JP6717062B2 - 熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステム - Google Patents

熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステム Download PDF

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Description

本発明は、熱サイクル用作動媒体およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムに関する。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、幾何異性体を有する化合物の名称およびその略称に付けられた(E)は、E体(トランス体)を示し、(Z)はZ体(シス体)を示す。該化合物の名称、略称において、E体、Z体の明記がない場合、該名称、略称は、E体、Z体、およびE体とZ体の混合物を含む総称を意味する。
従来、冷凍機用冷媒、空調機器用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動媒体、潜熱輸送装置(ヒートパイプ等)用作動媒体、二次冷却媒体等の熱サイクルシステム用の作動媒体としては、クロロフルオロカーボン(CFC)やヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられてきた。しかし、CFCおよびHCFCは、成層圏のオゾン層への影響が指摘され、特にCFCはオゾン破壊係数(ODP)が高いことからモントリオール議定書にしたがって既に全廃となっており、HCFCについても2020年に全廃が決まっている。
そこで、CFCやHCFCに代えて、オゾン層への影響が少ない、ヒドロフルオロカーボン(HFC)が熱サイクル用の作動媒体として用いられるようになった。一方で、HFCは地球温暖化係数(GWP)が比較的高く問題であった。
例えば、ビルの冷暖房用、工業用の冷水製造プラントなどに用いられる遠心式冷凍機においては、従来、トリクロロフルオロメタン(CFC−11)が作動媒体として用いられていた。しかしながら、ODPが1、GWPが4750であるCFC−11は、既に全廃されており、これを代替する作動媒体として、現状では、ODPが0.02、GWPが77と、ODPとGWPがともに低い1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−123)が使用されている。また、GWPが高いがODPが0であるHFCとして、GWPが1430の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)や、GWPが1030の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)等もCFC−11の代替として使用されている。
これらの中でもHCFC−123は、2020年に全廃されるHCFCであることから、これに代わる作動媒体の開発が急務となっている。その際には、HFC−134aやHFC−245faよりもGWPが低い作動媒体であって、これまでHCFC−123が用いられてきた機器をそのまま使用し続けることが可能な作動媒体の開発が求められている。
最近、オゾン層への影響が少なく、かつGWPが低い作動媒体として、大気中のOHラジカルによって分解されやすい炭素−炭素二重結合を有する、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)およびクロロフルオロオレフィン(CFO)等に期待が集まっている。本明細書においては、特に断りのない限り飽和のHFCをHFCといい、HFOとは区別して用いる。また、HFCを飽和のヒドロフルオロカーボンのように明記する場合もある。
なかでも、HCFOおよびCFOは、一分子中のハロゲンの割合が多いため、燃焼性が抑えられた化合物であり、環境への負荷が少なくかつ燃焼性を抑えた作動媒体として検討されている。例えば、特許文献1には1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd)を用いる作動媒体が記載されている。特許文献1では、HCFO−1224ydをE体とZ体の区別なく記載している。
また、特許文献2には特定のハロオレフィンを含む共沸および共沸混合物様組成物が記載されており、具体的な共沸混合物様組成物の一例として、HCFO−1224yd(E)と(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(Z))を共沸混合物様となる割合で組み合わせた組成物が記載されている。特許文献2には該共沸混合物様組成物の用途の一つとして、熱媒が記載されている。
しかしながら、特許文献1、2には、HCFO−1224ydのZ体を具体的な熱サイクルシステムに適用した例について記載がない。
国際公開第2012/157763号 特表2014−504675号公報
本発明は、上記観点からなされたものであって、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−123)との代替が充分可能なサイクル性能を有するとともに、HCFC−123用の熱サイクル用システムに用いた場合でも装置への負荷が少なく、ODPおよびGWPが充分に低いことで地球温暖化への影響が充分に抑制された熱サイクル用の作動媒体、およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムの提供を目的とする。
本発明は、以下の構成を有する熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステムを提供する。
[1](Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを含む熱サイクル用作動媒体であって、前記作動媒体全量に対する(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合計量の割合が95.5質量%超100質量%以下であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体。
[2]前記作動媒体全量に対する(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合計量の割合が98.5質量%超100質量%以下である[1]に記載の熱サイクル用作動媒体。
[3](Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合計量に対する(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの割合が10〜40質量%である[1]または[2]に記載の熱サイクル用作動媒体。
[4](Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合計量に対する(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの割合が10〜30質量%である[1]または[2]に記載の熱サイクル用作動媒体。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の熱サイクル用作動媒体を含む熱サイクルシステム用組成物。
[6]さらに、冷凍機油を含む[5]に記載の熱サイクルシステム用組成物。
[7]さらに、前記熱サイクル用作動媒体の劣化を抑制する安定剤を含む[5]または[6]に記載の熱サイクルシステム用組成物。
[8][5]〜[7]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物を用いた、熱サイクルシステム。
[9]前記熱サイクルシステムは熱サイクル用システムを備え、前記熱サイクル用システムは1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタンを熱サイクル用作動媒体として用いるのに適した熱サイクル用システムである、[8]記載の熱サイクルシステム。
[10]前記熱サイクルシステムが冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である[8]または[9]に記載の熱サイクルシステム。
[11]前記熱サイクルシステムが遠心式冷凍機である[8]〜[10]のいずれかに記載の熱サイクルシステム。
[12]前記熱サイクルシステムが低圧型遠心式冷凍機である[8]〜[11]のいずれかに記載の熱サイクルシステム。
本発明によれば、HCFC−123との代替が充分可能なサイクル性能を有するとともに、HCFC−123用の熱サイクル用システムに用いた場合でも装置への負荷が少なく、ODPおよびGWPが充分に低いことで地球温暖化への影響が充分に抑制された熱サイクル用作動媒体、およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムが提供できる。
また、本発明の熱サイクル用作動媒体は、作動媒体としてHCFC−123を用いるように設計された熱サイクル用システムにそのまま適用可能であり、そのようにして得られる熱サイクルシステムは経済性に優れるものである。
HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合組成と液相、気相温度の関係を示す図である。 本発明の熱サイクル用作動媒体を評価するための冷凍サイクルシステムの一例を示す概略構成図である。 図2の冷凍サイクルシステムにおける熱サイクル用作動媒体の状態変化を圧力−エンタルピ線図上に記載したサイクル図である。 本発明の熱サイクルシステムの一例である遠心式冷凍機を示した概略構成図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、「熱サイクルシステム」とは、熱サイクル用システムに、熱サイクル用作動媒体(以下、単に作動媒体ともいう。)が投入されて熱サイクルが実行可能な状態にされた、作動媒体と熱サイクル用システムを備えるシステムをいう。「熱サイクル用システム」とは、システム内を作動媒体が流通することで該作動媒体と該作動媒体以外の他の物質との間で熱交換(熱サイクル)が行えるように設計された熱サイクル用のシステムをいう。
<熱サイクル用作動媒体>
本発明の熱サイクル用作動媒体は、(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd(Z))と(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(Z))を含み、前記作動媒体全量に対するHCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の合計量の割合が95.5質量%を超え100質量%以下である。
本発明の作動媒体は、熱サイクル用システムと組み合わせて熱サイクルシステムに用いられる。また、作動媒体は作動媒体を含む熱サイクルシステム用組成物として熱サイクルシステムに用いてもよい。
(HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)の特性)
HCFO−1224yd(Z)は、燃焼性を抑えるハロゲンと、大気中のOHラジカルによって分解され易い炭素−炭素二重結合をその分子内に有する。HCFO−1224yd(Z)は、HCFO−1224yd(E)に比べて化学的安定性が高い。
HFO−1336mzz(Z)は、HFO−1336mzzの大気中のOHラジカルによって分解され易い炭素−炭素二重結合をその分子内に有する。
本発明の作動媒体が含有するHCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)の作動媒体としての特性、具体的には、沸点、サイクル性能、熱サイクルシステム稼働時の熱サイクル用システム(装置)への負荷、環境負荷を、HCFC−123と比較して表1に示す。
(サイクル性能)
サイクル性能としては、例えば、図2に示す冷凍サイクルシステムで評価される成績係数および冷凍能力が挙げられる。HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)の成績係数および冷凍能力は、HCFC−123を基準(1.000)とする相対成績係数および相対冷凍能力として表1に示す。相対成績係数および相対冷凍能力は、1より大きいほど、HCFC−123に比較してサイクル性能に優れる作動媒体であることを示す。
(装置への負荷)
装置への負荷は、例えば、図2に示す冷凍サイクルシステム10の圧縮機11から吐出する作動媒体の圧縮機吐出ガス圧力(以下、吐出圧力という)から評価する。なお、冷凍サイクルシステム10の概要構成およびサイクルは後述のとおりである。具体的には、HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)の吐出圧力のHCFC−123を使用した場合の吐出圧力に対する圧力比として評価する。HCFC−123に比較して吐出圧力が小さいほど、すなわち圧力比が小さいほど、装置への負荷が小さい作動媒体であることを示す。
(環境負荷)
環境への負荷は、ODPおよびGWPで評価する。ODPはオゾン層保護法に示されるまたはこれに準じて測定された値である。GWPは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書(2007年)に示される、または該報告書の方法に準じて測定された100年の値である。本明細書において、GWPは特に断りのない限りこの値をいう。なお、混合物である作動媒体におけるGWPは、各成分の組成質量による加重平均とする。
Figure 0006717062
表1から、HCFC−123に比較して、HCFO−1224yd(Z)は、作動媒体としての冷凍能力に非常に優れ、成績係数については同等であり、かつGWP等の環境負荷が小さい。一方、装置への負荷が大きいことがわかる。
また、HFO−1336mzz(Z)は、HCFC−123に比較して、作動媒体としての成績係数については同等であるが冷凍能力が低く、かつGWP等の環境負荷が小さい。さらに、装置への負荷が小さいことがわかる。
本発明の作動媒体は、HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)を任意の割合で含有することで、HCFC−123に代替する作動媒体として、それぞれの化合物が有する特長を活かし、かつ、短所を補完したバランスのとれた作動媒体である。すなわち、本発明の作動媒体は、従来使用されてきたHCFC−123に比べて、環境に対する負荷が著しく小さく、サイクル性能が同等かそれ以上であり、装置への負荷は、HCFC−123に置き換え可能な程度に少ない。
ここで、作動媒体を複数の化合物の混合物とする場合、温度勾配を考慮する必要がある。温度勾配は、混合物の作動媒体における液相、気相での組成の差異をはかる指標であり、例えば、図2に示す冷凍サイクルシステム10の凝縮器12における凝縮の開始温度と完了温度の差として示される。化合物単体および共沸混合物においては、温度勾配は0であり、蒸発時に共沸混合物に近い挙動(気液組成の変化が少ない)を示す擬似共沸混合物、例えば、特許文献2における共沸混合物様組成物では温度勾配は極めて0に近い。
温度勾配が大きいと、例えば、蒸発器における入口温度が低下することで着霜の可能性が大きくなり問題である。さらに、熱サイクルシステムにおいては、熱交換効率の向上をはかるために熱交換器を流れる作動媒体と水や空気等の熱源流体を対向流にすることが一般的であり、安定運転状態においては該熱源流体の温度差が小さいことから、温度勾配の大きい非共沸混合物の場合、エネルギー効率のよい熱サイクルシステムを得ることが困難である。このため、混合物を作動媒体として使用する場合は適切な温度勾配を有する作動媒体が望まれる。
HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合物は、いずれの混合割合の混合物においても共沸しない。すなわち、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合物は、いずれの混合割合の混合物も非共沸混合物である。図1にHCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の組成を変えた混合物について、圧力101.3kPaにおける混合物中のHCFO−1224yd(Z)の質量分率と液相の温度、および気相の温度との関係を示す。
図1から、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合物は非共沸混合物であるが、気液の組成変化はほぼ組成範囲を選ばずに少ないことがわかる。HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合物はいずれの混合割合の混合物においても温度勾配が小さく、具体的には、図2に示す冷凍サイクルシステムで後述のようにして評価される温度勾配として、いずれの混合割合の混合物においても温度勾配は3.3℃以下である。
したがって、本発明の作動媒体において、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の好ましい組成を設定する場合、温度勾配をあまり考慮する必要はない。また、両化合物の組成変化によるGWP等の環境負荷の変化も殆どないことから、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の好ましい組成は、サイクル性能と装置への負荷のバランスを主に考慮して、選択される。
本発明の作動媒体における、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の好ましい組成としては、サイクル性能と装置への負荷のバランスを勘案して、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の合計量に対する、HCFO−1224yd(Z)の割合が10〜40質量%、およびHFO−1336mzz(Z)の割合が90〜60質量%となる組成が挙げられる。作動媒体における、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の組成が、上記範囲であれば、サイクル性能がHCFC−123と同等またはそれ以上であり、圧力比も1.25未満と十分に小さい。
HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)のより好ましい組成は、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の合計量に対する、HCFO−1224yd(Z)の割合が10〜30質量%、およびHFO−1336mzz(Z)の割合が90〜70質量%となる組成である。作動媒体における、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の組成が、該範囲であれば、サイクル性能がHCFC−123と同等またはそれ以上であり、圧力比も1.15未満と非常に小さい。
本発明の作動媒体全量に対するHCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の合計量の割合は、95.5質量%超100質量%以下である。HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の合計量の割合が上記範囲内であれば、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合物における、HCFC−123に比べて、環境に対する負荷が著しく小さく、サイクル性能が同等かそれ以上であり、装置への負荷は、HCFC−123に置き換え可能な程度に少なく、温度勾配の問題も殆どないという上記特徴が十分に発揮できる。
作動媒体全量に対するHCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の合計量の割合は、同様の観点から、98.5質量%超100質量%以下がより好ましく、99質量%超100質量%以下がさらに好ましい。
(サイクル性能、装置への負荷および温度勾配の評価方法)
作動媒体のサイクル性能(成績係数(COP)、冷凍能力(Q))、装置への負荷(吐出圧力(Px))および温度勾配は、例えば、図2に概略構成図が示される冷凍サイクルシステムを用いて評価できる。
図2に示す冷凍サイクルシステム10は、作動媒体蒸気Aを圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする圧縮機11と、圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする凝縮器12と、凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする膨張弁13と、膨張弁13から排出された作動媒体Dを加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする蒸発器14と、蒸発器14に負荷流体Eを供給するポンプ15と、凝縮器12に流体Fを供給するポンプ16とを具備して概略構成されるシステムである。
冷凍サイクルシステム10においては、以下の(i)〜(iv)のサイクルが繰り返される。
(i)蒸発器14から排出された作動媒体蒸気Aを圧縮機11にて圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする(以下、「AB過程」という。)。
(ii)圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを凝縮器12にて流体Fによって冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする。この際、流体Fは加熱されて流体F’となり、凝縮器12から排出される(以下、「BC過程」という。)。
(iii)凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張弁13にて膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする(以下、「CD過程」という。)。
(iv)膨張弁13から排出された作動媒体Dを蒸発器14にて負荷流体Eによって加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする。この際、負荷流体Eは冷却されて負荷流体E’となり、蒸発器14から排出される(以下、「DA過程」という。)。
冷凍サイクルシステム10は、断熱・等エントロピ変化、等エンタルピ変化および等圧変化からなるサイクルシステムである。作動媒体の状態変化を、図3に示される圧力−エンタルピ線(曲線)図上に記載すると、A、B、C、Dを頂点とする台形として表すことができる。
AB過程は、圧縮機11で断熱圧縮を行い、高温低圧の作動媒体蒸気Aを高温高圧の作動媒体蒸気Bとする過程であり、図3においてAB線で示される。後述のとおり、作動媒体蒸気Aは過熱状態で圧縮機11に導入され、得られる作動媒体蒸気Bも過熱状態の蒸気である。
吐出圧力は、図3においてBの状態の圧力(Px)であり、冷凍サイクルにおける最高圧力である。また、図3においてBの状態の温度(Tx)は吐出温度であり、冷凍サイクルにおける最高温度である。なお、以下に説明するとおり、BC過程は等圧冷却であることから吐出圧力は凝縮圧と同じ値を示す。よって、図3においては、便宜上、凝縮圧をPxと示している。
BC過程は、凝縮器12で等圧冷却を行い、高温高圧の作動媒体蒸気Bを低温高圧の作動媒体Cとする過程であり、図3においてBC線で示される。この際の圧力が凝縮圧である。圧力−エンタルピ線とBC線の交点のうち高エンタルピ側の交点Tが凝縮温度であり、低エンタルピ側の交点Tが凝縮沸点温度である。ここで、作動媒体が非共沸混合媒体である場合の温度勾配は、TとTの差として示される。
CD過程は、膨張弁13で等エンタルピ膨張を行い、低温高圧の作動媒体Cを低温低圧の作動媒体Dとする過程であり、図3においてCD線で示される。なお、低温高圧の作動媒体Cにおける温度をTで示せば、T−Tが(i)〜(iv)のサイクルにおける作動媒体の過冷却度(SC)となる。
DA過程は、蒸発器14で等圧加熱を行い、低温低圧の作動媒体Dを高温低圧の作動媒体蒸気Aに戻す過程であり、図3においてDA線で示される。この際の圧力が蒸発圧である。圧力−エンタルピ線とDA線の交点のうち高エンタルピ側の交点Tは蒸発温度である。作動媒体蒸気Aの温度をTで示せば、T−Tが(i)〜(iv)のサイクルにおける作動媒体の過熱度(SH)となる。なお、Tは作動媒体Dの温度を示す。
作動媒体の冷凍能力(Q)と成績係数(COP)は、作動媒体のA(蒸発後、高温低圧)、B(圧縮後、高温高圧)、C(凝縮後、低温高圧)、D(膨張後、低温低圧)の各状態における各エンタルピ、h、h、h、hを用いると、下式(A)、(B)からそれぞれ求められる。機器効率による損失、および配管、熱交換器における圧力損失はないものとする。
作動媒体のサイクル性能の算出に必要となる熱力学性質は、対応状態原理に基づく一般化状態方程式(Soave−Redlich−Kwong式)、および熱力学諸関係式に基づき算出できる。特性値が入手できない場合は、原子団寄与法に基づく推算手法を用い算出を行う。
Q=h−h …(A)
COP=Q/圧縮仕事=(h−h)/(h−h) …(B)
上記(h−h)で示されるQが冷凍サイクルの出力(kW)に相当し、(h−h)で示される圧縮仕事、例えば、圧縮機を運転するために必要とされる電力量が、消費された動力(kW)に相当する。また、Qは負荷流体を冷凍する能力を意味しており、Qが高いほど同一のシステムにおいて、多くの仕事ができることを意味する。言い換えると、大きなQを有する場合は、少量の作動媒体で目的とする性能が得られることを表し、システムの小型化が可能である。
なお、上記の説明は冷凍サイクルの温度条件として以下の温度により評価を行った際の数値に基づくものである。
蒸発温度;0℃(ただし、非共沸混合物の場合は、蒸発開始温度と蒸発完了温度の平均温度)
凝縮完了温度;40℃(ただし、非共沸混合物の場合は、凝縮開始温度と凝縮完了温度の平均温度)
過冷却度(SC);5℃
過熱度(SH);10℃
(任意成分)
本発明の作動媒体は、HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)以外に、通常作動媒体として用いられる化合物を作動媒体の全量に対して4.5質量%未満の割合で任意に含有してもよい。このような作動媒体が任意に含有してもよい化合物(任意成分)の、作動媒体全量に対する割合は、1.5質量%未満がより好ましく、1質量%未満が特に好ましい。
任意成分としては、例えば、HFC、HFO−1336mzz(Z)以外のHFO、HCFO−1224yd(Z)以外のHCFO、これら以外の、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合物とともに気化、液化する他の成分等が挙げられる。任意成分としては、HFC、HFO−1336mzz(Z)以外のHFO、HCFO−1224yd(Z)以外のHCFOが好ましい。
任意成分は、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合物と組み合わせて作動媒体とした際に、HCFC−123用に設計された熱サイクル用システムに該作動媒体がHCFC−123に代わって適用できる範囲となるように、装置への負荷および温度勾配が小さく、サイクル性能をより高める作用を有しながら、GWP等の環境への負荷を許容の範囲にとどめられる観点から選択されることが好ましい。
(HFC)
任意成分のHFCとしては、上記観点から選択されることが好ましい。ここで、HFCは、HCFO−1224yd(Z)やHFO−1336mzz(Z)に比べてGWPが高いことが知られている。したがって、HCFO−1224yd(Z)とHFO−1336mzz(Z)の混合物と組合せるHFCとしては、作動媒体とした際に特にGWP等の環境への負荷を許容の範囲にとどめることに留意して、適宜選択されることが好ましい。
GWP等の環境への負荷が小さいHFCとして具体的には炭素数1〜5のHFCが好ましい。HFCは、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、環状であってもよい。
HFCとしては、ジフルオロメタン、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。
これらのなかでも、1,1,2,2−テトラフルオロエタン、HFC−134a、HFC−245fa、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)がより好ましく、HFC−134a、HFC−245fa、HFC−365mfcがさらに好ましい。HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(HFO−1336mzz(Z)以外のHFO)
HFO−1336mzz(Z)以外のHFO(以下、「その他のHFO」ともいう。)についても、上記観点から選択されることが好ましい。なお、HFO−1336mzz(Z)以外であってもHFOであれば、GWPはHFCに比べて桁違いに低い。したがって、その他のHFOとしては、GWPを考慮するよりも、装置への負荷および温度勾配や、作動媒体としてのサイクル性能を向上させることに留意して、適宜選択されることが好ましい。
その他のHFOとしては、HFO−1336mzz(E)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132)、2−フルオロプロペン(HFO−1261yf)、1,1,2−トリフルオロプロペン(HFO−1243yc)、(E)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(E))、(Z)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(Z))、(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))、(Z)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)が挙げられる。
その他のHFOとしては、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)、HFO−1243zfが好ましく、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)がより好ましい。その他のHFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(HCFO−1224yd(Z)以外のHCFO)
HCFO−1224yd(Z)以外のHCFO(以下、「その他のHCFO」ともいう。)についても、上記その他のHFOと同様の観点から選択されることが好ましい。
その他のHCFOとしては、HCFO−1224yd(E)、1−クロロ−2,2−ジフルオロエチレン(HCFO−1122)、1,2−ジクロロフルオロエチレン(HCFO−1121)、1−クロロ−2−フルオロエチレン(HCFO−1131)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)および1−クロロ−3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1233zd)が挙げられる。
その他のHCFOとしては、高い臨界温度を有し、耐久性、成績係数が優れる点から、HCFO−1233zdが好ましい。また、HCFO−1224yd(E)は、通常、HCFO−1224yd(Z)を製造する際に共に製造される。このように製造されたHCFO−1224yd(Z)とHCFO−1224yd(E)の混合物からHCFO−1224yd(Z)を高純度で分離するコストを勘案すれば、本発明の作動媒体がその他のHCFOとしてHCFO−1224yd(E)を含有することは、経済性の点で有利である。その他のHCFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(その他の任意成分)
本発明の熱サイクルシステムに用いる作動媒体は、上記各成分以外に、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロオレフィン(CFO)等を含有してもよい。その他の任意成分としてはオゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さい成分が好ましい。
炭化水素としては、プロパン、プロピレン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。炭化水素を含有することで作動媒体への鉱物系冷凍機油の溶解性が良好になる。
CFOとしては、クロロフルオロプロペン、クロロフルオロエチレン等が挙げられる。作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、CFOとしては、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)、1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214yb)、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFO−1112)が好ましい。CFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
作動媒体が上記のような任意成分を含有する場合、各任意成分について含有量は、作動媒体100質量%に対して4.5質量%未満であり、1.5質量%未満が好ましく、1質量%未満が特に好ましい。複数の任意成分を含有する場合、作動媒体における任意成分の合計含有量は、作動媒体100質量%に対して4.5質量%未満であり、1.5質量%未満が好ましく、1質量%未満が特に好ましい。
<熱サイクルシステム用組成物>
本発明の作動媒体は、熱サイクルシステムへの適用に際して、これを含む本発明の熱サイクルシステム用組成物として使用することができる。本発明の熱サイクルシステム用組成物は、通常、本発明の作動媒体に加えて、冷凍機油を含有する。本発明の熱サイクルシステム用組成物は、これら以外にさらに、安定剤、漏れ検出物質等の公知の添加剤を含有してもよい。
(冷凍機油)
冷凍機油としては、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステム用組成物に用いられる公知の冷凍機油が特に制限なく採用できる。冷凍機油は、鉱油系冷凍機油と合成油系冷凍機油に大別される。鉱油系冷凍機油としてはナフテン系冷凍機油、パラフィン系冷凍機油が挙げられ、合成油系冷凍機油としては代表的なものとしてエステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油、炭化水素系冷凍機油等が挙げられる。
その中でも、本発明の作動媒体が必須成分として含有するHCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)との相溶性の観点からエステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油等の含酸素系合成冷凍機油、炭化水素系冷凍機油、ナフテン系冷凍機油が好ましく、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、ポリオール炭酸エステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、アルキルベンゼンおよびナフテン系冷凍機油が好ましい。
これらの冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに冷凍機油の40℃における動粘度は、潤滑性や圧縮機の密閉性が低下せず、低温条件下で冷媒に対して相溶性が満足にあり、冷凍機圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換を十分に行うという観点から、40℃における動粘度が1〜750mm/sが好ましく、1〜400mm/sがより好ましい。また、100℃における動粘度は1〜100mm/sが好ましく、1〜50mm/sであることがより好ましい。
特に、エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油の場合には、冷凍機油を構成する原子として炭素原子と酸素原子が代表的に挙げられる。この炭素原子と酸素原子の比率(炭素/酸素モル比)により、小さすぎると吸湿性が高くなり、大きすぎると冷媒との相溶性が低下する問題がある。この観点より、冷凍機油の基油成分の炭素原子と酸素原子の比率は炭素/酸素モル比で2〜7.5が適している。
さらに、炭化水素系冷凍機油では熱サイクル系内を作動媒体および冷凍機油が共に循環することが求められる。冷凍機油は作動媒体と溶解することが最も好ましい形態だが、熱サイクル系内を冷凍機油と作動媒体が循環できる冷凍機油を選定すれば、溶解性が低い冷凍機油(例えば、特許第2803451号公報に記載されている冷凍機油)を本発明の熱サイクルシステム用組成物の一成分として使用することができる。冷凍機油が熱サイクル系内を循環するためには、冷凍機油の動粘度が小さいことが求められる。本発明において、炭化水素系冷凍機油の動粘度は、40℃において1〜50mm/sであることが好ましく、特に好ましくは1〜25mm/sである。
これらの冷凍機油は、作動媒体と混合して熱サイクルシステム用組成物として使用することが好ましい。このとき、冷凍機油の配合割合は、熱サイクルシステム用組成物全量に対して5〜60質量%が望ましく、10〜50質量%がより好ましい。
〈エステル系冷凍機油〉
エステル系冷凍機油の基油成分としては、化学的な安定性の面で、二塩基酸と1価アルコールとの二塩基酸エステル、ポリオールと脂肪酸とのポリオールエステル、またはポリオールと多価塩基酸と1価アルコール(又は脂肪酸)とのコンプレックスエステル、ポリオール炭酸エステル等が挙げられる。
(二塩基酸エステル)
二塩基酸エステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸、特に、炭素数5〜10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖または分岐アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等)とのエステルが好ましい。この二塩基酸エステルとしては、具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3−エチルヘキシル)等が挙げられる。
(ポリオールエステル)
ポリオールエステルとは、多価アルコール(ポリオールともいう。)と脂肪酸(カルボン酸)とから合成されるエステルであり、炭素/酸素モル比が2以上7.5以下、好ましくは3.2以上5.8以下のものである。
ポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、ジオール(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等)、水酸基を3〜20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜3量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物等)が挙げられ、エステルを構成する多価アルコールとしては、上記の1種でもよく、2種以上が含まれていてもよい。
ポリオールエステルを構成する脂肪酸としては、特に炭素数は制限されないが、通常炭素数1〜24のものが用いられる。直鎖の脂肪酸、分岐を有する脂肪酸が好ましい。直鎖の脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、カルボキシル基に結合する炭化水素基は、全て飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素を有していてもよい。さらに、分岐を有する脂肪酸としては、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2,2,3−トリメチルブタン酸、2,3,3−トリメチルブタン酸、2−エチル−2−メチルブタン酸、2−エチル−3−メチルブタン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2,3−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、2,5−ジメチルヘキサン酸、3,3−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、4,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、5,5−ジメチルヘキサン酸、2−プロピルペンタン酸、2−メチルオクタン酸、3−メチルオクタン酸、4−メチルオクタン酸、5−メチルオクタン酸、6−メチルオクタン酸、7−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2,3−ジメチルヘプタン酸、2,4−ジメチルヘプタン酸、2,5−ジメチルヘプタン酸、2,6−ジメチルヘプタン酸、3,3−ジメチルヘプタン酸、3,4−ジメチルヘプタン酸、3,5−ジメチルヘプタン酸、3,6−ジメチルヘプタン酸、4,4−ジメチルヘプタン酸、4,5−ジメチルヘプタン酸、4,6−ジメチルヘプタン酸、5,5−ジメチルヘプタン酸、5,6−ジメチルヘプタン酸、6,6−ジメチルヘプタン酸、2−メチル−2−エチルヘキサン酸、2−メチル−3−エチルヘキサン酸、2−メチル−4−エチルヘキサン酸、3−メチル−2−エチルヘキサン酸、3−メチル−3−エチルヘキサン酸、3−メチル−4−エチルヘキサン酸、4−メチル−2−エチルヘキサン酸、4−メチル−3−エチルヘキサン酸、4−メチル−4−エチルヘキサン酸、5−メチル−2−エチルヘキサン酸、5−メチル−3−エチルヘキサン酸、5−メチル−4−エチルヘキサン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロパン酸などが挙げられる。脂肪酸は、これらの中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのエステルでも構わない。
エステルを構成するポリオールは1種類でもよく、2種以上の混合物でもよい。また、エステルを構成する脂肪酸は、各々1種類でもよく、2種類以上の混合物でもよい。また、ポリオールエステルは、遊離の水酸基を有していてもよい。
具体的なポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)のエステルがさらにより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)等の多価アルコールと炭素数2〜20の脂肪酸とのエステルが好ましい。
このような多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸において、脂肪酸は直鎖アルキル基をもつ脂肪酸のみでもよいし、分岐構造をもつ脂肪酸から選ばれてもよい。また、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルでもよい。さらに、エステルを構成する脂肪酸は、上記脂肪酸から選ばれる2種類以上が用いられていてもよい。
具体的な例として、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルの場合には、直鎖を有する炭素数4〜6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸のモル比は、15:85〜90:10であり、好ましくは15:85〜85:15であり、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは25:75〜75:25であり、最も好ましくは30:70〜70:30である。また、多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の全量に占める直鎖を有する炭素数4〜6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸の合計の割合は20モル%以上である。脂肪酸組成に関しては、作動媒体との十分な相溶性、および冷凍機油として必要な粘度とを両立することを考慮して選定されるべきである。なお、ここでいう脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含まれる多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
(コンプレックスエステル)
コンプレックスエステルとは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよびポリオールとのエステルである。脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、上述と同様のものを用いることができる。
脂肪酸としては、上記ポリオールエステルの脂肪酸で示したものが挙げられる。
二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
ポリオールとしては、上記ポリオールエステルの多価アルコールとして示したものが挙げられる。コンプレックスエステルは、これらの脂肪酸、二塩基酸、ポリオールのエステルであり、各々単一成分でもよいし、複数成分からなるエステルでもよい。
(ポリオール炭酸エステル)
ポリオール炭酸エステルとは、炭酸とポリオールとのエステルである。
ポリオールとしては、ジオール(上述と同様のもの)を単独重合または共重合したポリグリコール(ポリアルキレングリコール、そのエーテル化合物、それらの変性化合物等)、ポリオール(上述と同様のもの)、ポリオールにポリグリコールを付加したもの等が挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、下記にポリアルキレングリコールとして例示されるものと同様のものを特に制限なく用いることができるが、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を、水や水酸化アルカリを開始剤として重合させる方法等により得られたものが挙げられる。また、ポリアルキレングリコールの水酸基をエーテル化したものであってもよい。ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。また、ポリオール炭酸エステルとしては、環状アルキレンカーボネートの開環重合体であってもよい。
〈エーテル系冷凍機油〉
エーテル系冷凍機油の基油成分としては、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
(ポリビニルエーテル)
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーを重合して得られたもの、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合して得られたもの、およびポリビニルエーテルと、アルキレングリコールもしくはポリアルキレングリコール、またはそれらのモノエーテルとの共重合体がある。
ポリビニルエーテルの炭素/酸素モル比は、2以上7.5以下であり、好ましくは2.5以上5.8以下である。炭素/酸素モル比がこの範囲未満では吸湿性が高くなり、この範囲を超えると相溶性が低下する。また、ポリビニルエーテルの重量平均分子量は、好ましくは200以上3000以下、より好ましくは500以上1500以下である。40℃における動粘度は、40℃における動粘度が1〜750mm/sが好ましく、1〜400mm/sがより好ましい。また、100℃における動粘度は1〜100mm/sが好ましく、1〜50mm/sであることがより好ましい。
・ポリビニルエーテルの構造
ビニルエーテルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルエーテル共重合体は、ブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリビニルエーテルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
好ましく用いられるポリビニルエーテルは、下記一般式(1)で表される構造単位を有する。
Figure 0006717062
(式中、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは上記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、R〜Rは構造単位ごとに同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。)
上記一般式(1)におけるR、RおよびRは、少なくとも1つが水素原子、特には全てが水素原子であることが好ましい。一般式(1)におけるmは0以上10以下、特には0以上5以下が、さらには0であることが好ましい。一般式(1)におけるRは炭素数1〜20の炭化水素基を示す。この炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基などのアルキル基、シクロペンチル基,シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基などのアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基などのアリールアルキル基などが挙げられ、アルキル基、特には炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましい。
本実施形態におけるポリビニルエーテルは、一般式(1)で表される構造単位が同一である単独重合体であっても、2種以上の構造単位で構成される共重合体であってもよい。共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位をさらに含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
Figure 0006717062
(式中、R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
・ビニルエーテルモノマー
ビニルエーテルモノマーとしては、下記一般式(3)の化合物が挙げられる。
Figure 0006717062
(式中、R、R、R、R、Rおよびmは、それぞれ一般式(1)中のR、R、R、R、Rおよびmと同一の定義内容を示す。)
ビニルエーテルモノマーとしては、上記ポリビニルエーテルに対応する各種のものがあるが、例えば、ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル−n−プロピルエーテル;ビニル−イソプロピルエーテル;ビニル−n−ブチルエーテル;ビニル−イソブチルエーテル;ビニル−sec−ブチルエーテル;ビニル−tert−ブチルエーテル;ビニル−n−ペンチルエーテル;ビニル−n−ヘキシルエーテル;ビニル−2−メトキシエチルエーテル;ビニル−2−エトキシエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−1−メチルエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−プロピルエーテル;ビニル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−1,4−ジメチル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−1,4,7−トリメチル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−2,6−ジオキサ−4−ヘプチルエーテル;ビニル−2,6,9−トリオキサ−4−デシルエーテル;1−メトキシプロペン;1−エトキシプロペン;1−n−プロポキシプロペン;1−イソプロポキシプロペン;1−n−ブトキシプロペン;1−イソブトキシプロペン;1−sec−ブトキシプロペン;1−tert−ブトキシプロペン;2−メトキシプロペン;2−エトキシプロペン;2−n−プロポキシプロペン;2−イソプロポキシプロペン;2−n−ブトキシプロペン;2−イソブトキシプロペン;2−sec−ブトキシプロペン;2−tert−ブトキシプロペン;1−メトキシ−1−ブテン;1−エトキシ−1−ブテン;1−n−プロポキシ−1−ブテン;1−イソプロポキシ−1−ブテン;1−n−ブトキシ−1−ブテン;1−イソブトキシ−1−ブテン;1−sec−ブトキシ−1−ブテン;1−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−1−ブテン;2−エトキシ−1−ブテン;2−n−プロポキシ−1−ブテン;2−イソプロポキシ−1−ブテン;2−n−ブトキシ−1−ブテン;2−イソブトキシ−1−ブテン;2−sec−ブトキシ−1−ブテン;2−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−2−ブテン;2−エトキシ−2−ブテン;2−n−プロポキシ−2−ブテン;2−イソプロポキシ−2−ブテン;2−n−ブトキシ−2−ブテン;2−イソブトキシ−2−ブテン;2−sec−ブトキシ−2−ブテン;2−tert−ブトキシ−2−ブテン等が挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。
・ポリビニルエーテルの末端
上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルは、その末端を本開示例に示す方法および公知の方法により、所望の構造に変換することができる。変換する基としては、飽和の炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、アミド、ニトリルなどを挙げることができる。
上記ポリビニルエーテルは、次の式(4)〜(8)に示す末端構造を有するものが好適である。
Figure 0006717062
(式中、R11、R21およびR31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R41は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R51は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR41Oは同一でも異なっていてもよい。)
Figure 0006717062
(式中、R61、R71、R81およびR91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
Figure 0006717062
(式中、R12、R22およびR32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R42は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R52は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR42Oは同一でも異なっていてもよい。)
Figure 0006717062
(式中、R62、R72、R82およびR92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
Figure 0006717062
(式中、R13、R23およびR33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)
・ポリビニルエーテルの製法
本実施形態におけるポリビニルエーテルは、上記したモノマーをラジカル重合、カチオン重合、放射線重合などによって製造することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルエーテル系化合物が得られる。
(ポリアルキレングリコール)
ポリアルキレングリコールとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を、水や水酸化アルカリを開始剤として重合させる方法等により得られたものが挙げられる。また、ポリアルキレングリコールの水酸基をエーテル化したものであってもよい。ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。
具体的なポリアルキレングリコールとしては、例えば次の一般式(9)
101−[(OR102−OR103 …(9)
(式中、R101は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基又は結合部2〜6個を有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、R102は炭素数2〜4のアルキレン基、R103は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアシル基、lは1〜6の整数、kはk×lの平均値が6〜80となる数を示す。)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(9)において、R101、R103におけるアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。このアルキル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、粗分離を生じる場合がある。好ましいアルキル基の炭素数は1〜6である。
また、R101、R103における該アシル基のアルキル基部分は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アシル基のアルキル基部分の具体例としては、上記アルキル基の具体例として挙げた炭素数1〜9の種々の基を同様に挙げることができる。該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアシル基の炭素数は2〜6である。
101及びR103が、いずれもアルキル基又はアシル基である場合には、R101とR103は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
さらにlが2以上の場合には、1分子中の複数のR103は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
101が結合部位2〜6個を有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である場合、この脂肪族炭化水素基は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。結合部位2個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。また、結合部位3〜6個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール;1,2,3−トリヒドロキシシクロヘキサン;1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどの多価アルコールから水酸基を除いた残基を挙げることができる。
この脂肪族炭化水素基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下し、相分離が生じる場合がある。好ましい炭素数は2〜6である。
上記一般式(9)中のR102は炭素数2〜4のアルキレン基であり、繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。1分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよいし、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよいが、1分子中に少なくともオキシプロピレン単位を含むものが好ましく、特にオキシアルキレン単位中に50モル%以上のオキシプロピレン単位を含むものが好適である。
上記一般式(9)中のlは1〜6の整数で、R101の結合部位の数に応じて定められる。例えばR101がアルキル基やアシル基の場合、lは1であり、R101が結合部位2,3,4,5及び6個を有する脂肪族炭化水素基である場合、lはそれぞれ2,3,4,5及び6となる。また、kはk×lの平均値が6〜80となる数であり、k×lの平均値が前記範囲を逸脱すると本発明の目的は十分に達せられない。
ポリアルキレングリコールの構造は、下記一般式(10)で表されるポリプロピレングリコールジメチルエーテル、並びに下記一般式(11)で表されるポリエチレンポリプロピレングリコールジメチルエーテルが経済性および前述の効果の点で好適であり、また、下記一般式(12)で表されるポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、さらには下記一般式(13)で表されるポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(14)で表されるポリエチレンポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(15)で表されるポリエチレンポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、下記一般式(16)で表されるポリプロピレングリコールジアセテートが、経済性等の点で好適である。
CHO−(CO)−CH …(10)
(式中、hは6〜80の数を表す。)
CHO−(CO)−(CO)−CH …(11)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上でありかつiとjとの合計が6〜80となる数を表す。)
O−(CO)−H …(12)
(式中、hは6〜80の数を示す。)
CHO−(CO)−H …(13)
(式中、hは6〜80の数を表す。)
CHO−(CO)−(CO)−H …(14)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。)
O−(CO)−(CO)−H …(15)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。)
CHCOO−(CO)−COCH …(16)
(式中、hは6〜80の数を表す。)
このポリオキシアルキレングリコール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(9)で表されるポリアルキレングリコールの40℃における動粘度は、1〜750mm/sが好ましく、1〜400mm/sがより好ましい。また、100℃における動粘度は1〜100mm/sが好ましく、1〜50mm/sであることがより好ましい。
〈炭化水素系冷凍機油〉
炭化水素系冷凍機油の基油成分としては、アルキルベンゼンを用いることができる。
アルキルベンゼンとしては、フッ化水素などの触媒を用いてプロピレンの重合物とベンゼンを原料として合成される分岐アルキルベンゼン、また同触媒を用いてノルマルパラフィンとベンゼンを原料として合成される直鎖アルキルベンゼンが使用できる。アルキル基の炭素数は、冷凍機油の基油成分として好適な粘度とする観点から、好ましくは1〜30、より好ましくは4〜20である。また、アルキルベンゼン1分子が有するアルキル基の数は、アルキル基の炭素数によるが粘度を設定範囲内とするために、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3である。
さらに、冷凍機油は熱サイクル系内を作動媒体とともに循環することが求められる。冷凍機油は作動媒体と溶解することが最も好ましい形態だが、熱サイクル系内を冷凍機油と作動媒体が循環できる冷凍機油を選定すれば、溶解性が低い冷凍機油を本発明の冷凍機油組成物として使用することができる。冷凍機油が熱サイクル系内を循環するためには、冷凍機油の動粘度が小さいことが求められる。本発明において、上記観点からアルキルベンゼンの40℃における動粘度は、1〜100mm/sが好ましく、特に好ましくは1〜50mm/sである。
〈鉱油系冷凍機油〉
鉱油系冷凍機油としては、パラフィン系冷凍機油、ナフテン系冷凍機油のうち、作動媒体と相溶性の高いナフテン系冷凍機油を用いることが好ましい。ナフテン系冷凍機油の基油成分としては、1分子中に少なくとも1個の飽和環(ナフテン環)を含む炭化水素で、炭素数5個のシクロペンタンと炭素数6個のシクロヘキサンが最も基本となる環状化合物であり、ナフテン系原油を常圧蒸留または減圧蒸留して得られた冷凍機油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、および白土処理などの精製処理を適宜組み合わせて精製したナフテン基油などが使用できる。
上記アルキルベンゼンの場合と同様の観点から、ナフテン系冷凍機油の40℃における動粘度は、1〜300mm/sが好ましく、特に好ましくは1〜100mm/sである。
これらの冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱サイクルシステム用組成物における、冷凍機油の含有量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましい。
(安定剤)
安定剤は、熱および酸化に対する作動媒体の安定性を向上させる成分である。安定剤としては、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の安定剤、例えば、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等が特に制限なく採用できる。本発明の熱サイクルシステム用組成物においては、特に、HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)の安定性を向上させる安定剤が好ましい。
耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤としては、フェノール系化合物、不飽和炭化水素基含有芳香族化合物、芳香族アミン化合物、芳香族チアジン化合物、テルペン化合物、キノン化合物、ニトロ化合物、エポキシ化合物、ラクトン化合物、オルトエステル化合物、フタル酸のモノまたはジアルカリ金属塩化合物、水酸化チオジフェニルエーテル化合物等が挙げられる。
具体的には、フェノール系化合物としては、フェノール、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、1,3,5−ベンゼントリオール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、1−クレゾール、2−クレゾール、3−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,5,6−トリメチルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−プロポキシフェノール、3−プロポキシフェノール、4−プロポキシフェノール、tert−ブチルカテコール、4−tert−ブチルピロカテコール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)が挙げられる。
不飽和炭化水素基含有芳香族化合物としては、α−メチルスチレン、p−イソプロペニルトルエン、ジイソプロペニルベンゼンが挙げられる。
芳香族アミン化合物、芳香族チアジン化合物としては、4,4−チオビス(6−ブチル−m−クレゾール)、4、4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N,N’−ジフェニルフェニレンジアミン、p−オクチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、N−(p−ドデシル)フェニル−2−ナフチルアミン、1,1’−ジナフチルアミン、2,2’−ジナフチルアミン、フェノチアジン、N−アルキルフェノチアジン等が挙げられる。
テルペン系化合物としては、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール(ゲラニアールを含む)、シトロネロール、メントール、d−リモネン,l−リモネン、テルピネロール、カルボン、ヨノン、ツヨン、樟脳(カンファー)、ミルセン、レチナール、ファルネソール、フィトール、ビタミンA1、テルピネン、δ−3−カレン、テルピノレン、フェランドレン、フェンチェン等が挙げられる。
キノン系化合物としては、ハイドロキノン、1,4−ベンゾキノン、トコフェロール、tert−ブチルヒドロキノン、その他のハイドロキノン誘導体が挙げられる。
ニトロ化合物としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、イソブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルメチルフェニルエーテル、1,4−ジグリシジルフェニルジエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、およびこれらの誘導体、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エポキシ化脂肪酸モノエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステル、1,2−エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンが挙げられる。
その他、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトン等のラクトン化合物、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル等のオルトエステル化合物、フタル酸のモノまたはジアルカリ金属塩化合物等を安定剤として加えてもよい。
これらの安定剤は、冷媒が冷凍サイクルにおいて繰り返し圧縮・加熱される条件において、熱や酸素による冷媒の分解抑制だけでなく、冷凍機油の安定化、さらに冷凍機油の分解により発生した酸による冷媒の分解抑制や熱サイクルシステムの金属材料を保護する作用がある。
これらの安定剤のうち、上記作用の観点から、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−(tert−ブチル)フェノール、ニトロメタン、1,4−ベンゾキノン、3−メトキシフェノール、フェノチアジン等が好ましい化合物として挙げられる。耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、金属不活性剤としては、イミダゾール化合物、チアゾール化合物、トリアゾール化合物といった複素環式窒素含有化合物や、アルキル酸ホスフェートのアミン塩またはそれらの誘導体が挙げられる。
イミダゾール化合物、チアゾール化合物としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2,5−ジメルカプトチアジアゾール、サリシリジン−プロピレンジアミン、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メチルベンズアミダゾール、トリアゾール類を含有してもよい。
トリアゾール化合物は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、メチレンビスベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等から選ばれるものである。さらに、有機酸またはそれらのエステル、第1級、第2級または第3級の脂肪族アミン、有機酸または無機酸のアミン塩、またはそれらの誘導体等を加えてもよい。これら金属不活化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
安定剤の含有量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、熱サイクルシステム用組成物(100質量%)中、1質量ppm〜10質量%が好ましく、5質量ppm〜5質量%がより好ましい。
(漏れ検出物質)
漏れ検出物質としては、紫外線蛍光染料、臭気ガスや臭いマスキング剤等が挙げられる。
紫外線蛍光染料としては、米国特許第4249412号明細書、特表平10−502737号公報、特表2007−511645号公報、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等、従来、ハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の紫外線蛍光染料が挙げられる。
臭いマスキング剤としては、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の香料が挙げられる。
漏れ検出物質を用いる場合には、作動媒体への漏れ検出物質の溶解性を向上させる可溶化剤を用いてもよい。
可溶化剤としては、特表2007−511645号公報、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等が挙げられる。
漏れ検出物質の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
<熱サイクルシステム>
本発明の熱サイクルシステムは、HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)を特定量で含有する本発明の作動媒体および冷凍機油、さらに任意に安定剤等を含む本発明の熱サイクルシステム用組成物を用いた熱サイクルシステムである。
本発明の熱サイクルシステムは、作動媒体としてHCFC−123が適用可能に設計された熱サイクル用システムに、HCFC−123に代えて本発明の作動媒体を適用した熱サイクルシステムにおいて特に顕著な効果を発揮できる。この場合、HCFC−123が適用可能に設計された熱サイクル用システムを変更することなく、装置に対する負荷を抑制しながら、HCFC−123を使用した場合と同様のサイクル性能を発揮できる上に、環境負荷が非常に小さい。
本発明の熱サイクルシステムは、凝縮器で得られる温熱を利用するヒートポンプシステムであってもよく、蒸発器で得られる冷熱を利用する冷凍サイクルシステムであってもよい。本発明の熱サイクルシステムは、フラデッドエバポレーター式であってもよく、直接膨張式であってもよい。本発明の熱サイクルシステムにおいて、作動媒体との間で熱交換される作動媒体以外の他の物質は水または空気が好ましい。
本発明の熱サイクルシステムとして、具体的には、冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置および二次冷却機等が挙げられる。なかでも、本発明の熱サイクルシステムは、より高温の作動環境でも安定してサイクル性能を発揮できるため、屋外等に設置されることが多い空調機器として用いられることが好ましい。また、本発明の熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器として用いられることも好ましい。
発電システムとしては、ランキンサイクルシステムによる発電システムが好ましい。発電システムとして、具体的には、蒸発器において地熱エネルギー、太陽熱、50〜200℃程度の中〜高温度域廃熱等により作動媒体を加熱し、高温高圧状態の蒸気となった作動媒体を膨張機にて断熱膨張させ、該断熱膨張によって発生する仕事によって発電機を駆動させ、発電を行うシステムが例示される。
また、本発明の熱サイクルシステムは、熱輸送装置であってもよい。熱輸送装置としては、潜熱輸送装置が好ましい。潜熱輸送装置としては、装置内に封入された作動媒体の蒸発、沸騰、凝縮等の現象を利用して潜熱輸送を行うヒートパイプおよび二相密閉型熱サイフォン装置が挙げられる。ヒートパイプは、半導体素子や電子機器の発熱部の冷却装置等、比較的小型の冷却装置に適用される。二相密閉型熱サイフォンは、ウィッグを必要とせず構造が簡単であることから、ガス−ガス型熱交換器、道路の融雪促進および凍結防止等に広く利用される。
冷凍・冷蔵機器として、具体的には、ショーケース(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース等)、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等が挙げられる。
空調機器として、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン(店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン等)、熱源機器チリングユニット、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等が挙げられる。
熱源機器チリングユニットとしては、例えば、容積圧縮式冷凍機、遠心式冷凍機が挙げられるが、次に説明する遠心式冷凍機は作動媒体の充填量が多いので、本発明の効果をより顕著に得ることができるため好ましい。
ここで、遠心式冷凍機は、遠心圧縮機を用いた冷凍機である。遠心式冷凍機は、蒸気圧縮式の冷凍機の一種であり、通常、ターボ冷凍機とも言われる。遠心圧縮機は、羽根車を備えており、回転する羽根車で作動媒体を外周部へ吐き出すことで圧縮を行う。遠心式冷凍機は、オフィスビル、地域冷暖房、病院での冷暖房の他、半導体工場、石油化学工業での冷水製造プラント等に用いられている。
遠心式冷凍機としては、低圧型、高圧型のいずれであっても良いが、低圧型の遠心冷凍機であることが好ましい。なお、低圧型とは、例えば、CFC−11、HCFC−123、HFC−245faのような高圧ガス保安法の適用を受けない作動媒体、すなわち、「常用の温度において、圧力0.2MPa以上となる液化ガスで現にその圧力が0.2MPa以上であるもの、または圧力が0.2MPa以上となる場合の温度が35℃以下である液化ガス」に該当しない作動媒体を用いた遠心式冷凍機をいう。
以下に、本発明に係る遠心式冷凍機の一実施形態について、図4を用いて説明する。図4には、遠心式冷凍機100の概略構成図が示されている。遠心式冷凍機100は、遠心圧縮機(以下、「圧縮機」という。)21と、該圧縮機21によって圧縮された高圧ガス作動媒体を凝縮する凝縮器22と、該凝縮器22において凝縮した高圧液作動媒体を膨張させる膨張弁23と、該膨張弁23によって膨張した低圧液作動媒体を蒸発させる蒸発器24とを備えている。
遠心式冷凍機100が含有する作動媒体は、上に説明した本発明のHCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)を特定量含有する作動媒体である。作動媒体は、これを含む熱サイクルシステム用組成物として遠心式冷凍機100に投入される。以下、遠心式冷凍機100の構成部材とともに作動媒体の挙動を説明する。
遠心式冷凍機100に投入された作動媒体は、圧縮機21、凝縮器22、膨張弁23、蒸発器24、圧縮機21の順にこれらを繋ぐように配設された作動媒体用配管20を、高圧ガス、高圧液、低圧液等の気相または液相の状態で循環する。作動媒体用配管20を示す実線とともに示す矢印は作動媒体の流れの向きを示す。
圧縮機21は、電動機31によって回転駆動される遠心羽根車を備えている。遠心羽根車は、例えば2段圧縮式とされる。ただし、1段圧縮式であっても、3段以上の圧縮式であってもよい。圧縮機21の作動媒体入口には、作動媒体流量を調節する入口ベーン32が設けられている。この入口ベーン32の開度は、制御装置33によって制御される。
電源34からの入力周波数がインバータ35によって変更されるようになっており、これにより、電動機31の回転数が制御される。インバータ35から電動機31に送られる指示周波数は、制御装置33内に設けられた回転数制御部33aによって変更される。ここで、図4中の一点鎖線は電気信号の経路を示し、該経路(一点鎖線)とともに示す矢印は該信号の向きを示す。
凝縮器22には、凝縮器22内の作動媒体圧力(凝縮圧力)Pcを計測する圧力センサ25が設けられている。この圧力センサ25の出力は、制御装置33に入力される。また、凝縮器22には、凝縮器22内の作動媒体と熱交換して温水を得る温水取得手段26aが設けられている。この温水取得手段26aの温水出口には温水出口温度センサ26bが、温水入口には温水入口温度センサ26cが、それぞれ設けられている。温水出口温度センサ26bの出力(温水出口温度)および温水入口温度センサ26cの出力(温水入口温度)は、制御装置33に入力される。
遠心式冷凍機100は、このように作動媒体と熱交換される物質として水を使用している。図4において、温水取得手段26aを点線で示し、温水取得手段26aを流れる温水の流れる向きを点線上に矢印で示した。また、以下の冷水取得手段30aにおいても同様に表示した。
膨張弁23は、制御装置33内に設けられた膨張弁開度制御部33bによって、その開度が制御される。凝縮器22と蒸発器24との間には、ホットガスバイパス配管27が設けられている。このホットガスバイパス配管27によって、凝縮器22内にある高圧の作動媒体ガスが蒸発器24へと流されるようになっている。ホットガスバイパス配管27には、ホットガスバイパス弁28が設けられている。このホットガスバイパス弁28の開度調整によって、ホットガスバイパス配管27内を流れる作動媒体流量が調整され、低冷凍能力時の圧縮機21への吸込み作動媒体ガス流量を確保する。
蒸発器24には、蒸発器24内の作動媒体圧力(蒸発圧力)Peを計測する圧力センサ29が設けられている。この圧力センサ29の出力は、制御装置33に入力される。また、蒸発器24には、蒸発器24内の作動媒体と熱交換して冷水を得る冷水取得手段30aが設けられている。この冷水取得手段30aの冷水出口には、冷水出口温度センサ30bが、冷水入口には、冷水入口温度センサ30cが設けられている。冷水出口温度センサ30bの出力(冷水出口温度)および冷水入口温度センサ30cの出力(冷水入口温度)は、制御装置33に入力される。
遠心式冷凍機の圧縮機の作動点は、流量変数θと圧力変数Ωで決まる。下記に示す式のとおり、流量変数θおよび圧力変数Ωはどちらも音速をパラメータとして含むため、作動媒体の音速は、遠心式冷凍機の圧縮機の羽根車の設計に影響を及ぼす。
流量変数θ=風量[m/s]÷音速[m/s]÷(羽根車直径[m])
圧力変数Ω=断熱ヘッド[m]×重力加速度[m/s]÷(音速[m/s])
本発明においては、HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)を特定量含有する作動媒体がHCFC−123と同等の音速を備えることから、上記のようにしてHCFC−123用に設計された遠心式冷凍機の設計を変更することなく使用可能である。
なお、熱サイクルシステムの稼働に際しては、水分の混入や、酸素等の不凝縮性気体の混入による不具合の発生を避けるために、これらの混入を抑制する手段を設けることが好ましい。
熱サイクルシステム内に水分が混入すると、特に低温で使用される際に問題が生じる場合がある。例えば、キャピラリーチューブ内での氷結、作動媒体や冷凍機油の加水分解、サイクル内で発生した酸成分による材料劣化、コンタミナンツの発生等の問題が発生する。特に、冷凍機油がポリアルキレングリコール、ポリオールエステル等である場合は、吸湿性が極めて高く、また、加水分解反応を生じやすく、冷凍機油としての特性が低下し、圧縮機の長期信頼性を損なう大きな原因となる。したがって、冷凍機油の加水分解を抑えるためには、熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する必要がある。
熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する方法としては、乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト等)等の水分除去手段を用いる方法が挙げられる。乾燥剤は、液状の熱サイクルシステム用組成物と接触させることが、脱水効率の点で好ましい。例えば、凝縮器の出口、または蒸発器の入口に乾燥剤を配置して、熱サイクルシステム用組成物と接触させることが好ましい。
乾燥剤としては、乾燥剤と熱サイクルシステム用組成物との化学反応性、乾燥剤の吸湿能力の点から、ゼオライト系乾燥剤が好ましい。
ゼオライト系乾燥剤としては、従来の鉱物系冷凍機油に比べて吸湿量の高い冷凍機油を用いる場合には、吸湿能力に優れる点から、下式(C)で表される化合物を主成分とするゼオライト系乾燥剤が好ましい。
2/nO・Al・xSiO・yHO …(C)
ただし、Mは、Na、K等の1族の元素またはCa等の2族の元素であり、nは、Mの原子価であり、x、yは、結晶構造にて定まる値である。Mを変化させることにより細孔径を調整できる。
乾燥剤の選定においては、細孔径および破壊強度が重要である。熱サイクルシステム用組成物が含有する作動媒体等の各種成分(以下、「作動媒体等」)の分子径よりも大きい細孔径を有する乾燥剤を用いた場合、作動媒体等が乾燥剤中に吸着され、その結果、作動媒体等と乾燥剤との化学反応が生じ、不凝縮性気体の生成、乾燥剤の強度の低下、吸着能力の低下等の好ましくない現象を生じることとなる。
したがって、乾燥剤としては、細孔径の小さいゼオライト系乾燥剤を用いることが好ましい。特に、細孔径が3.5オングストローム以下である、ナトリウム・カリウムA型の合成ゼオライトが好ましい。作動媒体等の分子径よりも小さい細孔径を有するナトリウム・カリウムA型合成ゼオライトを適用することによって、作動媒体等を吸着することなく、熱サイクルシステム内の水分のみを選択的に吸着除去できる。言い換えると、作動媒体等の乾燥剤への吸着が起こりにくいことから、熱分解が起こりにくくなり、その結果、熱サイクルシステムを構成する材料の劣化やコンタミナンツの発生を抑制できる。
ゼオライト系乾燥剤の大きさは、小さすぎると熱サイクルシステムの弁や配管細部への詰まりの原因となり、大きすぎると乾燥能力が低下するため、粒度の代表値として約0.5〜5mmが好ましい。形状としては、粒状または円筒状が好ましい。
ゼオライト系乾燥剤は、粉末状のゼオライトを結合剤(ベントナイト等。)で固めることにより任意の形状とすることができる。ゼオライト系乾燥剤を主体とするかぎり、他の乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ等。)を併用してもよい。
さらに、熱サイクルシステム内に不凝縮性気体が混入すると、凝縮器や蒸発器における熱伝達の不良、作動圧力の上昇という悪影響をおよぼすため、極力混入を抑制する必要がある。特に、不凝縮性気体の一つである酸素は、作動媒体や冷凍機油と反応し、分解を促進する。
不凝縮性気体濃度は、作動媒体の気相部において、作動媒体に対する容積割合で1.5体積%以下が好ましく、0.5体積%以下が特に好ましい。
以上、本発明の熱サイクルシステムの実施形態について説明したが本発明の熱サイクルシステムは上記実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。
本発明の作動媒体は、HCFC−123との代替が充分可能なサイクル性能を有するとともに、HCFC−123用の熱サイクル用システムに用いた場合でも装置への負荷が少なく、ODPおよびGWPが充分に低いことで地球温暖化への影響が充分に抑制された作動媒体である。よって、本発明の作動媒体は、作動媒体としてHCFC−123を用いるように設計された熱サイクル用システムにそのまま適用可能であり、そのようにして得られる本発明の熱サイクルシステムは経済性に優れるものである。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
[例1〜11]
例1〜11において、HCFO−1224yd(Z)およびHFO−1336mzz(Z)を表2に示す割合で混合した作動媒体を作製し、以下の方法で、温度勾配および冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)を測定した。
[温度勾配、冷凍サイクル性能の測定]
温度勾配、冷凍サイクル性能(冷凍能力および成績係数)の測定は、図2に示す冷凍サイクルシステム10に作動媒体を適用して、図3に示す熱サイクル、すなわちAB過程で圧縮機11による断熱圧縮、BC過程で凝縮器12による等圧冷却、CD過程で膨張弁13による等エンタルピ膨張、DA過程で蒸発器14による等圧加熱を実施した場合について行った。
測定条件は、蒸発器14における作動媒体の蒸発温度を0℃(ただし、非共沸混合物の場合は、蒸発開始温度と蒸発完了温度の平均温度)、凝縮器12における作動媒体の凝縮完了温度を40℃(ただし、非共沸混合物の場合は、凝縮開始温度と凝縮完了温度の平均温度)、凝縮器12における作動媒体の過冷却度(SC)を5℃、蒸発器14における作動媒体の過熱度(SH)を10℃として実施した。また、機器効率による損失、および配管、熱交換器における圧力損失はないものとした。
冷凍能力および成績係数は、作動媒体のA(蒸発後、高温低圧)、B(圧縮後、高温高圧)、C(凝縮後、低温高圧)、D(膨張後、低温低圧)の各状態のエンタルピhを用いて、上記式(A)、(B)から求めた。
冷凍サイクル性能の算出に必要となる熱力学性質は、対応状態原理に基づく一般化状態方程式(Soave−Redlich−Kwong式)、および熱力学諸関係式に基づき算出した。特性値が入手できない場合は、原子団寄与法に基づく推算手法を用い算出を行った。
冷凍能力および成績係数は、上記と同様に測定されたHCFC−123の冷凍能力および成績係数をそれぞれ、1.000とした場合の相対比として求めた。吐出圧力比は、各例における吐出圧力の上記と同様に測定されたHCFC−123の吐出圧力に対する比の値として求めた。温度勾配は、図3におけるTとTの差として求めた。また、作動媒体のGWPを、表1に示す個々の化合物のGWPをもとに、組成質量による加重平均として求めた。すなわち、作動媒体を構成する各化合物の質量%とGWPの積を合計した値を100で除すことで該作動媒体のGWPを求めた。なお、例1〜11の作動媒体は、いずれもODPは0である。
Figure 0006717062
表2からわかるように、実施例の作動媒体はいずれも、HCFC−123との代替が充分可能なサイクル性能を有するとともに、HCFC−123用の熱サイクル用システムに用いた場合でも装置への負荷が少なく、ODPおよびGWPが充分に低いことで地球温暖化への影響が充分に抑制された熱サイクル用の作動媒体である。
本発明の作動媒体およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等)、空調機器(ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、熱源機器チリングユニット、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等)、発電システム(廃熱回収発電等)、熱輸送装置(ヒートパイプ等)、二次冷却機に利用できる。
10…冷凍サイクルシステム、11…圧縮機、12…凝縮器、13…膨張弁、14…蒸発器、15,16…ポンプ
100…遠心式冷凍機、20…作動媒体用配管、21…遠心圧縮機、22…凝縮器、23…膨張弁、24…蒸発器、31…電動機、32…入口ベーン、33…制御装置、34…電源、35…インバータ

Claims (13)

  1. (Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを含む熱サイクル用作動媒体であって、前記作動媒体全量に対する(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合計量の割合が95.5質量%超100質量%以下であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体。
  2. 前記作動媒体全量に対する(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合計量の割合が98.5質量%超100質量%以下である請求項1に記載の熱サイクル用作動媒体。
  3. (Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合計量に対する(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの割合が10〜40質量%である請求項1または2に記載の熱サイクル用作動媒体。
  4. (Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合計量に対する(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの割合が10〜30質量%である請求項1または2に記載の熱サイクル用作動媒体。
  5. 前記熱サイクル用作動媒体全量に対し、(E)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを4.5質量%未満含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱サイクル用作動媒体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱サイクル用作動媒体を含む熱サイクルシステム用組成物。
  7. さらに、冷凍機油を含む請求項6に記載の熱サイクルシステム用組成物。
  8. さらに、前記熱サイクル用作動媒体の劣化を抑制する安定剤を含む請求項6または7に記載の熱サイクルシステム用組成物。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用組成物を用いた、熱サイクルシステム。
  10. 前記熱サイクルシステムは熱サイクル用システムを備え、
    前記熱サイクル用システムは1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタンを熱サイクル用作動媒体として用いるのに適した熱サイクル用システムである、請求項9記載の熱サイクルシステム。
  11. 前記熱サイクルシステムが冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である請求項9または10に記載の熱サイクルシステム。
  12. 前記熱サイクルシステムが遠心式冷凍機である請求項9〜11のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム。
  13. 前記熱サイクルシステムが低圧型遠心式冷凍機である請求項9〜12のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム。
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