JP6720306B2 - 回転電機の固定子 - Google Patents

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Description

本発明は、回転電機の固定子に関する。
従来から固定子と回転子とを有する回転電機に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。この従来の回転電機において、固定子は、スロット内に径方向に積層されるように充填された電導コイル同士の間およびスロットと電導コイルの間をインシュレータにより絶縁する構成を有している。回転子は、固定子に対して所定のギャップを介して回転自在に設けられている(同文献、請求項1等を参照)。
また、固定子は、第1の電導コイルと、同じスロット内で第1の電導コイルに隣接した第2の電導コイルとの間に挟まれるようにインシュレータが設けられている。このインシュレータは、第1の電導コイルを周回し、その端部が挟み部においてインシュレータの一方の面と第1の電導コイルの間に挟まれるように固定されている。さらに、このインシュレータは、第2の電導コイルの周囲を、第1の電導コイルに周回しているインシュレータ部分と同じ方向に周回し、その端部が挟み部においてインシュレータの他方の面と第二電導コイルとの間に挟まれるように固定される。
特開2009−195009号公報
前記従来の発明によれば、電導コイルの絶縁に好適なインシュレータを備えた回転電機を得ることができる(特許文献1、段落0011等を参照)。しかし、この従来の回転電機の固定子は、スロットにインシュレータを収容し、その後、スロットにコイルを配置する工程において、コイルとインシュレータとの干渉が発生しやすく、生産性向上の観点から改善の余地がある。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも生産性を向上させた回転電機の固定子を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明の回転電機の固定子は、スロットと、該スロットに配置された複数のコイルと、前記スロット内で前記コイルの周囲に配置されたインシュレータと、を備えた回転電機の固定子であって、前記インシュレータは、前記複数のコイルを囲む外周部と、該外周部から前記コイルの間へ延びて先端で折り返された曲折部と、を有することを特徴とする。
本発明の回転電機の固定子によれば、シート状のインシュレータを折り曲げたシンプルな構成のインシュレータをスロットに配置することで、折り返されて形状が安定した曲折部とその周囲の外周部とによって、形状が安定した複数の筒状の空間が画定される。そして、この形状が安定した複数の筒状の空間に複数のコイルを容易に挿通させ、スロットとコイルとの間およびコイル同士の間を容易に絶縁することができる。したがって、本発明によれば、従来よりも生産性が向上した回転電機の固定子を提供することができる。
本発明の実施形態1に係る固定子を備えた回転電機の分解斜視図。 図1に示す回転電機の固定子の斜視図。 図2に示すIII部の拡大図。 図2に示すコイルおよびインシュレータの断面図。 図4に示すインシュレータの変形例1を示す断面図。 図4に示すインシュレータの変形例2を示す断面図。 図4に示すインシュレータの変形例3を示す断面図。 本発明の実施形態2に係る回転電機の固定子の図4に相当する断面図。 本発明の実施形態3に係る回転電機の固定子の図3に相当する拡大図。 本発明の実施形態3に係る回転電機の固定子の図4に相当する断面図。
以下、図面を参照して本発明に係る回転電機100の固定子30の実施形態を説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る固定子30を備えた回転電機100の分解斜視図である。
回転電機100は、たとえば、シャフト10と、該シャフト10に固定された回転子20と、該回転子20の周囲に配置された固定子30とを備えている。回転電機100は、たとえば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載され、電力が供給されてシャフト10を回転させるモータとしての機能と、シャフト10の回転によって発電する発電機としての機能との双方を有し、車両の走行状態によって各機能を切り換えて使用することができる。
シャフト10は、円筒状の回転子20の中心を回転子20の軸線L方向に貫通する棒状の部材であり、回転子20に固定され、回転子20の軸線Lを中心に回転子20と一体に回転する。回転子20は、磁性体からなる円筒状の鉄心21と、鉄心21の軸線L方向の両端部に固定された非磁性体からなるエンドリング22とを有している。
回転子20の鉄心21は、たとえば、複数の電磁鋼鈑を軸線L方向に積層することによって構成されている。回転子20の鉄心21を構成する電磁鋼鈑としては、たとえば厚さが0.05mmから1mm程度の電磁鋼鈑を打ち抜き加工またはエッチング加工によって所定の形状に加工したものを用いることができる。回転子20の鉄心21は、周方向に等角度間隔に配置され軸線L方向に延びる複数の磁石挿入孔23と、この磁石挿入孔23に挿入された複数の磁石24とを備えている。磁石挿入孔23と磁石24との間には、磁石挿入孔23に磁石24を固定するための接着剤としての樹脂材料が充填されている。
図2は、図1に示す回転電機100の固定子30の斜視図である。図3は、図2に示す二点鎖線で囲まれたIII部の拡大図である。なお、図2に示すIII部およびその周辺では、鉄心31の端面31aと、鉄心31の径方向および軸線L方向に平行な平面において、コイル40とインシュレータ50を切断して鉄心31の端面31aの一部を露出させた状態を示している。また、図3では、コイル40の図示を省略している。
本実施形態の回転電機100の固定子30は、主に、円筒状の鉄心31と、該鉄心31に設けられた複数のスロット32と、該スロット32に配置された複数のコイル40と、スロット32内でコイル40の周囲に配置されたインシュレータ50と、を備えている。詳細については後述するが、本実施形態の回転電機100の固定子30は、コイル40の周囲に配置されたインシュレータ50が、複数のコイル40を囲む外周部51と、該外周部51からコイル40の間へ延びて先端52aで折り返された曲折部52と、を有することを特徴としている。
固定子30の鉄心31は、たとえば、厚さが0.05mmから1mm程度の電磁鋼板を打ち抜き加工またはエッチング加工によって、概ね円環状の所定の形状に加工し、この所定の形状に加工された電磁鋼板を積層することによって構成されている。固定子30の鉄心31は、中空円筒状の形状を有し、周方向に等角度間隔で設けられた複数のスロット32を有している。固定子30の鉄心31は、たとえば周方向に72箇所のスロット32を有することができる。
スロット32は、鉄心31の内周面から鉄心31の径方向に沿う放射状の溝状に設けられ、鉄心31を軸線L方向に貫通し、軸線L方向に沿って内周面に鉄心31の一方の端面31aから他方の端面31bまで連続する開口部33を有している。鉄心31の周方向における開口部33の幅は、たとえば、コイル40を挿入可能な幅に設定することができ、鉄心31の周方向におけるスロット32の幅と同等以下の幅に設定することができる。
固定子30の鉄心31は、スロット32の間に設けられた複数のティース34と、鉄心31の外周部51である環状のコアバック35とを有している。複数のティース34とコアバック35は一体に設けられ、複数のティース34は、コアバック35から鉄心31の径方向に沿って鉄心31の中心に向けて延びている。複数のティース34の固定子30の鉄心31の径方向内側、すなわち円筒状の固定子30の鉄心31の内側には、図1に示す回転子20が固定子30の鉄心31との間に微小な隙間を有して回転自在に支持されている。
コイル40は、たとえば、矩形の断面形状を有する平角線であり、外表面に絶縁被膜を有し、各々のスロット32内で鉄心31の径方向に沿って一列に配置されている(図4を参照)。図示の例において、コイル40は、長方形の断面形状を有し、断面の長辺が鉄心31の径方向に概ね平行にスロット32内に配置されている。本実施形態の回転電機100の固定子30では、たとえば3相のコイル40が8極72スロット32の分布巻きとされ、各相のコイル40はスター結線で接続されている。
インシュレータ50は、たとえば、図3に示すように、個々のスロット32に1つずつ配置することができる。インシュレータ50は、たとえば、絶縁紙を折り曲げて成形することによって製作されている。絶縁紙としては、たとえばアラミド紙と絶縁樹脂とを接着剤を介して積層させたものを用いることができる。絶縁樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。インシュレータ50の厚さは、たとえば、0.1mmから0.5mm程度である。
図4は、本実施形態の回転電機100の固定子30の1つのスロット32に配置された複数のコイル40とインシュレータ50の断面図であり、図2に示す固定子30の鉄心31の軸線L方向の端面31aに沿う断面図である。
インシュレータ50は、たとえば、固定子30の鉄心31の軸線L方向において、両端部がスロット32から突出する長さを有する一枚の絶縁紙によって製作することができ、固定子30の鉄心31とコイル40との間の絶縁距離を保ち、隣接するコイル40の間を絶縁する。インシュレータ50は、たとえば、絶縁紙が固定子30の鉄心31の軸線L方向に沿って複数回にわたって折り曲げられることで、全体として、スロット32の形状に対応する断面が長方形の薄い角筒状の形状を呈し、固定子30の鉄心31の径方向に並んだ複数の矩形の筒状の空間を画定している。このインシュレータ50によって画定された筒状の空間の各々にコイル40が挿通されている。
より詳細には、本実施形態の回転電機100の固定子30において、インシュレータ50は、複数のコイル40を囲む外周部51と、該外周部51からコイル40の間へ延びて先端52aで折り返された曲折部52と、を有している。さらに詳細には、外周部51の周方向におけるインシュレータ50の一方の端部53は、固定子30の鉄心31の径方向において最内周に配置されたコイル40のスロット32の開口部33に対向する内周側の側面に配置されている。インシュレータ50は、この最内周のコイル40の内周側の側面に沿って鉄心31の周方向に延び、このコイル40の内周側で左側の角部に沿って、径方向外側へ折り曲げられている。
インシュレータ50は、さらに、最内周のコイル40の内周側で左側の角部から、鉄心31の径方向において最外周に配置されたコイル40の外周側で左側の角部へ、複数のコイル40の左側の側面に沿って、鉄心31の径方向外側へ延びている。インシュレータ50は、さらに、最外周のコイル40の外周側で左側の角部に沿って鉄心31の周方向に折り曲げられ、この最外周のコイル40の外周側の側面に沿って延び、この最外周のコイル40の外周側で右側の角部に沿って鉄心31の径方向内側へ折り曲げられている。
インシュレータ50は、さらに、鉄心31の径方向に隣接する2つのコイル40のうち外周側のコイル40の外周側で右側の角部から、この外周側のコイル40の内周側で右側の角部まで、この外周側のコイル40の右側の側面に沿って延びている。インシュレータ50は、さらに、この外周側のコイル40の内周側で右側の角部に沿って鉄心31の周方向に折り曲げられ、2つのコイル40の間を鉄心31の周方向に横断し、鉄心31の周方向に沿う逆方向に折り返され、2つのコイル40の間を逆方向に横断している。インシュレータ50は、さらに、内周側のコイル40の外周側で右側の角部に沿って鉄心31の径方向内側へ向けて折り返されている。
インシュレータ50は、上記のように、鉄心31の径方向に隣接する2つのコイル40の間にそれぞれ折りこまれている。また、インシュレータ50は、鉄心31の径方向において、最外周のコイル40の外周側で右側の角部から、最内周のコイル40の内周側で右側の角部まで、複数のコイル40の右側の側面に沿って、鉄心31の径方向内側へ延びている。インシュレータ50は、さらに、最内周のコイル40の内周側で右側の角部に沿って、鉄心31の周方向に折り曲げられている。
インシュレータ50は、さらに、最内周のコイル40の内周側の側面に沿って延び、外周部51の周方向におけるインシュレータ50の一方の端部53に、外周部51の周方向におけるインシュレータ50の他方の端部54が重ねられている。本実施形態の回転電機100の固定子30において、インシュレータ50は、外周部51の周方向における両端部53,54が、固定子30の鉄心31の周方向におけるスロット32の開口部33の両側の壁面32aに対し、鉄心31の径方向に対向する位置で重なっている。これにより、インシュレータ50は、外周部51と曲折部52とによって、スロット32内のすべてのコイル40の外周面の略全面を覆っている。
インシュレータ50の外周部51は、たとえば、鉄心31の径方向に一列に並んだ複数のコイル40の外周を囲んでいる。すなわち、外周部51は、最内周のコイル40の内周側の側面と、最外周のコイル40の外周側の側面に沿う一対の周方向延在部51aと、複数のコイル40の左側および右側の側面に沿う一対の径方向延在部51bと、を有している。換言すると、外周部51は、鉄心31の周方向において複数のコイル40の両側に配置され、鉄心31の径方向に延びる一対の径方向延在部51bと、鉄心31の径方向において複数のコイル40の両側に配置され、鉄心31の周方向に延びる一対の周方向延在部51aとを有している。
インシュレータ50の曲折部52は、外周部51からコイル40の間へ延びて先端52aで折り返されている。また、本実施形態の回転電機100の固定子30において、曲折部52は、外周部51の一対の径方向延在部51bのうち一方の径方向延在部51bから他方の径方向延在部51bまでコイル40の間を横断している。曲折部52は、外周部51の一方の径方向延在部51bから延びて、先端52aが他方の径方向延在部51bに接していることが好ましいが、先端52aと他方の径方向延在部51bとの間に間隙を有してもよい。この場合、曲折部52の先端52aは、2つのコイル40の間を横断して2つのコイル40のR形状の角部の間の隙間に達していることが好ましい。
以下、本実施形態の回転電機100の固定子30の作用について説明する。
前述のように、本実施形態の回転電機100の固定子30は、スロット32と、該スロット32に配置された複数のコイル40と、スロット32内でコイル40の周囲に配置されたインシュレータ50と、を備えている。そして、インシュレータ50は、複数のコイル40を囲む外周部51と、該外周部51からコイル40の間へ延びて先端52aで折り返された曲折部52と、を有している。そのため、図3および図4に示すように、たとえばシート状の絶縁紙を折り曲げて成形したシンプルな構成のインシュレータ50をスロット32に配置することで、折り返されて形状が安定した曲折部52とその周囲の外周部51とによって、形状が安定した複数の筒状の空間を画定することができる。
より具体的には、インシュレータ50は、細長い長方形断面の平たい筒状の外形を画定する外周部51と、外周部51によって画定された筒状の空間を固定子30の鉄心31の径方向において複数の矩形筒状の空間に区画する曲折部52とを有している。そして、曲折部52は、先端52aでインシュレータ50が折り返されて二重に重ねられた状態で固定子30の鉄心31の周方向に延び、二重になったインシュレータ50がそれぞれ曲折部52の基端で鉄心31の径方向内側と外側に延びる外周部51に連続している。
このような構成により、曲折部52は、固定子30の鉄心31の径方向、周方向および軸線L方向に作用する力に対する剛性が向上し、固定子30の鉄心31の径方向、周方向および軸線L方向への変形や変位が抑制される。また、外周部51は、複数の曲折部52によって補強され、固定子30の鉄心31の径方向および周方向への変形や変位が抑制される。そのため、インシュレータ50の曲折部52とその周囲の外周部51とによって、形状が安定した複数の筒状の空間を画定することができる。
そして、この形状が安定したインシュレータ50の複数の筒状の空間に、固定子30の鉄心31の軸線L方向から複数のコイル40を容易に挿通させることができる。これにより、スロット32内のコイル40の外周面の概ね全体をインシュレータ50によって覆うことができ、スロット32とコイル40との間およびコイル40同士の間をインシュレータ50によって容易に絶縁することができる。したがって、本実施形態の回転電機100の固定子30によれば、従来よりも部品構成を簡略化させ、製造を容易にして生産性が向上した回転電機100の固定子30を提供することができる。
また、スロット32にインシュレータ50を配置した状態でスロット32にコイル40を配置することで、コイル40がスロット32に接触して傷つくのを防止することができ、短絡や地絡等の不具合をより確実に防止することができる。また、コイル40の間に配置される曲折部52の先端52aでインシュレータ50が折り返され、コイル40の間にインシュレータ50が二重に重ねられた状態で配置されるので、隣接するコイル40の間をより確実に絶縁することができる。また、スロット32内で隣接する異相のコイル40の間のインシュレータ50の沿面距離を確保し、絶縁性を向上させることができる。なお、曲折部52の基端から先端52aまでの長さは、コイル40の電圧に応じて調整することができる。
また、スロット32の壁面と複数のコイル40との間に配置されるインシュレータ50の外周部51が二重になるのを極力回避して、コイル40の占積率を向上させることができる。さらに、コイル40の間に配置される曲折部52においてインシュレータ50を二重にして、コイル40の間の絶縁性を向上させることができる。たとえば、車両に搭載される回転電機100は、使用電圧が100Vを超えるものが多くあり、場合によってはコイル40に600V以上の電圧がかかることがある。そのため、コイル40の間の絶縁性の向上は、極めて重要である。
また、本実施形態の回転電機100の固定子30において、インシュレータ50は、図4に示すように、外周部51の周方向における両端部53,54が、スロット32の壁面32aに対向する位置で重なっている。これにより、インシュレータ50の端部53,54の向きの制御が容易になる。そのため、インシュレータ50の外周部51の周方向における両端部53,54が、コイル40の間に位置する場合と比較して、インシュレータ50によって画定される筒状の空間の形状を安定させ、コイル40の挿入時におけるインシュレータ50とコイル40との干渉をより確実に防止できる。なお、インシュレータ50の外周部51の周方向における両端部53,54の位置は、固定子30の鉄心31の径方向内側のスロット32の壁面32aに対向する位置に限定されない。
図5および図6は、それぞれ、図4に示すインシュレータ50の変形例1および変形例2を示す断面図である。
図5に示す変形例1において、インシュレータ50は、外周部51の周方向における両端部53,54が、固定子30の鉄心31の径方向外側のスロット32の壁面32bに対向する位置で重なっている。また、図6に示す変形例2において、インシュレータ50は、外周部51の周方向における両端部53,54が、固定子30の鉄心31の周方向に対向するスロット32の壁面32cの一方に対向する位置で重なっている。これら変形例1および変形例2のインシュレータ50を備える回転電機100の固定子30においても、本実施形態の回転電機100の固定子30と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態の回転電機100の固定子30は、円筒状の鉄心31を備え、スロット32は、鉄心31の内周面から鉄心31の径方向に沿って設けられている。そして、コイル40は、矩形の断面形状を有し、スロット32内で鉄心31の径方向に沿って一列に配置されている。これにより、固定子30の鉄心31に対するコイル40の配置を容易にして、固定子30の生産性を向上させることができる。また、隣接するスロット32に配置された同相のコイル40を直列に接続し、この直列に接続された同相のコイル40を単位巻線としてコイル40の接続を行うことで、コイル40の電気的なバランスを改善することができる。
また、本実施形態の回転電機100の固定子30において、曲折部52は、一対の径方向延在部51bのうち一方の径方向延在部51bから他方の径方向延在部51bまでコイル40の間を横断している。これにより、固定子30の鉄心31の径方向に隣接する2つのコイル40の互いに対向する側面の間に曲折部52を確実に配置して、これらの間をより確実に絶縁することができる。なお、曲折部52は、一方の径方向延在部51bから他方の径方向延在部51bまで、同じ向きにコイル40の間を横断する構成に限定されない。
図7は、図4に示すインシュレータ50の変形例3を示す断面図である。
図7に示す変形例3において、インシュレータ50は、一対の径方向延在部51bのうち一方の径方向延在部51bから他方の径方向延在部51bまでコイル40の間を横断する曲折部52と、他方の径方向延在部51bから一方の径方向延在部51bまでコイル40の間を横断する曲折部52とを交互に備えている。すなわち、曲折部52は、固定子30の鉄心31の径方向において、交互に逆方向にコイル40の間を横断している。この変形例3のインシュレータ50を備える回転電機の固定子30においても、本実施形態の回転電機100の固定子30と同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態の回転電機100の固定子30によれば、インシュレータ50の構成を簡略化しつつ、従来よりも生産性が向上した回転電機100の固定子30を提供することができ、回転電機100の固定子30の製造コストを削減することができる。
[実施形態2]
次に、本発明の回転電機の固定子の実施形態2について、図1から図3を援用し、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施形態2に係る回転電機の固定子の図4に相当する断面図である。
本実施形態の回転電機の固定子は、インシュレータ50の曲折部52が一対の径方向延在部51bからそれぞれコイル40の間へ延び、先端52aがコイル40の間で互いに対向している点で、前述の実施形態1の回転電機100の固定子30と異なっている。本実施形態の回転電機の固定子のその他の点は、前述の実施形態1の回転電機100の固定子30と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態の回転電機の固定子は、インシュレータ50の曲折部52が一対の径方向延在部51bからそれぞれコイル40の間へ延び、先端52aがコイル40の間で互いに対向している。互いに対向する曲折部52の先端52aは、接していることが好ましいが、わずかに隙間を有していてもよい。本実施形態の回転電機の固定子によれば、前述の実施形態1の回転電機100の固定子30と同様の効果が得られるだけでなく、絶縁被膜が比較的に薄くなりやすいコイル40の角部をより確実にインシュレータ50によって覆うことができ、絶縁性および信頼性をより向上させることができる。
[実施形態3]
最後に、本発明の回転電機の固定子の実施形態3について、図1および図2を援用し、図9および図10を用いて説明する。図9は、本発明の実施形態3に係る回転電機の固定子の図3に相当する拡大図である。図10は、本発明の実施形態3に係る回転電機の固定子の図4に相当する断面図である。
本実施形態の回転電機の固定子は、鉄心31の径方向においてスロット32内に2つのインシュレータ50A,50Bが配置されている点で、前述の実施形態1の回転電機100の固定子30と異なっている。本実施形態の回転電機の固定子のその他の点は、前述の実施形態1の回転電機100の固定子30と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図9および図10に示すように、本実施形態の回転電機の固定子は、鉄心31の径方向においてスロット32内に2つのインシュレータ50A,50Bが配置されている。一方のインシュレータ50Bは、鉄心31の径方向における内周側のスロット32の壁面32aに接し、他方のインシュレータ50Aは、鉄心31の径方向における外周側のスロット32の壁面32bに接している。
一方のインシュレータ50Bは、鉄心31の径方向における内周側の2本のコイル40を囲む外周部51と、該外周部51からコイル40の間へ延びて先端52aで折り返された曲折部52と、を有している。他方のインシュレータ50Aは、鉄心31の径方向における外周側の4本のコイル40を囲む外周部51と、該外周部51からコイル40の間へ延びて先端52aで折り返された曲折部52と、を有している。
本実施形態の回転電機の固定子によれば、前述の実施形態1の回転電機100の固定子30と同様の効果を得ることができる。また、固定子の鉄心31の径方向に配置されるコイル40の数が増加しても、インシュレータ50A,50Bを2つに分けることで、インシュレータ50A,50Bの製造時にインシュレータ50A,50Bを折り曲げる工程が増加するのを抑制し、生産性が低下するのを抑制することができる。また、1つのインシュレータ50A,50Bの外周部51によって、2本以上のコイル40を囲むことで、インシュレータ50A,50Bをスロット32に配置する工程において生産性が低下するのを抑制することができる。
また、一方のインシュレータ50Bは、鉄心31の径方向における内周側のスロット32の壁面32aに接し、他方のインシュレータ50Aは、鉄心31の径方向における外周側のスロット32の壁面32bに接することで、各インシュレータ50A,50Bをスロット32の3方向の壁面で支持することができる。これにより、インシュレータ50A,50Bの筒状の空間にコイル40を挿通させる工程において、インシュレータ50A,50Bの鉄心31が軸線L方向にずれるのを防止して生産性が低下するのを抑制することができる。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
たとえば、前述の実施形態では、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載され、モータまたは発電機として使用される回転電機の固定子について説明した。しかし、本発明に係る回転電機の固定子は、たとえば、停止中の車両のエンジンを始動する駆動系に使用される回転電機に用いることもできる。また、前述の実施形態では、コイルとして巻線に平角線を用いたセグメントコイルを用いて説明したが、コイルの巻線は平角線に限定されない。また、本発明に係る回転電機の固定子は、永久磁石型の回転電機だけでなく、誘導型の回転電機に使用することも可能である。
また、前述の実施形態では、回転電機として、固定子鉄心の内周側に開口するように設けられた多数のスロット内にコイルを挿入し、固定子のコイルに交流電流を供給することで、固定子に回転磁界を発生し、この回転磁界により回転子に回転トルクを発生する回転電機について説明した。このような回転電機としては、例えばかご型回転子を使用した誘導電動機や回転子に永久磁石を有する同期電動機があり、これらは発電機としても利用できる。本発明に係る固定子を適用可能な回転電機には、このような誘導電動機と同期電動機の双方を含むことができる。誘導型の回転電機の一例としては、たとえば磁極数が8極のものがある。
30…固定子、31…鉄心、32…スロット、32a…壁面、32b…壁面、32c…壁面、40…コイル、50…インシュレータ、50A…インシュレータ、50B…インシュレータ、51…外周部、51a…周方向延在部、51b…径方向延在部、52…曲折部、52a…先端、53…端部、54…端部、100…回転電機

Claims (7)

  1. スロットと、該スロットに配置された複数のコイルと、前記スロット内で前記コイルの周囲に配置されたインシュレータと、を備えた回転電機の固定子であって、
    前記インシュレータは、前記複数のコイルを囲む外周部と、該外周部から前記コイルの間へ延びて先端で折り返された曲折部と、を有し、
    前記インシュレータが前記スロット内に配置された状態で前記コイルを挿通させる筒状の空間が前記外周部と前記曲折部とによって画定されることを特徴とする回転電機の固定子。
  2. 前記インシュレータは、前記外周部の周方向における両端部が、前記スロットの壁面に対向する位置で重なることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
  3. 円筒状の鉄心を備え、
    前記スロットは、前記鉄心の内周面から前記鉄心の径方向に沿って設けられ、
    前記コイルは、矩形の断面形状を有し、前記スロット内で前記鉄心の径方向に沿って一列に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
  4. 前記外周部は、前記鉄心の周方向において複数の前記コイルの両側に配置され前記鉄心の径方向に延びる一対の径方向延在部と、前記鉄心の径方向において複数の前記コイルの両側に配置され前記鉄心の周方向に延びる一対の周方向延在部とを有することを特徴とする請求項3に記載の回転電機の固定子。
  5. 前記曲折部は、一対の前記径方向延在部のうち一方の前記径方向延在部から他方の前記径方向延在部まで前記コイルの間を横断することを特徴とする請求項4に記載の回転電機の固定子。
  6. 前記曲折部は、一対の前記径方向延在部からそれぞれ前記コイルの間へ延び、前記先端が前記コイルの間で互いに対向することを特徴とする請求項4に記載の回転電機の固定子。
  7. 前記鉄心の径方向において前記スロット内に2つの前記インシュレータが配置され、
    一方の前記インシュレータは、前記径方向における内周側の前記スロットの壁面に接し、他方の前記インシュレータは、前記径方向における外周側の前記スロットの壁面に接することを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
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