JP6729926B2 - ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質及びそのスクリーニング方法 - Google Patents
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1.ErbB3のドメインIIIに結合する物質を選別することを特徴とする、ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質のスクリーニング方法。
2.ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうる物質を選別することを特徴とする、ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質のスクリーニング方法。
3.ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうる物質が、ErbB3のドメインIIIとNecl-4のドメインIg3との相互作用を阻害しうる物質である、前項2に記載のErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質のスクリーニング方法。
4.ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質が、ErbB2とErbB3の二量体形成を阻害する物質である、前項1〜3のいずれかに記載のErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質のスクリーニング方法。
5.ErbB3のドメインIIIを標的とする物質であることを特徴とする、ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質。
6.ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうる物質であることを特徴とする、ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質。
7.ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうる物質が、ErbB3のドメインIIIとNecl-4のドメインIg3との相互作用を阻害しうる物質である、前項6に記載のErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質。
8.ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質が、Necl-4のドメインIg3の構造類似物である、前項5〜7のいずれかに記載のシグナルの伝達抑制物質。
9.Necl-4のドメインIg3の構造類似物が、以下の1)〜4)に示されるいずれかのペプチドであることを特徴とする、前項8に記載のシグナルの伝達抑制物質:
1)配列番号4で特定されるアミノ酸配列からなるペプチド;
2)配列番号4で特定されるアミノ酸配列のうち、1個または複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、導入されてなるアミノ酸配列を基にして特定されるペプチドであって、ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうるペプチド;
3)配列番号4で特定されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を基にして特定されるペプチドであって、ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうるペプチド。
10.ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質が、ErbB2とErbB3の二量体形成阻害物質である、前項5〜9のいずれかに記載のErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質。
A.ErbB1-ErbB1ホモ二量体はリガンドであるEGFの存在により形成されたことを示す。ErbB1は、リガンド依存的に構造変化を起こす(図1A参照)。
B.ErbBファミリーのうち、ErbB3の細胞外領域は4つのドメイン(I、II、III、IV)より構成されている(図1B、図2参照)。後述するリガンドの存在によりErbB3の構造は変化し、ドメインIIがErbB3とは異なる他のErbBファミリー分子と結合し、ヘテロ二量体を形成する(図1B参照)。
Necl-2はがん抑制因子として知られており、Necl-2はその細胞外領域を介してErbB3の細胞外領域と結合する。Necl-2はその細胞内領域を介して脱リン酸化酵素であるPTPN13と結合し、PTPN13はチロシンリン酸化されたErbB3を脱リン酸化に導き、その結果細胞内へのシグナル伝達を抑制する(図2参照)。しかしながら、Necl-2がErbB3と結合しても、細胞内領域のPTPN13がなければErbB3を脱リン酸化に導くことはできない。
C.リガンドがない状態でErbB3はNecl-4と相互作用し、ErbB2-ErbB3ヘテロ二量体形成が阻害される(図1Ca)。ErbB3がNecl-4と相互作用した後、リガンドであるHRGがErbB3に結合しても、ErbB2-ErbB3ヘテロ二量体の形成は阻害される(図1Cb)。がん細胞では、Necl-4の発現が抑制されるか機能障害を示すことが報告されている。そして、ErbB2-ErbB3ヘテロ二量体が形成されることで、Necl-4のがん抑制因子としての作用は発揮されにくくなる(図1Cc参照)。
MRANDALQVLGLLFSLARGSEVGNSQAVCPGTLNGLSVTGDAENQYQTLYKLYERCEVVMGNLEIVLTGHNADLSFLQWIREVTGYVLVAMNEFSTLPLPNLRVVRGTQVYDGKFAIFVMLNYNTNSSHALRQLRLTQLTEILSGGVYIEKNDKLCHMDTIDWRDIVRDRDAEIVVKDNGRSCPPCHEVCKGRCWGPGSEDCQTLTKTICAPQCNGHCFGPNPNQCCHDECAGGCSGPQDTDCFACRHFNDSGACVPRCPQPLVYNKLTFQLEPNPHTKYQYGGVCVASCPHNFVVDQTSCVRACPPDKMEVDKNGLKMCEPCGGLCPKACEGTGSGSRFQTVDSSNIDGFVNCTKILGNLDFLITGLNGDPWHKIPALDPEKLNVFRTVREITGYLNIQSWPPHMHNFSVFSNLTTIGGRSLYNRGFSLLIMKNLNVTSLGFRSLKEISAGRIYISANRQLCYHHSLNWTKVLRGPTEERLDIKHNRPRRDCVAEGKVCDPLCSSGGCWGPGPGQCLSCRNYSRGGVCVTHCNFLNGEPREFAHEAECFSCHPECQPMEGTATCNGSGSDTCAQCAHFRDGPHCVSSCPHGVLGAKGPIYKYPDVQNECRPCHENCTQGCKGPELQDCLGQTLVLIGKTHLTMALTVIAGLVVIFMMLGGTFLYWRGRRIQNKRAMRRYLERGESIEPLDPSEKANKVLARIFKETELRKLKVLGSGVFGTVHKGVWIPEGESIKIPVCIKVIEDKSGRQSFQAVTDHMLAIGSLDHAHIVRLLGLCPGSSLQLVTQYLPLGSLLDHVRQHRGALGPQLLLNWGVQIAKGMYYLEEHGMVHRNLAARNVLLKSPSQVQVADFGVADLLPPDDKQLLYSEAKTPIKWMALESIHFGKYTHQSDVWSYGVTVWELMTFGAEPYAGLRLAEVPDLLEKGERLAQPQICTIDVYMVMVKCWMIDENIRPTFKELANEFTRMARDPPRYLVIKRESGPGIAPGPEPHGLTNKKLEEVELEPELDLDLDLEAEEDNLATTTLGSALSLPVGTLNRPRGSQSLLSPSSGYMPMNQGNLGESCQESAVSGSSERCPRPVSLHPMPRGCLASESSEGHVTGSEAELQEKVSMCRSRSRSRSPRPRGDSAYHSQRHSLLTPVTPLSPPGLEEEDVNGYVMPDTHLKGTPSSREGTLSSVGLSSVLGTEEEDEDEEYEYMNRRRRHSPPHPPRPSSLEELGYEYMDVGSDLSASLGSTQSCPLHPVPIMPTAGTTPDEDYEYMNRQRDGGGPGGDYAAMGACPASEQGYEEMRAFQGPGHQAPHVHYARLKTLRSLEATDSAFDNPDYWHSRLFPKANAQRT(配列番号1)
PKACEGTGSGSRFQTVDSSNIDGFVNCTKILGNLDFLITGLNGDPWHKIPALDPEKLNVFRTVREITGYLNIQSWPPHMHNFSVFSNLTTIGGRSLYNRGFSLLIMKNLNVTSLGFRSLKEISAGRIYISANRQLCYHHSLNWT(配列番号2)
MGRARRFQWPLLLLWAAAAGPGTGQEVQTENVTVAEGGVAEITCRLHQYDGSIVVIQNPARQTLFFNGTRALKDERFQLEEFSPRRVRIRLSDARLEDEGGYFCQLYTEDTHHQIATLTVLVAPENPVVEVREQAVEGGEVELSCLVPRSRPAAVLRWYRDRKELKGVSSGQENGKVWSVASTVRFRVDRKDDGGIVICEAQNQALPSGHSKQTQYVLDVQYSPTARIHASQAVVREGDTLVLTCAVTGNPRPNQIRWNRGNESLPERAEAVGETLTLPGLVSADNGTYTCEAANKHGHARALYVLVVYDPGAVVEAQTSVPYAIVGGILALLVFLIICVLVGMVWCSVRQKGSYLTHEASGLDEQGEAREAFLNGGDGHKRKEEFFI(配列番号3)
本発明におけるシグナルの伝達の抑制は、ErbB2-ErbB3ヘテロ二量体形成を阻害することによっても達成される。ErbB2-ErbB3ヘテロ二量体形成の阻害は、ErbB3のドメインIIIに結合する物質により達成される。ErbB3のドメインIIIに結合する物質を選別するための方法として、ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうる物質を選別するのが好適である。Necl-4がErbB3のドメインIIIと相互作用すると、ErbB2-ErbB3ヘテロ二量体形成を阻害することができる。また、本発明は、ErbB3のドメインIIIに結合するNecl-4の結合部位を明らかにすることを特徴とする。Necl-4によるErbB2-ErbB3ヘテロ二量体形成の阻害によれば、ErbB2-ErbB3ヘテロ二量体による下流への過剰なシグナルの増幅を抑制することができる。いいかえれば、ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達はNecl-4の細胞外ドメインIg3がErbB3のドメインIIIに結合することにより抑制することができる。
なお、Necl-2によるErbB2-ErbB3ヘテロ二量体による下流へのシグナルを抑制するには、細胞内領域における脱リン酸化酵素PTPN13との結合が必要である。
1)配列番号4で特定されるアミノ酸配列からなるペプチド;
2)配列番号4で特定されるアミノ酸配列のうち、1個又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、導入されてなるアミノ酸配列を基にして特定されるペプチドであって、ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうるペプチド;
3)配列番号4で特定されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を基にして特定されるペプチドであって、ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうるペプチド。
本参考例では、ErbB3とNecl-4の相互作用に関し、リガンドの有無によるErbB3とNecl-4の相互作用について説明する。
本参考例で示す材料及び方法は、以下の実施例においても同様に適用される。
1.細胞培養と遺伝子導入
HEK293E細胞は10%のFBS、100 U/mLペニシリン及び100 μg/mLストレプトマイシンを含むDMEMで、37℃で5%のCO2条件下で培養した。ヒト・乳腺腺がんMCF7細胞は10%のFBS、100 U/mLペニシリン及び100 μg/mLストレプトマイシン及び10 μg/mLインスリンを含むDMEMで、37℃で5%のCO2条件下で培養した。遺伝子の導入はLipofectamine 2000又はLipofectamine LTX(Thermo Fisher Scientific)を用い、プロトコルにしたがって行った。
ウサギ抗ErbB3 pAB(ポリクローナル抗体:sc-285、Santa Cruz)
ウサギ抗ErbB3 mAb(クローンD22C5、12708S; Cell Signaling Technology)
ウサギ抗-リン酸化ErbB3(Tyr1289)mAb(クローン21D3、4791S;Cell Signaling Technology)
マウス抗FLAG mAb(免疫沈降用、F3165; Sigma-Aldrich)
ウサギ抗FLAG pAB(免疫ブロット用、F7425; Sigma-Aldrich)
ウサギ抗GFP pAB(598; MBL International)
マウス抗HA mAb(MMS-101P; BioLegend)
ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)を結合した二次抗体、
Protein G-Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)
Protein A-Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)
HRG-β(Sigma-Aldrich)
ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma-Aldrich)
FLAGタグ(DYKDDDDK:配列番号5)付Necl-4を含むプラスミドをHEK293E細胞に導入した。FLAGタグ付Necl-4には、配列番号3に示すNecl-4の全長のアミノ酸配列のうち、ドメインIg1(アミノ酸26-120)、ドメインIg2(アミノ酸121-220)及びドメインIg3(アミノ酸221-323)が含まれる。
遺伝子導入されたHEK293E細胞をピューロマイシンで選択し、無血清培地(SAFC Biosciences社)で培養した。分泌されたIgタンパク質を、DDDDK(配列番号6)-抗体-結合ビーズ(MBL International)で精製した。DDDDK(配列番号6)ペプチドで溶出されたNecl-4 Igタンパク質は、Amicon Ultra-4(3 kDa; Merck Millipore)を用いて透析し、精製した。
各発現ベクターを導入したMCF7細胞を3×104細胞/cm2の密度で培養容器に播種し、培養した。細胞は、24時間0.5%の脂肪酸不含BSAを含むDMEMで培養し、4分間、脂肪酸不含BSA及び20ng/mLのHRGを含むDMEMで刺激した。細胞を氷冷PBSで洗浄し、溶解バッファー(pH 7.5の20 mM Tris-HCl、1%のNonidet P-40(商標名)、10%のグリセロール、150 mM NaCl、1 mMジチオトレイトール、1 mM CaCl2、1 mM MgCl2、10 μM(p-amidinophenyl)methanesulfonyl fluoride、EDTA(-)プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)、ホスファターゼ阻害剤カクテル2及び3(Sigma-Aldrich)で溶解した。溶解産物をSDS-PAGEにかけ、ウエスタンブロッティングを行った。
各発現ベクターを導入したHEK293E細胞を48時間培養した。細胞を氷冷PBSで洗浄し、溶解バッファーで溶解して溶出試料を得た。溶出試料をさらに遠心分離し、上清を抗FLAG抗体あるいは抗ErbB3抗体と、プロテインAセファロースビーズあるいはプロテインGセファロースビーズを含む溶液中で4℃で2時間転倒混和した。遠心分離によりビーズを回収し、ビーズを溶解バッファーで洗浄した後、結合したタンパク質を溶出し、SDS-PAGE用試料とした。SDS-PAGEを行った後、ウエスタンブロット法で各タンパク質を確認した。
本実施例では、Necl-4によるErbB3とErbB2との二量体形成阻害作用について確認した。
本実施例では、Necl-4によるErbB3とErbB2との二量体形成抑制作用に関し、ErbB3の作用部位を確認した。
(2)Necl-4-Ig1:配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列のうち、ドメインIg1に対応する26-120を含む。
(3)Necl-4-Ig2:配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列のうち、ドメインIg2に対応するアミノ酸121-220を含む。
(4)Necl-4-Ig3:配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列のうち、ドメインIg3に対応する221-323を含む。
表4及び図7に示す各遺伝子を含むプラスミドの種々組合わせで、HEK293E細胞に遺伝子を導入し、細胞表面に発現させた。
ErbB3について、種々の遺伝子組換え変異体を作製した。
(1)ErbB3-I/II/III/IV
(2)ErbB3-II/III/IV
ドメインIを欠損する変異体。シグナルペプチド領域、ドメインI及び細胞質内領域を欠損する。配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、1-19、20-183、709-1342を欠損する。
(3)ErbB3-III/IV
ドメインI及びドメインIIを欠損する変異体。シグナルペプチド領域、ドメインI及びII、細胞質内領域を欠損する。配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、1-19、20-327、709-1342を欠損する。
(4)ErbB3-IV
ドメインI、II、IIIを欠損する変異体。シグナルペプチド領域、ドメインI〜III、細胞質内領域を欠損する。配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、1-19、20-471、709-1342を欠損する。
本実施例では、20 μg/mLのNecl-4-Ig3を含む系でMCF7細胞を培養したときのMCF7細胞の遊走能に及ぼす影響を確認した。
Claims (6)
- ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうる物質を選別することを特徴とする、ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質のスクリーニング方法。
- ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうる物質が、ErbB3のドメインIIIとNecl-4のドメインIg3との相互作用を阻害しうる物質である、請求項1に記載のErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質のスクリーニング方法。
- ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質が、ErbB2とErbB3の二量体形成を阻害する物質である、請求項1又は2に記載のErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質のスクリーニング方法。
- ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうる物質であって、当該物質がNecl-4のドメインIg3の構造類似物であることを特徴とする、ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質。
- Necl-4のドメインIg3の構造類似物が、以下の1)〜4)に示されるいずれかのペプチドであることを特徴とする、請求項4に記載のシグナルの伝達抑制物質:
1)配列番号4で特定されるアミノ酸配列からなるペプチド;
2)配列番号4で特定されるアミノ酸配列のうち、1個または複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、導入されてなるアミノ酸配列を基にして特定されるペプチドであって、ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうるペプチド;
3)配列番号4で特定されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を基にして特定されるペプチドであって、ErbB3のドメインIIIとNecl-4との相互作用を抑制しうるペプチド。 - ErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質が、ErbB2とErbB3の二量体形成阻害物質である、請求項4又は5に記載のErbB3活性化に伴うシグナルの伝達抑制物質。
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