(極細繊維製造装置の構成)
まず、本発明の実施の形態に係る極細繊維製造装置1A,1Bについて、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る極細繊維製造装置1Aの構成を示す縦断面図である。なお、以下に説明する各図は、図示右側を右方、左側を左方、上側を上方、下側を下方として説明する。ただし、押し出し機2においては、右方を上流側、左方を下流側と記載することがある。
図1に示すように、極細繊維製造装置1Aは、原料樹脂を溶融しながら紡糸部3に向かって押出す押し出し機2と、押し出し機2から押出された溶融樹脂を噴射する紡糸部3と、紡糸部3に接続され、紡糸部3に備えられたノズル4から噴射された溶融樹脂を加熱延伸させる加熱延伸部5を有している。押し出し機2は、加熱筒6内で回転しながら原料樹脂を溶融し下流側(図示左方側)に送るスクリュー7と、スクリュー7を上流側(図示右方側)から下流側に移動させる加圧ピストン機構部8を有している。加熱筒6の下流側先端部には加熱筒ヘッド9が接続固定されている。加熱筒6と加熱筒ヘッド9各々の中心軸は一致している。したがって、加熱筒6を軸方向に貫通するスクリュー7が内挿される内筒部10と、加熱筒ヘッド9を軸方向に貫通する中心孔11は直線上で連通している。この中心孔11は、溶融樹脂の流路となるので、以降、溶融樹脂流路11と記載する。加熱筒6の外周面にはヒーター12が設けられていて、ヒーター12に供給する電力を制御して原料樹脂の溶融温度を制御する。なお、加熱筒ヘッド9の外周面にもヒーター12が設けられていて、溶融樹脂流路11を通過する溶融樹脂を所定温度に維持する。
極細繊維製造装置1Aは、紡糸部3を通過し1次高温気流流路54に高温気流を生成して送る高温高圧気流供給部13と、2次高温気流流路87(図5参照)に高温気流を生成して送る高温高圧気流供給部14を有している。紡糸部3の構成は図2〜図4を参照し、加熱延伸部5の構成は図5を参照し、高温高圧気流供給部13,14は図1を参照して後述する。
図1に示すように、加熱延伸部5の下方側には、金属板などで形成された繊維回収管部28が配設されている。この繊維回収管部28の一方は加熱延伸部5に接続され、他方の開口部側には繊維回収装置29(図1参照)が配設されている。
加圧ピストン機構部8は、シリンダー15と、シリンダー15内を軸方向に往復移動可能なピストン16を有している。シリンダー15は、軸方向の中央部内側に突設された凸条部17を有している。凸条部17と、凸条部17より上流側(図示右方側)の端部となるモーター基盤18とで囲まれた空間は油圧空間19であり、油圧空間19には油圧用オイルが充填されている。ピストン16は、油圧空間19内に配置される胴部20と、胴部20から下流側(図示左方側)に向かって延長されるピストンロッド21とを有している。ピストン16は、胴部20がシリンダー15(油圧空間19)の内周部22に摺動できるように、ピストンロッド21が凸条部17の内周部23で支持されつつ軸方向に摺動できるようなクリアランスを有している。なお、胴部20の外周面には、油圧空間19内の油圧用オイルが漏れないように不図示のガスケットなどが装着されている。
スクリュー7とピストンロッド21は、スクリュー連結空間24内で連結具25によって固定されている。たとえば、ピストンロッド21のスクリュー7側端面に凹部が設けられ、スクリュー7のピストンロッド21側端部に設けられた凸部を上記凹部に嵌め込み連結具25で固定されている。このようにして、スクリュー7とピストン16は一体化され、両者一体となって軸方向への移動が可能となっている。
ピストン16とモーター26は、スプライン軸27を介して連結されている。図示は省略するが、ピストン16には、胴部20を貫通しピストンロッド16の途中までスプライン穴が形成されている。スプライン軸27のモーター26側の端部は不図示のモーター軸に結合ピンや結合キーなどによって連結されている。ピストン16とモーター26とをスプライン軸27を介してスプライン結合することによって、ピストン16はモーター基盤18に固定されたモーター26に対して軸方向に移動可能となっていて、かつモーター26の回転に同期して回転可能な構成としている。モーター軸とモーター基盤18の間には、ベアリングを設けると共に、油圧オイルが漏れないようにガスケットなどを設けることが好ましい(図示は省略)。
加圧ピストン機構部8は、油圧ポンプ30を有している。図1に示すように、油圧ポンプ30は、油圧空間19のうちの胴部20の上流側(図示右方側)の空間と連通する配管31にバルブ33を介して接続されている。胴部20の下流側(図示左方側)の空間は、配管32でシリンダー15に接続されている。配管32は、バルブ34およびバルブ33を介してオイルタンク39に接続されている。連結具25には、センサー端子35が固定されている。センサー端子35は、スクリュー連結空間24の範囲でシリンダー15の外部まで延長されていて、ピストン16およびスクリュー7の軸方向への移動に連動する。また、センサー端子35は、接続ロッド36を介してセンサー37に接続されている。センサー37は、たとえば、リニアエンコーダーであって、ピストン16(スクリュー7)の軸方向への移動量および位置を検出する。
また、図示は省略するが、シリンダー15には、油圧空間19内(胴部20の上流側の空間)の圧力を検出する圧力計(圧力センサー)が配設されている。圧力計は、油圧空間19内の圧力を検知し油圧ポンプ30の吐出圧力を制御する。油圧ポンプ30は可変ピストンポンプとすることが望ましい。
スクリュー7の上流側(図示右方側)には、ホッパー38が配設されている。ホッパー38は、加熱筒6の内筒部10に連通していて、ペレット状または破砕された原料樹脂を加熱筒6内に投入することが可能となっている。
図1は、ピストン16が下流側(図示左方側)に移動している、いわゆる下死点位置にある状態を示している。この状態は、バルブ33を開けて油圧ポンプ30によって配管31から油圧オイルを胴部20の図示右方側の油圧空間19に注入し、ピストン16を図示右方側から左方側に移動させた状態である。すなわち、加熱筒6内の溶融樹脂を下流側(図示左方側)に加圧移動させた状態を図示している。胴部20の図示左方側の空間内にあった油圧オイルはバルブ34およびバルブ33の相互作用でオイルタンク39に戻るようになっている。油圧ポンプ30によるピストン加圧を停止し、バルブ33、バルブ34を共に開けておくと、加圧された溶融樹脂の圧力によってピストン16は、スクリュー7と共に、上流側(図示右方側)に戻される。なお、図1に示すバルブ33,34と油圧ポンプ30との接続構成は、簡略化して図示している。ピストン16は、スクリュー7の下流側への移動速度を一定とし、樹脂圧力が30kgf/cm2〜2000kg/cm2となるように制御される。
ホッパー38から加熱筒6内に投入された原料樹脂は、スクリュー7の回転によって下流側に送られながら加熱筒6内で溶融される。原料樹脂は、ヒーター12によって所定温度に溶融されるが、スクリュー7との摩擦によって溶融可塑化され、加熱筒ヘッド9の溶融樹脂流路11を通って紡糸部3に送られる。なお、加熱筒6には、温度計40が配設されており、溶融樹脂の温度を検出して、溶融樹脂を所定温度に制御する。なお、押し出し機2は、シリンダー15を基台41に水平になるように取り付けられている。
図2は、紡糸部3の構成を示す図で、(A)は、図1の矢印A方向から見た平面図、(B)は、図2(A)のB−B切断線で切断した縦断面図である。図2(A),(B)に示すように、紡糸部3は、溶融樹脂供給路46が形成されたホットランナー45と、複数の溶融樹脂噴射部47を支持するブロック部48を有する。なお、図2は、ホットランナー45、溶融樹脂供給路46、溶融樹脂噴射部47など各構成要素のレイアウトを示すものであって、図示の都合上、形状を簡略化して表している。これらの詳細な形状は、図3を参照して詳しく説明する。図2(A)に示すように、ホットランナー45は、右方側ホットランナー45Aと左方側ホットランナー45Bで構成され、図2(A)のB−B切断線(左右方向のほぼ中央位置)で分割された各々の対向面で密着され一体化されている。溶融樹脂供給路46は、接続流路49および接続流路50を介して、押し出し機2(加熱筒ヘッド9)側の溶融樹脂流路11と連通されている。
溶融樹脂噴射部47は、図2の例では前後方向に7個配列されていて、各々を融樹脂噴射部47A〜47Gとする。なお、溶融樹脂噴射部47は、7個に限らず6個または9個というように減らしたり、増やしたりすることが可能であり、または1個であってもよい。図2(B)に示すように、溶融樹脂供給路46は、接続流路49から溶融樹脂噴射部47A〜47Gの各々に接続できるように、7本の溶融樹脂供給路46A〜46Gに分岐されている。つまり、溶融樹脂供給路46Aは溶融樹脂噴射部47Aというように接続される。溶融樹脂供給路46および接続流路49は、右方側ホットランナー45Aおよび左方側ホットランナー45Bそれぞれ対向する位置に溝を形成し、右方側ホットランナー45Aと左方側ホットランナー45Bとを密着固定させることによって構成される。なお、右方側ホットランナー45Aと左方側ホットランナー45Bのどちらか一方に溝を形成するようにして、溶融樹脂供給路46および接続流路49を構成してもよい。ホットランナー45A、45Bを分割しないで一体のブロックとして溶融樹脂供給路46、接続流路49に穴加工などによって形成してもよい。
接続流路50は、図2(A)に示すように、右方側ホットランナー45Aに右方側側面
から穴明け加工などによって形成することができる。ここで、加熱筒ヘッド9には、ホットランナー45に向かって突設される凸部9Aが形成されている。この凸部9Aは、溶融樹脂流路11と同心円の関係にある。右方側ホットランナー45Aには、接続流路50と同心円である凹部が形成されていて、この凹部に凸部9Aを嵌め込むことによって、溶融樹脂流路11と接続流路50を正確に連通させることが可能となっている。このように、紡糸部3を構成することによって、押し出し機2から送り出された溶融樹脂は、溶融樹脂流路11および接続流路50を通り、接続流路49で溶融樹脂供給路46A〜46Gに分岐され、溶融樹脂噴射部47A〜47Gから溶融樹脂を噴射できるようになっている。
図2(A),(B)に示すように、ブロック部48には、溶融樹脂噴射部47A〜47Gに沿って前後方向に延長された高温高圧気流供給路51が形成されている。高温高圧気流供給路51は、前方側端部で高温高圧気流接続管52に接続されて高温高圧気流供給部13に接続される。高温高圧気流供給管52は、保温ジャケット53で覆われており、高温高圧気流供給部13から送られる高温高圧気流が高温高圧気流供給管52に達するまでに温度が低下しないようにしている。高温高圧気流供給部13には、図示しない高圧送風機であるコプレッサーで高圧エア(空気)が送られ、高温高圧気流供給部13を通過した空気は、高温高圧気流となって、高温高圧気流供給路51に送られる。なお、ホットランナー45およびブロック部48の外側壁部には、加熱筒ヘッド9に接続される側璧部以外の側壁部5面に、ヒーター12が設けられていて、ホットランナー45内で溶融樹脂の温度を維持している。溶融樹脂供給路46、接続流路49,50は、いわゆるホットランナー45に対するランナーである。
なお、図2(B)に示すように、紡糸部3の下方側には、加熱延伸部5が接続されている。加熱延伸部5は、溶融樹脂噴射部47A〜47Gから噴射された溶融樹脂を極細繊維化しながら繊維回収管部28(図1参照)に送る流路54を有している。この流路54を1次高温気流流路54とする。1次高温気流流路54の構成については、図4を参照して後述する。
次に、高温高圧気流供給部13,14について図1を参照して説明する。高温高圧気流供給部13,14は同じ構成なので、高温高圧気流供給部13を代表例として説明する。高温高圧気流供給部13は、筒状の高温エアタンク55と、高温エアタンク55の内部に収容されている多数のビーズ56と、高温エアタンク55の外周面に設けられたヒーター57とで構成されている。ビーズ56は、銅や砲金などの熱容量が高い金属ビーズであり、表面積が大きくなるように、表面に深い凹凸が形成されたものが使用される。また、ヒーター57としては、バンドヒーターなどがある。高温高圧気流供給部13は、高温高圧気流供給管52に接続され、高温高圧気流供給管52は、紡糸部3の高温高圧気流供給路51(図2、図3参照)に接続されている。高温高圧気流供給部13と同様に構成される高温高圧気流供給部14は、高温気流供給管85に接続され、2次高気流流路87(図4、図5参照)に接続されている。
高温高圧気流供給部13,14各々には、不図示のコンプレッサーが備えられていて、高温エアタンク55内に高速のエア(空気)を送流している。ビーズ56は、ヒーター57によって高温(たとえば100℃〜500℃)に加熱されており、エアがこの多数のビーズ56間の隙間を通過するときに加熱され高温高圧気流となって高温高圧気流供給路51に送られる。エアの温度は、原料樹脂が溶融可能な所定温度に途中経路における降温を考慮した温度とする。また、高温気流供給管51,85各々には、バルブ58が備えられていて、エア(高温気流)の単位時間当たりの風量を制御できる。
図3は、溶融樹脂噴射部47A〜47Gの構成を示す図で、図2(A)のC−C切断線で切断した縦断面図である。溶融樹脂噴射部47A〜47Gのそれぞれは、同じ構成なので、溶融樹脂噴射部47として説明する。溶融樹脂噴射部47は、上方側のノズルユニット60と、下方側のダイ61で構成されている。ノズルユニット60は、ノズルユニット支持ブロック62に固定されている。ダイ61は、筒形状を有し、ダイ部支持ブロック63に固定されている。図2に示したブロック部48は、図3に示すように、ノズルユニット支持ブロック62とダイ部支持ブロック63とを、互いに対向する面を密着固定して構成されている。
図3に示すように、ノズルユニット60は、ノズル4を支持するノズルホルダー64と、ノズル4に溶融樹脂を導入する導入管65を有している。ノズル4はセラミックスで形成されていて、軸方向に貫通する噴射孔66を有している。このセラミックスは、数あるセラミックスの中で、溶融樹脂が付着しにくく、断熱性が高いものを採用し、ノズル4を流れる溶融樹脂を互いの界面で摩擦熱を発生させ、界面の流動性を高めるセラミックスを使用している。たとえば、アルミナ系、窒化ケイ素系などである。しかも、そのノズル4には、低摩擦処理を施さなくてもよい。噴射孔66は、ごく細い孔で、たとえば、直径0.125mmである。ノズルホルダー64内において、ノズル4の軸方向の上方には、導入管65が配設され、導入管65とノズル4は、各々の端部が密接するように配置されている。導入管65は、溶融樹脂供給路46に連通する孔部67を有し、孔部67のノズル4側の先端は、ノズル4の噴射孔66の直径と同じになるように狭められてノズル4の噴射孔66に連通している。ノズル4および導入管65は共に、ノズルホルダー64の孔部64Aに圧入されている。ノズルユニット60は、ノズルユニット支持ブロック62にダイ支持ブロック63側から圧入またはネジ込み固定される。図3に示すように、ホットランナー45に形成されている溶融樹脂供給路46、導入管65の孔部67およびノズル4の噴射孔66は、鉛直方向に延長される軸中心P上に配置されている。
ノズルホルダー64は、熱伝導率が高く、強度が高いリン青銅などを採用し、ノズル4を包むように配置することで、周囲からの集熱によってノズル4の温度上昇を早めている。なお、導入管65とノズル4をセラミックス製とし、一体に形成するようにしてもよい。また、ノズルホルダー64、ノズル4および導入管65を一体に成形してノズルとしてもよく、このように一体化されるノズルはセラミックス製としてもよい。
ノズルユニット60は、ノズル4側がダイ支持ブロック63側に突出されている。ダイ支持ブロック63には、ノズルユニット60に対向する位置にダイ61が配置されているダイ61は、ノズルユニット60の先端部が挿入可能な孔部68を有している。ダイ61は、ダイ支持ブロック63に、ダイ支持ブロック63の下方側から圧入またはねじ込み固定されている。ダイ61の中心軸は、ノズルユニット60の中心軸Pと一致している。つまり、ダイ支持ブロック63、ノズルユニット支持ブロック62およびホットランナー45を組み立てたとき、溶融樹脂供給路46と導入管65の孔部65とノズル4の噴射孔66およびダイ61の中心軸は、中心軸P上にある。溶融樹脂供給路46は、図2(A),(B)に示すように、接続流路49,50を介して押し出し機2の溶融樹脂流路11に連通されている。したがって、押し出し機2から押出された溶融樹脂は、ノズル4の噴射孔66から噴射される。噴射孔66の直径(断面積)は、押し出し機2の溶融樹脂流路11の直径(断面積)に比べ格段に小さくしてある。したがって、溶融樹脂は、噴射孔66から高速で噴射される。
図3に示すように、ダイ支持ブロック62には、高温高圧気流供給部13から送流される高温気流を溜めるバッファ部70が設けられている。バッファ部70は、図2(A),(B)に示すように、溶融樹脂噴射部47(47A〜47G)を囲むように設けられる空間であり、高温高圧気流流路51に前後方向の長さ領域で連通している。高温高圧気流流路51は、高温高圧気流供給部13に接続する高温高圧気流供給管52に接続されている。そして、図3に示すように、高温高圧気流供給路51は、バッファ部70の右方でバッファ部70に交差するようにダイ支持ブロック63に穿たれていて、バッファ部70に高温高圧気流を送り込むことを可能にしている。
図3に示すように、ノズルユニット60のダイ61側の先端部71は、先細り形状をしていて、ダイ61の孔部68内に挿入されている。孔部68は、ノズルユニット60の先端部71の形状に倣うような形状を有している。ノズルユニット60とダイ61を組み立てた状態では、ノズルユニット60の先端部71とダイ61の孔部68との間には隙間72が形成される。この隙間72は、ノズルユニット60の先端部の外周にほぼ均一な大きさで形成され、高温高速気流の流路となる。この隙間72は、溶融樹脂噴射部47A〜47Gそれぞれに形成されている。高温高圧気流供給部13から送流される高温高圧気流は、バッファ部70で溶融樹脂噴射部47A〜47G毎に分岐され高温高速気流として噴射される(図3で点線の矢印で示す)。
なお、ダイ61の孔部68の下方側には、孔部68よりも直径が拡大された開口部73が設けられている。そして、孔部68と開口部73はテーパ部74で接続されている。このテーパ部74の傾斜角度、長さおよび開口部73の直径、長さは、少なくとも隙間72を通過した高温高速気流が流れやすい形状になるように設定される。
ノズル4から噴射された溶融樹脂(実線の矢印で図示)は、ノズル4から出た瞬間に勢いよく拡散しようとして延伸され、ノズル4の噴射孔66から出た直後の直径よりも細い繊維F0となる。このとき、噴射された繊維F0の進行方向の周囲には、高温高速気流が送流されているので、噴射直後の繊維F0は、この高温高速気流によって噴射直後の温度が維持されながら加熱延伸部5に送られる。なお、噴射直後の温度とは、溶融樹脂温度に近い温度である。紡糸部3は、ダイ61側で加熱延伸部5に筒形状の接続部75で接続されている。加熱延伸部5の構成は、図4、図5を参照して説明する。
図4は、加熱延伸部5を上方(紡糸部3側)から見た平面図、図5は、図4のD−D切断線で切断した縦断面図である。なお、図4は、上板部76および外殻77の上面(図5参照)を透視して表した図である。図4、図5に示すように、加熱延伸部5は、側面側、上面側および下面側の6面を外殻77で囲まれた空間内に2つのヒーター78A、78Bを有している。ヒーター78A,78Bは、たとえばセラミックヒーターなどの赤外線ヒーターである。なお、加熱筒6および高温高圧気流供給部13,14に備えられるヒーター12と区別するためにヒーター78A,78Bを赤外線ヒーター78A,78Bと記載する。紡糸部3と接続する筒形状の接続部75は、前後方向に配列されている溶融樹脂噴射部47A〜47Gを囲むように形成されており、接続部75で囲まれた空間(ノズル4の先端側を含む)は、ノズル4から噴射された溶融樹脂が延伸されて繊維化される領域で、この領域を1次延伸領域80とする。1次延伸領域80で形成される繊維F0は、直径が1000nm以下のものと1000nm以上のものが混在している。
赤外線ヒーター78A,78Bは、左右方向に空間(隙間)を有して配設されている。赤外線ヒーター78A,78Bで挟まれた空間には、高温高圧気流供給部13から送流される高温気流が下方に向かって流れる流路であり、この流路を1次高温気流流路54とする。図5に示すように、1次高温気流流路54は、ノズル4から噴射された溶融樹脂が1次延伸領域80で形成された繊維F0が下方に向かって高速で移動する領域である。この繊維F0の移動領域の周囲には、高温高速気流が送流されている(図5に点線の矢印で図示)。ここで、噴射された直後の溶融樹脂(繊維F0となっている)の速度をV0、1次高温気流流路54に流れる高温気流の速度をV1としたとき、V0<V1となるように、流速V0および流速V1が制御されている。そして、1次高温気流流路54内の高温気流の温度は、噴射された繊維を硬化させない温度としていることから、V1−V0の流速差効果によって、繊維F0は細く延伸される。そこで、1次高温気流流路54を2次延伸領域54と表すことができる。2次延伸領域54で形成される繊維F1の直径は、1次延伸領域80で形成された繊維F0よりも細くなるが、狙いの直径700nm以上のものも含まれる。
なお、図5に示すように、赤外線センサー78A、78Bは、上方側の上板部76と、下方側の下板部82とで上下で挟み込まれて固定されている。ノズル4から噴射された繊維F0は、下方に向かって広がろうとするが、高温気流によって実線の矢印で図示するように、赤外線ヒーター78A、78Bには接触しない範囲に広がりを抑えることができる。1次高温気流流路54の左右方向の幅は、噴射された繊維F0,F1が赤外線ヒーター78A、78Bと接触しない範囲で狭い方がよい。これは、噴射された繊維が赤外線ヒーター78A、78Bに接触して1次高温気流流路54が塞がってしまわないようにするためである。また、1次高温気流流路54の長さは、繊維F1が赤外線ヒーターに接触しないよう管理できる長さとする。噴射されて加熱延伸部54で細分化され延伸された繊維F1は高温度を保ちながら繊維回収管部28内に進行する。
図4、図5に示すように、加熱延伸部5の下方側には、繊維回収管部28が接続されている。繊維回収管部28の一方は、1次高温気流流路54に連通されている。繊維回収管部28は、1次高温気流流路54に連通する側は左右方向に狭く、1次高温気流流路54との連通部から離れるに従い広くなる喇叭のような形状を有している(図1参照)。図4に示すように、繊維回収管部28の加熱延伸部5との接続部近傍には、前後方向に繊維回収管部28に沿って延びる高温気流供給管85が配置されている。高温気流供給管85には、繊維回収管部28に連通する接続管部86(図5参照)が設けられていて、高温気流供給管85と繊維回収管部28とが連通している。図1に示すように、高温気流供給管85は、高温高圧気流生成部14に接続され、高温高圧気流生成部14から高温気流供給管85、接続管部86を介して繊維回収管部28内に高温高速気流を噴射している。高温気流供給管85には、保温ジャケット53が巻かれていて、高温高圧気流供給部14から接続管部86に至る間に高温気流の温度の低下を抑制している。高温気流の温度は、たとえば、溶融樹脂の温度が265℃で、ノズルを通過する溶融樹脂の温度が260℃になる場合、260℃以上で、溶融樹脂が熱分解しない温度の範囲とすることが好ましい。
接続管部86からは、高温高速気流が中心軸Pに対してほぼ直交する左方向に向かって噴射される(太い矢印で図示)。接続管部86から噴射される高温高速気流の流路を2次高温気流流路87とする。2次高温気流流路87の高温高速気流の流速をV2とすると、前述したノズル4から噴射される溶融樹脂(繊維F0)の流速V0、1次高温気流流路54内の高温気流の流速V1との関係は、V0<V2≦V1で表すように制御される。また、2次高温気流流路87内の高温気流の温度は、1次高温気流流路54(2次延伸領域)内の高温気流の温度とほぼ同じであって、加熱延伸部5から繊維回収管部28内に噴射された繊維F1を硬化させない温度である。紡糸部3から繊維回収管部28内に噴射された繊維F1は、2次高温気流流路87の高温高速気流によって吹き飛ばされる過程でさらに細く延伸されて、1000nm以下(たとえば500nm〜700nm)の極細繊維F2として下流側に移動され、繊維回収装置29で回収される。2次高温気流流路87内における繊維延伸領域88を3次延伸領域88とする。2次高温気流流路87内に流れる高温気流の温度は、1次高温気流流路54に流れる気流とほぼ同じとすることが好ましい。
以上説明したように、押し出し機2から紡糸部3に送られた溶融樹脂は、ノズル4から繊維F0として噴射され、1次延伸領域80、2次延伸領域54、3次延伸領域81を通過するに従い細く伸ばされ直径500〜700nmの極細繊維F2が安定して形成される。
次に、繊維回収管部28および繊維回収装置29の構成について図1、図5を参照して説明する。図1に示すように、繊維回収管部28は、一方の端部が加熱延伸部5に接続され、繊維回収装置29側の他方の端部は極細繊維F2が排出される開口部90となっている。繊維回収管部28は、加熱延伸部5側の接続部から繊維回収装置29に向かって縦断面積が徐々に広がるような形状を有している。ここで、縦断面積とは、繊維回収管部28を図示上下方向の切断線で切断したときの断面積とする。繊維回収管部28の加熱延伸部5側は、繊維回収部29に向かって縦断面積が緩やかに広がり、途中から繊維回収装置29までは急激に縦断面積が拡がるような喇叭のような形状をしている。加熱延伸部5から縦断面積が急激に変化する変曲点91までの領域は3次延伸領域である。繊維回収管部28において、加熱延伸部5から遠ざかるにつれ内部温度は低下していく。変曲点91から繊維回収装置29までの間は、極細繊維F2が個体として安定状態になる硬化領域92である。
硬化領域92に入った極細繊維F2は、ランダムに付着し合い固まってしまわないようにするため、素早く硬化させた方がよい。そこで、繊維回収管部28の硬化領域92には、内部より温度が低い外部空気(エア)を取り入れるノズル93が設けられている。硬化領域92は、外気よりも温度が高く負圧となっているので、外気が内部に自然吸引されて極細繊維F2を硬化させる。
繊維回収装置29は、繊維回収管部28の開口部90に対面し、たとえば、メッシュベルトなどのような複数の微細孔を有するベルト94を有している。繊維回収装置29は、ベルト94を挟んで繊維回収管部28の反対側に、繊維回収管部28内の極細繊維F2を吸引する吸引部95を有している。図1に示すように、繊維回収装置29は、送りローラー96と、巻き取りローラー97と、2個の中間ローラー98を有している。図1の例では環状のベルト94は、図示時計回りに回転する。吸引部95は、ベルト94の微細孔を通して繊維回収管部28内の極細繊維F2を吸引し、ベルト94の繊維回収管部28側の表面に極細繊維F2を層状に回収し、シート化する。このシートは、いわゆる不織布99である。
不織布99の厚みや、極細繊維F2の密度は、ベルト94の送り速度を制御することによって調整可能である。また、不織布99の幅は、溶融樹脂噴射部47の配列数で変更可能である。図1に示すように、ベルト94の繊維回収管部28の下方側には、先端が薄いヘラ100が配置されていて、ベルト94の送り、つまり不織布99の送りによって、ベルト94から不織布99を剥がして、不図示の巻き取りローラーで巻き取れるようになっている。この巻き取りローラーは、不織布99の進行方向に対して直交方向に配置される。
以上説明した第1の実施の形態に係る極細繊維製造装置1Aは、原料樹脂を溶融し紡糸部3に向かって押出す押し出し機2と、押し出し機2から押出された溶融樹脂を噴射するノズル4を有する溶融樹脂噴射部47と、ノズル4から噴射された溶融樹脂(繊維F0)の周囲に、溶融樹脂の噴射方向に沿う1次高温気流流路54を有する加熱延伸部5と、加熱延伸部5を通過した溶融樹脂に、1次高温気流流路54に交差する方向から高温気流を衝突させて溶融樹脂を極細繊維化する2次高温気流流路87を有する繊維回収管部28と、1次高温気流流路54および2次高温気流流路87に高温気流を供給する高温高圧気流供給部13,14と、を有している。
特許文献1に記載の極細繊維製造装置では、ノズルから噴射された溶融樹脂に溶融樹脂に高温気流を流し、溶融樹脂を極細繊維化しようとしている。しかし、ノズルから離れるにつれ、溶融樹脂の温度が低下し、粘度が急激に上昇する。このことによって、噴射された線をさらに細く延伸させて直径が1000nm以下の極細繊維(ナノ繊維)を安定して製造することは困難とされる。本実施の形態による極細繊維製造装置1Aでは、ノズル4から噴射され繊維F0に、繊維F0を硬化させない温度の高温高速気流を送流する1次高温気流流路54内で繊維F0を細く延伸させることで、噴射直後の繊維F0よりも細い繊維F1を形成する。さらに、2次高温気流流路87内で繊維F1に高温高速気流を衝突させて細く延伸させ、繊維F1よりも細い極細繊維F2を形成する。このように、極細繊維製造装置1Aは、ノズル4から噴射直後の1次延伸領域80、1次高温気流流路54内の2次延伸領域および2次高温気流流路87内の3次延伸領域の3段階の延伸領域を設けることで、直径が1000nm以下(たとえば500nm〜70nm)の極細繊維F2(いわゆるナノ繊維)を安定して量産することができる。
また、極細繊維製造装置1Aは、ノズル4から噴射される溶融樹脂の流速をV0、1次高温気流流路内54の高温気流の流速をV1、2次高温気流流路87内の高温気流の流速をV2としたとき、各流速が、V0<V1≦V2の関係になるように制御している。溶融樹脂に沿う1次高温気流流路内54の高温気流の流速V1は、噴射される溶融樹脂の流速V0よりも高くしているので、流速差(V1−V0)によって繊維F1を形成することが可能となる。また、2次高温気流流路87内の高温気流の流速をV1≦V2とし、繊維F1に強い高温気流を衝突させることで、繊維F1よりも細い極細繊維F2を形成することが可能となる。
また、押し出し機2は、加熱筒6内で回転するスクリュー7と、スクリュー7を軸方向に移動させる加圧ピストン機構部8を有し、加圧ピストン機構部8は、移動速度がほぼ一定、かつ30kgf/cm2〜2000kg/cm2の樹脂圧力で加熱筒6内の溶融樹脂を紡糸部3に向かって移動させている。
図2に示すように、本実施の形態の例では、7個の溶融樹脂噴射部47A〜47Gを有していて、各溶融樹脂噴射部に押し出し機2から押し出された溶融樹脂を溶融樹脂供給路46A〜46Gに分岐して供給している。溶融樹脂供給路46A〜46Gの各々は、接続流路50からの距離が異なり流体抵抗の影響で、溶融樹脂噴射部47A〜47Bそれぞれは溶融樹脂の押出速度や押出圧力に差が出ることがある。しかし、加圧ピストン機構部8の樹脂圧力を30kgf/cm2〜2000kgf/cm2と高圧にしているため、溶融樹脂噴射部47を複数個備えても、一つひとつの流体抵抗の影響は軽微となり、溶融樹脂の噴射速度、噴射圧力は、各溶融樹脂噴射部でほぼ一定であるといえる。すなわち、各溶融樹脂噴射部の溶融樹脂噴射量は、ほぼ一定となる。なお、特許文献1に記載の極細繊維製造装置では、ノズル噴射の分岐手前にギヤポンプを備え、ノズルに送る溶融樹脂の単位時間当たりの流量、流速を一定している。このような構成に対して、本実施の形態では、加圧ピストン機構8によって高圧で溶融樹脂を噴射させているので、ノズル4からの噴射の勢い(速度)がはるかに大きく、噴射直後の1次延伸領域80で形成される繊維F0は、従来技術による繊維よりも細い繊維を形成することができ、以降の2次、3次繊維延伸領域を設けることで、極細繊維F2を安定して量産できる。なお、第1の実施の形態の構成では、樹脂圧力は30kgf/cm2〜2000kgf/cm2の範囲内で高めに設定される。
また、ノズル4は、溶融樹脂が付着しにくく、断熱性が高いセラミックスで形成されている。細い流路に溶融樹脂を流動すると、溶融樹脂が噴射孔66内で粘度が上昇して目詰まりが発生することがある。しかし、セラミックス製のノズル4は、溶融樹脂が付着しにくく、断熱性が高いことから、ノズル界面から離れた外周側に熱が逃げにくいため噴射孔66内の目詰まりを防止することが可能となる。また、セラミックスと溶融樹脂の界面で摩擦熱が発生し、溶融樹脂の表面温度が上がるので、溶融樹脂の流動性を損なわず、溶融樹脂が噴射孔66内で目詰まりしにくくなるという効果がる。
また、加熱延伸部5は、1次高温気流流路54を2方向から挟むように配置されるヒーターである赤外線センサー78A,78Bを有している。吹出し口(ノズル4とダイ61との隙間72)から吹出した高温高速気流(空気)は断熱膨張によって温度が低下する。そこで、赤外線ヒーター78A,78Bの輻射熱によって、噴射された繊維F0および吹出された高温高速気流に熱補給することによって、繊維F0の温度が低下することを防止できる。なお、筒形状の接続部75を赤外線センサー78A,78Bの隙間とほぼ同じ広さにすることによって、高温の空気が1次高温気流流路54内(接続部75内)に滞留することで、吹出し部近傍の温度を所定温度に維持できる。
また、極細繊維製造装置1Aは、ノズル4の噴射孔66および1次高温気流流路54を、鉛直方向に延長している。このようにすれば、ノズル4から噴射された溶融樹脂(繊維F0,F1)は、鉛直方向に移動し、1次高温気流流路54を構成する赤外線ヒーター78A,78Bに接触せずに、2次高温気流流路87まで達することができる。
また、高温高圧気流供給部13,14は、高温エアタンク55と、高温エアタンク55の外周面に設けられたヒーター57と、高温エアタンク55内に配置される多数のビーズ56とを有し、高圧送風手段であるコンプレッサー(不図示)で外部の空気を多数のビーズ56間の隙間に通過させることで、高温気流を生成する。ビーズ56は、ヒーター57によって所定温度に加熱される。ビーズ56は、銅や砲金などの熱容量が大きい金属製であり、ビーズ56に外部空気を通過させることによって、単純にヒーターの間にエア(空気)を流したり、ブロアなどで加熱されたエアを流したりするよりも、効率的にエアの加熱が可能で、消費電力を抑えることが可能である。
また、繊維回収管部28は、紡糸部3側の2次高温気流流路87内の繊維延伸領域である3次延伸領域88と、3次延伸領域88から縦断面積が拡張された繊維硬化領域92を備えている。3次延伸領域88では、高温高速気流で繊維F1を極細繊維F2に変換する領域であり、この温度のままで極細繊維F2を回収しようとすると、繊維どうしが付着し合い固まりになってしまうことがある。そこで、3次延伸領域88の下流側の縦断面性(容積)を拡げることで、内部の温度を低下させて極細繊維F2を硬化させ極細繊維F2が固まりになることを防いでいる。また、繊維硬化領域92に外部の空気(エア)を取り入れるノズル93を設けているので、素早く極細繊維F2を硬化させることが可能となっている。
また、極細繊維製造装置1Aは、繊維回収管部28の開口部90に対向する位置に極細繊維F2を回収する繊維回収装置29を配設し、極細繊維回収装置29は、繊維回収管部28の開口部90に対面し、繊維回収管部28に対して移動可能で複数の微細孔を備えるベルト94を有し、ベルト94を挟んで繊維回収管部28の反対側に、繊維回収管部28内の極細繊維F3を吸引する吸引部95を有している。
繊維回収管部28内の極細繊維F2は、極細繊維回収装置29によって吸引され、微細孔を有するベルト94の繊維回収管部28側の表面に、繊維方向がランダムに積層された不織布99として回収することができる。
(第2の実施の形態)
続いて、第2の実施の形態に係る極細繊維製造装置1Bについて図面を参照して説明する。前述した第1の実施の形態の極細繊維製造装置1Aが、ノズル4から溶融樹脂をヒーター78Aとヒーター78Bとで挟まれた1次高温気流流路54に噴射されていることに対して、第2の実施の形態の極細繊維製造装置1Bは、ノズル4に接続された細管である加熱延伸管105を1次高温気流流路106としていることが異なる。加熱延伸管105を含む加熱延伸部107以外は、第1の実施の形態と同じものを使用できるので、詳しい説明は省略する。また、第1の実施の形態と同じ部分には、図5と同じ符号を付している。また、第2の実施の形態は、加工能力などでノズル径を細くできない場合に有効である。すなわち、極細繊維製造装置1Bは、加熱延伸管105の中で溶融樹脂の温度を降下させずにノズル径を細くすることと同じ効果が得られるものである。
図6は、第2の実施の形態に係る極細繊維製造装置1Bの加熱延伸部107を示す縦断面図である。図6に示すように、加熱延伸部107は、側面側、上面側および下面側の6面を外殻109で囲まれた空間内にヒーターである赤外線ヒーター78A,78Bを有している。紡糸部3と接続する筒形状の接続部108は、前後方向に配列されている溶融樹脂噴射部47A〜47G(図2参照)を囲むように外殻109から上方に突設されている。赤外線センサー78Aと赤外センサー78Bは、左右方向に隙間(空間)110を有して配列され、上方側の上板部76と、下方側の下板部82とで挟み込まれて固定されている。赤外線センサー78Aと赤外線ヒーター78Bとの左右方向のほぼ中央には、加熱延伸管105が配置されている。
加熱延伸管105は、ステンレス鋼などで成形された細管である。ノズル4の内径が0.5mmの場合に、たとえばノズル4から溶融樹脂が10cm/sで吐出され、加熱延伸管105の中で0.25mmにしたいとすると、気流の流速は20cm/s以上なくてはならない。ここで、加熱延伸管105の内径は、気体流速が20cm/sのときに乱流とならない大きさとする。加熱延伸管105は、溶融樹脂噴射部47に配置されるダイ61の下方側の孔部111に圧入固定され、加熱延伸部107の下方側に突出するまで延長されている。加熱延伸管105の中心は、ノズルユニット60の中心軸Pと一致し、鉛直方向に延脹されている。加熱延伸管105の下方側端部には、スリーブ112が取り付けられている。スリーブ112の孔部113は、繊維回収管部114に連通している。孔部113の内径は、ノズル6の噴射孔66(図3参照)よりも大きい。
ノズルユニット60からは、高温高速気流(図示点線で表す)が、ノズル4の先端部周囲から加熱延伸管105内に流される。この高温高速気流は、加熱延伸管105内では層流となっているため、ノズル4から噴射される溶融樹脂は、拡散せずに1本の線(または線状の繊維)となってスリーブ112の孔部113を通過して繊維回収管部114に達している。ノズル4から噴出される溶融樹脂を線状に噴射すために、樹脂圧力は30kgf/cm2〜100kgf/cm2程度に設定される。ここで、加熱延伸管105内の気流の流路を1次高温気流流路106とする。ノズル4が噴射する溶融樹脂の流速をV0、1次高温気流流路106の流速をV1としたとき、それぞれの流速はV0<V1の関係にある。そして、1次高温気流流路106における高温高速気流の温度は、原料樹脂の溶融温度とほぼ同じとしているので、流速と温度の関係から細線状の溶融樹脂115は、ノズル4から噴射された時の直径よりも末端部では細く延伸される。
ノズル4から噴射された直後の溶融樹脂115の直径が噴射孔66とほぼ同じ0.5mmとすれば、スリーブ112近傍に達した溶融樹脂115の直径は、たとえば約1/2の0.25mmとなる。また、スリーブ112の孔部113は、加熱延伸管105の内径よりもはるかに小さいので、孔部113を通る高温気流の流速が増し、孔部113を通過する細線状の溶融樹脂115は、たとえば0.1mmというようにさらに細線化されて繊維回収管部28に入る。なお、ノズル4から噴射される溶融樹脂の温度および噴射速度は、加熱延伸管部105内をスリーブ112に向かって直線で延長するように制御される。
なお、噴射孔66から噴射された溶融樹脂は、1次高温気流流路106内で高温気流によって延伸され細くなり始める。この領域を1次延伸領域とする。そして、スリーブ112側に近づくにつれて、高温気流によってさらに細く延伸されて、スリーブ112から噴射され拡散し、1次延伸領域よりも細い繊維F1となる。この領域を2次延伸領域とする。そして、繊維F1は、繊維回収管部114内に噴射される。なお、加熱延伸管105の左右両側には、ヒーターである赤外線ヒーター78A,78Bを備え、赤外線ヒーター78A,78Bで加熱延伸管105を加熱することで、1次高温気流流路106に流れる高温気流の温度を所定温度に維持できる。
スリーブ112は、加熱延伸管105側から中央の孔部113に向かって孔径が小さくなるテーパ部117と、中央の孔部113から下方(繊維回収管部114側)に向かって孔径が大きくなるテーパ部118を有している。テーパ部117を設けることによって、細線状の溶融樹脂116を、スリーブ112の孔部113に挿入し易くしている。また、細線状の溶融樹脂116が、スリーブ112の孔部113に挿入した後は、溶融樹脂115が加熱延伸管105に接触することなく、スムーズに送り出せる。一方、テーパ部118を設けることによって、孔部113より下方側が急激に広がるので、溶融樹脂115が、孔部113を通過した直後に拡散し、細線状の溶融樹脂116よりも細い繊維F1となる。孔部113の下方側には、中心軸Pに対して左方向側にほぼ直交するように高温気流を噴射する(太い矢印で図示)接続管部86を有している。接続管部86から噴射される高温高速気流の流路を2次高温気流流路87とする。
2次高温気流流路87内の高温気流の流速をV2とすると、1次高温気流流路54の高温気流の流速V1とすると、V1とV2とはV1≦V2となるように制御される。また、2次高温気流流路87内の高温高速気流の温度は、1次高温気流流路106内の高温高速気流の温度とほぼ同じであって、加熱延伸管105から繊維回収管部114内に噴射された極細繊維F2を硬化させない温度である。紡糸部3から繊維回収管部114内に噴射された極細繊維F2は、2次高温気流流路87の高温高速気流によって吹き飛ばされる過程でさらに細く延伸されて、1000nm以下(たとえば500nm〜700nm)の極細繊維F2として下流側に移動される。極細繊維F2が形成される領域を3次延伸領域とする。極細繊維F2は繊維回収装置29(図1参照)で回収される。
なお、スリーブ112の材質は、ステンレス鋼などの金属で形成したものでもよいが、セラミックス製としてもよい。細線化された溶融樹脂115がスリーブ112を通過する際、溶融樹脂115がスリーブ112の孔部113に付着してしまうことがある。そこで、スリーブをセラミックス製とすれば、溶融樹脂115が、孔部113を通過する際に接触してしても、溶融樹脂115のスリーブ115との界面で摩擦熱が発生し、溶融樹脂115の表面温度が上がるので、溶融樹脂115の流動性を損なわず、溶融樹脂115がスリーブ112の孔部に付着することを防止できる。スリーブ112の材質としては、たとえば、多孔質のセラミックスや焼結金属などでもよい。多孔質セラミックスの場合、周囲から高温空気を送り込むことが可能で、この高温空気によって溶融樹脂が付着しにくくなる。
以上説明した第2の実施の形態の極細繊維製造装置1Bにおいて、1次高温気流流路106は、ノズル4の噴射孔66と連通し、噴射孔66の直径よりも大きい内径を有する加熱延伸管105内に形成している。加熱延伸管105(1次高温気流流路106)内に噴射された溶融樹脂は、高温高速気流によって線状に細く延伸される。そして、スリーブ112から噴射されて拡散し、加熱延伸管105内よりも細く延伸された繊維F1となる。繊維F1は、前述した第1の実施の形態と同様に、2次高温気流流路87内で、高温高速気流を衝突させることで極細繊維F2となる。このように、極細繊維製造装置1Bは、ノズル4から噴射直後の1次延伸領域、1次高温気流流路54内下流側の2次延伸領域および2次高温気流流路87内の3次延伸領域の3段階の延伸領域を設けることで、直径が1000nm以下(たとえば500nm〜700nm)の極細繊維F2(いわゆるナノ繊維)を安定して量産することができる。
また、ノズル4の噴射孔66および加熱延伸管105は、鉛直方向に延長されているため、ノズル4から噴射された溶融樹脂は、加熱延伸管105の内壁に接触することなくスリーブ112の孔部113を通過することが可能となっている。また、紡糸部34と加熱延伸部105との接続部108は、赤外線ヒーター78Aと赤外線ヒーター78Bとの間の隙間110とほぼ同じ大きさにしているので、赤外線ヒーター78A,78Bからの輻射熱が、紡糸部3のダイ61の周囲まで伝わり、ダイ61の周囲の温度を高温に維持できる。
なお、第2の実施の形態は、加熱延伸管105を含む加熱延伸部107以外は、第1の実施の形態と同じ構成なので、第1の実施の形態と同様な効果を奏することができる。
(第2の実施の形態の変形例)
上述した第2の実施の形態は、1次高温気流流路106に対して交差する2次高温気流流87を有しているが、1次高温気流流路106に沿う方向に2次高温気流流路120を設けるようにしてもよい。この構成を第2の実施の形態の変形例として、図7を参照して説明する。
図7は、第2の実施の形態の変形例に係る極細繊維製造装置1Bの一部を示す図で、1次高温気流流路106と2次高温気流流路120の関係を示す図である。なお、図6と同じ部分には、図6と同じ符号を付している。図7に示すように、加熱延伸部121には、赤外線ヒーター78A,78Bの下方に高温気流供給ブロック122が取り付けられている。加熱延伸管105は、溶融樹脂噴射部47(図6参照)から高温気流供給ブロック122を貫通する位置まで延長されている。加熱延伸管105の下方側先端部は、内径が下方側に小さくなるようなテーパ形状に形成されている。先端の孔123は、細線状の溶融樹脂115が通過可能で、この溶融樹脂115の周囲に1次高温気流流路106を流れた高温気流が繊維回収管部124内に達することが可能な内径を有している。
高温気流供給ブロック122には、高温高圧気流供給部14から送られる高温気流を流す高温気流供給路125と、加熱延伸管105の先端部周囲に設けられたバッファ部126を有している。高温気流供給路125は、図6に示す高温気流供給管85を介して高温高圧気流供給部14に接続されている(図1参照)。バッファ部126は、加熱延伸部105の先端部の周囲に設けられた空間127で繊維回収管部124に連通されている。この空間127が2次高温気流流路120となる。2次高温気流流路120は、バッファ部126容積に対し、出口側である2次高温気流流路120が急激に狭くなっているので、バッファ部126内の圧力が高まり、2次高温気流流120から高温高速気流が噴射される。なお、高温気流供給ブロック122の外周表面には、不図示のヒーターが配置されていて、高温気流供給ブロック122内の細線状の溶融樹脂115、高温気流の温度を維持できるようにしている。
図6で説明したように、ノズル4から噴射された細線状の溶融樹脂115は、加熱延伸管105の先端の孔123を通過する。1次高温気流流路106から孔123を通る高温気流は、内径が縮小されていることから流速が増す。したがって、細線状の溶融樹脂115は、孔123を通過する際に、1次高温気流流路106を通過する間よりも細く延伸される。孔123を通過した直後の細線状の溶融樹脂115は、1次高温気流流路106からの高温気流に加えて2次高温気流流路120から噴射される高温高速気流とで繊維回収管部124内に吹き飛ばされて繊維F1となる。繊維F1は、繊維回収管部124内において、高温高速気流によってさらに細く延伸され、極細繊維F2が形成され、加熱延伸部107の鉛直方向下方に配置される繊維回収装置29で回収される。なお、回収管部124は、第1の実施の形態の繊維回収管部28および第2の実施の形態の繊維回収管部114に対して外形こそ異なるが、構成、機能などは同じなので図示および説明を省略する。
以上説明した変形例は、加熱延伸部107の下方に、高温気流供給ブロック122を設け、高温気流供給ブロック122内に2次高温気流流路120を形成している。加熱延伸管105の先端部から溶融樹脂115が突出した直後に2次高温気流流路120からの高温高速気流を当てることによって、極細繊維F2を形成することが可能となる。細線状の溶融樹脂115は、噴射直後に、1次高温気流流路106および2次高温気流流路120の両方からの高温高速気流によって撹拌されて繊維F1となり、さらに吹き飛ばされる間に極細繊維F2が形成される。なお、繊維回収管部124内は外気とは隔離されていて、2次高温気流流路120に近い領域は溶融樹脂の温度が維持されているので、粘度が急激に高くなることはなく、500nm〜700nの極細繊維を安定して製造することが可能となる。
(極細繊維製造方法)
続いて、第1の実施の形態および第2の実施の形態で説明した極細繊維製造装置1A,1Bを用いた極細繊維製造方法について、図1〜図6を参照しながら説明する。まず、原料樹脂を押し出し機2に投入し、押し出し機2で溶融し紡糸部3に備えらえたノズル4に向かって高圧で押出す。そして、押出された溶融樹脂をノズル4から1次高温流路54内に噴射する。1次高温気流流路54内には、溶融樹脂とほぼ同じ温度の高温高速気流が送流されていて、1次高温気流流路54内で噴射された溶融樹脂を高温高速気流によって細く延伸させる。1次高温気流流路54を通過した溶融樹脂は、2次高温気流流路87内で高温高速気流を衝突させてさらに細く延伸させる。このようにして極細繊維は製造される。1次高温気流流路54および2次高気流流路87には、ノズル4から溶融樹脂を噴射する前から高温気流を送流しておくものとする。
なお、第1の実施の形態では、溶融樹脂は、繊維F0としてノズル4から噴射される。繊維F0は、ノズル4の内径よりも細い繊維である。しかし、繊維F0は、1次高温気流流路54でさらに細く延伸され(繊維F1)、2次高温気流流路87で500nm〜700nmレベルの極細繊維F2に延伸される。また、第2の実施の形態では、溶融樹脂は、加熱延伸管105内の1次高温気流流路106で細線状の溶融樹脂115に延伸され、加熱延伸管105に設けられたスリーブ112から繊維F1として噴射される。噴射された繊維F1は、2次高温気流流路87で500nm〜700nmレベルの極細繊維F2に延伸される。
なお、本発明は前述の第1、第2の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。たとえば、前述した第1の実施の形態および第2の実施の形態では、極細繊維製造装置1A、1Bは、1個の押し出し機2を備えているが、押し出し機2を2個または2個以上備える構成にすることができる。たとえば、押し出し機2を2個備える構成の場合、一方の押し出し機が上死点側に移動するときに、他方の押し出し機で溶融樹脂を押出すようにすれば、切れ間なくノズル4から溶融樹脂を噴射することができ、量産性が向上する。追加する押し出し機は、押し出し機2に対向するように配置し、図2に示す紡糸部3の接続流路49に加熱筒ヘッド9の溶融樹脂流路11を接続するようにすれば実現できる。
また、前述した第1の実施の形態および第2の実施の形態では、1次高温気流流路54,106に高温高圧気流を供給する高温高圧気流供給部13と、2次高温気流流路87に高温気流を供給する高温高圧気流供給部14を備えているが、高温高圧気流供給部13と高温高圧気流供給部14とを一つにまとめて、1次高温気流流路と2次高温気流流路に分岐して高温高圧気流を供給するようにしてもよい。このような構成にする場合には、1次高温気流流路側、2次高温気流流路側にそれぞれにバルブ58を備え、バルブ58によって高温気流の供給量などを制御すればよい。
また、前述した第1の実施の形態および第2の実施の形態では、ノズル4の噴射孔66および1次高温気流流路54,106の中心軸Pを鉛直方向に延長し、押し出し機2を水平に配置しているが、押し出し機2の軸を中心軸Pの延長上に配置するようにしてもよい。このようにすれば、紡糸部3の構成を簡単にすることができる。このような構成の場合、ホッパー38の原料樹脂の投入口を上方に向くように配置すれば実現可能である。
また、前述した第1の実施の形態および第2の実施の形態では、繊維回収装置29をノズル4の噴射孔66および1次高温気流流路54,106の中心軸Pの延長方向に対して繊維回収部(ベルト94)を平行になるように配置しているが、中心軸Pに対して直交するように配置してもよい。