しかし、SOI基板の酸化シリコン層をHF水溶液などのウェットエッチングで除去すると、酸化シリコン層がSOI基板の面方向に後退するため、シリコン基板の一部が酸化シリコン層よりも開口部の内側に突出したひさし形状になってしまう。この形状の基板に対して、表面に帯電防止の導電層や耐腐食性のバリア層を形成すると、上記のひさし形状の影の部分に導電層又はバリア層などの機能層を形成することができず(カバレッジ不良が発生する)、所望の効果を得ることができないという問題があった。
本発明は、そのような課題に鑑みてなされたものであり、導電層又はバリア層などの機能層を付き回り性よく形成することができるSOI基板を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態に係る絞り装置の製造方法は、シリコン基板、酸化シリコン層、及びシリコン層を含むSOI基板において、シリコン層が配置された第1面側から酸化シリコン層を露出する第1開口部を形成し、シリコン基板が配置された第2面側から酸化シリコン層を露出し、第1開口部より径が大きい第2開口部を形成し、第2面側から、酸化シリコン層を等方性の第1エッチングでエッチングし、第1エッチングの後に、第2面側から異方性の第2エッチングでエッチングすることで、第1開口部と第2開口部との間の酸化シリコン層を除去する。
上記の絞り装置の製造方法によれば、シリコン基板の一部が開口部の内側に突出したひさし形状になることを防止することができる。
また、第1エッチングは、ウェットエッチングによって行われ、第2エッチングは、ドライエッチングによって行われてもよい。
上記の絞り装置の製造方法によれば、従来から用いられているプロセスを利用してひさし形状を防止することができる。
また、第1エッチングは、第2開口部において露出された領域の酸化シリコン層が酸化シリコン層の膜厚方向に一部残るように行われ、第2エッチングは、第1エッチングで残された酸化シリコン層をエッチングし、シリコン層を露出させてもよい。
上記の絞り装置の製造方法によれば、メンブレンとなるシリコン層の膜厚を精度よく制御することができる。
また、第1エッチングは、シリコン基板の酸化シリコン層側の第3面を露出するように、シリコン基板とシリコン層との間の酸化シリコン層をエッチングし、第2エッチングは、第3面に対応する領域のシリコン基板を除去し、シリコン基板に第1傾斜面を形成し、酸化シリコン層に第1傾斜面と同じ方向に傾斜した第2傾斜面を形成してもよい。
上記の絞り装置の製造方法によれば、シリコン基板の一部が開口部の内側に突出したひさし形状になることを防止することができる。
本発明の一実施形態に係る絞り装置は、シリコン基板、酸化シリコン層、及びシリコン層を含むSOI基板を用いた絞り装置であって、シリコン層が配置された第1面側に配置されたシリコン層には、第1開口部が設けられ、シリコン基板が配置された第2面側に配置されたシリコン基板には、第1開口部よりも径が大きく、第2面に向かって径が大きくなる第2開口部が設けられ、酸化シリコン層には、第1開口部と第2開口部との間において、第2面に向かって径が大きくなる第3開口部が設けられている。
上記の絞り装置によれば、シリコン基板の一部が開口部の内側に突出したひさし形状になることを防止することができる。
また、第2面に対する第3開口部の傾斜角は、第2開口部の底部における第2面に対する第2開口部の傾斜角よりも小さくてもよい。
上記の絞り装置によれば、絞り装置の表面への機能層の付き回り性を向上させることができる。
また、第2開口部の側壁は湾曲形状であり、第3開口部の側壁は直線形状であってもよい。
上記の絞り装置によれば、シリコン基板における応力の集中を抑制することができる。
また、シリコン層は、第3開口部から露出された領域が薄膜化されていてもよい。
上記の絞り装置によれば、シリコン基板の一部が開口部の内側に突出したひさし形状になることを防止することができる。
本発明の一実施形態に係るSOI基板の加工方法は、シリコン基板、酸化シリコン層、及びシリコン層を含むSOI基板において、シリコン基板が配置された面側から酸化シリコン層を露出する開口部を形成し、開口部が形成された面側から、酸化シリコン層を等方性の第1エッチングでエッチングし、第1エッチングの後に、開口部が形成された面側から異方性の第2エッチングでエッチングすることで、開口部が形成された面側のシリコン層を露出する。
上記のSOI基板の加工方法によれば、シリコン基板の一部が開口部の内側に突出したひさし形状になることを防止することができる。
また、第1エッチングは、ウェットエッチングによって行われ、第2エッチングは、ドライエッチングによって行われてもよい。
上記のSOI基板の加工方法によれば、従来から用いられているプロセスを利用してひさし形状を防止することができる。
また、第1エッチングは、開口部において露出された領域の酸化シリコン層が酸化シリコン層の膜厚方向に一部残るように行われ、第2エッチングは、第1エッチングで残された酸化シリコン層をエッチングし、シリコン層を露出させてもよい。
上記のSOI基板の加工方法によれば、メンブレンとなるシリコン層の膜厚を精度よく制御することができる。
また、第1エッチングは、シリコン基板の酸化シリコン層側の第1面を露出するように、シリコン基板とシリコン層との間の酸化シリコン層をエッチングし、第2エッチングは、第1面に対応する領域のシリコン基板を除去し、シリコン基板に第1傾斜面を形成し、酸化シリコン層に第1傾斜面と同じ方向に傾斜した第2傾斜面を形成してもよい。
上記のSOI基板の加工方法によれば、シリコン基板の一部が開口部の内側に突出したひさし形状になることを防止することができる。
本発明の一実施形態に係るSOI基板は、シリコン基板、酸化シリコン層、及びシリコン層を含み、シリコン基板には、酸化シリコン層からシリコン基板の表面に向かって径が大きくなる第1開口部が設けられ、酸化シリコン層には、第1開口部と酸化シリコン層との間において、シリコン基板の表面に向かって径が大きくなる第2開口部が設けられている。
上記のSOI基板によれば、シリコン基板の一部が開口部の内側に突出したひさし形状になることを防止することができる。
また、シリコン基板の表面に対する第2開口部の傾斜角は、第1開口部の底部におけるシリコン基板の表面に対する第1開口部の傾斜角よりも小さくてもよい。
上記の絞り装置によれば、絞り装置の表面への機能層の付き回り性を向上させることができる。
また、第1開口部の側壁は湾曲形状であり、第2開口部の側壁は直線形状であってもよい。
上記の絞り装置によれば、シリコン基板における応力の集中を抑制することができる。
また、シリコン層は、第2開口部から露出された領域が薄膜化されていてもよい。
上記の絞り装置によれば、シリコン基板の一部が開口部の内側に突出したひさし形状になることを防止することができる。
本発明の一実施形態によると、導電層又はバリア層などの機能層を付き回り性よく形成することができるSOI基板を提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明のSOI基板、SOI基板の加工方法、絞り装置及びその製造方法について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、第1部材と第2部材との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。また、以下の説明で基板の第1面及び第2面は基板の特定の面を指すものではなく、基板の表面方向又は裏面方向を特定するもので、つまり基板に対する上下方向を特定するための名称である。
〈実施形態1〉
図1を用いて、本発明の実施形態1に係る絞り装置の構成について説明する。実施形態1では、SOI基板を用いた装置の一例として、電子顕微鏡に用いる絞り装置について説明する。実施形態1に係る絞り装置は、シリコン基板、酸化シリコン層、及びシリコン層を含むSOI基板に形成された電子顕微鏡に用いる絞り装置である。なお、実施形態1では、SOI基板及びSOI基板の加工方法として、電子顕微鏡に用いる絞り装置及びその製造方法を例示するが、これに限定されない。
本発明の一実施形態に係るSOI基板100は、シリコン基板110、酸化シリコン層120、及びシリコン層130を含み、シリコン基板110には、酸化シリコン層120からシリコン基板110の表面に向かって径が大きくなる開口部112(第1開口部)が設けられ、酸化シリコン層120には、開口部112と酸化シリコン層120との間において、シリコン基板110の表面に向かって径が大きくなる開口部122(第2開口部)が設けられている。このような構造を有するSOI基板100は、さらにシリコン層130に開口部112よりも小さい開口部132を設けることで、電子顕微鏡に用いる絞り装置に用いることができる。
[絞り装置10の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の構成を示す概要図である。図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る絞り装置10は、SOI基板100に開口部が設けられた形状であり、シリコン基板110、酸化シリコン層120(埋め込み酸化シリコン層又はボックス層ともいう)、及びシリコン層130を有する。以下の説明において、SOI基板100のシリコン基板110側を裏面側といい、SOI基板100のシリコン層130側を表面側という。ただし、SOI基板100のシリコン基板110側を、シリコン基板110の表面という場合もある。
酸化シリコン層120及びシリコン層130は、シリコン基板110上に裏面側から表面側に向けて順に積層されている。シリコン基板110には、側壁114が湾曲形状の開口部112が設けられている。側壁114は開口部112の内部に向かって凹型に湾曲している。酸化シリコン層120には、側壁124が概略直線形状の開口部122が設けられている。シリコン層130には、側壁134が概略直線形状の開口部132が設けられている。開口部112及び開口部122は表面から裏面に向かって開口径が徐々に大きくなるテーパ形状である。一方、開口部132は側壁が垂直な形状である。開口部132はメンブレンに形成された絞り孔であり、開口部112及び開口部122に比べて開口径が小さい。
SOI基板100の面に対する酸化シリコン層120の側壁124の傾斜角は、シリコン基板110の側壁114の傾斜角に比べて小さい。また、側壁124は側壁114よりも開口部112及び開口部122の内側に配置されている。換言すると、側壁124は開口部112の底部よりも開口部112及び開口部122の内側に配置されている。また、換言すると、側壁124はその全域が裏面側に露出されている。つまり、開口部112の底端部116は酸化シリコン層120の裏面側に接しており、シリコン基板110と酸化シリコン層120との間にひさし形状が形成されていない。ここで、側壁124及び酸化シリコン層120の裏面側においてシリコン基板110から露出された平面の両方が裏面側に露出されていてもよい。
シリコン層130の裏面側、つまりシリコン層130の酸化シリコン層120側において、シリコン層130の一部は酸化シリコン層120から露出されている。シリコン層130の裏面側が露出されている領域において、シリコン層130は他の領域に比べて僅かに薄膜化されている。シリコン層130の露出面は平面視において略円形である。
開口部112の開口径はシリコン基板110の厚さの約2倍以上2.5倍以下とすることができる。例えば、シリコン基板110の厚さが約400μmの場合、開口部112の開口径は約800μm以上1000μm以下とすることができる。開口部132の開口径に特に制限はないが、例えば直径30μmで設けられてもよい。
図1では、側壁114が湾曲した構造を例示したが、側壁114は直線形状であってもよい。また、側壁124が概略直線形状である構造を例示したが、側壁124が湾曲していてもよい。また、シリコン層130の裏面側が露出されている領域において、シリコン層130が薄膜化された構造を例示したが、シリコン層130が他の領域と同じ膜厚であってもよい。また、側壁134が垂直に直線形状を有する構造を例示したが、側壁134がテーパ形状であってもよく、また、湾曲していてもよい。
また、図1では、開口部112、開口部122、開口部132、及びシリコン層130の露出面がそれぞれ略円形である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、これらの一部又は全部が楕円形であってもよく、矩形などの多角形であってもよい。ただし、他の領域との境界に生じる応力の集中を緩和するためには円形又は楕円形とすることが好ましい。上記の形状を多角形とする場合は、角部を丸めるとよい。
また、シリコン層130の開口部132は、開口部112及び開口部122に対して少なくとも1つ存在すればよく、その数、大きさ、配置等は適宜設定することができる。
なお、絞り装置10は、ここでは図示していないが、実際の使用に際して、その表面全体にTiなどの密着層を介してAuを被膜して導電性を付与する。密着層としてはTi以外にもCrなどを用いることができる。また、密着層の膜厚は例えばTiの場合は50nm以上100nm以下とすることができる。導電性被膜としては、Au以外にもPtなどを用いることができる。また、導電性被膜の膜厚は例えばAuの場合100nm以上500nm以下とすることができる。
SOI基板100は、市販のSOI基板を用いることができる。市販のSOI基板としては、UNIBOND基材(登録商標)やSIMOX(登録商標)(Separation by IMplantation of OXygen)等を用いることができる。又は、目的に応じた物性値を有するシリコン基材を貼り合せることでSOI基板100を形成してもよい。シリコン基材を貼り合せる方法は、上記のように常温接合法やウェハ直接接合法等の方法を用いることができる。
シリコン基板110は、厚さが300μm以上800μm以下のシリコン基板110を用いることができる。酸化シリコン層120の膜厚は100nm以上2μm以下のものを用いることができる。シリコン層130の膜厚は目的によって適宜選択することができるが、例えば電子顕微鏡の絞り装置の場合は500nm以上10μm以下のものを用いることができる。例えば、シリコン基板110の厚さが400μm、酸化シリコン層120の膜厚が1μm、シリコン層130の膜厚が5μmのSOI基板100を用いることができる。
シリコン基板110は、結晶方位が{100}のシリコン基板を用いることができる。シリコン層130は、結晶方位が{100}のシリコン層を用いることができる。なお、シリコン基板110を切断して個片化する際に、ダイシングブレード(例えば、ダイヤモンド製の円形回転刃)を用いる場合は{100}以外の結晶方位のシリコン基板を用いることができる。また、レーザ光で結晶中に欠陥を生成させ、基板を面方向に引っ張ってへき開割れさせるステルスダイシングでは、へき開しやすいように、結晶方位が{100}、切断面が{110}になるように処理することが望ましい。また、シリコン基板110を例えば4メチル水酸化アンモニウム(TMAH)などの薬液によりウェットエッチングする場合は、結晶方位を{100}とすることが望ましい。
[絞り装置10の製造方法]
図2〜図10を用いて、本発明の実施形態1に係る絞り装置10の製造方法を説明する。図2〜図10において、図1に示す要素と同じ要素には同一の符号を付した。ここでは、SOI基板の加工方法の一例として、電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造方法について説明する。具体的には、酸化シリコン層120のエッチングとして、ウェットエッチング及びドライエッチングを順次処理する方法で絞り装置10を作製する製造方法について説明する。絞り装置10は1つのSOI基板100に複数形成することができるが、説明の便宜上、以下の説明においては1つの絞り装置10のみを示す。
本発明の一実施形態に係るSOI基板の加工方法によれば、シリコン基板110、酸化シリコン層120、及びシリコン層130を含むSOI基板100において、シリコン基板110が配置された面側から酸化シリコン層120を露出する開口部112を形成し、開口部112が形成された面側から、酸化シリコン層120を等方性の第1エッチングでエッチングし、第1エッチングの後に、開口部112が形成された面側から異方性の第2エッチングでエッチングすることで、開口部が形成された面側のシリコン層130を露出する。このような加工方法で形成するSOI基板100の製造方法において、さらにシリコン層130に開口部112よりも小さい開口部132を形成することで、電子顕微鏡に用いる絞り装置を製造することができる。
図2は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、SOI基板のシリコン層側にレジストを形成する工程を示す概要図である。まず、SOI基板100を準備する。ここでは、SOI基板100として、例えば直径が8インチ、シリコン基板110の厚さが400μm、酸化シリコン層120の膜厚が1μm、シリコン層130の膜厚が5μmのSOI基板100を用いることができる。ここで、1つのSOI基板100に複数の絞り装置10を形成することができる。ただし、SOI基板100の直径は4、5、6、8インチまたは300mmの規格品のものを用いることができる。
図2に示すように、準備したSOI基板100の裏面に絶縁層140を形成し、シリコン層130上にレジストパターン200を形成する。ここで、絶縁層140はシリコン基板110の裏面側を熱酸化して形成することができる。ただし、購入したSOI基板の裏面側に熱酸化膜が形成されている場合は、そのまま利用してもよい。シリコン基板110の熱酸化は、酸素雰囲気で行ってもよく、金属等の汚染による影響を小さくするために塩酸を添加した酸素雰囲気で行ってもよい。ただし、絶縁層140はシリコン基板110の裏面に化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)又は物理蒸着法(Physical Vapor Deposition:PVD法)で形成することができる。PVD法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、及びめっき法などを用いることができる。また、CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、触媒CVD法(Cat(Catalytic)−CVD法又はホットワイヤCVD法)などを用いることができる。また、レジストパターン200は、後の工程でメンブレンに形成された絞り孔となる開口部132が形成される領域のシリコン層130を露出する。
図3は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、シリコン層に開口部を形成する工程を示す概要図である。図3に示すように、SOI基板100の表面側からシリコン層130をエッチングして酸化シリコン層120の表面側を露出する開口部132を形成する。シリコン層130のエッチングとして、開口部132の開口径及び開孔形状の加工精度を高めるために異方性エッチングを用いることが好ましい。異方性エッチングとしては、例えば臭化水素(HBr)ガス、六フッ化硫黄(SF6)ガス、四フッ化炭素(CF4)ガス、トリフルオロメタン(CHF3)ガスを用いた反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)を用いることができる。なお、エッチングガスはエッチングする対象により適宜選択すればよい。このエッチングにおいて、個々の絞り装置に個片化するためのダイシングライン(図示せず)をあわせて形成してもよい。ここで、開口部132の開口径は例えば30μmとする。また、この工程の前後のタイミングにおいて、アラインメントマーク(図示せず)をシリコン層130に形成してもよい。
また、シリコン層130のエッチングとして、異方性のウェットエッチングを用いてもよい。異方性ウェットエッチングとしては、アルカリ性のエッチャントを用いることができる。具体的には、水酸化カリウム(KOH)、4メチル水酸化アンモニウム(TMAH)、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、水和ヒドラジン(N2H4・H2O)を用いることができる。また、シリコン層130として、表面が(110)面であるシリコン層を用いることで、エッチング形状が、エッチング速度の低い結晶面である{111}面で構成されるように進むため、異方性のウェットエッチングを行うことができる。
図4は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、レジストを除去する工程を示す概要図である。図4に示すように、開口部132を形成した後に、レジストパターン200を構成するフォトレジストを有機溶媒により除去する。なお、フォトレジストの除去には、有機溶媒を用いる代わりに、酸素プラズマによるアッシングを用いることもできる。
図5は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、SOI基板のシリコン層側及びシリコン基板側にレジストを形成にする工程を示す概要図である。図5に示すように、SOI基板100の表面側及び裏面側にレジストパターン210及び220を形成する。レジストパターン220は後の工程で開口部112が形成される領域の絶縁層140を露出する。
図6は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、シリコン基板裏面の酸化シリコン層を除去する工程を示す概要図である。図6に示すように、SOI基板100の裏面側から絶縁層140をエッチングしてシリコン基板110の裏面側を露出する。絶縁層140のエッチングは特に限定されることはなく、絶縁層140の材質に応じたウェットエッチング又はドライエッチングを用いることができる。ここで、開口部を設けない領域のシリコン基板110の裏面に形成された絶縁層140を残すことで、SOI基板の反りを抑制することができる。なお、シリコン基板裏面に酸化シリコン層が形成されていない場合は、シリコン基板裏面に直接レジストパターン210を形成してエッチングしてもよい。
図7は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、シリコン基板に開口部を形成する工程を示す概要図である。図7に示すように、SOI基板100の裏面側からシリコン基板110をエッチングして酸化シリコン層120の裏面側を露出する開口部112を形成する。シリコン基板110のエッチングとして、異方性エッチング又は等方性エッチングを用いてもよいが、等方性エッチングを用いることで側壁114が湾曲した形状を得ることができるので好ましい。側壁114が湾曲形状を有することで、シリコン基板110が応力による形状変化を抑制することができる。
等方性エッチングとしては、ドライエッチング又はウェットエッチングを用いることができる。等方性エッチングとしてドライエッチングを用いる場合、エッチングガスとして、SF6ガスを用いることができる。SF6ガスを用いた等方性エッチングを行うことにより、エッチングを短い時間で行うことができるとともに、側壁114を円弧状に湾曲した形状を形成することができ、絞り装置10の形状を安定させることができる。等方性エッチングとしてウェットエッチングを用いる場合、HF水溶液、硝酸、又は酢酸の混合水溶液を使用することができる。異方性エッチングとしてウェットエッチングを用いる場合、水酸化カリウム(KOH)、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、又は4メチル水酸化アンモニウム(TMAH)を使用することができる。
図8は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、レジストを除去する工程を示す概要図である。図8に示すように、開口部112を形成した後に、レジストパターン210、220を構成するフォトレジストを有機溶媒により除去する。なお、フォトレジストの除去には、有機溶媒を用いる代わりに、酸素プラズマによるアッシングを用いることもできる。
図9は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、酸化シリコン層及び絶縁層をウェットエッチングする工程を示す概要図である。図9に示すように、絶縁層140を除去し、開口部112の底部において露出された酸化シリコン層120を薄膜化する。酸化シリコンのウェットエッチングは等方性エッチングであるため、酸化シリコン層120は薄膜化されると同時に開口部112の底端部116からSOI基板100の面方向に後退する。したがって、開口部112において、シリコン基板110の底端部116が開口部112の内部に突出したひさし形状が形成される。換言すると、酸化シリコン層120のウェットエッチングによって、シリコン基板110の酸化シリコン層120側の面が露出される。
ここで、図9では絶縁層140を全て除去する工程を例示したが、この工程に限定されず、絶縁層140の一部がシリコン基板110の裏面側に残存していてもよい。また、図9では酸化シリコン層120が膜厚方向に一部残存するように酸化シリコン層120を薄膜化する工程を例示したが、この工程に限定されない。例えば、開口部112の底部に位置する酸化シリコン層120が膜厚方向に全てエッチングされ、シリコン層130の裏面側が露出されてもよい。ただし、底端部116によって形成されたひさし形状を解消するためのドライエッチング工程において、シリコン層130の膜厚が過剰に薄膜化されることを抑制することができるため、図9に示すように酸化シリコン層120を膜厚方向に一部残存させた方が良い。
図10は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、シリコン基板及び酸化シリコン層をドライエッチングする工程を示す概要図である。図10に示すように、図9においてSOI基板100の裏面側に露出した側壁114及び薄膜化された酸化シリコン層120を裏面側からドライエッチングによってエッチングする。ドライエッチングとしては、異方性のドライエッチング条件を用いる。
ドライエッチング条件としては、酸化シリコン層120とシリコン基板110及びシリコン層130とのエッチングレートの選択比が大きい条件を用いることができる。つまり、シリコン基板110及びシリコン層130のエッチグレートに比べて酸化シリコン層120のエッチングレートのほうが早いエッチング条件を用いることができる。より具体的なエッチング条件は、エッチングガスとしてCF4及びH2の混合ガス(CF4:H2=4:1)を用い、上記の混合ガスを流量:40sccm、圧力:5Paで供給し、供給電力200Wでエッチングすることができる。
上記のドライエッチングによってエッチングされる領域は、SOI基板100の裏面側から見たときにシリコン基板110から露出された領域の酸化シリコン層120である。つまり、上記のエッチングされる領域は、裏面側から見たときに底端部116によって形成されたひさし形状の影になっている領域である。また、酸化シリコン層120のドライエッチングと同時に側壁114のシリコン基板110をエッチングする。この側壁114のドライエッチングによって、開口部112の底部の径が広がる。換言すると、当該ドライエッチングによって底端部116はSOI基板100の面方向に後退し、酸化シリコン層120の裏面と接する位置に移動する。さらに換言すると、当該ドライエッチングによって上記の工程で露出されたシリコン基板110の酸化シリコン層120側の面に対応する領域(ひさし形状の影に相当する領域)のシリコン基板110を除去する。
また、上記のドライエッチングによって開口部112の底部の径が広がることで、ひさし形状の影になっていた領域の酸化シリコン層120が露出され、露出された酸化シリコン層120も上記ドライエッチングによってエッチングされる。酸化シリコン層120には、シリコン基板110の底部付近の形状を反映して、図10に示すようなテーパ形状の側壁124が形成される。ここで、図10に示す断面形状は、図9の工程で薄膜化された領域の酸化シリコン層120が膜厚方向に全てエッチングされ、シリコン層130の裏面側の面が露出された時点の断面形状である。図10の状態から、さらにドライエッチングを続け、酸化シリコン層120から露出されたシリコン層130をオーバーエッチングすることで、図1に示す構造を得ることができる。
なお、図10に示す状態から、ドライエッチング条件を切り替え、上記のドライエッチング条件とは逆に酸化シリコン層120のエッチグレートに比べてシリコン基板110及びシリコン層130のエッチングレートの方が速いエッチング条件を用いてエッチングすることで、底端部116をさらに後退させることができる。特に、酸化シリコン層120をエッチングせず、シリコン基板110及びシリコン層130だけをエッチングする条件でエッチングすれば、側壁124に加え酸化シリコン層120の裏面側の面を露出することができる。
図11は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡に用いる絞り装置の製造工程において、露出された表面に導電層を形成する工程を示す概要図である。図11に示すように、図10に示す構造に対して表面及び裏面側から密着層を介して導電層300を形成する。密着層としては、上記のようにTiやCrを用いることができる。導電層300としては、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等の金属またはこれらを用いた合金などから選択された材料を用いることができる。図11のように導電層300を形成することで、絞り装置10の表面に導電性を付与することができ、電子の衝突によって帯電した電荷を外部に逃がすことができる。密着層としてTiを用いた場合、密着層の膜厚は50nm以上100nm以下とすることができる。また、導電層300としてAuを用いた場合、導電層300の膜厚は100nm以上500nm以下とすることができる。
そして、導電層300を形成した後に、個々の絞り装置10を分離するダイシングを行い、面付けごとに個片化して製造工程を終了する。以上より、複数の絞り装置10を一括して生産することができる。
以上のように、実施形態1に係る絞り装置10及びその製造方法によると、シリコン基板110の一部が開口部112及び開口部122の内側に突出したひさし形状になることを防止することができるため、絞り装置10の表面に導電層やバリア層を付き回り性よく形成することができる。つまり、カバレッジ不良を抑制することができる。その結果、絞り装置10の所望の帯電防止や耐腐食性の効果を得ることができる。
〈実施形態2〉
図12を用いて、本発明の実施形態2に係る圧力センサ素子の構成について説明する。実施形態2では、SOI基板を用いた素子の一例として、メンブレンを用いた圧力センサ素子について説明する。実施形態2に係る圧力センサ素子20は、シリコン基板、酸化シリコン層、及びシリコン層を含むSOI基板において、シリコン層をメンブレンとして用いた圧力センサ素子である。なお、実施形態2では、SOI基板及びSOI基板の加工方法として圧力センサ素子を例示するが、これに限定されない。
本発明の一実施形態に係る第1基板400(SOI基板)は、シリコン基板406、酸化シリコン層402、及びシリコン層404を含み、シリコン基板406には、酸化シリコン層402からシリコン基板406の表面に向かって径が大きくなる開口部が設けられ、酸化シリコン層402には、開口部と酸化シリコン層402との間において、シリコン基板406の表面に向かって径が大きくなる開口部が設けられている。このような構造を有する第1基板400は、さらにシリコン層404のシリコン基板406とは反対側に第2基板410を有し、第1基板400と第2基板410との間に内部空間420を設けることで、圧力センサ素子20に用いることができる。
[圧力センサ素子20の構成]
図12は、本発明の一実施形態に係る圧力センサ素子の構成を示す概要図である。圧力センサ素子20は、第1基板400及び第2基板410を組み合わせて形成されている。この例では、第1基板400はシリコン基板406、酸化シリコン層402、及びシリコン層404を有するSOI基板である。第2基板410はガラス基板である。なお、圧力センサ素子20のシリコン基板406及び酸化シリコン層402の断面形状は、絞り装置10のシリコン基板110及び酸化シリコン層120と同様なので、ここでは説明を省略する。
シリコン層404は、導電性を有し、中央部分が薄く形成されている。この薄く形成された部分を可撓部432という。可撓部432は、周囲が固定されたメンブレンである。可撓部432を固定している部分を固定部440という。
可撓部432の第2基板410側の面には、密閉された内部空間420が形成されている。可撓部432のシリコン基板406側の面は、外部空間450に面している。換言すると、圧力センサ素子20の内部空間420と外部空間450とは、可撓部432を介して隔てられている。
内部空間420は、大気圧よりも低い所定の圧力に保たれるように、第1基板400と第2基板410とで密閉されている。この例では、内部空間420は、真空状態に保たれている。そのため、外部空間450が内部空間420よりも高い圧力である場合、図12(b)に示すように、可撓部432は、内部空間420の体積を縮小するように第2基板410側に撓む。一方、外部空間450が内部空間420よりも低い圧力である場合、図12(c)に示すように可撓部432は、内部空間420の体積を拡大するように第2基板410とは反対側に撓む。
可撓部432の第2基板410側には、ストッパ434が配置されている。ストッパ434は、ビッカース硬さ(Vickers Hardness)が0.5GPa以上の金属が、少なくとも接触面(電極474側の面)に配置された構造である。このような金属としては、例えば、W、Mo、Ta、Ti、Ni、Cu、Al、Fe(S45C)、SUS304、Agなどがある。望ましくは、ストッパ434のビッカース硬さは、1.0GPa以上の金属であり、この場合には、W、Mo、Ta、Ti、Fe(S45C)、SUS304などである。また、複数の金属を組み合わせたものであってもよい。
また、ストッパ434は、この例では、上記の金属単層であるが、2層以上で形成されていてもよい。例えば、2層であれば、可撓部432と接触する側の層において、可撓部432との密着性を向上させるための金属層であってもよく、絶縁層であってもよい。このように、ストッパ434が積層構造である場合、接触面に配置された金属以外は、必ずしも、接触面の材料に求められる特性(ビッカース硬さを含む)を有していなくてもよいが、積層の全てにおいて接触面と同等のビッカース硬さを有していることが望ましい。
第2基板410には、基板を貫通する貫通電極462、472が形成されている。第2基板410の内部空間420側には、電極464、474が形成され、外部空間側には電極466、476が形成されている。
電極464はシリコン層404と電気的に接続される。貫通電極462は、電極464と電極466とを電気的に接続する。貫通電極472は、電極474と電極476とを電気的に接続する。電極474と可撓部432とは容量を形成する。電極474は固定電極である。ここで、可撓部432が撓むことにより、電極間の距離が変化し、容量の大きさも撓み量に応じて変化する。
電極474は、ストッパ434と同様に、ビッカース硬さが0.5GPa以上、望ましくは1.0GPa以上の金属が、少なくとも接触面(ストッパ434側の面)に配置された構造である。また、複数の金属を組み合わせたものであってもよい。なお、電極474が、積層構造である場合、接触面に配置された金属以外は、必ずしも、接触面の材料に求められる特性(ビッカース硬さを含む)を有していなくてもよいが、積層の全てにおいて接触面と同等のビッカース硬さを有していることが望ましい。
電極466と電極476とを測定装置に接続することによって、この容量値が測定される。測定された容量値に基づいて可撓部432の撓み量を測定することができる。そして、可撓部432の撓み量に基づいて外部空間450の圧力(または、内部空間420と外部空間450との圧力差)を測定することができる。
なお、可撓部432と容量を形成する固定電極は、電極474の他にも存在してもよい。例えば、温度、湿度等の環境変化に応じた容量変化を補正するための参照用電極が、可撓部432と容量を形成する固定電極として設けられていてもよい。
内部空間420の真空度を高めるために、非蒸発型ゲッタ(NEG)などのゲッタ材480が配置されてもよい。ゲッタ材480を設けることにより、第1基板400と第2基板410とを陽極接合で接合したときに発生するガス等を捕獲して、内部空間420の真空度を高めることができる。
[圧力センサ素子20の製造方法]
ここでは、SOI基板の加工方法の一例として、圧力センサ素子の製造方法について説明する。具体的には、酸化シリコン層402のエッチングとして、ウェットエッチング及びドライエッチングを順次処理する方法で圧力センサ素子20を作製する製造方法について説明する。
本発明の一実施形態に係るSOI基板の加工方法によれば、シリコン基板406、酸化シリコン層402、及びシリコン層404を含む第1基板400において、シリコン基板406が配置された面側から酸化シリコン層402を露出する開口部を形成し、当該開口部が形成された面側から、酸化シリコン層402を等方性の第1エッチングでエッチングし、第1エッチングの後に、開口部が形成された面側から異方性の第2エッチングでエッチングすることで、開口部が形成された面側のシリコン層404を露出する。このような加工方法で形成する第1基板400の製造方法において、さらにシリコン層404のシリコン基板406とは反対側に第2基板410を配置し、第1基板400と第2基板410との間に内部空間420を設けることで、圧力センサ素子20を製造することができる。
上記のように、本発明の実施形態2に係る圧力センサ素子20は、図2〜図10に示した実施形態1に係る絞り装置10の製造方法と類似した方法で製造することができる。圧力センサ素子20の製造方法は、絞り装置10のシリコン層130に開口部を設けずに、シリコン基板110及び酸化シリコン層120の各々に開口部を設ける点において、絞り装置10の製造方法とは相違する。なお、圧力センサ素子20の内部空間420に相当するシリコン層404の開口部は、シリコン基板406及び酸化シリコン層402の各々の開口部を形成する前に形成してもよく、後に形成してもよい。
以上のように、実施形態2の圧力センサ素子20及びその製造方法によると、実施形態1の絞り装置10と同様の効果を得ることができる。
なお、上記の実施形態では、SOI基板として絞り装置10及び圧力センサ素子20を例示したが、これらの装置及び素子に限定されず、多様な装置及び素子に本発明に係るSOI基板を適用することができる。