JP6723002B2 - 油脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、油脂の製造方法に関する。また、本発明は当該方法に用いる形質転換体に関する。
脂肪酸は脂質の主要構成成分の1つであり、生体内においてグリセリンとのエステル結合により生成するトリアシルグリセロール等の油脂(脂質)を構成する。また、多くの動植物において脂肪酸はエネルギー源として貯蔵され利用される物質でもある。動植物内に蓄えられた脂肪酸や油脂は、食用又は工業用として広く利用されている。
近年、持続可能な社会の実現に向けて再生可能エネルギーに関する研究が推し進められている。特に光合成微生物は、二酸化炭素の削減効果に加えて、穀物と競合しないバイオ燃料生物として期待されている。
一般に、微生物を用いてバイオ燃料を製造する場合、安価に油脂を取得する方法として、油脂を分泌させ、分泌物を回収する方法が効果的である。
これまでに、人為的処理により変異が加えられたモルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)を用いて、菌体内に蓄積した油脂を菌体外に分泌させる方法が提案されている(特許文献1参照)。また、産生された炭化水素を細胞外へ分泌することが可能なボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)なども知られている。しかし、これらの微生物の生産物の分泌能はいずれも、突然変異や微生物自体の特性によるものがほとんどである。
また、任意の遺伝子の改変によって、細胞外に油脂を分泌させる方法も検討されている。例えば、酵母を宿主とし長鎖アシルCoAシンセターゼをコードする遺伝子を欠損させることで脂肪酸を分泌させる方法や、シアノバクテリアを宿主とし長鎖アシルACPシンセターゼをコードする遺伝子を欠損させることで、脂肪酸を分泌させる方法が知られている(特許文献2〜4参照)。
近年、バイオ燃料生産に有用であるとして、藻類が注目を集めている。藻類は、バイオディーゼル燃料として利用可能な油脂を光合成によって生産でき、しかも食料と競合しないことから、次世代のバイオマス資源として注目されている。また、藻類は、植物に比べ、高い油脂生産・蓄積能力を有するとの報告もある(例えば、非特許文献1及び2参照)。藻類の油脂合成・蓄積のメカニズムやそれを応用した生産技術について研究が始まってはいるが、未解明な部分も多い。
藻体内に蓄積した油脂を利用しようとする場合、細胞を集め、これらをミル等によって処理し菌の細胞膜を破壊し、蓄積した油脂を抽出することが必要である。しかし、微細藻類は細胞構造が強固であることが知られている(非特許文献2参照)。よって、微細藻類の細胞膜を破壊し、油脂と破壊した細胞との分離、ないし油脂の抽出等の工程は複雑であり、高コストである。
よって、光合成微生物であって細胞の破壊を必要とすることなく、容易且つ安価に油脂を得ることが望まれている。
国際公開第01/12780号 国際公開第01/75136号 国際公開第2008/119082号 国際公開第2009/076559号
Y.Chisti,Biotechnology Advances, 2007,vol.25,p.294-306 Spiden,E.M.,et al.,Bioresource Technology,2013,vol.140,p.165-171
本発明は、真正眼点藻網(Eustigmatophyceae)の藻類を用いて容易且つ安価に油脂を製造する、油脂の製造方法を提供することを課題とする。
さらに本発明は、容易且つ安価な油脂の製造に好適に用いることができ、生産した油脂を細胞外に分泌する形質転換体を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、真正眼点藻網の藻類のβ酸化経路を司る酵素をコードする遺伝子を欠失又はダウンレギュレートさせ、藻類のβ酸化能を抑制又は阻害することで、生産された油脂が細胞外に分泌させることを見い出した。そして、前記藻類を液体培地で培養した場合、細胞外に分泌された油脂は油滴として浮遊することを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明は、真正眼点藻網の藻類を培養して油脂を製造する方法であって、前記藻類のβ酸化能を抑制又は阻害する、油脂の製造方法に関する。
さらに本発明は、真正眼点藻網の藻類のβ酸化能を抑制又は阻害させた、形質転換体に関する。
本発明によれば、真正眼点藻網の藻類を用いて容易且つ安価に油脂を製造することができる。
また本発明の形質転換体は、生産した油脂を細胞外に分泌させることができるため、容易且つ安価な油脂の製造に好適に用いることができる。
後述の実施例1で作製したΔACDH/ACOX5の培養1か月後の培養上清の様子を示す、図面代用写真である。 後述の実施例1で作製したΔACDH/ACOX5を培養して得られた油滴サンプルのTLC分析の結果を示す、図面代用写真である。
本明細書における「油脂」は、中性脂質(トリアシルグリセロール等)、ろう、セラミド等の単純脂質;リン脂質、糖脂質、スルホ脂質等の複合脂質;及びこれらの脂質から誘導される、脂肪酸、アルコール類、炭化水素類等の誘導脂質を包含するものである。
また本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また本明細書において「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
さらに明細書において、遺伝子の「上流」とは、翻訳開始点からの位置ではなく、対象として捉えている遺伝子又は領域の5'側に続く領域を示す。一方、遺伝子の「下流」とは、対象として捉えている遺伝子又は領域の3'側に続く領域を示す。
本発明では、真正眼点藻網の藻類(以下、単に「藻類」ともいう)を培養して油脂を生産させるに際し、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化を抑制又は阻害する。
前述のように、真正眼点藻網の藻類、特に、微細藻類、の細胞壁は強固であることが知られている。よって、通常、真正眼点藻網の藻類を用いて油脂を製造する場合、産生された油脂を回収するには、煩雑な細胞破砕操作が必要となる。
これに対して、本発明によれば、後述の実施例でも示すように、産生された油脂が細胞外に分泌され、培養上清に遊離する。よって、培養物を遠心分離や溶媒抽出などの操作により油脂を得ることができ、細胞破砕という煩雑な操作を不要とすることができる。その結果、油脂回収に係るプロセスの簡便化やコスト削減につなげることができる。
さらに、藻類のβ酸化能を抑制又は阻害することで脂肪酸の分解が抑制されるとともに、産生された油脂が細胞外に分泌される。その結果、油脂の蓄積が細胞の容量に制限されず、油脂の生産量の向上も期待される。
以下本明細書において、β酸化能を抑制又は阻害した真正眼点藻網の藻類を「形質転換体」ともいい、β酸化能を抑制又は阻害させていない真正眼点藻網の藻類を「宿主」、「野生株」又は「親微生物」ともいう。
本発明で用いる藻類としては、後述するβ酸化関連酵素をコードする遺伝子を有する藻類から、適宜選択することができる。本発明において、藻類が有するβ酸化関連酵素をコードする遺伝子は、藻類のゲノム上に存在していることが好ましい。油脂の生産効率や得られた油脂の利用性、並びに遺伝子組換え手法が確立している観点から、ユースチグマトス目(Eustigmatales)の藻類が好ましく、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類がより好ましい。本発明で好ましく用いることができるナンノクロロプシス属の藻類の具体例としては、ナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)、ナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)、オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス・アトムス(Nannochloropsis atomus)、ナンノクロロプシス・マキュラタ(Nannochloropsis maculata)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ(Nannochloropsis granulata)、ナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp.)等が挙げられる。なかでも、油脂生産性の観点から、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・オセアニカ、又はナンノクロロプシス・ガディタナが好ましく、ナンノクロロプシス・オキュラータ又はナンノクロロプシス・オセアニカがより好ましく、ナンノクロロプシス・オキュラータがさらに好ましい。
本明細書において「β酸化」とは、アシルCoAを原料としてアセチルCoAを取り出す代謝経路のことであり、この分解経路に関連する酵素を以下「β酸化関連酵素」という。
β酸化反応は主として、4段階の反応の繰り返しからなる(TOXICOLOGICAL SCIENCES,2006,Vol.89(1),pp.93-107;Functional & Integrative Genomics,2009,Vol.9(2),pp.145-151など参照)。
1段目の反応ではアシルCoAからエノイルCoAが生成される。この1段目の反応では、アシルCoAデヒドロゲナーゼ(acyl-CoA dehydrogenase、以下、「ACDH」ともいう)、アシルCoAオキシダーゼ(acyl-CoA oxidase、以下、「ACOX」ともいう)などが関与し、ACDHとACOXは反応過程において過酸化水素の発生の有無によって区別される。本明細書では、ACDHとACOXとをまとめて「ACDH/ACOX」とも表記する。
2段目の反応では、1段目の反応で生成したエノイルCoAから、3-ヒドロキシアシルCoAが生成される。この2段目の反応では、エノイルCoAヒドラターゼ(enoyl-CoA hydratase)などが関与する。
3段目の反応では、2段目の反応で生成した3-ヒドロキシアシルCoAから、3-ケトアシルCoAが生成される。この3段目の反応では、3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ(3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenase)などが関与する。
4段目の反応では、3段目の反応で生成した3-ケトアシルCoAから、炭素原子が2個分短くなったアシルCoAと、アセチルCoAが生成される。この4段目の反応では、3-ケトアシルCoAチオラーゼ(3-ketoacyl-CoA thiolase)などが関与する。
さらに、エノイルCoAから3-ヒドロキシアシルCoAを経て3-ケトアシルCoAが生成する反応を一度に触媒するMultifunctional enzymeや、エノイルCoAから、炭素原子が2個分短くなったアシルCoAと、アセチルCoAを生成する反応を一度に触媒するTrifunctional enzymeが存在することも知られている。
本明細書における「β酸化関連酵素」としては、β酸化反応に関連する前述した酵素が挙げられる。このうち、本発明におけるβ酸化関連酵素としては、ACDH、ACOX、エノイルCoAヒドラターゼ、3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ、3-ケトアシルCoAチオラーゼを好ましく指す。
ACDHは、FADを補因子として、アシルCoAをエノイルCoAに変換する反応を触媒する酵素である。
ACOXは、FADを補因子として、アシルCoAをエノイルCoAに変換し、副生成物として過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素である。
エノイルCoAヒドラターゼは、エノイルCoA(trans-2,3-デヒドロアシルCoA)にH2Oを付加し、β-ヒドロキシアシルCoA(3-ヒドロキシアシルCoA)に変換する反応を触媒する酵素である。
3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼは、NAD+を補因子として、β-ヒドロキシアシルCoAを酸化し、β-ケトアシルCoA(3-ケトアシルCoA)に変換する反応を触媒する酵素である。
3-ケトアシルCoAチオラーゼは、補酵素Aとともにチオール開裂を起こし、β-ケトアシルCoAから炭素原子が2個分短くなったアシルCoAと、アセチルCoAを産生する反応を触媒する酵素である。
本明細書における「β酸化関連酵素」とは、油脂又はこれを構成する脂肪酸の一連のβ酸化反応のうち、前述の1段目の反応を担う酵素を好ましく指し、具体的にはACDH及びACOXを指す。
本発明におけるβ酸化関連酵素としては、下記タンパク質(A)〜(J)(以下、「ACDH/ACOX」又は「NoACDH/ACOX」ともいう)が挙げられる。

(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
(C)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
(E)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
(G)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。

配列番号1〜5で表されるアミノ酸配列はいずれも、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のタンパク質のアミノ酸配列である。アミノ酸配列の解析からこれらのタンパク質は、ACDH又はACOXであると推測される。
前記タンパク質(A)及び(B)(以下、「ACDH/ACOX1」又は「NoACDH/ACOX1」ともいう)、前記タンパク質(C)及び(D)(以下、「ACDH/ACOX2」又は「NoACDH/ACOX2」ともいう)、前記タンパク質(E)及び(F)(以下、「ACDH/ACOX3」又は「NoACDH/ACOX3」ともいう)、前記タンパク質(G)及び(H)(以下、「ACDH/ACOX4」又は「NoACDH/ACOX4」ともいう)、並びに前記タンパク質(I)及び(J)(以下、「ACDH/ACOX5」又は「NoACDH/ACOX5」ともいう)はいずれも、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性を有する。本明細書において「アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性」とは、アシルCoAをtrans-2,3-デヒドロアシルCoAに変換する反応を触媒する活性を意味する。
タンパク質がアシルCoAに対してACDH活性又はACOX活性を有することは、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1992,Vol.267,No.2,pp.1034-1041や、Biochem.J.,1987,Vol.248,pp.603-607などを参照して、確認することができる。例えば、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを宿主細胞内へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養し、宿主細胞内のtrans-2,3-デヒドロアシルCoA量の変化を定法により分析することで確認できる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを宿主細胞内へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し、アシルCoAと補因子FADを用いてtrans-2,3-デヒドロアシルCoAの生成反応を行うことにより確認できる。
前記タンパク質(B)において、β酸化活性の点から、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(B)として、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上154個以下、好ましくは1個以上115個以下、より好ましくは1個以上77個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上7個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(D)において、β酸化活性の点から、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(D)として、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上142個以下、好ましくは1個以上106個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上49個以下、より好ましくは1個以上35個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上14個以下、さらに好ましくは1個以上7個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(F)において、β酸化活性の点から、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(F)として、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上84個以下、好ましくは1個以上63個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上16個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(H)において、β酸化活性の点から、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(H)として、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上86個以下、好ましくは1個以上64個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(J)において、β酸化活性の点から、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(J)として、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上88個以下、好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(A)〜(J)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号1〜5のいずれか1つに示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(A)〜(J)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(A)〜(J)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述するAT遺伝子を用いることができる。
なお、ナンノクロロプシス・オキュラータ等の藻類は、私的又は公的な研究所等の保存機関より入手することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株は、国立環境研究所(NIES)から入手することができる。
前述のβ酸化関連酵素をコードする遺伝子(以下、「β酸化関連酵素遺伝子」ともいう)として、下記DNA(a)〜(j)のいずれか1つからなる遺伝子が挙げられる。
なお、本明細書において、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子を「ACDH/ACOX1遺伝子」又は「NoACDH/ACOX1遺伝子」といい、下記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子を「ACDH/ACOX2遺伝子」又は「NoACDH/ACOX2遺伝子」といい、下記DNA(e)又は(f)からなる遺伝子を「ACDH/ACOX3遺伝子」又は「NoACDH/ACOX3遺伝子」といい、下記DNA(g)又は(h)からなる遺伝子を「ACDH/ACOX4遺伝子」又は「NoACDH/ACOX4遺伝子」といい、下記DNA(i)又は(j)からなる遺伝子を「ACDH/ACOX5遺伝子」又は「NoACDH/ACOX5遺伝子」といい、これらをまとめて「ACDH/ACOX遺伝子」又は「NoACDH/ACOX遺伝子」ともいう。

(a)配列番号76で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号77で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
(e)配列番号78で表される塩基配列からなるDNA。
(f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
(g)配列番号79で表される塩基配列からなるDNA。
(h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
(i)配列番号80で表される塩基配列からなるDNA。
(j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号76の塩基配列は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質(ACDH/ACOX1)をコードする遺伝子の塩基配列である。
前記DNA(b)において、β酸化活性の点から、前記DNA(a)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(b)として、前記DNA(a)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上463個以下、好ましくは1個以上347個以下、より好ましくは1個以上231個以下、より好ましくは1個以上162個以下、より好ましくは1個以上115個以下、より好ましくは1個以上92個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上46個以下、さらに好ましくは1個以上23個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。さらに前記DNA(b)として、前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
配列番号77の塩基配列は、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質(ACDH/ACOX2)をコードする遺伝子の塩基配列である。
前記DNA(d)において、β酸化活性の点から、前記DNA(c)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(d)として、前記DNA(c)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上428個以下、好ましくは1個以上321個以下、より好ましくは1個以上214個以下、より好ましくは1個以上149個以下、より好ましくは1個以上107個以下、より好ましくは1個以上85個以下、より好ましくは1個以上64個以下、より好ましくは1個以上42個以下、さらに好ましくは1個以上21個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。さらに前記DNA(d)として、前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
配列番号78の塩基配列は、配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質(ACDH/ACOX3)をコードする遺伝子の塩基配列である。
前記DNA(f)において、β酸化活性の点から、前記DNA(e)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(f)として、前記DNA(e)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上253個以下、好ましくは1個以上190個以下、より好ましくは1個以上126個以下、より好ましくは1個以上88個以下、より好ましくは1個以上63個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上25個以下、さらに好ましくは1個以上12個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。さらに前記DNA(f)として、前記DNA(e)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
配列番号79の塩基配列は、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質(ACDH/ACOX4)をコードする遺伝子の塩基配列である。
前記DNA(h)において、β酸化活性の点から、前記DNA(g)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(h)として、前記DNA(g)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上259個以下、好ましくは1個以上194個以下、より好ましくは1個以上129個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上64個以下、より好ましくは1個以上51個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上25個以下、さらに好ましくは1個以上12個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。さらに前記DNA(h)として、前記DNA(g)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
配列番号80の塩基配列は、配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質(ACDH/ACOX5)をコードする遺伝子の塩基配列である。
前記DNA(j)において、β酸化活性の点から、前記DNA(i)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(j)として、前記DNA(i)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上266個以下、好ましくは1個以上199個以下、より好ましくは1個以上133個以下、より好ましくは1個以上93個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上39個以下、より好ましくは1個以上26個以下、さらに好ましくは1個以上13個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。さらに前記DNA(j)として、前記DNA(i)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
本発明において、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化を抑制又は阻害する方法としては、常法より適宜選択することができる。なかでも、ACDH/ACOX遺伝子などのβ酸化関連酵素遺伝子を欠失若しくは不活性化、ACDH/ACOX遺伝子などのβ酸化関連酵素遺伝子をダウンレギュレート、又はACDH/ACOXなどのβ酸化関連酵素の酵素活性を阻害若しくは抑制することにより、前記藻類のβ酸化経路を阻害し、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化を抑制又は阻害することが好ましい。
β酸化関連酵素遺伝子を欠失若しくは不活性化することにより前記藻類のβ酸化経路を阻害し、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化を抑制又は阻害する方法について説明する。
前記藻類のβ酸化関連酵素遺伝子を欠失又は不活性化することで、β酸化経路が阻害される。その結果藻体のβ酸化能が抑制又は阻害され、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化が抑制又は阻害される。
本発明において、欠失又は不活性化するβ酸化関連酵素遺伝子は1種であってもよいし、2種以上のβ酸化関連酵素遺伝子を欠失又は不活性化してもよい。
β酸化関連酵素遺伝子を欠失又は不活性化させる方法は、常法より適宜選択することができる。例えば、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンなどの変異誘発剤、UV、ガンマ線等の照射によりβ酸化関連酵素遺伝子の突然変異を誘発する方法、β酸化関連酵素遺伝子中(例えば、活性部位、基質結合部位)に部位特異的点突然変異(例えば、フレームシフト突然変異、インフレーム突然変異、終止コドンの挿入など)を誘発する方法、β酸化関連酵素遺伝子中(例えば、活性部位、基質結合部位)に他の任意のDNA断片(例えば、任意の選択マーカー)を挿入する方法、β酸化関連酵素遺伝子の全部又は一部を他の任意のDNA断片(例えば、任意の選択マーカー)で置換する方法、"Red-driven integration",Datsenko et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,vol.97:66,p.40-45に記載の方法等が挙げられる。このうち、β酸化関連酵素遺伝子中に部位特異的点突然変異を誘発する方法、β酸化関連酵素遺伝子中に他の任意のDNA断片を挿入する方法、又はβ酸化関連酵素遺伝子の全部又は一部を他の任意のDNA断片で置換する方法が好ましく、β酸化関連酵素遺伝子の全部又は一部を他の任意のDNA断片で置換する方法がより好ましく、β酸化関連酵素遺伝子の全部又は一部を薬剤耐性遺伝子発現カセットで置換する方法がさらに好ましい。
β酸化関連酵素遺伝子の全部又は一部を他の任意のDNA断片で置換するには、例えば、相同組換えにより行うことができる。
具体的には、標的遺伝子の上流、下流領域を含むが標的遺伝子を含まない直鎖状のDNA断片をPCR等の方法によって構築する。これを常法により宿主細胞内に取り込ませて、ゲノムとDNA断片との間で、ゲノムの標的遺伝子の上流側と下流側の領域で2回交差の相同組換えを起こさせる。その結果、ゲノム上の標的遺伝子を欠失あるいは他のDNA断片と置換させることができる。また、標的遺伝子の上流、下流領域を含み、塩基置換や塩基挿入等の変異を導入した標的遺伝子のDNA断片をPCR等の方法によって構築する。これを常法により宿主細胞内に取り込ませて、ゲノムとDNA断片との間で、ゲノムの標的遺伝子内の変異箇所の上流側と下流側の領域で2回交差の相同組換えを起こさせる。その結果、ゲノム上の標的遺伝子に変異を導入し、その機能を低下又は消失させることができる。また、標的遺伝子の一部を含むDNA断片を適当なプラスミドベクターにクローニングし、得られた環状の組換えプラスミドを常法により宿主細胞内に取り込ませて、ゲノムと組換えプラスミドとの間で相同組換えを起こさせる。その結果、ゲノム上の標的遺伝子を分断して、その機能を低下又は消失させることができる。
このような相同組換えによるβ酸化関連酵素遺伝子の全部又は一部を他の任意のDNA断片で置換する方法は、例えばBesher et al.,Methods in molecular biology,1995,vol.47,p.291-302等の記載を参考に行うことができる。特に、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合、Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52)等の記載を参考にして、相同組換え法によりゲノム中の特定の遺伝子の全部又は一部を欠失又は他の任意のDNA断片で置換することができる。
前記DNA断片を細胞内に導入する際、通常のプラスミド(ベクター)を使用することができる。使用するプラスミドは、DNA断片を導入する親微生物の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、pUC19(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(Yangmin Gong,et al.,Journal of Basic Microbiology,2011,vol.51,p.666-672参照)、pJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。このうち、pUC19、pPha-T1、又はpJET1が好ましく用いられる。DNA断片のベクターへの導入は、制限酵素処理やライゲーション等の常法により行うことができる。
また、Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52)の記載の方法を参考にして、前記DNA断片を含んでなる遺伝子発現カセットを用いて、親微生物に導入することもできる。
β酸化関連酵素遺伝子の全部又は一部を置換する他の任意のDNA断片として、DNA断片が親微生物のゲノムに組み込まれたことを確認するために通常用いられる選択マーカーから、使用する親微生物の種類に応じて適宜選択することが好ましい。本発明で好ましく用いることができる選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することもできる。
また、導入する任意のDNA断片として、前述の選択マーカーの上流側と下流側に任意のプロモーター領域やターミネーター領域を連結させたDNA断片も使用することができる。本発明で好ましく用いることができるプロモーターやターミネーターの種類も、DNA断片を導入する親微生物の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができるプロモーターとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーター、SpoVGプロモーター、カリフラワーモザイルウイルス35SRNAプロモーター、ハウスキーピング遺伝子プロモーター(例えば、チューブリンプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター等)、ナタネ由来Napin遺伝子プロモーター、植物由来Rubiscoプロモーター、ナンノクロロプシス属由来のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)が挙げられる。
前記DNA断片を親微生物に導入する形質転換方法は、親微生物の種類に応じて常法より適宜選択することができる。例えば、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法等が挙げられる。また、本発明では、Randor Radakovits, et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012等に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
目的遺伝子が欠失又は不活化した形質転換体(組換え微生物)の選択は、形質転換体からゲノムDNAを抽出して目的遺伝子部位を含む領域を対象としてPCRを行う方法、目的遺伝子領域に結合するDNAプローブを用いたサザンブロッティング法、薬剤耐性遺伝子などの選択マーカーを利用する方法、等により行うことができる。
β酸化関連酵素遺伝子をダウンレギュレートして藻類のβ酸化経路を阻害し、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化能を抑制又は阻害する方法について説明する。
β酸化関連酵素遺伝子の発現の抑制、又はβ酸化関連酵素遺伝子の上流に位置するプロモーター(以下、「β酸化関連酵素遺伝子プロモーター」ともいう)を欠失若しくは不活性化することで、β酸化関連酵素遺伝子の発現量が減少する(β酸化関連酵素遺伝子のダウンレギュレーション)。その結果β酸化経路が阻害され、藻体のβ酸化能が抑制又は阻害され、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化が抑制又は阻害される。
本発明において、ダウンレギュレートするβ酸化関連酵素遺伝子は1種であってもよいし、2種以上のβ酸化関連酵素遺伝子をダウンレギュレートしてもよい。
β酸化関連酵素遺伝子をダウンレギュレートさせる方法は、常法より適宜選択することができる。例えば、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンなどの変異誘発剤、UV、ガンマ線等の照射によりβ酸化関連酵素遺伝子プロモーターや転写・翻訳開始領域の突然変異を誘発する方法、β酸化関連酵素遺伝子プロモーター配列や転写・翻訳開始領域中に他の任意のDNA断片(例えば、任意のリプレッサー、任意の選択マーカー等)を挿入する方法、β酸化関連酵素遺伝子プロモーター配列や転写・翻訳開始領域の全部又は一部を他の任意のDNA断片(例えば、任意のリプレッサー、任意の選択マーカー等)で置換する方法、"Red-driven integration",Datsenko et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,vol.97:66,p.40-45に記載の方法、アンチセンス法、RNA干渉法、プロモーター競合等があげられる。ここで「プロモーター競合」とは、β酸化関連酵素遺伝子プロモーターにより転写される他の任意のDNA断片(例えば、任意の選択マーカー)を前記藻類に導入し、転写量を低下させるβ酸化関連酵素遺伝子の上流のβ酸化関連酵素遺伝子プロモーターと、他の任意のDNA断片の転写を行うβ酸化関連酵素遺伝子プロモーターとの間で転写因子の分配を誘発し、β酸化関連酵素遺伝子の転写量を低下させることをいう。
このうち、β酸化関連酵素遺伝子プロモーター配列や転写・翻訳開始領域中に他の任意のDNA断片を挿入する方法、β酸化関連酵素遺伝子プロモーター配列や転写・翻訳開始領域の全部又は一部を他の任意のDNA断片で置換する方法、又はプロモーター競合が好ましく、β酸化関連酵素遺伝子プロモーター配列や転写・翻訳開始領域の全部又は一部を他の任意のDNA断片で置換する方法、又はプロモーター競合がより好ましく、プロモーター競合がさらに好ましい。
ここで、β酸化関連酵素遺伝子プロモーターは、前記藻類のゲノム配列に基づき、常法に従い、β酸化関連酵素遺伝子の上流のゲノム配列を用いることができる。
β酸化関連酵素遺伝子プロモーターの具体例としては、下記DNA(a1)〜(j1)が挙げられる。
なお、本明細書において、下記DNA(a1)又は(b1)を「ACDH/ACOX1遺伝子プロモーター」又は「NoACDH/ACOX1遺伝子プロモーター」といい、下記DNA(c1)又は(d1)を「ACDH/ACOX2遺伝子プロモーター」又は「NoACDH/ACOX2遺伝子プロモーター」といい、下記DNA(e1)又は(f1)を「ACDH/ACOX3遺伝子プロモーター」又は「NoACDH/ACOX3遺伝子プロモーター」といい、下記DNA(g1)又は(h1)を「ACDH/ACOX4遺伝子プロモーター」又は「NoACDH/ACOX4遺伝子プロモーター」といい、下記DNA(i1)又は(j1)を「ACDH/ACOX5遺伝子プロモーター」又は「NoACDH/ACOX5遺伝子プロモーター」といい、これらをまとめて「ACDH/ACOX遺伝子プロモーター」又は「NoACDH/ACOX遺伝子プロモーター」ともいう。

(a1)配列番号81で表される塩基配列からなるDNA。
(b1)前記DNA(a1)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
(c1)配列番号82で表される塩基配列からなるDNA。
(d1)前記DNA(c1)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
(e1)配列番号83で表される塩基配列からなるDNA。
(f1)前記DNA(e1)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(E)又は(F)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
(g1)配列番号84で表される塩基配列からなるDNA。
(h1)前記DNA(g1)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(G)又は(H)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
(i1)配列番号85で表される塩基配列からなるDNA。
(j1)前記DNA(i1)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(I)又は(J)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
配列番号81の塩基配列は、前記ACDH/ACOX1遺伝子のプロモーター配列である。
前記DNA(b1)において、前記DNA(a1)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(b1)として、前記DNA(a1)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上203個以下、好ましくは1個以上152個以下、より好ましくは1個以上101個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつACDH/ACOX1遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。さらに前記DNA(b1)として、前記DNA(a1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。
配列番号82の塩基配列は、前記ACDH/ACOX2遺伝子のプロモーター配列である。
前記DNA(d1)において、前記DNA(c1)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(d1)として、前記DNA(c1)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上191個以下、好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上95個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上47個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上19個以下、さらに好ましくは1個以上9個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつACDH/ACOX2遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。さらに前記DNA(d1)として、前記DNA(c1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。
配列番号83の塩基配列は、前記ACDH/ACOX3遺伝子のプロモーター配列である。
前記DNA(f1)において、前記DNA(e1)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(f1)として、前記DNA(e1)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上198個以下、好ましくは1個以上148個以下、より好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上49個以下、より好ましくは1個以上39個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上19個以下、さらに好ましくは1個以上9個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつACDH/ACOX3遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。さらに前記DNA(f1)として、前記DNA(e1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(E)又は(F)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。
配列番号84の塩基配列は、前記ACDH/ACOX4遺伝子のプロモーター配列である。
前記DNA(h1)において、前記DNA(g1)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(h1)として、前記DNA(g1)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上202個以下、好ましくは1個以上152個以下、より好ましくは1個以上101個以下、より好ましくは1個以上70個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつACDH/ACOX4遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。さらに前記DNA(h1)として、前記DNA(g1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(G)又は(H)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。
配列番号85の塩基配列は、前記ACDH/ACOX5遺伝子のプロモーター配列である。
前記DNA(j1)において、前記DNA(i1)の塩基配列との同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(j1)として、前記DNA(i1)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上200個以下、好ましくは1個以上150個以下、より好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上70個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつACDH/ACOX5遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。さらに前記DNA(j1)として、前記DNA(i1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(I)又は(J)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNAも好ましい。
プロモーター競合は、常法に従い行うことができる。例えば、β酸化関連酵素遺伝子プロモーターにより転写される他の任意のDNA断片を親微生物中で発現させることのできる組換えベクターや遺伝子発現カセットを調製し、これを親微生物に導入することで、実施することができる。
β酸化関連酵素遺伝子プロモーターにより転写される他の任意のDNA断片を発現させるプロモーター発現用プラスミドベクター又は発現カセットの母体となるベクター(プラスミド)としては、目的のDNA断片を親微生物に導入することができ、宿主細胞内で当該DNAを発現させることができるベクターであればよい。また、プラスミド等の染色体外で自立増殖・複製するベクターであってもよいし、染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
例えば、pUC19(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(Yangmin Gong,et al.,Journal of Basic Microbiology,2011,vol.51,p.666-672参照)、pJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。このうち、pUC19、pPha-T1、又はpJET1が好ましく用いられる。プロモーターのベクターへの導入は、制限酵素処理やライゲーション等の常法により行うことができる。
また、Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52)の記載の方法を参考にして、プロモーター配列を含んでなるDNA断片(遺伝子発現カセット)を用いて、親微生物に導入することもできる。
また、β酸化関連酵素遺伝子プロモーターにより転写される他の任意のDNA断片の種類も、使用する親微生物の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。
形質転換方法は、親微生物の種類に応じて常法より適宜選択することができる。例えば、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法等が挙げられる。また、本発明では、Randor Radakovits, et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012等に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
目的DNA断片が導入された形質転換体の選択は、選択マーカー等を利用することで行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子が、形質転換時に目的DNA断片とともに親微生物中に導入された結果、形質転換体が獲得する薬剤耐性を指標に行うことができる。
β酸化関連酵素遺伝子プロモーター配列や転写・翻訳開始領域の全部又は一部を他の任意のDNA断片で置換する場合、相同組換えなどの常法により行うことができる。相同組換えによるβ酸化関連酵素遺伝子プロモーター配列や転写・翻訳開始領域の全部又は一部の置換は、前述した、相同組換えによりβ酸化関連酵素遺伝子を欠失若しくは不活性化する方法と同様に行うことができる。
次に、β酸化関連酵素の酵素活性を阻害若しくは抑制して藻類のβ酸化経路を阻害し、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化を抑制又は阻害する方法について説明する。
β酸化関連酵素の酵素活性を阻害若しくは抑制する方法としては、薬剤を藻類の培養液中に添加することにより、β酸化関連酵素の酵素活性を停止若しくは抑制する一般的方法が挙げられる。その結果藻体のβ酸化能が抑制又は阻害され、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化が抑制又は阻害される。
本発明において、酵素活性を阻害若しくは抑制するβ酸化関連酵素は1種であってもよいし、2種以上のβ酸化関連酵素の酵素活性を阻害若しくは抑制してもよい。
β酸化関連酵素のうち、ACDHの酵素活性を阻害又は抑制する薬剤としては、ヨードアセトアミド(iodoacetoamide)、N-エチルマレイミド(N-ethylmaleimide)、ヨード酢酸(iodoacetic acid)、二炭酸ジメチル(dimethyl dicarbonate)などが挙げられる(G.Finocchiarot,et al.,J.Biol.Chem.,1987,vol.262(17),p.7982-7989;O.Kazuko,et al.,J.Biol.Chem.,1985,vol.260(2),p.1338-1345;C.Thorpe,et al.,Methods Enzymol.,1981,vol.71,p.366-374;J.Mizzer,et al.,Biochemistry,1980,vol.19(24),p.5500-5504参照)。
ACOXの酵素活性を阻害又は抑制する薬剤としては、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(5,5-ditiobis(2-nitro-benzoic acid)、インドール-3-酪酸(indole-3-butyric acid)、N-エチルマレイミドなどが挙げられる(P.Coudron,et al.,Arch.Biochem.Biophys.,1983,vol.226(1),p.324-336;R.Adham,et al.,The Plant Journal,2005,vol.41,p.859-874;M.Bakke,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,2007,vol.1774(1),p.65-71参照)。
エノイルCoAヒドラターゼの酵素活性を阻害又は抑制する薬剤としては、ヨードアセトアミドなどが挙げられる(J.Fong,et al.,J.Biol.Chem.,1977,vol.252(2),p.542-547参照)。
3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼの酵素活性を阻害又は抑制する薬剤としては、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)、N-エチルマレイミド、ヨードアセトアミド、ヨード酢酸などが挙げられる(R.Bradshaw,et al.,Methods Enzymol.,1975,vol.35),p.122-128参照)。
3-ケトアシルCoAチオラーゼの酵素活性を阻害又は抑制する薬剤としては、N-エチルマレイミド、ヨードアセトアミドなどが挙げられる(G.Haywood,et al.,FEMS Microbiol.Lett.,1988,vol.52),p.91-96;H.Schulz,et al.,Methods Enzymol.,1981,vol.71,p.389-403参照)。
薬剤の添加方法としては、薬剤を培養液に添加し、培養中に藻類の菌体内に取り込ませる。これにより、β酸化関連酵素の酵素活性を阻害又は抑制し、藻類のβ酸化経路を阻害することができる。薬剤の添加量については、前述の文献の記載を参照し、適宜設定することができる。
本発明の形質転換体は、β酸化経路を抑制又は阻害していない親微生物と比較して生産された油脂の細胞外への分泌能が向上し、分泌された油脂が液体培地中で油滴を形成する。したがって、本発明の形質転換体を適切な条件で培養し、液体培地に浮遊する油滴や、油滴が含まれる培養液の上層を回収すれば、藻類の細胞壁を破壊して油脂を回収するという煩雑な操作を要することなく、油脂を容易且つ安価に製造することができる。また、本発明の形質転換体は、油脂の製造に好適に用いることができる。
なお、親微生物や形質転換体の分泌能については、油滴の有無、油滴の発生個数、培養液の層分離の発生の有無など、常法により判断することができる。
本発明で用いる藻類の培養条件は、通常用いられる培養条件を使用できる。また油脂の生産効率の点から、培地中に、例えば油脂生合成系に関与する前駆物質としてグリセロール、酢酸、又はグルコース等を添加してもよい。
培地は天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培養培地を使用してもよい。具体的な培地としては、f/2培地、ESM培地、ダイゴIMK培地、L1培地、MNK培地、等を挙げることができる。なかでも、油脂の生産性向上及び栄養成分濃度の観点から、f/2培地、ESM培地、又はダイゴIMK培地が好ましく、f/2培地、又はダイゴIMK培地がより好ましく、f/2培地がさらに好ましい。藻類の生育促進、油脂の生産性向上のため、培地に、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類、微量金属等を適宜添加することができる。
培地に接種する藻類の量は特に限定されないが、生育性の点から、培地当り1%(vol/vol)以上が好ましい。また、その上限値は50%(vol/vol)以下が好ましく、10%(vol/vol)以下がより好ましい。接種する藻類の量の数値範囲は、1〜50%(vol/vol)が好ましく、1〜10%(vol/vol)がより好ましい。培養温度は、藻類の増殖に悪影響を与えない範囲であれば特に制限されないが、通常、5〜40℃の範囲である。藻類の生育促進、油脂の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。またその上限値は35℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。培養温度の数値範囲は、好ましくは10〜35℃であり、より好ましくは15〜30℃である。
また、藻類の培養は、光合成ができるよう光照射下で行うことが好ましい。光照射は、光合成が可能な条件であればよく、人工光でも太陽光でもよい。光照射時の照度としては、藻類の生育促進、油脂の生産性向上の観点から、100ルクス以上が好ましく、300ルクス以上がより好ましく、1000ルクス以上がさらに好ましい。またその上限値は、50000ルクス以下が好ましく、10000ルクス以下がより好ましく、6000ルクス以下がさらに好ましい。光照射時の照度の数値範囲は、好ましくは100〜50000ルクスの範囲、より好ましくは300〜10000ルクスの範囲、さらに好ましくは1000〜6000ルクスの範囲である。また、光照射の間隔は、特に制限されないが、前記と同様の観点から、明暗周期で行うことが好ましく、24時間のうち明期は8時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましい。またその上限値は、24時間以下が好ましく、18時間以下がより好ましい。明期の数値範囲は、好ましくは8〜24時間、より好ましくは10〜18時間、さらに好ましくは12時間である。
また、藻類の培養は、光合成ができるように二酸化炭素を含む気体の存在下、又は炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を含む培地で行うことが好ましい。気体中の二酸化炭素の濃度は特に限定されないが、生育促進、油脂の生産性向上の観点から0.03%(大気条件と同程度)以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上がさらに好ましく、0.3%以上がよりさらに好ましい。またその上限値は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、1%以下がよりさらに好ましい。二酸化炭素の濃度の数値範囲は、0.03〜10%が好ましく、0.05〜5%がより好ましく、0.1〜3%がさらに好ましく、0.3〜1%がよりさらに好ましい。炭酸塩の濃度は特に限定されないが、例えば炭酸水素ナトリウムを用いる場合、生育促進、油脂の生産性向上の観点から0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。またその上限値は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。炭酸水素ナトリウムの濃度の数値範囲は、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
培養時間は特に限定されず、油脂を高濃度に蓄積する藻体が高い濃度で増殖できるように、長期間(例えば150日程度)行なってもよい。3日以上が好ましく、7日以上がより好ましい。またその上限値は、90日以下が好ましく、30日以下がより好ましい。培養期間の数値範囲は、好ましくは3〜90日間、より好ましくは3〜30日間、さらに好ましくは7〜30日間である。なお、培養は、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養のいずれでもよく、通気性の向上の観点から、振とう培養が好ましい。
前述の条件下で藻類を培養し、細胞外に分泌された油脂を、常法に従い回収する。具体的には、前記藻類を液体培地で培養すると、生産された油脂は細胞外に分泌させる。分泌させた油脂が培地に油滴として浮遊する場合、この浮遊した油滴を常法により回収することで、油脂を得ることができる。あるいは、分泌させた油脂が培養液の上層に浮遊する場合、上層となる油層を常法により回収することで、油脂を得ることができる。
浮遊する油滴や、油層を回収するための手段としては、常法より適宜選択することができる。例えば、浮遊した油滴と細胞とを分離する方法(例えば、遠心分離など)、溶媒抽出法(例えば、ヘキサン抽出)等が挙げられる。
本発明の製造方法において製造される油脂は、その利用性の点から、脂肪酸のグリセリンエステルである中性脂質を含んでなることが好ましい。中性脂質としてはモノアシルグリセロール(MAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、トリアシルグリセロール(TAG)が挙げられる。このうち、本発明の製造方法において製造される油脂は、TAGを主成分として含んでなることが好ましい。
本発明により得られる油脂は、食用として用いる他、可塑剤、化粧品等の乳化剤、石鹸や洗剤等の洗浄剤、繊維処理剤、毛髪リンス剤、又は殺菌剤や防腐剤として利用することができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の油脂の製造方法、油脂の生産性を向上させる方法、形質転換体、及び形質転換体の作製方法を開示する。
<1>真正眼点藻網の藻類を培養して油脂を製造する方法であって、前記藻類のβ酸化能を抑制又は阻害する、油脂の製造方法。
<2>真正眼点藻網の藻類の油脂の生産性を向上させる方法であって、前記藻類のβ酸化能を抑制又は阻害する、油脂の生産性を向上させる方法。
<3>生産された油脂を前記藻類の細胞外に分泌させる、前記<1>又は<2>項に記載の方法。
<4>前記藻類を液体培地で培養し、培地に浮遊する油滴、又は油層を回収して油脂を得る、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の方法。
<5>培地に浮遊する油滴と細胞を含む培養液とを分離する方法並びに溶媒抽出からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段により、培地に浮遊する油滴、又は油層を回収する、前記<4>項記載の方法。
<6>β酸化関連酵素をコードする遺伝子、好ましくはACDH/ACOX遺伝子、を欠失若しくは不活性化、β酸化関連酵素をコードする遺伝子、好ましくはACDH/ACOX遺伝子、をダウンレギュレート、又はβ酸化関連酵素、好ましくはACDH/ACOX、の酵素活性を阻害若しくは抑制することにより、前記藻類のβ酸化経路を阻害し、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化を抑制又は阻害する、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の方法。
<7>前記藻類のβ酸化関連酵素をコードする遺伝子の全部又は一部が欠失している、前記<6>項に記載の方法。
<8>プロモーター競合によりβ酸化関連酵素をコードする遺伝子の転写量を低下させ、β酸化関連酵素をコードする遺伝子をダウンレギュレートさせた、前記<6>項に記載の方法。
<9>前記β酸化関連酵素が、ACDH、ACOX、エノイルCoAヒドラターゼ、3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ、及び3-ケトアシルCoAチオラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<6>〜<8>のいずれか1項に記載の方法。
<10>前記β酸化関連酵素が、ACDH及びACOXからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<6>〜<9>のいずれか1項に記載の方法。
<11>前記β酸化関連酵素が、下記タンパク質(A)〜(J)からなる群より選ばれる、前記<6>〜<10>のいずれか1項に記載の方法。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
(C)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
(E)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
(G)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質。
<12>前記タンパク質(B)が、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上154個以下、より好ましくは1個以上115個以下、より好ましくは1個以上77個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上7個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<11>項に記載の方法。
<13>前記タンパク質(D)が、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上142個以下、より好ましくは1個以上106個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上49個以下、より好ましくは1個以上35個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上14個以下、さらに好ましくは1個以上7個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<11>項に記載の方法。
<14>前記タンパク質(F)が、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上84個以下、より好ましくは1個以上63個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上16個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<11>項に記載の方法。
<15>前記タンパク質(H)が、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上86個以下、より好ましくは1個以上64個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<11>項に記載の方法。
<16>前記タンパク質(J)が、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上88個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<11>項に記載の方法。
<17>前記の、β酸化関連酵素をコードする遺伝子が、下記DNA(a)〜(j)のいずれか1つからなる遺伝子である、前記<6>〜<10>のいずれか1項に記載の方法。
(a)配列番号76で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号77で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
(e)配列番号78で表される塩基配列からなるDNA。
(f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
(g)配列番号79で表される塩基配列からなるDNA。
(h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
(i)配列番号80で表される塩基配列からなるDNA。
(j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ脂肪酸のβ酸化活性(具体的には、アシルCoAに対するACDH活性又はACOX活性)を有するタンパク質をコードするDNA。
<18>前記DNA(b)が、前記DNA(a)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上463個以下、より好ましくは1個以上347個以下、より好ましくは1個以上231個以下、より好ましくは1個以上162個以下、より好ましくは1個以上115個以下、より好ましくは1個以上92個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上46個以下、さらに好ましくは1個以上23個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNA、又は前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNA、である、前記<17>項に記載の方法。
<19>前記DNA(d)が、前記DNA(c)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上428個以下、より好ましくは1個以上321個以下、より好ましくは1個以上214個以下、より好ましくは1個以上149個以下、より好ましくは1個以上107個以下、より好ましくは1個以上85個以下、より好ましくは1個以上64個以下、より好ましくは1個以上42個以下、さらに好ましくは1個以上21個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNA、又は前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNA、である、前記<17>項に記載の方法。
<20>前記DNA(f)が、前記DNA(e)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上253個以下、より好ましくは1個以上190個以下、より好ましくは1個以上126個以下、より好ましくは1個以上88個以下、より好ましくは1個以上63個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上25個以下、さらに好ましくは1個以上12個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(E)又は(F)をコードするDNA、又は前記DNA(e)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(E)又は(F)をコードするDNA、である、前記<17>項に記載の方法。
<21>前記DNA(h)が、前記DNA(g)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上259個以下、より好ましくは1個以上194個以下、より好ましくは1個以上129個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上64個以下、より好ましくは1個以上51個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上25個以下、さらに好ましくは1個以上12個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(G)又は(H)をコードするDNA、又は前記DNA(g)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(G)又は(H)をコードするDNA、である、前記<17>項に記載の方法。
<22>前記DNA(j)が、前記DNA(i)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上266個以下、より好ましくは1個以上199個以下、より好ましくは1個以上133個以下、より好ましくは1個以上93個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上39個以下、より好ましくは1個以上26個以下、さらに好ましくは1個以上13個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(I)又は(J)をコードするDNA、又は前記DNA(i)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ酸化活性を有する前記タンパク質(I)又は(J)をコードするDNA、である、前記<17>項に記載の方法。
<23>前記の、β酸化関連酵素をコードする遺伝子のプロモーターが、下記DNA(a1)〜(j1)のいずれか1つである、前記<8>〜<22>のいずれか1項に記載の方法。
(a1)配列番号81で表される塩基配列からなるDNA。
(b1)前記DNA(a1)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
(c1)配列番号82で表される塩基配列からなるDNA。
(d1)前記DNA(c1)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
(e1)配列番号83で表される塩基配列からなるDNA。
(f1)前記DNA(e1)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(E)又は(F)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
(g1)配列番号84で表される塩基配列からなるDNA。
(h1)前記DNA(g1)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(G)又は(H)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
(i1)配列番号85で表される塩基配列からなるDNA。
(j1)前記DNA(i1)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつ前記タンパク質(I)又は(J)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA。
<24>前記DNA(b1)が、前記DNA(a1)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上203個以下、より好ましくは1個以上152個以下、より好ましくは1個以上101個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ前記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、又は前記DNA(a1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、である、前記<23>項に記載の方法。
<25>前記DNA(d1)が、前記DNA(c1)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上191個以下、より好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上95個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上47個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上19個以下、さらに好ましくは1個以上9個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ前記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、又は前記DNA(c1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、である、前記<23>項に記載の方法。
<26>前記DNA(f1)が、前記DNA(e1)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上198個以下、より好ましくは1個以上148個以下、より好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上49個以下、より好ましくは1個以上39個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上19個以下、さらに好ましくは1個以上9個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ前記DNA(e)又は(f)からなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、又は前記DNA(e1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(E)又は(F)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、である、前記<23>項に記載の方法。
<27>前記DNA(h1)が、前記DNA(g1)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上202個以下、より好ましくは1個以上152個以下、より好ましくは1個以上101個以下、より好ましくは1個以上70個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ前記DNA(g)又は(h)からなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、又は前記DNA(g1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(G)又は(H)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、である、前記<23>項に記載の方法。
<28>前記DNA(j1)が、前記DNA(i1)の塩基配列に、1若しくは複数個、好好ましくは1個以上200個以下、より好ましくは1個以上150個以下、より好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上70個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ前記DNA(i)又は(j)からなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、又は前記DNA(i1)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記タンパク質(I)又は(J)をコードするDNAからなる遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の発現を調整するプロモーターとして機能するDNA、である、前記<23>項に記載の方法。
<29>前記真正眼点藻網の藻類が、ユースチグマトス目の藻類、好ましくはナンノクロロプシス属の藻類、である、前記<1>〜<28>のいずれか1項に記載の方法。
<30>前記真正眼点藻網の藻類が、ナンノクロロプシス・オキュラータ又はナンノクロロプシス・オセアニカ、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法。
<31>前記油脂が中性脂質を含んでなる、前記<1>〜<30>のいずれか1項に記載の方法。
<32>前記中性脂質が、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、及びトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<31>項に記載の方法。
<33>前記中性脂質がトリアシルグリセロールである、前記<31>又は<32>項に記載の方法。
<34>前記液体培地がf/2培地、ESM培地又はダイゴIMK培地、好ましくはf/2培地である、前記<4>〜<33>のいずれか1項に記載の方法。
<35>前記液体培地で前記藻類を振とう培養し、油脂を製造させる、前記<4>〜<34>のいずれか1項に記載の方法。
<36>真正眼点藻網の藻類のβ酸化能が抑制又は阻害されている、形質転換体。
<37>前記藻類が生産した油脂を細胞外に分泌する、前記<36>項に記載の形質転換体。
<38>β酸化関連酵素をコードする遺伝子、好ましくはACDH/ACOX遺伝子、が欠失若しくは不活性化、β酸化関連酵素をコードする遺伝子、好ましくはACDH/ACOX遺伝子、がダウンレギュレート、又はβ酸化関連酵素、好ましくはACDH/ACOX、の酵素活性が阻害若しくは抑制されており、前記藻類のβ酸化経路が阻害されている、前記<36>又は<37>項に記載の形質転換体。
<39>前記藻類のβ酸化関連酵素をコードする遺伝子の全部又は一部が欠失している、前記<38>項に記載の形質転換体。
<40>プロモーター競合によりβ酸化関連酵素をコードする遺伝子の転写量を低下させ、β酸化関連酵素をコードする遺伝子がダウンレギュレートされている、前記<38>項に記載の形質転換体。
<41>前記β酸化関連酵素が、ACDH、ACOX、エノイルCoAヒドラターゼ、3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ、及び3-ケトアシルCoAチオラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<38>〜<40>のいずれか1項に記載の形質転換体。
<42>前記β酸化関連酵素が、ACDH及びACOXからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<38>〜<41>のいずれか1項に記載の形質転換体。
<43>前記β酸化関連酵素が、前記タンパク質(A)〜(J)からなる群より選ばれる、前記<38>〜<42>のいずれか1項に記載の形質転換体。
<44>前記タンパク質(B)、(D)、(F)、(H)及び(J)がそれぞれ、前記<12>〜<16>のいずれか1項で規定するタンパク質である、前記<43>項に記載の形質転換体。
<45>前記の、β酸化関連酵素をコードする遺伝子が、前記DNA(a)〜(j)のいずれか1つからなる遺伝子である、前記<38>〜<44>のいずれか1項に記載の形質転換体。
<46>前記DNA(b)、(d)、(f)、(h)及び(j)がそれぞれ、前記<18>〜<22>のいずれか1項で規定するDNAである、前記<45>項に記載の形質転換体。
<47>前記の、β酸化関連酵素をコードする遺伝子のプロモーターが、前記DNA(a1)〜(j1)のいずれか1つである、前記<40>〜<46>のいずれか1項に記載の形質転換体。
<48>前記DNA(b1)、(d1)、(f1)、(h1)及び(j1)がそれぞれ、前記<24>〜<28>のいずれか1項で規定するDNAである、前記<47>項に記載の形質転換体。
<49>前記真正眼点藻網の藻類が、ユースチグマトス目の藻類、好ましくはナンノクロロプシス属の藻類、である、前記<36>〜<48>のいずれか1項に記載の形質転換体。
<50>前記藻類が、ナンノクロロプシス・オキュラータ又はナンノクロロプシス・オセアニカ、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<36>〜<49>のいずれか1項に記載の形質転換体。
<51>真正眼点藻網の藻類のβ酸化能を抑制又は阻害させる、形質転換体の作製方法。
<52>β酸化関連酵素をコードする遺伝子、好ましくはACDH/ACOX遺伝子、を欠失若しくは不活性化、β酸化関連酵素をコードする遺伝子、好ましくはACDH/ACOX遺伝子、をダウンレギュレート、又はβ酸化関連酵素、好ましくはACDH/ACOX、の酵素活性を阻害若しくは抑制することにより、前記藻類のβ酸化経路を阻害する、前記<51>項に記載の形質転換体の作製方法。
<53>前記藻類のβ酸化関連酵素をコードする遺伝子の全部又は一部を欠失させる、前記<52>項に記載の形質転換体の作製方法。
<54>プロモーター競合によりβ酸化関連酵素をコードする遺伝子の転写量を低下させ、β酸化関連酵素をコードする遺伝子をダウンレギュレートさせる、前記<52>項に記載の形質転換体の作製方法。
<55>前記β酸化関連酵素が、ACDH、ACOX、エノイルCoAヒドラターゼ、3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ、及び3-ケトアシルCoAチオラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<52>〜<54>のいずれか1項に記載の形質転換体の作製方法。
<56>前記β酸化関連酵素が、ACDH及びACOXからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<52>〜<55>のいずれか1項に記載の形質転換体の作製方法。
<57>前記β酸化関連酵素が、前記タンパク質(A)〜(J)からなる群より選ばれる、前記<52>〜<56>のいずれか1項に記載の形質転換体の作製方法。
<58>前記タンパク質(B)、(D)、(F)、(H)及び(J)がそれぞれ、前記<12>〜<16>のいずれか1項で規定するタンパク質である、前記<57>項に記載の形質転換体の作製方法。
<59>前記の、β酸化関連酵素をコードする遺伝子が、前記DNA(a)〜(j)のいずれか1つからなる遺伝子である、前記<52>〜<58>のいずれか1項に記載の形質転換体の作製方法。
<60>前記DNA(b)、(d)、(f)、(h)及び(j)がそれぞれ、前記<18>〜<22>のいずれか1項で規定するDNAである、前記<59>項に記載の形質転換体の作製方法。
<61>前記の、β酸化関連酵素をコードする遺伝子のプロモーターが、前記DNA(a1)〜(j1)のいずれか1つである、前記<54>〜<60>のいずれか1項に記載の形質転換体の作製方法。
<62>前記DNA(b1)、(d1)、(f1)、(h1)及び(j1)がそれぞれ、前記<24>〜<28>のいずれか1項で規定するDNAである、前記<61>項に記載の形質転換体の作製方法。
<63>前記真正眼点藻網の藻類が、ユースチグマトス目の藻類、好ましくはナンノクロロプシス属の藻類、である、前記<51>〜<62>のいずれか1項に記載の形質転換体の作製方法。
<64>前記藻類が、ナンノクロロプシス・オキュラータ又はナンノクロロプシス・オセアニカ、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<51>〜<63>のいずれか1項に記載の形質転換体の作製方法。
<65>油脂を製造するための、前記<36>〜<64>のいずれか1項に記載の形質転換体、又は形質転換体の作製方法により得られた形質転換体の使用。
<66>前記油脂が中性脂質を含んでなる、前記<65>のいずれか1項に記載の使用。
<67>前記中性脂質が、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、及びトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<66>項に記載の使用。
<68>前記中性脂質がトリアシルグリセロールである、前記<66>又は<67>項に記載の使用。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、本実施例で用いるプライマーの塩基配列を表1〜3に示す。
実施例1 ナンノクロロプシス・オキュラータのNoACDH/ACOX遺伝子欠失株の作製、形質転換体による油脂の生産、及び浮遊油滴の取得
(1)ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株のゲノム取得
国立環境研究所(NIES)からナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株を購入し、使用した。ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株をf/2液体培地(NaNO3 75mg、NaH2PO4・2H2O 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)で十分培養し、f/2培地50mLに10%植菌し、25℃、二酸化炭素0.3%で人工気象機にて6日間培養した。培養後に回収したサンプルをマルチビーズショッカーにて破砕し、フェノールクロロホルム法によりゲノムを抽出した。
(2)ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
GenBankに登録されているナンノクロロプシス・エスピーW2J3B株のVCP1(ビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質)遺伝子のcomplete cds 配列(Accession number:JF957601.1)より、VCP1プロモーター配列(配列番号6)、VCP1ターミネーター配列(配列番号7)及びゼオシン耐性遺伝子(配列番号8)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表1に示すプライマー番号9及びプライマー番号10のプライマー対、プライマー番号11及びプライマー番号12のプライマー対、並びにプライマー番号13及びプライマー番号14のプライマー対を用いてPCRを行い、VCP1プロモーター配列、VCP1ターミネーター配列、ゼオシン耐性遺伝子断片をそれぞれ取得した。
また、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号15及びプライマー番号16のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC19を増幅した。
これら4つの増幅断片をそれぞれ制限酵素DpnI(東洋紡社製)にて処理し、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、得られた4つの断片をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドpUC-Pvcp1-ble-Tvcp1を構築した。
なお、本プラスミドは、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子断片、及びVCP1ターミネーター配列の順に連結したインサート配列(以下、「ゼオシン耐性遺伝子発現カセット」ともいう)と、pUC19ベクター配列からなる。
(3)ナンノクロロプシス内在性NoACDH/ACOX遺伝子の相同組換え用コンストラクトの構築
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号17及びプライマー番号18のプライマー対、並びにプライマー番号19及びプライマー番号20のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、ACDH/ACOX2遺伝子の上流側DNA断片とACDH/ACOX2遺伝子の下流側DNA断片をそれぞれ増幅した。
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号21及びプライマー番号22のプライマー対、並びにプライマー番号23及びプライマー番号24のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、ACDH/ACOX3遺伝子の上流側DNA断片とACDH/ACOX3遺伝子の下流側DNA断片をそれぞれ増幅した。
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号25及びプライマー番号26のプライマー対、並びにプライマー番号27及びプライマー番号28のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、ACDH/ACOX4遺伝子の上流側DNA断片とACDH/ACOX4遺伝子の下流側DNA断片をそれぞれ増幅した。
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号29及びプライマー番号30のプライマー対、並びにプライマー番号31及びプライマー番号32のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、ACDH/ACOX5遺伝子の上流側DNA断片とACDH/ACOX5遺伝子の下流側DNA断片をそれぞれ増幅した。
また、前述のゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを鋳型に、表1に示すプライマー番号33及びプライマー番号34のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット断片Pvcp1-ble-Tvcp1を取得した。
さらに、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号15及びプライマー番号16のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC19断片を増幅した。
前記ゼオシン耐性遺伝子発現カセット断片、プラスミドベクターpUC19断片、並びに各ACDH/ACOX遺伝子の上流側DNA断片及び下流側DNA断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いてプラスミドベクターpUC19に融合し、各ACDH/ACOX遺伝子の相同組換え用コンストラクト(以下それぞれ、「ACDH/ACOX2遺伝子相同組換え用プラスミド」、「ACDH/ACOX3遺伝子相同組換え用プラスミド」、「ACDH/ACOX4遺伝子相同組換え用プラスミド」、「ACDH/ACOX5遺伝子相同組換え用プラスミド」といい、これらをまとめて「ACDH/ACOX遺伝子相同組換え用プラスミド」ともいう)を構築した。
なお、本コンストラクトは、各ACDH/ACOX遺伝子の上流側DNA配列、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子断片、VCP1ターミネーター配列、及び各ACDH/ACOX遺伝子の下流側DNA配列の順に連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(4)ACDH/ACOX遺伝子相同組換え用プラスミドのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入、及びACDH/ACOX遺伝子の相同組換え
前記ACDH/ACOX遺伝子相同組換え用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号35及びプライマー番号36のプライマー対、プライマー番号37及びプライマー番号38のプライマー対、プライマー番号39及びプライマー番号40のプライマー対、並びにプライマー番号41及びプライマー番号42のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、ACDH/ACOX遺伝子の上流側DNA配列、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列、及びACDH/ACOX遺伝子の下流側DNA配列からなる、ACDH/ACOX遺伝子欠失用断片(ACDH/ACOX2遺伝子欠失用断片、ACDH/ACOX3遺伝子欠失用断片、ACDH/ACOX4遺伝子欠失用断片、及びACDH/ACOX5遺伝子欠失用断片)を増幅した。
増幅したACDH/ACOX遺伝子欠失用断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
なおこれらのACDH/ACOX遺伝子欠失用断片は、ナンノクロロプシス・オキュラータにおいて各ACDH/ACOXの相同組換えにより導入された場合、各ACDH/ACOX遺伝子の一部又は全部が欠損し、ゼオシン耐性遺伝子発現カセットが導入される設計となっている。
約1×109個の細胞のナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株(独立行政法人国立環境研究所(NIES)より入手)を、384mMのソルビトール溶液で洗浄して塩を完全に除去し、形質転換の宿主細胞として用いた。前記ACDH/ACOX遺伝子欠失用断片約500ngずつを宿主細胞に混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。
f/2液体培地(NaNO3 75mg、NaH2PO4・2H2O 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)にて24時間回復培養を行った。その後に、2μg/mLのゼオシン含有f/2寒天培地(f/2液体培地に0.8%寒天を添加)に塗布し、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーをそれぞれ2μg/mLのゼオシン含有f/2培地を200μLずつ分注した96ウェルプレートに植継ぎ、4日〜1週間、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて培養した。
培養液を99℃、10分熱処理してテンプレートを調製し、ACDH/ACOX遺伝子部位について遺伝子増幅を行った。相同組換えによりACDH/ACOX遺伝子部位にゼオシン耐性遺伝子発現カセットが導入された株(ACDH/ACOX遺伝子欠失株)は、上記方法により得られたPCR産物の長さを比較することで選抜した。
ACDH/ACOX2遺伝子欠失株(以下、「ΔACDH/ACOX2」ともいう)の選抜は、表1に示すプライマー番号43及びプライマー番号44のプライマー対を用いたPCRにより行った。ACDH/ACOX3遺伝子欠失株(以下、「ΔACDH/ACOX3」ともいう)の選抜は、表1に示すプライマー番号45及びプライマー番号46のプライマー対を用いたPCRにより行った。ACDH/ACOX4遺伝子欠失株(以下、「ΔACDH/ACOX4」ともいう)の選抜は、表1に示すプライマー番号47及びプライマー番号48のプライマー対を用いたPCRにより行った。ACDH/ACOX5遺伝子欠失株(以下、「ΔACDH/ACOX5」ともいう)の選抜は、表1に示すプライマー番号49及びプライマー番号50のプライマー対を用いたPCRにより行った。
(5)形質転換体による油脂の生産、油滴の回収、及びTLC分離
選抜した形質転換体を5×107cells/mLとなるようf/2液体培地25mLを注入した50mLフラスコに植継ぎ、25℃、1%又は0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて振とう培養した。
その結果、ΔACDH/ACOX2、ΔACDH/ACOX3、ΔACDH/ACOX4及びΔACDH/ACOX5のいずれにおおいても、培養開始3週間目頃から培養上清に油滴が浮遊し始め、1か月後には赤い油滴の発生が容易に確認できた。
ここで、ΔACDH/ACOX5の培養1か月後に培養液上清に浮遊する油滴の様子を示す写真を図1に示す。
前記ACDH/ACOX遺伝子欠失株の培養液上清に浮遊する油滴をパスツールピペットで単離・採集し、単離・採取した油滴をヘキサンに溶解し、TLCプレートシリカゲル60F254(Merck社製)にスポットした。TLC展開槽DT-150(三菱化学メディエンス社製)を用い、展開溶媒(ヘキサン:ジエチルエーテル:ギ酸=42:28:0.3(体積比))で約15分間展開した。ここで、標品としては、トリミリスチン(和光純薬工業社製)、ジオレイン酸グリセロール(和光純薬工業社製)、オレイン酸(和光純薬工業社製)をクロロホルムに溶解したものを用いた。
展開後プレートを乾燥させ、メタノールに溶解させた0.1%プリムリン(和光純薬工業社製)を噴霧して乾燥させた後、ハンデイ型UVランプUVL-21(相互理化学硝子製作所社製)でTAG検出した。
その結果、回収した各油滴はいずれも、トリアシルグリセロールを主成分とするものであった。ここで、ΔACDH/ACOX5の培養液上清から回収した油滴のTLC分析結果を図2に示す。
比較例1 ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145野生株による油脂の生産
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145野生株を5×107cells/mLとなるようf/2液体培地25mLを注入した50mLフラスコに植継ぎ、25℃、1%又は0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて6週間振とう培養した。
その結果、培養を6週間継続しても、実施例1で見られたような油滴の浮遊は確認されなかった。
比較例2 ナンノクロロプシス・オキュラータの硝酸レダクターゼ(Nitrate Reductase)遺伝子欠失株の作製、及び形質転換体による油脂の生産
ACDH/ACOX遺伝子に代えて硝酸レダクターゼ遺伝子を欠損させた、硝酸レダクターゼ遺伝子欠失株を実施例1と同様に作製し、形質転換体による油脂の生産を行った。
ここで「硝酸レダクターゼ」とは、硝酸を還元して亜硝酸に変換する反応を触媒する酵素であり、窒素同化に関与する酵素である。硝酸レダクターゼは、本明細書で規定する「β酸化関連酵素」には含まれない。
硝酸レダクターゼ遺伝子欠失株は、Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52)の記載を参照し、下記に示す方法により作製した。
ここで、硝酸レダクターゼのアミノ酸配列の1例を配列番号55に、硝酸レダクターゼをコードする遺伝子(以下、「硝酸レダクターゼ遺伝子」ともいう)の塩基配列の1例を配列番号86に、それぞれ示す。
(1)ナンノクロロプシス内在性硝酸レダクターゼ遺伝子相同組換え用コンストラクトの構築
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表2に示すプライマー番号51及びプライマー番号52のプライマー対、並びにプライマー番号53及びプライマー番号54のプライマー対を用いてそれぞれPCRを行い、硝酸レダクターゼ遺伝子の上流側DNA断片と硝酸レダクターゼ遺伝子の下流側DNA断片をそれぞれ増幅した。
また、実施例1で作製したゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを鋳型に、表1に示すプライマー番号33及びプライマー番号34のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット断片Pvcp1-ble-Tvcp1を取得した。
さらに、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号15及びプライマー番号16のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC19を増幅した。
前記ゼオシン耐性遺伝子発現カセット断片、プラスミドベクターpUC19断片、並びに硝酸レダクターゼ遺伝子の上流側DNA断片及び下流側DNA断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いてプラスミドベクターpUC19に融合し、硝酸レダクターゼ遺伝子相同組換え用プラスミドを構築した。
なお、本プラスミドは、硝酸レダクターゼ遺伝子の上流側DNA配列、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子断片、VCP1ターミネーター配列、及び硝酸レダクターゼ遺伝子の下流側DNA配列の順に連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(2)硝酸レダクターゼ遺伝子相同組換え用プラスミドのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入、及び硝酸レダクターゼ遺伝子の相同組換え
前記硝酸レダクターゼ遺伝子相同組換え用プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー番号56及びプライマー番号57のプライマー対を用いてPCRを行い、硝酸レダクターゼ遺伝子の上流側DNA配列、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列、及び硝酸レダクターゼ遺伝子の下流側DNA配列からなる、硝酸レダクターゼ遺伝子欠失用断片を増幅した。
増幅した硝酸レダクターゼ遺伝子欠失用断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
約1×109個の細胞のナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株(独立行政法人国立環境研究所(NIES)より入手)を、384mMのソルビトール溶液で洗浄して塩を完全に除去し、形質転換の宿主細胞として用いた。前記硝酸レダクターゼ遺伝子欠失用断片約500ngを宿主細胞に混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。
尿素添加f/2液体培地(尿素27mg、NaH2PO4・2H2O 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)にて24時間回復培養を行った。その後に、2μg/mLのゼオシン含有f/2寒天培地(尿素添加f/2液体培地に0.8%寒天を添加)に塗布し、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した得られたコロニーをそれぞれ2μg/mLのゼオシン含有f/2培地(尿素添加f/2培地)を200μLずつ分注した96ウェルプレートに植継ぎ、4日〜1週間、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて培養した。
培養液を99℃、10分熱処理によりテンプレートを調製し、ゼオシン耐性遺伝子発現カセットが相同組換えにより硝酸レダクターゼ遺伝子部位に導入された株(硝酸レダクターゼ遺伝子欠失株)をPCRにより選抜した。
硝酸レダクターゼ遺伝子欠失株の選抜は、表2に示すプライマー番号58及びプライマー番号59のプライマー対を用いてPCRを行い、相同組換えを行った部位の塩基配列の長さを確認することで行った。
(3)形質転換体による油脂の生産
選抜した形質転換体を5×107cells/mLとなるよう尿素添加f/2液体培地25mLを注入した50mLフラスコに植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて6週間振とう培養した。
その結果、実施例1で確認されたような油滴の浮遊は確認されなかった。これは、硝酸レダクターゼ遺伝子など、β酸化関連酵素遺伝子以外の遺伝子を欠損させても、油滴の発生が確認できないことを示している。すなわち油滴の浮遊は、特定の遺伝子の欠損による効果であることを示している。
実施例2 ナンノクロロプシス・オキュラータのNoACDH/ACOX遺伝子プロモーターの競合による、NoACDH/ACOX遺伝子の転写抑制株の作製、形質転換体による油脂の生産、及び浮遊油滴の取得
(1)ナンノクロロプシス内在性NoACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用コンストラクトの構築
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表3に示すプライマー番号61及びプライマー番号62のプライマー対を用いてPCRを行い、ACDH/ACOX1遺伝子のプロモーター配列(配列番号81)を含む領域のゲノム断片を増幅した。
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表3に示すプライマー番号63及びプライマー番号64のプライマー対を用いてPCRを行い、ACDH/ACOX2遺伝子のプロモーター配列(配列番号82)を含む領域のゲノム断片を増幅した。
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表3に示すプライマー番号65及びプライマー番号66のプライマー対を用いてPCRを行い、ACDH/ACOX3遺伝子のプロモーター配列(配列番号83)を含む領域のゲノム断片を増幅した。
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表3に示すプライマー番号67及びプライマー番号68のプライマー対を用いてPCRを行い、ACDH/ACOX4遺伝子のプロモーター配列(配列番号84)を含む領域のゲノム断片を増幅した。
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表3に示すプライマー番号69及びプライマー番号70のプライマー対を用いてPCRを行い、ACDH/ACOX5遺伝子のプロモーター配列(配列番号85)を含む領域のゲノム断片を増幅した。
また、実施例1で作製したゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを鋳型に、表3に示すプライマー番号60及び表1に示すプライマー番号34のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子及びVCP1ターミネーター配列からなる断片ble-Tvcp1を増幅した。
さらに、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号15及びプライマー番号16のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC19断片を増幅した。
前記断片ble-Tvcp1、プラスミドベクターpUC19断片、及び前記ACDH/ACOX遺伝子のプロモーター配列を含む領域のゲノム断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いてプラスミドベクターpUC19に融合し、ACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用コンストラクト(以下それぞれ、「ACDH/ACOX1遺伝子プロモーター競合用プラスミド」、「ACDH/ACOX2遺伝子プロモーター競合用プラスミド」、「ACDH/ACOX3遺伝子プロモーター競合用プラスミド」、「ACDH/ACOX4遺伝子プロモーター競合用プラスミド」、「ACDH/ACOX5遺伝子プロモーター競合用プラスミド」といい、これらをまとめて「ACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用プラスミド」ともいう)を構築した。
なお、本プラスミドは、各ACDH/ACOX遺伝子プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子断片、及びVCP1ターミネーター配列の順に連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(2)ACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用プラスミド断片の取得
前記ACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用プラスミドを鋳型として、表3に示すプライマー番号71及び表1に示すプライマー番号34のプライマー対、表3に示すプライマー番号72及び表1に示すプライマー番号34のプライマー対、表3に示すプライマー番号73及び表1に示すプライマー番号34のプライマー対、表3に示すプライマー番号74及び表1に示すプライマー番号34のプライマー対、並びに表3に示すプライマー番号75及び表1に示すプライマー番号34のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、ACDH/ACOX遺伝子のプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、及びVCP1ターミネーター配列からなる、ACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用断片(ACDH/ACOX1遺伝子プロモーター競合用断片、ACDH/ACOX2遺伝子プロモーター競合用断片、「ACDH/ACOX3遺伝子プロモーター競合用断片、ACDH/ACOX4遺伝子プロモーター競合用断片、ACDH/ACOX5遺伝子プロモーター競合用断片)を増幅した。
増幅したACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
(3)ACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用断片のナンノクロロプシス・オキュラータへの導入、形質転換体による油滴の生産、油滴の回収、及びTLC分離
実施例1と同様にして、前記ACDH/ACOX遺伝子プロモーター競合用断片をナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株へ導入し、形質転換体を作製した。
そして、得られた形質転換体を用いて、実施例1と同様に油脂の生産と油滴の回収を行い、TLC分離を実施した。
その結果、ACDH/ACOX遺伝子のプロモーターを競合させた各形質転換体のいずれにおいても、実施例1と同様、培養開始3週間目頃から培養上清に油滴が浮遊し始め、1か月後には赤い油滴の発生が容易に確認できた。
また、これらの油滴を回収してTLCにて展開したところ、いずれもトリアシルグリセロールを主成分とするものであった。
以上のように、真正眼点藻網の藻類のβ酸化能を抑制又は阻害することで、産生された油脂が細胞外に分泌される。また、細胞外に分泌された油脂は培地中で油滴となって浮遊する。よって、細胞破砕という煩雑な操作を要することなく、簡便な操作により油滴を回収して油脂が得ることができるので、油脂回収に係るプロセスを簡便化し、コストを削減することができる。

Claims (10)

  1. ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類を培養して油脂を製造する方法であって、アシルCoAデヒドロゲナーゼ(acyl-CoA dehydrogenase)及びアシルCoAオキシダーゼ(acyl-CoA oxidase)からなる群より選ばれる少なくとも1種のβ酸化関連酵素をコードする遺伝子を欠失若しくは不活性化、又はアシルCoAデヒドロゲナーゼ(acyl-CoA dehydrogenase)及びアシルCoAオキシダーゼ(acyl-CoA oxidase)からなる群より選ばれる少なくとも1種のβ酸化関連酵素をコードする遺伝子をダウンレギュレートすることにより、前記藻類のβ酸化能を抑制又は阻害し、油脂又はこれを構成する脂肪酸のβ酸化を抑制又は阻害する、油脂の製造方法。
  2. 生産された油脂を前記藻類の細胞外に分泌させる、請求項1に記載の油脂の製造方法。
  3. 前記藻類を液体培地で培養し、培地に浮遊する油滴、又は油層を回収して油脂を得る、請求項1又は2に記載の油脂の製造方法。
  4. 前記β酸化関連酵素が、下記タンパク質(A)〜(J)からなる群より選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の油脂の製造方法。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (E)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (G)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
  5. 前記の、β酸化関連酵素をコードする遺伝子が、下記DNA(a)〜(j)のいずれか1つからなる遺伝子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油脂の製造方法。
    (a)配列番号76で表される塩基配列からなるDNA。
    (b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (c)配列番号77で表される塩基配列からなるDNA。
    (d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (e)配列番号78で表される塩基配列からなるDNA。
    (f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (g)配列番号79で表される塩基配列からなるDNA。
    (h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (i)配列番号80で表される塩基配列からなるDNA。
    (j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  6. 前記油脂が中性脂質を含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂の製造方法。
  7. ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類の、アシルCoAデヒドロゲナーゼ(acyl-CoA dehydrogenase)及びアシルCoAオキシダーゼ(acyl-CoA oxidase)からなる群より選ばれる少なくとも1種のβ酸化関連酵素をコードする遺伝子が欠失若しくは不活性化、又はアシルCoAデヒドロゲナーゼ(acyl-CoA dehydrogenase)及びアシルCoAオキシダーゼ(acyl-CoA oxidase)からなる群より選ばれる少なくとも1種のβ酸化関連酵素をコードする遺伝子がダウンレギュレートさおり、β酸化経路の阻害により前記藻類のβ酸化能が抑制又は阻害されている、形質転換体。
  8. 前記藻類が生産した油脂を細胞外に分泌する、請求項7に記載の形質転換体。
  9. 前記β酸化関連酵素が、下記タンパク質(A)〜(J)からなる群より選ばれる、請求項7又は8に記載の形質転換体。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (E)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (G)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
  10. 前記の、β酸化関連酵素をコードする遺伝子が、下記DNA(a)〜(j)のいずれか1つからなる遺伝子である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の形質転換体。
    (a)配列番号76で表される塩基配列からなるDNA。
    (b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (c)配列番号77で表される塩基配列からなるDNA。
    (d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (e)配列番号78で表される塩基配列からなるDNA。
    (f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (g)配列番号79で表される塩基配列からなるDNA。
    (h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (i)配列番号80で表される塩基配列からなるDNA。
    (j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつアシルCoAに対するアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性又はアシルCoAオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
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