JP6728524B2 - 鋼材の中心偏析評価方法 - Google Patents
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Description
特許文献1は、偏析エッチプリント法により鋼材の断面組織を転写したものを画像処理し、ビデオを見ながら画像を最適輝度に調整し、有害偏析粒のみを選択し、その信号を2値化により鮮明化し、その後、面積率及び/又は平均偏析粒径を求め、求めた値と予め鋼種毎に設定しておいた面積率及び/又は平均偏析粒径とを比較し、偏析を推定する鋼材の偏析検出方法を開示する。ここで、エッチプリント法とは「ピクリン酸系腐食液で鋼材断面をエッチングしたあと、インクを塗布して軽く研磨し表面のインクを拭き取る。その後、腐食部に残ったインクをセロハン紙等に転写することで、断面の偏析状態を可視化する方法(転写法)」である。
しかしながら、特許文献1に開示された鋼材の中心偏析を評価する技術を用いた場合、中心偏析と中心付近以外に発生したミクロ偏析は、エッチプリント画像において同程度の輝度であるため、従来技術のように一義的に設定した輝度閾値による2値化では、中心偏析のみだけでなくミクロ偏析についても抽出され過検出が多く発生する虞が大である。
即ち、本発明にかかる鋼材の中心偏析評価方法は、連続鋳造機で鋳造された鋼材を、当該鋼材の鋳造方向に垂直な方向に切断するとともに、前記切断面から凝固組織の転写像を作成し、前記転写像における低輝度領域に対して、2値化処理及びラベリング処理することで、中心偏析が存在する領域である偏析領域を抽出すると共に、当該偏析領域の特徴量を求め、前記偏析領域の特徴量があらかじめ設定した閾値以下あるいは以上の領域を、偏析を検出する検出対象から除外するものであって、前記偏析領域の特徴量として、各検出領域の座標から求まる中心偏析ラインからの距離、及び各検出領域の高さの2指標を採用し、前記2指標が、所定の閾値以上乃至は所定の閾値以下の領域を除外することを特徴とする。
本発明は、硫化水素が存在している環境(サワー環境)下で使用される耐サワー鋼向けのスラブ1(鋼材、鋼片)を連続鋳造する際に、鋳造されたスラブ1が水素誘起割れに対する十分な耐性(耐HIC性)を備えているかどうかを、スラブ1の段階で判断する技術に好適であって、特に、スラブの断面の転写画像(エッチプリント画像)を画像処理することで、各偏析領域の特徴量を求め、その特徴量があらかじめ設定した閾値以下あるいは以上の領域を検出対象から除外し、中心偏析Aを確実に抽出する技術(画像処理技術)に関するものである。
腐食性の高い硫化水素が含まれる天然ガスの輸送管に使用される鋼材(以下、耐サワー鋼と呼ぶ)には、硫化水素雰囲気の環境でも使用に耐える特性が求められる。すなわち、硫化水素が存在する雰囲気下では、硫化水素中の水素は鋼中に浸入し、浸入した水素が介在物(例えば、MnS、NbC、NbNなど)の周辺に集積し、介在物を起点に水素誘起割れ(Hydrogen Induced Cracking、以降の明細書では単にHICという)が発生する。
従来から、スラブの内部品質(スラブの内部の中心偏析状態)から耐HIC性を評価する方法が提案されており、耐HIC性を満足するために必要な中心偏析Aの基準が示されている。例えば、濃度マッピング分析を利用してMn偏析度で基準を示す方法が提案されている。しかし、濃度マッピング分析を行う場合には鏡面研磨が必要であり、耐HIC性を満足する偏析粒の偏析度を調査するためには、鏡面研磨後にマッピングを実施する必要がある。つまり、この方法には、鏡面研磨の分だけ評価に時間を要するなどして不便である。また、偏析粒のサイズや個数密度から耐HIC性を評価する方法なども提案されている。
属人性を排除するためには、画像処理の手法を用いることが考えられるが、当業者常法の手法のみを用いると、例えば、HICに大きく関与する中心偏析Aと、それ以外の偏析(例えば、スラブの周縁部に存在する偏析B)とをうまく分離できず、正確な耐HIC性の評価ができないことがあった。
本発明の鋼材の中心偏析評価手法は、スラブ断面に対するエッチプリント画像の低輝度領域を2値化処理・ラベリング処理することで抽出した各偏析領域の特徴量を求め、その特徴量があらかじめ設定した閾値以下あるいは以上の領域を検出対象から除外することを特徴とする。
この方法を用いることで、過検出の主原因であるミクロ偏析Bに特有の特徴量をもつ領域を検出領域から除外することができ、過検出を低減することが可能となる。
こうすることで、ミクロ偏析B(中心偏析ラインから離れた位置に偏析する)を除外することができ、過検出を低減できるようになる。
さらに、抽出した特徴量を、各検出領域の高さとし、閾値以下の領域を除外するとよい。
また、抽出した特徴量を、各検出領域の中心偏析ラインからの距離および検出領域の高さの2指標とするとよい。
本発明の鋼材の中心偏析評価方法は、耐サワー鋼のみならず、C=0.5%の金型用鋼や通常のC=0.20%前後の厚板用の鋼なども含めて、ドリルサンプルのC偏析調査に対する簡易評価方法として使用できるものである。
まず、連続鋳造されたスラブなどの鋼材に対して、例えば、その両端部を、鋼材の鋳造方向に垂直な方向に切断し、切断面の転写画像を得るようにする。具体的には、スラブの断面に対して、ピクリン酸系腐食液で鋼材断面をエッチングし、その後、インクを塗布して軽く研磨し表面のインクを拭き取る。そした、腐食部に残ったインクをセロハン紙等に転写することで、断面の偏析状態を可視化する(エッチプリント画像)。
S2において、エッチプリント画像(スキャン後の画像)に対して、画像の高さ方向(スラブ短辺に沿った方向)における中心偏析Aの位置(Yc)を算出する。
次に、S3において、中心偏析Aが抽出できる程度の輝度を閾値として、エッチプリント画像を2値化する。2値化の閾値は、例えば3σ法を活用することで、自動で偏析領域を抽出することが可能である。ただし、このとき中心偏析Aとミクロ偏析B(耐HICの判定に関与しない偏析)は同程度の輝度レベルであるため、上記のように一義的な閾値で2値化したとき、抽出された領域には中心偏析Aだけでなくほかにミクロ偏析Bも多く含んでおり、過検出な状態となる。
その後、S5〜S8の処理を行う。
具体的には、中心偏析ラインからの距離による領域制限ということで、各領域に対する高さ座標(Y)を算出し、中心偏析ラインの高さ座標(Yc)との距離[d(Y-Yc)]を算出する。
図3は、S4で検出された全ての領域について、中心偏析ラインからの距離の分布を示す。
図4は、S4で検出された全ての領域のうち、中心偏析ラインからの距離が閾値(Td1)以上の領域を除外した場合の、過検出点の低減率および未検出点の増加率を示す。例えば、未検出率を5%以内に抑えつつ過検出を抑制したい場合には、図4のグラフから、閾値(Td1)を2.7程度に設定することが望ましいことがわかる。その場合、過検出点を40%抑制することが可能である。
ミクロ偏析Bはデントライト樹間に析出するという性質上、偏析の厚みが中心偏析Aに比べ小さくなる特性がある。この特性に着目し、領域の高さがあらかじめ指定する一定値(Th1)以上の領域のみに制限することで、ミクロ偏析Bの検出を抑制し検出精度を向上させることが可能となる。
例えば、未検出率を5%以内に抑えつつ過検出を抑制したい場合には、図6のグラフから閾値(Th1)を0.55程度に設定することが望ましいことがわかる。その場合、過検出点を40%抑制することが可能である。また、領域の高さに替わって各領域のアスペクト比(H/W)に閾値を設け、その閾値以上の領域のみに制限することで同等の効果が得られる。
そこで、2指標(中心偏析ラインからの距離の閾値(Td2)および領域の高さの閾値(Th2))により検出領域を制限することで、未検出の増加を抑制しより多くの過検出を低減することが可能となる。具体的には、S4で検出された全ての領域のうち、Td2以上かつTh2以下の領域を除外することで、多くの過検出点を抑制し検出精度を向上させることが可能となる。
以上述べたように、連続鋳造機で鋳造された鋼材を、当該鋼材の鋳造方向に垂直な方向に切断するとともに、切断面から凝固組織の転写像を作成し、転写像における低輝度領域に対して、2値化処理及びラベリング処理することで、中心偏析Aが存在する領域である偏析領域を抽出すると共に、当該偏析領域の特徴量を求め、偏析領域の特徴量があらかじ
め設定した閾値以下あるいは以上の領域を、偏析を検出する検出対象から除外することで、エッチプリント画像の2値化により得られる偏析領域から、ミクロ偏析Bを除外し高精度に中心偏析Aを検出できるようになる。
B ミクロ偏析
Claims (1)
- 連続鋳造機で鋳造された鋼材を、当該鋼材の鋳造方向に垂直な方向に切断するとともに、前記切断面から凝固組織の転写像を作成し、前記転写像における低輝度領域に対して、2値化処理及びラベリング処理することで、中心偏析が存在する領域である偏析領域を抽出すると共に、当該偏析領域の特徴量を求め、前記偏析領域の特徴量があらかじめ設定した閾値以下あるいは以上の領域を、偏析を検出する検出対象から除外するものであって、
前記偏析領域の特徴量として、各検出領域の座標から求まる中心偏析ラインからの距離、及び各検出領域の高さの2指標を採用し、前記2指標が、所定の閾値以上乃至は所定の閾値以下の領域を除外する
ことを特徴とする鋼材の中心偏析評価方法。
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