JP6721749B2 - 発破工法 - Google Patents

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Description

本発明はトンネル掘削を行なう発破工法に関する。
トンネルを発破工法で掘削するに際しては、切羽面に穿孔した複数の装薬孔(発破孔)に雷管を取り付けた爆薬を挿入し、雷管を起爆することで爆薬を爆破して切羽面を掘削する(特許文献1参照)。
この場合、民家や重要構造物近隣では発破、すなわち切羽面の爆破により発生する振動を極力抑制することが必要となるため、爆薬の破壊力を制御して発破を行なう制御発破が採用される。
発破時に発生する発破振動の予想式は以下の式(1)で示される。
V=K×W×D……(1)
V:変位速度(cm/s)
K:発破条件や岩盤特性によって変化する定数
W:段当たりの薬量(kg)
D:発破場所からの距離(m)
m:定数、n:定数
なお、「段当たり」とは、1回の同時の爆破当たりを意味する。
上記式(1)の定数m、nとして一般的な数値を代入した場合、以下の式(2)となる。
V=K×W0.75×D−2……(2)
ここで、定数Kは以下のような範囲とされる。
トンネル発破の心抜き:K=450〜900
トンネル発破の払い:K=200〜500
トンネル発破の踏まえ:K=300〜700
式(2)から、Kの値、発破位置と観測位置との隔離距離が一定であれば、発破振動の変位速度Vは段当たりの装薬量Wに依存することになり、制御発破は段当たりの装薬量を低減することによって行なうことが一般的である。
制御発破としては、以下のものが例示される。
1)複数の装薬孔に装填した雷管付きの爆薬の起爆を複数の雷管毎に行なうもの
2)1孔1段と呼ばれ複数の装薬孔に装填した雷管付きの爆薬の起爆を1つの装薬孔毎に行なうもの(すなわち同時に2つ以上の装薬孔での爆破を行わない)。
なお、発破の段数を例示すると、通常の70〜80mの断面のトンネルでは、通常の発破(DS雷管のみ使用)で8〜10段、MS雷管、DS雷管を使用した制御発破で25〜30段程度、1孔1段となると100〜140段程度となる。
図17は、電気雷管であるDS雷管、MS雷管の基準秒時を示すものである。基準秒時とは、発破器から電気エネルギーが供給され雷管が通電されてから起爆するまでの遅延時間であり、各遅延時間に対応して段数が対応付けられている。
図17に示すように、段数は、DS雷管で20段、MS雷管で20段となっており、DS雷管のみでは最大20段の爆破が可能であり、DS雷管とMS雷管とを組み合わせると、最大38段の爆破が可能となる。
図18を参照して普通発破による爆破の一例を説明する。
切羽面2は、切羽面2の中央に位置するほぼ楕円状の中心部4と中心部4の周囲に帯状に延在する周辺部6とで構成されている。符号8は雷管が装薬される装薬孔を示す。
切羽面2にはDS雷管が設置される段が♯1〜♯9の9段設定され、♯1〜♯9のそれぞれにDS雷管の1段〜9段(0sec〜2.0sec)が配置される。この場合、9段の爆破が行われる。
トンネルの心抜きおよび払いの発破における段当たりの装薬量に基づいて前記の式(2)で計算すると、普通発破(DS雷管のみ使用)と比較してMS雷管、DS雷管を用いた制御発破では、発破振動が1/3〜1/8程度抑制され、1孔1段の制御発破では発破振動が1/6〜1/20程度抑制される。
したがって、1孔1段発破を行なうことが発破振動を抑制する上で最も有利となる。
ところで、1孔1段発破による発破工法としては、以下に示すように、電子雷管を使用するものと、導火管付き雷管を使用するものとに分けられる。
1)電子雷管
電子雷管としては以下の2種類のものが提供されている。
1−1)工場出荷時に予め遅延時間(基準秒時)の秒時設定がなされているもの。
1−2)発破を行なう現場で各電子雷管毎に個別に遅延時間(基準秒時)の秒時設定を行なうもの。
2)導火管付き雷管
導火管付き雷管は、それ自体で燃焼することはできず、必ず導火管付き雷管を着火するための着火用雷管(電気雷管あるいは電子雷管)が必要となり、着火用雷管により導火管に着火する。
また、全ての導火管付き雷管に導火した後に爆破が開始する必要がある。これは、全ての導火管付き雷管に着火する前に爆破が始まると、導火管を破損して導火せず、不発となってしまうためである。
このため、導火管付き雷管は、必ず結線用の導火管付き雷管(バンチコネクターという)との併用となる。このバンチコネクターにも遅延時間(基準秒時)が設定されており、起爆時間は、0ms(瞬発)と25msの組み合わせが主として使用される。
したがって、導火管付き雷管を用いる場合は、着火用雷管と、該着火用雷管によって着火され互いに直列に接続された複数の結線用雷管と、各結線用雷管によって着火される複数の導火管付き雷管とを組み合わせることになる。
そして、着火用雷管を介して各結線用雷管が着火され、各結線用雷管から全ての導火管付き雷管に着火がなされたのち、導火管付き雷管による1孔1段の発破が開始されるように、各結線用雷管の遅延時間(基準秒時)、各導火管付き雷管の遅延時間(基準秒時)が予め設定されている必要がある。
特開2013−238368号公報
しかしながら、上述した電子雷管は、一般的な電気雷管と比較すると10倍程度の価格であり、電子雷管を切羽面の全域に配置すると、多大なコストを要する不利がある。
一方、上述した導火管付き雷管(結線用雷管を含む)は、一般的な電気雷管と比較して2倍程度の価格に留まるものの、切羽面の全ての装薬孔の全てに導火管付き雷管を装薬しようとすると以下の問題がある。
すなわち、各導火管付き雷管には、個別に異なる遅延時間が設定されている。
したがって、複数の導火管付き雷管を間違えることなく結線用雷管に接続すると共に、複数の導火管付き雷管を起爆順が予め定められた装薬孔に間違えることなく装薬する必要がある。
そのため、それら結線用雷管および導火管付き雷管を切羽面の全域に配置する作業には多大な手間を要し、発破作業の効率化を図る上で改善の余地がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、発破に伴う騒音および振動の抑制を図りつつ、コストの低減および発破作業の効率化を図る上で有利な発破工法を提供することにある。
上述の目的を達成するため、発明は、着火用雷管と、前記着火用雷管によって着火されることで起爆する結線用雷管と、前記結線用雷管によって着火されることで予め定められた遅延時間で起爆する複数の導火管付き雷管とを用意し、トンネルの切羽面に、前記複数の導火管付き雷管が設置される段を複数設定する段設定工程と、前記着火用雷管および前記結線用雷管を配置すると共に、前記複数の導火管付き雷管を爆薬と共に前記複数の段毎に配置する雷管配置工程とを含む発破工法であって、前記複数の段毎の前記複数の導火管付き雷管として、前記遅延時間が3000ms以上で同一の遅延時間のものを用意し、かつ、前記段毎に前記遅延時間を異ならせ、前記雷管配置工程では、1つの前記着火用雷管に対して1つの前記結線用雷管を接続し、1つの前記結線用雷管に対して前記複数の段毎に配置された前記遅延時間の異なる前記複数の導火管付き雷管を接続する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記複数の導火管付き雷管が設置される複数段の設定は、前記切羽面の中央部から周辺部に向かって順番に各段の前記複数の導火管付き雷管が起爆することで前記中央部の掘削が最初になされ、次いで前記周辺部の中心部寄りの箇所から前記周辺部の外周寄りの箇所に向かって順次掘削が行なわれるようになされることを特徴とする。
また、本発明は、前記着火用雷管は電気雷管で構成されていることを特徴とする。
遅延時間が3000ms以上の導火管付き雷管は、延時薬の量のばらつきが大きく、同一の遅延時間を有する複数の導火管付き雷管を同時に着火しても起爆時刻がばらついており、実質的に1孔1段の制御発破と同様の制御発破を行なうことができる。
発明によれば、トンネルの切羽面において、複数の導火管付き雷管が設置される段を複数段設定し、段毎の導火管付き雷管として、着火されてから起爆するまでの遅延時間が同一のものを用意し、着火用雷管および結線用雷管を配置すると共に、用意した複数の導火管付き雷管を爆薬と共に複数の段毎に配置し、複数の導火管付き雷管の遅延時間を3000ms以上とし、かつ、段毎に導火管付き雷管の遅延時間を異ならせるようにした。
そのため、各段において複数の導火管付き雷管が互いに異なる起爆時刻で起爆するため、実質的に1孔1段の制御発破と同様の制御発破が行われ、発破に伴う騒音および振動の低減を図ることができる。
また、段毎に遅延時間が同一の複数の導火管付き雷管を用いることができるため、1孔1段の制御発破を行なう場合のように、結線用雷管および導火管付き雷管を切羽面の全域に配置する作業に多大な手間を要することがないので、コストの低減および発破作業の効率化を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、中心部の発破により新たな自由面が形成され、周辺部の発破を効果的に行なうことができ、掘削効率の向上を図う上で有利となる。
また、本発明によれば、着火用雷管を安価な電気雷管で構成することにより発破に要するコストを低減する上で有利となる
実施の形態の発破工法で掘削するトンネルの切羽面の正面図である。 図1におけるAA線断面図である。 実施の形態における発破工法で使用される発破システムの構成を示す説明図である。 (A)はトンネルの切羽面の第1の領域に装薬された着火用雷管の遅延時間、導火管付き雷管の遅延時間、合計の遅延時間を示す図、(B)はトンネルの切羽面の第2の領域に装薬された着火用雷管の遅延時間、導火管付き雷管の遅延時間、合計の遅延時間を示す図である。 トンネルの切羽面の第1の領域に装薬された着火用雷管の着火から導火管付き雷管の起爆までの時間経過を示す模式図である。 トンネルの切羽面の第2の領域に装薬された着火用雷管の着火から導火管付き雷管の起爆までの時間経過を示す模式図である。 導火管付き雷管の遅延時間の基準秒時を示す図である。 本実施の形態における発破工法を示すフローチャートである。 本実施の形態の発破工法における騒音の測定結果を示す線図である。 電気雷管を用い起爆間隔Δt=0.25sとした場合における騒音の測定結果を示す線図である。 電子雷管を用い起爆間隔Δt=15msとした場合における騒音の測定結果を示す線図である。 電子雷管を用い起爆間隔Δt=30msとした場合における騒音の測定結果を示す線図である。 電子雷管を用い起爆間隔Δt=50msとした場合における騒音の測定結果を示す線図である。 本実施の形態の発破工法における振動の測定結果を示す線図である。 電子雷管を用い起爆間隔Δt=30msとした場合における振動の測定結果を示す線図である。 電子雷管を用い起爆間隔Δt=50msとした場合における振動の測定結果を示す線図である。 電気雷管(DS雷管、MS雷管)の遅延時間の基準秒時を示す図である。 従来の普通発破による発破工法で掘削するトンネルの切羽面の正面図である。
以下、本発明の実施の形態に係る発破工法について図面を参照して説明する。
まず、図3を参照して、本実施の形態の発破工法を実現するための発破システムの構成を示す。
発破システム10は、発破器12と、後述するトンネルの切羽面2の第1の領域2A(図1参照)に設置される着火用雷管14Aと、第1の領域2Aに設置される結線用雷管16Aと、第1の領域2Aに設置される複数の導火管付き雷管20と、後述するトンネルの切羽面2の第2の領域2B(図1参照)に設置される着火用雷管14Bと、第2の領域2Bに設置される結線用雷管16Bと、第2の領域2Bに設置される複数の導火管付き雷管20とを含んで構成されている。
発破器12は、着火用雷管14A、14Bに電気エネルギーを供給して着火させるためのものであり、発破器12と着火用雷管14A、14Bとは、各着火用雷管14A、14Bに電気エネルギーを供給する導電線を介して接続される。
着火用雷管14Aは第1の領域2Aに配置され、着火用雷管14Bは、第2の領域2Bに配置されている。
着火用雷管14A、14Bは、遅延時間が予め設定された電気雷管で構成されている。
しかしながら、着火用雷管14A、14Bとして、遅延時間が予め設定された電子雷管、あるいは、後述するようにその場で遅延時間が設定される電子雷管の何れを用いても良い。しかしながら、本実施の形態のようにすると安価な電気雷管を用いることで発破に要するコストを低減する上で有利となる。
着火用雷管14A、14Bに設定される遅延時間は、互いに異なっており、本実施の形態では、第1の領域2Aの着火用雷管14Aの遅延時間は0ms、第2の領域2Bの着火用雷管14Bの遅延時間は250msとなっている。
なお、その場で遅延時間が設定される電子雷管とは、以下のようなものである。
すなわち、電子雷管の導電線には、出荷時に個々の電子雷管を識別するための識別データを示すバーコードが記載されたタグが付けられている。
発破現場では、電子雷管を起爆する順にスキャナーでこのバーコードを読み込む。
さらに、発破器12と各電子雷管とを導電線を介して電気的に接続する。
そして、発破器12は、スキャナーで読み込まれたバーコードに基づいて導電線を介して各電子雷管に対して、遅延時間の秒時設定を行なう。
結線用雷管16A、16Bは導火管付き雷管で構成され、結線用雷管16A、16Bのうち一方の結線用雷管16Aは第1の領域2Aに配置され、他方の結線用雷管16Bは第2の領域2Bに配置されている。
一方の結線用雷管16Aは着火用雷管14Aに導火管(チューブ)を介して接続され、他方の結線用雷管16Bは着火用雷管14Bに導火管(チューブ)を介して接続されている。
結線用雷管16A、16Bは着火用雷管14A、14Bが起爆することで着火され予め設定された遅延時間後に起爆する。
導火管付き雷管20は、導火管を介して伝達された爆発の衝撃波により着火され予め設定された遅延時間後に起爆する。
本実施の形態では、結線用雷管16A、16Bは遅延時間は0msとしている。言い換えると、結線用雷管16A、16Bは遅延時間無しで起爆する。
各導火管付き雷管20は、トンネルの切羽面2に設けられた複数の装薬孔8のそれぞれに配置されている。
トンネルの切羽面2は、切羽面2の中央に位置するほぼ楕円状の中心部4と、中心部4の周囲に帯状に延在する周辺部6とで構成されている。
中心部4は、切羽面2の中央を最初に起爆して掘削する部分であり、中心部4の発破は、新たな自由面を形成し、周辺部6の発破を効果的に行なうためのものである。
そして、切羽面2には110個の装薬孔8が形成されている。なお、装薬孔8の数は切羽面2の面積や装薬量などの条件に応じて適宜設定される。
そして、本実施の形態では、切羽面2を互いに面積が等しい第1の領域2Aと第2の領域2Bとに分割する。具体的には、切羽面2とトンネルの軸線を含む鉛直面とが交差する線で切羽面2を第1の領域2Aと第2の領域2Bとに分割する。したがって、第1の領域2Aと第2の領域2Bとで装薬孔8の数は同一となるかほぼ同一となる。
第1の領域2Aに設置された複数の導火管付き雷管20は、一方の結線用雷管16Aに導火管(チューブ)を介して接続され、第2の領域2Bに設置された複数の導火管付き雷管20は、他方の結線用雷管16Bに導火管(チューブ)を介して接続されている。
したがって、第1の領域2Aに設置された導火管付き雷管20は、一方の結線用雷管16Aが起爆することで、導火管を介して伝達された爆発の衝撃波により着火され予め設定された遅延時間後に起爆する。第2の領域2Bに設置された導火管付き雷管20は、他方の結線用雷管16Bが起爆することで、導火管を介して伝達された爆発の衝撃波により着火され予め設定された遅延時間後に起爆する。
さらに、切羽面2には、複数の導火管付き雷管20が設置される段が複数段設定される。
図1には、各段を示す線が各装薬孔8を結ぶように記載されている。
すなわち、段は、同一の遅延時間の複数の導火管付き雷管20が設置される部分を示している。そして、切羽面2の中央部4から周辺部6に向かって順番に各段の複数の導火管付き雷管20が起爆することで切羽面2の中央部4の掘削が最初になされ、次いで周辺部6の中心部4寄りの箇所から周辺部6の外周寄りの箇所に向かって順次掘削がなされるように複数の段が設定される。
図1において、♯1〜♯9は1段〜9段をそれぞれ示しており、♯1、♯2、♯3、♯4、♯5、♯6、♯7、♯8、♯9の順番で、起爆がなされるように複数の導火管付き雷管20が各段に装薬される。
本実施の形態では、図7に示すように、導火管付き雷管20のうち、遅延時間が5000msから9000msの9種類の導火管付き雷管20(段数DS−21〜DS−29)を使用するため、図3に示すように、切羽面2に設定される段の数は9段となる。
ここで、複数の段♯1〜♯9と導火管付き雷管20の段数との対応は以下の通りである。
♯1:DS−21(5000ms)
♯2:DS−22(5500ms)
♯3:DS−23(6000ms)
♯4:DS−24(6500ms)
♯5:DS−25(7000ms)
♯6:DS−26(7500ms)
♯7:DS−27(8000ms)
♯8:DS−28(8500ms)
♯9:DS−29(9000ms)
なお、導火管付き雷管20は、その遅延時間が3000ms以上であればよい。したがって、図7に示す導火管付き雷管20を用いる場合、遅延時間が3000msから9000ms(段数DS−17〜DS29)の13種類の導火管付き雷管20を使用でき、切羽面2に設定される段の数は、最大で13段となる。
本実施の形態では、段毎の複数の導火管付き雷管20は同一の遅延時間となるため、同一の段には同一の遅延時間の複数の導火管付き雷管20を装薬孔8に装薬すればよい。
そのため、1孔1段で制御発破を行なう場合と異なり、遅延時間が異なる電子雷管あるいは導火管付き雷管を目視で1つずつ注意深く選別して対応する装薬孔8に1つずつ装薬する場合に比較して装薬作業が確実に簡単に行なえ、作業効率を高める上で有利なものとなる。
次に、本実施の形態に係る発破工法について図8のフローチャートを参照して説明する。
まず、図1に示すように、トンネルの切羽面2をトンネルの切羽面2を第1の領域2Aと第2の領域2Bとに分割する(ステップS10:領域分割工程)。
次に、第1の領域2Aおよび第2の領域2Bのそれぞれにおいて、複数の導火管付き雷管20が設置される段を複数段設定する(ステップS12:段設定工程)。
本実施の形態では、前述したように、導火管付き雷管20の遅延時間を5000ms、5500ms、6000ms、6500ms、……、8500ms、9000msの9段階としたため、段数が9段となる。
また、本実施の形態では、段毎に配置される導火管付き雷管20の数の最大値と最小値との差がなるべく小さくなるように複数の段の設定を行った。
また、切羽面2の中央部4から外周に近づく方向に順番に起爆するように各段♯1〜♯9に複数の導火管付き雷管20が装薬されるので、切羽面2の掘削が効率よくなされる。
次に、図1、図2に示すように、雷管を設けた爆薬を装薬(装填)するための装薬孔8を第1の領域2Aおよび第2の領域2Bに穿孔する(ステップS14)。
図2に示すように、中心部4においては、各装薬孔8を、上方から見て切羽面2の中心に対してトンネルの掘削方向に至るにつれて間隔が狭まるように傾斜して形成し、いわゆるVカットによる心抜きができるようにしている。
次に、第1の領域2A、第2の領域2Bのそれぞれにおいて、段毎の導火管付き雷管20として、着火されてから起爆するまでの遅延時間が同一のものを用意し、着火用雷管14A、14Bおよび結線用雷管16A、16Bを配置すると共に、用意した複数の導火管付き雷管20を爆薬と共に複数の段毎に配置する(ステップS16:雷管配置工程)。
本実施の形態では、複数の導火管付き雷管20の遅延時間が5000ms以上であり、かつ、段毎に導火管付き雷管20の遅延時間が異っている。
また、第1の領域2Aの着火用雷管14Aと第2の領域2Bの着火用雷管14Bとは、遅延時間がそれぞれ予め定められた時間差をもって設定され、時間差は、段毎の導火管付き雷管20の遅延時間の差分の最小値500msよりも短い250msとしている。
なお、導火管付き雷管20に予め設定されている遅延時間は、導火管付き雷管20に視認可能に付された段数(DS−21〜DS−29)で簡単かつ確実に識別できるため、装薬作業を簡単に行なうことができる。
図4(A)はトンネルの切羽面2の第1の領域2Aに装薬された着火用雷管14Aの遅延時間、導火管付き雷管20の遅延時間、合計の遅延時間を示す図、(B)はトンネルの切羽面2の第2の領域2Bに装薬された着火用雷管14Bの遅延時間、導火管付き雷管20の遅延時間、合計の遅延時間を示す図である。
このように、第1の領域2Aにおいて、着火用雷管14A、結線用雷管16A、各段の複数の導火管付き雷管20を組み合わせることで、各段において、着火用雷管14Aが着火してから複数の導火管付き雷管20が起爆するまでに要する起爆時間、言い換えると遅延時間がそれぞれ設定されることになる。
同様に、第2の領域2Bにおいても、着火用雷管14B、結線用雷管16B、各段の複数の導火管付き雷管20を組み合わせることで、各段において、着火用雷管14Bが着火してから複数の導火管付き雷管20が起爆するまでに要する起爆時間、言い換えると遅延時間がそれぞれ設定されることになる。
したがって、第1の領域2AにおけるN段(N≧1)の複数の導火管付き雷管20の起爆時間と、第2の領域2BにおけるN段(N≧1)の複数の導火管付き雷管20の起爆時間とは、着火用雷管14A、14Bの遅延時間の時間差250msのずれが生じることになる。
次に、発破器12により各着火用雷管14A、14Bを起爆させる(ステップS18)。
各着火用雷管14A、14Bの起爆により結線用雷管16A、16Bを着火して起爆させ、これにより第1の領域2Aおよび第2の領域2Bの各段に設置された複数の導火管付き雷管20を着火してこれら複数の導火管付き雷管20を起爆させて発破を行なう(ステップS20)。
すなわち、1段♯1から9段♯9にわたって順番に発破がなされ、したがって、切羽面2の中心部4から周辺部6に向かって順次掘削がなされる。
ここで、各段に設置された複数の導火管付き雷管20による発破の過程について説明する。
図5はトンネルの切羽面2の第1の領域2Aに装薬された着火用雷管14Aの着火から導火管付き雷管20の起爆までの時間経過を示す模式図であり、図6はトンネルの切羽面2の第2の領域2Bに装薬された着火用雷管14Bの着火から導火管付き雷管20の起爆までの時間経過を示す模式図である。
なお、図5、図6において、着火用雷管14A、14Bについては、左端の点が発破器12による電気エネルギーの入力がなされた時点を示し、右端の点が着火用雷管14A、14Bが起爆する時点を示している。
また、導火管付き雷管20については、左端の点が結線用雷管18の起爆による着火がなされた時点を示し、右端の点が導火管付き雷管20が起爆する時点を示している。
また、図5、図6において、結線線用雷管16A、16Bの遅延時間は0msであるため、図示を省略する。
したがって、第1の領域2Aでは、図5に示すように、以下の順番で1段♯1〜9段♯9の導火管付き雷管20が起爆する。
1)1段目の導火管付き雷管20が5000msで起爆する。
2)2段目の導火管付き雷管20が5500msで起爆する。
3)3段目の導火管付き雷管20が6000msで起爆する。
4)4段目の導火管付き雷管20が6500msで起爆する。
5)5段目の導火管付き雷管20が7000msで起爆する。
6)6段目の導火管付き雷管20が7500msで起爆する。
7)7段目の導火管付き雷管20が8000msで起爆する。
8)8段目の導火管付き雷管20が8500msで起爆する。
9)9段目の導火管付き雷管20が9000msで起爆する。
また、第2の領域2Bでは、図6に示すように、以下の順番で1段♯1〜9段♯9の導火管付き雷管20が起爆する。
1)1段目の導火管付き雷管20が5250msで起爆する。
2)2段目の導火管付き雷管20が5750msで起爆する。
3)3段目の導火管付き雷管20が6250msで起爆する。
4)4段目の導火管付き雷管20が6750msで起爆する。
5)5段目の導火管付き雷管20が7250msで起爆する。
6)6段目の導火管付き雷管20が7750msで起爆する。
7)7段目の導火管付き雷管20が8250msで起爆する。
8)8段目の導火管付き雷管20が8750msで起爆する。
9)9段目の導火管付き雷管20が9250msで起爆する。
次に、本実施の形態の効果について説明する。
本発明者らは、以下の知見を得た。
すなわち、導火管付き雷管20は、着火されてから起爆するまでの遅延時間を設定するために、延時薬(火薬)を用いている。すなわち、遅延時間が短いものは延時薬が少なく、遅延時間が長くなるほど多くの延時薬が用いられている。
遅延時間が3000ms以上の導火管付き雷管は、延時薬の量のばらつきが大きく、実際に着火されてから起爆するまでの時間は100msから200ms程度の範囲でばらついている。
したがって、同一の遅延時間を有する複数の導火管付き雷管20を同時に着火しても起爆時刻は、ばらついており、実質的に1孔1段の制御発破と同様の制御発破を行なうことができる。
そこで、上記知見に基づいて、トンネルの切羽面2において、複数の導火管付き雷管20が設置される段を複数段設定し、段毎の導火管付き雷管20として、着火されてから起爆するまでの遅延時間が同一のものを用意し、着火用雷管14A、14Bおよび結線用雷管16A、16Bを配置すると共に、用意した複数の導火管付き雷管20を爆薬と共に複数の段毎に配置した。
そして、本実施の形態では、複数の導火管付き雷管20の遅延時間を5000ms以上とし、かつ、段毎に導火管付き雷管20の遅延時間を異ならせるようにした。
そのため、各段において複数の導火管付き雷管20が互いに異なる起爆時刻で起爆するため、実質的に1孔1段の制御発破と同様の制御発破が行われるため、発破に伴う騒音および振動の低減を図ることができる。
そして、段毎に遅延時間が同一の複数の導火管付き雷管20を用いることができるため、1孔1段の制御発破を行なう場合のように、結線用雷管および導火管付き雷管20を切羽面2の全域に配置する作業に多大な手間を要することがなく、コストの低減および発破作業の効率化を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、トンネルの切羽面2を第1の領域2Aと第2の領域2Bに分割し、第1の領域2Aと第2の領域2Bのそれぞれにおいて、複数の導火管付き雷管20が設置される段を複数段設定し、第1の領域2Aの着火用雷管14Aと第2の領域2Bの着火用雷管14Bとは、遅延時間がそれぞれ予め定められた時間差をもって設定した。
したがって、切羽面2の面積が広い場合であっても、同一時刻に起爆する導火管付き雷管20の数を抑制できるため、同時に爆発する装薬量を抑制でき、騒音および振動の低減を図る上でより有利となる。
また、本実施の形態では、第1の領域2Aの着火用雷管14Aと第2の領域2Bの着火用雷管14Bとは、遅延時間がそれぞれ予め定められた時間差をもって設定され、時間差は、段毎の導火管付き雷管20の遅延時間の差分の最小値500msよりも短い250msとした。
そのため、第1の領域2Aでの導火管付き雷管20の起爆時刻と、第2の領域2Bでの導火管付き雷管20の起爆時刻とを確実に異ならせることができ、騒音および振動の低減を図る上でより有利となる。
また、本実施の形態では、段毎に配置される導火管付き雷管20の数の最大値と最小値との差がなるべく小さくなるように複数の段の設定を行った。
そのため、各段の装薬量の平準化を図ることで同時に爆発する装薬量を抑制できるため、騒音および振動の低減を図る上でより有利となる。
また、本実施の形態では、複数の導火管付き雷管20が設置される複数段の設定は、切羽面2の中心部4から周辺部6に向かって順番に各段の複数の導火管付き雷管20が起爆することで中心部4の掘削が最初になされ、次いで周辺部6の中心部4寄りの箇所から周辺部64の外周寄りの箇所に向かって順次掘削がなされるようになされるようにした。
そのため、中心部4の発破により新たな自由面が形成され、周辺部6の発破を効果的に行なうことができ、掘削効率の向上を図う上で有利となる。
次に、本発明の発破工法と従来の発破工法とにおける騒音および振動の実測結果について説明する。
図9は本実施の形態の発破工法における騒音の測定結果を示す線図であり、第1の領域2Aでの導火管付き雷管20の起爆時刻と、第2の領域2Bでの導火管付き雷管20の起爆時刻との時間差(着火用雷管14Aの遅延時間と着火用雷管14Bの遅延時間との時間差)Δtdを0.25sとした場合を示す。
図10〜図13は従来の発破工法を用いて1孔1段の制御発破を行った場合の騒音の測定結果を示す線図である。
図11は電気雷管を用いて起爆間隔Δt=0.25sとした場合を示し、図12,図13,図14は、電子雷管を用いて起爆間隔Δt=15ms、30ms、50msとした場合における騒音の測定結果をそれぞれ示す線図である。なお、起爆間隔Δtは、1孔1段の制御発破を行った場合の電気雷管、電子雷管の起爆の時間間隔を示している。
図9〜図13において横軸は経過時間T(sec)を示し、縦軸は騒音Nの音圧(dB)を示す。
また、図9〜図13において、低周波は低周波成分(100Hz以下)の騒音を示し、騒音は低周波成分を除く騒音を示す。
図9〜図13から明らかなように、図9に示す本実施の形態の発破工法では、図10に示す電気雷管を用いた場合と比較して低周波と騒音が共に−10〜−20dB程度改善されており、図11〜図13に示す電子雷管を用いた場合と比較しても本実施の形態の発破工法では低周波と騒音が同等かそれ以上改善されていることがわかる。
図14は、本実施の形態の発破工法における振動の測定結果を示す線図であり、第1の領域2Aでの導火管付き雷管20の起爆時刻と、第2の領域2Bでの導火管付き雷管20の起爆時刻との時間差Δtdを0.5sとした場合を示す。
図15,図16は従来の発破工法を用いて1孔1段の制御発破を行った場合の振動の測定結果を示す線図であり、図15、図16は、電子雷管を用い起爆間隔Δt=30ms、Δt=50msとした場合における振動の測定結果をそれぞれ示す。
なお、図14〜図16において横軸は経過時間T(sec)、縦軸は変位速度V(kine)を示す。なお、(kine)は(cm/sec)と同じ意味である。
また、各図においては、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3方向の変位速度を同一の実線で示しているため、3方向の変位速度が重なり合っておりそれぞれの変位速度を個別に見ることがはできないが、変位速度の全体の傾向が示されている。
図14〜図16から明らかなように、図14に示す本実施の形態の発破工法では、図15、図16に示す電子雷管を用いた場合とほぼ同等に振動が改善されていることがわかる。
なお、本実施の形態では、切羽面2を第1の領域2Aと第2の領域2Bとに2分割した場合について説明したが、切羽面2の面積が小さい場合は、切羽面2を複数の領域に分割することなく切羽面2に複数の段を設定しても発破に伴う騒音および振動の低減を図れることは無論である。
また、切羽面2の面積が大きい場合は、切羽面2を3つ以上の領域に分割することで同一時刻に起爆する導火管付き雷管20の数を抑制できるため、同時に爆発する装薬量を低減でき、騒音および振動の低減を図る上で有利となる。
2 切羽面
2A 第1の領域
2B 第2の領域
8 装薬孔
12 発破器
14A、14B 着火用雷管
16A、16B 結線用雷管
20 導火管付き雷管

Claims (3)

  1. 着火用雷管と、前記着火用雷管によって着火されることで起爆する結線用雷管と、前記結線用雷管によって着火されることで予め定められた遅延時間で起爆する複数の導火管付き雷管とを用意し、
    トンネルの切羽面に、前記複数の導火管付き雷管が設置される段を複数設定する段設定工程と、
    前記着火用雷管および前記結線用雷管を配置すると共に、前記複数の導火管付き雷管を爆薬と共に前記複数の段毎に配置する雷管配置工程とを含む発破工法であって、
    前記複数の段毎の前記複数の導火管付き雷管として、前記遅延時間が3000ms以上で同一の遅延時間のものを用意し、かつ、前記段毎に前記遅延時間を異ならせ
    前記雷管配置工程では、1つの前記着火用雷管に対して1つの前記結線用雷管を接続し、1つの前記結線用雷管に対して前記複数の段毎に配置された前記遅延時間の異なる前記複数の導火管付き雷管を接続する、
    ことを特徴とする発破工法。
  2. 前記複数の導火管付き雷管が設置される複数段の設定は、前記切羽面の中央部から周辺部に向かって順番に各段の前記複数の導火管付き雷管が起爆することで前記中央部の掘削が最初になされ、次いで前記周辺部の中心部寄りの箇所から前記周辺部の外周寄りの箇所に向かって順次掘削が行なわれるようになされる、
    ことを特徴とする請求項1記載の発破工法。
  3. 前記着火用雷管は電気雷管で構成されている、
    ことを特徴とする請求項1または2記載の発破工法。
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