実施の形態1.
本実施の形態1の冷凍装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態1の冷凍装置の一構成例を示す冷媒回路図である。冷凍装置100は、圧縮機1、凝縮器2、膨張弁3および蒸発器4が環状に接続された冷媒回路10を有する。冷凍装置100には、空調対象空間の空気を蒸発器4に供給するファン18が設けられている。冷凍装置100は、冷媒を冷媒回路10に循環させる冷凍サイクルを制御する制御部15を有する。冷凍装置100には、ユーザに冷媒漏れを知らせる出力部19が設けられている。図に示していないが、外気を凝縮器2に供給するファンが設けられていてもよい。
圧縮機1は、図に示さないインバータ回路を有する。圧縮機1は、インバータ回路を制御することで運転周波数を変更できる圧縮機である。圧縮機1は、冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を凝縮器2に送り出す。凝縮器2は、室外機等に設けられた空気熱交換器である。凝縮器2は、圧縮機1で圧縮された冷媒を空気と熱交換させて冷媒を凝縮させる。
膨張弁3は、凝縮器2で凝縮された冷媒を膨張させる。蒸発器4は、冷凍倉庫の庫内などの空調対象空間に設置されている。蒸発器4は、ユニットクーラ等に設けられる空気熱交換器である。蒸発器4は、膨張弁3で膨張された冷媒を蒸発させ、空調対象空間を冷却する。
圧縮機1の冷媒の吸入口に、吸入圧力センサ11が設けられている。吸入圧力センサ11は、圧縮機1に吸入される冷媒の吸入圧力Pinを測定する。圧縮機1の冷媒の吐出口に、吐出圧力センサ12が設けられている。吐出圧力センサ12は、圧縮機1から吐出される冷媒の吐出圧力Poutを測定する。冷凍装置100には、冷媒の周囲の温度を測定する周囲温度センサとして、外気温度センサ14が設けられている。外気温度センサ14は外気温度を測定する。冷凍装置100には、空調対象空間の空気の温度を測定する室内温度センサ16が設けられている。
出力部19は、図に示さない、スピーカおよび表示部を有する。出力部19は、異常であることを示す警報信号が制御部15から入力されると、スピーカから警報音を出力し、異常であることを表示部に表示させる。表示部は、異常であることを示すランプを点灯してもよく、異常内容を示すメッセージを表示してもよい。出力部19は、異常がないことを示す正常信号が制御部15から入力されると、スピーカおよび表示部を動作しない。出力部19は、スピーカおよび表示部のうち、両方を有していてもよく、いずれか一方を有していてもよい。
図2は、図1に示した制御部の一構成例を示す機能ブロック図である。制御部15は、プログラムを記憶する記憶部150と、プログラムにしたがって処理を実行するCPU(Central Processing Unit)151とを有する。制御部15は、ファン18、出力部19、圧縮機1および膨張弁3と信号線で接続されている。制御部15は、吸入圧力センサ11および吐出圧力センサ12と信号線で接続されている。制御部15は、外気温度センサ14および室内温度センサ16と信号線で接続されている。なお、接続手段は、無線であってもよい。
記憶部150は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部150は、設定温度および設定湿度を記憶する。記憶部150は、後述する冷媒漏れ判定方法により、冷媒漏れが発生している確率が高いと判定された場合のカウント数nを記憶する。
図2に示すように、制御部15は、運転制御手段21、測定手段22、判定手段23および警報手段24を有する。CPU151がプログラムを実行することで、運転制御手段21、測定手段22、判定手段23および警報手段24が冷凍装置100に構成される。
運転制御手段21は、吸入圧力センサ11、吐出圧力センサ12および室内温度センサ16から取得する測定値と、設定温度とを用いて、冷凍サイクルを制御する。運転制御手段21は、室内温度センサ16の測定値が設定温度になるように、圧縮機1、ファン18および膨張弁3を制御する。運転制御手段21は、室内温度センサ16の測定値が設定温度に一致するサーモオフの状態になると、圧縮機1の運転を停止する。
また、運転制御手段21は、冷媒漏れ判定の指示が入力されると、測定手段22に圧力監視を指示する。また、運転制御手段21は、外気温度センサ14から取得する測定値を用いて飽和圧を算出する。運転制御手段21は、吸入圧力センサ11および吐出圧力センサ12の測定値を参照し、圧縮機1および膨張弁3を制御して、吐出圧力が外気温度の飽和圧よりも設定圧力だけ高く、かつ吸入圧力が外気温度の飽和圧に対し設定圧力だけ低くする準備運転を開始する。運転制御手段21は、この準備運転で吐出圧力が外気温度の飽和圧よりも設定圧力だけ高く、かつ吸入圧力が外気温度の飽和圧に対し設定圧力だけ低くなると、この状態を設定期間維持する。運転制御手段21は、準備運転を設定期間行うと、準備運転を停止し、測定手段22に計測開始を指示する。
測定手段22は、図に示さないタイマーを備えている。測定手段22は、運転制御手段21から圧力監視の指示があると、吸入圧力センサ11および吐出圧力センサ12の測定値を監視する。測定手段22は、運転制御手段21から計測開始の指示があると、計測開始の指示から時間を計測する。そして、測定手段22は、吐出圧力Poutと吸入圧力Pinとの圧力差が規定値Pdrefに到達するまでの時間を計測すると、計測した時間を判定手段23に通知する。
規定値Pdrefは、記憶部150に格納されている。規定値Pdrefは、冷媒回路10内の高圧と低圧との差圧に関する値である。基準時間trefは、冷媒回路10内の冷媒圧力の時間変化から、冷媒漏れがあるか否かを判定する基準となる時間である。基準時間trefは、冷媒漏れがない状態で計測された時間を初期値t0とすると、tref=t0×係数で表される。係数は、例えば、0.7である。基準時間trefは記憶部150に格納されている。
判定手段23は、測定手段22が計測した時間の情報を測定手段22から受け取ると、計測された時間と記憶部150が記憶する基準時間とを比較し、冷媒漏れがあるか否かを判定する。判定手段23は、判定結果を警報手段24に通知する。判定手段23は、冷媒漏れ判定の回数をカウント数nとして記録し、複数回の冷媒漏れ判定で、冷媒漏れの有無を判定してもよい。
警報手段24は、判定手段23から通知される判定結果にしたがって、出力部19に信号を出力する。判定手段23の判定結果が冷媒漏れありの場合、警報手段24は、警報信号を出力部19に出力する。判定結果が冷媒漏れなしの場合、警報手段24は、異常がないことを示す正常信号を出力部19に出力する。
次に、図3を参照して、冷媒漏れ判定の原理を説明する。図3は、図1に示した冷媒回路内の冷媒圧力の経時変化を示すグラフである。図3に示すグラフの縦軸は圧力を示し、横軸は時間を示す。図3では、飽和圧がATで表されている。図3において、飽和圧ATよりも高圧側の実線は、吐出圧力Poutの変化を示す。飽和圧ATよりも低圧側の実線は、吸入圧力Pinの変化を示す。図3は、飽和圧ATと吐出圧力Poutとの圧力差をΔPoutで示し、飽和圧ATと吸入圧力Pinとの圧力差をΔPinで示す。圧力差ΔPoutおよび圧力差ΔPinの設定圧力は、例えば、0.5[Mpa]である。
運転制御手段21が、圧縮機1の運転を開始し、圧縮機1および膨張弁3を制御して準備運転を行う。そして、図3に示すように、時刻t1において、圧力差ΔPoutおよび圧力差ΔPinが設定圧力になる。圧力差ΔPoutの設定圧力を、飽和圧ATを基準にした設定高圧と称する。圧力差ΔPinの設定圧力を、飽和圧ATを基準にした設定低圧と称する。時刻t1から設定期間が経過した時刻t2において、運転制御手段21は、圧縮機1を停止する。測定手段22は、差圧変化時間tmの計測を開始する。時間経過と共に、吐出圧力Poutおよび吸入圧力Pinのいずれもが飽和圧ATに徐々に近づく。
図3に示すように、飽和圧ATを基準にして、吐出圧力Poutと吸入圧力Pinとのバランスが維持された状態で、高圧と低圧との圧力差が時間経過に伴って変化する。この圧力差の変化速度vpが、冷媒漏れがある場合と冷媒漏れがない場合とで異なる。冷媒漏れがある場合の変化速度vpの方が、冷媒漏れがない場合の変化速度vpに比べて速くなる。差圧変化時間tmが基準時間tref以下の場合、判定手段23は、冷媒漏れが発生していると判定する。
次に、本実施の形態1の冷凍装置100の冷媒漏れ検知の動作を説明する。図4は、図1に示した冷凍装置が実行する冷媒漏れ判定方法の手順を示すフローチャートである。図3は、図4に示す手順にしたがって実行される冷媒漏れ判定方法を説明するための図である。
運転制御手段21は、冷媒漏れ判定の指示が入力されると、圧縮機1を運転させる(ステップS101)。そして、運転制御手段21は、圧縮機1を一定時間運転させ、サーモオフしない状態であるか否かを判定する(ステップS102)。例えば、デフロスト運転の後である場合、空調対象空間の温度と設定温度との温度差が大きくなるので、所定期間はサーモオフの状態にならない。そのため、一定時間、圧縮機1が運転を続ける場合、制御部15は、冷媒漏れを判定できる状態と判断し、冷媒漏れ判定を開始する(ステップS103)。サーモオフしない状態では、冷媒回路10内の圧力の変化が正確に測定される状態である。ステップS102の判定で、サーモオフの状態になると、制御部15は、冷媒漏れを正しく判定できないと判断し、冷媒漏れ判定を実行しない。
運転制御手段21は、ステップS103に進むと、圧縮機1の運転周波数と膨張弁3の開度を制御する準備運転を行う。運転制御手段21は、準備運転では、吐出圧力Poutが外気温度の飽和圧よりも設定圧力(例えば、0.5Mpa)だけ高く、かつ吸入圧力Pinが外気温度の飽和圧よりも設定圧力(例えば、0.5Mpa)だけ低くなるようにする。運転制御手段21は、圧力差ΔPoutが設定高圧になり、圧力差ΔPinが設定低圧になった状態で、設定期間、準備運転を行う(ステップS104)。設定期間(例えば、数分間)が経過すると、運転制御手段21は、圧縮機1を停止する(ステップS105)。一定の圧力差が生じた状態で設定期間、準備運転を維持することで、空調対象空間の温度が安定するとともに、冷媒回路10の状態も安定する。
続いて、測定手段22は、準備運転が停止してから、吐出圧力Poutと吸入圧力Pinとの圧力差ΔPが規定値Pdrefに到達するまでの差圧変化時間tmの計測を開始する(ステップS106)。測定手段22は、圧力差ΔPが規定値Pdref以下になると(ステップS107)、差圧変化時間tmを判定手段23に通知する。判定手段23は、差圧変化時間tmが基準時間tref以下であるか否かを判定する(ステップS108)。差圧変化時間tmが基準時間tref以下である場合、判定手段23は、冷媒漏れが発生していると判定し、記憶部150が記憶するカウント数nを更新する(ステップS109)。判定手段23は、カウント数nが3以上であるか否かを判定する(ステップS110)。カウント数nが3未満である場合、制御部15は、ステップS101に戻る。
ステップS110の判定の結果、カウント数nが3以上である場合、判定手段23は、冷媒漏れ有りと判定する(ステップS112)。判定手段23は、警報信号を出力部19に出力する。出力部19は、警報音を出力し、異常である旨を表示する。なお、空調対象空間への冷媒漏れを抑制するために、制御部15は、膨張弁3を閉め、冷媒回路10内の冷媒を凝縮器2で液化して回収するポンプダウン運転を行ってもよい。この場合、冷媒回路10において、凝縮器2と膨張弁3との間に、液化した冷媒を回収する受液器が設けられていてもよい。一方、ステップS108の判定の結果、3回のうち一度でも、差圧変化時間tmが基準時間trefより大きくなった場合、判定手段23は、カウント数nをゼロに設定し(ステップS111)、処理を終了する。これにより、判定誤差が抑制される。
なお、図4に示すフローチャートでは、カウント数nが3回以上になったら、冷媒漏れ有りと判定する場合を示しているが、冷媒漏れ有りと判定するカウント数は3回に限らない。ユーザは、n=1のときに、判定手段23が冷媒漏れ有りと判定するように設定してもよい。カウント数nが1回よりも複数回の方が冷媒漏れの判定精度が向上する。
ここで、冷凍装置100は基準時間trefの初期値t0を設定する機能を有する。作業者が冷凍装置100を設置した後、冷凍装置100が試運転する。試運転の際、制御部15は、図4に示すステップS101〜S106を実行し、計測した差圧変化時間tmを基準時間trefの初期値t0として記憶部150に格納する。その際、制御部15は、差圧変化時間tmを複数回計測し、複数の差圧変化時間tmの平均値を算出し、算出した平均値を初期値t0としてもよい。基準時間として、複数回計測して平均値を算出することで、判定精度が向上する。
図3および図4を参照した説明したように、運転制御手段21は、飽和圧を基準にして圧力差ΔPoutおよび圧力差ΔPinを設定圧力にする。そして、測定手段22は、冷凍サイクルを停止してから、吐出圧力Poutと吸入圧力Pinとの圧力差ΔPが規定値まで低下するまでに要した差圧変化時間tmを計測する。続いて、判定手段23は、差圧変化時間tmと基準時間trefとを比較することで、冷媒漏れの有無を判定している。
本実施の形態1の冷凍装置100では、準備運転において、吐出圧力Poutおよび吸入圧力Pinが冷媒の圧力も影響を受ける周囲温度の飽和圧を基準に設定され、吐出圧力Poutまたは吸入圧力Pinの経時変化に基づいた冷媒漏れ判定が行われる。その結果、運転状態の変動による圧力差が変動するのが抑制されるとともに、冷媒回路内の周囲温度による冷媒への圧力の変化に対する影響が抑制される。そのため、冷媒漏れの判定精度が向上する。
ここで、冷媒漏れ判定のパラメータに過冷却度(SC)を用いる方法と、本実施の形態1における冷媒漏れ判定方法とを比較する。季節が夏の場合など、外気から凝縮器への入熱の影響で、冷凍装置は過冷却度を精度よく測定できないことがある。この場合、冷凍装置は、冷媒漏れ判定に用いるデータを安定して取得することができず、過冷却度等のパラメータを用いた冷媒漏れ判定の精度が悪くなるおそれがある。
これに対して、本実施の形態1の冷凍装置100は、冷媒漏れの判定のパラメータとして、飽和圧を基準とした冷媒回路10内の圧力差の変化速度vpを反映した差圧変化時間tmを利用して冷媒漏れ判定を行っている。冷媒回路10の冷媒圧力だけでなく、その基準となる飽和圧も周囲温度の影響を受けるため、これらの圧力への影響が同じになる。そのため、冷媒漏れの判定精度を向上させることができる。また、本実施の形態1では、パラメータの数が少なく、制御が容易となる。また、吐出圧力Poutおよび吸入圧力Pinを利用して、冷媒漏れの有無を判定しているため、新たにセンサを追加する必要がなく、装置本体の費用が高くなることを抑制できる。
また、図4に示した手順では、冷凍装置100は、サーモオフしない状態で上述した冷媒漏れ判定を行うので、圧力差の変化を安定して測定できる。そのため、冷媒漏れの判定精度が向上する。
また、図3および図4において、吐出圧力Poutと吸入圧力Pinとを用いて差圧変化時間tmを計測したが、吐出圧力Poutまたは吸入圧力Pinを用いて、冷媒漏れを判定することもできる。図5は、本発明の実施の形態1における冷媒漏れ判定について、別の判定を説明するための図である。
測定手段22は、圧力差ΔPoutと圧力差ΔPinとのうち、いずれか一方を用いて差圧変化時間tmを計測する。この場合、記憶部150は、高圧側の圧力差ΔPoutの規定値として高圧規定値HPrefを記憶し、低圧側の圧力差ΔPinの規定値として低圧規定値LPrefを記憶している。高圧規定値HPrefおよび低圧規定値LPrefは、冷媒漏れがない状態で測定されたものである。図5に、高圧規定値HPrefおよび低圧規定値LPrefが表されている。
冷媒回路10の高圧側の冷媒配管に冷媒漏れがあると仮定する。この場合、図5に示す時刻t2以降、圧力差ΔPoutの変化は、圧力差ΔPinの変化に比べて、顕著になる。時刻t2以降、時間経過に伴って、吐出圧力Poutは、吸入圧力Pinよりも早く飽和圧ATに近づく。そのため、圧力差ΔPoutを用いれば、冷媒回路10の高圧側の冷媒配管に冷媒漏れがある場合、判定手段23は、冷媒漏れをより確実に判定できる。
続いて、冷媒回路10の低圧側の冷媒配管に冷媒漏れを起こす隙間があると仮定する。この場合、図5に示す時刻t2以降、吸入圧力Pinよりも飽和圧ATの方が高いので、冷媒配管内に空気が流入する。時刻t2以降、時間経過に伴って、吸入圧力Pinは、吐出圧力Poutよりも早く飽和圧ATに近づく。そのため、圧力差ΔPinを用いれば、冷媒回路10の低圧側の冷媒配管に隙間がある場合、判定手段23は、冷媒漏れが起きることをより確実に判定できる。
なお、冷媒回路10の高圧側の冷媒配管または低圧側の冷媒配管のいずれに冷媒漏れがあっても、冷媒漏れは、吐出圧力Poutと吸入圧力Pinとの圧力差ΔPに現れる。よって、冷媒回路10において、高圧側の配管と低圧側の配管のうち、いずれに冷媒漏れが起きても、吐出圧力Poutと吸入圧力Pinとの圧力差ΔPを用いる判定では、冷媒漏れを判定できる。また、圧力差ΔPoutおよび圧力差ΔPinの両方を用いる判定と、これらの圧力差のうち、一方を用いる判定とを、組み合わせてもよい。冷媒漏れの判定精度がより向上する。
本実施の形態1の冷媒漏れ判定は、冷凍装置100の運転中だけでなく、冷凍装置100が停止中であっても、行うことができる。冷凍装置100が運転中である場合、サーモオフしない状態であれば、制御部15は、図4に示した手順にしたがって冷媒漏れの判定を行えばよい。冷凍装置100が長期間運転を停止する場合、制御部15は、図4に示した手順にしたがって冷媒漏れ判定を、定期的に行えばよい。その際、制御部15は、圧縮機1の運転を開始し、冷凍サイクルの状態が安定した後に、図4に示した手順にしたがって、冷媒漏れの判定を行う。
また、本実施の形態1において、スケジューリング機能を利用して、制御部15に冷媒漏れ判定を行わせてもよい。この場合、制御部15は、冷凍装置100が運転を停止中に、図4に示した手順で冷媒判定を行うスケジュール機能を備えている。ユーザが冷凍装置100を使用していない時間帯に、制御部15は、スケジュール機能を動作し、図4に示した手順にしたがって冷媒漏れ判定を行う。これにより、ユーザが冷凍装置100を使用していないときでも、冷凍装置100は自動的に冷媒漏れ判定を行うことができる。また、制御部15は、冷媒漏れがあると判定しても、警報を出力せず、冷媒漏れ判定の結果を記憶部150に格納してもよい。この場合、ユーザは冷凍装置100を使用する際、制御部15を操作して、記憶部150が記憶する冷媒漏れ判定結果を出力部19に表示させることで、冷媒漏れ判定の結果を知ることができる。さらに、ユーザが制御部15を操作して、冷媒漏れ判定を行う時間帯を制御部15に指定してもよい。制御部15はユーザが指定した時間帯に冷媒漏れ判定を行うので、ユーザが冷凍装置100を使用したい時間帯に冷凍能力が低下してしまうことを防げる。
冷凍装置には、凝縮器と膨張弁との間に電磁弁が設けられ、圧縮機の停止時に電磁弁を閉じて液冷媒が膨張弁側に流出することを防ぐポンプダウン運転を行うものがある。本実施の形態1の冷媒判定方法は、ポンプダウン運転を行わない冷凍装置に適用できる。ポンプダウン運転を行わない冷凍装置は、ポンプダウン運転による、冷凍サイクルの停止がないため、圧縮機の停止後、数分程度のデータサンプリングで差圧変化時間tmを取得できる。本実施の形態1の冷凍装置100は、圧縮機1がインバータ回路で運転周波数を変更できる圧縮機であるため、圧縮機1の運転中における冷媒回路10内の高圧および低圧を調整できる。その結果、冷凍装置100は、冷媒漏れ判定に適した圧力差を冷媒回路10に設定できる。
なお、本実施の形態1では、外気温度が冷媒の圧力に影響を及ぼす周囲温度であるものとして、圧力の基準に外気温度の飽和圧を用いる場合で説明したが、周囲温度は外気温度に限らない。冷媒回路10に対する温度の影響が外気温度よりも室内の空気の温度の方が大きい場合には、室内温度の飽和圧を用いてもよい。例えば、冷媒回路10全体のうち、半分以上の回路が室内に設置されている場合、周囲温度として、外気温度よりも室内温度の方が適している。この場合、室内温度センサ16が周囲温度センサとして機能する。ただし、圧縮機1を停止した後、差圧変化時間tmの測定中に、室内温度の変化の方が外気温度の変化よりも大きい場合もある。冷凍装置100毎に、外気温度および室内温度の冷媒への影響と、より変動の少ない飽和圧との関係から、いずれかの周囲温度による飽和圧を選択すればよい。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2の冷凍装置における記憶部が記憶するテーブルの一例を示す図である。本実施の形態2は、冷凍装置100が、外気温度の温度帯毎に異なる基準値を用いて冷媒漏れを判定するものである。本実施の形態2の冷凍装置の構成を説明する。本実施の形態2では、実施の形態1と同様な構成についての詳細な説明を省略し、実施の形態1と異なる点を詳しく説明する。
本実施の形態2の冷凍装置100は、図1に示した構成において、記憶部150がテーブルを記憶している。図6に示すように、記憶部150が記憶するテーブルは、状態データと基準時間とが関連付けて記録される。図6に示すテーブルでは、外気温度が複数の温度帯に分類されている。そして、図6に示すテーブルでは、複数の温度帯毎に、状態データおよび基準時間が関連付けられて記憶されている。図6に示す例では、1つの温度帯の温度幅は5℃である。
図6に示す状態データは、例えば、吐出圧力Pout、吸入圧力Pin、過熱度(SH)および過冷却度(SC)である。基準時間として、温度帯毎に基準時間A1〜A6が記述されている。図6に示すように、基準時間A1〜A6のそれぞれは、複数の測定値から算出された平均値に係数が乗算される。また、図6に示すテーブルには、基準時間とともに、基準時間の標準偏差が記憶される。図6に示すテーブルでは、標準偏差として、複数の温度帯に共通の標準偏差Bが記憶されている。
本実施の形態2では、判定手段23は、冷媒漏れ判定を行う際、記憶部150が記憶するテーブルを参照する。そして、判定手段23は、外気温度センサ14の測定値が属する温度帯に記録された基準時間trefを読み出し、読み出した基準時間trefを用いて冷媒漏れ判定を行う。判定手段23は、状態データを用いて冷媒不足を判定してもよい。
次に、本実施の形態2の冷凍装置100の動作を説明する。図7は、本発明の実施の形態2の冷凍装置が実行する冷媒漏れ判定方法の手順を示すフローチャートである。ここでは、図4で説明した処理と同様な処理についての詳細な説明を省略する。
図7に示すフローチャートは、図4と比較すると、ステップS107とステップS108の間にステップS201の処理が追加されている。ステップS107において、測定手段22は、測定した差圧変化時間tmを判定手段23に渡す。判定手段23は、判定手段23から差圧変化時間tmを受け取ると、外気温度センサ14の測定値と図6に示したテーブルを参照する。そして、判定手段23は、外気温度センサ14の測定値が属する温度帯に記録された基準時間trefを読み出す(ステップS201)。その後、ステップS108において、判定手段23は、読み出した基準時間trefと差圧変化時間tmとを比較し、差圧変化時間tmが基準時間tref以下であるか否かを判定する。これ以降の処理は、図4で説明した処理と同様である。
図6に示すように、記憶部150は、外気温度について、複数の温度帯毎に基準時間trefを記憶している。判定手段23は、外気温度に対応した基準時間trefを用いて冷媒漏れ判定を行うことで、外気温度の影響を低減することができる。その結果、冷媒漏れ判定の精度がさらに向上する。
図6を参照して、記憶部150が、外気温度について、複数の温度帯毎に状態データと基準時間trefとを保持する場合で説明したが、外気の湿度についても、複数の湿度帯毎に、これらのデータを保持していてもよい。湿度帯の湿度幅は、例えば、10%である。記憶部150が、湿度について、複数の湿度帯毎に基準時間trefを記憶することで、冷媒漏れ判定の外気の湿度の影響を低減することができる。その結果、冷媒漏れ判定の精度がさらに向上する。
また、記憶部150が図6に示したテーブルを記憶している場合、図4に示したステップS107において、判定手段23は、計測された差圧変化時間tmを次の式(1)に代入して、冷媒漏れを判定してもよい。具体的には、判定手段23は、差圧変化時間tm、基準時間trefおよび標準偏差を式(1)に代入し、判定値Dtが0に近いか否かを判定することで、冷媒漏れの有無を判定する。
Dt=(差圧変化時間tm−基準時間tref)/標準偏差・・・(1)
外気温度が図10示す15〜20℃の温度帯に属する場合、判定値Dtは、Dt=(差圧変化時間tm−AA4)/B4で算出される。
冷媒漏れの判定精度が低下する要因の一例として、外気温度の他に、冷凍装置100に設けられた機器の製造バラつき等の外乱が考えられる。そこで、本実施の形態2では、制御部15の判定手段23は、冷凍装置100が設置された後、状態データおよび差圧変化時間tmのデータを蓄積し、設置された機器に合った基準時間trefを記憶部150に設定し直す。これにより、記憶部150が記憶する基準時間trefに、製品固有の特性が反映されるため、冷媒漏れの判定精度が向上する。また、冷凍装置100の配管が修理され、冷凍装置100に設けられた機器に変更あった場合にも、判定手段23は、設置された機器に合った基準時間trefを記憶部150に設定し直す。記憶部150が記憶する基準時間trefが一旦消去された後、補正後の基準時間trefが記憶部150に設定されることで、基準時間trefが適正化される。このようにして、機器の交換の影響を考慮して、基準時間trefを再設定できる。
次に、基準時間trefの更新方法の一例を説明する。制御部15が学習機能を備えている場合で説明する。冷凍装置100が設置された後、または冷凍装置100が修理された後、測定手段22は、5回以上、差圧変化時間tmを計測する。そして、判定手段23は、計測された5つ以上の差圧変化時間tmの平均値と、記憶部150が記憶する基準時間trefとを比較し、基準時間trefを補正して、基準時間trefを更新する。冷凍装置100が出荷されたときに設定された基準時間trefが冷凍装置100の設置後に更新されることで、基準時間trefが異常値となることを防止できる。
このようにして、判定手段23は、基準時間trefに関連する新たなデータを記憶部150に蓄積し、蓄積したデータと既存の基準時間trefとを比較して、冷凍装置100に最も適した値に基準時間trefを更新する。基準時間trefが更新されることで、冷媒漏れの判定精度を向上させることができる。
次に、本実施の形態2において、制御部15が記憶部150に格納されたテーブルのデータを更新する手順の一例を説明する。図8は、図1に示した制御部が学習機能にしたがって図6に示したテーブルのデータを更新する方法の手順の一例を示すフローチャートである。
ここでは、図4で説明した処理と同様な処理についての詳細な説明を省略する。また、ユーザが基準時間trefをリセットする指示を入力するためのディップスイッチが制御部15に設けられている場合で説明する。基準時間trefのリセットの指示はディップスイッチの場合に限らない。
冷凍装置100が設置された後、試運転のために電源が投入されると、判定手段23は、基準時間trefをリセットする指示が入力されたか否かを判定する(ステップS301)。基準時間trefのリセットの指示が入力されている場合、判定手段23は、準備運転の開始を運転制御手段21に指示する。運転制御手段21は、圧縮機1の運転を開始する(ステップS302)。ステップS303〜S305は図4を参照して説明したステップS102〜S104と同様なため、その詳細な説明を省略する。
ステップS306において、判定手段23は、圧縮機1を停止する前に時間K内に、吐出圧力Pout、吸入圧力Pin、過熱度および過冷却度をサンプリングして記憶部150に格納する。時間Kは、例えば、1分間である。続いて、判定手段23は、測定手段22に計測を指示する。測定手段22は、図4に示したステップS106〜S107と同様にして、差圧変化時間tmを計測する(ステップS307〜S308)。そして、測定手段22は、計測した差圧変化時間tmを記憶部150に記録する(ステップS309)。判定手段23は、差圧変化時間tmの計測カウント数nに1を加算する(ステップS310)。そして、判定手段23は、計測カウント数nが5以上であるか否かを判定する(ステップS311)。計測カウント数nが5未満である場合、判定手段23は、ステップS301に戻る。ステップS311の判定の結果、計測カウント数nが5以上である場合、判定手段23は、差圧変化時間tmのデータ取得を完了する。そして、判定手段23は、計測された5つ以上の差圧変化時間tmの平均値を算出する。さらに、判定手段23は、算出した平均値に係数を乗算した値に、記憶部150が記憶する基準時間trefを書き換える(ステップS312)。また、判定手段23は、5つ以上の差圧変化時間tmの標準偏差を算出する。
図9は、図6に示したテーブルのデータを更新した場合の一例を示す図である。図9を参照して、外気温度が15〜20℃の範囲に属して場合で説明する。図8に示したステップS306において、運転制御手段21は、図9に示すテーブルの温度帯15〜20℃を参照する。そして、運転制御手段21は、温度帯15〜20℃に関連付けて、吐出圧力Pout、吸入圧力Pin、過熱度(SH)および過冷却度(SC)として、P1、P2、Sh1およびSc1を記録する。また、ステップS312において、判定手段23は、温度帯15〜20℃において、基準時間trefの値を、図6に示したA4からAA4に書き換えている。また、判定手段23は、温度帯15〜20℃における、基準時間trefの標準偏差を、図6に示したBからB4に書き換えている。
上記のようにして、外気温度の温度帯毎に、制御部15は、状態データを記録し、基準時間trefの平均値および標準偏差を書き換える。図9は、図6と比べて、基準時間trefについて、各温度帯の平均値および標準偏差が書き換えられた場合を示している。図6と図9とを比較すると、温度帯0〜5℃において、基準時間trefの平均値がA1からAA1に更新されている。また、温度帯5〜10℃においては、基準時間trefの平均値がA2からAA2に更新されている。
なお、図6、図8および図9を参照して、基準時間trefへの外気温度の影響を抑制するために基準時間trefを更新する方法の一例を説明したが、この方法を空調対象空間となる室内の温度に適用してもよい。室内温度の温度範囲が複数の温度帯に分類され、制御部15は、複数の温度帯のそれぞれの基準時間を、図6、図8および図9と同様にして、補正してもよい。この場合、基準時間trefへの室内温度の影響を抑制できる。
実施の形態3.
本実施の形態3の冷凍装置は、蒸発器の除霜を行うホットガス経路が設けられたものである。
本実施の形態3の冷凍装置の構成を説明する。図10は、本発明の実施の形態3の冷凍装置の一構成例を示す冷媒回路図である。図11は、図10に示した制御部の一構成例を示す機能ブロック図である。本実施の形態3では、実施の形態1および2で説明した冷凍装置と同様な構成についての詳細な説明を省略する。
図10に示すように、冷凍装置100aは、圧縮機1、凝縮器2、膨張弁3および蒸発器4が環状に接続された冷媒回路10を有する。冷媒回路10において、凝縮器2と膨張弁3との間には、受液器8および電磁弁6が設けられている。圧縮機1の冷媒の吸入口側にはアキュムレータ7が設けられている。冷凍装置100aは、冷媒を冷媒回路10に循環させる冷凍サイクルを制御する制御部15を有する。
また、図10に示すように、冷媒回路10にはバイパス回路17が接続されている。バイパス回路17の2つの接続口のうち、一方の接続口が圧縮機1と凝縮器2との間に接続され、他方の接続口が蒸発器4の冷媒の流入口に接続されている。バイパス回路17は、高温高圧の冷媒を蒸発器4に供給するホットガス経路として役目を果たす。バイパス回路17には、電磁弁5が設けられている。電磁弁5および6は2方弁である。電磁弁5および6は制御部15と信号線で接続されている。
図11に示す制御部15の運転制御手段21は、蒸発器4に対して除霜を行う際、電磁弁5を閉状態から開状態に切り替え、ホットガスデフロストを実行する。また、運転制御手段21は、ホットガスデフロストを実行する際、電磁弁6を開状態から閉状態に切り替える。
本実施の形態3の冷凍装置100aは、受液器8と膨張弁3との間に電磁弁6が設けられ、ポンプダウン運転を行うことができる装置である。本実施の形態3の制御部15は、冷凍サイクルが停止したとき、すぐにポンプダウン運転を行わず、電磁弁6を開状態から閉状態に切り替えるタイミングをずらす。
本実施の形態3の冷凍装置100aの動作を説明する。運転制御手段21は、実施の形態1で説明した冷媒漏れ判定を行う際、圧縮機1を停止しても、すぐにポンプダウン運転を行わない。運転制御手段21は、電磁弁6を開状態に維持し、液バックにはアキュムレータ7で耐性を持たせておき、測定手段22および判定手段23が、図4または図7に示した冷媒漏れ判定を行う。判定の結果、判定手段23は、冷媒漏れがあると判定すると、電磁弁6を開状態から閉状態に切り替え、ポンプダウン運転を行う。
このようにして、判定手段23は、運転制御手段21に電磁弁6を閉める指示をする前に、差圧変化時間tmを確認する。そして、判定手段23は、吐出圧力Poutと吸入圧力Pinとの圧力差の変化速度vpと通常のポンプダウン運転の際の高圧側の圧力低下速度と比較する。判定手段23は、圧力差の変化速度Vpの方が通常のポンプダウン運転の際の高圧側の圧力低下速度より大きい場合、冷媒回路10の高圧側から冷媒漏れがあると判定する。その理由を説明する。
ポンプダウン運転の際、冷媒漏れがなければ、高圧側の圧力の低下速度が遅く、圧力差の変化速度vpに異常が現れない。一方、冷媒漏れがある場合、圧力差の変化速度vpと通常のポンプダウン運転の際の高圧側の圧力低下速度とを比べると、これらの速度に差異がみられるからである。
非共沸冷媒のような混合冷媒においては、冷媒が漏れる際は、混合冷媒における高圧冷媒から漏れていくため、高圧側からの漏れがより顕著に現れ、冷媒漏れがより容易に判断することができる。このように、本実施の形態3では、冷凍装置100aは、冷媒漏れがあると判定した場合に、冷媒回路10の高圧側からの漏れかどうかを判別できる。
冷媒のR32と、R125と、R134aと、R1234yfと、CO2の混合冷媒であり、R32の割合XR32[wt%]が33<XR32<39である条件と、R125の割合XR125[wt%]が27<XR125<33である条件と、R134aの割合XR134a[wt%]が11<XR134a<17である条件と、R1234yfの割合XR1234yf[wt%]が11<XR1234yf<17である条件と、CO2の割合XCO2[wt%]が3<XCO2<9である条件と、XR32とXR125とXR134aとXR1234yfとXCO2の総和が100である条件と、を全て満たす冷媒のような非共沸混合冷媒においては、冷媒が漏れる際は、混合冷媒における高圧冷媒から漏れていくため、高圧側からの漏れがより顕著に現れ、冷媒漏れがより容易に判断することができる。このように、本実施の形態3では、冷凍装置100aは、冷媒漏れがあると判定した場合に、冷媒回路10の高圧側からの漏れかどうかを判別できる。
また、本実施の形態3においても、冷凍装置100aは、ホットガスデフロストを行った後、冷凍サイクルを停止させ、圧力差の変化速度vpを計測することで、冷媒の漏れを精度よく判定できる。
さらに、本実施の形態3の冷凍装置100aは、実施の形態1と同様に、外気温度の飽和圧に対して一定の圧力差を冷媒回路10に設定する。その後、冷凍装置100aは、ホットガスデフロストを行い、冷凍サイクル停止後の圧力差の変化速度vpを測定して、冷媒漏れを判定する。そのため、実施の形態3においても、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
実施の形態4.
本実施の形態4は、本実施の形態1〜3で説明した冷媒漏れ判定に、準備運転中の冷凍サイクルの運転状態を示す状態データを用いた冷媒不足判定を組み合わせるものである。本実施の形態4では、実施の形態1〜3のうち、実施の形態1で説明した冷媒漏れ判定と、冷媒不足判定とを組み合わせる場合で説明する。
上述したように、冷凍装置100は、外気温度の飽和圧を基準にして一定の圧力差を冷媒回路内に生じさせた状態で、圧力差の変化速度Vpを用いて冷媒漏れを判定している。判定手順において、測定手段22は、計測する差圧変化時間tmを記憶部150に記録している。判定手段23は、外気温度にリンクして、過熱度(SH)および過冷却度等の状態データを記憶部150に記録する。
判定手段23は、圧力差の変化速度Vpだけでなく、冷凍サイクルの運転中における冷媒回路10内の高圧および低圧を監視し、これらの圧力の変化の情報を、冷媒漏れ判定に用いてもよい。また、判定手段23は、圧力差の変化速度Vpだけでなく、図6または図9に示したテーブルを参照し、過熱度および過冷却度の状態データを、冷媒漏れ判定に用いてもよい。複数の判定方法を組み合わせることで、冷媒漏れの有無の判定精度を向上させることができる。
図12は、本発明の実施の形態4の冷凍装置の一構成例を示す冷媒回路図である。図12に示す冷凍装置100bは、図1に示した冷凍装置100と比べると、温度センサ31〜34をさらに有する。温度センサ31は、凝縮器2における冷媒出口近くに設けられている。温度センサ31は凝縮温度を測定する。温度センサ32は、凝縮器2と膨張弁3とを接続する冷媒配管において、凝縮器2の冷媒出口付近に設けられている。温度センサ32は、液冷媒の温度を測定する。
温度センサ33は、蒸発器4における冷媒出口近くに設けられている。温度センサ33は蒸発温度を測定する。温度センサ34は、蒸発器4と圧縮機1とを接続する冷媒配管において、圧縮機1の冷媒吸入口付近に設けられている。温度センサ34はガス冷媒の温度を測定する。温度センサ31〜34は制御部15と信号線で接続されている。
制御部15の運転制御手段21は、準備運転中に、温度センサ31および温度センサ32から取得する測定値を用いて、過冷却度を算出する。また、運転制御手段21は、温度センサ32および温度センサ33から取得する測定値を用いて、過熱度を算出する。運転制御手段21は、算出した過冷却度および過熱度を記憶部150に格納する。
冷媒回路10内の冷媒が不足すると、吐出圧力Poutおよび吸入圧力Pinが、冷媒量が正常の場合と比較して、低下する傾向がある。測定手段22は、冷凍装置100aの準備運転中に吐出圧力Poutおよび吸入圧力Pinを監視する。具体的には、測定手段22は、吐出圧力Poutおよび吸入圧力Pinの値を記憶部150に格納する。判定手段23は、監視する吐出圧力Poutおよび吸入圧力Pinのうち、いずれか一方の値が一定の割合よりも低くなると、冷媒不足と判定する。一定の割合は、例えば、正常値の9割である。判定手段23は、冷媒不足である旨の警報情報を記憶部150に格納する。続いて、制御部15は、図4または図7に示した手順にしたがって冷媒漏れ判定を行う。判定手段23は、冷凍装置100aの準備運転中の冷媒圧力に基づき冷媒不足であると判定し、かつ差圧変化時間tmが基準時間tref以下である場合、冷媒漏れがあると判定する。
このようにして、冷凍装置100aの準備運転中の冷媒圧力と、冷凍サイクル停止中の圧力差の変化速度vpとを組み合わせた冷媒漏れ判定を行うことで、冷媒漏れの判定精度がより向上する。
続いて、過熱度を用いた冷媒不足判定を、冷媒漏れ判定に組み合わせる場合を説明する。冷媒回路10内の冷媒が不足すると、過熱度が増加する傾向がある。測定手段22は、冷凍装置100aの準備運転中に過熱度の状態を監視する。具体的には、測定手段22は、一定時間毎に過熱度を算出し、算出した過熱度の値を記憶部150に格納する。判定手段23は、過熱度が設定値よりも高くなると、冷媒不足と判定する。設定値は、例えば、正常値の1.1倍である。判定手段23は、警報情報を記憶部150に格納する。続いて、制御部15は、図4または図7に示した手順にしたがって冷媒漏れ判定を行う。判定手段23は、冷凍装置100aの準備運転中の過熱度に基づき冷媒不足であると判定し、かつ差圧変化時間tmが基準時間tref以下である場合、冷媒漏れがあると判定する。
このようにして、冷凍装置100aの準備運転中の過熱度と、冷凍サイクル停止中の圧力差の変化速度vpとを組み合わせた冷媒漏れ判定を行うことで、冷媒漏れの判定精度がより向上する。
続いて、過冷却度を用いた冷媒不足判定を、冷媒漏れ判定に組み合わせる場合を説明する。冷媒回路10内の冷媒が不足すると、過冷却度が減少する傾向がある。測定手段22は、冷凍装置100aの運転中に過冷却度の状態を監視する。具体的には、測定手段22は、一定時間毎に過冷却度を算出し、算出した過冷却度の値を記憶部150に格納する。判定手段23は、過冷却度が設定値よりも低くなると、冷媒漏れのおそれがあると判定する。設定値は、例えば、正常値の0.9倍である。続いて、制御部15は、図4または図7に示した手順にしたがって冷媒漏れ判定を行う。判定手段23は、冷凍装置100aの準備運転中の過冷却度に基づき冷媒不足であると判定し、かつ差圧変化時間tmが基準時間tref以下である場合、冷媒漏れがあると判定する。
このようにして、冷凍装置100aの準備運転中の過冷却度と、冷凍サイクル停止中の圧力差の変化速度vpとを組み合わせた冷媒漏れ判定を行うことで、冷媒漏れの判定精度がより向上する。
変形例1.
本実施の形態4の冷媒漏れ判定方法に、冷凍装置100aの準備運転中の状態データの一例として温度効率を用いた冷媒不足判定を組み合わせる場合を説明する。変形例1では、図10に示した冷凍装置100aに、図12に示した温度センサ31および32が設けられた構成の場合で説明する。また、変形例1の冷凍装置100aに、図に示さない過冷却器が設けられている。制御部15は、温度効率εを、以下に示す式(2)を用いて算出する。
温度効率ε=過冷却度/ΔTA・・・(2)
式(2)において、過冷却度は、過冷却度=(凝縮温度−液冷媒温度)で算出される。温度差ΔTAは、ΔTA=(凝縮温度−周囲温度)で算出される。周囲温度は、外気温度センサ14が測定する外気温度である。
冷媒回路10に冷媒が適正量封入されている場合には、圧縮機1から吐出された冷媒は凝縮器2の出口で飽和液状態となり、余剰冷媒が受液器8に貯留される。受液器8の下流側では、図に示さない過冷却器でさらに冷媒が冷却され、温度効率εは約0.5以上となる。この0.5という値は、熱交換性能により異なる。
過冷却度はΔTAの変動により変動するが温度効率εの変動は小さくなる。冷媒が不足する場合、圧縮機1から吐出した冷媒は凝縮器2の出口および受液器8内でもガス状態である。冷媒は過冷却器で飽和液状態となるか、過冷却器でもガス状態となる。その結果、冷媒回路10に冷媒が適正量封入されている場合と比較して、凝縮温度と液冷媒温度との温度差である過冷却度が小さくなり、温度効率εは小さくなるか、ゼロに近い値となる。温度効率εにはこのような性質があるため、制御部15は、温度効率εを用いて冷媒不足を判定できる。
上述の実施の形態1〜3において、制御部15は、温度効率εを用いて冷媒不足を判定し、冷媒不足と判定した場合、実施の形態1〜3で説明した冷媒漏れ判定を行ってもよい。この場合においても、冷媒漏れの判定精度が向上する効果が得られる。