JP6718247B2 - アリルアルコール類の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アリルアルコール類の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、不均一触媒である固体触媒を使用し、原料オレフィンからアリルアルコール類を製造する方法に関するものである。
アリルアルコール類は、樹脂、樹脂添加剤、医薬、農薬、香料等を製造するための中間体として、工業的に重要な化合物である。
従来、アルカジエノール類の製造法としては、パラジウム化合物とリン化合物とよりなる触媒および必要に応じて二酸化炭素の存在下、共役アルカジエンと水とを水和二量化反応させる方法が知られている。
例えば、特許文献1には、第8族遷移金属均一系触媒(錯体触媒)の存在下で、共役ジエン類、分子状酸素及びプロトン供与体(水等)を反応させるジオール類の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、パラジウム化合物とホスフィン類またはホスファイト類よりなる触媒ならびに二酸化炭素の存在下で共役アルカジエンと水とを反応させてアルカジエノール類を製造する方法において、副生するジアルカジエニルエーテル類をパラジウム化合物(錯体触媒)の存在下、水と反応させてアルカジエノール類に変換する方法が開示されている。
また、非特許文献1には、二酸化炭素及び第8族遷移金属均一系触媒(錯体触媒)の存在下で、原料オレフィンを反応させて、アリルアルコール類を製造する方法が開示されている。
原料オレフィンに水を付加することによるアリルアルコール類を合成する反応において、目的とする化合物以外の副生成物も合成されることが多い。そのため、工業的にアリルアルコール類を製造するためには、高い化合物選択性及び高い収率が求められる。上述の特許文献1,2や非特許文献1等で開示された従来のアリルアルコールの製造方法は、化合物選択性には優れるものの、工業的観点からは収率が十分とはいえなかった。また、均一系触媒を用いるため触媒回収系が複雑になり、金属回収率が低い等の問題もあった。
特開2003−238465号公報 特開平7−179378号公報
Chemistry, A European Journal, Communication, 2014, 20, 9914-9917
このように従来の原料オレフィンに水を直接付加することによるアリルアルコール類の製造方法において、工業的スケールで高い化合物選択性と収率を両立できる製造方法は確立できていないのが実状である。
かかる状況下、本発明の目的は、高い化合物選択性と収率を両立することが可能な、原料オレフィンに水を直接付加することによるアリルアルコール類の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の金属担持固体触媒を用いることにより、酸素存在下、原料オレフィンに水を直接付加することによるアリルアルコール類の製造方法において、化合物選択性と収率を両立できることも見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
[1] 原料オレフィンに水を直接付加してアリルアルコール類を製造する方法において、酸素存在下、周期表の第8〜第10族から選ばれる少なくとも1種の水酸化物を形成している遷移金属元素を含有する触媒活性成分が酸化物担体に担持された固体触媒に、原料オレフィンと水とを接触させて、原料オレフィンをアリルアルコール類に変換するアリルアルコール類の製造方法。
[2] 原料オレフィンに水を直接付加してアリルアルコール類を製造する方法において、酸素存在下、周期表の第8〜第10族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含有する触媒活性成分がセリア(CeO 2 )、ジルコニア(ZrO 2 )及びセリア−ジルコニア複合酸化物(CeO 2 −ZrO 2 )から選択される少なくとも1種である酸化物担体に担持された固体触媒に、原料オレフィンと水とを接触させて、原料オレフィンをアリルアルコール類に変換することを特徴とするアリルアルコール類の製造方法。
[3] 前記周期表の第8〜第10族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素が、Pdである前記[1]または[2]に記載のアリルアルコール類の製造方法
[4] 原料オレフィンが、芳香族置換基を有するオレフィンまたは共役アルカジエンである前記[1]〜[]のいずれかに記載のアリルアルコール類の製造方法。
] ジメチルスルホキシドを共存させる前記[1]〜[]のいずれかに記載のアリルアルコール類の製造方法。
] 反応に供される水の量が原料オレフィン1モルに対して1〜20モルである前記[1]〜[]のいずれかに記載のアリルアルコール類の製造方法。
] 前記酸素の分圧が0.1〜2.0MPaである前記[1]〜[]のいずれかに記載のアリルアルコール類の製造方法。
本発明によれば、工業的スケールで高い化合物選択性と収率を両立できる原料オレフィンに水を直接付加するアリルアルコール類の製造方法が提供される。
1,3-ブタジエンからのアリルアルコールの合成に使用される気相流通式反応装置の模式図である。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「〜」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。
本発明は、原料オレフィンに水を直接付加してアリルアルコール類を製造する方法において、酸素存在下、周期表の第8〜第10族から選ばれる少なくとも1種の水酸化物を形成している遷移金属元素を含有する触媒活性成分が酸化物担体に担持された固体触媒に、原料オレフィンと水とを接触させて、原料オレフィンをアリルアルコール類に変換するアリルアルコール類の製造方法に関する。
また、本発明は、原料オレフィンに水を直接付加してアリルアルコール類を製造する方法において、酸素存在下、周期表の第8〜第10族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含有する触媒活性成分がセリア(CeO 2 )、ジルコニア(ZrO 2 )及びセリア−ジルコニア複合酸化物(CeO 2 −ZrO 2 )から選択される少なくとも1種である酸化物担体に担持された固体触媒に、原料オレフィンと水とを接触させて、原料オレフィンをアリルアルコール類に変換することを特徴とするアリルアルコール類の製造方法に関する。
原料オレフィンに水を直接付加してアリルアルコール類を製造する方法において、従来の均一触媒では、化合物選択性には優れるものの、工業的観点からは収率が十分でなかったのに対し、本願発明の製造方法では、詳しくは後述する特定の固体触媒を使用することによって、高収率(例えば、60%以上)でアリルアルコール類を製造することができる。また、触媒活性成分に使用される金属は高価であるため再利用されるが、固体触媒であれば、均一系触媒と比較して触媒回収系が簡易となり、金属回収率が向上するという利点もある。
以下、本発明の製造方法に用いられる固体触媒、反応原料、製造されるアリルアルコール類、製造条件等について詳細に説明する。
(固体触媒)
本発明のアリルアルコール類の製造方法で使用される固体触媒は、周期表の第8〜第10族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含有する触媒活性成分が酸化物担体に担持された固体触媒である。
触媒活性成分は、原料オレフィンからアリルアルコール類を生成する反応に対する触媒作用を有する、周期表の第8〜第10族の遷移金属元素を含有する。
周期表の第8〜第10族の遷移金属元素としては、Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Ptが挙げられる。固体触媒の触媒活性成分は、目的とするアリルアルコール類の収率、選択性が得られるのであれば、これらの遷移金属元素からなる金属及びその化合物、並びにこれらの遷移金属元素を含む合金及びその化合物から選択されるいずれであってもよい。また、固体触媒の触媒活性成分は、目的とするアリルアルコール類の収率、選択性が得られるのであれば、周期表の第8〜第10族の遷移金属元素以外の成分を含んでいてもよい。
本発明に係る固体触媒において、上記遷移金属元素の中でもPd、Ni、Ptが好ましく、特に好ましくはPdである。
また、アリルアルコールから不飽和カルボニル化合物への酸化やワッカー酸化などの副反応を比較的抑えられるという点で、上記遷移金属元素が水酸化物を形成していることが好ましい。なお、本明細書において、遷移金属元素の水酸化物は、結晶及び非晶質のものを含む。例えば、パラジウム水酸化物を、以下、「Pd(OH)2」と記載する場合があるが、必ずしも、Pd(OH)2の化学量論組成を満たさなくてもよい。
本発明の固体触媒の触媒活性成分の担持量は、目的とするアリルアルコール類の収率、選択性が得られる範囲で選択され、触媒活性成分である遷移金属元素の種類、酸化物担体の種類や形態等にもよるが、通常、酸化物担体に対する重量比(金属原子換算)が、1〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは、3〜20重量%である。
なお、本発明の固体触媒の触媒活性成分の担持量は、酸化物担体と触媒活性成分前駆体の仕込み量に依存するが、すべての触媒活性成分が担体に担持されるわけではないので、仕込み量と実際の担持量に若干のずれが生じる場合がある。実際の触媒活性成分の担持量は、例えば、蛍光X線分析(XRF)で評価することができる。
固体触媒の酸化物担体としては、アリルアルコール類の製造条件において安定な金属酸化物からなる担体を使用することができる。
具体的には、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO)、セリア(CeO2)、カルシア(CaO)、チタニア(TiO2)、酸化コバルト(Co34)などが挙げられる。また、これらの酸化物の混合物でもよく、複合酸化物でもよく、物性を損なわない限り、他の元素がドープされていてもよい。
この中でも金属酸化物が好ましく、特にセリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)、これらの複合酸化物であるセリア―ジルコニア複合酸化物(CeO2−ZrO2)は、触媒活性・生成物選択性が高い固体触媒が得られるため好ましい。セリア―ジルコニア複合酸化物(CeO2−ZrO2)におけるCeO2とZrO2の割合は特に限定はないが、CeO2基準で、通常、10〜90wt%の範囲である。
一般的に担体の比表面積は、大きいほど触媒活性成分が担体表面により多く均一に担持されるため、有用成分が多く担持された触媒の製造が可能となるが、触媒活性成分を担持できる程度の比表面積を有していれば、特に限定されない。
具体的には、触媒単位重量当たりの触媒活性を十分に有することができるためには、比表面積は10m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましい。
酸化物担体の形状は、特に限定はなく、いかなる形状でもよいが、通常、粉体である。担体の形態も稠密体、多孔体など任意の形態であってよい。
粒子状の場合の平均粒径は、特に限定はないが、5nm〜1mmであることが好ましい。より好ましくは、5nm〜100μmである。
担体の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、所定数の粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、粒径の平均値として算出する方法などが挙げられる。なお、微粒子の形状が、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。
また、粒径、および/または比表面積が異なる2種類以上の担体を混用することもできる。
固体触媒は、従来公知の金属担持方法により、酸化物担体へ触媒活性成分を担持することによって製造することができる。例えば、触媒活性成分前駆体を含む溶液に、酸化物担体を含浸して触媒活性成分の前駆体を担持したのち、所定の条件で乾燥・熱処理する方法が挙げられる。なお、この担持された金属にはホスフィン、ホスファイト、ホスフォラアミダイトなどのリン化合物、ピリジン、ビピリジンなどの窒素化合物、N−ヘテロ環カルベンなどの炭素化合物が配位していてもよい。
触媒活性成分に含まれる遷移金属元素の原料としては、目的とする触媒性能が得られるならば特に制限はなく、第8〜10族の遷移金属元素の金属塩(例えば、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハライド塩)や、第8〜10族の遷移金属元素の有機化合物(例えば、アセチルアセトナト化合物、アルケン配位化合物、アミン配位化合物等)等が挙げられる。
触媒活性成分に含まれる遷移金属元素がPdの場合には、Pdの金属塩、特には硝酸塩である硝酸パラジウムや塩化物である塩化パラジウムが好適な原料として挙げられる。
固体触媒の形状や大きさには特に制限はなく、粉末状、顆粒状、粒状、更にはペレット状等の成形品であっても良い。また、固体触媒の大きさについても任意であるが、例えばペレット状に成形された固体触媒の場合、直径1〜20mmで、厚さ1〜20mmであることが好ましい。
(反応原料)
反応原料として使用される原料オレフィンとしては、分子内にオレフィン性二重結合を少なくとも1つ有する有機化合物(以下、「オレフィン性化合物」と称す。)であれば特にその構造に制限されるものではなく、飽和炭化水素基のみにより置換されたオレフィン性化合物、不飽和炭化水素基を含む炭化水素基により置換されたオレフィン性化合物、または、ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィン性化合物等、いずれのオレフィン性化合物にも適用できるが、中でも不飽和炭化水素基により置換されたオレフィン性化合物を使用するのが好ましい。
飽和炭化水素基のみにより置換されたオレフィン性化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン等の直鎖状末端オレフィン性炭化水素、イソブテン、2−メチル−1−ブテン等の分岐状末端オレフィン性炭化水素、シスまたはトランス−2−ブテン、シスまたはトランス−2−ヘキセン、シスまたはトランス−3−ヘキセン、シスまたはトランス−2−オクテン、シスまたはトランス−3−オクテン等の直鎖状内部オレフィン性炭化水素、2,3−ジメチル−2−ブテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン等の分岐状内部オレフィン性炭化水素、プロピレン〜ブテン混合物、1−ブテン〜2−ブテン〜イソブチレン混合物等の低級オレフィン混合物、ブテン類の二量化により得られるオクテン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等の低級オレフィンの二量体〜四量体のようなオレフィンオリゴマー異性体混合物等の末端オレフィン性炭化水素−内部オレフィン性炭化水素混合物、シクロペンテン、シクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、リモネン等の脂環式オレフィン性炭化水素が挙げられる。
不飽和炭化水素基を含む炭化水素基により置換されたオレフィン性化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼンのような芳香族置換基を有するオレフィン性化合物、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、ノルボルナジエンのような共役アルカジエンが挙げられる。
ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィン性化合物としては、ビニルメチルエーテル、オレイン酸メチル、アクリロニトリル、アリルアルコール、オレイルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、1−ヒドロキシ−2,7−オクタジエン、1−メトキシ−2,7−オクタジエン、7−オクテン−1−アール、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、オレイン酸メチル、3−ペンテン酸メチル、酢酸ビニル、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等が挙げられる。
この中でも、芳香族置換基を有するオレフィン性化合物、共役アルカジエンが好適な原料オレフィンである。
芳香族置換基を有するオレフィン性化合物としては、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテン、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、メチル−α−メチルスチレン、メトキシスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、けい皮酸エステル、スチルベン等が挙げられる。
共役アルカジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、1,3−オクタジエン等があげられ、原料が1,3−ブタジエンである場合、通常容易に入手可能のものとして、精製1,3−ブタジエン及び所謂BBP(ブタン−ブタジエン−生成物)、すなわち、ナフサ分解生成物中のC4留分混合物などが挙げられる。
他の原料である水としては、水和反応に影響を与えない程度の純度の水が適宜使用される。水の使用量については、特に限定的ではなく、原料オレフィンの種類や反応系における濃度等を考慮して適宜設定される。
以下、原料オレフィンと水との反応を具体的に説明する。
原料オレフィン1モルに対する水の量は、通常1〜20モル、好ましくは1.5〜15モルの範囲から選択される。水の割合が低いと原料オレフィンの反応速度が遅くなり、アリルアルコール類の選択性も低下する。水の割合が高すぎると、原料オレフィンと均一に溶解させる為の溶媒量が増加し、水の精製に膨大なエネルギーを必要とするなど、工業的には有利ではない。
また、空塔基準での反応液の滞留時間は、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上であり、特に好ましくは30分以上である。また、100時間以下が好ましく、更に好ましくは50時間以下、特に好ましくは10時間以下である。この滞留時間が短すぎると反応はほとんど進行しない。また、長すぎる場合には触媒充填層が長大となり反応器の設備費増加及び触媒量増加により経済性が大幅に悪化してしまう。
上記の空塔基準の滞留時間から求められるように、触媒充填量は1分あたりの導入液流量に対して、5容量倍以上が好ましく、より好ましくは10容量倍以上であり、特に好ましくは30容量倍である。また、6000容量倍以下が好ましく、更に好ましくは3000容量倍以下、特に好ましくは600容量倍以下である。触媒充填量が少なすぎると反応はほとんど進行しない。また、触媒充填量が多すぎた場合には触媒コストが増大して経済性が大幅に悪化してしまう。
反応形式は固定床、トリクルベッド、多管式など種々の固体触媒による一般的な充填層型の反応器の全てが使用可能であるが、好ましくは固定床反応器ならびにトリクルベッド反応器のいずれかである。この反応器は一機、あるいは複数機を使用することが可能である。
上記原料オレフィンと水との反応を行うにあたっては、反応をより円滑に行なうためには溶媒を使用するのが好適である。使用しえる溶媒としては、原料オレフィン及び水の両者を少なくとも部分的に溶解し得る溶媒全てが使用可能である。
例えばジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、エチル−nブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、ヘキセン、オクテン等のアルケン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、スルホラン等のスルホン類、ニトロベンゼン、ニトロメタン等のニトロ化合物、ピリジン、α−ピロリン等のピリジン誘導体、トリエチルアミン等のアミン類、アセトアミド、プロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−オクタノール等のアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸類などが例示され、原料オレフィンの種類に応じて適宜好適な溶媒が選択される。かかる溶媒を使用する場合には、これらを単独で、または混合溶媒としてのいずれでも差しつかえない。
特に、触媒活性を向上させる点で、反応系にジメチルスルホキシドを共存させることが好ましい。ジメチルスルホキシドを共存させることにより、金属と相互作用し、水和反応速度の向上や金属再酸化の促進が可能となる。
ジメチルスルホキシドの量は、触媒を活性化させるために十分な量であればよく、反応液中の濃度として通常0.001重量%〜90重量%、好適には0.01重量%〜50重量%である。
また、反応生成物の収率や選択率を損なわない範囲で、反応系に任意の添加剤を添加してもよい。添加剤の種類や量は、反応系、使用する固体触媒の種類や量などを考慮して、適宜選択すればよい。
添加剤として、例えば、ベンゾキノン系添加剤、ホスフィン系添加剤等が挙げられ、具体的には、1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、2−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2−クロロ−1,4−ベンゾキノン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
この中でも、反応生成物の収率や選択率を向上させることができる点で、1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノンが好適である。
原料オレフィンと水とを反応させる温度は特に限定されないが、通常50〜150℃程度であり、特に60〜140℃が好ましい。
温度が低すぎると反応に長時間を要する欠点があり、高すぎると固体触媒の寿命が短くなる欠点がある。原料オレフィンと水とを固体触媒の存在下で反応させるのは、加圧、減圧いずれでも実施可能であり、回分式でも連続式でも良好に実施される。
反応系における酸素は、触媒中の金属を再酸化する役割を有する。酸素の分圧は、原料オレフィンと等モル以上になる圧力であればよく、好適には0.1〜2.0MPaである。
上記反応により、原料オレフィンは加水分解して下記一般式(I)で示されるアリルアルコール類を生成する。
1−CH=CH−CH2OH ・・・・・・・・・・(I)
(式中、R1は水素原子、飽和炭化水素または不飽和炭化水素である。)
以上の方法により原料オレフィンと水を反応させた反応生成液中には、固体触媒、主生成物であるアリルアルコール類、副生成物、未反応の原料オレフィン、水、あるいは溶媒等が含まれている。
例えば、原料オレフィンとしてアリルベンゼンを使用した場合には、反応生成液中には、固体触媒、主生成物であるアリルアルコール、副生成物のシンナミルアルデヒド、1−フェニルアセトン、未反応のアリルベンゼン、水、あるいは溶媒等が含まれることになる。
また、原料オレフィンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、主生成物としてはオクタ−2,7−ジエン−1−オールが、副生物としてはオクタ−1,7−ジエン−3−オール、オクタトリエン類、ジオクタジエニルエーテル類、未反応の1,3−ブタジエン、水、あるいは溶媒等が含まれていることになる。
これら反応副生物の生成量は反応条件に依存して異なるが、通常原料オレフィン基準でそれぞれ数モルパーセント内外である。なお、生成したアリルアルコール類は蒸留等により反応生成液から適宜分離される。
反応後の固体触媒は、ろ過、遠心分離等の方法を用いて、容易に分離・回収することができる。分離された固体触媒は、適宜乾燥され、必要に応じて再活性化を行った後、再利用することができる。また、触媒活性成分としての遷移金属元素、酸化物担体を公知のリサイクル処理を行って、再使用することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り重量部および重量%を示す。
使用した主な薬品類、分析装置は次の通りである。
(パラジウム塩)
・低塩素硝酸パラジウム(II)(田中貴金属工業社製)
・塩化パラジウム(II)(田中貴金属工業社製)
・テルル(VI)酸 (和光純薬工業社製)

(担体)
(A1)セリア(CeO2
第一稀元素化学工業株式会社、DKE―R9
比表面積:15m2/g

(A2)セリア(CeO2
高純度化学研究所、酸化セリウム
比表面積:58m2/g

(A3)セリア(CeO2
触媒学会参照触媒(第一稀元素化学工業株式会社)、JRC−CEO−4
比表面積:65m2/g

(A4)セリア(CeO2
触媒学会参照触媒(第一稀元素化学工業株式会社)、JRC−CEO−3
比表面積:81m2/g

(A5)セリア(CeO2
触媒学会参照触媒(第一稀元素化学工業株式会社)、JRC−CEO−2
比表面積:123m2/g

(B1)ランタニア(La23
和光純薬工業株式会社、129―02622

(C1)アルミナ(Al23
触媒学会参照触媒(水沢化学工業株式会社)、品番:JRC−ALO−5
比表面積:179m2/g

(D1)ジルコニア(ZrO2
触媒学会参照触媒(第一稀元素化学工業株式会社)、品番:JRC−ZRO−3
比表面積:94m2/g

(D2)ジルコニア(ZrO2
第一稀元素化学工業株式会社、品番:RC−100
比表面積:91m2/g

(F1)セリア(CeO2)−ジルコニア(ZrO2
触媒学会参照触媒(第一稀元素化学工業株式会社)40wt%
比表面積:54m2/g
「分析装置」
・ガスクロマトグラフ
Agilent社製、 6850Series GC System, キャピラリーカラム J&W Scientific, HP-1 (i.d. 0.32 mm, film thickness 0.25 μm, 30 m)
Agilent社製、 6850Series GC System, キャピラリーカラム J&W Scientific, HP-INNOWAX (i.d. 0.32 mm, film thickness 0.25 μm, 30 m)

・ガスクロマトグラフ質量分析計
Thermo Fisher Scientific社製、Polaris Q 質量分析計 equipped with ガスクロマトグラフ, J&W HP-1 カラム (i.d. 0.32 mm, film thickness 0.25 μm, 30 m)

・マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置
Agilent社製、 型番:4100 MP―AES
1.アリルアルコール類の合成(原料オレフィン:アリルベンゼン)
原料オレフィンとして、アリルベンゼンを使用して、アリルアルコールの合成を行った。
1−1.固体触媒の調製
「固体触媒A1」
硝酸パラジウム(II)(Pd(NO3)2・H2O)(570μL、0.5mmol)を、蒸留水(400mL)に添加し、Pd濃度が1.25mmol/Lとなるように水溶液を調製した。
次いで、この水溶液にNaOH水溶液を滴下してpH8に調整した後、担体として、(A1)CeO2粉末1gを添加し、pH8に保ちながら70℃で1時間撹拌させた。
次いで、溶液のpHが安定するまで蒸留水で洗浄後、吸引濾過し、70℃で一晩乾燥させることで、5wt%(Pd換算、仕込み量)の固体触媒A1を得た。
なお、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置によって評価した固体触媒A1のPd担持量は、4.9wt%(Pd換算)であった。
「固体触媒A2」
担体として、(A1)CeO2に変えて、(A2)CeO2を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A2を得た。
「固体触媒A3」
担体として、(A1)CeO2に変えて、(A3)CeO2を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A3を得た。
「固体触媒A4」
担体として、(A1)CeO2に変えて、(A4)CeO2を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A4を得た。
「固体触媒A5」
担体として、(A1)CeO2に変えて、(A5)CeO2を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒A5を得た。
「固体触媒B1」
担体として、(A1)CeO2に変えて、(B1)La23を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒B1を得た。
「固体触媒C1」
担体として、(A1)CeO2に変えて、(C1)Al23を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒C1を得た
「固体触媒D1」
担体として、(A1)CeO2に変えて、(D1)ZrO2を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒D1を得た。
「固体触媒D2」
Pd濃度を1.25mmol/Lに固定した硝酸パラジウム(II)水溶液、5wt%(Pd換算、仕込み量)になるような量のZrO2粉末を添加した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒D1の前駆体を得た。
次いで、この前駆体(0.2g)とテルル(VI)酸(H66Te)(17.86mg、0.078mmol)を、蒸留水(10mL)に添加し、室温で30分撹拌させた後、この水溶液にホルムアルデヒド水溶液(8mL)を滴下し、70℃で1時間撹拌させた。
次いで、溶液を蒸留水で洗浄後、吸引濾過し、70℃で一晩乾燥させることで、5wt%(Pd及びTe換算、仕込み量)の固体触媒D2を得た。
「固体触媒D3」
塩化パラジウム(II)(PdCl2)(714.2mg、4.0mmol)を、蒸留水(400mL)に添加し、Pd濃度が10mmol/Lとなるように水溶液を調製した。
次いで、この水溶液にNaOH水溶液を滴下してpH8に調整した後、担体として、(D2)ZrO2粉末1gを添加し、pH8に保ちながら70℃で1時間撹拌させた。
次いで、溶液のpHが安定するまで蒸留水で洗浄後、吸引濾過し、70℃で一晩乾燥させることで、30wt%(Pd換算、仕込み量)の固体触媒D3を得た。
なお、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置によって評価した固体触媒D3のPd担持量は、30.2wt%(Pd換算)であった。
「固体触媒E1」
固体触媒E1として、20wt% Pd(OH)2/Carbon (Sigma-Aldrich会社から購入した試薬)を使用した。
「固体触媒E2」
固体触媒E2として、5wt% Pd/Carbon (Sigma-Aldrich会社から購入した試薬)を使用した。
「固体触媒F1」
担体として、(A1)CeO2に変えて、(F1)CeO2-ZrO2を使用した以外は、固体触媒A1の調製と同様の操作により、固体触媒F1を得た。
「固体触媒F2」
担体として、(D2)ZrO2に変えて、(F1)CeO2−ZrO2を使用した以外は、固体触媒D3の調製と同様の操作により、固体触媒F2を得た。
上記固体触媒の触媒活性成分、担持量、担体の種類及び物性を表1にまとめて示す。
1−2.アリルベンゼンからのアリルアルコールの合成(添加剤なし)
上記固体触媒A1〜A5、固体触媒B1、固体触媒C1、固体触媒D1,D2及び固体触媒E1,E2を使用して、アリルベンゼンを使用して、アリルアルコールの合成を行った。
ステンレス製耐圧反応容器に、固体触媒(表1参照)、アリルベンゼン(1mmol)、DMSO(2.0mL)、蒸留水(10mmol)、撹拌子をいれた。この反応容器を酸素ガスで置換したのち、2.0MPaの酸素ガスを導入した。この反応容器を80℃で48時間撹拌した。
反応終了後、反応液をセライトろ過し、トリデカンを用いてガスクロマトグラフにて濾液を分析し、アリルベンゼンの変換率、生成物の収率を求めた。使用した触媒、合成条件、転化率、及び収率を表2にまとめて示す。
なお、表2において、化合物1はシンナミルアルコール(目的生成物)、化合物2がシンナムアルデヒド(副生成物)、化合物3がフェニルアセトン(副生成物)である。
表1、表2より、担体の比表面積が大きいほど、担体表面により多く均一に担持されるため、触媒活性が向上する傾向にあることが示唆された。特に、担体の比表面積が50m2/g以上の場合に収率、選択性ともに高く良好な結果を与える。ただし、担体の比表面積が大きすぎると逆に収率、選択性が低下する傾向にあるため、担体の比表面積は50〜90m2/gが好適であることが示唆された。比表面積の大きい担体で、活性や選択性が低下する原因は不明であるが、不純物や結晶性の影響などが考えられる。
1−3.アリルベンゼンからのアリルアルコールの合成(添加剤あり)
添加剤として、1,4−ベンゾキノン(1,4−BQ)、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン(2,5−di−tBuBQ)、メチル−p−ベンゾキノン(2−MeBQ)、2−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン(2−tBuBQ)、2−クロロ−1,4−ベンゾキノン(2−ClBQ)、トリフェニルホスフィン(PPh3)を使用した以外は、1−2と同様の操作でアリルベンゼンからのアリルアルコールの合成を行った。なお、固体触媒には、固体触媒A2を使用した。使用した触媒、合成条件、変換率、及び収率を表3にまとめて示す。
なお、表3において、化合物1はシンナミルアルコール(目的生成物)、化合物2がシンナムアルデヒド(副生成物)、化合物3がフェニルアセトン副生成物)である。
表3からわかるように、ベンゾキノン類の添加により、収率、選択性ともに改善される。特に立体障害が大きく電子供与性の置換基を有する2,5−di−tBuBQで効果が大きい。これは、パラジウムの0価から2価への再酸化の促進、パラジウム2価活性種の安定化、立体障害による生成物の過剰酸化の抑制などの効果によると考えられる。
2.アリルアルコール類の合成(原料オレフィン:1,3-ブタジエン)
原料オレフィンとして、1,3-ブタジエンを使用して、アリルアルコールの合成を行った。
2−1.固体触媒の調製
「固体触媒G1」
塩化パラジウム(II)(PdCl2)(1g、5mmol)を、アセトニトリル(10mL)に添加し、100℃で2時間撹拌して均一溶液とした後、この溶液をひだ折り濾紙で濾過し、撹拌したヘキサン(150ml)に添加した。析出した沈殿を吸引濾過し、ヘキサンで洗浄後、減圧乾燥し、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド(1.3g、5mmol)を得た。
次いで、このビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド(130mg、0.5mmol)とトリフェニルホスフィン(250mg、0.1mmol)を窒素雰囲気下でジクロロメタン(50ml)に加え、30分撹拌後、担体CeO2−ZrO2粉末1gを添加し、6日間室温で撹拌後、メタノール、ヘキサンで洗浄した。吸引濾過し、一晩室温で乾燥させることで、5wt%(Pd換算、仕込み量)の固体触媒を得た。
なお、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置によって評価した固体触媒のPd担持量は、1.4wt%(Pd換算)であった。
「固体触媒G2」
配位子として、トリフェニルホスフィンに変えて、2−ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニルを使用した以外は、固体触媒G1の調製と同様の操作により、固体触媒G2を得た。
「固体触媒G3」
[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリド(160mg、0.25mmol)と担体CeO2−ZrO2粉末500mgをジクロロメタン(50ml)に窒素雰囲気下で加え、6日間室温で撹拌後、メタノール、ヘキサンで洗浄し、吸引濾過し、一晩室温で乾燥させることで、5wt%(Pd換算、仕込み量)の固体触媒を得た。
なお、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置によって評価した固体触媒のPd担持量は、0.4wt%(Pd換算)であった。
固体触媒G1〜G3の触媒活性成分、担持量、及び担体の比表面積を表4にまとめて示す。
2−2.1,3-ブタジエンからのアリルアルコールの合成(バッチ反応)
上記固体触媒A2、固体触媒D3、固体触媒E1、E2及び固体触媒F2、G1、G2、G3を使用して、1,3-ブタジエンを使用して、アリルアルコールの合成を行った。
ステンレス製耐圧反応容器に、固体触媒(表1参照)、有機溶媒(2.0mL)、蒸留水(5mmoL)、撹拌子をいれた。この反応容器を液体窒素で冷却してここにブタジエンガスを導入した。この反応容器を酸素ガスで置換したのち、1.0〜2.0MPaの酸素ガスを導入した。この反応容器を表5に示す条件、具体的には55℃〜60℃で24〜72時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、トリデカンを用いてガスクロマトグラフにて分析し、生成物である2-ブテン-1,4-ジオールの収率を求めた。使用した触媒、合成条件、及び水を基準とした収率を表5にまとめて示す。なお、この反応では、酸化反応であると同時に生成物に水1分子が導入される反応であるため、水を基準に収率を計算した。なお、表5において、化合物1は2-ブテン-1,4-ジオール(目的生成物)、化合物2が1-ブテン-3,4-ジオール(副生成物)である。
表5に示されるように、アリルベンゼンからのアリルアルコールの合成で有効であった固体触媒A2はブタジエンからアリルアルコールの合成でも効果的であった。また、固体触媒D3、F2を用いて反応時間を延ばすと化合物1と化合物2の合計収率が向上した。アリルベンゼンのときと同様に、市販の固体触媒E1および固体触媒E2では反応が進行しなかった。リン配位子やカルベン配位子を含有する固体触媒G1〜G3は有機溶媒存在下で化合物1の選択率が向上した。
2−3.1,3-ブタジエンからのアリルアルコールの合成(固定床流通反応)
触媒としてF1(100mg)を固定床反応器に充填し、図1に示す気相流通式反応装置にて、0.78%ブタジエンを含む窒素を40mL/分、水を0.5mL/分、乾燥空気を8.8mL/分で3MPaの圧力を保ち80℃で流通した。生成物として化合物1が9%と化合物2が1%得られた。このときの触媒活性は766mmol/ kg−cat.hrと計算された。
3.アリルアルコール類の合成(原料オレフィン:プロピレン)
3−1.プロピレンからのアリルアルコールの合成
上記固体触媒G1を使用して、プロピレンを使用して、アリルアルコールの合成を行った。
ステンレス製耐圧反応容器に、固体触媒F1、DMSO(2.0mL)、蒸留水(5mmol)、撹拌子をいれた。この反応容器を液体窒素で冷却してここにプロピレンガスを導入した。この反応容器を酸素ガスで置換したのち、1.0MPaの酸素ガスを導入し、60℃で48時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、トリデカンを用いてガスクロマトグラフにて分析し、生成物であるアリルアルコールが6%の収率で得られた。
本発明によれば、工業的に付加価値の高いアリルアルコール類を、生成物選択性高く、高効率に製造することができる。

Claims (7)

  1. 原料オレフィンに水を直接付加してアリルアルコール類を製造する方法において、酸素存在下、周期表の第8〜第10族から選ばれる少なくとも1種の水酸化物を形成している遷移金属元素を含有する触媒活性成分が酸化物担体に担持された固体触媒に、原料オレフィンと水とを接触させて、原料オレフィンをアリルアルコール類に変換することを特徴とするアリルアルコール類の製造方法。
  2. 原料オレフィンに水を直接付加してアリルアルコール類を製造する方法において、酸素存在下、周期表の第8〜第10族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含有する触媒活性成分がセリア(CeO 2 )、ジルコニア(ZrO 2 )及びセリア−ジルコニア複合酸化物(CeO 2 −ZrO 2 )から選択される少なくとも1種である酸化物担体に担持された固体触媒に、原料オレフィンと水とを接触させて、原料オレフィンをアリルアルコール類に変換することを特徴とするアリルアルコール類の製造方法。
  3. 記遷移金属元素が、Pdであることを特徴とする請求項1または2に記載のアリルアルコール類の製造方法。
  4. 原料オレフィンが、芳香族置換基を有するオレフィンまたは共役アルカジエンであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のアリルアルコール類の製造方法。
  5. ジメチルスルホキシドを共存させることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のアリルアルコール類の製造方法。
  6. 反応に供される水の量が原料オレフィン1モルに対して1〜20モルであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のアリルアルコール類の製造方法。
  7. 前記酸素の分圧が0.1〜2.0MPaであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のアリルアルコール類の製造方法。
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