溝200の狭幅部200aの重なり合った様子を示す。なお、本例では、カソード側セパレータ1の上流域流路溝群10bとアノード側セパレータ2の下流域流路溝群20cの交差部分P2を挙げるが、以下に述べる構成は、カソード側セパレータ1の下流域流路溝群10cとアノード側セパレータ2の上流域流路溝群20bの交差部分P3においても同様である。
符号G1で示されるように、カソード側セパレータ1の交差部分P2では、カソード側流路溝100の溝幅が、狭幅部100aに向かい徐々に狭くなる。狭幅部100aの溝幅Dnは他部分の溝幅Dwより狭いため、カソード側流路溝100を流れる酸化剤ガスの流速は、狭幅部100aにおいて他部分より速くなる。
また、符号G2で示されるように、アノード側セパレータ2の交差部分P2では、アノード側流路溝200の溝幅が、狭幅部200aに向かい徐々に狭くなる。狭幅部200aの溝幅Dnは他部分の溝幅Dwより狭いため、アノード側流路溝200を流れる水素ガスの流速は、狭幅部200aにおいて他部分より速くなる。なお、カソード側セパレータ1とアノード側セパレータ2の溝幅Dw,Dnは相違してもよい。
符号G3で示されるように、カソード側流路溝100の狭幅部100aとアノード側流路溝200の狭幅部200aは面1a,2a内で重なり合う。酸化剤ガス及び水素ガスは狭幅部100a,200aにおいて加速するため、酸化剤ガス及び水素ガスに含まれる水分の電解質膜50における水移動抵抗が低減される。これにより、水分が、狭幅部100a,200aの一方から他方に容易に移動することができるので、電解質膜50を十分に加湿することが可能となる。
図4は、燃料電池内の水分の移動の様子を例示する図である。図4には、燃料電池の積層方向の断面が示されている。なお、図4において、カソード側流路溝100とアノード側流路溝200は、便宜上、平行に表されているが、実際には、狭幅部100a,200aにおいて交差している。
例えば、下流域流路溝群10cを流れる酸化剤ガスの水分は、狭幅部100aからカソード側ガス拡散層30を介して電解質膜50に到達する。下流域流路溝群10cを流れる酸化剤ガスには、MEA5の発電反応で生じた生成水が含まれるため、電解質膜50は十分に加湿される。そして、酸化剤ガスの余った水分は、電解質膜50を通過して、アノード側ガス拡散層40を介し上流域流路溝群20bを流れる水素ガスを加湿する。
また、下流域流路溝群20cを流れる水素ガスの水分は、狭幅部200aからアノード側ガス拡散層40を介して電解質膜50に到達する。下流域流路溝群20cを流れる水素ガスには、MEA5の発電反応で生じた生成水が含まれるため、電解質膜50は十分に加湿される。そして、水素ガスの余った水分は、電解質膜50を通過して、上流域流路溝群10bを流れる酸化剤ガスを加湿する。
このように、本例では、狭幅部100a,200aにより電解質膜50の水移動抵抗が低減されるため、カソード側セパレータ1及びアノード側セパレータ2は、MEA5を挟んで水分を循環させて電解質膜50の湿度を良好に維持することができる。
図5は、相対湿度ごとの水移動抵抗を示すグラフである。図5には、一例として、電解質膜50の相対湿度が25(%)、45(%)、65(%)、及び85(%)である場合の水移動抵抗(s/cm)が示されている。なお、本例では、電解質膜50の水移動抵抗として厚さ20(μm)のNafion(登録商標)膜のデータを挙げる。
水移動抵抗には内部抵抗と表面抵抗が含まれる。内部抵抗は、水分が電解質膜50の内部で受ける抵抗であり、表面抵抗は、電解質膜50とアノード電極52及びカソード電極51の境界で受ける抵抗(つまり境界抵抗)である。相対湿度が大きくなるほど、水移動抵抗は減少するが、水移動抵抗に占める表面抵抗の比率は、相対湿度によらず、内部抵抗の比率より大きい。
ΔC/Flux=(1/kA)+(d/Dm)+(1/kC) ・・・(1)
水移動抵抗は上記の式(1)で表される。式(1)において、ΔCは水分濃度差(mol/cm3)であり、Fluxは水移動量(mol/cm2/sec)である。また、kAはアノード電極52側の物質移動係数であり、kCはカソード電極51側の物質移動係数である。また、Dmは電解質膜50の水拡散係数(cm)であり、dは電解質膜50の厚さ(cm)である。
式(1)において、1/kAはカソード電極51側の表面抵抗であり、1/kCはアノード電極52側の表面抵抗である。また、d/Dmは内部抵抗である。
Sh=k・L/Dw ・・・(2)
Re=L・v・ρ/μ ・・・(3)
Sc=μ/(ρ・Dw) ・・・(4)
また、流体力学において、シャーウッド数Shは上記の式(2)で表され、レイノルズ数Reは上記の式(3)で表される。またシュミット数Scは上記の式(4)で表される。ここで、kは、物質移動係数であり、上記のkA及びkCに該当する。また、Lは、流体の流れる代表長さであり、狭幅部100a,200aの長さに該当する。また、Dwは水分の拡散係数であり、vは水分の流速である。また、ρは水分の密度であり、μは水分の粘度である。
Sh=0.644×Re0.5×Sc1/3 ・・・(5)
Sh=0.037×Re0.8×Sc1/3 ・・・(6)
また、一般的な半経験式として、平板上の層流に関するシャーウッド数Shは上記の式(5)で表され、平板上の乱流に関するシャーウッド数Shは上記の式(6)で表される。式(5)及び式(6)によると、シャーウッド数Shは、レイノルズ数Re及びシュミット数Scが大きいほど、大きくなる。また、式(3)によると、レイノルズ数Reは、水分の流速が速いほど、大きくなる。したがって、シャーウッド数Shは、水分の流速が速いほど、大きくなる。
また、式(2)によると、物質の移動係数kは、シャーウッド数Shが大きいほど、大きいため、式(1)の物質移動係数kA,kCは、水分の流速が速いほど、大きい。よって、電解質膜50の表面抵抗は、水分の流速が速いほど、小さくなる。
上述したように、酸化剤ガス及び水素ガスは狭幅部100a,200aにおいて加速するため、水分の電解質膜50における表面抵抗が低減される。これにより、水分が、狭幅部100a,200aの一方から他方に容易に移動することができるので、電解質膜50を十分に加湿することが可能となる。なお、本例では、カソード側流路溝100とアノード側流路溝200の両方に狭幅部100a,200aが設けられたが、カソード側流路溝100とアノード側流路溝200の少なくとも一方に狭幅部100a,200aを設けても上記の効果は得られる。
本例において、カソード側セパレータ1の流路溝群10内の酸化剤ガスの流れ方向とアノード側セパレータ2内の水素ガスの流れ方向は対向するが、これに限定されず、互いに直交してもよい。
図6は、セパレータ1,2の他の例を示す平面図である。図6において、図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6には、カソード側セパレータ1の面1aに、アノード側セパレータ2の面2aの水素ガスの流路溝群20、供給孔26a、及び排出孔21aを重ねた状態が示されている(点線参照)。つまり、図6には、MEA5を挟持したときの一対のセパレータ1,2の面1a,2aにおける流路溝群10,20、供給孔13a,26a、及び排出孔14a,21aが示されている。
水素ガスの供給孔26a及び排出孔21aは、アノード側セパレータ2の対向する一組の辺にそれぞれ沿って設けられている。また、酸化剤ガスの供給孔13a及び排出孔14aは、カソード側セパレータ1の対向する一組の辺の一端の近傍に設けられている。酸化剤ガスの供給孔13aは、セパレータ1,2同士を重ねたときに水素ガスの排出孔21aの近傍に位置するように設けられている。また、酸化剤ガスの排出孔14aは、セパレータ1,2同士を重ねたときに水素ガスの供給孔26aの近傍に位置するように設けられている。
酸化剤ガスの流路溝群10は、供給孔13aから排出孔14aに向かい蛇行するように設けられている。本例の流路溝群10は、供給孔13aから排出孔14aに至るまでに2か所で方向転換しているが、方向転換の箇所数は限定されない。また、水素ガスの流路溝群20は、供給孔26aから排出孔21aに向かい真っ直ぐに延びている。
カソード側セパレータ1の中流域流路溝群10aとアノード側セパレータ2の中流域流路溝群20aは、MEA5を挟んで対向する。また、カソード側セパレータ1の上流域流路溝群10bとアノード側セパレータ2の下流域流路溝群20cは、MEA5を挟んで対向し、カソード側セパレータ1の下流域流路溝群10cとアノード側セパレータ2の上流域流路溝群20bは、MEA5を挟んで対向する。
セパレータ1,2の面1a,2aを見たときにカソード側セパレータ1の上流域流路溝群10bとアノード側セパレータ2の下流域流路溝群20cが交差する部分には、上記の例と同様に狭幅部100a,200aが設けられている。また、セパレータ1,2の面1a,2aを見たときにカソード側セパレータ1の下流域流路溝群10cとアノード側セパレータ2の上流域流路溝群20bが交差する部分には、上記の例と同様に狭幅部100a,200aが設けられている。
したがって、本例においても上記の例と同様の効果が得られる。また、以下の例のように、酸化剤ガスの流路溝群10と水素ガスの流路溝群20を本例とは逆にしてもよい。
図7は、セパレータ1,2の他の例を示す平面図である。図7において、図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7には、カソード側セパレータ1の面1aに、アノード側セパレータ2の面2aの水素ガスの流路溝群20、供給孔26b、及び排出孔21bを重ねた状態が示されている(点線参照)。つまり、図7には、MEA5を挟持したときの一対のセパレータ1,2の面1a,2aにおける流路溝群10,20、供給孔13b,26b、及び排出孔14b,21bが示されている。
酸化剤ガスの供給孔13b及び排出孔14bは、カソード側セパレータ1の対向する一組の辺にそれぞれ沿って設けられている。また、水素ガスの供給孔26b及び排出孔21bは、アノード側セパレータ2の対向する一組の辺の一端の近傍に設けられている。水素ガスの供給孔26bは、セパレータ1,2同士を重ねたときに酸化剤ガスの排出孔14bの近傍に位置するように設けられている。また、水素ガスの排出孔21bは、セパレータ1,2同士を重ねたときに酸化剤ガスの供給孔13bの近傍に位置するように設けられている。
水素ガスの流路溝群20は、供給孔26bから排出孔21bに向かい蛇行するように設けられている。本例の流路溝群20は、供給孔26bから排出孔21bに至るまでに2か所で方向転換しているが、方向転換の箇所数は限定されない。また、酸化剤ガスの流路溝群10は、供給孔13bから排出孔14bに向かい真っ直ぐに延びている。
カソード側セパレータ1の中流域流路溝群10aとアノード側セパレータ2の中流域流路溝群20aは、MEA5を挟んで対向する。また、カソード側セパレータ1の上流域流路溝群10bとアノード側セパレータ2の下流域流路溝群20cは、MEA5を挟んで対向し、カソード側セパレータ1の下流域流路溝群10cとアノード側セパレータ2の上流域流路溝群20bは、MEA5を挟んで対向する。
セパレータ1,2の面1a,2aを見たときにカソード側セパレータ1の上流域流路溝群10bとアノード側セパレータ2の下流域流路溝群20cが交差する部分には、上記の例と同様に狭幅部100a,200aが設けられている。また、セパレータ1,2の面1a,2aを見たときにカソード側セパレータ1の下流域流路溝群10cとアノード側セパレータ2の上流域流路溝群20bが交差する部分には、上記の例と同様に狭幅部100a,200aが設けられている。
したがって、本例においても上記の例と同様の効果が得られる。
これまで述べたように、MEA5を挟んで対向する上流域流路溝群10b,20b及び下流域流路溝群10c,20cの少なくとも一方は、一対のセパレータ1,2のMEA5に対向する面1a,2aを見たときに上流域流路溝群10b,20b及び下流域流路溝群10c,20cの他方と交差する部分の溝幅が他部分より狭い。より具体的には、上流域流路溝群10b,20b及び下流域流路溝群10c,20c交差部分には狭幅部100a,200aが設けられている。
酸化剤ガス及び水素ガスは狭幅部100a,200aにおいて加速するため、水分の電解質膜50における表面抵抗が低減される。これにより、水分が、狭幅部100a,200aの一方から他方に容易に移動することができるので、電解質膜50を十分に加湿することが可能となる。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。