JP6729600B2 - Nε−アシル−L−リジンの製造方法 - Google Patents

Nε−アシル−L−リジンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Nε−アシル−L−リジンの製造方法に関する。
Nε−アシル−L−リジンは、その構造特性および環境負荷の低さのため、両性界面活性剤原料として汎用性を有する。例えば、Nε−アシル−L−リジンは、一般洗浄剤、殺菌消毒剤、繊維柔軟材、防錆剤、浮遊選鉱剤、接着剤、清澄剤、染料固着剤、帯電防止剤、乳化剤、化粧品用界面活性剤などに有用である。特に、Nε−アシル−L−リジンは、水や通常の有機溶剤に極めて溶けにくく、かつ、撥水性、抗酸化性、滑沢性などとして使用できるという特徴を有することから、有機系の新しい粉黛素材として、化粧品、潤滑剤などの分野で着目されている。
Nε−アシル−L−リジンの製造には、従来、酵素を使用しない化学的方法が使用されてきたが、製造工程、製造作業が煩雑であり、また、重金属である銅の使用を必要としていた。したがって、より温和な条件下での反応、例えば、酵素の使用によりNε−アシル−L−リジンを製造することが所望されている。
ところで、Nε−アシル−L−リジンを特異的に加水分解することができる酵素に関する報告は少なく、アクロモバクター・ペスチフェル(Achromobacter pestifer)由来の酵素、ラット腎由来の酵素、シュードモナス(Pseudomonas) sp. KT−83由来の酵素などが報告されているが、これらの酵素によるNε−アシル−L−リジンの合成については報告されていない。
特許文献1には、カプサイシン分解合成酵素がNε−アシル−L−リジンの合成に利用できることが記載されている。カプサイシン分解合成酵素に関連して、特許文献2には、特許文献3記載のカプサイシン分解合成酵素がNε−ドデカノイル(ラウロイル)−L−リジンを収率95%で生成することが記載されている。しかし、特許文献2には、本酵素による反応が2日間という長期の反応時間を要すること、ならびに本酵素はε−アミノ基のみならずα−アミノ基に対しても高い反応性を示すため、最終的には、Nα−ドデカノイル−L−リジンとNε−ドデカノイル−L−リジンの混合物が生成することが記載されている。
特許文献4および5には、ストレプトミセス・モバラエンシス(Streptomyces mobarensis)がL−リジンのε−アミノ基をアシル化する能力を有する酵素を産生すること、およびストレプトミセス・モバラエンシスから精製された本酵素によりL−リジン塩酸塩とドデカン酸からNε−ドデカノイル−L−リジンを特異的に合成できることが記載されている。
特開2003−210164号公報 特開2004−81107号公報 特開2003−210164号公報 国際公開第2006/088199号 国際公開第2010/067871号
しかしながら、従来の酵素は、その性能がNε−ドデカノイル−L−リジンの工業的製造に十分であるとは云えなかった。例えば、従来の酵素は、必ずしもL−リジンのε−アミノ基を特異的にアシル化できなかったことから、上述したように、Nα−ドデカノイル−L−リジンとNε−ドデカノイル−L−リジンの混合物が生成し、これらの分離という煩雑な工程を要していたという欠点があった。また、従来の酵素には、安定性に欠け、失活し易い等の欠点があったことから、工業的製造に利用し難いという課題があった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記欠点が改善された酵素(例、L−リジンのε−アミノ基を特異的にアシル化する能力を有する安定な酵素)を見出すこと、および本酵素を用いてNε−アシル−L−リジンを特異的に製造することに成功し、もって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕以下(A)〜(C)のいずれかのタンパク質の存在下において、カルボン酸もしくはその塩およびL−リジンもしくはその塩を反応させて、Nε−アシル−L−リジンを生成することを含む、Nε−アシル−L−リジンの製造方法:
(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B)配列番号1のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が挿入、付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質;または
(C)配列番号1のアミノ酸配列と70%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質。
〔2〕前記タンパク質がロドサーマス(Rhodothermus)属に属する細菌に由来する、〔1〕の方法。
〔3〕前記タンパク質が精製酵素である、〔1〕または〔2〕の方法。
〔4〕反応が前記タンパク質を産生する微生物またはその処理液を用いて行われる、〔1〕または〔2〕の方法。
〔5〕前記微生物がコリネバクテリウム属に属する細菌である、〔4〕の方法。
〔6〕前記微生物がコリネバクテリウム・グルタミカムである、〔5〕の方法。
〔7〕カルボン酸が、炭素原子数5以上のカルボン酸である、〔1〕〜〔6〕のいずれかの方法。
〔8〕カルボン酸が、オクタン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、リノール酸、オレイン酸、安息香酸、メトキシメチル安息香酸、フェニルプロピオン酸、シンナモイル酸、またはメトキシシンナモイル酸である、〔1〕〜〔7〕のいずれかの方法。
〔9〕カルボン酸がオクタン酸またはドデカン酸であり、Nε−アシル−L−リジンがΝε−オクタノイル−L−リジンまたはΝε−ドデカノイル−L−リジンである、〔1〕〜〔8〕のいずれかの方法。
〔10〕反応が水溶性溶媒中で行われることを特徴とする、〔1〕〜〔9〕のいずれかの方法。
〔11〕処理液が殺微生物処理液である、〔4〕〜〔10〕のいずれかの方法。
〔12〕反応が40℃以上で行われる、〔1〕〜〔11〕のいずれかの方法。
〔13〕反応がカルボン酸もしくはその塩の非乳化条件下で行われる、〔1〕〜〔12〕のいずれかの方法。
〔14〕反応がカルボン酸もしくはその塩またはL−リジンもしくはその塩を500mmol/L以上の濃度で含む溶液中で行われる、〔1〕〜〔13〕のいずれかの方法。
本発明で用いられるタンパク質は、安定性(例、溶液中での保存安定性、温度安定性、およびpH安定性)に優れ得る。したがって、このようなタンパク質の存在下で行われる本発明の方法は、長期反応性に優れ、広範な温度およびpHにおいて行うことができるという利点を有し得る。
本発明で用いられるタンパク質はまた、熱処理に対する耐性に優れ得る。したがって、このようなタンパク質の存在下で行われる本発明の方法は、タンパク質を産生する微生物を熱処理により死滅させた後であっても微生物により産生された熱処理液中のタンパク質が失活しないことから、熱処理液を反応に良好に用いることができるという利点を有し得る。本利点は、滅菌を可能にしつつ、反応に用いられる酵素液を併せて容易に調製できるという点で、環境安全面および工程の簡便化の観点からも望ましいものである。
本発明で用いられるタンパク質はさらに、弱酸性条件下で高い活性を示すという特性を有し得る。したがって、このようなタンパク質の存在下で行われる本発明の方法は、後に詳述するように、製造されるNε−アシル−L−リジンの結晶の性状を改善できるという利点を有し得る。
本発明で用いられるタンパク質はまた、高濃度の基質による阻害を受け難いという特性を有し得る。このようなタンパク質の存在下で行われる本発明の方法は、高濃度の基質を利用可能であるため、大量のNε−アシル−L−リジンを製造することができるという利点を有し得る。
図1は、Rhodothermus marinus由来ELA(本発明で用いられる酵素)とStreptomyces mobarensis由来ELA(WO2006/088199開示の酵素)との温度依存性の比較を示す図である。 図2は、Rhodothermus marinus由来ELA(本発明で用いられる酵素)とStreptomyces mobarensis由来ELA(WO2006/088199開示の酵素)との温度安定性の比較を示す図である。 図3は、Rhodothermus marinus由来ELA(本発明で用いられる酵素)とStreptomyces mobarensis由来ELA(WO2006/088199開示の酵素)とのpH依存性の比較を示す図である。 図4は、Rhodothermus marinus由来ELA(本発明で用いられる酵素)とStreptomyces mobarensis由来ELA(WO2006/088199開示の酵素)とのpH安定性の比較を示す図である。 図5は、Rhodothermus marinus由来ELA(RmELA)酵素液(本発明で用いられる酵素)とStreptomyces mobarensis由来ELA(SmELA)酵素液(WO2006/088199開示の酵素)との保存安定性の比較を示す図である。(a)4℃で保存、(b)15℃で保存、および(c)25℃で保存。 図6は、Nε−ドデカノイル(ラウロイル)−L−リジンの合成反応におけるL−リジン量の経時変化(pH7.0)を示す図である。 図7は、Nε−ドデカノイル−L−リジンの合成反応におけるL−リジン量の経時変化(pH6.0)を示す図である。 図8は、Nε−ドデカノイル−L−リジンの結晶(上:pH7.0、下:pH6.0)を示す図である。 図9は、Nε−オクタノイル(カプリロイル)−L−リジンの合成反応におけるL−リジン量の経時変化を示す図である。 図10は、Nε−オクタノイル−L−リジンの合成反応におけるL−リジン量の経時変化(RmELA)を示す図である。 図11は、Nε−オクタノイル−L−リジンの合成反応におけるL−リジン量の経時変化(SmELA)を示す図である。
本発明は、Nε−アシル−L−リジンの製造方法を提供する。本発明の方法は、以下(A)〜(C)のいずれかのタンパク質の存在下において、カルボン酸もしくはその塩およびL−リジンもしくはその塩を反応させて、Nε−アシル−L−リジンを生成することを含む:
(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B)配列番号1のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が挿入、付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質;または
(C)配列番号1のアミノ酸配列と90%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質。
タンパク質(a)は、以下の理化学的性質を有する。
(1)作用及び基質特異性:Nε−アシル−L−リジンの分解及び/または合成反応を触媒する。
(2)至適温度範囲:約75℃。
(3)至適pHの範囲:約pH5。
(4)温度安定性:80℃、60分処理において失活しない。
タンパク質(B)では、アミノ酸残基の欠失、置換、付加および挿入からなる群より選ばれる1、2、3または4種の変異により、1個または数個のアミノ酸残基が改変され得る。アミノ酸残基の変異は、アミノ酸配列中の1つの領域に導入されてもよいが、複数の異なる領域に導入されてもよい。用語「1個または数個」は、タンパク質の活性を大きく損なわない個数を示す。用語「1個または数個」が示す数は、例えば、1〜100個、好ましくは1〜80個、より好ましくは1〜50個、1〜30個、1〜20個、1〜10個または1〜5個(例、1個、2個、3個、4個、または5個)である。
タンパク質(C)では、配列番号1のアミノ酸配列との相同性%は、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。上述したアミノ酸配列および後述する塩基配列の相同性(即ち、同一性または類似性)は、例えばKarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993))、PearsonによるFASTA(MethodsEnzymol.,183,63(1990))を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTP、BLASTNとよばれるプログラムが開発されているので(http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)、これらのプログラムをデフォルト設定で用いて、相同性を計算してもよい。また、相同性としては、例えば、Lipman−Pearson法を採用している株式会社ゼネティックスのソフトウェアGENETYX Ver7.0.9を使用し、ORFにコードされるポリペプチド部分全長を用いて、Unit Size to Compare=2の設定で類似性をpercentage計算させた際の数値を用いてもよい。あるいは、相同性は、NEEDLEプログラム(J Mol Biol 1970;48:443−453)検索において、デフォルト設定のパラメータ(Gap penalty=10、Extend penalty=0.5、Matrix=EBLOSUM62)を用いて得られた値(Identity)であってもよい。これらの計算で導き出される相同性%の値のうち、最も低い値を採用してもよい。相同性%としては、好ましくは同一性%が利用される。
本発明で用いられるタンパク質は、Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有することから、Nε−アシル−L−リジンの特異的な生成に優れ得るという特性を有する。本明細書中で用いられる場合、用語「Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性」とは、L−リジンにおけるα位のアミノ基よりもε位のアミノ基に対して、カルボン酸またはその塩におけるアシル基をより特異的に転移させる能力をいう。具体的には、本発明で用いられるタンパク質の本活性によるNε−アシル−L−リジンの生成百分率「(Nε−アシル−L−リジンの生成量/Nα−アシル−L−リジンおよびNε−アシル−L−リジンの合計生成量)×100(%)」は、例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または99.5%以上である。
本発明で用いられるタンパク質はまた、安定性に優れ得るという特性を有する。このような安定性としては、例えば、溶液中での保存安定性、温度安定性、およびpH安定性からなる群より選ばれる1以上の安定性が挙げられる。具体的には、本発明で用いられるタンパク質は、水溶液中において4〜25℃で長期(例、40日間)保存後であっても、保存前の活性に比し、例えば、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%の活性を維持できる。本発明で用いられるタンパク質はまた、高温、例えば、約50℃以上、約60℃以上、約70℃以上、または約80℃(典型的には約50℃〜80℃)の水溶液(例、緩衝液)中において十分な時間(例、1時間)のインキュベート後であっても、インキュベート前の活性に比し、例えば、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%の活性を維持できる。本発明で用いられるタンパク質はさらに、低pH、例えば、約6.5以下、約6.0以下、約5.5以下、約5.0以下、約4.5以下、または約4.0のpH(典型的には約4.0〜6.5のpH)の水溶液(例、緩衝液)中において十分な時間(例、1時間)のインキュベート後であっても、インキュベート前の活性に比し、例えば、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%の活性を維持できる。したがって、本発明の方法は、長期反応性に優れ、広範な温度およびpHにおいて行うことができるという利点を有し得る。
本発明で用いられるタンパク質はさらに、熱処理に対する耐性に優れ得るという特性を有する。具体的には、本発明で用いられるタンパク質は、微生物の死滅が可能である高温条件下の熱処理、例えば、約60℃以上、約70℃以上、または約80℃の水溶液(例、緩衝液)中において十分な時間(例、0.5〜1時間)のインキュベート後であっても、インキュベート前の活性に比し、例えば、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%の活性を維持できるという利点を有する。したがって、本発明は、本発明で用いられるタンパク質を産生する微生物を熱処理により死滅させた後であっても微生物により産生された熱処理液中のタンパク質が失活しないことから、熱処理液を反応に良好に用いることができるという利点を有し得る。本利点は、滅菌を可能にしつつ、反応に用いられる酵素液を併せて容易に調製できるという点で、環境安全面および工程の簡便化の観点からも望ましいものである。
本発明で用いられるタンパク質はまた、弱酸性条件下で高い活性を示し得るという特性を有する。弱酸性条件下では、反応液は水層(L−リジンまたはその塩)と油層(カルボン酸またはその塩)の2層に分離することから、反応液の粘性が低くなり易い。一方、中性条件下では、反応液は2層に分離せず、反応液中のカルボン酸もしくはその塩が乳化し得ることから、反応液の粘性が高くなり易い。Nε−アシル−L−リジンについて、良好な性状の結晶(例、短径が長い結晶)を得るためには、粘性が低い反応液を用いることが望ましい。本発明で用いられるタンパク質は弱酸性条件下で高い活性を示すことから、本発明は、粘性が低い反応液を好適に利用することができ、カルボン酸もしくはその塩が乳化し得る条件(中性条件)下で反応を行う必要がない。したがって、本発明は、製造されるNε−アシル−L−リジンの結晶の性状を改善できるという利点を有し得る。
本発明で用いられるタンパク質はさらに、高濃度の基質による阻害を受け難いという特性を有し得る。具体的には、本発明で用いられるタンパク質は、例えば、約500mM以上、約600mM以上、約700mM以上、約800mM以上、約900mM以上、約1000mM(典型的には約500〜1000mM)の基質濃度でさえも、カルボン酸もしくはその塩およびL−リジンもしくはその塩を十分に反応させて、Nε−アシル−L−リジンを生成することができる。したがって、本発明は、高濃度の基質を利用可能であるため、大量のNε−アシル−L−リジンを製造することができるという利点を有し得る。
本発明で用いられるタンパク質は、目的特定を保持し得る限り、触媒ドメイン中の部位、および触媒ドメイン以外の部位に、変異が導入されていてもよい。目的特性を保持し得る、変異が導入されてもよいアミノ酸残基の位置は、当業者に明らかである。具体的には、当業者は、1)同種の特性を有する複数のタンパク質のアミノ酸配列を比較し、2)相対的に保存されている領域、および相対的に保存されていない領域を明らかにし、次いで、3)相対的に保存されている領域および相対的に保存されていない領域から、それぞれ、機能に重要な役割を果たし得る領域および機能に重要な役割を果たし得ない領域を予測できるので、構造・機能の相関性を認識できる。したがって、当業者は、本発明で用いられるタンパク質のアミノ酸配列において変異が導入されてもよいアミノ酸残基の位置を特定できる。
アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、保存的置換であってもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「保存的置換」とは、所定のアミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することをいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で周知である。例えば、このようなファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位分岐側鎖を有するアミノ酸(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、ヒドロキシル基(例、アルコール性、フェノール性)含有側鎖を有するアミノ酸(例、セリン、スレオニン、チロシン)、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(例、システイン、メチオニン)が挙げられる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、アスパラギン酸とグルタミン酸との間での置換、アルギニンとリジンとヒスチジンとの間での置換、トリプトファンとフェニルアラニンとの間での置換、フェニルアラニンとバリンとの間での置換、ロイシンとイソロイシンとアラニンとの間での置換、およびグリシンとアラニンとの間での置換であってもよい。
本発明で用いられるタンパク質はまた、異種部分とペプチド結合を介して連結された融合タンパク質であってもよい。このような異種部分としては、例えば、目的タンパク質の精製を容易にするペプチド成分(例、ヒスチジンタグ、Strep−tag II等のタグ部分;グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質等の目的タンパク質の精製に利用されるタンパク質)、目的タンパク質の可溶性を向上させるペプチド成分(例、Nus−tag)、シャペロンとして働くペプチド成分(例、トリガーファクター)、他の機能を有するペプチド成分(例、全長タンパク質またはその一部)、ならびにリンカーが挙げられる。
上述したような本発明で用いられるタンパク質としては、例えば、ロドサーマス(Rhodothermus)属に属する細菌、より具体的にはロドサーマス・マリナス(Rhodothermus marinus)に由来するタンパク質、天然に生じるそのホモログ、または人為的に作出された変異タンパク質が挙げられる。変異タンパク質は、例えば、目的タンパク質をコードするDNAに変異を導入し、得られた変異DNAを用いて変異タンパク質を産生させることにより、得ることができる。変異導入法としては、例えば、部位特異的変異導入、ならびに無作為変異導入処理(例、変異剤による処理、および紫外線照射)が挙げられる。
一実施形態では、本発明の方法は、本発明で用いられるタンパク質自体を用いて行うことができる。本発明で用いられるタンパク質として、天然タンパク質または組換えタンパク質を利用することができる。組換えタンパク質は、例えば、無細胞系ベクターを用いて、または本発明で用いられるタンパク質を産生する微生物から得ることができる。本発明で用いられるタンパク質は、未精製、粗精製または精製タンパク質として利用することができる。これらのタンパク質としては、反応において、固相に固定された固相化タンパク質として利用されてもよい。
本発明で用いられるタンパク質を公知の方法で単離し、場合によっては更に精製することにより、目的とするタンパク質が得られる。タンパク質を産生する微生物としては、形質転換体が好ましい。形質転換体を用いた場合には、不活性な目的タンパク質会合体、すなわちタンパク質封入体として目的タンパク質を得た後、これを適当な方法で活性化することも可能である。活性化後、活性型タンパク質を公知の方法で分離精製することにより目的タンパク質を得てもよい。
微生物を培養するための培地は公知であり、例えば、LB培地などの栄養培地や、M9培地などの最小培地に炭素源、窒素源、ビタミン源等を添加して用いることができる。形質転換体は宿主に応じて、通常、16〜42℃、好ましくは25〜37℃で5〜168時間、好ましくは8〜72時間培養される。宿主に依存して、振盪培養と静置培養のいずれも可能であるが、必要に応じて攪拌を行ってもよく、通気を行ってもよい。放線菌を発現宿主として選択する場合は、目的タンパク質を生産させるために使用し得る条件を適宜用いることが出来る。また、目的タンパク質の発現のために誘導型プロモーターを用いた場合は、培地にプロモーター誘導剤を添加して培養を行うこともできる。
産生された目的タンパク質は、形質転換体の抽出物から公知の塩析、等電点沈殿法もしくは溶媒沈殿法等の沈殿法、透析、限外濾過もしくはゲル濾過等の分子量差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等の疎水度の差を利用する方法やその他アフィニティークロマトグラフィー、SDSポリアクリルアミド電気泳動法、等電点電気泳動法等、またはこれらの組み合わせにより、精製および単離することが可能である。目的タンパク質を分泌発現させた場合には、形質転換体を培養して得られた培養液から、菌体を遠心分離等で除くことで目的タンパク質を含む培養上清が得られる。この培養上清からも目的タンパク質を精製および単離することが可能である。
例えば、形質転換体の培養終了後、遠心により集菌した菌体を菌体破砕用バッファー(20〜100mM Tris−HCl(pH8.0)、5mM EDTA)に懸濁し、超音波破砕を約10分間行うことにより菌体を破砕することができる。菌体破砕は、トルエン等の溶媒を培養液に加え行うこともできる。この破砕処理液を12000rpmで10分間遠心して上清を上述した精製操作をすることができる。また、前記遠心後の沈殿について必要に応じて塩酸グアニジウムまたは尿素などで可溶化したのち更に精製することもできる。目的タンパク質を分泌発現させた場合には、形質転換体の培養終了後、培養液を12000rpmで10分間遠心して上清を上述した精製操作をすることができる。
具体的には、目的タンパク質の精製は、例えば以下のように行うことができる。宿主の培養終了後、培養上清または細胞抽出物に硫酸アンモニウム(2.8M)を加えて沈殿分画後、更に、CM セファデックス C−50、DEAE−セファデックスA−50イオン交換カラムクロマトグラフィー、オクチルセファロースCL−4BおよびフェニルセファロースCL−4Bカラムクロマトグラフィー等の操作を行うことによって、ポリアクリルアミドゲル電気泳動した場合にゲル上で単一バンドを呈する程度にまで精製することができる。
得られた目的タンパク質の活性は、Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性またはNε−アセチル−L−リジン加水分解活性を測定することにより評価することができる。例えば、本発明の酵素1U(ユニット)は、Nε−アセチル−L−リジン溶液を基質として37℃にてインキュベート(50mMトリス塩酸緩衝液、pH8.0)し、遊離したL−リジンを定量した場合、1時間あたり1マイクロモルのNε−アセチル−L−リジンを加水分解するのに必要な酵素量と定義することができる。
別の実施形態では、本発明の方法は、本発明で用いられるタンパク質を産生する微生物またはその処理液を用いて行うことができる。本発明で用いられるタンパク質を産生する微生物としては、例えば、本発明で用いられるタンパク質を天然に産生する微生物(例、ロドサーマス属に属する細菌)、および形質転換体が挙げられる。好ましくは、形質転換体またはその処理液が用いられる。
本発明で用いられるタンパク質を産生する微生物の処理液としては、任意の方法により処理された、目的タンパク質を含有する処理液を使用することができる。このような処理としては、例えば、上述した単離および精製で言及した方法、ならびに微生物の死滅を可能にする殺微生物処理方法が挙げられる。殺微生物処理方法としては、微生物の死滅を可能にする任意の方法を用いることができるが、例えば、熱処理、酸性処理、アルカリ性処理、界面活性剤処理、および有機溶媒処理が挙げられる。本発明で用いられるタンパク質は熱処理、ならびに低PHおよび高pH条件下での処理に対する耐性に優れることから、処理液として熱処理液や酸性処理液およびアルカリ性処理液を用いることが好ましい。本発明で用いられるタンパク質は熱処理に対する耐性に特に優れることから、処理液として熱処理液を用いることが特に好ましい。このような熱処理としては、例えば、微生物の死滅が可能である高温条件下の熱処理条件が挙げられる。具体的には、熱処理条件としては、例えば、約60℃以上、約70℃以上、または約80℃の水溶液(例、緩衝液)中における十分な時間(例、0.5〜1時間)のインキュベートが挙げられる。
好ましい実施形態では、本発明で用いられる形質転換体は、上記(A)〜(C)のいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む宿主細胞である。
より好ましい実施形態では、本発明で用いられる形質転換体は、以下(a)〜(d)からなる群より選ばれるポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む宿主細胞である:
(a)配列番号2もしくは3の塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号2もしくは3の塩基配列と70%以上の相同性を有する塩基配列を含み、かつNε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2もしくは3の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつNε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;ならびに
(d)(a)〜(c)からなる群より選ばれるポリヌクレオチドの縮重変異体。
上記(a)〜(d)のポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよいが、DNAであることが好ましい。配列番号2および3の塩基配列は、配列番号1のアミノ酸配列をコードする。
上記ポリヌクレオチド(b)では、配列番号2もしくは3の塩基配列に対する塩基配列の相同性%は、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。
上記ポリヌクレオチド(c)において、用語「ストリンジェント条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、ストリンジェント条件としては、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS中、50〜65℃での1または2回以上の洗浄が挙げられる。
上記ポリヌクレオチド(d)において、用語「縮重変異体」とは、変異前のポリヌクレオチド中の所定のアミノ酸残基をコードする少なくとも1つのコドンが、同一アミノ酸残基をコードする別のコドンに変更されたポリヌクレオチド変異体をいう。このような縮重変異体はサイレント変異に基づく変異体であることから、縮重変異体によりコードされるタンパク質は、変異前のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質と同一である。
好ましくは、縮重変異体は、それが導入されるべき宿主細胞のコドン使用頻度に適合するようにコドンが変更されたポリヌクレオチド変異体である。ある遺伝子を異種宿主細胞(例、微生物)で発現させる場合、コドン使用頻度の相違により、対応するtRNA分子種が十分に供給されず、翻訳効率の低下および/または不正確な翻訳(例、翻訳の停止)が生じることがある。例えば、エシェリヒア・コリでは、表1に示される低頻度コドンが知られている。
したがって、本発明では、後述するような宿主細胞(例、微生物)のコドン使用頻度に適合する縮重変異体を利用することができる。例えば、本発明の縮重変異体は、アルギニン残基、グリシン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、およびプロリン残基からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸残基をコードするコドンが変更されたものであってもよい。より具体的には、本発明の縮重変異体は、低頻度コドン(例、AGG、AGA、CGG、CGA、GGA、AUA、CUA、およびCCC)からなる群より選ばれる1種以上のコドンが変更されたものであってもよい。好ましくは、縮重変異体は、以下からなる群より選ばれる1種以上(例、1種、2種、3種、4種、または5種)のコドンの変更を含んでいてもよい:
i)Argをコードする4種のコドン(AGG、AGA、CGG、およびCGA)からなる群より選ばれる少なくとも1種のコドンの、Argをコードする別のコドン(CGU、またはCGC)への変更;
ii)Glyをコードする1種のコドン(GGA)の、別のコドン(GGG、GGU、またはGGC)への変更;
iii)Ileをコードする1種のコドン(AUA)の、別のコドン(AUU、またはAUC)への変更;
iv)Leuをコードする1種のコドン(CUA)の、別のコドン(UUG、UUA、CUG、CUU、またはCUC)への変更;ならびに
v)Proをコードする1種のコドン(CCC)の、別のコドン(CCG、CCA、またはCCU)への変更。
本発明の縮重変異体がRNAの場合、上記のとおりヌクレオチド残基「U」が利用されるべきであるが、本発明の縮重変異体がDNAの場合、ヌクレオチド残基「U」の代わりに「T」が利用されるべきである。宿主細胞のコドン使用頻度に適合させるためのヌクレオチド残基の変異数は、変異前後で同一のタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、1〜500個、1〜400個、1〜300個、1〜200個、または1〜100個である。
低頻度コドンの同定は、当該分野で既知の技術を利用することにより、任意の宿主細胞の種類およびゲノム配列情報に基づいて容易に行うことができる。したがって、縮重変異体は、低頻度コドンの非低頻度コドン(例、高頻度コドン)への変更を含むものであってもよい。また、低頻度コドンのみならず、生産菌株のゲノムGC含量への適合性などの要素を考慮して変異体を設計する方法が知られているので(Alan Villalobos et al., Gene Designer: a synthetic biology tool for constructing artificial DNA segments, BMC Bioinformatics. 2006 Jun 6;7:285.)、このような方法を利用してもよい。このように、上述の変異体は、それが導入され得る任意の宿主細胞(例、後述するような微生物)の種類に応じて適宜作製できる。
用語「発現単位」とは、タンパク質として発現されるべき所定のポリヌクレオチドおよびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む、当該ポリヌクレオチドの転写、ひいては当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の産生を可能にする最小単位をいう。発現単位は、ターミネーター、リボゾーム結合部位、および薬剤耐性遺伝子等のエレメントをさらに含んでいてもよい。発現単位は、DNAであってもRNAであってもよいが、DNAであることが好ましい。発現単位は、宿主細胞に対して同種であっても異種であってもよいが、異種発現単位が好ましい。
発現単位は、宿主細胞に対して同種であっても異種であってもよいが、好ましくは異種発現単位である。用語「異種発現単位」とは、発現単位が宿主細胞に対して異種であることを意味する。したがって、本発明では、発現単位を構成する少なくとも1つのエレメントが宿主細胞に対して異種である。宿主細胞に対して異種である、発現単位を構成するエレメントとしては、例えば、上述したエレメントが挙げられる。好ましくは、異種発現単位を構成する、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、もしくはプロモーターの一方、または双方が、宿主細胞に対して異種である。したがって、本発明では、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、もしくはプロモーターの一方、または双方が、宿主細胞以外の生物(例、原核生物および真核生物、または微生物、昆虫、植物、および哺乳動物等の動物)もしくはウイルスに由来するか、または人工的に合成されたものである。あるいは、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、宿主細胞に対して異種であってもよい。好ましくは、目的タンパク質が、宿主細胞に対して異種である。
異種発現単位を構成するプロモーターは、その下流に連結されたポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質を宿主細胞で発現させることができるものであれば特に限定されない。例えば、プロモーターは、宿主細胞に対して同種であっても異種であってもよい。例えば、組換えタンパク質の産生に汎用される構成または誘導プロモーターを用いることができる。このようなプロモーターとしては、例えば、PhoAプロモーター、PhoCプロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、PRプロモーター、PLプロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーターが挙げられる。好ましくは、宿主細胞で強力な転写活性を有するプロモーターを用いることができる。宿主細胞で強力な転写活性を有するプロモーターとしては、例えば、宿主細胞で高発現している遺伝子のプロモーター、およびウイルス由来のプロモーターが挙げられる。また、宿主細胞としてコリネ型細菌を選択する場合、cspBプロモーターなどを好適に利用することができる。
宿主細胞としては、大腸菌(E.coli)、放線菌およびコリネ型細菌を含む種々の微生物が挙げられる。本発明において宿主細胞として用いられる大腸菌(E.coli)には一般にクローニングや異種タンパク質の発現によく利用される菌株、例えば、HB101、MC1061、JM109、CJ236、MV1184が含まれる。本発明において宿主細胞として用いられる放線菌には一般に異種タンパク質の発現によく利用される菌株、例えば、S.リビダンス TK24やS.セリカラーA3(2)が含まれる。本発明において宿主細胞として用いられるコリネ型細菌とは好気性のグラム陽性桿菌であり、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが現在コリネバクテリウム属に統合された細菌を含み(Int.J.Syst.Bacteriol.,41,255(1981))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。コリネ型細菌を使用することの利点には、これまでにタンパク質の分泌に好適とされてきたカビ、酵母やBacillus属細菌と比べて本来的に菌体外に分泌されるタンパク質が極めて少なく、目的タンパク質を分泌生産した場合にその精製過程が簡略化、省略化できること、分泌生産した酵素を用いて酵素反応を行う場合には、培養上清を酵素源として用いることができるため、菌体成分、夾雑酵素等による不純物、副反応を低減させることができること、糖、アンモニアや無機塩等を含む単純な培地で容易に生育するため、培地代や培養方法、培養生産性の点で優れていることが含まれる。また、Tat系分泌経路を利用することにより、これまでに知られていたSec系分泌経路では分泌生産が困難なタンパク質であったイソマルトデキストラナーゼやプロテイングルタミナーゼ等産業上有用なタンパク質も効率良く分泌させることが可能である(WO2005/103278)。本発明において用いられる目的タンパク質もTat系分泌経路等の適切な分泌経路を利用することにより菌体外に分泌させることができる。「Tat系」とは、「ツイン・アルギニン移行経路」(Twin−arginine−translocation−pathway)とも呼ばれる経路であり、シグナルペプチド中に保存されたアルギニン−アルギニンの保存領域を認識して、TatA、B、C、Eを含む膜タンパク質によりタンパク質を分泌する機構あるいは経路を意味する。Tat系シグナルペプチドとしては、E.coli由来トリメチルアミンN−オキシドレダクターゼ(TorA)のシグナルペプチド等が挙げられる。コリネ型細菌の例としては以下のものが挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム、
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム、
コリネバクテリウム・アルカノリティカム、
コリネバクテリウム・カルナエ、
コリネバクテリウム・グルタミカム、
コリネバクテリウム・リリウム、
コリネバクテリウム・メラセコーラ、
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス、
コリネバクテリウム・ハーキュリス、
ブレビバクテリウム・ディバリカタム、
ブレビバクテリウム・フラバム、
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム、
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム、
ブレビバクテリウム・ロゼウム、
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム、
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス、
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、
ブレビバクテリウム・アルバム、
ブレビバクテリウム・セリヌム、
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム。
具体的には、下記のような菌株を例示することができる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870、
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806、
コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511、
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991、
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020,ATCC13032,ATCC13060,ATCC13869,FERM BP−734、
コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990、
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965、
コリネバクテリウム・エッフィシエンス AJ12340(FERM BP−1539)、
コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868、
ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020、
ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826,ATCC14067,AJ12418(FERM BP−2205)、
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068、
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869、
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825、
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066、
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240、
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6871、ATCC6872、
ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111、
ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112、
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラス ATCC15354。
とりわけ、野生株コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum、C.グルタミカム)ATCC13869よりストレプトマイシン(Sm)耐性変異株として分離したコリネバクテリウム・グルタミカムAJ12036(WO02/081694参照)はその親株(野生株)に比べ、タンパク質の分泌に関わる機能遺伝子に変異が存在することが予測され、タンパク質の分泌生産能が至適培養条件下での蓄積量としておよそ2〜3倍と極めて高いため、宿主菌として好適である。
さらに、このような菌株から細胞表層タンパク質を生産しないように改変した菌株を宿主として使用すれば、培地中に分泌された目的タンパク質の精製が容易となり、特に好ましい。そのような改変は、突然変異または遺伝子組換え法により染色体上の細胞表層タンパク質またはその発現調節領域に変異を導入することにより行うことができる。細胞表層タンパク質を生産しないように改変されたコリネ型細菌としては、AJ12036の細胞表層タンパク質(PS2)破壊株であるC.グルタミカムYDK010株が挙げられる(WO01/23491参照)。
本発明で用いられる形質転換体は、当該分野において公知の任意の方法により作製することができる。例えば、このような発現単位は、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれた形態、または宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれていない形態(例、発現ベクターの状態)において、宿主細胞に含まれる。発現単位を含む宿主細胞は、当該分野において公知の任意の方法(例、コンピテント細胞法、エレクトロポレーション法)により、発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。発現ベクターが宿主細胞のゲノムDNAと相同組換えを生じる組込み型(integrative)ベクターである場合、発現単位は、形質転換により、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれることができる。一方、発現ベクターが宿主細胞のゲノムDNAと相同組換えを生じない非組込み型ベクターである場合、発現単位は、形質転換により、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれず、宿主細胞内において、発現ベクターの状態のまま、ゲノムDNAから独立して存在できる。あるいは、ゲノム編集技術(例、CRISPR/Casシステム、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALEN))により発現単位を宿主細胞のゲノムDNAに組み込むことが可能である。
本発明で用いられる発現ベクターは、発現単位として上述した最小単位に加えて、宿主細胞で機能するターミネーター、リボゾーム結合部位、および薬剤耐性遺伝子等のエレメントをさらに含んでいてもよい。薬剤耐性遺伝子としては、例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する耐性遺伝子が挙げられる。
発現ベクターはまた、宿主細胞のゲノムDNAとの相同組換えのために、宿主細胞のゲノムとの相同組換えを可能にする領域をさらに含んでいてもよい。例えば、発現ベクターは、それに含まれる発現単位が一対の相同領域(例、宿主細胞のゲノム中の特定配列に対して相同なホモロジーアーム、loxP、FRT)間に位置するように設計されてもよい。発現単位が導入されるべき宿主細胞のゲノム領域(相同領域の標的)としては、特に限定されないが、宿主細胞において発現量が多い遺伝子のローカスであってもよい。
発現ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、ファージ、または人工染色体であってもよい。発現ベクターはまた、組込み型(integrative)ベクターであっても非組込み型ベクターであってもよい。組込み型ベクターは、その全体が宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。あるいは、組込み型ベクターは、その一部(例、発現単位)のみが宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。発現ベクターはさらに、DNAベクター、またはRNAベクター(例、レトロウイルス)であってもよい。発現ベクターはまた、汎用される発現ベクターを用いてもよい。このような発現ベクターとしては、例えば、pUC(例、pUC19、pUC18)、pSTV、pBR(例、pBR322)、pHSG(例、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398)、RSF(例、RSF1010)、pACYC(例、pACYC177、pACYC184)、pMW(例、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218)、pQE(例、pQE30)、およびその誘導体が挙げられる。また、コリネバクテリウム・グルタミカムのようなコリネ型細菌を宿主細胞として選択する場合、高コピーベクターであるpPK4などを好適に利用することができる。
本発明の方法は、上述したように、上記タンパク質自体、および/または上記タンパク質を産生する微生物もしくはその処理液の存在下で、カルボン酸もしくはその塩およびL−リジンもしくはその塩を含む反応系において行うことができる。
カルボン酸としては、L−リジンのε位のアミノ基との反応のためにアシル基を供給できる任意のカルボン酸を使用することができる。このようなカルボン酸としては、例えば、直鎖または分枝した飽和または不飽和の脂肪酸、および飽和または不飽和の側鎖を有する芳香族カルボン酸が挙げられる。このようなカルボン酸は、好ましくは炭素数が5以上、より好ましくは炭素数が8以上のカルボン酸である。カルボン酸の炭素数はまた、例えば、30以下、25以下または20以下であってもよい。より具体的には、本発明の方法において用いられるカルボン酸としては、例えば、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミスチリン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、リノール酸、オレイン酸、安息香酸、メトキシメチル安息香酸、フェニルプロピオン酸、シンナモイル酸、メトキシシンナモイル酸、リノレン酸、ケイ皮酸が挙げられる。オクタン酸、ドデカン酸が特に好ましい。
カルボン酸またはL−リジンの塩としては、任意の塩を用いることができる。このような塩としては、例えば、無機酸塩(例、塩酸塩)、無機塩基塩(例、アンモニウム塩)、有機酸塩(例、酢酸塩)、および有機塩基塩(例、トリエチルアミン塩)等の非金属塩、ならびにアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩)、およびアルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩)等の金属塩が挙げられる。
反応系における基質(例、カルボン酸もしくはその塩、および/またはL−リジンもしくはその塩)濃度は、上記タンパク質によるNε−アシル−L−リジンの生成が可能である限り特に限定されず、例えば、1mM、10mMまたは100mM以上の濃度であってもよい。本発明で用いられるタンパク質は高濃度の基質による阻害を受け難いという特性を有するので、例えば、約500mM以上、約600mM以上、約700mM以上、約800mM以上、約900mM以上、約1000mM(典型的には約500〜1000mM)の基質濃度でさえも、カルボン酸もしくはその塩およびL−リジンもしくはその塩を十分に反応させて、Nε−アシル−L−リジンを生成することができる。したがって、本発明の方法は、高濃度の基質を利用可能であるため、大量のNε−アシル−L−リジンを製造することができるという利点を有する。基質であるL-リジンもしくはその塩、およびカルボン酸もしくはその塩の一方が反応系に過剰量存在していてもよく、必要に応じて不足している基質を反応中に追加してもよい。
本発明の方法における反応温度は、上記タンパク質によるNε−アシル−L−リジンの生成が可能である限り特に限定されず、例えば、約4℃〜80℃の温度条件下で反応を行うことができる。本発明で用いられるタンパク質は高温で安定であることから、例えば、約50℃以上、約60℃以上、約70℃以上、または約80℃(典型的には約50℃〜80℃)の温度条件下で反応を行うことができる。
本発明の方法におけるpHは、上記タンパク質によるNε−アシル−L−リジンの生成が可能である限り特に限定されず、例えば、約4.0〜11.0のpH条件下で反応を行うことができる。本発明で用いられるタンパク質は特に低pHで安定であることから、例えば、約6.5以下、約6.0以下、約5.5以下、約5.0以下、約4.5以下、または約4.0のpH(典型的には約4.0〜6.5のpH)条件下で反応が行われてもよい。
好ましくは、本発明の方法では、カルボン酸もしくはその塩の非乳化条件下の反応液中で反応が行われてもよい。一般に、より低いpH条件下では、反応液は水層(L−リジンまたはその塩)と油層(カルボン酸またはその塩)の2層に分離し、より高いpH条件では、油層が水層に溶解して透明な反応液が得られる。しかし、それらの中間のpH条件では、反応液中の油層が乳化し得ることから、反応液の粘性が高くなり易い。Nε−アシル−L−リジンについて、良好な性状の結晶(例、短径が長い結晶)を得るためには、粘性が低い非乳化条件下の反応液を用いることが望ましい。カルボン酸もしくはその塩の非乳化条件は、用いられるカルボン酸もしくはその塩の種類に応じて異なる。例えば、オクタン酸をカルボン酸として用いる場合、非乳化条件はpH5.5以下(2層分離の反応液)またはpH6.8以上(透明な反応液)であり、乳化条件はpH5.5よりも大きく、かつpH6.8未満の条件である。また、ドデカン酸をカルボン酸として用いる場合、非乳化条件はpH6.2以下(2層分離の反応液)またはpH7.5以上(透明な反応液)であり、乳化条件はpH6.2よりも大きく、かつpH7.5未満の条件である。当業者は、用いるカルボン酸もしくはその塩の種類に応じて反応系のpHを適宜調整することにより、このような非乳化条件を達成することができる。反応は、このような非乳化条件下で適宜行うことができるが、オクタン酸をカルボン酸として用いる場合であればpH6.8以上の非乳化条件下、ドデカン酸をカルボン酸として用いる場合であればpH6.2以下の非乳化条件下で反応を行ってもよい。カルボン酸もしくはその塩の非乳化条件下で反応を行うことにより、製造されるNε−アシル−L−リジンの結晶の性状(例、短径の長さ)を改善することができる。
反応時間は、適宜設定することができる。本発明で用いられるタンパク質は、長期(例、40日間)保存後であっても高度に活性を維持できることから、長期の反応、ひいてはNε−アシル−L−リジンの大量製造に利用することができる。
反応系としては、例えば、上記タンパク質自体または上記処理液を用いるのであれば、緩衝液等の水溶液を用いることができる。また、上記タンパク質を産生する微生物を用いるのであれば、液体培地等の任意の培地で培養することにより行うことができる。この場合、培養温度は、例えば、15〜42℃、好ましくは20〜37℃である。宿主細胞の培養は、例えば、pH5.5〜8.5、好ましくはpH6〜8で行うことができる。このような条件であれば、宿主細胞が十分に増殖するため、上記タンパク質を大量に得ることができる。培養は、例えば、バッチ培養法、流加培養法、および連続培養法等の公知の発酵方法により行われてもよい。液体培地は、宿主細胞の培養に用いられる任意の液体培地を利用することができる。例えば、液体培地としては、炭素源としてグルコース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものが挙げられる。液体培地はまた、無機もしくは有機窒素源(例、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、カゼインの加水分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン等)を含んでいてもよい。液体培地はさらに、他の栄養源、例えば、無機塩(例、二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム)、ビタミン類(例、ビタミンB1)、抗生物質を含んでいてもよい。
また、上記反応系としては、水溶性溶媒を好適に用いることができる。特に、前記カルボン酸が比較的長鎖であって、前記反応が水溶性溶媒中で行われる場合、生成するNε-アシル-L-リジンは水に不溶性または難溶性であるため析出して反応系から容易に除去され、従って、ε-アシル-L-リジンの合成反応がその逆反応であるNε-アシル-L-リジンの分解反応よりも顕著に優先的かつ効率よく進む。また、このような場合、合成反応生成物であるNε-アシル-L-リジンは速やかに水相から分離してくるので非常に容易に回収することができる。例えば、分離したNε-アシル-L-リジンを直接回収する、または、有機溶媒によって容易にNε-アシル-L-リジンを水性反応系から抽出して回収することができる。本発明によってNε-アシル-L-リジンを製造する場合、前記比較的長鎖のカルボン酸は、例えば使用する水溶性溶媒に対する溶解性を基準として選択することができる。なお、本明細書において“水溶性溶媒”には勿論水自身も含まれる。また、反応を水溶性溶媒中で行う場合であっても、別途油層(有機溶媒層)を重層し、水溶性溶媒/有機溶媒の2相反応とすることもできる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1:Rhodothermus marinus由来アミノアシラーゼ(RmELA)のC.glutamicumによる生産
1−1)pPK4ベクター中のNaeI認識サイトを改変したベクター(pPK5)の構築
特開平9−322774号公報に記載のpPK4の中には、制限酵素Nae Iの認識配列が一ヵ所存在する。この配列を改変するため、NaeI認識配列gccggcをgcaggcに改変した配列とpPK4におけるその周辺配列を含む配列番号4及び配列番号5に記載のプライマーを合成した。次に、pPK4を鋳型として、配列番号4及び配列番号5のプライマーを用いて、約5.6kbpのプラスミド全長をPCR法によって増幅した。PCRにはPyrobest(登録商標) DNA polymerase(Takara Bio)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。
得られたPCR産物を制限酵素DpnIで処理し、メチル化されている鋳型DNAを消化した。DpnI消化後に得られた非メチル化プラスミドを、E.coli JM109(Takara Bio)のコンピテントセルに導入し、プラスミドを取得した。塩基配列決定の結果、予想通りNaeI認識サイトが改変されたプラスミドが構築されていることを確認した。塩基配列の決定はBigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)と3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いて行った。こうして得られた、pPK4ベクター中のNaeI認識サイトを改変したベクターをpPK5と命名した。
5’−cgagccaccaggcaggcgggaaaatcg−3’(配列番号4)
5’−cgattttcccgcctgcctggtggctcg−3’(配列番号5)
1−2)pPK5ベクターにtatABC遺伝子を搭載したベクター(pPK5−tatABC)の構築
次に、WO2005/103278に記載のTat系分泌装置の増幅プラスミドであるpVtatABCを鋳型にして、配列番号6と配列番号7のプライマーを用いて、tatABC遺伝子をコードする配列を含む約3.7kbpのDNA断片をPCR法によって増幅した。配列番号7のプライマーはpVtatABCと相補的な塩基配列の5’末端側に制限酵素KpnIとApaIの認識配列を付加したデザインにしてある。
得られたPCR産物の末端をBKL Kit(Takara Bio)を用いてリン酸化し、別途KpnI処理し、さらにBKL Kit(TakaraBio)を用いて平滑末端化し、さらにCIAP(Takara Bio)を用いて末端を脱リン酸化処理したpPK5ベクターとライゲーションした。ライゲーション反応にはDNA Ligation Kit Ver.2.1(Takara Bio)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。得られたライゲーション産物をE.coli JM109(Takara Bio)のコンピテントセルに導入し、プラスミドを取得した。挿入断片の塩基配列決定の結果、予想通りの遺伝子が挿入されていることを確認した。こうして得られた、pPK5ベクターにtatABC遺伝子を搭載したベクターをppK5−tatABCと命名した。
5’−cccgcttgatcattcctttaagg−3’(配列番号6)
5’−aatgggccctttggtacccctaaataatatcggtcc−3’(配列番号7)
1−3)pPK5−tatABCベクター中のtatABC遺伝子内KpnIおよびXbaI認識サイトを改変したベクター(pPK6)の構築
1−2)で構築したpPK5−tatABCベクター中のtatABC遺伝子領域の中には、制限酵素KpnIおよびXbaIの認識配列が1ヵ所ずつ存在する。これらの配列を改変するため、KpnI認識配列ggtaccをggaaccに改変した配列とpPK5−tatABCにおけるその周辺配列を含む配列番号8および配列番号9に記載のプライマーと、XbaI認識配列tctagaをtgtagaに改変した配列とpPK5−tatABCにおけるその周辺配列を含む配列番号10および配列番号11に記載のプライマーを合成した。
まず、pPK5−tatABCを鋳型として配列番号8と配列番号9のプライマーを用いて、tatABC遺伝子領域内のKpnI認識サイトを改変するよう約9.4kbpのプラスミド全長をPCR法によって増幅した。
得られたPCR産物を制限酵素DpnIで処理し、メチル化されている鋳型DNAを消化した。DpnI消化後に得られた非メチル化プラスミドを、E.coli JM109(Takara Bio)のコンピテントセルに導入し、プラスミドを取得した。塩基配列決定の結果、予想通りの遺伝子に改変されていることを確認した。こうして得られたpPK5−tatABCベクター中のtatABC遺伝子領域内KpnI認識サイトを改変したベクターをpPK5−tatABCΔKpnIと命名した。
次に、pPK5−tatABCΔKpnIを鋳型として、配列番号10と配列番号11のプライマーを用いて、tatABC遺伝子領域内のXbaI認識サイトを改変するよう約9.4kbpのプラスミド全長をPCR法によって増幅した。
得られたPCR産物を制限酵素DpnIで処理し、メチル化されている鋳型DNAを消化した。DpnI消化後に得られた非メチル化プラスミドを、E.coli JM109(Takara Bio)のコンピテントセルに導入し、プラスミドを取得した。塩基配列決定の結果、予想通りの遺伝子に改変されていることを確認した。こうして得られた、pPK5−tatABCベクター中のtatABC遺伝子領域内KpnIおよびXbaI認識サイトを改変したベクターをpPK6と命名した。
5’−cgtgctctaggggaaccgtgcgttccc−3’(配列番号8)
5’−gggaacgcacggttcccctagagcacg−3’(配列番号9)
5’−cgacgctgaagttgtagagatcatccg−3’(配列番号10)
5’−cggatgatctctacaacttcagcgtcg−3’(配列番号11)
1−4)tatABC遺伝子とTorAシグナル配列が付加されたRmELAをコードする遺伝子を共発現するプラスミドの構築(pPK6−RmELA)
KpnI認識配列(ggtacc)、C.glutamicum ATCC13869由来cspB遺伝子のプロモーター領域、E.coli W3110由来TorAシグナル配列、Rhodothermus marinus由来amidohydrolase(NCBI;WP_012844854.1、配列番号1)をコードする遺伝子(配列番号2)、及びApaI認識部位(gggccc)を、記載順に連結したDNAを化学合成によって取得した(配列番号3)。RmELAをコードする遺伝子は、「コドン使用データベース」に開示されている情報を基に、C.glutamicumのコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように設計した(http://www.kazusa.or.jp/codon; Nakamura, Y. et al, Nucl. Acids Res.,28,292(2000))。
次に、得られた合成DNAを制限酵素KpnIとApaIで処理し、別途KpnIとApaIで処理したpPK6ベクターとライゲーションした。得られたライゲーション産物をE.coli JM109(Takara Bio)のコンピテントセルに導入し、プラスミドを取得した。挿入断片の塩基配列決定の結果、予想通りの遺伝子が挿入されていることを確認した。こうして得られた、Tat系分泌装置をコードするtatABC遺伝子とTorAシグナル配列が付加されたRmELAをコードする遺伝子の共発現プラスミドをpPK6−RmELAと命名した。
1−5)C.glutamicum WDK010株へのプラスミド導入
1−4)で構築したpPK6−RmELAを用いて、C.glutamicum ATCC13869由来の変異株より取得したWDK010株(WO2010/067871)を形質転換して、カナマイシンを25mg/l含むCM2G寒天培地(酵母エキストラクト 10g、ポリペプトン 10g、グルコース 5g、塩化ナトリウム 5g、DL−メチオニン 0.2g、寒天 15g、pH7.2、水で1Lにする)で形質転換体を選択した。得られた形質転換体を、WDK010/pPK6−RmELA株と命名した。
1−6)C.glutamicum WDK010株におけるRmELAの発現
カナマイシン25mg/lを含むシード液体培地(酵母エキストラクト 10g、ポリペプトン 10g、グルコース 5g、大豆加水分解物 窒素量として0.1g、DL−メチオニン 0.02g、pH7.2、水で1Lにする)50mlを入れた全容500ml坂口フラスコ試験管にWDK010/pPK6−RmELA株を1白金耳分接種し、30℃で8時間振とう培養した。このようにして得られた培養液0.9mlを、カナマイシン 25mg/lを含むメイン液体培地(グルコース 120g、硫酸アンモニウム 3g、リン酸二水素カリウム 1.5g、大豆加水分解物 窒素量として0.2g、硫酸マグネシウム七水和物 3g、DL−メチオニン 0.15g、硫酸鉄(II)七水和物 0.03g、硫酸マンガン(II)五水和物 0.03g、硫酸亜鉛七水和物 0.04g、塩化カルシウム 0.25g、チアミン塩酸塩 0.45mg、ビオチン 0.45mg、ディスホームGD−113K(日本油脂株式会社製)0.1ml、pH6.2、水で1Lにする)300mlを入れた1000ml容ジャーファーメンターに添加し、メイン培養を開始した。メイン培養は30℃、通気1/1vvm、アンモニアでpHを6.6に制御し、グルコースが消費されるまで行った。溶存酸素濃度が5%以上になるよう攪拌を500rpm以上で制御した。
得られた培養液を遠心分離し、上清を回収した。この培養上清中のNε−アセチル−L−リジンの分解活性を測定した。その結果、培養上清1mlあたり21Uの活性を検出した。
活性測定は、Nε−アセチル−L−リジン 40mM、Tris−HCl 50mM(pH7.0)、37℃で行い、Nε−アセチル−L−リジンの分解に伴い生成するリジンの濃度を測定した。リジンの測定にはBF−5及びリジン電極(王子計測機器(株)製)を用いた。1Uは、1分あたり1μmolのリジンをNε−アセチル−L−リジンより遊離させる酵素量と定義した。
実施例2:Rhodothermus marinus由来アミノアシラーゼ(RmELA)のE.coliによる生産
2−1)RmELA E.coli発現株の作製
pPK6−RmELAを鋳型として、配列番号12と配列番号13のプライマーを用いてRmELA遺伝子をコードする配列を含む約1.7kbpのDNA断片をPCR法によって増幅した。配列番号12及び配列番号13のプライマーは、RmELA遺伝子と相補的な塩基配列の5’末端側に、それぞれ制限酵素NdeI及びXhoIの認識配列を付加したデザインにしてある。
次に、得られたPCR産物を制限酵素NdeI及びXhoIで処理して、別途NdeIとXhoIで処理したプラスミドベクターpET−21a(Novagen)とライゲーションした。ライゲーション産物を、E.coli JM109(Takara Bio)のコンピテントセルに導入し、プラスミドを取得した。挿入断片の塩基配列決定の結果、予想通りの遺伝子が挿入されていることを確認した。こうして得られた、pET21aベクターを基にしたRmELAをコードする遺伝子発現プラスミドをpET21a−RmELAと命名した。
続いて、プラスミドpET21a−RmELAをE.coli BL21(DE3)(lifetechnologies)のコンピテントセルに形質転換し、アンピシリンを100mg/l含むLB培地で形質転換体を選択した。こうして得られたRmELA E.coli発現株を、BL21(DE3)/pET21a−RmELA株と命名した。
5’−aaaCATATGCTCCTCCTCCCTATGCAGGCA−3’(配列番号12)
5’−aaaaCTCGAGTGGGGAGGCCGGACACAGACCTGCTGC−3’(配列番号13)
2−2)E.coliを用いたRmELAの発現
アンピシリンを100mg/l含むOvernight Express Instant TB培地(Novagen) 50mlを入れた500ml溶坂口フラスコに試験管にE.coli BL21(DE3)/pET21a−RmELA株1白金耳分接種し、37℃で24時間振とう培養した。
得られた培養液を用いて、Nε−アセチル−L−リジンの分解活性を測定したところ、培養液1mlあたり約3.9Uの活性を確認した。一方、RmELA遺伝子を挿入していないプラスミドベクターpET−21a(Novagen)で形質転換したE.coli BL21(DE3)株の培養液を用いた場合には活性は検出されなかった。
実施例3:Rhodothermus marinus由来アミノアシラーゼ(RmELA)の精製
アンピシリンを100mg/l含むOvernight Express Instant TB培地(Novagen)50mlを入れた500ml溶坂口フラスコにBL21(DE3)/pET21a−RmELA株1白金耳分接種し、37℃で24時間振とう培養した。
得られた培養液を遠心分離後に上清を除去して菌体を回収し、生理食塩水(0.85% NaCl)で2回洗浄した後に25mM Tris−HCl(pH8.0)10mlに懸濁したものを洗浄菌体とした。得られた洗浄菌体の総活性は194Uであった。
次に、洗浄菌体を超音波破砕し、遠心分離より得られた上清を可用性タンパク質溶液として回収した。可用性タンパク質溶液の総活性は147U、比活性は1U/mgであった。
続いて、可用性タンパク質溶液を75℃、30分の加熱処理を行った後、遠心分離により得られた上清を加熱処理液として回収した。加熱処理液の総活性は158U、比活性は11U/mgであった。
さらに、加熱処理液(実測pH7.9)を50mM Tris−HCl(pH8.0)で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラムHiTrap Q HP(GEヘルスケアバイオサイエンス製、CV=1ml)に供し、0〜500mMのNaCl濃度勾配で溶出した。その結果、活性画分は約250mMの条件で溶出された。活性画分の総活性は84U、比活性は15U/mgであった。
最後に、この活性画分をアミコンウルトラ−15 30k(ミリポア製)を用いて濃縮し、50mM Tris−HCl(pH8.0)150mM NaClで平衡化したゲルろ過クロマトグラフィーカラムHiload 16/60 superdex 200pg(GEヘルスケアバイオサイエンス製、CV=120ml)に供し、1ml/minの流速でタンパクの溶出を行った。その結果、活性画分の総活性は38U、比活性は28U/mgであった。この活性画分をポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、分子量約60kDaの単一バンドになる程度に精製されたことが分かった。また、ゲルろ過クロマトグラフィーでの溶出条件から予想される分子量は約60kDaであり、本酵素は単量体で存在すると考えられた。
実施例4:Rhodothermus marinus 由来アミノアシラーゼ(RmELA)の基質特性
4−1)アシルリジン加水分解
本酵素のアシルリジン加水分解の基質特異性を見るために、各種アシルリジンに対する、本発明の酵素の反応性を調べた。結果の一覧を以下の表2に示す。酵素は実施例3で取得した精製酵素を用いて評価した。活性測定は、各種アシルリジン4mM、Tris−HCl 100mM(pH7.0)、37℃で行い、アシルリジンの分解に伴い生成するリジンの濃度を測定することで算出した。L−リジンの測定にはBF−5及びリジン電極(王子計測機器(株)製)を、D−リジンの測定にアミノ酸アナライザー分析((株)日立製作所製)は用いた。1Uは、1分あたり1μmolのリジンをアシルリジンより遊離させる酵素量と定義した。
本酵素はNε−アセチル−L−リジン及びNε−ベンゾイル−L−リジンに対して分解活性を示す一方で、Nα−アセチル−L−リジン及びNα−ベンゾイル−L−リジンに対しては加水分解活性を示さなかった。また、Nε−アセチル−D−リジンに対して加水分解活性を示さなかった。すなわち、本酵素はε−位アミノ基とL体リジンへの高い選択性を持つ酵素であることが示された。
4−2)アシルリジン脱水縮合
本酵素のアシルリジン脱水縮合の基質特異性を見るために、L−リジンと各種カルボン酸を基質として本酵素によるアシルリジン合成能を調べた。酵素は実施例3で取得した精製酵素を用いて評価した。合成反応は、L−リジン塩酸塩45mM、各種カルボン酸45mM、Tris−HCl 100mM(pH8.0)、メタノール10%(v/v)、45℃で行い、反応液を質量分析(DART−MS:日本電子(株)製)することでアシルリジンの分子量の検出を確認した。
その結果、本酵素によってL−リジンと各種カルボン酸〔オクタン酸(カプリル酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミスチリン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、リノール酸、オレイン酸、安息香酸、メトキシメチル安息香酸、フェニルプロピオン酸、シンナモイル酸、及びメトキシシンナモイル酸〕の縮合物が反応液中に生成することが分かった。酵素を添加していない場合には、縮合物の生成は検出されなかった。
また、L−リジン塩酸塩とオクタン酸を基質とした酵素反応液、及びL−リジン塩酸塩とドデカン酸を基質とした酵素反応液についてはHPLC分析によって、それぞれNε−オクタノイル−L−リジン及びNε−ドデカノイル−L−リジンが生成していることを確認した。また、これらの反応液中にはNα−オクタノイル−L−リジン及びNα−ドデカノイル−L−リジンは検出されず、ε−位アミノ基への高い選択性を持つことが示された。HPLC分析は、カラムYMC−UltraHT Pro C18、50x2.0mmID、S−2um、12nm(YMC)、移動層0.3M NaHPO/MeOH=1/1、UV 210nmで行った。
以上の結果から、本酵素はL−リジンとカルボン酸に作用してNε−アシルリジンを生成すること、作用可能なカルボン酸には飽和または不飽和の直鎖脂肪酸や、飽和または不飽和の側鎖を有する芳香族カルボン酸が含まれることが示された。
実施例5:Rhodothermus marinus由来アミノアシラーゼ(RmELA)の温度及びpHに対する影響
5−1)温度に対する影響
実施例3記載の方法で取得した精製酵素を用いて、Nε−アセチル−L−リジンを基質とした場合の酵素の反応至適温度及び温度安定性を調べた。
所定温度(30〜80℃)、pH7.0(50 mM Tris−HCl緩衝液での活性を測定した。その結果を図1に示す。活性は最高値における活性値を100とした時の相対活性(%)で表した。本酵素の反応至適温度は75℃であった。
続いて、所定温度(30〜100℃)で1時間インキュベートした後の残存活性を測定した。その結果を図2に示す。活性はインキュベート前の活性値を100とした時の相対活性(%)で表した。本酵素は、各温度で1時間インキュベートした場合、80℃まで活性の低下が認められず安定であった。
Nε−アセチル−L−リジンに対して加水分解活性を示すStreptomyces mobarensis由来のELAは40℃以上で1時間インキュベートした場合、活性が低下することが分かっており、本酵素はそれよりも安定であることが示された。
5−2)pHに対する影響
実施例3記載の方法で取得した精製酵素を用いて、Nε−アセチル−L−リジンを基質とした場合の酵素の至適pH及びpH安定性を調べた。
37℃、各種緩衝液(pH4.2〜6.0:酢酸緩衝液、pH7.2〜8.8:Tris−HCl緩衝液、pH9.3〜9.8:ホウ酸緩衝液)を用いて、種々のpHにおける活性を測定した。その結果を図3に示す。活性は最高値における活性値を100とした時の相対活性(%)で表した。本酵素の至適pHはpH5.0であった。
Streptomyces mobarensis由来のELAは至適pHがpH8.0〜pH9.0にあり、pH4.0〜6.0の弱酸性領域では活性が大きく低下する傾向があるのに対して、本酵素は弱酸性領域(pH4.5〜5.5)に至適pHを持つ酵素であることが示された。
続いて、各種緩衝液(pH2.2〜3.0:リン酸緩衝液、pH4.1〜6.0:酢酸緩衝液、pH7.1〜8.9:Tris−HCl緩衝液、pH9.5〜10.9:ホウ酸緩衝液)中で、37℃、1時間インキュベートした後の残存活性を測定した。その結果を図4に示す。活性はインキュベート前の活性値を100とした時の相対活性(%)で表した。本酵素は37℃、1時間のインキュベート中、pH6.0〜8.0の範囲で安定であった。
実施例6:酵素活性を維持した状態でのRmELA発現株の殺菌
RmELAのC.glutamicum発現株を、酵素活性を維持した状態で加熱殺菌することが可能か調べた。実施例1、1−6)記載の方法で取得した培養液150μlをPCRチューブに分注し、ブロックヒーターを用いて75℃で30分間熱処理を行ったものを熱処理培養液とした。熱処理培養液及び、熱処理培養液を生理食塩水(0.85% NaCl)で段階希釈(〜希釈倍率x10)したものを、カナマイシンを25mg/l含むCM2G寒天培地(酵母エキストラクト 10g、ポリペプトン 10g、グルコース 5g、塩化ナトリウム 5g、DL−メチオニン 0.2g、寒天 15g、pH7.2、水で1Lにする)に塗布して、形成したコロニーをカウントすることでRmELA発現株の生菌数を調査した。その結果、コロニー形成は認められず、75℃、30分間の熱処理で培養液が殺菌されていることが分かった。熱処理していない培養液を同様の方法で調査をした場合、生菌数は7.0x1010cfu/mlであった。
続いて、培養液及び上記載の熱処理培養液をそれぞれ遠心分離し、上清を回収し上清中のNε−アセチル−L−リジンの分解活性を測定した。その結果、熱処理前後で同等の酵素活性値を示し、熱処理によって酵素活性の低下が認められないことが分かった。
以上の結果から、RmELA発現菌を、酵素活性を維持した状態で加熱殺菌することが可能であることが示された。
実施例7:Rm−ELAの保存安定性
実施例1、1−6)記載の方法で取得したRmELAのC.glutamicum発現株の培養液を、遠心分離して上清を回収した後に、0.45μmのフィルターで膜除菌したものをRmELA酵素液とした。また、Streptomyces mobarensis由来ELA(SmELA)のC.glutamicum発現株であるWDK010/pPKT−tatABC株(WO2010067871)を同様の手順で培養及び除菌したものをSmELA酵素液とした。
これらの酵素液を4℃、15℃、25℃条件で保管し、酵素活性の推移を調べた。その結果を図5に示す。活性は保管開始時の活性値を100とした時の相対活性(%)で表した。RmELA酵素液はいずれの保管温度においても酵素活性が低下しなかった。一方、SmELA酵素液は保管日数が経つにつれて酵素活性が低下する傾向があり、37日後の残存している活性は4℃保管で約6割まで低下した。
以上の結果から、本発明での酵素(RmELA)はSmELAと比較し安定的に保存が可能であることが示された。
実施例8:RmELA酵素液によるNε−ドデカノイル−L−リジンの合成
実施例7記載の方法で調整したRmELA酵素液を用いて、Nε−ドデカノイル−L−リジンの合成反応を実施した。終濃度が、ドデカン酸 300mmol/L、L−リジン塩酸塩 300mmol/L、ZnSO 0.1mmol/L、メタノール 10%、RmELA酵素液 3U/mlとなるように反応液200mlを調製し、500ml溶ジャーファーメンターを用いて300rpmにて攪拌した。pHは7.0となるように1N NaOHで調製し、反応温度は55℃となるように調整した。
反応中、経時的に反応液のサンプリングを行い、反応液中のL−リジン濃度を測定した結果、24時間後に投入L−リジンの98%が消費されていることが分かった(図6、反応開始時のリジン濃度を100%とした)。また、24時間後の反応液をHPLCにて分析したところ、Nε−ドデカノイル−L−リジンが対L−リジン収率で98%生成しており、消費されたL−リジンがNε−ドデカノイル−L−リジンに変換されていることが確認された。なお、Nα−ドデカノイル−L−リジンは対L−リジン収率0.06%しか生成しなかった。
リジンの測定にはBF−5及びリジン電極(王子計測機器(株)製)を用いた。また、HPLC分析は、カラム YMC−UltraHT Pro C18、50x2.0mm I.D.((株)YMC製)、移動層 NaHPO(pH3.0)/MeOH=3/7、UV 210nmで行った。
反応pHをpH7.0からpH6.0に変更して、上記と同様の方法でNε−ドデカノイル−L−リジンの合成反応を実施したところ、24時間後に投入L−リジンの96%が消費された(図7)。生成したNε−ドデカノイル−L−リジンの結晶形状を光学顕微鏡で観察すると、pH7.0での反応で生成した結晶と比較して短径が3倍に増大していた(図8)。pH7.0条件では反応液中のドデカン酸が乳化しており粘性の高い溶液になっている。一方で、pH6.0条件では水層(L−リジン水溶液)と油層(ドデカン酸)の2層分離した状態であり、粘性の低い溶液となっている。こうした液性の違いが酵素反応で生成するNε−ドデカノイル−L−リジン結晶形成に変化を与えていると考えられた。
Streptomyces mobarensis由来のELA(SmELA)は至適pHがpH8.0〜pH9.0にあり、pH4.0〜6.0の弱酸性領域では活性が大きく低下するため、pH6.5以下での条件でNε−ドデカノイル−L−リジンの合成反応がほとんど進行しないことが知られていた(JAOCS,Vol.82,No.9,2005)。以上の結果から、本発明の酵素RmELAはpH弱酸性領域でNε−ドデカノイル−L−リジンを合成可能な新規な酵素であり、当条件で生成するNε−ドデカノイル−L−リジンの結晶が、ドデカン酸の乳化が進むpH7.0付近での反応で生成する結晶と比較して短径が増大する傾向があることが示された。
実施例9:RmELA酵素液によるNε−オクタノイル−L−リジンの合成
実施例7記載の方法で調整したRmELA酵素液を用いて、Nε−オクタノイル−L−リジンの合成反応を実施した。終濃度が、オクタン酸300mmol/L、L−リジン塩酸塩 300mmol/L、ZnSO 0.1mmol/L、RmELA酵素液 2.1U/mlとなるように反応液100mlを調製し、200ml溶ジャーファーメンターを用いて300rpmにて攪拌した。pHは7.0となるように1N NaOHで調製し、反応温度は50℃となるように調整した。
反応中、経時的に反応液のサンプリングを行い、反応液中のL−リジン濃度を測定した結果、23時間後に投入L−リジンの80%が消費されていることが分かった(図9、反応開始時のリジン濃度を100%とした)。また、23時間後の反応液をHPLCにて分析したところ、Nε−オクタノイル−L−リジンが対L−リジン収率で80%生成しており、消費されたL−リジンがNε−オクタノイル−L−リジンに変換されていることが確認された。なお、Nα−オクタノイル−L−リジンのピークは検出されなかった。
HPLC分析は、カラムYMC−Pack ODS−A 150×6.0mmI.D.、S−5um、12nm((株)YMC製、品番:AA12S05−1506WT)を用いて、溶離液:MeOH/リン酸緩衝液=50/50(15分) → グラジエント(15分) → 90/10 → グラジエント(3分) → 50/50(12分)(リン酸緩衝液=0.1mol/L−NaHPO aq.にHPOを加えてpH2.5に調整)の溶出条件下で行った。
上記反応条件における基質(オクタン酸、L−リジン塩酸塩)終濃度を、(1)500mmol/L、(2)750mmol/L、(3)1000mmol/Lに変更してNε−オクタノイル−L−リジンの合成反応を実施した。
反応中、経時的に反応液のサンプリングを行い、反応液中のL−リジン濃度を測定した結果、いずれの条件でも反応時間の経過とともにL−リジンが減少し、Nε−オクタノイル−L−リジン合成反応が進行することが分かった(図10)。反応時間と投入L−リジンに対する消費率はそれぞれ、(1)35時間後に87%、(2)35時間後に92%、(3)57時間後に94%となった。
Streptomyces mobarensis由来のELA(SmELA)を用いて、同様にNε−オクタノイル−L−リジンの合成反応を実施したところ、基質(オクタン酸L−リジン塩酸塩)終濃度が300mmol/Lにおいては、反応時間の経過とともにL−リジンが減少し、Nε−オクタノイル−L−リジン合成反応が進行することが確認された(図11)。一方で、終濃度が500mmol/L条件では、反応液中のL−リジン量に変化が見られず、反応が進行しないことが分かった(図11)。基質濃度を高くすることで、酵素活性が失活または反応阻害をうけていると予想された。
以上の結果から、本発明の酵素RmELAは、既知酵素SmELAが反応阻害を受ける基質(オクタン酸、L−リジン塩酸塩)濃度条件においても、Nε−オクタノイル−L−リジン合成反応を進行させる酵素であることが示された。
SmELAでのNε−オクタノイル−L−リジンの合成反応における基質終濃度以外の条件は以下の通りに実施した。終濃度が、ZnSO 0.1mmol/L、SmELA酵素液 5.7U/mlとなるように反応液100mlを調製し、200ml溶ジャーファーメンターを用いて300rpmにて攪拌した。pHは8.0となるように1N NaOHで調製し、反応温度は30℃となるように調整した。
SmELA酵素液の活性値は、Nε−アセチル−L−リジン 40mM、Tris−HCl 50mM(pH8.0)、37℃で行い、Nε−アセチル−L−リジンの分解に伴い生成するリジンの濃度から算出し、1Uは1分あたり1μmolのリジンをNε−アセチル−L−リジンより遊離させる酵素量と定義した。
本発明は、Nε−アシル−L−リジンの製造に有用である。

Claims (14)

  1. 以下(A)〜(C)のいずれかのタンパク質の存在下において、カルボン酸もしくはその塩およびL−リジンもしくはその塩を反応させて、Nε−アシル−L−リジンを生成することを含む、Nε−アシル−L−リジンの製造方法:
    (A)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (B)配列番号1のアミノ酸配列において、1〜50個のアミノ酸残基が挿入、付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質;または
    (C)配列番号1のアミノ酸配列と90%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、Nε−アシル−L−リジン特異的アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質。
  2. 前記タンパク質がロドサーマス(Rhodothermus)属に属する細菌に由来する、請求項1記載の方法。
  3. 前記タンパク質が精製酵素である、請求項1または2記載の方法。
  4. 反応が前記タンパク質を産生する微生物またはその処理液を用いて行われる、請求項1または2記載の方法。
  5. 前記微生物がコリネバクテリウム属に属する細菌である、請求項4記載の方法。
  6. 前記微生物がコリネバクテリウム・グルタミカムである、請求項5記載の方法。
  7. カルボン酸が、炭素原子数5以上のカルボン酸である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
  8. カルボン酸が、オクタン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、リノール酸、オレイン酸、安息香酸、メトキシメチル安息香酸、フェニルプロピオン酸、シンナモイル酸、またはメトキシシンナモイル酸である、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
  9. カルボン酸がオクタン酸またはドデカン酸であり、Nε−アシル−L−リジンがΝε−オクタノイル−L−リジンまたはΝε−ドデカノイル−L−リジンである、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
  10. 反応が水溶性溶媒中で行われることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
  11. 処理液が殺微生物処理液である、請求項4〜10のいずれか一項記載の方法。
  12. 反応が40℃以上で行われる、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  13. 反応がカルボン酸もしくはその塩の非乳化条件下で行われる、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
  14. 反応がカルボン酸もしくはその塩またはL−リジンもしくはその塩を500mmol/L以上の濃度で含む溶液中で行われる、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
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