JP6732368B2 - アルカリホスファターゼ及びその製造方法 - Google Patents

アルカリホスファターゼ及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱安定性に優れた牛小腸由来高活性アルカリホスファターゼに関する。
アルカリホスファターゼ(EC 3.1.3.1)は、アルカリ性に至適pHを有する、基質選択性の低いホスホモノエステラーゼである。アルカリホスファターゼの多くは活性中心に亜鉛を有しており、大腸菌等の原核生物から哺乳動物等の真核高等生物にいたるまで、自然界に広く存在することが知られている。
アルカリホスファターゼは分子生物学分野や免疫診断分野において汎用されている有用性の高い酵素である。例えば分子生物学分野では、仔牛小腸由来のアルカリホスファターゼ(Calf Intestinal Alkaline Phosphatase;以下CIAPと表記)や北極小エビ由来のアルカリホスファターゼや大腸菌由来のアルカリホスファターゼ等が、DNAまたはRNAの5’末端の脱リン酸化に利用されている。またヒト胎盤由来のアルカリホスファターゼ(特に分泌型に改変したもの)は、宿主細胞への外来遺伝子導入の効率を判定するためのレポーターとして利用されている。
アルカリホスファターゼの中でもCIAPは比活性が高いため免疫診断分野用途での有用性が高く、チャイニーズハムスター卵巣細胞(以下CHO細胞と表記)(非特許文献1)やメタノール資化性酵母(特許文献1)を宿主細胞とした、組換えCIAPの生産が開示されている。
Manesらは、牛小腸から調製したcDNAライブラリーからアルカリホスファターゼ遺伝子をクローニングし、牛小腸由来アルカリホスファターゼ(Bovine Intestinal Alkaline Phosphatase;以下bIAPと表記))がIからVIIまでのアイソマーからなることを明らかにし、さらにIからIVのアイソマーの生化学的分析を行っている(非特許文献1)。bIAPIからIVのアイソマーのアミノ酸配列は、非常に相同性が高く、56箇所に相違があるのみであり、bIAPIとIIの比較では、24箇所に相違があるのみであった。しかしながらこれら4種類のアイソマーの生化学的性質は大きく異なっており、bIAPII(CIAP)は、bIAPIからIVのアイソマーの中で最も高活性であるが、熱安定性は低く(T50(10min)=59℃)、一方、bIAPIは、最も熱安定性は高い(T50(10min)=66℃)が、比活性はbIAPIIの1/3以下であった(特許文献2)。bIAPIとbIAPIIのアミノ酸配列の相違に着目し、bIAPIとbIAPIIの変異体を作製し、比活性と熱安定性に有効な変異を検証した結果、高活性化には322位がグリシンであること、熱安定化には322位がアスパラギン酸であることが重要であった。ところが、bIAPIの322位をグリシンに置換した変異体((Gly322)bIAPI)は、比活性は、bIAPII並に向上したが、熱安定性は低下し、bIAPIとbIAPIIの間になった。さらにbIAPIIの322位をアスパラギン酸に置換した変異体((Asp322)bIAPII)は、熱安定性は向上し、bIAPIとbIAPIIの間になったが、比活性はbIAPI並に低下した。bIAPI並に熱安定性が高く、かつ、bIAPII並に高活性であるアルカリホスファターゼ変異体は得られていない。
特許第3657895号公報 特許第4295386号公報
Manesら、J.Biol.Chem.、273(36)、23353−23360(1998)
本発明の課題は、熱安定性に優れた高活性アルカリホスファターゼを提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、bIAPIIの322位がアスパラギン酸、323位がリジンもしくはアスパラギン、385位がセリンもしくはグリシンもしくはアスパラギン、430位がアラニンであるbIAPII変異体が、熱安定性に優れ、かつ高比活性であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の態様を包含する。
(1) 配列番号4から8のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むアルカリホスファターゼ(以下、本発明のアルカリホスファターゼと称する)。
(2) 本発明のアルカリホスファターゼをコードするポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチドと称する)。
(3)本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター(以下、本発明の発現ベクターと称する。)。
(4)本発明の発現ベクターを有する形質転換細胞((以下、本発明の細胞と称する。)。
(5)本発明の細胞が、大腸菌、もしくはチャイニーズハムスター卵巣細胞である(4)に記載の細胞。
(6)本発明の細胞を培養し、得られた培養液からアルカリホスファターゼを回収する、アルカリホスファターゼの生産方法(以下、本発明のアルカリホスファターゼ生産方法と称する。)。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアルカリホスファターゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列であるbIAPIIの322位がアスパラギン酸であり、430位がアラニンである配列番号3に記載のアミノ酸配列のうち以下の(1)および/または(2)に記載のアミノ酸置換が生じたアミノ酸配列を含むアルカリホスファターゼである。
(1)K323N (2)S385G/N
具体的には、配列番号4から8のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むアルカリホスファターゼを例示でき、当該ポリペプチドのN末端側および/またはC末端側にオリゴペプチドの付加された誘導体も包含している。bIAPを含め哺乳動物由来のアルカリホスファターゼの多くは膜結合性のため、アルカリホスファターゼのC末端側20から30アミノ酸残基にGPIアンカー領域を有しているが、分泌発現させるためにGPIアンカー領域を除去してもよい。
さらに精製や検出を容易にするため、N末端側および/またはC末端側にタグ配列を付加してもよい。タグ配列としては、Hisタグ、Mycタグ、HAタグ、FLAGタグが例示できる。N末端側および/またはC末端側にタグ配列を付加した本発明のアルカリホスファターゼの具体例として、配列番号11および12をあげることができる。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のアルカリホスファターゼをコードする塩基配列である。アミノ酸をコードする塩基配列は複数あるため、翻訳された結果同一のアミノ酸になるポリヌクレオチドは本発明に含有されるが、宿主細胞での使用頻度の高いコドンを用いたポリヌクレオチドであることが好ましい。本発明のポリヌクレオチドの具体例として、配列番号13から17のいずれかに記載のポリヌクレオチドをあげることができる。
本発明の発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを機能発現させるための環状または直鎖状のポリヌクレオチドである。本発明の発現ベクターの構成要素としては、本発明のポリヌクレオチド、およびその5’末端側にインフレームに連結したシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドに加えて、転写活性化配列(プロモーター/エンハンサー)、転写終結配列、薬剤耐性や栄養要求性などのマーカー遺伝子、宿主細胞内でプラスミドとして増殖するために必要な複製開始点などが含まれる。ここでインフレームに連結とは、(ポリ)ペプチドをコードするポリヌクレオチド同士が同じ読み取り枠で翻訳されるように配置することを指す。
シグナルペプチドは、トランスフェクションに用いる細胞において本発明のアルカリホスファターゼを分泌発現するものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、マウスMMP−9由来のシグナルペプチド(特開2014−180222号公報)を例示できる。
本発明のアルカリホスファターゼをコードするポリヌクレオチド、および当該ポリヌクレオチドの5’末端側にインフレームで連結されたシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、化学合成やcDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による酵素合成などを組み合わせることで合成できる。
前記ポリヌクレオチドを用いて発現ベクターを作製する際は、その上流に転写活性化配列(プロモーター/エンハンサー)を配置すると好ましい。転写活性化配列はトランスフェクションに用いる細胞で機能するものであれば特に限定されるものではなく、恒常的に活性化されているものであっても、外部条件によって活性を調節可能なものであってもよい。恒常的に活性化されているものとしては、T7プロモーター、LacUV5プロモーター、Ticプロモーター、Trcプロモーター、Tacプロモーター、ヒトサイトメガロウィルスプロモーター(CMVプロモーター)、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、SRαプロモーター、ヒト伸長因子1−αプロモーター、ウシ成長ホルモンプロモーター、β−アクチンプロモーター、ハムスターユビキチン/S27aプロモーターなどが例示でき、調節可能なものとしては、TREプロモーター(クロンテック社製)、T−REXプロモーター(インビトロジェン社製)などが例示できる。
マーカー遺伝子は、トランスフェクションに用いる細胞において発現可能な選択マーカーをコードする遺伝子の中から適宜選択されたものであれば良く、具体的には、カナマイシン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、β−ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン/カルベニシリン耐性遺伝子)ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(ネオマイシン抵抗性遺伝子)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(ハイグロマイシンB抵抗性遺伝子)、ブラスティサイジンSデアミナーゼ遺伝子(ブラスティサイジン抵抗性遺伝子)といった薬剤耐性遺伝子、グルタミンシンセターゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子といった栄養要求性に関わる遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子など光学的な識別を可能にする遺伝子等を例示できる。
本発明の発現ベクターは、大腸菌で働くcolE1複製開始点のような、動物細胞以外で働く複製開始点を含んでもよい。この場合には、β−ラクタマーゼ遺伝子とcolE1複製開始点とを含んだ、本発明の発現ベクターを大腸菌にトランスフェクションし、当該組換え大腸菌をカルベニシリン入りの培地で培養することで、本発明の発現ベクターを大量に調製することができる。例えば、プラスミドpOtiVEC−TOPO(ライフテクノロジーズ社製)やプラスミドpECEdhfrなどから、本発明の発現ベクターを好適に調製することができる。プラスミドpECEdhfrは、Yasukawaら、J.Biochem.、第108巻,673−676ページ(1990年)に記載の方法に従って入手することが出来る。
次に本発明の細胞及び本発明のアルカリホスファターゼ生産方法について説明する。本発明の発現ベクターをトランスフェクションされる宿主細胞は、大腸菌ではK−12株やそれに由来する任意の菌株 (JM109、HB101、W3110、C600など)、T7RNAポリメラーゼを発現しているもの(例えばBL21(DE3))、哺乳動物細胞では、ヒト胎児腎臓細胞(例えば、HEK293細胞)、イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS−7細胞)、マウスミエローマ細胞(例えば、SP2/0細胞、P3U1細胞)及びチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)が例示できる。CHO細胞の株に特に限定はなく、CHO−K1細胞(ATCC No.CCL−61)、CHO−S細胞、dhfr遺伝子欠損株であるDG44細胞やDXB11細胞が例示できる。より好ましくは、大腸菌では、DH5α、CHO細胞では、DG44細胞をあげることができる。
本発明の発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクションするには、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法などの当業者が通常用いる方法の中から適宜選択して行なえばよい。トランスフェクションに用いる本発明の発現ベクターは環状のポリヌクレオチドであってもよく、適切な制限酵素で消化することにより得られた直鎖状のポリヌクレオチドであってもよい。例えば、プラスミドpOtiVEC−TOPO中に1ヶ所存在する制限酵素PvuIの認識部位はベクターを直鎖状にする目的で用いることができる。この場合には、pOtiVEC−TOPOに挿入するポリヌクレオチド中に制限酵素PvuIの認識部位を含まないよう設計するとよい。
本発明の発現ベクターをトランスフェクションして得られた形質転換細胞は、当業者が通常用いる方法で単クローン化し、単クローン化した細胞を培養して得られた培養液中のアルカリホスファターゼ活性を指標にして選抜することで、所望のアルカリホスファターゼ生産性を有した組換え細胞を取得することができる。なお前記選抜した組換え細胞に対して、さらに本発明の発現ベクターを導入し、そこから単クローン化した組換え細胞を培養することで、アルカリホスファターゼ活性が更に上昇した組換え細胞を選抜してもよい。
また本発明の発現ベクターに共発現可能な選択マーカーが含まれている場合、当該選択マーカーに対応した選択培地で培養することにより、当該選択マーカーが発現している組換え細胞群を選択することができ、当該選択した細胞群を単クローン化後、培養液中のアルカリホスファターゼ活性を指標にして選抜することもできる。一例として、共発現可能なdhfr遺伝子を含む本発明の発現ベクターをdhfr遺伝子欠損CHO細胞にトランスフェクションし、ヒポキサンチンおよびチミジンを含まない選択培地で培養し、dhfr遺伝子が発現している細胞群を増殖させ、当該細胞群から単クローン化した細胞を培養して培養液中のアルカリホスファターゼ活性を指標にして選抜することで所望のアルカリホスファターゼ生産性を有した組換え細胞を取得することができる。なお選択マーカーとしてdhfr遺伝子を用いた場合、組換え細胞をメトトレキサート(MTX)を含んだ培地で培養し、導入した遺伝子の増幅を誘導することで、アルカリホスファターゼ活性が更に上昇した組換え細胞を選抜することができる。
アルカリホスファターゼ活性は、当業者が通常用いる一般的な方法により測定することが出来る。具体的な測定方法には、例えばp−ニトロフェニルリン酸を基質に用いた加水分解反応を挙げることが出来る。その一例として、反応温度25℃で、pH9からpH10の緩衝液(例えば、0.1Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.6))中で、アルカリホスファターゼ活性による加水分解反応で生じるp−ニトロフェノールを波長405nmにおける吸光度で定量することにより、酵素活性を算出する方法が挙げられる。なお前記緩衝液に、ウシ血清アルブミンのような酵素活性への影響が少ないタンパク質や、塩化マグネシウムのようなマグネシウム塩や、塩化亜鉛のような亜鉛塩などを適量加えてもよい。アルカリホスファターゼ活性測定の具体的態様の例として、試料溶液5μLを加えたマイクロウェルプレート(NUNC社製、カタログ番号269620)に、10mMのp−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩(以下pNPPと略記する)と、0.1%ウシ血清アルブミン(SIGMA社製、カタログ番号A7030)と、0.1mM塩化マグネシウムと、0.01mM塩化亜鉛とを含んだ、0.1Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.6)(pNPP基質溶液)を100μL添加し、25℃で一定時間保温後、0.5Mの水酸化ナトリウム100μLを加えることで反応を停止し、Infinite M200(Tecan Systems社製)を用いて波長405nmにおける吸光度を測定した後、アルカリホスファターゼを含まない試料溶液を用いて同様に得た測定値の吸光度を差し引くことで測定する方法があげられる。試料溶液の濃度や反応の時間は実験的に最適化すればよく、吸光度の値が2以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下になるように条件を定めればよい。
アルカリホスファターゼの比活性は、精製品を調製し、タンパク質量とアルカリホスファターゼ活性を測定することで算出できる。また、アルカリホスファターゼに前述のタグ配列を付加し、それらに対する抗体を利用することでも算出することができる。例えば、C末端側にHisタグ、N末端側にMycタグを付加したアルカリホスファターゼの場合、C末端側のHisタグを特異的に認識する市販の抗Hisタグ抗体とN末端側のMycタグを特異的に認識する市販の抗Mycタグ抗体を利用すればよく、両抗体のうち、いずれかの抗体が、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;horseradish peroxidase)で標識されたものを用いることが好ましい。未標識の抗タグ抗体を担体(例えばマイクロウェルプレート)に固定化し、ウシ血清アルブミンを用いてブロッキング後、適度に希釈したN末端側にMycタグ、C末端側にHisタグを付加したアルカリホスファターゼを含む試料溶液を添加し一定時間反応後、B/F(Bound/Free)分離を行ない、pNPP基質溶液と反応させ、固定化した抗タグ抗体に結合したアルカリホスファターゼの活性を比色定量し、B/F分離後、HRP標識された抗タグ抗体と一定時間反応後、B/F分離を行ない、HRPの基質(例えば3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB))を作用させてHRPの活性を比色定量し、C末端側にHisタグ、N末端側にMycタグを付加したbIAPIIのアルカリホスファターゼ活性の比色定量値をHRP活性の比色定量値で割った値を基準にして、測定対象の比活性を相対値として求めることができる。
本発明の細胞を培養するための培地は、当業者が通常用いる培地中から適宜選択すればよく、大腸菌では、LB(Luria−Bertani)培地、2xYT培地、M9培地、哺乳動物細胞では、Roswell Park Memorial Institute(RPMI) 1640培地、L−15培地、ダルベッコの修正イーグル培地(DMEM;Dulbecco’s modified Eagle’s medium)、イーグルの最小必須培地(MEM;Eagle’s minimal essential medium)、ハムのF12培地、にそれぞれ5から10%容量のウシ胎児血清を加えた培地を例示できる。また分泌生産されたアルカリホスファターゼを効率よく精製するために、ウシ胎児血清を添加しない、いわゆる無血清培地を使用してもよい。なお無血清培地を使用する場合、多くの細胞の生育に必要とされるインシュリンやトランスフェリンを添加すると好ましい。さらに上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、インシュリン様成長因子IおよびII(IGFIおよびIGFII)等の成長因子や、プロスタグランジンや、セルロプラスミンや、高密度リポタンパク質や、低密度リポタンパク質や、ウシ血清アルブミンや、脂肪酸等を、本発明の細胞の生育や、アルカリホスファターゼの分泌生産や、アルカリホスファターゼの精製に好ましい範囲で培地に添加してもよい。具体例として本発明の細胞がdhfr遺伝子欠損CHO細胞であるDG44細胞の場合には、ヒポキサンチンとチミジンを含んでいる培地、例えばCD CHO培地(商品名、ライフテクノロジーズ社製)にグルタミンを添加した培地を用いて培養するとよく、dhfr遺伝子を含むDG44細胞の場合には、ヒポキサンチンとチミジンを含んでいない培地、例えば、CD OptiCHO培地(商品名、ライフテクノロジーズ社製)にグルタミンを添加した培地を用いて培養するとよい。なおプルロニックF68(商品名、ライフテクノロジーズ社製)のような非イオン性界面活性剤や、市販のペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液を適宜培地に加えてもよい。
本発明の細胞を培養する際の、容器、温度、CO2濃度、振とう条件(エアレーション)などの外的な培養条件に特に制限はなく、例えば、本発明の細胞が大腸菌の場合、培養液10mLを入れた125mL容のバッフル付き三角フラスコで、温度30℃、振とう速度150rpmで培養することで、効率よく本発明の細胞を培養することができる。本発明の細胞がDG44細胞の場合、培養液30mLを入れた200mL容のフラスコで、温度37℃、CO2濃度8%、振とう速度135rpmで培養することで、効率よく本発明の細胞を培養することができる。培養液中の細胞密度の測定は、当業者が通常用いる方法の中から適宜選択して測定すればよい。例えば、細胞が懸濁している培養液を採取し、採取した培養液と同容量の市販のトリパンブルー染色液(例えば、商品名0.4w/v% Trypan Blue Solution、和光純薬社製)と混合して、染色されない細胞(生細胞)の数を、顕微鏡下で溶液血球計算盤を用いて計測し算出すればよい。
本発明の細胞の培養液から、アルカリホスファターゼを回収するには、当業者が通常用いる方法の中から適宜選択/組み合わせて行なえばよい。回収方法の一例として、遠心分離、限外ろ過膜を用いた濃縮、硫安塩析、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、または前述した方法を組み合わせた方法があげられる。なおアルカリホスファターゼのN末端側および/またはC末端側にタグを付加している場合は、前記の方法に加え、タグに対する親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーを組み合わせて精製してもよい。
本発明のアルカリホスファターゼ、本発明のポリヌクレオチド、本発明の発現ベクター、本発明の細胞及び本発明のアルカリホスファターゼ生産方法を用いることにより、熱安定性に優れた高活性アルカリホスファターゼを効率的に生産することができる。
プラスミドpCIPm2092H2の模式図である。 プラスミドpECEdhfr2の模式図である。 プラスミドpCIP400−1001H2の模式図である。 プラスミドpCIP434−m1001H2の模式図である。 実施例9表5に記載のbIAPII変異体の比活性測定結果を示す図である。 実施例9表4に記載のbIAPII変異体の熱安定性試験結果を示す図である。 実施例9表5に記載のbIAPII変異体の熱安定性試験結果を示す図である。
以下に本発明を更に詳細に説明するために実施例を示すが、これら実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 プラスミド(発現ベクター)の作製
本検討に用いたプラスミド(発現ベクター)を、それぞれ以下に示す方法で作製した。
(A)プラスミドpCIP1000
(A−1)N末端側に仔牛小腸由来のアルカリホスファターゼ(CIP)のシグナルペプチド(配列番号18)を、C末端側にヒスチジン6個からなるHisタグを、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるbIAPIIに付加したポリペプチドをコードする配列番号19に記載のポリヌクレオチドを含むプラスミドである、pCIP−1をOPERON Biotechnologies社で合成し、これを鋳型とし、配列番号20に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#1)と配列番号21に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#2)をプライマーセットとして、Taq DNA polymerase(ライフテクノロジー社製)を用いてPCRを行なった。
(A−2)得られた1.5kbpのポリヌクレオチド(DNA−1)を、CMVプロモーターを用いた発現ベクターであるpOptiVEC−TOPO(ライフテクノロジーズ社製)のクローニングサイトに挿入した。
(A−3)(A−2)でDNA−1を挿入したプラスミドの塩基配列を調べた。結果、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号22)が挿入されたプラスミド(5.9kbp)であることを確認し、当該プラスミドをpCIP1000と名付けた。
(B)プラスミドpCIP1000H
pCIP−1を制限酵素EcoRIとMluIで二重消化して得た1.5kbpのポリヌクレオチド(DNA−2)と、pCIP1000を制限酵素EcoRIとMluIで二重消化して得た4.4kbpのポリヌクレオチド(DNA−3)をDNA Ligation Kit Mighty Mix(タカラバイオ社製)を用いてライゲーションすることで得たプラスミド(5.9kbp)をpCIP1000Hと名付けた。
(C)プラスミドpCIPm2092H
(C−1)pTrc99Aを制限酵素HindIIIで消化後、DNA BluntingKit(タカラバイオ社製)で平滑化し、それを制限酵素NcoIで消化して4.1kbpのポリヌクレオチド(DNA−4)を得た。
(C−2)配列番号23に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#3)、配列番号24に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#4)、配列番号25に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#5)、配列番号26に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#6)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるSalmonella typhimurium由来mglBのシグナルペプチドをコードする0.085kbpのオリゴヌクレオチド(DNA−5)を得た。
(C−3)配列番号28に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#7)、配列番号29に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#8)、配列番号30に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#9)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、Mycタグと配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるbIAPIIのN末端6アミノ酸をコードする0.069kbpのオリゴヌクレオチド(DNA−6)を得た。
(C−4)DNA−5とDNA−6を鋳型セットにして、配列番号23に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#3)と配列番号30に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#9)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるmglBシグナルペプチド、Mycタグおよび配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるbIAPIIのN末端6アミノ酸をコードする0.138kbpのオリゴヌクレオチド(DNA−7)を得た。
(C−5)DNA−4と、NA−7を制限酵素BspHIとBbvCIで二重消化して得たオリゴヌクレオチド(DNA−8)と、pCIP1000Hを制限酵素BbvCIとHpaIで二重消化して得た1.5kbpのポリヌクレオチド(DNA−9)をライゲーションすることで得たプラスミド(5.7kbp)をpCIPm2092H(図1)と名付けた。
(D)プラスミドpCIPm2092H2
(D−1)pCIPm2092Hを鋳型とし、配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#10)と配列番号32に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#11)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、1.5kbpのポリヌクレオチド(DNA−10)を得た。
(D−2)DNA−10を鋳型とし、配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#10)と配列番号33に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#12)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、1.5kbpのポリヌクレオチド(DNA−11)を得た。
(D−3)DNA−11を制限酵素BbvCIとAgeIで二重消化して得た1.5kbpのポリヌクレオチド(DNA−12)とpCIPm2092Hを制限酵素BbvCIとAgeIで二重消化して得た4.2kbpのポリヌクレオチド(DNA−13)をライゲーションすることで得たプラスミド(5.7kbp)をpCIPm2092H2と名付けた。pCIPm2092H2は、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるmglBシグナルペプチド、Mycタグおよび配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるbIAPII、および配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるヒスタグをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドである(図1)。
(E)プラスミドpCIPm2093H2
(E−1)配列番号34に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#13)、配列番号35に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#14)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.045kbpのオリゴヌクレオチド(DNA−14)を得た。
(E−2)pCIPm2092H2を鋳型とし、配列番号36に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#15)と配列番号37に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#16)、配列番号32に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−#11)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.535kbpのポリヌクレオチド(DNA−15)を得た。
(E−3)DNA−15とDNA−16をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.558kbpのオリゴヌクレオチド(DNA−16)を得た。
(E−4)DNA−16を制限酵素XmaIとSacIIで二重消化して得た0.5kbpのポリヌクレオチド(DNA−17)とpCIPm2092H2を制限酵素XmaIとSacIIで二重消化して得た5.2kbpのポリヌクレオチド(DNA−18)をライゲーションすることで得たプラスミド(5.7kbp)をpCIPm2093H2と名付けた。
pCIPm2093H2は、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるmglBシグナルペプチド、Mycタグ、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるbIAPII変異体(配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるbIAPIIの322位がアスパラギン酸に置換された変異体)および配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるヒスタグをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドである。
(F)プラスミドpECEdhfr2
(F−1)プラスミドpECEdhfr(Yasukawaら、J.Biochem.、108,673−676(1990))を鋳型とし、配列番号38に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−17)および配列番号39に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−18)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.37kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−18)を得た。
(F−2)DNA−18を鋳型とし、配列番号38に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−17)および配列番号40に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−19)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.39kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−19)を得た。
(F−3)プラスミドpECEdhfrを鋳型とし、配列番号41に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−20)および配列番号42に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−21)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.69kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−20)を得た。
(F−4)DNA−20を鋳型とし、配列番号43に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−22)および配列番号42に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−21)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.71kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−21)を得た。
(F−5)DNA−19を制限酵素MfeIとXbaIで二重消化し得られたポリヌクレオチド(DNA−22)と、DNA−21を制限酵素XbaIとPciIで二重消化して得られたポリヌクレオチド(DNA−23)と、プラスミドpECEdhfrを制限酵素EcoRIとPciIで二重消化し得られた2.8kbpのポリヌクレオチド(DNA−24)を、ライゲーションすることで、配列番号44に記載の塩基配列を含んだプラスミドpECEdhfr2を作製した。なおプラスミドpECEdhfr2は、プラスミドpECEdhfrのSV40後期(late)プロモーターとdhfr遺伝子の間にある制限酵素EcoRIの認識部位をなくし、かつ、SV40初期(early)プロモーターからSV40ポリAまでの領域を置換したプラスミドである(図2)。
(G)プラスミドpECEdhfr3
(G−1)pECEdhfr2を制限酵素KasIで消化後、DNA Ligation Kit Mighty Mix(タカラバイオ社製)を用いてライゲーションすることで、配列番号37に記載の塩基配列を含んだプラスミドpECEdhfr3を作製した。
(H)プラスミドpCIP400−1001H2
(H−1)pTrc99Aを鋳型とし、配列番号45に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−23)および配列番号46に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−24)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.063kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−25)を得た。
(H−2)配列番号47に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを鋳型とし、配列番号48に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−25)および配列番号49に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−26)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、マウスMMP−9由来のシグナルペプチド(配列番号50)をコードする0.075kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−26)を得た。
(H−3)pTrc99Aを鋳型とし、DNA−25とDNA−26をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.15kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−27)を得た。
(H−4)DNA−27を制限酵素Aor51HIとBglIIで二重消化して得られた0.14kbpのポリヌクレオチド(DNA−28)と、pCIPm2092H2を制限酵素Aor51HIとMluIで二重消化して得られた1.5kbpのポリヌクレオチド(DNA−29)と、pECEdhfr3を制限酵素BglIIとMluIで二重消化して得られた3.7kbpのポリヌクレオチド(DNA−30)をライゲーションすることで得たプラスミド(5.3kbp)をpCIP400−1001H2と名付けた。pCIP400−1001H2は、配列番号50に記載のアミノ酸配列からなるマウスMMP−9由来のシグナルペプチド、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるbIAPIIおよび配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるヒスタグをコードするポリヌクレオチドを含むプラ
スミドである(図3)。
(I)プラスミドpCIP434−m1001H2
(I−1)pCIP400−1001H2を鋳型とし、配列番号51に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−27)および配列番号52に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−28)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.3kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−31)を得た。
(I−2)DNA−31と配列番号53に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−29)をプライマーセットとして、PrimeSTAR HS DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行ない、0.33kbpの増幅産物(ポリヌクレオチド)(DNA−32)を得た。
(I−3)DNA−32を制限酵素SfiIとAor51HIで二重消化して得られた0.3kbpのポリヌクレオチド(DNA−33)と、pCIP400−1001H2を制限酵素SfiIとAor51HIで二重消化して得られた5.1kbpのポリヌクレオチド(DNA−34)をライゲーションすることで得たプラスミド(5.4kbp)をpCIP434−m1001H2と名付けた。pCIP434−m1001H2は、配列番号50に記載のアミノ酸配列からなるマウスMMP−9由来のシグナルペプチド、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるMycタグ、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるbIAPII、および配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるヒスタグをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドである(図4)。
実施例2 変異導入
エラープローンPCR法による変異導入
pCIPm2093H2を鋳型(50ng/μl)として、配列番号54に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−30)(0.4μM)、配列番号55に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(Primer−31)(0.4μM)、0.08mM MnCl、5mM MgCl、0.2mM dATP、0.2mM dGTP、1mM dCTP、1mM dTTP、5unit Go Taq DNA Polymerase(プロメガ株式会社)を混合し、95℃で2分加熱後、95℃(30秒)、60℃(30秒)、72℃(88秒)のPCR反応を30サイクル繰り返した。1.4kbpの増幅産物をアガロース電気泳動により回収後、制限酵素BbvCIとSacIIで二重消化した。
実施例3 大腸菌での高活性変異体のスクリーニング
実施例2のエラープローンPCR法による変異導入で調製した制限酵素消化物とpCIPm2093H2を制限酵素BbvCIとSacIIで二重消化して得た4.3kbpのポリヌクレオチド(DNA−35)をライゲーションして得たプラスミドを大腸菌DH5α(ニッポンジーン社製)にトランスフェクションし、2mM MgCl、40μg/ml BCIP(5−bromo−4−chloro−3−indolyl phosphate disodium salt)、50μg/ml Carbenicillin Naを含むLB寒天培地にて28℃で培養した。青く呈色したコロニーを、1mM MgCl、25μg/ml Carbenicillin Naを含む1/2濃度のLB培地にて28℃で培養し、菌濁度(OD600)と培養液中のアルカリホスファターゼ活性を測定し、菌濁度あたりのアルカリホスファターゼ活性の高い菌を回収した。
実施例4 大腸菌ペリプラズム画分の調製
実施例3で回収した大腸菌を5mM MgCl、50μg/ml Carbenicillin Naを含む4xYT培地(BactoTrypton 3.2%、Yeast Extract 2%、NaCl 0.5%)にて28℃で培養後、遠心分離(3,500rpm、10min)して菌を回収した。
その菌を菌濁度(OD600)が100となるように、20%ショ糖、0.15M KCl、0.1mg/ml 卵白リゾチームを含む0.03M Bicine−NaOH緩衝液(pH8.0)[以下、SKB溶液という]に懸濁し、4℃で24時間以上インキュベートした。菌懸濁液を遠心分離(12,000rpm、10min)して上清を回収後、ポアサイズ0.45μmのカートリッジフィルターでろ過した。そのろ液をペリプラズム画分とした。
実施例5 大腸菌で生産したbIAPII変異体の比活性測定
抗c−Myc抗体(Roche社製)を0.4μg/mlに希釈し100μlずつ96ウェルイムノプレート(NUNC社製 MAXISORP 430341)に添加し、抗体固定化プレートを作製した。それに実施例4で調製したペリプラズム画分を添加し、一時間インキュベートした。プレートを洗浄後、pNPP溶液を添加し室温下で波長405nmの吸光度をモニタリングし吸光度増加速度(OD405/min)を求めた。抗c−Myc抗体固定化プレートに実施例4で調製したペリプラズム画分を添加し、一時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、HRP標識抗ヒスタグ抗体(Bethyl社製)を添加し、一時間インキュベートした。プレートを洗浄後、TMB溶液を添加し室温下で波長620nmの吸光度をモニタリングし吸光度増加速度(OD620/min)を求めた。pNPPを基質にした吸光度増加速度(OD405/min)の値を、TMBを基質にした吸光度増加速度(OD620/min)の値で割った値(OD405/OD620)を比活性として表し、対照サンプルと比較した。
実施例6 配列解析
実施例5の比活性測定の結果選択されたbIAPII変異体を生産する大腸菌よりプラスミドを抽出し、配列解析を行った。その結果、配列番号2に記載のアミノ酸配列の430位のグルタミン酸がアラニンに置換されていた。このプラスミドをpCIPm2103H2と名付けた。
Figure 0006732368
実施例7 多重変異体の作製(1)
実施例6で得られたpCIPm2103H2を鋳型として用い、実施例2に記載の変異導入、実施例3に記載の大腸菌での高活性変異体のスクリーニング、実施例4に記載の大腸菌ペリプラズム画分の調製、実施例5に記載の比活性測定、実施例6に記載の配列解析を実施した結果、配列番号3に記載のアミノ酸配列の323位がアスパラギン(N)、385位のセリンがグリシン(G)、アスパラギン(N)に置換された多重変異体が得られた。これらのプラスミドをそれぞれpCIPm2157H2、pCIPm2155H2、pCIPm2156H2と名付けた。
Figure 0006732368
実施例8 多重変異体の作製(2)
実施例7で得られたbIAPII多重変異体のアミノ酸置換を掛け合わせた多重変異体を作製した。pCIPm2155H2、pCIPm2156H2を制限酵素PstIとMluIで二重消化して得た0.4kbpのポリヌクレオチド(DNA−36、DNA−37)とpCIPm2157H2を制限酵素PstIとMluIで二重消化して得た5.3kbpのポリヌクレオチド(DNA−38)をライゲーションすることで得たプラスミド(5.7kbp)をpCIPm2158H2、pCIPm2159H2と名付けた。
Figure 0006732368
実施例9 変異体遺伝子の発現べクターへの載せ変え
実施例3から8の結果、得られたbIAPII多重変異体のプラスミドを制限酵素BbvCIとMluIで二重消化し、1.4kbpのポリヌクレオチド(DNA−39)を回収した。実施例1(H)で作製したpCIP400−1001H2を制限酵素BbvCIとMluIで二重消化し、3.9kbpのポリヌクレオチド(DNA−40)を回収した。実施例1(I)で作製したpCIP434−m1001H2を制限酵素BbvCIとMluIで二重消化し、3.9kbpのポリヌクレオチド(DNA−41)を回収した。DNA−39とDNA−40、DNA−39とDNA−41をライゲーションすることで、以下に示すプラスミドを作製した。
Figure 0006732368
Figure 0006732368
実施例10 CHO細胞へのトランスフェクションおよびbIAPII変異体の生産
(1)実施例9で作製したプラスミドを制限酵素PvuIで消化することで直鎖化後、FreeStyle MAX試薬(ライフテクノロジーズ社製)を使用したリポフェクション法によりチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)であるDG44細胞に導入した。
(2)プラスミドを導入したDG44細胞を、8mMのグルタミンおよび0.18%のPluronic F−68(ライフテクノロジーズ社製)を含んだCD CHO培地(培地1)で、温度37℃、CO2濃度8%、回転振とう速度135rpmで3日間培養した。
(3)培養液を低速(900rpm)で遠心分離することで培養細胞を回収後、8mM グルタミンおよび0.18% Pluronic F−68を含んだCD OptiCHO培地(培地2)に懸濁して(培地交換1回目)、7日間培養を継続した。
(4)(3)と同様にして、培養細胞を回収後、培地2に懸濁して(培地交換2回目)、7日間培養を継続した。
(5)(3)と同様にして、培養細胞を回収後、培地2に懸濁して(培地交換3回目)、7日間培養を継続した。
(6)(3)と同様にして、培養細胞を回収後、培地2に懸濁して(培地交換4回目)、7日間培養を継続した。
(7)(6)の7日目の培養液を遠心分離(12,000rpm、10min)して培養上清を回収した。
実施例11 CHO細胞で生産したbIAPII変異体の比活性測定
抗ヒスタグ抗体(和光純薬社製)を0.5μg/mlに希釈し100μlずつ96ウェルイムノプレート(NUNC社製 MAXISORP 430341)に添加し、抗体固定化プレートを作製した。それに実施例10で調製した、N末端に配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるMycタグ、C末端に配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるヒスタグが付加された実施例9表5に記載のbIAPII変異体を含んだ培養上清を添加し、一時間インキュベートした。プレートを洗浄後、pNPP溶液を添加し室温下で波長405nmの吸光度をモニタリングし吸光度増加速度(OD405/min)を求めた。抗ヒスタグ抗体固定化プレートに実施例10で調製した、N末端に配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるMycタグ、C末端に配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるヒスタグが付加された実施例9表5に記載のbIAPII変異体を含んだ培養上清を添加し、一時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、HRP標識抗c−Myc抗体(和光純薬社製)を添加し、一時間インキュベートした。プレートを洗浄後、TMB溶液を添加し室温下で波長620nmの吸光度をモニタリングし吸光度増加速度(OD620/min)を求めた。pNPPを基質にした吸光度増加速度(OD405/min)の値を、TMBを基質にした吸光度増加速度(OD620/min)の値で割った値(OD405/OD620)を比活性として表し、対照サンプルと比較した。
比活性測定の結果を図5に示す。配列番号4から8に記載のbIAPII変異体は、配列番号1に記載のbIAPIIと同等の比活性を示した。
実施例12 CHO細胞で生産したbIAPII変異体の熱安定性試験
実施例10で調製した、bIAPII変異体を含んだ培養上清をアルカリホスファターゼ活性が同等になるように実施例10に記載の培地2で希釈後、7.5μlずつPCR8連チューブ(eppendorf社製)に分注した。それらをGeneAmp PCR system9700(Applied Biosystems社製)で55℃から70℃で10分間加温後、氷冷した。それらにpNPP溶液を150μL添加し、室温で一定時間保温後、それらのうちの100μLを0.5Mの水酸化ナトリウム100μLと混合することで反応を停止し、波長405nmにおける吸光度を測定した。未加温のサンプルの活性を100%としたときの各温度での加温サンプル中の残存活性を示す。
実施例9表4に記載のbIAPII変異体の熱安定性試験結果を図6に示す。配列番号4から8に記載のアミノ酸配列からなるbIAPII変異体のC末端に配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるヒスタグが付加した本発明のアルカリホスファターゼは、bIAPIIと同等以上の熱安定性を示した。
実施例9表5に記載のbIAPII変異体の熱安定性試験結果を図7に示す。配列番号4から8に記載のアミノ酸配列からなるbIAPII変異体のN末端に配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるMycタグが付加し、それらのC末端に配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるヒスタグが付加した本発明のアルカリホスファターゼは、bIAPIIと同等以上の熱安定性を示した。

Claims (6)

  1. 配列番号4から8のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むアルカリホスファターゼのN末端に配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるMycタグ、及び、C末端に配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるHisタグが付加されたアルカリホスファターゼ誘導体。
  2. 請求項1に記載のアルカリホスファターゼ誘導体をコードするポリヌクレオチド。
  3. 請求項2に記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクター。
  4. 請求項3に記載の発現ベクターを有する形質転換細胞。
  5. 大腸菌またはチャイニーズハムスター卵巣細胞である請求項4に記載の形質転換細胞。
  6. 請求項4または5に記載の形質転換細胞を培養し、得られた培養液からアルカリホスファターゼ誘導体を回収する、アルカリホスファターゼ誘導体の生産方法。
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