JP6718932B2 - 13族元素窒化物層の分離方法 - Google Patents

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Description

本発明は、13族元素窒化物層を支持基板から分離する方法に関するものである。
サファイア基板やGaNテンプレートなどの支持基板上にGaN結晶を成長させて複合基板を得た後、レーザリフトオフなどの方法でGaN結晶を支持基板から分離することによって、自立型のGaN結晶を得ることが知られている。この場合、従来は、複合基板をメタル基板などの別体の基台に仮接合し、その状態でレーザ光を照射していた(非特許文献1)。非特許文献1では、サファイア基板上にHVPEにより窒化ガリウム膜を成長させた後、金属結合剤を使用して窒化ガリウム膜をヒータに装着し、約600℃に加熱して、反りを小さくした状態で、レーザ光をサファイア基板に照射して、サファイア基板から窒化ガリウム膜を分離する。
また、サファイア基板と窒化ガリウム膜との間の熱膨張率差によって複合基板が反るため、この反りを低減させるために、複合基板を600℃以上の温度に加熱して反りを緩和してから、レーザ光を照射していた(特許文献1)。これは、サファイアと窒化ガリウムとの界面に発生する応力を低減させて、剥離の際の不均一な変動を抑制するためである。この際、サファイア基板外周部に生成した多結晶窒化ガリウムを除去してレーザ光を照射することが好ましいとされている。
また、本出願人は、サファイア基板上に窒化ガリウム層を設けるのに際して、窒化ガリウム層の育成初期にインクルージョン含有層を設けることで、レーザリフトオフ時のクラック抑制に成功している(特許文献2)。
JJAP 38(1999)1347-4065_3A_L217
特許4227315 WO 2013/021804 A 特開2009-111423
非特許文献1記載のように、窒化ガリウム層を基台に対して金属接合剤などで接合し、サファイア基板側からレーザ光を照射して分離を行う場合には、窒化ガリウム層を基台に対して接合する手間が必要であり、またレーザ加工後に窒化ガリウム層を基台からも分離する必要がある。更に、窒化ガリウム層に付着した金属結合剤を除去する必要もある。金属結合剤の代りに樹脂を用いる方法もあるが、同様の問題がある。
特許文献1記載の方法では、基台に対して複合基板を接合することなく、複合基板を600〜1000℃に加熱して反りを減らし、レーザ光をサファイア基板側に照射することで窒化ガリウム層をサファイア基板から分離する。このため、複合基板を基台に対して接着したり、基台から分離するプロセスが不要になっている。
しかし、本発明者が更に詳しく検討してみたところ、次の問題が明らかになった。すなわち、複合基板を熱処理してからレーザリフトオフ法を適用した場合にも、支持基板から窒化ガリウム層を剥離するときに窒化ガリウム層にクラックが入ることがあり、特に窒化ガリウム層の端部近くでクラックが入ることが多かった。このクラックが歩留り低下の原因となっていた。
本発明の課題は、支持基板に対してレーザ光を照射して13族元素窒化物層を分離するのに際して、複合基板を基台に対して接合したり、基台から分離する工程を不要とし、かつ分離の際の13族元素窒化物層のクラックを抑制することである。
本発明に係る方法では、支持基板と、この支持基板上に設けられた13族元素窒化物層とを備えており、反りを有する複合基板を、基台とレーザ光透過性板との間に挟み、この際レーザ光透過性板側に支持基板を配置し、基台とレーザ光透過性板との間に応力を加えて複合基板を基台とレーザ光透過性板との間に拘束した状態でかつ前記複合基板の前記反りを矯正せずにレーザ光透過性板側からレーザ光を照射することで支持基板と13族元素窒化物層との界面の結晶格子結合を分解し、この際前記13族元素窒化物層を拘束した状態で前記13族元素窒化物が前記支持基板から空間的に剥離してトワイマン効果によって反ることを抑制し、この後に前記13族元素窒化物層を拘束した状態を解除することで前記13族元素窒化物層を支持基板から空間的に分離することを特徴とする。
本発明者は、複合基板を熱処理してからレーザリフトオフ法を適用した場合にも、支持基板から窒化ガリウム層を剥離するときに窒化ガリウム層にクラックが入る原因について調査した。このクラックは窒化ガリウム層の周縁部に多く見られた。
この原因について、以下のように推定した。図4の模式図を参照しつつ述べる。すなわち、支持基板2の表面2a上上に13族元素窒化物層3を形成して複合基板1を作製した場合、複合基板1には、熱膨張率差に起因する反りがある。ここで、外周側から順番にレーザ光を照射し、13族元素窒化物層3を剥離させていく。Pは照射済み領域であり、Nは未照射領域である。剥離は照射済み領域Pから順に進行していく。14は剥離によって生じた空隙である。
ところが、13族元素窒化物層の外周側の照射済み領域から剥離していく際に、13族元素窒化物層3のうち剥離した部分13では、レーザ光によるダメージによるトワイマン効果によって、複合基板の反りとは逆方向に向かって反りが発生する。一方、支持基板2の剥離部分12ではトワイマン効果の影響は少ない。この結果、13族元素窒化物層3のうち、剥離部分13と剥離していない部分との境界付近の湾曲が大きくなり、曲げ強度が集中する。この集中した曲げ強度に耐えきれなくなった部分15にクラックが発生するものと考えられる。
本発明者は、こうした知見に立脚し、反りを有する複合基板を、基台とレーザ光透過性板との間に挟み、基台とレーザ光透過性板との間に応力を加えて複合基板を基台とレーザ光透過性板との間に拘束した状態で、レーザ光透過性板に対してレーザ光を照射することで支持基板と13族元素窒化物層との界面の結晶格子結合を分解した。
すなわち、支持基板と13族元素窒化物層との界面には、支持基板を構成する結晶の格子と13族元素窒化物の格子とが結晶格子結合を形成している。レーザ光を支持基板側に照射することによって、13族元素窒化物が13族元素金属と窒素とに分解し、結晶格子結合が分解される。これによって、レーザ光を照射して13族元素窒化物層、特にその周縁部において、界面における結晶格子結合の分解が生じたときに、13族元素窒化物層が拘束されていることから、13族元素窒化物が支持基板から空間的に剥離してトワイマン効果によって逆方向へと反ることを抑制できる。この後に拘束を解除することで、13族元素窒化物層を支持基板から空間的に分離することができる。この結果、トワイマン効果による逆方向への反りに起因するクラックを防止することに成功し、本発明に到達した。
(a)は、複合基板1を示す模式図であり、(b)は、複合基板1を保持装置4にセットした状態を示す模式図である。 保持装置4によって複合基板を加圧し、反りを矯正しながら拘束した状態を示す模式図である。 (a)は、他の実施形態に係る保持装置4Aに複合基板1をセットした状態を示す模式図であり、(b)は、保持装置4Aによって複合基板1の反りを矯正しないで拘束した状態を示す模式図である。 支持基板1から13族元素窒化物層3をレーザ光照射によって剥離するときに、13族元素窒化物層にクラック15が発生する原理について説明する模式図である。 (a)は、複合基板の反りの測定法を説明するための模式図であり、反りがプラスの場合を示す。(b)は、複合基板の反りの測定法を説明するための模式図であり、反りがマイナスの場合を示す。 保持装置4に複合基板を拘束して保持した状態でレーザ光の照射を行っている状態を示す模式図である。 複合基板に対するレーザ光の走査パターンの一例を示す。
(複合基板)
本発明においては、支持基板と、この支持基板上に設けられた13族元素窒化物層とを備えており、反りを有する複合基板を用いる。
図1(a)に示す例では、複合基板1は、支持基板2と支持基板2の表面2a上に設けられた13族元素窒化物層3を有する。
支持基板を構成する材質は限定されないが、サファイア、AlNテンプレート、GaNテンプレート、GaN自立基板、シリコン単結晶、SiC単結晶、MgO単結晶、スピネル(MgAl)、LiAlO、LiGaO、LaAlO,LaGaO,NdGaO等のペロブスカイト型複合酸化物、SCAM(ScAlMgO)を例示できる。また組成式〔A1−y(Sr1−xBa〕〔(Al1−zGa1−u・D〕O(Aは、希土類元素である;Dは、ニオブおよびタンタルからなる群より選ばれた一種以上の元素である;y=0.3〜0.98;x=0〜1;z=0〜1;u=0.15〜0.49;x+z=0.1〜2)の立方晶系のペロブスカイト構造複合酸化物も使用できる。
支持基板2の表面2aには、13族元素窒化物層3を直接形成できるが、表面2a上に種結晶膜を形成し、種結晶膜上に13族元素窒化物層3を形成することもできる。種結晶膜と13族元素窒化物層3とが同材質で一体化していてもよい。
種結晶は、13族元素窒化物結晶層を育成可能な限り、特に限定されない。ここでいう13族元素とは、IUPACが策定した周期律表による第13族元素のことである。13族元素は、具体的にはガリウム、アルミニウム、インジウム、タリウム等である。この13族元素窒化物は、特に好ましくは、GaN、AlN、GaAlNである。
種結晶膜は、一層であってよく、あるいは支持基板側にバッファ層を含んでいて良い。
種結晶膜の形成方法は気相成長法が好ましいが、有機金属化学気相成長(MOCVD: Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法、パルス励起堆積(PXD)法、MBE法、昇華法を例示できる。有機金属化学気相成長法が特に好ましい。また、成長温度は、950〜1200℃が好ましい。
13族元素窒化物結晶層の育成方向は、ウルツ鉱構造のc面の法線方向であってよく、またa 面、m面それぞれの法線方向であってもよい。
種結晶の表面における転位密度は、種結晶上に設ける13族元素窒化物結晶層の転位密度を低減するという観点から、低いことが望ましい。この観点からは、種結晶の転位密度は、7×10cm−2以下が好ましく、5×10cm−2以下が更に好ましい。また、種結晶の転位密度は品質の点からは低いほど良いので、下限は特にないが、一般的には、5×10cm−2以上であることが多い。
13族元素窒化物層の製法は特に限定されないが、有機金属化学気相成長(MOCVD: Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法、パルス励起堆積(PXD)法、MBE法、昇華法などの気相法、フラックス法などの液相法を例示できる。
この結晶層を構成する13族元素窒化物において、13族元素とは、IUPACが策定した周期律表による第13族元素のことである。13族元素は、具体的にはガリウム、アルミニウム、インジウム、タリウム等である。この13族元素窒化物は、特に好ましくは、GaN、AlN、GaAlNである。また、添加剤としては、炭素や、低融点金属(錫、ビスマス、銀、金)、高融点金属(鉄、マンガン、チタン、クロムなどの遷移金属)が挙げられる。
好適な実施形態においては、13族元素窒化物結晶層をフラックス法によって育成する。この際、フラックスの種類は、13族元素窒化物を生成可能である限り、特に限定されない。好適な実施形態においては、アルカリ金属とアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むフラックスを使用し、ナトリウム金属を含むフラックスが特に好ましい。
フラックスには、13族元素の原料物質を混合し、使用する。この原料物質としては、単体金属、合金、化合物を適用できるが、13族元素の単体金属が取扱いの上からも好適である。
融液における13族元素窒化物/フラックス(例えばナトリウム)の比率(mol比率)は、本発明の観点からは、高くすることが好ましく、18mol%以上が好ましく、25mol%以上が更に好ましい。ただし、この割合が大きくなり過ぎると結晶品質が落ちる傾向があるので、40mol%以下が好ましい。
(複合基板の反り)
このようにして得られた複合基板1には、たとえばフラックス法による成膜と冷却に起因する反りが生じている。その反りは、一般に、図1(a)に模式的に示すように、支持基板を上にしたときに、下側に凸形状となっていることが多い。こうした反りは、加熱によっては解消せず、レーザ光を照射したときにトワイマン効果によって13族元素窒化物層内にクラックを生じさせることを見いだした。
複合基板の反りは、特許文献3(特開2009−111423)に記載されている方法で測定される値である。
反りについて、図5を参照しつつ述べる。
ここで、図5(a)に示す例では、複合基板1の支持基板2の底面2bが凹状となり、13族元素窒化物層3の表面3aが凸状となるように、複合基板が反っている。この反りを正(+の記号で示す)とする。また、図5(b)に示す例では、複合基板1の支持基板2の底面2bが凸状となり、13族元素窒化物層3の表面3aが凹状となるように、複合基板が反っている。この反りを負(−の記号で示す)とする。複合基板1の底面2bが形成する曲面を「反り曲面」とする。
反り曲面2bと平面との距離の平均値が最も小さくなるような平面を想定し、この平面を最適平面Hとする。そして、この反り曲面2bと最適平面Hとの距離を測定する。すなわち、所定の測定範囲について、底面2bのうち最適平面H上にある点をzpとする。また、底面2bのうち最適平面Hと最も離れた点をzvとする。点zvと最適平面Hとの距離を反りW(R)とする。21、22は、試料と最適平面Hとの隙間である。20は定盤である。
言い換えると、反りW(R)は、底面2bにおいて、最適平面Hに最も近い点zpと最も遠い点zvとの高低差である。
複合基板の25℃における反りの絶対値は、長さ5cm当たり、+300〜+700μmであることが多い。
複合ウエハーの反りは、レーザ変位計によって測定できる。レーザ変位計とは、レーザ光を複合ウエハーの底面に照射することにより、背面の変位を測定する装置をいう。レーザの波長を633nmとし、測定方式には表面粗度に応じてレーザフォーカス方式、光干渉方式を用いることができる。
(複合基板のセッティング)
本発明では、反りを有する複合基板を、基台とレーザ光透過性板との間に挟む。この際、レーザ光透過性板側に支持基板を配置し、基台の表面とレーザ光透過性板の表面との間に応力を加え、複合基板を基台とレーザ光透過性板との間に拘束した状態とする。そして、この状態でレーザを照射し、13族元素窒化物層と支持基板との界面の結晶格子結合を分解する。
ここで、基台とレーザ光透過性板との間に応力を加え、複合基板を基台とレーザ光透過性板との間に拘束した状態とするが、これは複合基板の支持基板の底面と13族元素窒化物層の表面との双方に応力が加わり、この応力によって複合基板が変形しない状態で固定されていることを意味する。この際、複合基板と基台とを接合する必要はなく、複合基板とレーザ光透過性板とを接合する必要はない。また、基台とレーザ光透過性板との間に応力を加えるとは、レーザ光透過性板や複合基板の自重を除き、レーザ光透過性板と基材との間に機械的な応力を印加することを意味する。
好適な実施形態においては、基台とレーザ光透過性板との間に応力を加えることによって、複合基板の反りを矯正した状態で保持する。図1(b)、図2はこの実施形態に係るものである。
本実施形態では、保持装置4を使用する。保持装置4においては、治具18に基台5とレーザ光透過性板7とが取り付けられている。基台5の表面5a上にクッション材6を載置し、その上に複合基板1を乗せている。複合基板と基台5とは接合されていない。そして、複合基板1上にレーザ光透過性板7を乗せる。この際、13族元素窒化物層3の表面3aが基台5に対向しており、支持基板2の底面2bがレーザ光透過性板7の表面7aに対向している。
複合基板1は、例えば図1(a)に示すように反っている。この一方、基台5の表面5a、レーザ光透過性板7の表面7aは平坦面である。このため、加圧前の状態では、レーザ光透過性板7の表面7aと支持基板2の底面2bとの間に隙間15Aが形成されており、また13族元素窒化物層3の表面3aとクッション材6との間にも隙間15Bが形成されている。
次いで、図2に矢印Aで示すように、レーザ光透過性板7を基台5へと向かって動かす。この際には、レーザ光透過性板7を動かさずに基台5をレーザ光透過性板7へと向かって動かしても良いし、レーザ光透過性板7と基台5との両方を動かしても良い。この結果、表面5aと7aとの間隔が小さくなり、複合基板が厚さ方向に向かって圧縮される。
ここで、レーザ光透過性板7の表面7a、基台5の表面5aが平坦なので、これに合わせて複合基板1の反りが矯正され、反りが小さくなり、複合基板1Aの状態になる。この結果、複合基板1Aは、レーザ光透過性板7基台5とによって変形しないように拘束される。
保持においては、複合基板1を拘束保持することによって複合基板1の反りを矯正し、複合基板1Aの状態とする。この際、複合基板の反りを完全に矯正して反りをゼロとする必要はなく、部分的な矯正でも良い。すなわち、拘束前の反りよりも拘束時の反りが小さくなっていればよい。
複合基板の反りが少ないほうがクラックがより生じにくいので、(拘束時の複合基板の反りの絶対値)/(拘束前の複合基板の反りの絶対値)は、0.5以下であることが好ましく、0.25以下であることが更に好ましい。また、(拘束時の複合基板の反りの絶対値)は、長さ5cm当たり、300μm以下であることが好ましく、150μm以下であることが更に好ましい。
また、複合基板の反りを矯正する本実施形態においては、レーザ光透過性板の表面7a、基台5の表面5aがいずれも平坦面である。しかし、レーザ光透過性板の表面、基台の表面は平坦でなくても良く、突起、凹部が形成されていてもよい。この場合、加圧時に複合基板の反りが部分的に矯正されれば足りる。
また、好適な実施形態においては、複合基板の反りを矯正せずに複合基板を拘束した状態で、レーザ光透過性板に対してレーザ光を照射する。図3(a)(b)はこの実施形態に係るものである。
本実施形態では、保持装置4Aを使用する。保持装置4Aにおいては、治具18に基台5Aとレーザ光透過性板7Aとが取り付けられている。基台5Aの表面5a上にクッション材6を載置し、その上に複合基板1を乗せている。複合基板と基台5Aとは接合されていない。そして、複合基板1上にレーザ光透過性板7Aを乗せる。この際、13族元素窒化物層3の表面3aが基台5に対向しており、支持基板2の底面2bがレーザ光透過性板7の表面7aに対向している。
複合基板1は、例えば図1(a)に示すように反っている。レーザ光透過性板7Aの表面7aには突起11が形成されており、基台5Aの表面5aには凹部9が形成されている。これら突起11、凹部9は、それぞれ、複合基板の反りを吸収できるような形状となっている。本例では、レーザ光透過性板上にクッション材6が載っていることから、クッション材6と基台表面5aとの間に隙間10が形成されている。
次いで、図3(b)に矢印Aで示すように、レーザ光透過性板7Aを基台5Aへと向かって動かす。この際には、レーザ光透過性板7Aを動かさずに基台5Aをレーザ光透過性板7Aへと向かって動かしても良いし、レーザ光透過性板7Aと基台5Aとの両方を動かしても良い。この結果、表面5aと7aとの間隔が小さくなる。
ここで、レーザ光透過性板7の表面7aには突起11が設けられてり、基台5の表面5aには凹部9が設けられている。そして、突起11、凹部9は、それぞれ複合基板の反りと同じ形態に形成されている。この結果、本例では、複合基板1の反りは矯正されず、加圧前と変化しないか、あるいは反りの変化が少ない。この状態で、反りの矯正されていない複合基板1は、レーザ光透過性板7Aと基台5Aとによって変形しないように拘束される。反りを矯正しなくとも、複合基板1の底面2b、表面3aの全体にわたって加圧される結果、複合基板1の変形は抑制されている。
上記したように、本発明においては、複合基板が加圧され、変形しないように拘束保持されている結果、図4に示すように複合基板の一部領域Pにレーザ光が照射されたときに、13族元素窒化物層3の周縁部(照射済み領域)13および支持基板の周縁部12のトワイマン効果による変形が抑えられ、この結果としてクラック15が抑制される。
基台の材質は特に限定されないが、アルミナないしSiCセラミックスが好ましい。
レーザ光透過性板は、レーザリフトオフ法に用いる波長のレーザ光に対する直線透過率が50%以上の板が好ましく、75%以上の板が更に好ましい。また、レーザ光透過性板の材質は、合成石英ガラス、サファイアが好ましい。
好適な実施形態においては、13族元素窒化物層と基台の表面との間にクッション材を挟む。これによって、加圧時に13族元素窒化物層表面に損傷が生じることを防止する。こうしたクッション材としては、グラスファイバーウール、フッ素ゴム(バイトン)、テフロン(登録商標)(カルレッツ)を例示できる。
また、複合基板を保持するときに、複合基板を加熱することによって、反りを緩和し、あるいは反りの矯正に伴う応力を緩和することができる。こうした加熱温度としては、100〜500℃が好ましく、200〜300℃が更に好ましい。ただし、こうした加熱は必須ではなく、室温でも実施できる。
(レーザ光の照射)
前述のように複合基板を保持しつつ、レーザ光をレーザ光透過性板側から照射して13族元素窒化物と支持基板との界面の結晶格子結合を分解する。
レーザ光の波長は、剥離するべき13族元素窒化物の材質に合わせて適宜選択するが、一般的には380nm以下であり、好ましくは150〜380nmである。また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、第3高調波Nd:YAGレーザーなどを使用できる。
例えば、以下の材質を剥離させるためには、以下の波長のレーザー光を利用することが好ましい。
GaN: 200〜 360 nm
AlN: 150〜 200 nm
GaAlN: 200〜 250 nm
レーザリフトオフを行う方式も特に限定されない。例えば、レーザー発振器から放出されたレーザービームを、ビームエキスパンダ、柱状レンズないし凸レンズ、ダイクロイックミラーおよび集光レンズを介して集光レーザービームとし、XYステージ上の複合基板に照射する。柱状レンズと集光レンズを組み合わせることにより、焦点距離をx方向とy方向とで異なるようにし、例えばx方向において強くフォーカスされ、y方向にはデフォーカスされた楕円形レーザー光を形成することもできる。
また、ビームスキャナを用いたレーザリフトオフ装置も利用できる。すなわち、レーザー発振器から放出されたレーザービームを、ビームエキスパンダ、柱状レンズないし凸レンズ、反射鏡、ガルバノスキャナおよびfθレンズを介して集光レーザービームとし、移動するXYステージ上の複合基板に照射する。
図6の例では、レーザ光源25から発振されたレーザ光26Aをピンホール27に通し、光ビーム26Bを絞る。次いで、光ビーム26Bをレンズ28によって集光してビーム26Cとし、反射板29によって反射させ、反射光26Dを矢印Bのようにレーザ光透過性板へと向かって照射する。この光はレーザ光透過性板7を透過し、複合基板1Aに入射する。
使用するレーザ光は、複合基板の底面全面をスキャニングしながら照射することができる。あるいは、レーザ光の位置を固定し、保持装置4のほうを移動させることによって、複合基板の底面をスキャンすることもできる。
例えば図7の例では、複合基板1A上で、矢印Cのようにレーザ光スポット29を縦横に移動させ、スキャンしている。ここで、各スポット29の直径は1〜5mmが好ましい。また、スポット29の移動速度は、パルスレーザーの繰り返し周波数にもよるが、10〜50mm/secが好ましい。
複合基板上でレーザ光スポットを移動させる際には、隣接するスポット29が重なり合うことが好ましく、これによって未照射領域を無くすることができる。
レーザ光のパワーは、加工対象や温度、さらにはレーザ発振波長、パルス幅などに依存するが、一般的には0.1〜0.5J/cmとすることができる。
(実施例1)
図1、図2、図6、図7を参照しつつ説明した方法でレーザリフトオフ法を実施した。
具体的には、直径55mmのサファイアからなる支持基板2上に窒化ガリウム層3を厚さ350ミクロン成長させた(図1)。得られた複合基板1の反りは、+300μmであった。
複合基板1を保持装置4にセットした。クッション材6は、天然ゴム製のクッションとし、基台5はステンレス製とし、基台5の表面5aは平坦面とした。レーザ光透過性板7は、厚さ3mmのサファイア板とした。このレーザ光透過性板を治具によって加圧し、押さえつけて固定した(図2参照)。このときの複合基板の反りは、150μm程度である。
この状態で保持装置4を駆動ステージの上に配置し、フラッシュランプ励起QスイッチNd:YAGレーザーの第三高調波(波長355nmの紫外レーザ光)のパルス(繰り返し周波数10Hz、パルス幅5ns)を上から照射しつつステージを動かして、複合基板の端から順にスキャンした(図7参照)。レーザ光のビームサイズは、ピンホールと凸レンズを用いて整形、集光し、複合基板上で直径3.0mmの円形となるように調整した(図7)。1パルスのエネルギーは、0.25mJ/cm2であった。パルスの1ショットが少しだけ重なるようにスキャンした。すなわち、速度は27mm/secとした。
スキャンが終わった後、複合基板を40℃のお湯に漬けて、サファイアと窒化ガリウムの界面に生じた金属ガリウム(融点29℃)を溶かし、サファイアと窒化ガリウムを分離したものを得た。窒化ガリウム層、サファイア基板のいずれにも、クラックの発生はなかった。
その後、分離した窒化ガリウム層の外周部をベベリング加工し、両面を研磨加工して、直径2インチ(50.8mm)、厚さ300μmの自立GaNウエハーを得た。
(実施例2)
実施例1と同様にして窒化ガリウム層を支持基板から分離した。
ただし、本例においては、図3(a)に示すように、複合基板の反りに対応した突起11および凹部9を設けることで、複合基板の加圧時に複合基板の反りを収容し、反りの矯正を行わずに拘束した。
スキャンが終わった後、複合基板を40℃のお湯に漬けて、サファイアと窒化ガリウムの界面に生じた金属ガリウム(融点29℃)を溶かし、サファイアと窒化ガリウムを分離したものを得た。窒化ガリウム層、サファイア基板のいずれにも、クラックの発生はなかった。
その後、分離した窒化ガリウム層の外周部をベベリング加工し、両面を研磨加工して、直径2インチ(50.8mm)、厚さ300μmの自立GaNウエハーを得た。
(比較例1)
図1(b)のように保持装置4に複合基板1をセットするとき、レーザ光透過性板7を複合基板1上に配置するが、レーザ光透過性板7から複合基板へと応力を加えることなくセットした。この結果、レーザ光透過性板7と複合基板との間に隙間15Aが残り、またクッション材6と複合基板1との間に隙間15Bが残っている。その他は実施例1と同様にして窒化ガリウム層を支持基板から分離した。
スキャンが終わった後、複合基板を40℃のお湯に漬けて、サファイアと窒化ガリウムの界面に生じた金属ガリウム(融点29℃)を溶かし、サファイアと窒化ガリウムを分離したものを得た。分離はできたが、窒化ガリウム層、支持基板の両方の外周部にクラックが発生してしまった。この理由は、図4を参照しつつ説明したトワイマン効果によるものと考えられる。
(比較例2)
特許文献1(特許4227315)記載の方法によってレーザリフトオフ法を実施した。具体的には、実施例1のようにして複合基板1を得た。基台5の平坦面5a上に、グラスウールからなる耐熱性のクッション6を設置し、その上に複合基板1を設置した。次いで、レーザ光透過性板7を複合基板1上に配置するが、レーザ光透過性板7から複合基板へと応力を加えることなくセットした。この結果、レーザ光透過性板7と複合基板との間に隙間15Aが残り、またクッション材6と複合基板1との間に隙間15Bが残っている。この状態で600℃に加熱した。その他は実施例1と同様にして窒化ガリウム層を支持基板から分離した。
スキャンが終わった後、複合基板を40℃のお湯に漬けて、サファイアと窒化ガリウムの界面に生じた金属ガリウム(融点29℃)を溶かし、サファイアと窒化ガリウムを分離したものを得た。分離はできたが、窒化ガリウム層、支持基板の両方の外周部にクラックが発生してしまった。この理由は、図4を参照しつつ説明したトワイマン効果によるものと考えられる。

Claims (4)

  1. 支持基板と、この支持基板上に設けられた13族元素窒化物層とを備えており、反りを有する複合基板を、基台とレーザ光透過性板との間に挟み、この際前記レーザ光透過性板側に前記支持基板を配置し、前記基台と前記レーザ光透過性板との間に応力を加えて前記複合基板を前記基台と前記レーザ光透過性板との間に拘束した状態でかつ前記複合基板の前記反りを矯正せずに、前記レーザ光透過性板側からレーザ光を照射することで前記支持基板と前記13族元素窒化物層との界面の結晶格子結合を分解し、この際前記13族元素窒化物層を拘束した状態で前記13族元素窒化物が前記支持基板から空間的に剥離してトワイマン効果によって反ることを抑制し、この後に前記13族元素窒化物層を拘束した状態を解除することで前記13族元素窒化物層を前記支持基板から空間的に分離することを特徴とする、13族元素窒化物層の分離方法。
  2. 前記基台の前記複合基板側の表面と前記レーザ光透過性板の前記複合基板側の表面との少なくとも一方に突起または凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 前記13族元素窒化物層と前記基台との間にクッション材を挟むことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
  4. 前記レーザ光によって前記複合基板をスキャンすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
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