実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る消火栓装置1を示す構成図である。図1は、後述する扉11を開放し、ノズル4およびホース5を引き出した状態を示している。
消火栓装置1は、例えば、トンネル内の壁面等に固定して設置され、前面に開口する扉11を備えた箱形の消火栓箱10を備えている。消火栓箱10は、内部に、ホース5が収納されている。このホース5の一端は、ノズル4に接続され、他端は、配管9を介して消火栓弁2の一端側に接続されている。また、消火栓弁2の他端は、さらに配管9を介して、ポンプ3と接続されている。
詳細は後述するが、本実施の形態1における消火栓弁2は、ノズル4側からの遠隔操作により、電気的に開閉制御が可能な電動弁に相当する。
ポンプ3は、水槽8に蓄えられた水の中に挿入されたフート弁33を備え、起動時には、フート弁33により水槽8の水を汲み上げ、配管9を介してホース5およびノズル4に加圧送水する。
消火栓箱10は、図示しないホース収納部を備え、ホース5が巻かれた状態で収納される。ホース5の一端は、ノズル4が接続されており、通常時、ノズル4は、消火栓箱10の図示しないノズルホルダに保持されている。火災時には、扉11を開放してノズル4をノズルホルダから取り外し、ホース5を消火栓箱10から引き出して使用する。
消火栓弁2は、弁体21および駆動部24を備え、弁体21は、駆動部24の動作によって開閉する。通常時、弁体21は、閉止している。
また、消火栓箱10は、送受信部13(受信部に相当)と、制御部12を備えている。送受信部13は、後述するノズル4のノズル送信部45から無線送信される消火栓弁開閉信号とアドレスを受信する機能を有している。制御部12は、送受信部13を介して受信した消火栓弁開閉信号に基づき、駆動部24を制御して弁体21を開閉する機能を有している。なお、制御部12は、当該消火栓装置1のノズル4のアドレスを記憶する図示しない記憶部を有している。
制御部12は、送受信部13を介して消火栓弁開信号(電動弁開放信号に相当)とアドレスを受信すると、記憶部が記憶するアドレスと送受信部13が受信したアドレスを比較する。そして、制御部12は、比較結果が一致すると、駆動部24に弁開信号を送信し、駆動部24を操作して弁体21を開放するとともに、送受信部13にポンプ起動信号を送信させる。
ここで、弁開信号およびポンプ起動信号は、有線にて送信してもよいし、無線にて送信してもよい。なお、記憶部が記憶するアドレスと送受信部13が受信したアドレスが一致しない場合には、制御部12は、消火栓弁開信号を破棄し、消火栓弁2を閉鎖したままにして、ポンプ起動信号も送信しない。
一方、制御部12は、送受信部13を介して、ノズル4のノズル送信部45から無線送信される消火栓弁閉信号とアドレスを受信すると、記憶部が記憶するアドレスと送受信部13が受信したアドレスを比較する。そして、制御部12は、比較結果が一致すると、駆動部24に弁閉信号を送信し、駆動部24を操作して弁体21を閉止するとともに、送受信部13にポンプ停止信号を送信させる。
ここで、弁閉信号およびポンプ停止信号は、有線にて送信してもよいし、無線にて送信してもよい。なお、記憶部が記憶するアドレスと送受信部13が受信したアドレスが一致しない場合には、制御部12は、消火栓弁閉信号を破棄し、消火栓弁2を開放したままにして、ポンプ停止信号も送信しない。
こうすることで、消火活動中に使用していない消火栓装置1の消火栓弁2が開放したり、消火活動中の消火栓装置1の消火栓弁2が閉止したりといった不具合の発生を防ぐことができる。
なお、ノズルホルダは、図示しないノズル操作検出スイッチを備えており、ノズル4がノズルホルダに保持されている場合には、送受信部13の電源がオフになっており、送受信動作を行わない。一方、ノズル4をノズルホルダから取り外すことでノズル操作検出スイッチがノズル4を取り外した状態を検出した場合には、これをトリガとしてノズル4を取り外した消火栓装置1の送受信部13の電源がオンとなり、送受信動作を開始するようになっている。また、このとき、後述するノズル制御部42の電源もオンとなる構成としてもよい。
ここで、消火栓装置1の送受信部13の電源をオンさせるためのトリガを発生する構成は、当該消火栓装置に備えられているノズル4からの放水が必要な状態において、消火栓装置1を放水可能な状態に遷移する過程で、送受信部13を起動させるための電源オン信号を出力する電源オン信号発生器に相当する。
そして、この電源オン信号発生器としては、上述したノズル操作検出スイッチの代わりに、消火栓箱10の扉11が開放したことを検出する扉開検出スイッチ51、扉11を開放してホース5を引き出した状態を検出するホース操作検出スイッチ(図示せず)、あるいは、手動操作により送受信部13の電源をオンさせるために消火栓箱10に設置された起動レバー、起動ボタン等の起動部(図示せず)などを用いることができる。
なお、ノズル操作検出スイッチ、扉開検出スイッチ51、ホース操作検出スイッチとしては、例えば、リミットスイッチを用いることができる。また、扉開検出スイッチ51としては、例えば、扉11に設置された2軸加速度センサを用いることができ、扉11が閉状態から開状態に移行することによる扉11の重力方向の変化を検知することで、扉開状態を検出することが可能となる。
これらの電源オン信号発生器は、消火栓装置1の使用状態が維持されている間、電源オン信号を出力し続けて、その間、送受信部13に電源が供給されるようにしてもよいし、一旦電源オン信号を出力すると、手動等により電源オフ操作されるまで送受信部13に電源が供給されるようにしてもよい。
上述したように、電源オン信号発生器は、送受信部13に接続される電源線を直接、開閉するように構成することもでき、また、2軸加速度センサなどを用いた場合には、制御部12でセンサによる検出結果を読み取り、検出結果に応じて、電源線に挿入された開閉接点を制御する構成とすることもできる。
こうすることで、消火活動中に使用していない消火栓装置1の送受信部13が他の消火栓装置1から発信された消火栓弁開閉信号や違法電波を受信するおそれをなくすことができる。この結果、火災時に消火栓装置1を使用した際に、使用していない消火栓装置1の消火栓弁2が開放したり、違法電波等によって、非火災時に消火栓弁2が開放したりといった誤動作による不具合の発生を防ぐことができる。
また、これらの信号を図示しないトンネル制御盤等で一元管理するようにしてもよく、そうすることで、平常時にノズルが脱落している等の不具合が発生していることを察知しやすくすることができる。
ポンプ3は、フート弁配管34を介してフート弁33に接続され、水槽8の水を、配管9を介して、後述するホース5およびノズル4に加圧送水する。ポンプ3は、ポンプ3を制御するポンプ制御部32と、送受信部13から送信されるポンプ制御信号を受信するポンプ制御信号受信部36を備え、ポンプ制御信号受信部36がポンプ起動信号を受信すると、ポンプ制御部32は、ポンプ3を起動する。
また、ポンプ制御信号受信部36がポンプ停止信号を受信すると、ポンプ制御部32は、ポンプ3を停止する。
なお、送受信部13がポンプ起動信号およびポンプ停止信号を送信する際に、記憶部に記憶しているノズル4のアドレスも送信する構成としてもよい。この場合、ポンプ制御部32が図示しないポンプ記憶部を備え、ポンプ起動信号とともに送られてきたアドレスを記憶し、その後、ポンプ停止信号とともに送られてきたアドレスと一致するアドレスを消去するようにすることで、他に使用中の消火栓装置1がある場合には、ポンプ停止信号を受け付けず、使用中に放水が止まってしまうという不具合を防ぐことができる。
つまり、ポンプ3は、トンネル内に設置された複数の消火栓装置1に対して、共通して1つ設置されるようにすることができ、かつ、複数の消火栓装置1から同時期に放水することができる。
なお、本実施の形態1では、ポンプ制御部32がポンプ3の起動と停止を制御しているが、これに限定されない。ポンプ3の起動は、ポンプ起動信号に基づきポンプ制御部32が制御するが、ポンプ3の停止は、人がポンプ制御部32を直接操作することによって停止する構成としてもよい。この場合、送受信部13は、消火栓弁閉信号を受信しても、ポンプ停止信号を送信する必要はなく、また、送受信部13は、アドレスを送信する必要もなく、ポンプ記憶部も不要である。
また、ポンプ3は、ポンプ起動信号に基づき起動する構成としているが、これに限定されず、消火栓弁2が開放することにより消火栓弁2の一次側の配管9内の圧力が低下したことを検出して起動する構成としてもよい。この場合、送受信部13に代えて、受信機能のみを有する図示しない受信部を備えていればよい。
ホース5は、彎曲してもホース径が一定以上を保つ保形ホースで構成されている。
次に、ノズル4について、図2に基づいて説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る消火栓装置1のノズル4の拡大図である。ノズル4は、所定の圧力で供給された水を所定の放水量と放水形状で放水するための放水口41を備えている。また、ノズル4は、操作部に相当する消火栓弁開ボタン43と消火栓弁閉ボタン44を備えている。
また、ノズル4は、消火栓弁開ボタン43と消火栓弁閉ボタン44が操作されると、それぞれ消火栓弁開信号と消火栓弁閉信号を無線送信するノズル送信部45を備えている。また、ノズル4は、ノズル送信部45を制御するノズル制御部42を備え、ノズル制御部42は、自身のアドレスを記憶する図示しないノズル記憶部を備え、消火栓弁開信号と消火栓弁閉信号を無線送信する場合には、自身のアドレスも無線送信する。
なお、消火栓弁開ボタン43を押す回数(操作部を開操作する回数)によって、ノズル4からの放水量(ポンプ3の送水圧力)を変化させるようにしてもよい。例えば、消火栓弁開ボタン43を1回押すと、ノズル4からの放水量が130L/min、2回押すと160L/min、3回押すと200L/minと変化し、4回押すと再び130L/minと変化させる。この場合も、消火栓弁開ボタン43を押す毎に消火栓弁開信号とノズル4のアドレスが送受信部13に受信され、送受信部13からポンプ起動信号が送信される。
これに対して、ポンプ制御部32は、ポンプ制御信号受信部36がポンプ起動信号を受信した回数をポンプ記憶部に記憶させ、その回数に応じて放水圧力を変化させる。このとき記憶したポンプ起動信号の受信回数は、ポンプ停止信号を受信した際に消去される。
こうすることで、消火活動中に、操作部からの操作に応じて、任意に放水量を代えることができ、火災状況や使用者の体力に併せた水量で放水することができる。
また、放水量を変化させる方法としては、別途、放水量を指定できるようにしてもよい。この場合、放水量設定器(図示せず)をノズル4に設け、任意の放水量を放水量設定器に入力すると、これをノズル送信部45が無線信号にて送受信部13へ送信し、送受信部13からポンプ制御信号受信部36に信号が送信され、ポンプ制御信号受信部36が受信した信号から、ポンプ制御部32が放水量を読み取って放水圧力を変化させる。
また、ノズル4は、充電池46を備え、ノズル送信部45およびノズル記憶部等に電源を供給している。
消火栓箱10のノズルホルダは、充電池46を充電する図示しない充電器を備えており、ノズル4をノズルホルダに保持すると、充電池46が充電されるので、使用時に電池切れで使用できないということがない。なお、充電器としては、非接触式のものを用いることもできる。
なお、ノズル送信部45およびノズル記憶部等に電源を供給する方法としては、充電池46に限定されず、例えば、乾電池(電池に相当)としてもよい。この場合、ノズルホルダには充電器に変えて電池残量検出部と電池残量を表示する電池残量表示部を備えてもよい。そうすることで、電池残量を確認することができ、電池残量が少なくなったものは、電池交換を行うことで、使用時の電池切れを防ぐことができる。
また、乾電池を電源とする場合には、電池残量検出部をノズル4に設けてもよい。この場合、ノズル送信部45と送受信部13との間で定期的に通信を行い、電池残量表示部に電池残量の表示を行ってもよい。
また、消火栓装置1は、手動部に相当する手動レバー7を備えており、万が一ノズル4の充電池46(または乾電池)が残量不足で無線信号による消火栓弁2の操作ができない場合には、手動レバー7によって放水することができる。手動レバー7は、有線にて制御部12と接続されており、手動レバー7を消火栓弁開放側または、消火栓弁閉止側に操作すると、消火栓装置1の制御部12は、駆動部24を制御して弁体21を開放または閉止するとともに、送受信部13がポンプ起動信号または、ポンプ停止信号を送信する。
なお、手動部は、レバー形状としているが、これに限定されず、ボタンにより操作するようにしてもよい。また、手動部は、有線にて制御部12と接続されているが、これに限定されず、手動部に送信部を設けて、無線にて制御部12に消火栓弁開閉信号を送信するようにしてもよい。また、手動部は、電気的に制御部12を制御して消火栓弁2を開閉する構成としているが、これに限定されず、例えば、ワイヤを用いて機械的に消火栓弁2を開閉する構成としてもよい。
なお、ノズル4からの遠隔操作により消火栓弁2を開閉駆動させるための簡易的な構成として、操作部に相当する消火栓弁開ボタン43および消火栓弁閉ボタン44に、発電機を備えたワイヤレス押しボタンスイッチを採用することで、バッテリーを不要とすることも可能である。このようなワイヤレス押しボタンスイッチを用いることで、ノズル4側の製造コストを抑えることができる。
次に、本実施の形態1に係る消火栓装置1の、使用時における具体的な動作について説明する。なお、以下では、送受信部13を起動させるための電源オン信号を出力する電源オン信号発生器として、ノズル操作検出スイッチを用いる場合を例にして、具体的に説明する。
消火栓装置1は、火災発生時にトンネル内の通行者や消防隊員など(以下、使用者と称す)が操作して消火を行う。火災を発見した使用者は、消火栓箱10の扉11を開放し、ノズル4を取り出す。ノズル4をノズルホルダから取り外すと、ノズル操作検出スイッチから電源オン信号が出力されることで、ノズル4を取り外した消火栓装置1の送受信部13の電源がオンとなり、受信状態となる。
使用者は、ノズル4に接続されたホース5を消火栓箱10から引き出しながら、火災現場の付近までノズル4を持って移動し、ここで、消火栓弁開ボタン43を押下する。消火栓弁開ボタン43が押下されると、ノズル制御部42は、消火栓弁開信号とノズル記憶部に記憶された自身のアドレスとをノズル送信部45から無線送信する。
このとき、電源がオンになって受信状態となっている送受信部13は、ノズル4がノズルホルダから外れている消火栓装置1のみであるから、当該消火栓装置1の送受信部13のみが、消火栓弁開信号とアドレスを受信する。
制御部12は、送受信部13が受信したアドレスが自身の記憶部が記憶するアドレスと一致すると、消火栓弁開信号を受け入れて、消火栓弁2を開放する。このとき、制御部12は、送受信部13にポンプ起動信号を送信させる。なお、送受信部13が受信したアドレスと記憶部が記憶するアドレスが一致したことを制御部12が確認しているので、他の消火栓装置1のノズル4が、何らかの理由でノズルホルダから外れてしまっていても、使用する消火栓装置1の消火栓弁2のみが開放されることとなる。
ポンプ起動信号をポンプ制御信号受信部36が受信すると、ポンプ制御部32は、ポンプ3を起動し、ポンプ3は、フート弁33を介して水槽8の水を配管9に加圧送水する。
配管9に加圧送水された水は、消火栓弁2を通過し、ホース5を介してノズル4に供給される。ノズル4に供給された水は、放水口41から放水され、使用者は、ノズル4を操作して火災を消火する。
消火が完了すると、使用者は、消火栓弁閉ボタン44を押下する。消火栓弁閉ボタン44が押下されると、ノズル制御部42は、消火栓弁閉信号とノズル記憶部に記憶された自身のアドレスとをノズル送信部45から無線送信する。
このとき、電源がオンになって受信状態となっている送受信部13は、ノズル4がノズルホルダから外れている消火栓装置1のみであるから、当該消火栓装置1の送受信部13のみが消火栓弁閉信号とアドレスを受信する。
制御部12は、送受信部13が受信したアドレスが自身の記憶部が記憶するアドレスと一致すると、消火栓弁閉信号を受け入れて、消火栓弁2が閉止する。このとき、制御部12は、ポンプ停止信号を送信する。なお、送受信部13が受信したアドレスと記憶部が記憶するアドレスとが一致することを制御部12が確認しているので、他の消火栓装置1を同時に使用している場合でも、使用を終了する消火栓装置1の消火栓弁2のみが閉止する。
ここで、ポンプ制御部32がポンプ記憶部を備える構成とした場合には、他の消火栓装置1を同時に使用していると、ポンプ制御部32は、送信されてきたアドレスと一致するポンプ記憶部に記憶しているアドレスを消去したうえで、ポンプ停止信号を破棄し、ポンプ記憶部に記憶されたアドレスが全て消去されたときに、受信したポンプ停止信号でのみポンプ3を停止する。
また、ポンプ3の停止を、人がポンプ制御部32を直接操作して停止する構成とした場合、消火栓弁2が閉止して放水が停止しても、ポンプ3は起動したままであり、人がポンプ制御部32を操作してポンプ3を停止させる。
次に、本実施の形態1における2つの変形例1、2について説明する。
<変形例1>
図3は、本実施の形態1に係る変形例1に相当する消火栓装置100を示す構成図である。図3は、扉11を開放し、ノズル4およびホース5を引き出した状態を示している。
変形例1における消火栓装置100は、消火栓箱10の外側の配管9に消火栓弁2を設け、先の図1に示した消火栓装置1の消火栓箱10の制御部12および送受信部13に代えて、配管9に設けられた消火栓弁2に制御部22および送受信部23を備えており、その他の部品については、共通の部品を使用し、符号も同じものを使用している。
なお、この場合、制御部22は、図示しない記憶部を有し、また、送受信部23と駆動部24は、有線にて電気的に接続される。また、消火栓弁2は、消火栓箱10の外部に配置され配管9を介して、ホース5と接続される。
以上のような変形例1の構成によっても、図1の構成による消火栓装置と同様の効果を得ることができる。
<変形例2>
変形例2は、先の図1に示した消火栓装置1、および先の変形例1の消火栓装置100の消火栓弁開ボタン43および消火栓弁閉ボタン44に代えて、1つの放水ボタン47を備えており、その他の部品については共通の部品を使用し、符号も同じものを使用している。
放水ボタン47は、ノンロックスイッチであり、ボタンを押下している間のみ放水する構成となっている。そして、使用者が放水開始時に放水ボタン47を押下すると、ノズル制御部42は、ノズル送信部45に消火栓弁開信号とアドレスを送信させる。
放水停止時には、放水ボタン47を離すと、ノズル制御部42は、ノズル送信部45に消火栓弁閉信号とアドレスを送信させる。
こうすることで、放水開始および停止を1つのボタンで操作することができ、ノズル4の形状を、例えば、ピストル型とした場合には、放水ボタン47を引き金形状とすることで、ノズル4を手に持った状態での操作性を向上することができる。
なお、放水ボタン47に変えて、ロックスイッチである放水ボタン48としてもよく、この場合、放水ボタン48を押下してロックした状態を保持している間に放水し、再度、放水ボタン48を押下してロック解除すると、放水を停止する。
以上のような変形例2の構成によっても、図1の構成による消火栓装置と同様の効果を得ることができる。
以上のように、実施の形態1によれば、遠方から電動弁である消火栓弁を開閉操作するための信号を受信する消火栓装置の受信部を、消火栓を操作する一連の動作過程中において起動させ、消火栓弁を開放させるべきでない状態では、受信部を起動させない構成を備えている。
より具体的には、ノズル操作検出スイッチ、扉開検出スイッチ、ホース操作検出スイッチ、あるいは起動レバーの少なくともいずれか1つの構成を、消火栓装置の送受信部の電源をオンさせるための電源オン信号を出力する電源オン信号発生器として備えている。
この結果、操作していない消火栓装置の受信部が誤動作することで、放水を開始してしまうことを回避し、使用していない消火栓装置の消火栓弁が開放する、あるいは、違法電波等によって、非火災時に消火栓弁が開放するといった誤動作による不具合の発生を確実に防止することができる。
なお、上述した実施の形態1では、アドレスの授受により相互関係を認識しているが、これに限定されず、相互に認識できる情報(機器IDなど)を用いて制御を行ってもよい。また、アドレスの確認自体も必須ではなく、操作している消火栓装置の受信部だけが起動する構成だけでも充分に誤動作回避の効果を得ることができる。
また、上述した実施の形態1では、手動レバー7の操作によって、消火栓弁2を機械的にも開閉できる場合について説明した。しかしながら、本実施の形態1に係る発明は、このような構成に限定されるものではない。遠隔からの電動による開閉操作が可能な消火栓弁(電動弁)とは別に、手動で開閉操作が可能な手動弁を、電動弁と並列に設けることも考えられる。この場合、手動弁は、人が直接、手動弁のハンドルを操作するようにしてもよいし、ワイヤを用いて機械的にレバー等で遠隔操作できるようにしてもよい。また、操作ボタンなどのスイッチを設けて、有線にて電動のバルブを操作できるようにしてもよい。
実施の形態2.
本実施の形態2では、遠方から電動弁である消火栓弁を開閉操作する際に、電動弁が誤動作してしまうことを防止するための、先の実施の形態1とは異なる手法について説明する。
先の実施の形態1では、無線信号による消火栓弁2の操作ができない場合に備えて、手動レバー7の操作によって放水することができる構成について説明した。すなわち、先の実施の形態1の構成は、電動による開閉操作と、手動による開閉操作が並列関係にあり、電動/手動いずれかの開閉操作により、放水が可能な構成となっていた。
これに対して、本実施の形態2に係る消火栓装置は、遠隔からの開閉操作が可能な消火栓弁2に対して直列接続され、手動にて開閉制御が可能な手動弁をさらに備えている場合について説明する。この場合も、手動弁は、人が直接、手動弁のハンドルを操作するようにしてもよいし、ワイヤを用いて機械的にレバー等で遠隔操作できるようにしてもよい。また、操作ボタンなどのスイッチを設けて、有線にて電動のバルブを操作できるようにしてもよい。
本実施の形態2では、ノズル4側から消火栓弁開信号が送信された状態で、かつ、手動弁が開状態とされている場合のみ、放水が可能となる。換言すると、手動弁が開状態になっていない、使用していない消火栓装置は、たとえ、遠隔から消火栓弁開信号を受信したとしても、手動弁が閉止されているため、誤って放水することを防止することができる。
そして、手動弁が開状態となっており、かつ、先の実施の形態1で説明したように、消火栓装置1の送受信部13の電源をオンさせるための電源オン信号が受信され、スタンバイ状態となっている場合には、ノズル4側からの消火栓弁開信号の受信待ちの状態となり、この消火栓弁開信号を受信することで、放水が可能となる。
なお、制御部12は、使用者により意図的に手動弁が開状態にされた信号を、電源オン信号として処理し、ノズル4側からの消火栓弁開信号の受信待ちであるスタンバイ状態とすることもできる。
例えば、手動弁のハンドル部分にリミットスイッチを設け、ハンドルが弁開位置のときに手動弁開信号を送信してもよいし、手動弁を機械的に遠隔操作するレバー等の開操作により手動弁開信号を送信してもよいし、手動弁を開放するスイッチ操作により手動弁開信号を送信してもよい。このとき手動弁開の状態を継続している間、電源が供給されて、スタンバイ状態となっている構成としてもよいし、手動弁開の操作を行った際に電源が供給され、手動弁閉の操作を行った際に電源が遮断される構成としてもよい。
しかしながら、このように電動弁と手動弁を直列接続した構成を採用すると、スタンバイ状態ではあるものの、何らかの理由で消火栓弁開信号が受信できない場合には、電動弁に相当する消火栓弁2を開状態にできず、いつまでたっても放水できない状況が続いてしまうこととなる。
そこで、本実施の形態2における消火栓箱10内の制御部12は、経過時間の計測を行うためのタイマー機構をさらに備えている。そして、制御部12は、スタンバイ状態になってからの経過時間をタイマー機能により計測する。そして、経過時間が、あらかじめ設定してある待機時間(例えば、30秒)に到達した場合には、消火栓弁開信号が受信できない状態にあるものとして、消火栓弁2を開放し、放水を開始する。
以上のように、実施の形態2によれば、手動弁と自動弁を直列接続する構成を採用している。この結果、使用者が意図的に手動弁を開状態とした消火栓装置以外は、遠隔操作により放水が開始されてしまう状況を確実に回避することが可能となる。
さらに、使用者により意図的に手動弁が開放され、スタンバイ状態になったにもかかわらず、所定時間が経過しても遠隔操作による消火栓弁開信号が受信できない場合には、所定時間の経過後に自動的に電動弁を開状態とするタイマー機能を備えている。この結果、遠隔操作による消火栓弁開信号が受信できない状況が継続することで、放水ができなくなってしまう状況を回避することが可能となる。
実施の形態3.
本実施の形態3では、先の実施の形態1の消火栓装置に対して、タイマー機能および報知機能を付加する場合について説明する。
先の実施の形態1では、無線信号による消火栓弁2の操作ができない場合に備えて、手動レバー7の操作によって放水することができる構成について説明した。しかしながら、先の実施の形態2で説明したタイマー機能を実施の形態1の消火栓装置に適用すれば、手動レバー7を操作することなしに、放水ができなくなってしまう状況を回避することが可能となる。
すなわち、本実施の形態3における制御部12は、消火栓装置1の送受信部13の電源をオンさせるための電源オン信号が受信され、スタンバイ状態となってからの経過時間をタイマー機能により計測する。そして、経過時間が、あらかじめ設定してある待機時間に到達した場合には、消火栓弁開信号が受信できたものとして、消火栓弁2を開放し、放水が可能な状態としている。
このように、所定時間が経過するまでは、消火栓弁2を開放しないことで、使用者は、ホース内が空の状態で、目的地に向かって迅速に移動することができる。また、タイマー機能を持たせることで、ノズル4側が操作部43、44や、ノズル送信部45を備えていない簡易構成によっても、遠隔操作による放水開始と同等の機能を実現することができる。
また、本実施の形態3では、使用者による主体的な遠隔操作ではなく、スタンバイ状態になってから所定時間が経過することで、自動的に消火栓弁2を開放し、放水を可能としている。そこで、消火栓弁2が開放される、または、開放されたことをアナウンスする音響部を設けることで、主体的な操作を実行しない使用者に対して、現状をタイムリーに知らせることができる。
より具体的には、音響部を設けることで、スタンバイ状態になったことを知らせるアナウンス、あるいは給水を開始する、または、開放されたことを知らせるアナウンスなどを使用者に提供することができる。
以上のように、実施の形態3によれば、使用者の行動により、意図的に電源オン信号が出力されてスタンバイ状態になった後、スタンバイ状態になったにもかかわらず、所定時間が経過しても遠隔操作による消火栓弁開信号が受信できない場合には、所定時間の経過後に自動的に電動弁を開状態とするタイマー機能を備えている。この結果、遠隔操作による消火栓弁開信号が受信できない状況が継続することで、放水ができなくなってしまう状況を回避することが可能となる。
また、ノズル側に消火栓弁開信号を送信できる構成を備えない場合(無線による操作を行わない場合)にも、消火栓操作過程でスタンバイ状態になってから所定時間経過後に、自動的に放水を開始できる簡易構成を実現できる。この結果、使用者は、1人で作業する場合であっても、ホース内が空の状態で、目的地に向かって迅速に移動することができるとともに、所定時間が経過することで、特別な操作なしに、放水を開始させることができる。
さらに、音響部による報知機能を持たせることで、利用者に対して、スタンバイ状態や放水開始タイミングを的確に知らせることができる。
実施の形態4.
先の実施の形態3では、消火栓装置に対して、タイマー機能と併用して報知機能を持たせる場合について説明した。これに対して、本実施の形態4では、タイマー機能とは関係なく、消火栓装置に対して報知機能を設ける場合について説明する。
消火栓弁2を開放状態とするケースは、1人操作に基づいて、遠隔操作により行う第1のケースと、2人操作に基づいて、1人はノズル4を所持して目的地に向かい、もう1人が手動で消火栓弁2を開放状態にする第2のケースが考えられる。このような2つのケースに対して、音響部による報知機能を持たせることで、利用者は、消火栓弁2の状態を確実に把握することが可能となる。
具体的には、第1のケースにおいては、遠隔操作を行う利用者は、自身の操作により、消火栓弁2が実際に開放状態となったかを、報知機能により知ることができる。また、第2のケースにおいては、ノズル4を所持する利用者が、もう1人の利用者の操作により消火栓弁2が実際に開放状態となったかを、報知機能により知ることができる。
音響部は、消火栓箱10に設置することができるが、必要によっては、消火栓箱10とは離れた場所、あるいはノズル4に付随するように配置することも考えられる。また、音声によるアナウンスは、消火栓弁2の開放状態だけではなく、ノズルからの遠隔操作を行う場合には、スタンバイ状態になったことを知らせるために用いることもできる。
以上のように、実施の形態4によれば、報知機能を持たせることで、消火栓装置の利用者は、実際に消火栓弁が開放されたことや、スタンバイ状態になっていることを、音声により確実に把握することができる。
実施の形態5.
先の実施の形態2、3では、タイマー機能を用いて、スタンバイ状態が所定時間以上経過した場合に、自動的に消火栓弁2を開放状態とする場合について説明した。これに対して、本実施の形態5では、タイマー機能を別の形で応用する場合について説明する。
本実施の形態5におけるノズル4は、先の実施の形態1における図2に示したノズル送信部45が、ノズルホルダから取り外された後に、あらかじめ決められた一定周期ごとに、定期的に確認信号(第1確認信号)を送受信部13に対して送信する機能をさらに備えている。
一方、消火栓箱10内の制御部12は、先の実施の形態2で説明したように、スタンバイ状態になってからの経過時間をタイマー機能により計測する。そして、本実施の形態5における制御部12は、ノズル4のノズル送信部45から送信された確認信号を、送受信部13を介して受信するごとに、タイマー機能によるカウント値をリセットして、確認信号を受信してからの経過時間をタイマー機能により計測する。
そして、この間に、ノズルを所持する利用者が、消火栓弁開ボタン43を操作することで消火栓弁開信号が送信されてきた場合には、制御部12は、消火栓弁2を開放状態とする。また、制御部12は、何らかの理由により、定期的に送信されてくるはずの確認信号が受信できない状態が発生し、タイマー機能による計測結果が所定時間(例えば、15秒)に到達した場合には、消火栓弁開信号が受信できない状態に陥ったものとして、消火栓弁2を開放し、放水が可能な状態とする。
このようにして、所定時間よりも短い周期で送信されてくる確認信号を用いて定期的に経過時間のカウント値をリセットしていくことで、ノズル送信部45と送受信部13との間の通信機能が正常な間は、ノズル4を所持する利用者による主体的な操作に基づいて、消火栓弁2を開放させることができる。また、何らかの理由で、ノズル送信部45と送受信部13との間の通信機能が正常でなくなった場合には、タイマー機能の働きにより、カウント値が所定時間に到達することで、自動的に消火栓弁2を開放させることができる。
また、ノズル4側に音響部による報知機能を持たせることで、消火栓弁2が実際に開放状態になったことを、ノズル4を所持している利用者に知らせることが可能となる。
なお、通信異常を検知するこのようなタイマー機能は、ノズル4側にも持たせることができる。具体的には、送受信部13は、ノズル4側から確認信号(第1確認信号)を受信するごとに、第2確認信号を返信するようにする。一方、ノズル4のノズル送信部45の代わりにノズル送受信部45aを用い、ノズル送受信部45aにより、第2確認信号を定期的に受信する。
そして、ノズル制御部42は、定期的に第2確認信号を受信することで、通信異常が発生していないことを判断できる。また、ノズル制御部42は、ノズル送受信部45aを介して第2確認信号を定期的に受信するごとに、第2確認信号を受信してからの経過時間を繰り返し計測する第2タイマー機能をさらに有する構成とすることもできる。このような構成を有することで、ノズル制御部42は、第2確認信号が定期的に受信できないために第2タイマー機能による経過時間が所定時間に到達した場合には、通信異常が発生し、消火栓箱10側の制御部12により消火栓弁2が開状態にされたと推測する。
そして、ノズル制御部は、音響部を介して消火栓弁2が開状態になったことを知らせる音声アナウンスを出力することができる。
また、送受信部13は、第1確認信号を受信するごとに第2確認信号を返信するのではなく、第1確認信号の受信の有無によらず、定期的に第2確認信号を送信することもできる。そして、この場合には、ノズル4側は、第1確認信号を定期的に送信する代わりに、第2確認信号を受信するごとに第3確認信号を返信する構成とすることも可能である。
このようにして第3確認信号を用いる場合には、制御部12は、第1確認信号に基づくタイマー機能と同様に、第3確認信号に基づくタイマー機能を活用することで、通信異常が発生しているか否かを判断するとともに、所定時間が経過することで、消火栓弁2を開放し、放水が可能な状態とすることができる。
換言すると、実施の形態5の変形例として、上述した確認信号を送受信部13とノズル送受信部45aの間で相互に繰り返すことができる。この場合、ノズル4がノズルホルダから取り外された後に、送受信部13またはノズル送受信部45aのいずれか一方から確認信号を送信し、これを他方が受信すると、他方がさらに確認信号を送信する。
これを繰り返し継続することで通信状態が保たれていることの確認を行う。この確認信号の通信が一定時間途絶えたときには、上述と同様に消火栓弁2を開放してもよく、また、音響部による音声アナウンスを行ってもよい。
以上のように、実施の形態5によれば、経過時間のカウント値を定期的にリセットするとともに、利用者により主体的な操作がない場合にも、通信ができない状態が発生することに起因して所定時間が経過した場合に限って、自動的に消火栓弁を開放状態とすることができる。
この結果、ノズルを所持して移動する時間が長くなった場合にも、通信状態が正常であれば、利用者による主体的な操作を優先して、消火栓弁の開放制御を実行できる。また、何らかの理由で通信が正常に行えなくなった場合にも、タイマー機能の働きにより、所定時間の経過によって、自動的に消火栓弁を開放状態とすることができる。
また、制御部12とノズル制御部42は、受信部13とノズル送受信部45aを用いて日常点検を行うことができる。具体的には、平常時に一定周期(例えば、1日1回)で送受信部13とノズル送受信部45aの間で、例えば、電池残量等の点検項目を送受信すれば、通信機能が正常であるか否かを確認することができる。
なお、上述した実施の形態1〜5では、電源オン信号により、送受信部13が起動(電源オン)する構成としているが、本発明は、このような構成に限定されない。例えば、送受信部13は、常に電源がオンとなっており、電源オン信号を受信開始許可信号と読み替え、電源オン信号発生器を受信開始許可信号発生器と読み替えて、受信開始許可信号により、無線信号を受信できる態勢となるようにしてもよい。
あるいは、通常は、無線信号を受信してもキャンセルする構成とし、受信開始許可信号を受信した送受信部13のみ、無線信号を受け付ける構成としてもよい。そうすることで、トンネルシステム全体の連絡(点検指示等)は、常に受信することができる。
換言すると、受信開始許可信号発生器から出力される受信開始許可信号に基づいて、送受信部13をオンする第1の方式、あるいは、受信開始許可信号発生器から出力される受信開始許可信号に基づいて、電源がすでにオンされている送受信部13を、無線信号を受信できる体制に切り替える第2の方式のいずれかを採用することができる。
すなわち、電源オン信号および受信開始許可信号は、いずれも、消火栓の使用開始を意味するスタンバイ信号としての役割を果たしており、電源オン信号および受信開始許可信号の総称を「スタンバイ信号」とすることができる。さらに、電源オン信号発生器および受信開始許可信号発生器の総称を「スタンバイ信号発生器」とすることができる。
なお、第2の方式を採用することで、使用していない消火栓装置もトンネルシステム全体の連絡(点検指示等)を常に受信することができる。
さらに、受信開始許可信号発生器から出力される受信開始許可信号に基づいて、ノズル送信部45を、電動弁開放信号を送信可能な状態に切り替える、あるいは、受信開始許可信号発生器から出力される受信開始許可信号に基づいて、ポンプを駆動させ、配管への水の供給を開始させることも可能である。
なお、音響部による音声アナウンスは、無線による遠隔操作やタイマー機能による消火栓弁(電動弁)開放を用いない従来の消火栓に用いることも有効である。この場合、手動の消火栓弁を開放したときに、消火栓弁が開放したことを音声アナウンスすることで、使用者は、自らが行った操作により放水が開始されることを確認することができる。音声アナウンスの内容の一例としては、「消火栓弁が開放しました。注意してください。」や「ノズルから水が放出されます。ノズルを火災に向けて準備してください。」などが考えられる。
また、実施の形態1〜3では、ポンプ3を起動するポンプ起動信号は、制御部12、22が消火栓弁開信号を受信した際に送信される構成となっているが、これに限定されず、制御部12、22が電源オン信号を受信した際に送信されるようにしてもよい。そうすることで、ポンプ3から配管9へ水の供給が、電動弁(消火栓弁)が開放するより先に開始され、電動弁(消火栓弁)一次側が加圧充水された状態で待機することとなり、消火栓弁開信号により消火栓弁が開放されてから、より速やかにノズルからの放水が開始される。
実施の形態6.
本実施の形態6では、無線信号を利用してノズル側から遠隔操作を行うことにより、消火栓箱側の電動弁である消火栓弁を開閉させる際に、無線信号を中継する中継器を備えることで、無線信号を受信できないことで消火栓弁が遠隔操作不能となる状況を低減する手法について説明する。
無線信号を利用してノズル側から消火栓弁を遠隔操作にて開閉させる際には、遠隔操作不能となる状況を回避することが重要となる。しかしながら、現実問題として、例えば、トンネルが曲がっている、あるいは無線通信の障害物となる車両がある等のトンネル内の種々の状況により、使用する消火栓のノズルから発信された無線信号が、当該消火栓の受信部によって直接受信できない場合が考えられる。
そこで、本実施の形態6では、無線信号を中継する中継器を設けることで、上述したような遠隔操作不能となる状況を回避している。図4は、本発明の実施の形態6における中継器を備えた消火栓装置の第1の具体例を示した説明図である。図4に示した第1の具体例では、隣接した3つの消火栓箱10(1)〜10(3)のうち、消火栓箱10(2)に設置されたホース5を引き出し、ノズル4から放水を行う場合を例示している。
さらに、図4では、消火栓箱10(1)〜10(3)内に、中継器61(1)〜61(3)がそれぞれ設けられている。そして、送受信部13(1)〜13(3)および中継器61(1)〜61(3)は、相互に有線62を介して接続されており、有線通信が可能な構成となっている。
ここで、消火栓箱10(1)〜10(3)は、例えば、50m間隔でトンネル内に設置されている。そして、ノズル4からの遠隔操作によりノズル送信部45から無線信号として送信された消火栓弁開信号が、上述したようなトンネル内の通信状況により、送受信部13(2)に直接届かない状況が発生したとする。
このような場合であっても、図4に示した第1の具体例では、送受信部13(2)は、隣接する消火栓箱10(1)、10(3)内に設けられた中継器61(1)、61(3)、および有線62を介して、ノズル4側から送信された消火栓弁開信号を受信できる構成を備えている。従って、消火栓弁開信号を直接受信できない状況が発生した場合にも、中継器61を介して間接受信でき、遠隔操作不能となる状況を回避することができる。
なお、送受信部13(2)は、隣接する中継器61(1)または中継器61(3)を介して、間接受信を行うが、ノズル4側から直接受信ができる場合には、中継器61(2)を介して受信する必要はない。
換言すると、消火栓箱10に設置された中継器61は、自身の消火栓箱10が使用状態となったとき、および両隣に隣接する消火栓箱10のいずれかが使用状態となったとき、起動させ、その他の消火栓を使用する場合には起動させない状態とすることができる。
なお、「消火栓箱10が使用状態」であるか否かは、先の実施の形態1で説明した電源オン信号発生器と同じ構成により実現できる。
上述した本実施の形態6では、3つの消火栓箱10について説明したが、4つ以上ある場合でも同様に適用することができる。また、消火栓装置1を使用する際に起動する中継器61については、上述した実施例に限定されない。例えば、送受信部13は、使用する消火栓箱10のもののみを起動し、中継器61は、全ての消火栓箱10の中継器61を起動してもよいし、使用する消火栓箱10と、その両隣の消火栓箱10の中継器61を起動するようにしてもよい。
さらに、使用する消火栓箱10の送受信部13と中継器61の設置距離が近いため、中継器61が受信できる場合には、送受信部13でも受信できると想定されるので、使用する消火栓箱10は、送受信部13のみ起動し、中継器61は、起動せず、使用しない消火栓箱10の中継器61を全て起動してもよい。この場合も、使用する消火栓箱10の両隣の中継器61のみ起動するようにしてもよい。
また、中継器61の起動は、先の実施の形態1で説明したスタンバイ信号発生器に起因して制御部12を介して自己および他の消火栓箱10へ中継器起動信号を送信してもよいし、消防設備全体を管理するトンネル制御盤等を経由して送信してもよい。このときには、先の実施の形態1で説明したアドレスを用いて起動する中継器61を指定してもよい。
また、本実施の形態6では、送受信部13および中継器61を有線接続しているが、このような構成に限定されず、無線にて接続してもよい。消火栓箱10は、監査路上に設置される場合が多く、消火栓箱10間の無線の送受信は、車両の影響を受けにくいためである。この場合もアドレスを用いて送受信することで、誤動作を防止することができる。
また、中継器61は、その設置場所を消火栓箱10に限定せず、例えば、消火栓装置1と消火栓装置1との中間地点に独立して設置されてもよく、この場合も、他の送受信部13および中継器61とは有線で接続されてもよいし、無線により接続されてもよい。
また、本実施の形態6の中継器61の機能を送受信部13が保有してもよく、この場合、中継器61は、不要となる。この場合、送受信部13は、使用する消火栓装置1に設置された送受信部13であるか、隣接する消火栓装置1に設置された送受信部13であるかによって、送受信部として動作するか、中継器として動作するか判断する。
次に、図5は、本発明の実施の形態6における中継器を備えた消火栓装置の第2の具体例を示した説明図である。図5に示した第2の具体例は、中継器63が、ホース5の概ね中間に設けられており、それぞれの消火栓箱10(1)〜10(3)内には、中継器61(1)〜61(3)が設けられていない点が、先の第1の具体例とは異なっている。
そして、ノズル4からの遠隔操作によりノズル送信部45から無線信号として送信された消火栓弁開信号が、上述したようなトンネル内の通信状況により、送受信部13(2)に直接届かない状況が発生したとする。
このような場合であっても、図5に示した第2の具体例では、送受信部13(2)は、ホース5の中間部に設けられた中継器63を介して、ノズル4側から送信された消火栓弁開信号を受信できる構成を備えている。従って、信号強度が弱いことで、消火栓弁開信号を直接受信できない状況が発生した場合にも、中継器63を介して間接受信でき、遠隔操作不能となる状況を回避することができる。
なお、ホース5に設置された中継器63は、送受信部13と同じタイミングで起動状態とすることができる。なお、中継器63を起動状態とするには、先の実施の形態1で説明した電源オン信号発生器を採用することにより、送受信部13を起動状態とするのと同じタイミングで、実現できる。つまり、中継器63の起動は、図4の中継器61と同様の手法で起動可能とすることができる。
以上のように、実施の形態6によれば、ノズル側からの無線信号による遠隔操作指令を、中継器を介して間接的に受信できる構成を備えている。この結果、無線信号を利用してノズル側から消火栓弁を遠隔操作にて開閉させる際に、遠隔操作指令を直接受信できない状況によって、遠隔操作不能となる状況を回避することが可能となる。なお、遠隔操作指令としては、先に説明した消火栓弁開信号に限らず、消火栓弁閉信号などのその他の遠隔操作指令であってもよい。
実施の形態7.
本実施の形態7では、無線信号を利用してノズル側から遠隔操作を行うことにより、消火栓箱側の電動弁である消火栓弁を開閉させる際に、無線信号を受信するためのアンテナを、無線信号を受信しやすい位置に備えることで、無線信号を受信できないことで消火栓弁が遠隔操作不能となる状況を低減する手法について説明する。
無線信号を利用してノズル側から消火栓弁を遠隔操作にて開閉させる際には、遠隔操作不能となる状況を回避することが重要となる。しかしながら、現実問題として、例えば、無線通信の障害物となる車両やトンネル内の設置物がある等のトンネル内の種々の状況により、使用する消火栓のノズルから発信された無線信号の強度が弱まり、当該消火栓の受信部で確実に受信できない場合が考えられる。
そこで、本実施の形態7では、ホース5を引き出す作業の邪魔にならないような位置、かつ、無線信号を受信しやすい位置に、消火栓箱10にアンテナを設けることで、無線信号を受信しやすくし、上述したような遠隔操作不能となる状況を回避している。
具体的には、本実施の形態7における消火栓装置は、消火栓箱10の内部にアンテナを取付け、扉11が閉状態では、アンテナが消火栓箱10内に収納される一方で、消火作業を行うために扉11を開放した際には、アンテナがトンネル内の空間に露出する構成を備えている。
一例として図1のように、送受信部13(23)に接続されるアンテナとして、扉11を閉止したとき、扉11の内側の上部にアンテナが内蔵された箱形の消火栓補助アンテナ71を取り付けると、扉11を開放したとき、消火栓箱10から道路側に露出した場所に消火栓補助アンテナ71が位置する。このとき、手動レバー7より扉11の縁側に消火栓補助アンテナ71を設置することでホース5を引き出す際にも邪魔になることはない。
このような構成を備えることで、ホース5の使用時に合わせて、消火栓箱10内のアンテナがトンネル内の空間に露出することで、無線信号をより受信しやすくしている。
なお、無線信号をさらに受信しやすくするためには、無線信号を複数種類の周波数で所定の順序で送信することが考えられる。このように、複数種類の周波数帯を併用することで、トンネル内の状況で届きにくい周波数帯があった場合にも、その他の周波数帯を利用して、確実に無線信号を受信することができる。複数種類の周波数帯の具体例としては、400MHz帯と900MHz帯、400MHz帯と2.4GHz帯といった組み合わせが考えられ、より具体的に示すと、426MHzと920MHzの2つを交互に利用することが考えられる。
以上のように、実施の形態7によれば、ノズル側からの無線信号による遠隔操作指令を、消火栓の使用時に消火栓箱の前面に露出するアンテナを介して受信できる構成を備えている。この結果、無線信号を利用してノズル側から消火栓弁を遠隔操作にて開閉させる際に、無線信号を受信しやすくしているので、信号強度が弱すぎることに起因して遠隔操作指令を受信できない状況によって、遠隔操作不能となる状況を回避することが可能となる。
なお、消火栓箱側アンテナの設置位置は、上述の位置に限られず、扉11を開放することにより、受信しやすく、かつ、ホース5を引き出す際に邪魔にならない位置に取り付ければよい。
さらに、2つの異なる周波数帯を利用して、交互に通信する構成を備えることで、一方の周波数帯で無線通信が受信し難くなった場合にも、他方の周波数帯を利用することで、遠隔操作不能となる状況を回避することが可能となる。なお、3つ以上の周波数帯を利用することも可能である。
また、本実施の形態7では、複数種類の周波数で無線信号を送信する構成について記載した。ここで、特定の周波数の無線信号が届きにくくなる原因として、反射波の合成による影響がある。ノズル送信部45から送信された無線信号は、路面、壁面、車両等に反射して、それらが干渉して合成波となる。合成波が互いに弱め合う位置に消火栓補助アンテナ71が設けられていると、無線信号が弱まっているので受信できなくなる。また、無線信号の偏波面が異なると受信しづらくなるため、ノズル4を保持する角度や前述した反射、合成の影響により無線信号を受信しづらい場合がある。
これらを解消する方法として、使用する無線信号の周波数は、1種類でも消火栓補助アンテナ71を2つ以上設ける方法がある。2つの消火栓補助アンテナ71を前述の周波数帯で使用する場合、20cm以上離して設置することで、充分効果を得ることができる。
また、2つの消火栓補助アンテナ71の偏波面を90°ずらして設けることによっても、効果を得ることができる。さらに、これらを組み合わせて、2つ以上の消火栓補助アンテナ71を偏波面をずらして設置することで、より効果を得ることができる。さらに、この場合も、複数種類の周波数帯を用いることで、より確実に無線信号を受信することができる。
実施の形態8.
先の実施の形態7では、消火栓箱10側のアンテナを強化することで、遠隔操作不能となる状況を回避する場合について説明した。これに対して、本実施の形態8では、ノズル4側にアンテナを設けることで、遠隔操作不能となる状況を回避する場合について説明する。
無線信号を利用してノズル側から消火栓弁を遠隔操作にて開閉させる際には、遠隔操作不能となる状況を回避することが重要となる。しかしながら、現実問題として、例えば、無線通信の障害物となる車両やトンネル内の設置物がある等のトンネル内の種々の状況により、使用する消火栓のノズルから発信された無線信号の強度が弱まり、当該消火栓の受信部で確実に受信できない場合が考えられる。
そこで、本実施の形態8では、消火作業の邪魔にならない位置で、ノズル送信部45に接続されたアンテナをノズル4側に設けることで、無線信号の送信強度を強め、消火栓箱10側で無線信号を受信しやすくするように、無線信号を送信できるようにし、上述したような遠隔操作不能となる状況を回避している。
具体的には、本実施の形態8における消火栓装置は、ノズル4側に線状のノズル用補助アンテナを設ける構成とし、より具体的には、ホース5とノズル4の結合部などにアンテナを巻き付ける構成を採用することができる。また、線状のアンテナをホース5に巻き付けずに、バンド等で固定してもよいし、結合部のカシメをアンテナとしてもよい。なお、アンテナには使用する周波数によって適切な長さがあるため、使用周波数帯に準じてアンテナの長さを設定する必要がある。
また、本発明の消火栓装置に使用する周波数帯であれば、ノズル本体をグランドとして使用することで、アンテナ効率の改善にある程度の効果が期待できる。そこで、本実施の形態8におけるノズル用補助アンテナは、ノズル4の本体の一部を利用し、グランドをアンテナ以外のノズル4の本体(材質:アルミ)としている。このような構成を備えることで、無線信号の送信強度を強め、消火栓箱10側で無線信号をより受信しやすくしている。
なお、無線信号をさらに受信しやすくするためには、先の実施の形態7と同様に、無線信号を2種類の周波数で交互に送信することが考えられる。なお、3つ以上の周波数帯を利用することも可能である。
以上のように、実施の形態8によれば、ノズル側に設けられたアンテナを介して、ノズル側から無線信号による遠隔操作指令を送信できる構成を備えている。この結果、無線信号を利用してノズル側から消火栓弁を遠隔操作にて開閉させる際に、無線信号の送信強度を強め、信号強度が弱すぎることに起因して遠隔操作指令が消火栓箱側で受信できない状況によって、遠隔操作不能となる状況を回避することが可能となる。
さらに、2つ以上の異なる周波数帯を利用して、交互に通信する構成を備えることで、一方に周波数帯で無線通信が受信し難くなった場合にも、他方の周波数帯を利用することで、遠隔操作不能となる状況を回避することが可能となる。
なお、上述した実施の形態6〜8では、電源オン信号により、送受信部13、23が起動(電源オン)する構成としているが、このような構成に限定されず、先の実施の形態1〜5について補足説明した内容と同様に、例えば、送受信部13、23は、常に電源がオンとなっており、電源オン信号により受信する態勢となるようにしてもよいし、通常は、無線信号を受信してもキャンセルする構成とし、電源オン信号を受信した送受信部13のみ無線信号を受け付ける構成としてもよい。
そうすることで、使用していない消火栓装置もトンネルシステム全体の連絡(点検指示等)を無線信号にて常に受信することができる。また、中継器61,63についても同様とすることができる。
実施の形態9.
先の実施の形態3では、タイマー機能を用いて、スタンバイ状態が所定時間以上経過した場合に、自動的に消火栓弁2を開放状態とする場合について説明した。これに対して、本実施の形態9では、必要に応じてタイマー機能による経過時間の計測を強制的に解除し、所定時間の経過前であっても直ちに消火栓弁2を開放状態とする構成をさらに備える場合について説明する。
本実施の形態9における消火栓装置1は、消火栓箱10または扉11に設けられたタイマー解除部をさらに備えて構成されている。このタイマー解除部は、ボタンやレバー等によって構成することができる。
先の実施の形態3において説明したタイマー機能は、無線による操作を行わない場合でも、スタンバイ状態になってから所定時間の経過後に自動的に消火栓弁2を開状態とすることを可能としていた。
しかしながら、現場の状況によっては、経過時間の計測中で、所定時間が経過する前に、消火栓弁2を開状態に切り替えたい緊急事態が発生する場合が考えられる。このような場合に対応すべく、本実施の形態9において新たに設けられたタイマー解除部は、使用者により操作されることで、所定時間が経過した状態を示す割込信号を強制的に出力し、タイマー計測を強制的に解除して、消火栓弁2を開状態とする機能を有している。
制御部12は、タイマー解除部からの割込信号を受信した場合には、タイマー機能による経過時間の計測中においても、所定時間が経過したと判断し、直ちに消火栓弁2を開放状態とすることができる。
以上のように、実施の形態9によれば、例えば、消火栓装置から比較的近い場所で発生した火災に対して、使用者がタイマー解除部を操作することで、タイマーによる遅延時間を待たずに、消火栓弁を開放状態として、放水を開始することが可能となる。さらに、タイマー解除部が操作されるまでは、使用者は、ホース内が空の状態で、目的地に向かって迅速に移動することができる。
なお、上記の構成では、所定時間が経過した状態を示す割込信号を出力しているが、これに限定せず、消火栓弁2を開放する割込信号を出力してもよい。