(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、印刷対象となる錠剤Tを搬送する搬送部10と、その搬送部10に錠剤Tを供給する供給部20と、搬送部10の上方に設けられた複数のレーザセンサ30と、搬送部10により搬送される錠剤Tを撮像する複数の撮像部40と、搬送部10により搬送される錠剤Tに印刷を行うインクジェットヘッド50と、搬送部10により搬送される印刷済の錠剤Tを乾燥させる乾燥部60と、印刷済の錠剤Tの印刷状態を検査する検査部70と、乾燥済の錠剤Tを回収する回収部80と、各部を制御する制御部90とを備えている。
搬送部10は、複数の搬送ベルト11、第1のプーリ12、第2のプーリ13及びモータ14を有している。各搬送ベルト11は、それぞれ無端状に形成されており、第1のプーリ12及び第2のプーリ13に並列に架け渡されている。第1のプーリ12は、駆動源となるモータ14に連結されており、駆動プーリとして機能する。第2のプーリ13は従動プーリとして機能する。モータ14は制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。
このような搬送部10は、モータ14による第1のプーリ12の回転によって第2のプーリ13とともに各搬送ベルト11を回転させ、各搬送ベルト11上の錠剤Tを図1及び図2中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。各搬送ベルト11は複数の搬送ラインを構成することになる。また、搬送部10は、各搬送ベルト11において、搬送ベルト11上の錠剤Tを吸引によって搬送ベルト11に保持して一列で搬送し、所望の位置で錠剤Tの保持を解除することが可能に構成されている。ただし、この錠剤Tを吸引して保持する機構は必須のものではなく、搬送部10としては、各種の搬送機構を用いることが可能である。
供給部20は、搬送部10の端部、すなわち各搬送ベルト11における搬送方向A1の上流側の端部に設けられている。この供給部20は、多数の錠剤Tを収容し、各搬送ベルト11に対して搬送ベルト11ごとに一つずつランダムに錠剤Tを供給することが可能に構成されている。錠剤Tの供給時、供給部20は、錠剤Tの表裏を無視して各搬送ベルト11に錠剤Tを供給する。錠剤Tにおいて、割線(例えば溝部)の有る面が表であり、割線の無い面が裏である。供給部20は制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。
レーザセンサ30は、供給部20より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト11ごとに一つずつ搬送ベルト11の上方に設けられている。このレーザセンサ30は、搬送ベルト11により搬送される錠剤Tの上面にレーザ光を照射することが可能な位置に配置されており、さらに、水平面内で搬送方向A1に交わる方向(例えば直交する方向)に並べられている。レーザセンサ30は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト11上の錠剤Tの有無を検出し、撮像部40やインクジェットヘッド50などのトリガーセンサとして機能する。レーザセンサ30としては、例えば、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。各レーザセンサ30は制御部90に電気的に接続されており、制御部90にトリガ信号を送信する。
撮像部40は、各レーザセンサ30より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト11ごとに一つずつ搬送ベルト11の上方に設けられている。これらの撮像部40は、水平面内で搬送方向A1に交わる方向(例えば直交する方向)に並べられている。撮像部40は、レーザセンサ30により送信されたトリガ信号に基づくタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像を取得し、取得した画像を制御部90に送信する。撮像部40としては、例えば、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種の撮像部を用いることが可能である。各撮像部40は制御部90に電気的に接続されており、それらの駆動が制御部90により制御される。
インクジェットヘッド50は、複数のノズル51から個別にインクを吐出するインクジェット方式の印刷ヘッドである。このインクジェットヘッド50は、各撮像部40より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、各搬送ベルト11に渡って、各ノズル51が並ぶノズル列が水平面内で搬送方向A1と交わるように(例えば直交するように)搬送ベルト11の上方に設けられている。インクジェットヘッド50としては、例えば、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。インクジェットヘッド50は制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。なお、インクジェットヘッド50は、ノズル51ごとに吐出するか否かを設定することが可能であるが、吐出使用の各ノズル51の個々の駆動素子に個別に、吐出条件として例えば吐出圧や吐出量等を決定する電圧値などを設定することはできず、吐出使用の全てのノズル51で吐出条件が同じになるインクジェットヘッドである。
乾燥部60は、インクジェットヘッド50より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、水平面内で搬送方向A1と交わるように(例えば直交するように)搬送ベルト11の上方に設けられている。そして、乾燥部60は、各搬送ベルト11上の個々の錠剤Tに塗布されたインクを乾燥することが可能になっている。乾燥部60としては、例えば、放射熱により乾燥対象を乾燥させるヒータ、あるいは、温風や熱風により乾燥対象を乾燥させる送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥部60は制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。
検査部70は、錠剤Tの印刷状態を検査するため、乾燥部60より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト11ごとに一つずつ搬送ベルト11の上方に設けられている。これらの検査部70は、水平面内で搬送方向A1に交わる方向(例えば直交する方向)に並べられている。検査部70は、レーザセンサ30により送信されたトリガ信号に基づくタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像を取得し、取得した画像を制御部90に送信する。検査部70としては、例えば、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各検査部70は制御部90に電気的に接続されており、それらの駆動が制御部90により制御される。
回収部80は、検査部70より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送部10の端部、すなわち各搬送ベルト11における搬送方向A1の下流側の端部に設けられている。この回収部80は、各搬送ベルト11による保持が解除されて落下する錠剤Tを順次受けて回収することが可能に構成されている。なお、搬送部10は、各搬送ベルト11上の個々の錠剤Tが所望の位置、例えば、各搬送ベルト11における搬送方向A1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。
ここで、錠剤Tはその表裏を無視して各搬送ベルト11上に供給され、錠剤Tが表(割線の有る面)である場合だけ、インクジェットヘッド50による印刷が行われる。このため、インクジェットヘッド50より下流側の各搬送ベルト11上には印刷済の錠剤Tと未印刷の錠剤Tが混在することになる。さらに、検査部70より下流側の各搬送ベルト11上には、印刷済の錠剤Tの中で検査合格(印刷良好)の錠剤Tと検査不合格(印刷不良)の錠剤Tが混在することになる。
このため、回収部80は、検査合格の錠剤T、検査不合格の錠剤T及び未印刷の錠剤Tを区別して収容することが可能に構成されている。例えば、回収部80は、検査合格の錠剤Tをそのまま落下させて回収部80内の第1の容器に収容し、一方で、落下中の検査不合格の錠剤Tにエアーを吹き付け、検査不合格の錠剤Tを回収部80内の第2の容器に回収し、さらに、落下中の未印刷の錠剤Tにエアーを吹き付け、未印刷の錠剤Tを回収部80内の第3の容器に回収するように構成されている。
制御部90は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)を備えている。この制御部90は、処理情報や各種プログラムに基づいて供給部20、撮像部40、インクジェットヘッド50、乾燥部60及び検査部70を制御する。また、制御部90は、各レーザセンサ30から送信されるトリガ信号、撮像部40や検査部70から送信される画像などを受信する。例えば、制御部90は、検査部70から送信された画像に基づき、印刷された錠剤Tの印刷状態を判断し、印刷状態が良好であると判断した場合、その錠剤Tを合格とし、前述の第1の容器に回収する制御を行う。一方、印刷状態が不良であると判断した場合には、その錠剤Tを不合格とし、前述の第2の容器に回収する制御を行う。
図3に示すように、制御部90は、撮像部40から送信される画像に基づく判定を行う判定部91と、印刷モードを切り替える切替部92と、インクジェットヘッド50を制御するヘッドコントローラ93とを備えている。この制御部90には、ユーザによる入力操作を受け付ける入力部92aが電気的に接続されている。
判定部91は、撮像部40から送信された画像に基づき、各搬送ベルト11上の錠剤Tごとに、錠剤Tの表裏(例えば錠剤Tの上面における割線の有無)、錠剤Tの位置(例えば搬送ベルト11上での錠剤Tの位置)、錠剤Tの向き(例えば割線の角度及び回転方向)を判定し、錠剤Tの表裏情報、錠剤Tの位置情報及び錠剤Tの向き情報を生成する。その後、判定部91は、生成した錠剤Tの表裏情報、錠剤Tの位置情報及び錠剤Tの向き情報をヘッドコントローラ93に送信する。
切替部92は、入力部92aに対するユーザの入力操作に応じて、印刷モードを第1の印刷モード又は第2の印刷モードに切り替える。第1の印刷モードは通常の印刷モードであり、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tに対して同時に印刷を行うモードである。また、第2の印刷モードは通常と異なる印刷モードであり、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tに対して錠剤Tごとに、すなわち個別に印刷を行うモードである。
入力部92aは、ユーザによる入力操作に応じて入力信号を切替部92に送る。入力部92aとしては、例えば、スイッチやボタン、キーなどの入力デバイスを用いることが可能である。一例として、入力部92aの第1のボタンがユーザにより押下されると、その旨を示す入力信号が切替部92に送られ、印刷モードが第1の印刷モードに切り替えられる。また、入力部92aの第2のボタンがユーザにより押下されると、その旨を示す入力信号が切替部92に送られ、第2の印刷モードに切り替えられる。
ヘッドコントローラ93は、第1の印刷モードや第2の印刷モードに基づいてインクジェットヘッド50を制御する。なお、ヘッドコントローラ93は、前述の印刷モードに基づく制御に先立って、各搬送ベルト11上の錠剤Tの表裏情報に基づき、上面が表である錠剤Tに印刷を行うことを許可し、上面が裏である錠剤Tに印刷を行うことを禁止する。ただし、錠剤Tの種類によっては錠剤Tの裏に印刷を行う場合がある。このため、錠剤Tの裏に対して印刷を行う場合には、上面が裏である錠剤Tに印刷を行うことも許可する。
第1の印刷モードにおいて、ヘッドコントローラ93は、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとの印刷データ(二次元の印刷データ)を一つの印刷データ(二次元の印刷データ)にまとめ、その印刷データを搬送方向A1のドットピッチdごとにノズル列分の1ラインずつインクジェットヘッド50に出力する。このとき、合成後の印刷パターンのうち搬送方向A1の下流側から、一回の吐出に使うノズル列分の1ラインのデータが順次ドットピッチdだけずらしてインクジェットヘッド50に与えられる(詳しくは後述する)。これにより、インクジェットヘッド50は、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tに同時に印刷を行うことになる。このとき、ヘッドコントローラ93は、インクジェットヘッド50に所定の吐出条件でインクを吐出させる。この吐出条件は予め設定されており、制御部90の記憶部に保存されている。
第2の印刷モードにおいて、ヘッドコントローラ93は、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとの印刷データを交互に前述のドットピッチdの1/2だけずらしてインクジェットヘッド50に出力する。このとき、錠剤Tごとの印刷パターンのうち搬送方向A1の下流側から、一回の吐出に使うノズル列分の1ラインのデータが錠剤Tごとに交互にドットピッチdの1/2だけずらしてインクジェットヘッド50に与えられる(詳しくは後述する)。これにより、インクジェットヘッド50は、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷を行うことになる。このとき、ヘッドコントローラ93は、インクジェットヘッド50に、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとの吐出条件でインクを吐出させる。つまり、錠剤Tごとに一回の吐出に使うノズル列分の1ラインのデータにおいて吐出条件を相違させることができる。この錠剤Tごとの吐出条件(例えば搬送ラインごとの吐出条件)も予め設定されており、制御部90の記憶部に保存されている。
次に、前述の第1の印刷モードや第2の印刷モードに係る印刷制御について詳述する。
まず、ヘッドコントローラ93は、各搬送ベルト11上の錠剤Tごとに、錠剤Tの向き情報に基づき、予め設定された複数の印刷パターンの中から、錠剤Tの向きに合致する印刷パターンを選択する。これにより、各搬送ベルト11上の錠剤Tごとに印刷パターンが設定されていく。なお、所定の印刷パターンは、割線の角度が0〜180度の間で1度ずつずらされて割線の角度ごとに設定されており、制御部90の記憶部に保存されている。
次いで、ヘッドコントローラ93は、各搬送ベルト11上の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tの印刷パターンの印刷に用いるノズル51(使用ノズル)及び吐出タイミングを決定する。このとき、錠剤Tの印刷パターンにおいて、各ノズル51に対応する1ラインごとに、使用ノズル及び吐出タイミングが決定される。吐出タイミングは、搬送方向A1のドットピッチが所定のドットピッチ(所定値)dになるように決定される。このようにして、錠剤Tごとの印刷データが生成される。
その後、ヘッドコントローラ93は、第1の印刷モードにおいて、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとの印刷データを合成し、合成した印刷データをノズル列分の1ラインずつインクジェットヘッド50に出力する。図3の例では、合成した印刷データは2ライン分のデータD1により構成されている。この2ライン分のデータD1が所定の吐出タイミング、すなわち搬送方向A1のドットピッチが所定のドットピッチdになるようにインクジェットヘッド50に出力される。なお、データD1において、図3中の黒丸が液滴を吐出させるノズル(使用ノズル)を示し、図3中の白丸が液滴を吐出させないノズル(未使用ノズル)を示す。
また、ヘッドコントローラ93は、第2の印刷モードにおいて、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとの印刷データを錠剤Tごとにインクジェットヘッド50に出力する。図3の例では、一つの錠剤Tの印刷データは2ライン分のデータD2により構成されているため、4ライン分のデータD2が存在している。この4ライン分のデータD2が錠剤Tごとに交互に搬送方向A1のドットピッチが所定のドットピッチdの1/2になるようにインクジェットヘッド50に出力される。これにより、第2の印刷モードの液滴の吐出間隔は、前述の第1の印刷モードの液滴の吐出間隔よりも短くなる。なお、データD2においても、データD1と同様、図3中の黒丸が液滴を吐出させるノズル(使用ノズル)を示し、図3中の白丸が液滴を吐出させないノズル(未使用ノズル)を示す。
インクジェットヘッド50は、前述の1ライン分のデータD1又はD2を順次受信し、各錠剤Tに印刷を行う。第1の印刷モードでは、所定の吐出条件でインクが使用ノズルから吐出され、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tの上面において割線から同じ距離の位置に同じドットピッチdでインクが塗布される。一方、第2の印刷モードでは、錠剤Tごとの吐出条件でインクが使用ノズルから吐出され、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tの上面において割線から異なる距離の位置に同じドットピッチdでインクが塗布される。このとき、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tのドット列は互いにドットピッチdの1/2だけずれている。このドットピッチdは例えば数十μm程度であり、ずれ量は非常に小さい。
なお、通常、錠剤Tは各搬送ベルト11に沿ってランダムに搬送される。図3では、理解を容易にするために、各搬送ベルト11上の錠剤Tはノズル列に沿う方向(例えば搬送方向A1に直交する方向)にぴったり並び、さらに、各錠剤Tの割線の向きが同じに示されている。当然、各搬送ベルト11上の錠剤Tの並ぶ位置がノズル列に沿う方向にぴったり並ばない場合の方が多く、また、錠剤Tが一方の搬送ベルト11上にしか存在しない場合もある。このような印刷のタイミングがずれる場合や錠剤Tが存在せず印刷しないタイミングである場合には、その搬送ベルト11上のノズル51に吐出させないようにするパターンが生成され、そのパターンが印刷データに合成されることになる。
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理(印刷工程)の流れについて図4を参照して説明する。
図4に示すように、ステップS1において、搬送部10による錠剤Tの搬送が開始される。搬送部10の各搬送ベルト11は、モータ14による第1のプーリ12及び第2のプーリ13の回転によって搬送方向A1に回転する。各搬送ベルト11が回転している状態で、供給部20から錠剤Tが各搬送ベルト11上に順次供給される。これにより、錠剤Tは各搬送ベルト11上にほぼ一列に並んで搬送されていく。なお、各錠剤Tは自身の中心が所定ライン上に位置して一列の状態で搬送されるが、錠剤Tの中にはその中心が所定ライン上からずれているものがある。ただし、このずれ量は小さいため、各錠剤Tはほぼ一列で搬送されることになる。また、各搬送ベルト11上の錠剤Tはランダムに搬送されているが、供給タイミングに応じてノズル列に沿う方向(例えば搬送方向A1に直交する方向)に並ぶことがある。
ステップS2において、各搬送ベルト11上の個々の錠剤Tが搬送ベルト11ごとに各レーザセンサ30によって検出される。これに応じて、トリガ信号が各レーザセンサ30からそれぞれ制御部90に入力される。それらのトリガ信号に基づくタイミングで、各搬送ベルト11上の個々の錠剤Tは、搬送ベルト11ごとに撮像部40によって撮像される。これにより、個々の錠剤Tの上面が撮像され、撮像された各画像が制御部90に送信される。
ステップS3において、各撮像部40から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの表裏、位置及び向きが判定部91により判定され、錠剤Tの表裏情報、位置情報及び向き情報が生成される。錠剤Tの表裏判定では、搬送ベルト11ごとに、搬送ベルト11上の錠剤Tの上面に割線が有るか否かが判定部91により判定される。判定部91により錠剤Tの上面に割線が有る(上面が表である)と判定されると、錠剤Tに対する印刷が許可される。逆に、錠剤Tに割線が無い(上面が裏である)と判定されると、錠剤Tに対する印刷が禁止される。
ステップS4において、印刷モードが通常モードであるか否かが判断され、印刷モードが通常モードの第1の印刷モードであると判断されると(ステップS4のYES)、ステップS5において、通常印刷、すなわちノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tに同時に印刷が行われる。このとき、吐出条件は全ての錠剤Tで同じとなる。一方、印刷モードが通常モードの第1の印刷モードでない、すなわち第2の印刷モードであると判断されると(ステップS4のNO)、ステップS6において、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷が行われる。このとき、吐出条件は錠剤Tごとに異なっている。
ここで、印刷工程では、各搬送ベルト11上の個々の錠剤Tは、第1の印刷モード又は第2の印刷モードに基づく印刷データが用いられ、インクジェットヘッド50により印刷される。インクジェットヘッド50の各ノズル51からインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字やマークなどの識別情報が割線を避けて、あるいは、割線に沿う方向に印刷される。なお、印刷が禁止された錠剤Tに対する印刷を省略する制御は適宜、制御部90により実行される。
その後、各搬送ベルト11上の個々の錠剤Tに塗布されたインクは、錠剤Tが乾燥部60の下方を通過する間に乾燥部60によって乾燥される。乾燥が完了した各錠剤Tは、搬送ベルト11ごとに検査部70によって撮像される。これにより、個々の錠剤Tの上面が撮像され、撮像された各画像が制御部90に送信される。それらの画像に基づき、錠剤Tの印刷状態が制御部90により判定される。錠剤Tの印刷状態が良好である判定されると、その錠剤Tは合格となる。一方、錠剤Tの印刷状態が不良である判定されると、その錠剤Tは不合格となる。この検査結果情報が制御部90による錠剤Tの回収制御に用いられる。なお、印刷が禁止された錠剤Tに対する検査を省略する制御は適宜、制御部90により実行される。これにより、印刷が許可された錠剤Tに対してのみ検査を行うことが可能となるため、不要な検査処理を省略することができる。
このような検査完了後、各錠剤Tは、各搬送ベルト11の下流側の端部に位置すると、各搬送ベルト11に保持された状態から解放され、各搬送ベルト11から落下して回収部80により回収される。例えば、検査合格の錠剤Tはそのまま落下して回収部80内の第1の容器に収容され、検査不合格の錠剤Tは落下中のエアー吹き付けによって回収部80内の第2の容器に回収される。また、未印刷の錠剤Tは落下中のエアー吹き付けによって回収部80内の第3の容器に回収される。
ステップS7において、全錠剤Tに対する印刷が完了したか否かが判断され、全錠剤Tに対する印刷が完了したと判断されると(ステップS7のYES)、ステップS8において、搬送部10による錠剤Tの搬送が停止される。一方、全錠剤Tに対する印刷が完了していないと判断されると(ステップS7のNO)、処理がステップS2に戻り、ステップS2〜S7の処理が繰り返される。
このような印刷処理では、第1の印刷モードにおいて、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tに対して同時に印刷が行われる。このとき、吐出使用の全ノズル51の吐出条件は同じであるため、錠剤Tごとの吐出条件は同じになる。一方、第2の印刷モードにおいては、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷が行われる。このとき、吐出使用の全ノズル51の吐出条件(例えば圧電素子に印加する電圧値)は同じであるが、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷が行われるため、その錠剤Tごとに吐出条件が変えられる。このようにして、吐出使用の全ノズル51で吐出条件が同じになるインクジェットヘッド50を用いた場合でも、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷の濃淡を変えたいときなど必要に応じて、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに吐出条件を設定することができる。
ここで、第1の印刷モードのように、単位時間当たりの印刷量を増やすため、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tに対して同時に印刷を行うことが一般的である。この場合には、吐出使用の全ノズル51で吐出条件が同じになるインクジェットヘッド50を用いると、錠剤Tごとの吐出条件は同じになる。このため、本実施形態では、あえて、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに吐出タイミングをずらして印刷を行うことによって、その吐出タイミングをずらした分だけ錠剤Tに対する印刷位置がずれても、その錠剤Tごとに吐出条件を設定することが可能になる。この印刷位置のずれ量は例えば数μm〜数十μm程度であり、非常に小さいため、そのずれ量を視認することは困難である。つまり、印刷された識別情報の視認には問題はない。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、吐出使用の全ノズル51で吐出条件が同じになるインクジェットヘッド50を用いた場合、そのインクジェットヘッド50はノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷を行うように制御される。これにより、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷が行われるため、その錠剤Tごとに吐出条件を設定することが可能になる。このようにして、吐出使用の全ノズル51で吐出条件が同じになるインクジェットヘッド50を用いた場合でも、必要に応じて、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに吐出条件を設定することが可能であり、例えば錠剤ごとに印刷の濃淡などを変更して、錠剤ごとの印刷状態のバラツキを低減することができる。
また、インクジェットヘッド50は、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとの印刷データに基づき、その錠剤Tごとに液滴の吐出タイミングをずらすように制御される。これにより、簡単な制御で確実に、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷を行うことができる。さらに、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとに印刷を行う場合(第2の印刷モード)の液滴の吐出間隔は、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tに同時に印刷を行う場合(第1の印刷モード)の液滴の吐出間隔よりも短くされる。これにより、錠剤Tごとの印刷においても所定のドットピッチdが維持される。前述のように吐出タイミングをずらした分だけ錠剤Tに対する印刷位置がずれても、そのずれ量は非常に小さくなるので、印刷精度の低下を抑えることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図5を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(印刷モードの自動切替)について説明し、その他の説明は省略する。
図5に示すように、第2の実施形態において、各撮像部40は、被写体となる錠剤Tの画像に加え、搬送ベルト11上の錠剤Tとの離間距離(錠剤Tの表面全体との離間距離)を測定することが可能な距離画像カメラである。これらの撮像部40は、測定した搬送ベルト11上の錠剤Tとの離間距離を判定部91にそれぞれ送信する。
判定部91は、搬送ベルト11ごとに、搬送ベルト11上の錠剤Tと撮像部40との離間距離から錠剤Tの高さ方向の情報(高さ情報)を取得する。さらに、判定部91は、取得した錠剤Tの高さ情報に基づいて、搬送ベルト11の表面に対する錠剤Tの傾きを判定する。例えば、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tにおいて、いずれかの錠剤Tの高さが所定値以上である場合には、その錠剤Tの傾きが大きいと判断し、切替部92に対して印刷モードを第2の印刷モードにする切替信号を送信する。一方、ノズル列に沿う方向に並ぶ各錠剤Tにおいて、全ての錠剤Tの高さが所定値以上でない場合には、全ての錠剤Tの傾きが小さいと判断し、切替部92に対して印刷モードを第1の印刷モードにする切替信号を送信する。
切替部92は、判定部91から切替信号を受信すると、受信した切替信号に基づいて印刷モードを第1の印刷モードから第2の印刷モードに切り替えたり、あるいは、第2の印刷モードから第1の印刷モードに切り替えたりする。このようにして印刷モードが自動で切り替えられるため、第1の実施形態に係る入力部92aは不要となる。
ここで、錠剤Tは、第1の実施形態のように搬送ベルト11上に吸引により保持されるため、吸引時に傾いて保持されることがある。また、錠剤Tが自重により搬送ベルト11上に載置される場合でも、錠剤Tの下面の加工精度が低いと傾くことがある。通常、第1の印刷モードの吐出条件は、搬送ベルト11の表面に対して傾いていない錠剤Tを対象として印刷精度が高くなるように適切に設定されている。このため、搬送ベルト11の表面に対して錠剤Tが傾いていると、傾いていない場合に比べ、搬送ベルト11上の錠剤Tとインクジェットヘッド50との離間距離が変わるため、傾いている錠剤Tに対して前述の吐出条件は適切でなくなり、印刷精度が低下することになる。
そこで、錠剤Tの傾きが所定値以上となった場合には、印刷モードが第1の印刷モードから第2の印刷モードに自動的に切り替えられ、傾いている錠剤Tに対する吐出条件が適切な吐出条件に変更される。この吐出条件は予め設定されているが、制御部90は、取得した錠剤Tの高さ情報に基づいて搬送ベルト11の表面に対する錠剤Tの傾き量を算出し、算出した傾き量に基づいて、傾いている錠剤Tに対する吐出条件を補正することも可能である。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、搬送ベルト11上の錠剤Tの高さ情報に基づき、印刷モードを自動的に切り替えることが可能であり、ノズル列に沿う方向に並ぶ錠剤Tごとの吐出条件で印刷を行うことができる。これにより、傾いている錠剤Tに対する吐出条件を適切な吐出条件に変更することが可能となり、錠剤Tの傾きによる印刷精度の低下を抑えることができる。
なお、搬送ベルト11上の錠剤Tと撮像部40との離間距離を測定する測定部としては、撮像部40以外にも、例えば、搬送ベルト11上の錠剤Tとの離間距離を測定することが可能なレーザ変位計(一例として反射型レーザセンサなどの各種のレーザセンサ)を用いることも可能である。また、レーザ光のビーム形状としては、スポットやラインなど各種の形状を用いることが可能である。
(第3の実施形態)
第3の実施形態について図6を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点(インクジェットヘッドの予備振動)について説明し、その他の説明は省略する。
図6に示すように、第3の実施形態において、制御部90は、インクジェットヘッド50のノズル51のうち低頻度吐出ノズル51a内のインクに対し、吐出前に予備振動を与えるようにインクジェットヘッド50を制御する。この予備振動は、例えば圧電素子などの駆動によって低頻度吐出ノズル51a内のインクに与えられるが、低頻度吐出ノズル51aがインクを吐出しない程度の極微小振動に設定されている。
ここで、インクジェットヘッド50のノズル51内には、錠剤Tの形状や保持位置のバラツキ具合によってほとんど吐出に使用されないノズル、すなわち低頻度吐出ノズル51aが出てくる。ところが、この低頻度吐出ノズル51aは、錠剤Tの保持位置のバラツキや錠剤Tの向きなどによってたまに使用されることがある。長い時間吐出していない低頻度吐出ノズル51aでは、その低頻度吐出ノズル51a内のインクが乾いて粘度が上がり吐出しづらくなる。このため、低頻度吐出ノズル51aがたまに行うインク吐出において正常にインクを吐出できないことがある。そこで、前述のように、低頻度吐出ノズル51a内のインクに対し、その低頻度吐出ノズル51aが吐出しない程度の極微小振動を与えることによって、低頻度吐出ノズル51a内のインクが撹拌されるため、インク粘度を下げることができる。
具体的には、制御部90は、印刷パターンを生成する時に、使用するノズル51の吐出履歴を記憶部から読み出して参照する。使用するノズル51が所定時間吐出を行っていない場合には、そのノズル51は低頻度吐出ノズル51aであるため、当該印刷パターンによる吐出の前に、低頻度吐出ノズル51aに対応する予備駆動パターンを組み込む。これにより、低頻度吐出ノズル51a内のインクに対して、その低頻度吐出ノズル51aが吐出しない程度の極微小振動が与えられることになる。なお、制御部90は、適宜、使用したノズル51の吐出履歴を記憶部に記録している。
このような予備振動は、印刷モード(第1の印刷モードや第2の印刷モード)に係わらず実行されるが、印刷の前に別パターン(予備駆動パターン)が設定されることになる。印刷モードが第1の印刷モードである場合、別パターンは合成後の印刷パターンの前に追加される。印刷モードが第2の印刷モードである場合には、別パターンは搬送ベルト11ごとに印刷パターンの前に追加されるので、搬送ベルト11ごとの吐出に基づくと例えば交互に印刷パターンに組み込まれることになる。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、低頻度吐出ノズル51aがインクを吐出しない程度の極微小振動が低頻度吐出ノズル51a内のインクに与えられる。これにより、低頻度吐出ノズル51a内のインクが撹拌され、インク粘度を下げることが可能になるので、インク粘度の上昇による印刷精度の低下を抑えることができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態について図7及び図8を参照して説明する。なお、第4の実施形態では、第1の実施形態との相違点(インクジェットヘッドの予備吐出)について説明し、その他の説明は省略する。
図7及び図8に示すように、第4の実施形態において、制御部90は、ダミー吐出(予備吐出)として、ノズル列に沿う方向に錠剤Tが存在しない領域B1に対し、所定のタイミングでインクジェットヘッド50の全ノズル51から液滴を吐出させるようにインクジェットヘッド50を制御する。所定のタイミングとは、図8に示すように、領域B1がインクジェットヘッド50の直下に到達したタイミングである。
ここで、ノズル51は、第3の実施形態と同様、しばらく吐出をしないと吐出しづらくなる。印刷パターンによっては、錠剤Tの直上に位置するノズル51でも吐出間隔が長くなる場合がある。このため、時々全ノズル51のダミー吐出を行うメンテナンスが実行される。詳しくは、錠剤Tが連続的にランダムに供給されて複数列に搬送される場合であっても、供給の状況によって、ノズル列に沿う方向に錠剤Tが存在しないことがある。このような状態の領域B1はレーザセンサ30により検知される。このため、領域B1がレーザセンサ30により検知された場合、そのタイミングで全ノズル51のダミー吐出を行うパターンが生成され、錠剤Tが供給されてない場所である領域B1に対してダミー吐出が行われる。
以上説明したように、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、全ノズル51のダミー吐出を行うメンテナンスが実行される。これにより、粘度が低下したインクはノズル51内から取り除かれるので、インク粘度の上昇による印刷精度の低下を抑えることができる。
なお、予備吐出を行うことができるタイミングがない場合、例えば、供給の状況に応じて各搬送ベルト11上に錠剤Tが絶えず存在する場合などには、供給部20による錠剤Tの供給を停止し、ダミー吐出を行うスペース(搬送間隔)を作り出すことができる。これにより、意図的に全ノズル51のダミー吐出を行うことが可能になるので、インク粘度の上昇による印刷精度の低下をより確実に抑えることができる。
また、全ノズル51でダミー吐出を行っているが、搬送ベルト11ごとに、錠剤Tが供給されてない場所(例えば搬送方向A1に隣接する錠剤Tの間のスペースなど)に対して全ノズル51のうち該当するノズル群でダミー吐出を行うことも可能である。なお、前述のダミー吐出を行わないノズル群側では、印刷を継続することが可能であるため、生産性の低下を抑えることができる。また、例えば、搬送ベルト11ごとに錠剤Tが供給される場合、搬送ベルト11ごとの供給の制御によってダミー吐出のための間隔を作り出すこともできる。
(他の実施形態)
前述の各実施形態においては、錠剤Tを搬送する搬送レーンを二レーンとして例示したが、これに限るものではなく、例えば、三レーンや四レーンとしても良く、その数は特に限定されるものではない。なお、搬送ベルト11は一本であっても良く、その一本の搬送ベルト11上に錠剤Tが複数列(二列以上)に並べられるため、搬送レーンは複数となる。
また、前述の各実施形態においては、一つのインクジェットヘッド50を用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、複数の印刷ヘッドを搬送方向A1に並べて用いることも可能であり、その数は特に限定されるものではない。さらに、インクジェットヘッド50としては、ノズル51が一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51が複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いることも可能である。
また、前述の各実施形態においては、撮像部40を用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、撮像部40に換えてレーザ変位計(一例として反射型レーザセンサなどの各種のレーザセンサ)を用いることが可能である。このレーザ変位計は、搬送ベルト11上の錠剤Tに向けてレーザ光を照射し、錠剤Tにより反射されたレーザ光を受光する。判定部91は、レーザ変位計により受光されたレーザ光の反射強度(反射強度情報)に基づき、搬送ベルト11上の錠剤Tの表裏、位置及び向きを判定する。インクジェットヘッド50は、判定部91による判定結果に基づき、搬送ベルト11上の錠剤Tに印刷を行う。このようにして、レーザ変位計を用いて錠剤Tの表裏情報、錠剤Tの位置情報及び錠剤Tの向き情報を取得することが可能であるため、撮像部40を不要とすることができ、その結果、装置の簡略化及び装置コストの低減を実現することができる。さらに、撮像部40により撮像された画像から錠剤Tの表裏情報、錠剤Tの位置情報及び錠剤Tの向き情報を取得するための画像処理を省くことが可能となり、印刷速度を向上させることができる。
ここで、前述のレーザ変位計は、搬送ベルト11上の錠剤Tの上面にレーザ光を照射するように複数設けられ、それらのレーザ変位計は、錠剤Tの搬送方向A1に水平面内で交わる方向(例えば直交する方向)に並べられても良い。また、レーザ変位計は、搬送ベルト11上の錠剤Tの上面における錠剤Tの搬送方向A1に交わる方向(例えば直交する方向)の全幅にレーザ光を照射しても良い。あるいは、レーザ変位計は、搬送ベルト11上の錠剤Tの側面にレーザ光を照射するように設けられても良い。また、レーザ変位計は、第1のレーザ変位計及び第2のレーザ変位計として二つ設けられ、第1のレーザ変位計は、搬送ベルト11上の錠剤Tの側面の上部にレーザ光を照射するように設けられ、第2のレーザ変位計は、搬送ベルト11上の錠剤Tの側面の下部にレーザ光を照射するように設けられても良い。あるいは、第1のレーザ変位計及び第2のレーザ変位計は、錠剤Tの搬送経路を間にして設けられても良い。また、レーザ変位計は、搬送ベルト11上の錠剤Tの側面における錠剤Tの搬送方向A1に交わる方向(例えば高さ方向)の全幅にレーザ光を照射しても良い。
また、前述の各実施形態においては、撮像部40や検査部70をそれぞれ複数設けることを例示したが、複数列の撮像を可能にする光学系を用いて撮像部40や検査部70を一つにすることも可能である。この場合には、装置の簡素化を実現することができる。なお、撮像部40や検査部70の撮像データから各列に相当する部分が処理に使用される。
また、前述の各実施形態においては、乾燥部60や検査部70を用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、乾燥部60や検査部70を省略することも可能である。
また、前述の各実施形態においては、搬送部10、各レーザセンサ30、撮像部40、インクジェットヘッド50、乾燥部60及び検査部70を一組として錠剤Tの上面に印刷を行うことを例示したが、これに限るものではなく、例えば、その組を二つ設けて錠剤Tの両面に印刷することが可能に構成しても良い。この場合には、一例として、第1の搬送部10の下方に第2の搬送部10を配置する。第2の搬送部10は、第1の搬送部10から錠剤Tの受け渡しが可能に構成されている。例えば、第1の搬送部10により搬送されている錠剤Tが第1の搬送部10の下部の所定位置に到達すると、第1の搬送部10により保持されている状態から解放されて落下し、その下方に位置する第2の搬送部10に受け渡される。この受け渡し時には、表が印刷された錠剤Tと、印刷されなかった錠剤Tの両方が第1の搬送部10から第2の搬送部10に受け渡されることになる。このとき、錠剤Tは裏返され、印刷された表は裏に、印刷されなかった裏が表になり、表になった錠剤Tが第1の搬送部10側のインクジェットヘッド50により印刷される。
なお、例えば、第2の搬送部10側の印刷において、第1の搬送部10側の撮像部40による情報を用いることが可能である場合には、第2の搬送部10側の撮像部40を不要とすることができる。また、例えば、第2の搬送部10側では各レーザセンサ30及び撮像部40のどちらか一方だけにすることもできる。さらに、第1の搬送部10側で表裏の割線をいずれも検出できる場合には、その結果を第2の搬送部10側に転用することもでき、さらに、印刷された表の割線の向きに対応して裏に印刷することもできる。また、前述の二つの乾燥部60を一つにして乾燥を行うことが可能である。この場合には、装置の簡素化を実現することができる。
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、例えば、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがある。さらに、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。また、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。
また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合、使用するインクとしては、可食性インクが好適である。具体的には、可食性色素としてアマランス、エリスロシン、ニューコクシン(以上、赤色)、タートラジン、サンセットイエローFCF、β−カロチン、クロシン(以上、黄色)、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン(以上、青色)などを用い、これらをビヒクルに分散または溶解し、必要に応じて色素分散剤(界面活性剤)を配合したものを使用することができる。なお、可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。