JP6713341B2 - 化合物半導体基板およびその製造方法 - Google Patents

化合物半導体基板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、化合物半導体であるテルル化カドミウム(CdTe)またはテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)等のCdTe系単結晶基板とそれらの製造方法に関し、特に、放射線検出器用基板として好適な、高抵抗率で抵抗率の面内変動が少ない化合物半導体単結晶基板とその製造方法に関するものである。
II族(2B族)元素であるカドミウム(Cd)とVI族(6B族)元素であるテルル(Te)とのII−VI族化合物であるテルル化カドミウム(CdTe)は、比較的大きなバンドギャップ(〜1.44eV)を有する半導体材料であり、太陽電池用材料として多く用いられている他、電気光学変調器や赤外線窓のような光学用途(特許文献1等参照)にも用いられている。また、CdTeのCdの一部を同族元素である亜鉛(Zn)で置換することでバンドギャップを大きくしたテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)もCdTe同様のII−VI族半導体材料であり、その特性を活かして広く用いられている。
CdTeまたはCdZnTeの特性を活かした有効な適用用途の一つとして、硬X線やγ線等の放射線検出器への適用が従来から行われている。CdTeやCdZnTeは、半導体材料として代表的なシリコン等と比較して原子番号の比較的大きな元素であり、高い電子移動度(〜1100cm/V・s)も併せて有することから、移動度寿命積(μτ積)と電荷収集効率が高く、小型で放射線検出効率の高い素子を実現することができる材料である。
放射線検出器にCdTeやCdZnTeを用いた素子では、CdTe系単結晶基板にオーミック接触する電極を形成してバイアス電圧を印加し、入射放射線を、それによって発生するキャリア電流に変換し、回路に流れる電流を検出するという電気的な方法によって放射線の検出が行われる(特許文献2、特許文献3等参照)。この方法によれば、放射線を直接電流信号に変換するため、放射線入射によって蛍光(ルミネッセンス)を発する物質(シンチレータ)を介して放射線の検出を行う間接的な方法と比較して、検出効率、エネルギー分解能、応答速度に優れた検出が可能となり、素子自体をコンパクトに設計できるという利点もある。
また、CdTeやCdZnTeを用いた放射線検出器は、上述したように半導体材料自体のバンドギャップが大きくリーク電流が少ないため、室温での動作が可能である。そのため、SiGe等の材料を用いた検出器と比較して、動作時のリーク電流による熱雑音等の影響を抑えるための冷却装置が不要であり、装置を小型化できる利点も有する。Zn添加によりCdTeよりもさらにバンドギャップを大きくしたCdZnTeでは、CdTeを用いたものよりも高バイアス動作が可能であり、それにより放射線の検出エネルギー分解能をより高めることも可能となる。
このように、CdTe基板やCdZnTe基板を用いた放射線検出器の放射線検出感度と検出エネルギー分解能を高めるためには高バイアス動作が必要となるが、キャリアの輸送特性を考慮の上で良好な放射線信号を電気的に取り出すためには、700V以上の高バイアス電圧を基板へ印加する必要がある。したがって、リーク電流による熱雑音等による放射線検出感度の低下を抑制するためには、700V程度の高バイアス電圧印加時においても十分に高い抵抗率を有するように、CdTeまたはCdZnTe材料を高抵抗率化する必要がある。
一般的に、高線量環境下において使用されるCdTeやCdZnTeを高抵抗率化した場合、使用開始から時間の経過とともに素子の放射線検出感度が低下して信号強度が低下し、さらに検出信号波形が崩れてエネルギー分解能も劣化してゆくポラリゼーションと呼ばれる現象が顕著になる傾向がある。しかし、微弱な放射線量の環境下で発生している放射線を感度良く検出する場合には、高線量環境下のようなポラリゼーション発生をそれほど考慮する必要がなく、このような環境下で使用される素子には、CdTe材料やCdZnTe材料の高抵抗率化への要請は強い。また、上述した放射線検出器用途に限らず、電気光学素子等の用途においても、10〜10Ωcmを超える高抵抗率のCdTe材料やCdZnTe材料の需要は高い。
CdTeやCdZnTeを用いた半導体素子は、円板ウエハ状のCdTe系単結晶基板から、必要に応じて、数十mm角程度の矩形の単結晶基板に切り出し、ここからさらに数mm〜数十mm角サイズの基板に分割して切り出して、素子が作製される。この際、素子サイズに切り出される基となるウエハ状の単結晶基板中に、局所的に抵抗率の偏りが存在すると、切り出されて作製された素子毎に抵抗率の値が大きく異なることになり、作製される素子間での性能を一定に保つことが不可能となって製造歩留りも低下する。したがって、高抵抗率化とともに、CdTe系単結晶基板の抵抗率を基板全体にわたって均一なものにすることが必要となるが、高抵抗率化を行うと、それに伴って基板面内の抵抗率が大きくばらつく傾向があり、問題となる。
CdTe系単結晶の高抵抗率化に関しては、特許文献1〜6のような先行技術が存在する。特許文献1は、塩素(Cl)ドープまたはインジウム(In)ドープにより、CdTe単結晶を10〜10Ωcmとする技術を開示している。特許文献2は、100Vのバイアス電圧印加時におけるInドープCdZnTe単結晶について、単結晶成長後のインゴットアニールを行うことで、抵抗率として1011Ωcm台の値が達成できる技術を開示している。しかし、これらには、低線量環境下において放射線検出器として使用する際等のように、高バイアス電圧印加時の抵抗率という観点での課題の認識は無く、そのような状況においても十分な抵抗率値が達成されるか否かについての言及はない。さらに、インゴットから切り出した基板面内の抵抗率の均一性に関しても何ら言及していない。特許文献3は、特許文献2同様のインゴットアニールを行うことで、インゴットから切り出したCdTeまたはCdZnTe基板に700Vのバイアス電圧を印加した時の抵抗率として10Ωcm台、基板面内の抵抗率の相対標準偏差が20%以下であるものを開示しているが、700V印加時の抵抗率が10Ωcm以上の高抵抗率である基板の開示はない。
特許文献4〜6は、特許文献2や特許文献3とは異なり、CdTe単結晶インゴットから基板を切り出し、該基板に対してアニール(ウエハアニール)を行う技術を開示している。このうち、特許文献4はAr雰囲気中でCdTeの融点に近い高温でアニールを行うもので、それによって沈殿物の除去を行うというものである。特許文献5は、CdTe基板に対して700℃程度の高温アニールを真空中で行うものである。特許文献6は、CdTe基板に対して400℃程度の低温アニールを真空中で行うものである。しかし、これらのいずれにも1011Ωcm台を超えるような高抵抗率の基板の開示はなく、基板面内の抵抗率の均一性に関する課題の認識もない。
特開2004−238268号公報 特開2013−241289号公報 特開2014−196213号公報 特開2008−100900号公報 特開平05−155699号公報 特開平09−124310号公報
上述したように、CdTeまたはCdZnTe等のCdTe系単結晶基板においては、高バイアス電圧印加時においてもリーク電流を抑制する等の目的で、高バイアス電圧印加時の抵抗率を十分に高くすることが望まれている。また、このような基板は、円板状の母板となる単結晶基板から複数枚の矩形基板として切り出されることが一般的であるが、該矩形基板上に作製される複数の素子の間での性能を均一なものとするために、基板面内での抵抗率のばらつきをなくし、面内で均一な抵抗率とする必要がある。そこで、本発明は、高電圧印加時においてもリーク電流が少ない高抵抗率のCdTe系単結晶基板を提供することを目的とする。また、本発明は、上述したCdTe系単結晶基板を効果的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
上記の技術課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、CdTeをベースとする化合物単結晶において、化合物組成と、結晶内のキャリア活性化に関与するアニールの方法と条件について検討し、適切な制御を行うことにより、高バイアス電圧印加時にも十分に高い抵抗率を有し、かつ面内で抵抗率が均一な基板を得ることができるとの見識に至り、さらには、高バイアス電圧印加時にも十分に高い抵抗率を有し、かつ面内で抵抗率が均一な基板を、同一の母板円形基板から複数枚を得ることができるので、素子化した場合に複数の素子の間での性能を均一なものを得ることができるとの見識に至り、本発明を完成させた。
上述した知見と結果に基づき、本発明は以下の発明を提供するものである。
1)原子比で表した一般式がCd (1-x) ZnxTe(0≦x<0.20)の化合物半導体単結晶基板であって、700Vのバイアス印加時の抵抗率が1.0×1011Ωcm以上であることを特徴とする化合物半導体単結晶基板、
2)前記基板が、円形状であり、該基板面内における4mm角の抵抗率相対変動係数が50%以下であることを特徴とする前記1)に記載の化合物半導体単結晶基板、
3)前記円形基板の直径が100mm以上であることを特徴とする前記2)に記載の化合物半導体単結晶基板、
4)前記円形基板の直径が125mm以上であることを特徴とする前記2)に記載の化合物半導体単結晶基板、
5)前記基板が、矩形状であり、該基板面内における4mm角の抵抗率相対変動係数が50%以下であることを特徴とする前記1)に記載の化合物半導体単結晶基板、
6)前記化合物半導体単結晶が、InまたはClを0.3〜0.8ppm含むことを特徴とする前記1)〜5)のいずれか一に記載の化合物半導体単結晶基板、
7)前記基板が、放射線検出用途に使用されるものであることを特徴とする前記1)〜6)のいずれか一に記載の化合物半導体単結晶基板、
8)700Vのバイアス印加時の抵抗率が1.0×1011Ωcm以上であり、原子比で表した一般式がCd (1-x) ZnxTe(0≦x<0.20)の化合物半導体単結晶基板の製造方法であって、Cd蒸気圧下での垂直式温度傾斜凝固法によって前記化合物半導体単結晶の円柱インゴットを成長する工程、前記インゴットを円板ウエハ状にスライスして基板とする工程、前記スライスしたウエハ状の基板を275〜325℃、10〜25時間、不活性雰囲気下にて熱処理を行う工程を含むことを特徴とする化合物半導体単結晶基板の製造方法。
本発明によれば、CdTe系単結晶基板として、700Vの電圧印加時における抵抗率が1×1011Ωcm以上という高い値を実現できるため、放射線検出素子に用いた場合に、微量の放射線を検出するための高バイアス動作時においてもリーク電流によるノイズの発生を抑制することができる点で極めて有用である。また、本発明によれば、上記のような高抵抗率を有しつつも基板面内において抵抗率は均一であるため、単一の基板から性能のばらつきのない素子を効率的に作製することができ、素子の製造歩留りの向上とそれに伴うコスト低減にも大きく寄与するものとなる。この点は、高抵抗率CdTe系単結晶基板を用いるすべての技術に関していえるものである。
円板状基板における4mm角の抵抗率変動係数算出に用いる抵抗率測定部位を示す図 矩形基板における4mm角の抵抗率変動係数算出に用いる抵抗率測定部位を示す図((a)20mm×20mm、(b)12mm×12mm、(c)20mm×12mm) 本発明のCdTe系単結晶の製造に適した装置の概略図 ウエハアニール時のCdTe系単結晶基板をウエハホルダにセットした様子を示す概略図 ウエハアニール炉の概略図
低線量環境下における高感度放射線検出器をCdTe系単結晶基板から実現する場合、検出感度を高くするためには700V以上の高バイアス電圧を基板へ印加する必要があるが、そのような高電圧印加時に基板の抵抗率が十分でないとリーク電流が流れて熱雑音が生じることになる。熱雑音が多い状態では、放射線入射によって生じるキャリア電流、つまり放射線検出信号と雑音との区別がつきにくい、信号/雑音比(S/N比)の悪い素子となってしまうため、これを防ぐためには、実際に素子を動作させるレベルの高電圧を印加した場合における基板の抵抗率を十分に高くして、リーク電流を十分に低減できるようにすることが重要となる。
このように、CdTe系単結晶基板においては、高バイアス電圧を印加して使用するような用途を想定した場合、抵抗率を十分に高くすることが必要とされる。そこで、本発明では、CdTe系単結晶基板として、700Vという高電圧を印加した場合における抵抗率値が1×1011Ωcm以上であることを特定している。
本発明のCdTe系基板は単結晶材料からなり、原子比で表した一般式がCd (1-x) ZnxTe(0≦x<0.20)となるものである。つまり、CdTe中のCdが最大20%(20%は含まず)までZnで置換されたものである。ZnはCdTeのCdサイトを置換する同族元素であり、この置換割合によって結晶のバンドギャップが調整されることになる。CdをZnで置換する割合xは所望の基板特性に応じて設定できるが、1.0以上であることが好ましく、より好ましくは3.5以上である。また、結晶構造、バンド構造を保持する上で、上限は20程度であるが、好ましくは8.0以下、より好ましくは6.5以下である。
本発明では、CdTeまたはCdZnTe単結晶基板の700V印加時の抵抗率が1.0×1011Ωcm以上のものであるが、1.5×1011Ωcm以上であることが好ましく、2.0×1011Ωcm以上であることがより好ましい。この抵抗率が実現できれば、高バイアス電圧印加時においてもリーク電流の少ない素子を基板から作製することが可能となる。CdTeやCdZnTeは半導体であるため、抵抗率の値は印加電圧に依存して変化する。そのため、本発明では、所定断面積の基板にオーミック接触する電極を形成し、この電極へ印加する電圧と電流の関係(I−V特性)を室温にて測定し、そこから求めた微分抵抗によって700Vでの抵抗率を評価している。
本発明のCdTe系単結晶基板は、最初に円柱状単結晶インゴットから切り出された円形(円板)状ウエハの形態をとり、基板の面内における4mm角の抵抗率相対変動係数が50%以下であることが好ましい。この円形ウエハ状基板の面内における4mm角の抵抗率相対変動係数とは、図1に示すように、円形基板100の中心部101、外周から20mmの位置において周方向に均等に90°間隔で4分割した121〜124の4点、さらに中心と外周との中間(ウエハ半径をrとして、r/2)の位置において周方向に均等に90°間隔で4分割した111〜114の4点の、計9点の各点を含むように4mm×4mmの正方形状基板を9枚切り出し、切り出した各々9枚の基板について抵抗率の評価を行った上で、それら9点の平均値と標準偏差を算出し、さらに標準偏差を平均値で除した値として定義されるものである。4mm角の抵抗率相対変動係数は、基板面内における抵抗率のばらつきの指標となる数値であり、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましい。
本発明のCdTe系単結晶基板は、直径が100mm以上の円形状であることが好ましく、125mm以上の円形状であることがより好ましい。基板の大口径化に伴って、単一の基板から作製できる素子数も増えるため、素子製造に必要なコストを削減することができる。
CdTe系単結晶基板は、前述した円形ウエハ状基板から所定のサイズの矩形基板に切り出した上で供給やプロセス加工が行われることが多い。そのような矩形基板内における4mm角の抵抗率相対変動係数は、基となる円形基板の面内における4mm角の抵抗率相対変動係数の範囲内に収まるものとなっていることは明らかである。ここで、矩形基板の場合の4mm角の抵抗率相対変動係数は、図2に例示するように、矩形基板200の対角線の交点201と、4つの頂点を含むように設定される4つの点202〜205の、計5点の各点において4mm×4mmの正方形状基板を切り出し、切り出した各々の基板について抵抗率の評価を行った上で、それら5点の平均値と標準偏差を算出し、さらに標準偏差を平均値で除した値として定義されるものである。図2の(a)、(b)、(c)は、それぞれ、20mm×20mm、12mm×12mm、20mm×12mmの矩形基板の例である。この矩形基板における4mm角の抵抗率相対変動係数も、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましい。
本発明のCdTe系単結晶基板は、基板の特性を調整するために、種々のドーパント元素を含むことができる。特に、単結晶の電気的特性に寄与するドーパント元素を所定量ドープすることで、基板の抵抗率を調整することができる。中でも、本発明で課題としている基板の高抵抗率化に対しては、Al、Ga、In、等の3B族元素、F、Cl、Br、I等の7B族元素、Ge、Sn等の4B族元素、V等の遷移金属元素をドープすることが有効である。
これらの中でも、InまたはClがドーパント元素として好ましい。InまたはClをドーパント元素としてCdTe系単結晶中へドープする場合、ドープ量は0.3wtppm以上であることが好ましく、これより低いとアニールを行っても十分な高抵抗率化が達成できない場合がある。高抵抗率化の観点から、ドーパント元素のドープ量は0.4wtppm以上であることがより好ましい。また、ドーパント元素のドープ量上限は所望の特性に応じて設定すればよいが、単結晶中への析出等を防止するためには1wtppm以下とすることが好ましく、0.8wtppm以下とすることがより好ましい。
次に、本発明のCdTe系単結晶基板の製造方法に関して説明する。なお、以下に示す方法は、本発明のCdTe系単結晶基板を得るために用いることができる好適な製造方法の一例であり、本発明のCdTe系単結晶基板自体は、必ずしもこの例で製造されるものでなくてもよい。
本発明のCdTe系単結晶基板を得るためには、まず、CdTeまたはCdZnTeからなる単結晶インゴットを製造する必要がある。CdTe系単結晶インゴットを製造する方法としては、従来から知られている垂直式温度傾斜凝固法(VGF)法、水平式温度傾斜勾配法(HGF)法、垂直式ブリッジマン(VB)法、水平式ブリッジマン(HB)法等の融液凝固法を用いることが大型の単結晶インゴットを製造する観点から好ましい。これらの中でも、VGF法は、結晶成長部の温度勾配等の製造パラメータを広範囲に精度良く、また再現性良く制御できるため、本発明のCdTe系単結晶インゴットの製造に特に好適に用いることができる。
図3はVGF法によってCdTe系単結晶インゴットを製造するために用いることができる結晶成長装置(炉)300の一例である。熱分解窒化ホウ素(pBN)製のルツボ301が、密封された石英製のアンプル310の結晶成長部の内部に配置され、このアンプルのルツボ下方には、前記結晶成長部311の中心軸から延長してリザーバ部312が設けられている。アンプルの結晶成長部の周囲には、独立して制御可能な複数のヒータからなる多段式加熱装置330がアンプルを包囲するように設けられ、これによって結晶成長部において軸方向の温度勾配の設定と制御が可能となっている。また、リザーバ部にも、結晶成長部とは独立して温度制御が可能なように、リザーバ部用の加熱装置331が設けられている。
上述した装置を用い、VGF法によりCdTe系単結晶インゴットを製造する場合、まず所望の組成となるように秤量した原料をルツボ内へ投入する。原料としては、単体のCd、Te、Zn、各種ドーパント元素を使用することができる他、CdTe多結晶等を用いても良い。また、ルツボ内へ投入する原料とは別に、リザーバ部に独立してCdを配置する。Cdは蒸気圧が高く、ルツボ内でCdTe系単結晶が成長しても、単結晶から雰囲気中へCd成分が離脱しやすく局所的にTeリッチな組成の結晶となりやすい。局所的に組成が偏った結晶は、組成の分布に応じて電気的な特性も局所的に異なったものとなるため好ましくない。そこで、リザーバ部に配置したCdを独立して加熱することでアンプル内をCd蒸気圧が高い状態とし、これによって成長したCdTe系結晶からのCd離脱(抜け)を防止するようにする。
このように密封されたアンプル内を、Cd蒸気圧が高い状態として、多段式加熱装置によって、結晶成長部に温度勾配を形成した状態で加熱する。ルツボ内の原料がすべて融解する温度まで加熱した後、融液状態で所定時間保持し、その後に温度勾配を維持したまま、結晶成長部全体を徐々に降温する。これにより、最初に凝固点に達する箇所から固化が開始し、そこを起点として徐々に結晶が成長する。
ルツボ内にCdTe系単結晶インゴットが成長した後、結晶成長部の加熱を停止する。本発明では、ルツボ内の全域が凝固点以下の温度に達するまで降温した後、直ちに結晶成長部の加熱を停止して室温まで結晶を降温する。この際、結晶からCd離脱が生じない程度の温度になるまでは、リザーバ部を加熱しておくことが好ましい。そして、アンプルからルツボを取り出し、ルツボ内から得られた結晶インゴットを取り出す。この結晶インゴットの状態では、さらに室温以上の過度の熱負荷がインゴットに加わる操作や処理を行わないことが好ましい。
次に、円柱状のインゴットからウエハ状の基板を得るため、インゴット外周の円筒研削を行い、ワイヤソー等を用いてスライシングを行う。さらに、スライシングによって得られたウエハ状基板表面の研削、鏡面研磨、脱脂、洗浄、乾燥等を必要に応じて行う。これらは通常のウエハ状基板を得るために行う公知の手段と同様の手段、工程にて行うことができる。
そして、本発明のCdTe系単結晶基板を得るために重要な工程として、ウエハアニール工程を実施する。図4はウエハアニールを行う場合のCdTe系単結晶基板をウエハホルダ401にセットした様子を示す概略図であり、図5はアニール炉の概略を示す図である。ウエハアニール工程は、雰囲気制御が可能な開管式の加熱炉内において、CdTe系の円板状の単結晶ウエハを載置するための石英製のウエハホルダ401を用意し、そのホルダ上に前記CdTe系単結晶ウエハより若干直径が大きなCdTe系ダミーウエハ402を設置し、さらにその上に、電気特性を改変させて本発明のウエハとする、前記CdTe単結晶インゴットから切り出されたCdTe系単結晶ウエハ403を載置し、さらに、その上にCdTe系ダミーウエハ402を載置する。さらにこの上に、CdTe系単結晶ウエハとCdTe系ダミーウエハの組合せを繰り返し積載することも可能である。
ここで、CdTe製ダミーウエハとしては、CdTe単結晶ウエハや多結晶ウエハを用いることができ、CdZnTe単結晶ウエハや多結晶ウエハを用いてもよい。さらに、上記のダミーウエハはドーパントとしてInやClを含有したものであっても、アニール後に、不純物の汚染や、電気特性上の抵抗率の変動や面内バラツキに問題となることなく、使用できることを確認している。このウエハアニール工程により、CdTe系ウエハ結晶内の不純物キャリアが電気的に活性化されて抵抗率を十分に上昇させることができるとともに、熱拡散によってウエハ内の元素組成分布が均一化されて、抵抗率がウエハ内で均一なものとすることができる。
ウエハアニール工程を実施するにあたり、その効果を十分に奏するためには、CdTe系単結晶ウエハとして、厚さ1.0mm以上3.0mm以内のウエハを使用することが望ましい。ウエハ厚さがこれよりも薄くなると、アニール後の研磨、分割工程において十分な機械的強度が保てなくなる恐れがあり、好ましくない。また、ウエハ厚さがこれを超えて厚くなると、アニール時にウエハ状の基板内に均一に熱が拡散しなくなり、基板面内にわたって均一な特性が得られなくなる恐れがある。CdTe系単結晶ウエハの厚さは、1.5mm以上、2.5mm以下であることがより好ましい。
ウエハアニール工程における雰囲気は窒素、希ガス等の不活性雰囲気とすることが好ましい。ウエハアニールによるキャリアの活性化の程度や組成の均一化の程度は、アニール時の設定温度と時間に大きく影響を受ける。アニール温度は250℃以上である必要があり、275℃以上であることがより好ましい。250℃未満の温度では、結晶内キャリアが十分に活性化できず、700Vの電圧印加時に1011Ωcm以上の抵抗率を有する基板を得ることが非常に困難となる。また、アニール温度が高すぎても抵抗率はむしろ低下する傾向を示し、抵抗率の面内均一性も大きく悪化する。好ましいアニール温度の上限は350℃であり、325℃以下であることがより好ましい。
アニール時間は10時間以上25時間以下の範囲で、アニール温度も考慮の上で設定することができる。アニール時間が10時間未満では結晶内のキャリアが十分に活性化できずにアニール工程が終了してしまう恐れがあり好ましくない。また、アニール時間が25時間を超えると、活性化されるキャリア数が飽和する傾向を示すため、抵抗率の制御という点ではこれ以上の時間アニールを行うことに意味は無く、基板の製造効率やエネルギーコストという観点から過度の時間のアニールは好ましくないため、25時間以内とすることが好ましい。
上述した工程によって得られた基板は、高電圧印加時においても十分な抵抗率を有するものであるため、その特性を利用した各種用途に用いることができる。後述する実施例のように、両面に電極を形成後分割することにより放射線検出器を作製できる他、各種機能層の形成や加工を行うことにより、所望のデバイスに適用することができる
以下、本発明を実施例、比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例、比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものでない。
(実施例1)
本発明では、まずVGF法によりCdZnTe単結晶インゴットの成長を行った。図3に本発明で用いた結晶成長炉の概略を示す。原料融液を保持し、それが固化することによって内部で結晶が成長するpBN製のルツボは、密封された石英製のアンプル内の結晶成長部に配置されている。このアンプルのルツボ下方には、前記結晶成長部の中心軸から延長して、蒸気圧制御用のCdを独立して保持するためのリザーバ部が設けられている。アンプルの結晶成長部の周囲には、独立して制御可能な複数のヒータからなる多段式加熱装置がアンプルを包囲するように設けられ、これによって結晶成長部において軸方向の温度勾配の設定と制御が可能となっている。また、リザーバ部も、結晶成長部とは独立して温度制御が可能なように、リザーバ部用の加熱装置が設けられている。リザーバ部用の加熱装置の設定と制御により、結晶成長時の雰囲気Cd蒸気圧の制御を行うことが可能である。
この実施例では、得られる結晶の原子組成が、一般式Cd (1-x) ZnxTeにおいてxが0.062〜0.036(偏析効果により、軸方向に若干組成が変化する)となるように、また、ドーパントであるInの濃度が0.3〜1.4wtppmとなるように、原料として単体のCd、Zn、Te、およびInを秤量してルツボ内へ投入した。アンプルのリザーバ部に蒸気圧制御用の単体Cdを配置し、結晶成長部に上述したルツボを配置した上で、内部を真空排気してアンプルを酸水素バーナーによって真空封止した。このアンプルを炉内へ配置し、結晶成長部の加熱装置の設定を調整することでルツボ内で原料を合成し、さらに昇温して合成されたCdZnTe原料を融解した。その後、軸方向の温度勾配を設定して融液の状態で所定時間保持した。これと同時に、アンプル内へCdを蒸散させて適切なCd蒸気圧を印加するために、リザーバ部の加熱温度を780℃とし、アンプル内を約0.13MPa程度のCd蒸気圧で維持されるようにした。
上述した結晶成長部におけるルツボ内融液の温度勾配を維持しつつ、ルツボ全体の温度を徐々に降下させてゆくことで、最初に凝固点に達する融液表面から固化を開始させ、そこからルツボ下方へ向かって徐々に結晶を成長させた。ルツボ底部まで結晶が成長した時点で結晶成長部の加熱を停止し、得られたCdZnTe単結晶インゴットを室温まで降温した。ルツボから成長した単結晶インゴットを取り出し、インゴット外周の円筒研削とスライシングを行い、直径125mm、厚さ2mmの円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板とした。
上記の工程によって製造されたCdZnTe単結晶より切り出された円形ウエハ状基板と、上記CdTe製ダミーウエハを用意して、アニールの前処理として、水洗、脱脂、臭素(1vol%)−メタノール溶液で表面をエッチングし、さらに、水洗することで、基板に付着した不純物を除去した。次に、石英製のウエハホルダの上に、前処理後のCdTe製ダミーウエハ、さらにその上に前処理後の円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板、CdTe製ダミーウエハを繰り返し載置して、これらを開管式の加熱炉内に配置した。加熱炉内を窒素雰囲気とし、300℃の温度で18時間のウエハアニール処理を行い、室温まで基板を冷却した。
ウエハアニール処理を行った後、ラッピング、研磨、必要に応じて洗浄等の工程を経て、表面が鏡面処理され、その上に各種素子の構成を形成可能な状態の基板とした。次に、この状態のウエハ状CdZnTe単結晶基板に水洗、脱脂、臭素(1vol%)−メタノール溶液による表面エッチング、水洗による前処理を行い、その後、塩化白金酸(IV)六水和物(HClPt・6HO)水溶液と塩酸(HCl)との混合溶液に浸漬し、基板の表裏両主表面にPt層を50nm析出させることで、厚さ方向の表裏両面で基板を挟むPt電極層を形成した。
そして、本実施例では、図1に示すように、125mm径の円形基板に対して、その中心点を通り、直行するx軸、y軸に対して、それぞれx軸に平行か、又はy軸に平行であり、且つ、中心位置からx軸方向又はy軸方向に、それぞれ+2mmか、又は、−2mmの位置にダイシングの刃を入れて、幅4mmからなる短冊形状の基板を切り出した。そして、切り出された短冊状基板より、図1の中心部101、外周部から20mm内側部分に相当する部位121〜124、中心と外周との中間(r/2)に相当する部位111〜114から、4mm×4mmのPt電極付矩形基板を計9枚切り出した。さらに、扇形状の4枚の残余基板から、矩形基板の20mm×20mmの正方形状のPt電極付基板を計4枚取得した。この4枚の20mm×20mmの正方形状のPt電極付基板のそれぞれについて、図2(a)に示すように、4mm×4mmの正方形状のPt電極付矩形基板に分割した。
まず、上述した、円形基板から取得した、図1に示す位置の計9枚の4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板を抽出した。そして、抽出したPt電極付基板それぞれに対して電圧を印加し、電流電圧特性(I−V特性)を測定した。本発明においては高電圧印加時における抵抗率特性の目安として、700Vの電圧印加時の微分抵抗から求めた抵抗率を評価に用いた。Pt電極付基板の700V印加時の抵抗率から平均値と標準偏差を求め、これらから125mm円形ウエハ基板全体の抵抗率の4mm角の相対変動係数を求めた。
次に、4枚の扇型形状からなる残余基板から切り出された4枚の20mm×20mmサイズの正方形状のPt電極付基板のそれぞれについて、図2(a)に示すように、さらに分割された4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板から測定部位にあるものを抽出し(201〜205)、前記同様のI−V特性の測定と700V印加時の抵抗率の評価を行い、20mm×20mmの正方形状基板における抵抗率の4mm角の相対変動係数を求めた。
この実施例の基板における700V印加時の抵抗率の平均値は、測定した全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板のうち最も低いものでも1.8×1011Ωcmであった。この測定に際し、すべての4mm×4mmの正方形状基板について700Vの電圧を印加してもリーク電流の発生は認められなかった。なお、本発明では、リーク電流値の測定は、暗箱内で4×4mm角の矩形基板に700Vの電圧を印加し、その時に流れる暗電流値を読み取ることで評価し、電流値が10nA以下の場合には放射線スペクトルの測定時のノイズとして問題にならないという経験則により、リーク電流の発生なしと判断した。また、この実施例から評価した円形ウエハ状基板全体の4mm角の抵抗率の相対変動係数は38%であった(101、111〜114、121〜124)。さらに、20mm×20mmの正方形状基板の4mm角の抵抗率の相対変動係数は(201〜205)、4枚の20mm×20mmの正方形状基板のうちで最も大きいもので41%であった。
(実施例2)
実施例1と同様にCdZnTe単結晶インゴットの作製を行い、実施例1と同じ部位から直径125mmの円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板の形成を行って、これに対して275℃の温度で25時間、ウエハアニール処理を行い、室温まで基板を冷却した。ウエハの載置条件と雰囲気は実施例1と同じである。さらに、アニール処理後の円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板について、実施例1と同様にPt電極の形成と基板分割、抽出を行い、抵抗率特性の評価を行った。この実施例における700V印加時の抵抗率は、測定した全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板のうち最も低いものでも1.3×1011Ωcmであり、全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板でリーク電流の発生は認められなかった。また、この実施例から評価した円形ウエハ状基板全体の4mm角の抵抗率の相対変動係数は41%であった。さらに、20mm×20mmの正方形状基板の4mm角の抵抗率の相対変動係数は、4枚の20mm×20mmの正方形状基板のうちで最も大きいものでも47%であった。
(実施例3)
実施例1と同様にCdZnTe単結晶インゴットの作製を行い、実施例1と同じ部位から直径125mmの円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板の形成を行って、これに対して325℃の温度で10時間のウエハアニール処理を行い、室温まで基板を冷却した。ウエハの載置条件と雰囲気は実施例1と同じである。さらに、アニール処理後の円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板について、実施例1と同様にPt電極の形成と基板分割、抽出を行い、抵抗率特性の評価を行った。この実施例における700V印加時の抵抗率は、測定した全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板のうち最も低いものでも1.9×1011Ωcmであり、全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板でリーク電流の発生は認められなかった。また、この実施例から評価した円形ウエハ状基板全体の4mm角の抵抗率の相対変動係数は39%であった。さらに、20mm×20mmの正方形状基板の4mm角の抵抗率の相対変動係数は、4枚の20mm×20mmの正方形状基板のうち最も大きいもので45%であった。
(比較例1)
実施例1と同様にCdZnTe単結晶インゴットの作製を行い、実施例1と同じ部位から直径125mmの円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板の形成を行って、これに対してウエハアニールを行うことなく、Pt電極を形成し、実施例1と同様に基板分割、抽出を行い、抵抗率特性の評価を行った。この実施例における700V印加時の抵抗率は、測定した全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板のうち最も高いものでも5.9×1010Ωcmであり、全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板でリーク電流の発生が認められた。また、この実施例から評価した円形ウエハ状基板全体の4mm角の抵抗率の相対変動係数は106%であった。さらに、20mm×20mmの正方形状基板の4mm角の抵抗率の相対変動係数は、4枚の20mm×20mmの正方形状基板のうち最も小さいもので95%であった。
(比較例2)
実施例1と同様にしてCdZnTe単結晶インゴットの作製を行い実施例1と同じ部位から直径125mmの円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板の形成を行って、これに対して窒素雰囲気下で250℃の温度で48時間のウエハアニール処理を行い、室温まで基板を冷却した。ウエハの載置条件と雰囲気は実施例1と同じである。さらに、アニール処理後のウエハ状CdZnTe単結晶基板について、実施例1と同様にPt電極の形成と基板分割、抽出を行い、抵抗率特性の評価を行った。この実施例における700V印加時の抵抗率は、測定した全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板のうち最も高いものでも3.4×1010Ωcmであり、全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板でリーク電流の発生が認められた。また、この実施例から評価した円形ウエハ状基板全体の4mm角の抵抗率の相対変動係数は57%であった。さらに、20mm×20mmの正方形状基板の4mm角の抵抗率の相対変動係数は、4枚の20mm×20mmの正方形状基板のうち最も小さいもので59%であった。
(比較例3)
実施例1と同様にしてCdZnTe単結晶インゴットの作製を行い、実施例1と同じ部位から直径125mmの円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板の形成を行って、これに対して、窒素雰囲気下で400℃の温度で18時間のウエハアニール処理を行い、室温まで基板を冷却した。ウエハの載置条件と雰囲気は実施例1と同じである。さらに、アニール処理後のウエハ状CdZnTe単結晶基板について、実施例1と同様にPt電極の形成と基板分割、抽出を行い、抵抗率特性の評価を行った。この実施例における700V印加時の抵抗率は、測定した全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板のうち最も高いものでも6.6×1010Ωcmであり、全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板でリーク電流の発生が認められた。また、この実施例から評価した円形ウエハ状基板全体の4mm角の抵抗率の相対変動係数は111%であった。さらに、20mm×20mmの正方形状基板の4mm角の抵抗率の相対変動係数は、4枚の20mm×20mmの正方形状基板のうち最も小さいもので71%であった。
(比較例4)
実施例1と同様にしてCdZnTe単結晶インゴットの作製を行い、ルツボから成長した単結晶インゴットを取り出し、インゴットの上端部と下端部を切断し、外周の円筒研削まで行い、ウエハにスライシングすることなく、アニールの前処理として、水洗、脱脂、臭素(1vol%)−メタノール溶液で表面をエッチングし、さらに、水洗してインゴットに付着した不純物を除去した。このインゴットに対して、窒素雰囲気下で340℃の温度で48時間のインゴットアニール処理を行い、室温までインゴットを冷却した。その後、実施例1と同じ部位から直径125mmの円形ウエハ状CdZnTe単結晶基板の形成を行って、実施例1と同様にPt電極の形成と基板分割、抽出を行い、抵抗率特性の評価を行った。この実施例における700V印加時の抵抗率は、測定した全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板のうち最も高いものでも3.3×1010Ωcmであり、全ての4mm×4mmの正方形状のPt電極付基板でリーク電流の発生が認められた。また、この実施例から評価した円形ウエハ状基板全体の4mm角の抵抗率の相対変動係数は88%であった。さらに、20mm×20mmの正方形状基板の4mm角の抵抗率の相対変動係数は、4枚の20mm×20mmの正方形状基板のうち最も小さいもので86%であった。
これらの結果を表1にまとめて示す。
本発明は、化合物半導体であるテルル化カドミウム(CdTe)またはテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)等のCdTe系単結晶基板について、700Vの電圧を印加した状態において1011Ωcm以上の抵抗率を有するようにすることで、高電圧印加時にもリーク電流が少ない素子を作製することができ、微弱な線量下において高感度で放射線を検出できる放射線検出器等の用途に極めて有用な半導体基板を提供できるものである。また、本発明の基板は、抵抗率の面内均一性が良好であるため、均一な性能の素子を歩留り良作製できるため、素子の製造効率と製造コスト面においても有用な半導体基板を提供できる。
302 成長結晶/原料融液
303 蒸気圧調整用Cd
304 結晶成長チャンバ
501 サンプル
502 石英ボート
503 石英アンプル
504 ヒータ
505 熱電対
506 バブリング用水
507 Nガス

Claims (7)

  1. 原子比で表した一般式がCd (1-x) ZnxTe(0≦x<0.20)の化合物半導体単結晶基板であって、700Vのバイアス印加時の抵抗率が1.0×1011Ωcm以上であり、
    前記化合物半導体単結晶が、InまたはClを0.3〜0.8ppm含むことを特徴とする化合物半導体単結晶基板。
  2. 前記基板が、円形状であり、該基板面内における4mm角の抵抗率相対変動係数が50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体単結晶基板。
  3. 前記円形基板の直径が100mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体単結晶基板。
  4. 前記円形基板の直径が125mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体単結晶基板。
  5. 前記基板が、矩形状であり、該基板面内における4mm角の抵抗率相対変動係数が50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体単結晶基板。
  6. 前記基板が、放射線検出用途に使用されるものであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物半導体単結晶基板。
  7. 700Vのバイアス印加時の抵抗率が1.0×1011Ωcm以上であり、原子比で表した一般式がCd (1-x) ZnxTe(0≦x<0.20)の化合物半導体単結晶基板の製造方法であって、
    Cd蒸気圧下での垂直式温度傾斜凝固法によって前記化合物半導体単結晶のインゴットを成長する工程、
    前記インゴットをウエハ状にスライスして基板とする工程、
    前記スライスしたウエハ状の基板を275〜325℃、10〜25時間、不活性雰囲気下にて熱処理を行う工程
    を含むことを特徴とする化合物半導体単結晶基板の製造方法。
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