以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格を有さない。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る画像形成装置10は、制御部1、画像形成部2、給紙部3、及び排紙部4などを備える電子写真方式のモノクロプリンターである。本発明に係る画像形成装置の他の例には、ファックス、コピー機、及び複合機などが含まれる。また、本発明に係る画像形成装置は、本実施形態で説明するようにモノクロ対応の画像形成装置10に限らず、各色に対応する画像形成部を備えるタンデム方式などのカラー印刷可能な電子写真方式の画像形成装置であってもよい。
制御部1は、CPU、RAM、及びROMなどを備え、前記ROMに記憶されている制御プログラムに従って前記CPUで各種の処理を実行することにより画像形成装置10を制御する。
画像形成部2は、感光体ドラム21、帯電装置22、光走査装置23、現像装置24、転写ローラー25、クリーニング部材26、除電部材27、及び定着装置28などを備える電子写真方式の画像形成部である。なお、感光体ドラム21は感光体の一例であって、例えば感光体ドラム21に代えて感光体ベルトが感光体として用いられてもよい。
そして、画像形成装置10では、制御部1によって画像形成部2が制御されることにより、給紙部3の給紙カセット31から供給される紙などのシートに画像が形成される画像形成処理(印刷処理)が実行され、画像形成処理後のシートが排紙部4に排紙される。
具体的に、前記画像形成処理では、帯電装置22によって帯電された感光体ドラム21の表面に、光走査装置23による光ビームの走査によって画像データに基づく静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像は、現像装置24によりトナーで現像された後、転写ローラー25によって前記シートに転写される。
その後、前記シートに転写されたトナーは、定着装置28によって前記シートに溶融定着される。なお、感光体ドラム21の表面に残存するトナーは、クリーニング部材26によってクリーニングされる。また、感光体ドラム21に残存する電荷は、クリーニング部材26の下流側に配置された除電部材27によって除去される。
感光体ドラム21は、例えばアルミニウム管の周囲に電荷発生材料及び電荷輸送材料を含有する感光層が形成された単層構造の有機感光体(OPC)である。例えば、前記電荷発生材料は、ペリレン系顔料、タロシアニン系顔料等であって、前記電荷輸送材料は、ヒドラゾン系化合物、フルオレノン系化合物、アリールアミン系化合物等である。
特に、感光体ドラム21は、正帯電される単層構造の正帯電単層有機感光体ドラム(PSLP:Positive−charged Single Layer Photoconductor)である。なお、感光体ドラム21が多層構造の有機感光体であることも他の実施形態として考えられる。
図2に示すように、帯電装置22は、感光体ドラム21に接触する帯電ローラーを備え、前記帯電ローラーから感光体ドラム21にプラスの直流電圧を印加して感光体ドラム21を所定の帯電電位に帯電させる。即ち、本実施形態に係る帯電装置22は、直流電圧に交流電圧を重畳するAC重畳型の帯電装置ではなく、且つ、スコロトロン帯電のように非接触式で感光体ドラム21を帯電させる非接触型の帯電装置でもない。なお、他の実施形態として、帯電装置22がAC重畳型の帯電装置であること、又は非接触式の帯電装置であることも考えられる。
除電部材27は、電気的にアースに接地されている。また、除電部材27は、感光体ドラム21の表面に接触した状態で回転可能に支持されており、感光体ドラム21の回転に従動して回転する。除電部材27は、導電性を有する金属材料又は樹脂材料で形成されたブラシ状のローラー部材である。図2に示されるように、除電部材27は、円筒状の基体部270、及び一端が基体部270に固定され他端が感光体ドラム21の表面に接触するブラシ毛271を有する。また、除電部材27は、ブラシ状に限らず、導電性を有する金属材料又は樹脂材料で形成された円筒状(ロール状)のローラー部材であってもよい。前記樹脂材料は、例えばゴム又はスポンジなどである。
ところで、画像形成装置10のように、感光体ドラム21に除電部材27が接触する構成では、その除電部材27の内部静電容量などの電気特性が、感光体ドラム21における電位安定性及びメモリー画像の有無に影響を与えることがある。しかしながら、除電部材27の内部静電容量だけでなく、除電部材27の接触静電容量も電位安定性及びメモリー画像の有無に影響を与えることがある。
また、画像形成装置10では、除電部材27の内部抵抗などの電気特性が除電性能に影響を与えることがある。しかしながら、除電部材27の内部抵抗だけでなく除電部材27の接触抵抗も除電性能に影響を与えることがある。具体的には、感光体ドラム21は表面抵抗値が高いため、感光体ドラム21の表面上では電荷の横流れが生じない。そのため、除電部材27の内部抵抗が小さくても感光体ドラム21との接触抵抗が大きければ、感光体ドラム21の電荷を効果的に除去することができない。
特に、本実施形態のように、感光体ドラム21に接触する接触式の帯電装置22が用いられる場合には、スコロトロン帯電のように非接触で帯電する帯電装置に比べて、VOC(Volatile Organic Compounds)等の発生が抑制される。しかしながら、接触式の帯電装置22では、非接触式の帯電装置に比べて帯電性能が劣ることがある。また、帯電装置22が直流電圧印加型の帯電装置であることも帯電性能を阻害する要因になり得る。
これに対し、画像形成装置10では、以下に説明するように、除電部材27の電気特性が予め設定された第1特定条件を満たすように構成されていることによって、接触静電容量も考慮して電位安定性を向上させると共にメモリー画像の発生を抑制することが可能である。また、以下に説明するように、除電部材27の電気特性が予め設定された第2特定条件を満たすように構成されていることによって、除電部材27の接触抵抗も考慮して除電性能を向上させることが可能である。
まず、図3に示されるように、画像形成部2の感光体ドラム21と除電部材27との間の電気特性を示す等価回路5では、感光体ドラム21の直流抵抗値R1に対応する抵抗51、感光体ドラム21の静電容量Cに対応するコンデンサ52、及び除電部材27の直流抵抗値R2に対応する抵抗53が並列接続されている。
一般に、等価回路5において、除電部材27の直流抵抗値R2が低いほど、除電部材27による感光体ドラム21の除電性能が高くなると考えられている。しかしながら、実際には、除電部材27の直流抵抗値R2だけでなく、除電部材27の感光体ドラム21との接触抵抗が除電性能に影響することがわかった。
これに対し、図4に示されるように、除電部材27について、交流インピーダンス法により、例えば0.05Hz以上100kHz以下のような予め設定される周波数範囲について除電部材27の内部インピーダンスZ1及び接触インピーダンスZ2を測定すると、Cole−Coleプロットが得られる。これにより、内部インピーダンスZ1における内部抵抗成分Ra及び内部静電容量成分Caと、接触インピーダンスZ2における接触抵抗成分Rb及び接触静電容量成分Cbとが算出可能である。ここで、図4に示されるように、Cole−Coleプロットでは、内部インピーダンスZ1及び接触インピーダンスZ2各々に対応するプロットが半円を描いているが、半楕円形上などの円弧状であってもよい。
なお、本実施形態では、感光体ドラム21の芯金と感光層との間の抵抗は無視できるものとする。また、感光体ドラム21の直流抵抗値R1は、除電部材27の直流抵抗値R2に対して非常に大きい。そのため、感光体ドラム21及び除電部材27の合成抵抗R3は、除電部材27の直流抵抗値R2と同じであると考えることが可能である。
ここで、感光体ドラム21の各領域が除電部材27に接触している除電時間をt、除電時間tの経過後の感光体ドラム21の表面電位の目標値として予め定められた除電後電位をV1、除電部材27による除電開始時の感光体ドラム21の除電前電位をV0、感光体ドラム21の静電容量をCとする。この場合、除電時間tで感光体ドラム21の表面電位を除電前電位V0から除電後電位V1まで除電することが可能な理論上の除電部材27の直流抵抗値R2の値(以下、「算定抵抗値R21」と称する)は下記(1)式に基づいて算出される。なお、感光体ドラム21の線速(表面速度)をS、感光体ドラム21の回転方向における感光体ドラム21と除電部材27との接触幅をLとしたとき、除電時間tはL/Sで算出可能である。
しかしながら、前述したように、除電部材27による除電性能には、除電部材27の感光体ドラム21との接触インピーダンスも影響する。そのため、画像形成装置10では、下記(2)式及び下記(3)式の条件が満たされるように除電部材27が構成されている。
Ra≦R21×3 ・・・(2)
0≦Rb/Ra≦0.4 ・・・(3)
即ち、画像形成装置10では、上記(2)式に示されるように、除電部材27の内部抵抗成分Raは、除電部材27の算定抵抗値R21に、予め定められる第4特定値の一例である3を乗じた値以下である。また、画像形成装置10では、上記(3)式に示されるように、除電部材27の接触抵抗成分Rbを内部抵抗成分Raで除した値である抵抗比率(Rb/Ra)が、予め定められる第3特定値の一例である0.4以下である。
このように、画像形成装置10では、除電部材27の直流抵抗値R2だけでなく、内部抵抗成分Ra及び接触抵抗成分Rbを考慮して除電部材27の電気特性が決定されていることにより、除電部材27による除電性能を向上させることが可能である。一方、実際の除電部材27の直流抵抗値R2は算定抵抗値R21以下又は算定抵抗値R21より大きい値であってもよい。
具体的には、感光体ドラム21と除電部材27との接触抵抗成分Rbが、除電時間tで除電後電位V1まで除電可能な算定抵抗値R21の3倍以下で規定される内部抵抗成分Raに対して十分に小さくなっていることにより、除電部材27による除電性能が向上する。なお、同様の効果が生じるのであれば、前記第3特定値及び前記第4特定値は、上述した値に限らない。
例えば、画像形成装置10では、図9に示されるように、除電部材27のブラシ毛271が、芯部271A、及び表層部271Bを有する。ここで、図9は1本のブラシ毛271の断面図である。芯部271Aは樹脂製である。表層部271Bはカーボン製であって、芯部271Aの表面を覆う。例えば、表層部271Bは、ブラシ毛271の製造時に芯部271Aと共に形成される。また、表層部271Bは、芯部271Aが形成された後に、その芯部271Aの表面にカーボンが吹き付けられることで形成されてもよい。これにより、ブラシ毛271がカーボンを含む樹脂層のみで形成される構成と比較して、ブラシ毛271の強度を維持しつつ、除電部材27の内部抵抗成分Ra及び接触抵抗成分Rbを低下させることが可能である。なお、表層部271Bは、除電部材27が上記(2)式及び上記(3)式を満たす範囲内で、カーボン以外の成分を含むものであってよい。また、芯部271Aは、カーボンを含んでいてもよい。また、ブラシ毛271がカーボンを含む樹脂層のみで形成されていてもよい。
また、前述したように、感光体ドラム21の電位安定性及び画像メモリーの有無には、除電部材27の感光体ドラム21との接触インピーダンスも影響する。画像形成装置10では、下記(4)式及び下記(5)式の条件も満たされるように除電部材27が構成されている。
Ca≦1.0E+05 ・・・(4)
0≦Cb/Ca≦0.4 ・・・(5)
即ち、画像形成装置10では、上記(4)式に示されるように、除電部材27の内部静電容量成分Caは、予め定められる第2特定値の一例である1.0E+05以下である。また、画像形成装置10では、上記(5)式に示されるように、除電部材27の接触静電容量成分Cbを内部静電容量成分Caで除した値である静電容量比率(Cb/Ca)が、予め定められる第1特定値の一例である0.4以下である。
このように、画像形成装置10では、除電部材27の内部静電容量成分Ca、及び接触静電容量成分Cbを考慮して除電部材27の電気特性が決定されていることにより、感光体ドラム21の電位安定性を向上させると共に画像メモリーの発生を抑制することが可能である。具体的には、除電部材27に蓄積する電荷が少なくなるように内部静電容量成分Caが定められており、且つ内部静電容量成分Caに対する接触静電容量成分Cbの比率も小さく、除電部材27から電荷が抜けやすくなっているため、電位安定性が向上すると共に画像メモリーの発生が抑制される。なお、同様の効果が生じるのであれば、前記第1特定値及び前記第2特定値は、上述した値に限らない。
[実施例]
以下、図5〜図8を参照しつつ、画像形成装置10における測定結果について説明する。
図5及び図6は、除電部材27の内部抵抗成分Ra、接触抵抗成分Rb、内部静電容量成分Ca、及び接触静電容量成分Cbを測定するための実験装置90を示す図である。実験装置90は、水平方向へ4mmの間隔を隔てて配置された直径18mmの2本のステンレス製のSUSローラー91及びSUSローラー92を備える。SUSローラー91及びSUSローラー92の間には、アルミ製のフィルム電極93(水平方向長さ150mm)が懸架されている。そして、実験対象である比較例1〜15及び実施例1〜5の除電部材27が、フィルム電極93の上面に接触するように配置される。
また、実験装置90は、除電部材27の上方に配置された直径30mmのSUSローラー95を備える。SUSローラー95には、1kgのウエイト96によって下方へ荷重がかけられており、その荷重がSUSローラー95を介して除電部材27にかけられている。なお、除電部材27、SUSローラー91、92、及び95は回転されない状態で実験される。2本のSUSローラー91、92は、インピーダンス測定器97(日置電機株式会社製のLCRハイテスタ3522)の一方の電極に接続されており、除電部材27の基体81は、インピーダンス測定器97の他方の電極に接続されており、この状態で、インピーダンス測定器97によるインピーダンス測定が行われる。当該実験において、インピーダンス測定器97の電極の両端には、電圧値が5.0Vの正弦波形の交流電圧が印加される。そして、印加される交流電圧の周波数0.05Hzから100kHzまでの範囲で変化させながら、除電部材27の内部抵抗成分Ra、接触抵抗成分Rb、内部静電容量成分Ca、及び接触静電容量成分Cbを測定する。測定は複数回(2回〜16回)行われ、測定値の平均値に基づいて図7及び図8の表に実験結果が示されている。
また、図7及び図8には、図7及び図8に示される各例の除電部材27を搭載した画像形成装置10によって前記画像形成処理を実行し、除電部材27による感光体ドラム21の除電性能、電位安定性、画像メモリー有無を評価した評価結果が示されている。
ここで、前記除電性能については、画像形成装置10において除電部材27によって感光体ドラム21が除電された後、感光体ドラム21の電位が所望の除電後電位V1まで除電されたか否かを評価した。図7では、所望の除電後電位V1まで除電された場合は「○」、所望の除電後電位V1以下まで除電されなかった場合は「×」が除電性能の評価結果として示されている。
前記電位安定性については、画像形成装置10において60分間の連続印字を行った後に、帯電装置22で帯電された後の感光体ドラム21の表面電位を測定した結果、前記連続印字の開始前に帯電装置22で帯電された後の初期表面電位から10%以上低下したか否かを評価した。図7では、前記初期表面電位から10%以上低下していない場合は「○」、前記初期表面電位から10%以上低下した場合は「×」が電位安定性の評価結果として示されている。なお、前記初期表面電位から10%以上低下した場合にはカブリ等の問題が生じるおそれがあるため、ここでは10%という値を採用した。
前記画像メモリー有無については、画像形成装置10において前記画像形成処理によって、印刷用紙の先端に予め定められた形状の黒色パッチを形成し、その後の他の領域にはハーフ画像(グレー画像)を印刷させ、画像メモリーの発生の有無を目視で評価した。具体的に、黒色パッチの形状がハーフ画像の領域に現れた場合に画像メモリーが発生したと判断する。図7では、画像メモリーが発生しなかった場合は「○」、画像メモリーが発生した場合は「×」が画像メモリー有無の評価結果として示されている。
より具体的に、実験に用いた画像形成装置10は、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製のプリンター「FS−1320DN」の改造機である。また、画像形成装置10では、感光体ドラム21の除電前電位V0が500[V]、感光体ドラム21の表面速度(線速)Sが0.15[m/s]、接触幅Lが0.005[m]である。また、真空の誘電率ε0が8.9E−12[F/m]、感光体ドラム21の比誘電率εrが3.5、感光体ドラム21の膜厚dが3.5E−05[m]である。この場合、感光体ドラム21の静電容量Cは、「ε0×εr/d」より8.85E−07[F]となる。
そして、除電部材27による感光体ドラム21の除電後の所望の電位である除電後電位V1を100Vとする。この場合、上記(1)式により、除電部材27の算定抵抗値R21は、2.3E+04[Ω]と算出される。そのため、除電部材27の内部抵抗成分Raが算定抵抗値R21の3倍である6.9E+04[Ω]以下である場合に、上記(2)式を満たすことになる。なお、除電後電位V1は、例えばV1=V0×0.2のような演算式によって算出される値であってもよく、裕度を持たせるためにV1=V0×0.22+80のような演算式によって算出される値であってもよい。
まず、比較例1〜13及び実施例1〜3では、除電部材27がブラシ状のローラー部材である。
比較例1では、東レ株式会社製SA7の導電性アクリル繊維に開裂処理を施した原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。比較例1に係る除電部材27では、原糸抵抗が1.00E+07[Ω]であり、ブラシ繊度が30[μm]であって高く(繊維が太く)、ブラシ密度が100[kF/inch2]であって低密度である。なお、比較例1〜9は、繊維のカーボンの存在状態が原糸の全域に分散している全分散系である。
比較例2では、比較例1と同様に、東レ株式会社製SA7の導電性アクリル繊維に開裂処理を施した原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。比較例2に係る除電部材27では、原糸抵抗が1.00E+06[Ω]であり、ブラシ繊度が7[μm]であって低く(繊維が細く)、ブラシ密度が500[kF/inch2]であって高密度である。
比較例3では、ユニチカ株式会社製UUNの導電性ナイロンの原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。比較例3に係る除電部材27では、原糸抵抗が1.00E+06[Ω]であり、ブラシ繊度が7[μm]であって低く(繊維が細く)、ブラシ密度が500[kF/inch2]であって高密度である。なお、比較例3〜13及び実施例1〜3に係る除電部材27は、繊維断面形状が円形である。
比較例4〜6では、比較例3と同様に、ユニチカ株式会社製UUNの導電性ナイロンの原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。比較例4〜6に係る除電部材27では、原糸抵抗がそれぞれ1.00E+05[Ω]、1.04E+05[Ω]、1.00E+05[Ω]である。また、比較例4〜6に係る除電部材27では、繊度がそれぞれ7[μm]、6[μm]、6[μm]である。さらに、比較例4〜6に係る除電部材27では、密度がそれぞれ500[kF/inch2]、550[kF/inch2]、500[kF/inch2]である。
比較例7〜9では、比較例3と同様に、ユニチカ株式会社製UUNの導電性ナイロンの原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。一方、比較例7〜9に係る除電部材27は、内部抵抗成分Raの値が小さくなり、抵抗比率(Rb/Ra)も小さくなるように、比較例3に比べて繊維のカーボン量を増加している。比較例7〜9に係る除電部材27では、原糸抵抗が1.00E+05[Ω]、1.00E+04[Ω]、1.00E+05[Ω]であり、ブラシ繊度が6[μm]、7[μm]、6[μm]であって低く(繊維が細く)、ブラシ密度が550[kF/inch2]、500[kF/inch2]、580[kF/inch2]であって高密度である。
実施例1では、KBセーレン株式会社製のGBN繊維の原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。実施例1に係る除電部材27では、原糸抵抗が1.00E+04[Ω]であり、ブラシ繊度が7[μm]であって低く(繊維が細く)、ブラシ密度が500[kF/inch2]であって高密度である。また、実施例1〜3及び比較例10〜13に係る除電部材27では、繊維のカーボンの存在状態が全分散系ではなく、繊維の外側にカーボンが存在する2層構造であり、接触抵抗成分が減少しており抵抗比率(Rb/Ra)が小さくなっている。
比較例10では、実施例1と同様に、KBセーレン株式会社製のGBN繊維の原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成したが、原糸抵抗が2桁高い点で異なる。
比較例11〜13では、ポリエステル原糸にカーボンを吹き付けた糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。比較例11〜13に係る除電部材27は、内部抵抗成分Raの値が小さくなり、抵抗比率(Rb/Ra)も小さくなるように、ポリエステル原糸にカーボンが吹き付けられている。なお、比較例11〜13におけるカーボンの吹き付け量は実施例3と同様であり、ポリエステル原糸の繊度及び密度が実施例3と異なる。
実施例2では、ポリエステルの原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。実施例2に係る除電部材27では、原糸抵抗が5.8E+03[Ω]であり、ブラシ繊度が7[μm]であって低く(繊維が細く)、ブラシ密度が300[kF/inch2]であって高密度である。また、実施例2に係る除電部材27では、実施例1と同様に繊維の外側にカーボンが存在する2層構造であるが、繊維の外側にカーボン粒子が直接吹き付けられた状態である。これにより、実施例1よりも低いブラシ密度で実施例1と同レベルの電気特性が実現されている。
実施例3では、ポリエステルの原糸を用いてブラシ状の除電部材27を形成した。実施例3に係る除電部材27では、原糸抵抗が6.4E+03[Ω]であり、ブラシ繊度が7[μm]であって低く(繊維が細く)、ブラシ密度が300[kF/inch2]であって高密度である。また、実施例3に係る除電部材27では、実施例1と同様に繊維の外側にカーボンが存在する2層構造であるが、繊維の外側にカーボン粒子が直接吹き付けられた状態である。なお、実施例3におけるカーボンの吹き付け量は、実施例2に比べて少ない。
次に、比較例14、15及び実施例4、5は、除電部材27が円筒状(ロール状)のローラー部材である。
比較例14では、アスカーC型硬度計により測定された硬度が79であって、内部抵抗成分Raが5.00E+04、抵抗比率(Rb/Ra)が120.00のゴムローラーを除電部材27として用いている。なお、比較例14、15及び実施例4、5で用いられるゴムローラーは、金属製シャフトとその金属製シャフトを被覆する内層及び外層とを備える。そして、前記ゴムローラーの内層は、例えばポリウレタン、シリコーンゴム、EPDM、エピクロルヒドリンーエチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリンーエチレンオキシドーアリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、又はこれらのブレンドゴムで形成されている。また、前記ゴムローラーの外層は、例えばポリアミド粒子、カーボンブラック、又はジメチルポリシロキサンを含む材料で形成されている。また、前記ゴムローラーの外層は、イソシアネート化合物を含有する表面処理液を含浸させた材料、又はカーボンチューブなどであってもよい。
比較例15では、アスカーC型硬度計により測定された硬度が40であって、内部抵抗成分Raが1.00E+04、抵抗比率(Rb/Ra)が70.00のゴムローラーを除電部材27として用いている。なお、比較例15に係る除電部材27では、比較例14に比べて硬度が低くなっており、感光体ドラム21と除電部材27との接触面積が増加するため、内部抵抗成分Raは小さくなるが、接触抵抗成分Rbの改善効果は小さい。
実施例4では、カーボン量を増加させたカーボンリッチな低抵抗層を外層として有するゴムローラーを除電部材27として用いている。実施例4に係る除電部材27では、内部抵抗成分Raが1.00E+04であって、抵抗比率(Rb/Ra)が0.38となっている。また、実施例4に係る除電部材27では、内部静電容量成分Caが1.00E+04であって、静電容量比率(Cb/Ca)が0.38となっている。
実施例5では、表層にカーボン蒸着を行ったゴムローラーを除電部材27として用いており、実施例4よりも表層のカーボン存在率が高くなっている。実施例5に係る除電部材27では、内部抵抗成分Raが1.00E+04であって、抵抗比率(Rb/Ra)が0.20となっている。また、実施例5に係る除電部材27では、内部静電容量成分Caが1.00E+04であって、静電容量比率(Cb/Ca)が0.20となっている。
そして、図7及び図8に示されるように、比較例1〜15及び実施例1〜5に係る除電部材27について実験装置90を用いて測定したCole−Coleプロットにおける接触抵抗成分Rbの内部抵抗成分Raに対する抵抗比率(Rb/Ra)を算出した。ここで、比較例1〜4、6、13〜15では、抵抗比率(Rb/Ra)が0.4より大きいため、抵抗比率(Rb/Ra)が0以上0.4以下であるという上記(3)式の条件が満たされていない。一方、比較例5、7〜12では、抵抗比率(Rb/Ra)が0.4以下であるため、抵抗比率(Rb/Ra)が0以上0.4以下であるという上記(3)式の条件が満たされている。しかしながら、比較例1〜6、10では、除電部材27の内部抵抗成分Raが6.9E+4.0より大きいため、内部抵抗成分Raが6.9E+4.0以下であるという上記(2)式の条件が満たされていない。そして、比較例1〜6、10、13〜15では、除電性能の評価結果が「×」であった。
一方、実施例1〜5では、除電部材27の内部抵抗成分Raが6.9E+4.0以下であるという上記(2)式の条件が満たされており、且つ、抵抗比率(Rb/Ra)が0以上0.4以下であるという上記(3)式の条件が満たされている。そして、実施例1〜5では、除電性能の評価結果が「○」であった。
このように、画像形成装置10において、除電部材27の直流抵抗値R2だけでなく、内部インピーダンスZ1及び接触インピーダンスZ2を考慮することによって、所望の除電性能を得ることが可能であることがわかった。より具体的には、上記(2)式及び(3)式の条件が満たされる場合に、所望の除電性能が得られた。
また、図7及び図8に示されるように、比較例1〜15及び実施例1〜5に係る除電部材27について実験装置90を用いて測定したCole−Coleプロットにおける接触静電容量成分Cbの内部静電容量成分Caに対する静電容量比率(Cb/Ca)を算出した。ここで、比較例1〜4、8、9、12〜15では、静電容量比率(Cb/Ca)が0.4より大きいため、静電容量比率(Cb/Ca)が0以上0.4以下であるという上記(5)式の条件が満たされていない。一方、比較例5〜7、10、11では、静電容量比率(Cb/Ca)が0.4以下であるため、静電容量比率(Cb/Ca)が0以上0.4以下であるという上記(5)式の条件が満たされている。しかしながら、比較例1〜3、7、8、10〜13では、除電部材27の内部静電容量成分Caが1.0E+5.0より大きいため、内部静電容量成分Caが1.0E+5.0以下であるという上記(4)式の条件が満たされていない。そして、電位安定性及び画像メモリー有無については、前記除電性能の評価結果が「○」であったものについてのみ評価を行った。具体的に、前記除電性能の評価結果が「○」であった比較例7〜9、11〜12では、電位安定性及び画像メモリー有無の評価結果が「×」であった。
一方、実施例1〜5では、除電部材27の内部静電容量成分Caが1.0E+5.0以下であるという上記(4)式の条件が満たされており、且つ、静電容量比率(Cb/Ca)が0以上0.4以下であるという上記(5)式の条件が満たされている。そして、実施例1〜5では、電位安定性及び画像メモリー有無の評価結果が「○」であった。
このように、画像形成装置10において、除電部材27の直流抵抗だけでなく、内部インピーダンスZ1及び接触インピーダンスZ2を考慮することによって、電位安定性が向上すると共に画像メモリーの発生が抑制されることがわかった。より具体的には、上記(4)式及び(5)式の条件が満たされる場合に、電位安定性が向上すると共に画像メモリーの発生が抑制された。