JP7066593B2 - 藻類改変体を含む飲食品、飼料、又は餌料 - Google Patents

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Description

本発明は、藻類改変体を含む飲食品、飼料、若しくは餌料、並びにこれらの製造方法に関する。
クロレラ(Chlorella)やナンノクロロプシス(Nannochloropsis)等の藻類はその豊富な脂肪酸含量から、健康食品としての注目も高く、これらの藻類を含むサプリメントが知られている。
また、藻類は動物プランクトン用の餌料としても利用されている。
多くの魚介類の種苗生産において、仔稚魚の初期餌料として動物プランクトンであるワムシ(シオミズツボワムシ、Brachionus plicatilis sp. complex)やアルテミア(Artemia)が利用されている。エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったn-3系の多価不飽和脂肪酸は仔稚魚の生育に必須な成分であり、ワムシやアルテミアの栄養強化を目的として給餌されている。栄養強化の方法としては、EPAやDHA、又は魚油などを人工的に添加した微生物やマイクロカプセル、あるいはEPAやDHAを生合成できる微生物を利用する方法がある。
例えば、ナンノクロロプシスはEPAを生合成できる微細藻類であり、以前からワムシやアルテミアの栄養強化に広く利用されている。
しかしながら、藻類は硬い細胞壁や細胞外層に覆われている。そのため、消化性が悪く、藻類を用いて食品を製造する際には、細胞壁を物理的ないし化学的に破壊することが必要である。さらに、動物プランクトンの餌として藻類を用いる場合、未処理の状態では、咀嚼器官が比較的未発達であるアルテミアには消化できないので、アルテミアの栄養強化が不十分であるとされている。そのため、物理処理や酵素処理を施したナンノクロロプシスを含む動物プランクトン用飼料を給餌することにより、ワムシやアルテミアの栄養強化を可能とし得ることが特許文献1及び2に記載されている。またクロレラの細胞壁を物理的に処理する方法も提案されており(特許文献3)、消化性を向上させたクロレラが販売されている。
このように物理的、又は化学的に藻類の消化性を向上させる方法は報告されているが、生物学的若しくは遺伝学的に藻類の消化性を向上させる方法に関しては知見がない。
国際公開第2015/159700号 国際公開第2005/027651号 特開平5-68536号公報
本発明は、消化性に優れた藻類改変体を含む、飲食品、飼料、及び餌料の提供に関する。
また本発明は、該藻類改変体の提供に関する。
ナンノクロロプシスは分子生物学的にも研究が進んでおり、相同組換えやゲノム編集が可能である(Oliver Kilian et al., PNAS, 2011 December, 108(52) p.21265-21269;Qintao Wang et al., the Plant Journal, 2016 August, 88, p.1071-1081)。このような状況の下、本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねた。
藻類は細胞壁に覆われており、さらに藻類の一部はアルジナン層と呼ばれる硬い殻のような構造を持つ。ゆえに、これまで藻類を飲食品や飼料、餌料として用いる際には、細胞壁を物理的又は化学的に破壊する必要があった。
そこで発明者らは、細胞壁の構成成分であるセルロースを合成する酵素(以下、「セルロース合成酵素」、若しくは「CES」ともいう)をコードする遺伝子(以下、「セルロース合成酵素遺伝子」、若しくは「CES遺伝子」ともいう)又は、アルジナン層の構築に関与すると思われるポリケチド合成酵素(以下、「PKS」ともいう)をコードする遺伝子(以下、「ポリケチド合成酵素遺伝子」、若しくは「PKS遺伝子」ともいう)を破壊した藻類を作出し、当該藻類改変体が消化性に優れることを見出した。
さらに、当該藻類改変体を動物プランクトンの餌として摂取させた場合であっても、消化性に優れた餌料として有用であることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
本発明は、CES及びアルジナン合成に関与するPKSからなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失した藻類(以下、「藻類改変体」ともいう)を含む、飲食品、飼料、又は餌料に関する。
また本発明は、該藻類改変体に関する。
さらに本発明は、該藻類改変体の製造方法に関する。
さらに本発明は、該藻類改変体を摂取させる、動物プランクトンの生育方法に関する。
本発明の藻類改変体は、消化性が向上している。よって、本発明によれば、消化性に優れた藻類改変体を提供できる。
また、該藻類改変体を用いることで、藻類改変体を有する飲食品、飼料又は餌料を提供できる。
図1の図面代用写真中、(A)はアルテミアに野生型のナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)NIES-2145株を餌料として毎日投与し、試験開始から1週間経過したときの、試験終了時の培養液であり、(B)はアルテミアにCESA1遺伝子が欠失したナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株を餌料として毎日投与し、試験開始から1週間経過したときの、試験終了時の培養液であり、(C)は、アルテミアにPKS3遺伝子が欠失したナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株を餌料として毎日投与し、試験開始から1週間経過したときの、試験終了時の培養液であり、(D)は、アルテミアにCESA1遺伝子及びPKS3遺伝子が共に欠失したナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株を餌料として毎日投与し、試験開始から1週間経過したときの、試験終了時の培養液である。
本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また本明細書において「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8~16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
さらに明細書において、遺伝子の「上流」とは、翻訳開始点からの位置ではなく、対象として捉えている遺伝子又は領域の5'側に続く領域を示す。一方、遺伝子の「下流」とは、対象として捉えている遺伝子又は領域の3'側に続く領域を示す。
本発明において、藻類改変体として、CES及びアルジナン合成に関与するPKSからなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失した藻類を使用する。また、本発明の藻類改変体は、CES及びアルジナン合成に関与するPKSの発現が共に低下又は喪失していることが好ましい。
本発明で用いる藻類改変体は、CES及びアルジナン合成に関与するPKSからなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失している天然の藻類であってもよく、前記タンパク質の発現を低下又は喪失させた藻類を用いることもできる。
このような藻類においてCES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現の低下又は喪失は、該タンパク質をコードする遺伝子、又はその周辺の塩基配列を解析することで確認できる。
CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現が低下又は喪失した前記藻類は、死滅することなく、若しくは生育性を大きく損なうことなく、セルロースの合成又はアルジナン合成が阻害される。その結果、このような藻類においては、セルロース由来の細胞壁又はアルジナン層の構築が阻害され、消化性が向上する。ここで、「消化性」とは、消化酵素による分解のされやすさや、食品、飼料若しくは餌料として摂取したときの生体内での分解のされやすさをいう。例えば、後述の実施例で示すような方法によって求められた消化率が野生株に対して向上していることを消化性が向上するといい、本発明の藻類改変体は消化性に優れるため、生体内で栄養として吸収されやすい。
このように消化性が向上した藻類改変体は、飲食品をはじめ、飼料やペットフード、餌料として用いることで、あるいはこれらに配合することで、消化性の良い飲食品、飼料、ペットフード、又は餌料を提供することができる。
藻類の細胞は、細胞壁と呼ばれる構造に覆われており、セルロースがその主成分である。セルロースは複数のサブユニットからなるセルロース合成酵素複合体によって合成される。この複合体の活性部位は、サブユニットA(以下、「CESA」という)が担っていると考えられる。ゆえに、藻類においてCES(好ましくはCESを構成するいずれか1つのサブユニット、好ましくはCESA)の発現を低下又は喪失させることにより、セルロース合成が阻害されることで細胞壁構築が阻害され、消化性に優れた藻類を得ることができる。
本発明における「セルロース合成酵素」とは、CES遺伝子から発現したタンパク質からなる酵素(あるいは複合体)で、セルロースの生合成に関与する酵素のことをいう。
また、本明細書において、「セルロース合成活性」(以下、「CES活性」ともいう)とは、セルロース合成反応を触媒する活性を意味する。
また一部の藻類は、セルロース由来の細胞壁の外側に、難分解性のアルジナンを含む細胞壁を有する。セルロース由来の細胞壁に加えて、アルジナン層を有することで、藻類は非常に硬い殻のような構造を獲得している。このアルジナン生合成については知見が蓄積されていないが、PKSの関与が示唆されている(Scholz et al., Eukaryot Cell, 2014 Nov 13(11)1450-64参照)。ゆえに、アルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失させることにより、アルジナン合成が阻害されることでアルジナン層の構築が阻害され、結果として消化性に優れた藻類を得ることができると考えられる。
本発明の藻類改変体は、CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現が低下又は喪失しているため、セルロース合成又はアルジナン合成が阻害されている。そのため、本発明の藻類改変体では、セルロース由来の細胞壁又はアルジナン層の構築が阻害されることで、本発明の藻類改変体は消化性に優れる。
なお、藻類改変体において上記CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現が低下又は喪失していることは、例えば後述の実施例に記載の方法によって確認することができる。
本発明の藻類改変体は、野生株と比較して、消化性が消化倍率として2倍以上向上していることが好ましく、3倍以上向上していることがより好ましく、4倍以上向上していることがさらに好ましい。
消化性を定量的に評価する場合、例えば後述の実施例で示すように、野生株及び藻類改変体をアミラーゼ、ペプシン、パンクレアチン等の消化酵素で処理して処理前後の培養液に漏れ出た脂肪酸量を測定することで消化率を計算し、得られた藻類改変体の消化率を野生株の消化率で割ることで評価することができる。
本発明の藻類改変体は消化性に優れることから、本発明の藻類改変体を原料として用いることで、消化性に優れた飲食品、飼料、又は餌料を得ることができる。
本発明の藻類改変体を、飲食品、飼料、ペットフード等に配合適用する場合、食用又は飲料用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して提供することができる。さらに、前記飲食品は、一般飲食品の他、必要に応じて美容食品、病者用食品、栄養機能食品、特定保健用食品又は機能性表示食品等の機能性飲食品の形態の飲食品とすることができる。また、餌料として用いる場合は、藻類改変体そのものを利用できる。
飲食品への配合の例としては、小麦粉加工食品、米加工食品、菓子類、飲料類、乳製品、調味料、蓄肉加工食品、水産加工食品、調理油等が挙げられる。また、錠剤(タブレット)、カプセル等の錠剤食、濃厚流動食、自然流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク栄養食等の経口栄養食品、経腸栄養食品、機能性食品等の形態としてもよい。
飼料、ペットフード、又は餌料としては、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード、魚類又は甲殻類等の水産生物用飼料餌料等が挙げられる。
これらの飲食品、飼料及びペットフード等は、本発明の藻類改変体又は該藻類の抽出物や破砕物を含有し、これに食品原料、例えば、甘味剤、着色剤、抗酸化剤、ビタミン類、香料、ミネラル等の添加剤、タンパク質、脂質、糖質、炭水化物、食物繊維等を適宜組み合わせて、常法に従って調製することができる。
さらに本発明の藻類改変体はCES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現が低下又は喪失していることで、細胞を物理的又は化学的に破壊しやすい性質を持つことから、消化性に優れた動物プランクトン用餌料として用いることができる。
本発明でいう動物プランクトンとは、ワムシ、アルテミア、ミジンコなどの一般的に種苗生産において餌料として利用されているものを指す。
動物プランクトンへの給餌方法に特に制限はない。本発明の藻類改変体は、死細胞より生細胞を用いることが好ましい。また、本発明の藻類改変体は、生きた細胞を未処理のまま投与することもでき、ホモジェナイザーなどにより粉砕してから乾燥させ、粉末状にしたものを投与することもでき、さらに該粉末から再成型したものを投与することもできる。本発明の藻類改変体の給餌方法は、動物プランクトンの培養開始時に一度に与えることもできるが、衛生面の観点から、動物プランクトンが1日に摂取できる量の藻類改変体を毎日投与することが好ましい。
本発明に用いる藻類としては、遺伝子組換え手法が確立している観点から、クラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類、クロレラ属の藻類、ファエオダクティラム(Phaeodactylum)属の藻類、又は真正眼点藻綱に属する藻類が好ましく、真正眼点藻綱に属する藻類がより好ましい。真正眼点藻綱に属する藻類の具体例としては、ナンノクロロプシス属の藻類、モノドプシス(Monodopsis)属の藻類、ビスケリア(Vischeria)属の藻類、クロロボトリス(Chlorobotrys)属の藻類、ゴニオクロリス(Goniochloris)等が挙げられる。なかでも、ナンノクロロプシス属の藻類が好ましい。ナンノクロロプシス属の藻類の具体例としては、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス・リムネティカ(Nannochloropsis limnetica)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ(Nannochloropsis granulata)、ナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp.)等が挙げられる。なかでも、ナンノクロロプシス・オセアニカ、又はナンノクロロプシス・ガディタナが好ましく、ナンノクロロプシス・オセアニカがより好ましい。
なお、ナンノクロロプシス・オセアニカ等の藻類は、私的又は公的な研究所等の保存機関より入手することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株は、国立環境研究所(NIES)から入手することができる。
藻類の培地は天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培養培地を使用してもよい。具体的な培地としては、f/2培地、ESM培地、ダイゴIMK培地、L1培地、MNK培地、等を挙げることができる。なかでも、f/2培地、ESM培地、又はダイゴIMK培地が好ましく、f/2培地、又はダイゴIMK培地がより好ましく、f/2培地がさらに好ましい。藻類の生育促進のため、培地に、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類、微量金属等を適宜添加することができる。
培地に接種する藻類の量は適宜選択することができ、生育性の点から培地当り1~50%(vol/vol)が好ましく、1~10%(vol/vol)がより好ましい。培養温度は、藻類の増殖に悪影響を与えない範囲であれば特に制限されないが、通常、5~40℃の範囲である。藻類の生育促進の観点から、好ましくは10~35℃であり、より好ましくは15~30℃である。
また藻類の培養は、光合成ができるよう光照射下で行うことが好ましい。光照射は、光合成が可能な条件であればよく、人工光でも太陽光でもよい。光照射時の光強度としては、藻類の生育促進の観点から、好ましくは1~4,000μmol/m2/sの範囲、より好ましくは10~2,500μmol/m2/sの範囲、より好ましくは100~2,500μmol/m2/sの範囲、より好ましくは200~2,500μmol/m2/sの範囲、より好ましくは250~2,500μmol/m2/sの範囲、より好ましくは300~2,500μmol/m2/sの範囲である。また、光照射の間隔は、特に制限されないが、前記と同様の観点から、明暗周期で行うことが好ましく、24時間のうち明期が好ましくは8~24時間、より好ましくは10~18時間、さらに好ましくは12時間である。
また藻類の培養は、光合成ができるように二酸化炭素を含む気体の存在下、又は炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を含む培地で行うことが好ましい。気体中の二酸化炭素の濃度は特に限定されないが、生育促進の観点から0.03(大気条件と同程度)~10%が好ましく、より好ましくは0.05~5%、さらに好ましくは0.1~3%、よりさらに好ましくは0.3~1%である。炭酸塩の濃度は特に限定されないが、例えば炭酸水素ナトリウムを用いる場合、生育促進の観点から0.01~5質量%が好ましく、より好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。
培養時間は特に限定されず、長期間(例えば150日程度)行なってもよい。藻類の生育促進、及び生産コストの低減の観点から、培養期間は、好ましくは3~90日間、より好ましくは7~30日間、さらに好ましくは14~21日間である。なお、培養は、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養のいずれでもよく、通気性の向上の観点から、振とう培養が好ましい。
本発明で発現を低下又は喪失させるCESは、CES活性を示すタンパク質(酵素)であれば特に制限はない。
本発明で発現を低下又は喪失させるCESは、例えば、ゲノム情報を基にBlastで解析し、CESとアノテーションされたものを候補として選択できる。またはBlastpによってアミノ酸配列を解析し、CESとアノテーションされたものもまた候補として選択できる。更に選択したタンパク質をコードする遺伝子を破壊又は欠失させた藻類を培養し細胞壁のセルロース層への影響を調べることでタンパク質を確認してもよい。
本発明における好ましいCESとしては、下記タンパク質(A)又は(B)が挙げられる。

(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつCES活性を有するタンパク質。
配列番号1のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(A)は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株由来のセルロース合成酵素複合体のサブユニットAを構成するタンパク質(以下、「CESA1」ともいう)である。本発明の配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(A))はCES活性を有する。
タンパク質(B)は、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列との同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつCES活性を有する。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明で規定するタンパク質において、このようにCES活性が保持され、かつアミノ酸配列が一部変異したタンパク質も包含する。
前記タンパク質(B)において、CES活性の点から、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、94%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(B)として、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上300個以下、好ましくは1個以上263個以下、より好ましくは1個以上225個以下、より好ましくは1個以上188個以下、より好ましくは1個以上150個以下、より好ましくは1個以上112個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上60個以下、より好ましくは1個以上45個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上7個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつCES活性を有するタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(A)又は(B)の発現を低下又は喪失させるために、前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子(CES遺伝子)の発現を抑制、あるいは遺伝子を欠失させることも好ましい。前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子として、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子が挙げられる。

(a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつCES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号2で表される塩基配列からなる前記DNA(a)は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株由来のCESA1遺伝子である。
前記DNA(b)において、CES活性の点から、前記DNA(a)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、94%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(b)として、配列番号2で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上903個以下、好ましくは1個以上790個以下、より好ましくは1個以上677個以下、より好ましくは1個以上564個以下、より好ましくは1個以上451個以下、より好ましくは1個以上338個以下、より好ましくは1個以上225個以下、より好ましくは1個以上180個以下、より好ましくは1個以上135個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上45個以下、さらに好ましくは1個以上22個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつCES活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(b)として、前記DNA(a)又は(b)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつCES活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
また、本発明で発現を低下又は喪失させるPKSは、アルジナン合成に関与するタンパク質(酵素)であれば特に制限はない。
本発明で発現を低下又は喪失させるPKSは、例えばゲノム情報を基にBlastで解析し、PKSとアノテーションされたものを候補として選択できる。またはBlastpによってアミノ酸配列を解析し、PKSとアノテーションされたものも候補として選択できる。更に選択したタンパク質をコードする遺伝子を破壊又は欠失させた藻類を培養し、細胞壁のアルジナン層の影響を調べることでタンパク質を確認してもよい。
本発明における好ましいPKSとしては、下記タンパク質(C)又は(D)が挙げられる。

(C)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつアルジナン合成に関与するタンパク質。
配列番号3のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(C)は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株由来のPKSの1種(以下、「PKS3」ともいう)である。本発明の配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(C))はアルジナン合成に関与する。
タンパク質(D)は、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列との同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつアルジナン合成に関与するタンパク質である。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明で規定するタンパク質において、このように上記アルジナン合成性に関与する機能が保持され、かつアミノ酸配列が一部変異したタンパク質も包含する。
前記タンパク質(D)において、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、86%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、94%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(D)として、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上1203個以下、好ましくは1個以上1053個以下、より好ましくは1個以上902個以下、より好ましくは1個以上752個以下、より好ましくは1個以上601個以下、より好ましくは1個以上421個以下、より好ましくは1個以上300個以下、より好ましくは1個以上240個以下、より好ましくは1個以上180個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上60個以下、さらに好ましくは1個以上30個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつアルジナン合成に関与するタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(C)又は(D)の発現を低下又は喪失させるために、前記タンパク質(C)又は(D)をコードする遺伝子(PKS遺伝子)の発現を抑制、あるいは遺伝子を欠失させることも好ましい。前記タンパク質(C)又は(D)をコードする遺伝子として、下記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子が挙げられる。

(c)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつアルジナン合成に関与するタンパク質をコードするDNA。
配列番号4で表される塩基配列からなる前記DNA(c)は、配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株由来のPKS3遺伝子である。
前記DNA(d)において、前記DNA(c)の塩基配列との同一性は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、86%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、94%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(d)として、配列番号4で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上3612個以下、好ましくは1個以上3160個以下、より好ましくは1個以上2709個以下、より好ましくは1個以上2257個以下、より好ましくは1個以上1806個以下、より好ましくは1個以上1264個以下、より好ましくは1個以上903個以下、より好ましくは1個以上722個以下、より好ましくは1個以上541個以下、より好ましくは1個以上361個以下、より好ましくは1個以上180個以下、さらに好ましくは1個以上90個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつアルジナン合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(d)として、前記DNA(c)又は(d)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルジナン合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失する方法を説明する。
本発明において、CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失する方法としては、常法より適宜選択することができる。例えば、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を欠失(一部若しくは全長)する方法、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子をダウンレギュレートする方法、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子のプロモーターを改変する方法、アンチセンス、プロモーター競合などのゲノム編集技術を利用する方法、等が挙げられる。なかでも、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を欠失、又はCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子をダウンレギュレートすることにより、CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失することが好ましい。
また、CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失する方法に代えて、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を不活性化する方法、CES又はアルジナン合成に関与するPKSタンパク自体の欠損や変異の導入、薬剤の添加などによるCES又はアルジナン合成に関与するPKSタンパク質の機能を弱化する方法等を適宜選択することもできる。これらの方法により得られる効果は、CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失する方法により得られる効果と同等である。
CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を欠失又は不活性化することにより、CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失する方法について説明する。
CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を欠失又は不活性化する方法としては、常法から適宜選択することができる。例えば、前記藻類自体が有する相同組換え能を利用した遺伝子破壊方法、転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(Transcription activator-like effector nuclease、TALEN)やクリスパー(CRISPR、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)といったゲノム編集技術を利用した方法、突然変異等を利用した変異導入方法、など一般的な方法により、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を欠失又は不活性化することができる。
具体的には、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の一部を含むDNA断片または適当なプラスミド(ベクター)にクローニングして得られる環状の組換えプラスミドを微細藻類の細胞内に取り込ませ、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の一部領域における相同組換えによってゲノム上のCES遺伝子又はPKS遺伝子の欠失や、これらを分断してCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を不活性化することが可能である。
また、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンなどの変異誘発剤の使用、紫外線やガンマ線等の照射によりCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の突然変異を誘発する方法、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子中(例えば、CES又はアルジナン合成に関与するPKSを発現するために重要な部位)に部位特異的点突然変異(例えば、フレームシフト突然変異、インフレーム突然変異、終止コドンの挿入など)を誘発する方法、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の全部又は一部を他の任意のDNA断片(例えば、任意の選択マーカー)で置換する方法、などによりCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子をランダムに不活性化することができる。
本発明において、相同組換えにより、ゲノム上のCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を欠失又は不活性化することが好ましい。
相同組換えによりCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を欠失又は不活性化するときは、前記藻類に、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットを導入する。
ここで使用するCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットは、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の全部又は一部を標的領域とする。そして、標的領域をコードするゲノムの上流側の一部と相同的な塩基配列と、ゲノムの下流側の一部と相同的な塩基配列を有するプラスミド又はDNAカセットを構築し、これを前記藻類に導入することが好ましい。
相同組換えに必要なCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の上流及び下流の塩基配列の情報は、例えば国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information, NCBI)などから入手することができる。
また、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子が相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットと置換され、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子が欠失又は不活性化したことを確認するために、相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットに組み込まれる選択マーカーとして、通常用いられる選択マーカーから適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができる選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子をマーカー遺伝子として使用することもできる。選択マーカーのベクターへの導入は、制限酵素処理やライゲーション等の常法により行うことができる。
CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子を欠失又は不活性化するために用いる、前記相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットは、通常用いられるプラスミド(ベクター)を使用して作製することができる。使用できるプラスミドとしては、例えば、pUC18(タカラバイオ社製)、pUC19(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(Journal of Basic Microbiology, 2011, vol. 51, p. 666-672参照)、又はpJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。特に、pUC18、pPha-T1、又はpJET1が好ましく用いられる。
CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の欠失又は不活性化に用いる相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットのサイズは、藻類への導入効率や、相同組換え効率などを考慮し、適宜設定することができる。例えば、相同配列として用いる標的領域の上流又は下流塩基配列はそれぞれ300bp以上が好ましく、500bp以上がより好ましい。またその上限値は、2.5kbpが好ましく、2kbpがより好ましい。
前記相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットを藻類に導入する形質転換方法は、藻類の種類やCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットに応じて常法より適宜選択することができる。例えば、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法等が挙げられる。また、本発明では、Randor Radakovits, et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012等に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
また、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2011, vol. 108(52)の記載の方法を参考にして、目的の遺伝子の上流の配列、プロモーター、選択マーカー遺伝子、ターミネーター、及び目的の遺伝子の下流の配列からなるDNA断片(遺伝子破壊カセット)を用いて宿主を形質転換することもできる。
CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子が欠失又は不活性化した藻類の選択は、選択マーカー等を利用することで行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子が宿主細胞中に導入された結果、藻類が獲得する薬剤耐性を指標に行うことができる。また、ゲノムを鋳型としたPCR法等によって、目的DNA断片の導入を確認することもできる。
CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子をダウンレギュレートして、CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失する方法について説明する。
CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の発現の抑制、又はCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の上流に位置するプロモーターを特定しこれを欠失若しくは不活性化することで、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の発現量が減少する(CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子のダウンレギュレーション)。CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の発現量が減少すると、セルロース合成又はアルジナン合成に関与するCES又はアルジナン合成に関与するPKSタンパク質の発現が阻害される。その結果、前記藻類においてセルロース由来の細胞壁又はアルジナン層の構築が阻害される。よって、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の発現量を減少させることで、消化性に優れた藻類を得ることができる。
CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子をダウンレギュレートさせる方法は、常法より適宜選択することができる。例えば、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンなどの変異誘発剤、UV、ガンマ線等の照射によりCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子のプロモーターや転写・翻訳開始領域の突然変異を誘発する方法、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子のプロモーター配列や転写・翻訳開始領域中に他の任意のDNA断片(例えば、任意のリプレッサー、任意の選択マーカー等)を挿入する方法、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子のプロモーター配列や転写・翻訳開始領域の全部又は一部を他の任意のDNA断片(例えば、任意のリプレッサー、任意の選択マーカー等)で置換する方法、アンチセンス法、RNA干渉法、プロモーター競合等があげられる。
本発明は、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の塩基配列及びその上流の塩基配列からなる領域の上流側の一部と相同的な塩基配列と、ゲノム上のCES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の塩基配列及びその下流の塩基配列からなる領域の下流側の一部と相同的な塩基配列を有する、CES遺伝子又はアルジナン合成に関与するPKS遺伝子の相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットも提供する。この相同組換え用プラスミド又は相同組換え用DNAカセットは、前記CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失させた藻類の作製に好適に用いることができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の飲食品、飲食品の製造方法、飼料、飼料の製造方法、餌料、藻類を開示する。
<1>CES及びアルジナン合成に関与するPKSからなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失している藻類を含む、飲食品、飼料、又は餌料。
<2>前記CESの発現と、前記アルジナン合成に関与するPKSの発現がそれぞれ低下又は喪失している、前記<1>項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<3>前記CES若しくはアルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子を欠失若しくは不活性化、又は前記CES若しくはアルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子をダウンレギュレートすることにより、前記CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現が低下又は喪失する、前記<1>又は<2>項に記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<4>前記藻類において、消化性が向上しており、好ましくは消化性が消化倍率として2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは4倍以上向上している、前記<1>~<3>のいずれか1項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<5>前記藻類が、真正眼点藻綱に属する藻類である、前記<1>~<4>のいずれか1項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<6>前記真正眼点藻綱に属する藻類が、ナンノクロロプシス属に属する藻類である、前記<5>項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<7>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類が、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ、ナンノクロロプシス・リムネティカ、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、ナンノクロロプシス・エスピーからなる群より選ばれる藻類、好ましくはナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、より好ましくは、ナンノクロロプシス・オセアニカ、である、前記<6>項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<8>前記CESが、下記タンパク質(A)又は(B)である、前記<1>~<7>のいずれか1項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつCES活性を有するタンパク質。
<9>前記タンパク質(B)が、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上300個以下、好ましくは1個以上263個以下、より好ましくは1個以上225個以下、より好ましくは1個以上188個以下、より好ましくは1個以上150個以下、より好ましくは1個以上112個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上60個以下、より好ましくは1個以上45個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらに好ましくは1個以上7個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつCES活性を有するタンパク質、である、前記<8>項に記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<10>前記CESをコードする遺伝子が、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、前記<3>~<9>のいずれか1項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
(a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつCES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<11>前記DNA(b)が、前記DNA(a)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上903個以下、好ましくは1個以上790個以下、より好ましくは1個以上677個以下、より好ましくは1個以上564個以下、より好ましくは1個以上451個以下、より好ましくは1個以上338個以下、より好ましくは1個以上225個以下、より好ましくは1個以上180個以下、より好ましくは1個以上135個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上45個以下、さらに好ましくは1個以上22個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加されており、かつCES活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、又は前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつCES活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、である、前記<10>項に記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<12>前記アルジナン合成に関与するPKSが、下記タンパク質(C)又は(D)である、前記<1>~<11>のいずれか1項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
(C)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつアルジナン合成に関与するタンパク質。
<13>前記タンパク質(D)が、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上1203個以下、好ましくは1個以上1053個以下、より好ましくは1個以上902個以下、より好ましくは1個以上752個以下、より好ましくは1個以上601個以下、より好ましくは1個以上421個以下、より好ましくは1個以上300個以下、より好ましくは1個以上240個以下、より好ましくは1個以上180個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上60個以下、さらに好ましくは1個以上30個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつアルジナン合成に関与するタンパク質、である、前記<12>項に記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<14>前記アルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子が、下記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子である、前記<3>~<13>のいずれか1項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
(c)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつアルジナン合成に関与するタンパク質をコードするDNA。
<15>前記DNA(d)が、前記DNA(c)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上3612個以下、好ましくは1個以上3160個以下、より好ましくは1個以上2709個以下、より好ましくは1個以上2257個以下、より好ましくは1個以上1806個以下、より好ましくは1個以上1264個以下、より好ましくは1個以上903個以下、より好ましくは1個以上722個以下、より好ましくは1個以上541個以下、より好ましくは1個以上361個以下、より好ましくは1個以上180個以下、さらに好ましくは1個以上90個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつアルジナン合成に関与するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルジナン合成に関与するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、である、前記<14>項に記載の飲食品、飼料、又は餌料。
<16>前記餌料が動物プランクトン用の餌料である、前記<1>~<15>のいずれか1項記載の餌料。
<17>前記動物プランクトンが、ワムシ又はアルテミアである、前記<16>項記載の餌料。
<18>前記餌料が、生きたまま動物プランクトンに投与されることを特徴とする、前記<16>又は<17>項記載の餌料。
<19>CES及びアルジナン合成に関与するPKSからなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失している藻類を培養し、該藻類を配合する、飲食品、飼料、又は餌料の製造方法。
<20>前記CESの発現と、前記アルジナン合成に関与するPKSの発現がそれぞれ低下又は喪失している、前記<19>項記載の方法。
<21>前記CES若しくはアルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子を欠失若しくは不活性化、又は前記CES若しくはアルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子をダウンレギュレートすることにより、前記CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失する、前記<19>又は<20>項に記載の方法。
<22>前記藻類において、消化性が消化倍率として2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上向上している、前記<19>~<21>のいずれか1項記載の方法。
<23>前記藻類が、真正眼点藻綱に属する藻類である、前記<19>~<22>のいずれか1項記載の方法。
<24>前記真正眼点藻綱に属する藻類が、ナンノクロロプシス属に属する藻類である、前記<23>項記載の方法。
<25>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類が、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ、ナンノクロロプシス・リムネティカ、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、ナンノクロロプシス・エスピーからなる群より選ばれる藻類、好ましくはナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、より好ましくは、ナンノクロロプシス・オセアニカ、である、前記<24>項記載の方法。
<26>前記CESが、前記タンパク質(A)又は(B)である、前記<19>~<25>のいずれか1項記載の方法。
<27>前記タンパク質(B)が、前記<9>項で規定するタンパク質である、前記<26>項に記載の方法。
<28>前記CESをコードする遺伝子が、前記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、前記<21>~<27>のいずれか1項記載の方法。
<29>前記DNA(b)が、前記<11>項で規定するDNA、である、前記<28>項に記載の方法。
<30>前記PKSが、前記タンパク質(C)又は(D)である、前記<19>~<29>のいずれか1項記載の方法。
<31>前記タンパク質(D)が、前記<13>項で規定するタンパク質である、前記<30>項に記載の方法。
<32>前記PKSをコードする遺伝子が、前記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子である、前記<21>~<31>のいずれか1項記載の方法。
<33>前記DNA(d)が、前記<15>項で規定するDNAである、前記<32>項記載の方法。
<34>CES及びアルジナン合成に関与するPKSからなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失した藻類。
<35>前記CESの発現と、前記アルジナン合成に関与するPKSの発現がそれぞれ低下又は喪失している、前記<34>項記載の藻類。
<36>前記CES若しくはアルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子を欠失若しくは不活性化、又は前記CES若しくはアルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子をダウンレギュレートすることにより、前記CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現が低下又は喪失している、前記<34>又は<35>項に記載の藻類。
<37>前記CESが、前記タンパク質(A)又は(B)である、前記<34>~<36>のいずれか1項記載の藻類。
<38>前記タンパク質(B)が、前記<5>項で規定するタンパク質である、前記<37>項に記載の藻類。
<39>前記CESをコードする遺伝子が、前記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、前記<36>~<38>のいずれか1項記載の藻類。
<40>前記DNA(b)が、前記<7>項で規定するDNA、である、前記<39>項に記載の藻類。
<41>前記アルジナン合成に関与するPKSが、前記タンパク質(C)又は(D)である、前記<34>~<40>のいずれか1項記載の藻類。
<42>前記タンパク質(D)が、前記<9>項で規定するタンパク質である、前記<41>項に記載の藻類。
<43>前記アルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子が、前記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子である、前記<36>~<42>のいずれか1項記載の藻類。
<44>前記DNA(d)が、前記<11>項で規定するDNAである、前記<43>項に記載の藻類。
<45>前記藻類が、真正眼点藻綱に属する藻類である、前記<34>~<44>のいずれか1項記載の藻類。
<46>前記真正眼点藻綱に属する藻類が、ナンノクロロプシス属に属する藻類である、前記<45>項記載の藻類。
<47>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類が、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ、ナンノクロロプシス・リムネティカ、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、ナンノクロロプシス・エスピーからなる群より選ばれる藻類、好ましくはナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、より好ましくは、ナンノクロロプシス・オセアニカ、である、前記<46>項記載の藻類。
<48>前記<34>~<47>のいずれか1項記載の藻類を調製し、培養する、藻類の製造方法。
<49>CES及びアルジナン合成に関与するPKSからなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失した藻類を摂取させる、動物プランクトンの生育方法。
<50>前記CESの発現と、前記アルジナン合成に関与するPKSの発現がそれぞれ低下又は喪失している、前記<49>項記載の方法。
<51>前記CES若しくはアルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子を欠失若しくは不活性化、又は前記CES若しくはアルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子をダウンレギュレートすることにより、前記CES又はアルジナン合成に関与するPKSの発現を低下又は喪失する、前記<49>又は<50>項に記載の方法。
<52>前記CESが、前記タンパク質(A)又は(B)である、前記<49>~<51>のいずれか1項記載の方法。
<53>前記タンパク質(B)が、前記<5>項で規定するタンパク質である、前記<52>項に記載の方法。
<54>前記CESをコードする遺伝子が、前記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、前記<51>~<53>のいずれか1項記載の方法。
<55>前記DNA(b)が、前記<7>項で規定するDNA、である、前記<54>項に記載の方法。
<56>前記アルジナン合成に関与するPKSが、前記タンパク質(C)又は(D)である、前記<49>~<55>のいずれか1項記載の方法。
<57>前記タンパク質(D)が、前記<9>項で規定するタンパク質である、前記<56>項に記載の方法。
<58>前記アルジナン合成に関与するPKSをコードする遺伝子が、前記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子である、前記<51>~<57>のいずれか1項記載の方法。
<59>前記DNA(d)が、前記<11>項で規定するDNAである、前記<58>項に記載の方法。
<60>前記動物プランクトンが、ワムシ又はアルテミアである、前記<49>~<59>のいずれか1項記載の餌料
<61>前記藻類が生きたまま餌料として用いられることを特徴とする、前記<49>~<60>のいずれか1項記載の方法。
<62>飲食品、飼料、又は餌料としての、前記<33>~<48>のいずれか1項記載の藻類の使用。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、本実施例で用いたプライマーの塩基配列を表1に示す。
Figure 0007066593000001
作製例1 ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株におけるCESA1遺伝子破壊株の作製
(1)ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
ゼオシン耐性遺伝子(配列番号10)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表1に示す配列番号13及び配列番号14のプライマー対を用いてゼオシン耐性遺伝子断片を増幅した。また、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株のゲノムDNAを鋳型として、表1に示す配列番号15と配列番号16のプライマー対、及び配列番号17と配列番号18のプライマー対を用いてPCRを行い、VCP1プロモーター配列(配列番号9)及びVCP1ターミネーター配列(配列番号11)を増幅した。さらに、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製、配列番号38)を鋳型として、表1に示す配列番号19及び配列番号20のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC19を増幅した。これら4つの増幅断片をそれぞれ制限酵素DpnI(東洋紡株式会社製)にて処理し、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、得られた4つの断片をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを構築した。
なお、本発現用プラスミドは、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列の順に連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(2)遺伝子破壊用プラスミドの構築
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株のゲノム配列情報を基に、BLAST解析により、本発明で用いるCES候補遺伝子としてCESA1遺伝子(配列番号2)を、又アルジナン合成に関与するPKS候補遺伝子としてPKS3遺伝子(配列番号4)を同定した。
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株のゲノムDNAを鋳型として、表1に示す配列番号21と配列番号22のプライマー対、及び配列番号23及び配列番号24のプライマー対を用いてPCRを行い、CESA1遺伝子上流の相同配列(配列番号5)及びCESA1遺伝子下流の相同配列(配列番号6)を増幅した。またプラスミドベクターpUC118(タカラバイオ社製、配列番号37)を鋳型として、表1に示す配列番号25及び配列番号26のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC118を増幅した。さらに前記ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、配列番号27及び配列番号28のプライマー対を用いたPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット(VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列)を増幅した。これら4つの増幅断片を、前述と同様の方法にて融合し、CESA1遺伝子破壊用プラスミドを構築した。
なお、本プラスミドはCESA1遺伝子上流の相同配列、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列、CESA1遺伝子下流の相同配列の順で連結したインサート配列とpUC118ベクター配列からなる。
(3)相同組換えによるCESA1遺伝子破壊株の作製
前記CESA1遺伝子破壊用プラスミドを鋳型として、表1に示す配列番号21及び配列番号24のプライマー対を用いてPCRを行い、CESA1遺伝子相同組換え用DNA断片(CESA1遺伝子上流の相同配列、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列、CESA1遺伝子下流の相同配列)を増幅した。増幅したDNA断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
約10細胞のナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株を、384mMのソルビトール溶液で洗浄して塩を完全に除去し、形質転換の宿主細胞として用いた。上記で増幅したDNA断片を、約500ngずつ宿主細胞に混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。f/2液体培地(NaNO 75mg、NaHPO・2HO 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、NaSiO・9HO 10mg、NaEDTA・2HO 4.4mg、FeCl・6HO 3.16mg、CoSO・7HO 12μg、ZnSO・7HO 21μg、MnCl・4HO 180μg、CuSO・5HO 7μg、NaMoO・2HO 7μg/人工海水1L)にて24時間回復培養を行った後に、2μg/mLのゼオシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2~3週間培養した。得られたコロニーをCESA1遺伝子破壊株(以下、「ΔCESA1株」ともいう)として選抜した。なお相同組換えによるCESA1遺伝子の破壊の確認は、表1に示す配列番号29及び配列番号14のプライマー対を用いてPCRを行い、目的のDNA断片がCESA1遺伝子に挿入されていることを確認することで行った。
作製例2 ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株におけるPKS3遺伝子破壊株の作製
(1)パロモマイシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
パロモマイシン耐性遺伝子(配列番号12)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表1に示す配列番号30及び配列番号31のプライマー対を用いてパロモマイシン耐性遺伝子のDNA断片を増幅した。また、作製例1で作製したゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示す配列番号16及び配列番号17のプライマー対を用いてPCRを行い、VCP1プロモーター、VCP1ターミネーター及びpUC19ベクター配列からなるDNA断片を増幅した。これら2つのDNA断片を作製例1と同様の方法にて融合し、パロモマイシン耐性遺伝子発現用プラスミドを構築した。
なお、本発現用プラスミドは、VCP1プロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列の順に連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(2)遺伝子破壊用プラスミドの構築
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株のゲノムDNAを鋳型として、表1に示す配列番号32と配列番号33のプライマー対、及び配列番号34と配列番号35のプライマー対を用いてPCRを行い、PKS3遺伝子上流の相同配列(配列番号7)及びPKS3遺伝子下流の相同配列(配列番号8)を増幅した。またプラスミドベクターpUC118(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示す配列番号25及び配列番号26のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC118を増幅した。さらに前記パロモマイシン耐性遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、配列番号27及び配列番号28のプライマー対を用いたPCRを行い、パロモマイシン耐性遺伝子発現カセット(VCP1プロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列)を増幅した。これら4つの増幅断片を、前述と同様の方法にて融合し、PKS3遺伝子破壊用プラスミドを構築した。
なお、本プラスミドはPKS3遺伝子上流の相同配列、VCP1プロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列、PKS3遺伝子下流の相同配列の順で連結したインサート配列とpUC118ベクター配列からなる。
(3)相同組換えによるPKS3遺伝子破壊株の作製
前記PKS3遺伝子破壊用プラスミドを鋳型として、表1に示す配列番号32及び配列番号35のプライマー対を用いてPCRを行い、PKS3遺伝子相同組換え用断片(PKS3遺伝子上流の相同配列、VCP1プロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列、PKS3下流の相同配列)を増幅した。増幅したDNA断片を、作製例1と同様の方法で調製し、形質転換を行った。f/2液体培地にて24時間回復培養を行った後に、500μg/mLのパロモマイシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2~3週間培養した。得られたコロニーをPKS3遺伝子破壊株(以下、「ΔPKS3株」ともいう)として選抜した。なお相同組換えによるPKS3遺伝子の破壊の確認は、表1に示す配列番号36及び配列番号14のプライマー対を用いてPCRを行い、目的のDNA断片がPKS3の遺伝子に挿入されていることを確認することで行った。
(4)CESA1遺伝子及びPKS3遺伝子の二重破壊株の作製
作製例1で作製したCESA1遺伝子破壊株を親株とし、PKS3遺伝子破壊株を作製したときと同様の方法で形質転換を行った。f/2液体培地にて24時間回復培養を行った後に、500μg/mLのパロモマイシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2~3週間培養した。得られたコロニーをCESA1遺伝子及びPKS3遺伝子の二重破壊株(以下、「ΔCESA1/PKS3株」ともいう)として選抜した。なお相同組換えによるPKS3遺伝子の破壊の確認は、表1に示す配列番号36及び配列番号14のプライマー対を用いてPCRを行い、目的のDNA断片がPKS3の遺伝子に挿入されていることを確認することで行った。
実施例1 遺伝子破壊株の消化性評価
(1)各遺伝子破壊株の消化処理
試料には、作製例1で作製したΔCESA1株と作製例2で作製したΔPKS3株及びΔCESA1/PKS3株、陰性対照株の野生型の藻体(以下、「WT」ともいう)を使用した。藻体はf/2培地の窒素濃度を15倍、リン濃度を5倍に増強した培地(以下、「N15P5培地」ともいう)50mLに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3週間培養した。
消化酵素にはアミラーゼ(和光純薬工業株式会社製)、ペプシン(和光純薬工業株式会社製)、パンクレアチン(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
培養液1mLを遠心回収し、20mMリン酸バッファーpH6.8にて海水を洗浄した。リン酸バッファーに懸濁後、0.48μg/mLとなるようにアミラーゼを添加し、37℃にて5分間振とうした。続いて、0.1N塩酸に溶解したペプシンを3mg/mLとなるように添加し、pH2.0に調整(NaOHを使用)して37℃にて1時間振とうした。反応後、1M炭酸水素ナトリウム溶液にてpH5.7に調整したのち、3mg/mLとなるようにパンクレアチンを添加し、NaOHにてpH7.0に調整して37℃にて2時間振とうして消化処理を行った。消化処理後のサンプルは15,000rpmにて5分間遠心し上清を回収した。
(2) 油脂量の定量と消化率
回収した上清と消化処理前の試料から、下記の方法で油脂を抽出した。
培養液及び消化処理後の上清1mLに、内部標準として1mg/mLの7-ペンタデカノン(Alfa Aesar社製)を50μL添加後、0.5mLのクロロホルム、1mLのメタノール及び10μLの2N塩酸を培養液に添加して激しく攪拌後30分間放置し、その後さらに0.5mLのクロロホルムおよび0.5mLの1.5%KClを添加して攪拌後、3,000rpm、15分遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。得られたクロロホルム層に窒素ガスを吹き付けて乾固し、0.5N水酸化カリウム/メタノール溶液0.7mLを添加し、80℃で30分恒温した。続いて1mLの14%三フッ化ホウ素溶液(SIGMA社製)を添加し、80℃にて10分恒温した。その後、ヘキサン、飽和食塩水を各1mL添加し激しく撹拌し、室温にて30分放置後、上層であるヘキサン層を回収して脂肪酸エステルを得た。
得られた脂肪酸エステルをガスクロマトグラフィー解析に供した。ガスクロマトグラフィー解析は下記の条件で行った。
<ガスクロマトグラフィー条件>
分析装置:Agilent technology 7890A
キャピラリーカラム:DB-1 MS 30m×200μm×0.25μm(J&W Scientific)
移動層:高純度ヘリウム
カラム内流量:1.0mL/min
昇温プログラム:100℃(1分間)→10℃/min→300℃(5分間)、平衡化時間:1分間
注入口:スプリット注入(スプリット比:100:1)
圧力14.49psi,104mL/min
注入量:1μL
洗浄バイアル:メタノール・クロロホルム
検出器温度:300℃
また、脂肪酸エステルの同定は、同サンプルを同条件でガスクロマトグラフ質量分析解析に供することにより行った。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各脂肪酸のメチルエステル量を定量した。各ピーク面積を、内部標準である7-ペンタデカノンのピーク面積と比較することで試料間の補正を行い、各脂肪酸量を算出しその総和を総脂肪酸量(TFA)とした。本実施例でいう「総脂肪酸量」とは、C12:0量、C14:0量、C16:1量、C16:0量、C18:n量、C20:5量の合計を意味する。なお、Cx:yとあるのは炭素原子数がxで二重結合数がyの脂肪酸を表す。また、C18:nの「n」は0~5の整数を表し、C18:0、C18:1、C18:2、C18:3、C18:4、及びC18:5の脂肪酸の総和を表す。
得られた総脂肪酸量を基に消化率を求めた。消化率は以下の式で計算した。消化性が高くなると、細胞内の油脂がより多く反応液中に漏出するため、下記式で計算される消化率の値が高くなる。なお、後述の実施例2で示すように、各試料中の総脂肪酸量には大きな差は見られなかった。

消化率(%)=消化処理後上清中の総脂肪酸量/消化処理前の総脂肪酸量×100

さらに、得られた消化率を基に、野生株と比較したときの各遺伝子破壊株の消化倍率(消化性の向上率)を以下の式によって計算した。

消化倍率=遺伝子破壊株の消化率(%)/野生株の消化率

得られた消化率及び消化倍率を表2に示す。なお、以下の表において、野生株は「WT」と記載し、遺伝子破壊株はそれぞれΔCESA1株を「ΔCES」、ΔPKS3株を「ΔPKS」、ΔCESA1/PKS3株を「ΔCP」と表記した。
Figure 0007066593000002
表2から明らかなように、各単独遺伝子破壊株(ΔCESA1株及びΔPKS3株)は野生株と比較して高い消化率(消化倍率:それぞれ2.39倍、2.66倍)を示しており、さらに二重遺伝子破壊株(ΔCESA1/PKS3株)は野生株と比較してより高い消化率(消化倍率:4.12倍)を示した。
実施例2 アルテミアへの給餌試験
アルテミアはテトラブラインシュリンプエッグ(スペクトラムブランズジャパン社製)を使用した。給餌する試料には実施例1で使用した藻体と同様に調製したものを使用した。
表3に給餌に使用した藻体の脂肪酸組成(FA composition)と総脂肪酸量(TFA)を示す。また、「脂肪酸組成」とは、遊離脂肪酸と、塩又はエステル化合物等に含まれる脂肪酸残基とを合計した総脂肪酸の重量に対する各脂肪酸の重量の割合を意味する。なお、表3に示す数値は、独立ライン(3ライン)の平均値である。
Figure 0007066593000003
表3に示すように、いずれの試料についても脂肪酸組成、総脂肪酸量に大きな差はないことが明らかとなった。
人工海水(シーライフ、マリンテック社製)にアルテミアの卵を播種し、24時間後に孵化したアルテミアの幼生を回収し、20~50個体/mLとなるように調整した。給餌は餌料として藻体を20万細胞/mLとなるように1日1回添加し、1週間飼育した。
1週間後、アルテミアの生存数と死亡数をカウントし、生存率を計算した。また実体顕微鏡観察により、試験終了後のアルテミアの体長を測定した。
結果を表4に示す。なお、生存率と体長は、独立ラインの平均値±標準偏差(SD)の形式で表示した。
Figure 0007066593000004
表4から明らかなように、各単独遺伝子破壊株(ΔCESA1株及びΔPKS3株)は野生株(給餌有り)と比較して生存率が高く、体長も大きかった。さらに、二重遺伝子破壊株(ΔCESA1/PKS3株)では野生株よりも顕著な生存率と体長の大きさを示した。また試験終了時の培養液の写真を図1に示す。図1から明らかなように、野生株を餌料として加えた培養液は緑色に懸濁しており、野生株の藻体が水中に残存していることがわかる。これに対して破壊株を餌料として加えた培養液では色味が薄くなっており、給餌した破壊株のナンノクロロプシスがアルテミアに消化されていることが確認された。
以上のことから、CES及びアルジナン合成に関与するPKSの少なくとも1つの発現が低下又は喪失した本発明の藻類改変体は消化性に優れ、これを含む飲食品、飼料、又は餌料が消化性に優れることがわかった。また、本発明の藻類改変体は、動物プランクトン用の餌料として有用であることが示された。

Claims (14)

  1. セルロース合成酵素及びアルジナン合成に関与するポリケチド合成酵素からなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失していることで、前記タンパク質の発現が低下又は喪失していない藻類と比較して、セルロース由来の細胞壁ないしアルジナン層の構築が阻害され、生体内での消化性が向上している藻類を含む、飲食品、飼料、又は餌料。
  2. 前記藻類が真正眼点藻綱に属する藻類である、請求項1に記載の飲食品、飼料、又は餌料。
  3. 前記セルロース合成酵素が、下記タンパク質(A)又は(B)である、請求項1又は2に記載の飲食品、飼料、又は餌料。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、セルロース合成活性を有するタンパク質。
  4. 前記ポリケチド合成酵素が、下記タンパク質(C)又は(D)である、請求項1~3のいずれか1項記載の飲食品、飼料、又は餌料。
    (C)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、アルジナン合成に関与するタンパク質。
  5. 前記餌料が動物プランクトン用の餌料である、請求項1~4のいずれか1項記載の餌料。
  6. セルロース合成酵素及びアルジナン合成に関与するポリケチド合成酵素からなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失していることで、前記タンパク質の発現が低下又は喪失していない藻類と比較して、セルロース由来の細胞壁ないしアルジナン層の構築が阻害され、生体内での消化性が向上している、藻類。
  7. 前記藻類が真正眼点藻綱に属する藻類である、請求項6に記載の藻類。
  8. 前記セルロース合成酵素が、下記タンパク質(A)又は(B)である、請求項6又は7に記載の藻類。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、セルロース合成活性を有するタンパク質。
  9. 前記アルジナン合成に関与するポリケチド合成酵素が、下記タンパク質(C)又は(D)である、請求項6~8のいずれか1項記載の藻類。
    (C)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、アルジナン合成に関与するタンパク質。
  10. セルロース合成酵素及びアルジナン合成に関与するポリケチド合成酵素からなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失した藻類であって、前記タンパク質の発現が低下又は喪失していない藻類と比較して、セルロース由来の細胞壁ないしアルジナン層の構築が阻害され、生体内での消化性が向上している藻類を調製し、培養する、藻類の製造方法。
  11. 前記藻類が真正眼点藻綱に属する藻類である、請求項10記載の藻類の製造方法。
  12. 前記セルロース合成酵素が、下記タンパク質(A)又は(B)である、請求項10又は11に記載の藻類の製造方法。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、セルロース合成活性を有するタンパク質。
  13. 前記アルジナン合成に関与するポリケチド合成酵素が、下記タンパク質(C)又は(D)である、請求項10~12のいずれか1項記載の藻類の製造方法。
    (C)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、アルジナン合成に関与するタンパク質。
  14. セルロース合成酵素及びアルジナン合成に関与するポリケチド合成酵素からなる群より選ばれる、少なくとも1つのタンパク質の発現が低下又は喪失していることにより、前記タンパク質の発現が低下又は喪失していない藻類と比較して、セルロース由来の細胞壁ないしアルジナン層の構築が阻害され、生体内での消化性が向上している藻類を摂取させる、動物プランクトンの生育方法。
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