JP6713295B2 - (メタ)アクリル系重合体の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル系重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法に関する。
(メタ)アクリル酸エステル単位を有する重合体(以下、「(メタ)アクリル系重合体」と称する)は、透明性、耐候性に優れ、成形材料、接着剤などとして有用であり、電子部材、光学部材、産業資材、日用品などに用いられている。このうち、メタクリル酸エステル系重合体ブロックとアクリル酸エステル系重合体ブロックとを有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体は、高分子界面活性剤、熱可塑性エラストマーなどにも有用である(特許文献1)。
さらに、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体は、耐熱性、反応性に優れることが知られている。かかるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法としては、遷移金属錯体を重合触媒として用いる方法(特許文献2)、(メタ)アクリル酸t−ブチルに由来する単量体単位を含む(メタ)アクリル系重合体を熱と有機酸により処理する方法(特許文献3)などが知られている。
しかしながら、特許文献2の製造方法では、得られた重合体中のカルボキシ基と遷移金属錯体との相互作用が強いため、重合体からの遷移金属錯体の除去が難しく、その結果重合体は着色し、透明性などが損なわれる。また、特許文献3の製造方法では、有機酸を除去する煩雑な工程が必要となる。
また、本発明者らによる検討により、(メタ)アクリル系重合体にアミンを作用させることでカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を製造可能であることが判明したものの、得られた重合体はカルボキシ基の他にアミド構造や酸無水物構造等も含んでおり、効率的にカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を製造することは困難であった。
特開平11−335432号公報 特表平10−509475号公報 特開2008−248233号公報
本発明の目的は、カルボキシ基を有し、透明性に優れる(メタ)アクリル系重合体を、簡便かつ効率的に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは検討を重ねた結果、水および有機溶媒の存在下、特定の(メタ)アクリル系重合体に特定のアミンを作用させることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記〔1〕〜〔6〕を提供する。
〔1〕(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む重合体(以下、「(メタ)アクリル系重合体(X0)」と称する)、第二級アミン、水および有機溶媒を混合する混合工程を含む、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(以下、「カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)」と称する)の製造方法;
〔2〕前記(メタ)アクリル系重合体(X0)が、(メタ)アクリル酸メチル単位を含む(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)、および炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)からなる(メタ)アクリル系ブロック共重合体である、〔1〕の製造方法;
〔3〕前記第二級アミンが、下記一般式(1)で示される化合物である、〔1〕または〔2〕の製造方法;
Figure 0006713295
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を表す。ただし、RとRは一緒になって環を形成していてもよい。)
〔4〕前記有機溶媒がヒドロキシ基を有する化合物を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかの製造方法;
〔5〕前記ヒドロキシ基を有する化合物が、2−プロパノール、t−ブチルアルコールおよび炭素数1〜4の炭化水素基を置換基として有してもよいフェノールからなる群から選択される一種以上の化合物である、〔4〕の製造方法;および
〔6〕前記有機溶媒が、さらに溶解度パラメーターの値が8.0以上10.5以下の炭化水素(ただし、1つ以上のエーテル結合を任意の位置に有していてもよく、任意の1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい。)を含む、〔4〕または〔5〕の製造方法。
本発明により、カルボキシ基を有し、透明性に優れる(メタ)アクリル系重合体を、簡便かつ効率的に製造できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法によれば、(メタ)アクリル系重合体(X0)からカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)が得られる。なお、本明細書中で「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」と「アクリル」との総称である。
(メタ)アクリル系重合体(X0)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位を含む重合体である。(メタ)アクリル系重合体(X0)としては例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)の単独重合体であるポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)以外の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)と芳香族ビニル化合物との共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)と共役ジエンとの共重合体などが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸脂環式アルキルエステル;等が挙げられる。
本発明の製造方法によって得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)において、カルボキシ基は、主に(メタ)アクリル系重合体(X0)中の(メタ)アクリル酸エステル単位が加水分解等により(メタ)アクリル酸単位に変化することにより生じるものである。ここで、(メタ)アクリル酸エステル単位のうち、立体障害の小さいアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位は特に(メタ)アクリル酸単位に変化しやすく、これを利用して効率的にカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)を製造することが可能であり、さらに、所望の箇所に選択的にカルボキシ基が導入された(メタ)アクリル系重合体(X)を製造することも可能である。前記の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)は、(メタ)アクリル酸メチルであることが好ましい。
ただし、本発明の製造方法によって得られる(メタ)アクリル系重合体(X)におけるカルボキシ基は、必ずしも(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位が変化したものに限定されない。
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸脂環式アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(トリメチルシリルオキシ)プロピル等のうち(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)以外のものが挙げられる。
上記の芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、1−ビニルナフタレンなどが挙げられる。
上記の共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン、β−ミルセンなどが挙げられる。
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)以外の(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物および共役ジエンは、二種以上を併用してもよい。
得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)の透明性、耐熱性、耐候性等の観点から、(メタ)アクリル系重合体(X0)の具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)の単独重合体であるポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)以外の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましく、入手性の観点からポリ(メタ)アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸エチルとの共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸n−プロピルとの共重合体およびメタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとの共重合体がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X0)を構成する単量体単位中における(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は、50〜100モル%の範囲であることが好ましく、70〜100モル%の範囲であることがより好ましく、90〜100モル%の範囲であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X0)を構成する単量体単位中における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位の含有量は、5〜100モル%の範囲であることが好ましく、10〜99モル%の範囲であることがより好ましく、15〜98モル%の範囲であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X0)の数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、取り扱い性、流動性、力学特性等の観点から、4,000〜3,000,000の範囲が好ましく、7,000〜2,000,000の範囲がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(X0)の分子量分布、すなわち重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は1.02〜2.00の範囲が好ましく、1.05〜1.80の範囲がより好ましく、1.10〜1.50の範囲がさらに好ましい。
なお、本明細書中において、MnおよびMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算値を意味する。
上記(メタ)アクリル系重合体(X0)の好ましい一態様としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位を含む(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)(以下、「(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)」と称する)および炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)(以下、「(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)」と称する)を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)が挙げられる。この場合、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)からは、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)が得られる。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位を含む。効率的にカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)を製造する観点、および所望の箇所に選択的にカルボキシ基が導入された(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)を製造する観点から、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)は、(メタ)アクリル酸メチルであることが好ましく、入手性の観点から、メタクリル酸メチルであることがより好ましい。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が(メタ)アクリル酸メチル単位を含むことにより、カルボキシ基は(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)の中で(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に選択的に導入される。これにより、用途に応じて複雑なポリマー設計が可能となる。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位の含有量は50モル%以上の範囲であることが好ましく、70モル%以上の範囲であることがより好ましく、90モル%以上の範囲であることがさらに好ましく、100モル%であってもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよい。かかる単量体単位を形成できる単量体としては特に制限はなく、例えば、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)以外の(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、共役ジエンなどが挙げられる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)におけるこれら他の単量体単位の含有量は、50モル%以下の範囲であることが好ましく、30モル%以下の範囲であることがより好ましく、10モル%以下の範囲であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)1個あたりのMnは特に制限されないが、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)の取り扱い性、流動性、および力学特性等の観点から、500〜1,000,000の範囲が好ましく、1,000〜300,000の範囲がより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)は、炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む。(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)における炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)の柔軟性の観点から、50モル%以上の範囲であることが好ましく、70モル%以上の範囲であることがより好ましく、90モル%以上の範囲であることがさらに好ましく、100モル%であってもよい。
上記の炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)の柔軟性の観点から、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル等の炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル等の炭素数6以上のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)の入手性の観点から、アクリル酸n−ブチルが最も好ましい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)は、炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよい。かかる単量体単位を形成できる単量体としては特に制限はなく、例えば、上述した炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、共役ジエンなどが挙げられる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)におけるこれら他の単量体単位の含有量は、50モル%以下の範囲であることが好ましく、30モル%以下の範囲であることがより好ましく、10モル%以下の範囲であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)1個あたりのMnは特に制限されないが、得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)の取り扱い性、流動性、力学特性等の観点から、3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、5,000〜1,000,000の範囲がより好ましい。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)は、少なくとも1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と少なくとも1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を有するブロック共重合体である。各重合体ブロックの数、結合順序、結合形態に特に制限はないが、(メタ)アクリル系重合体(Z0)の入手性の観点から、直鎖状の重合体が好ましく、1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が結合したジブロック共重合体または1個の(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の両端に(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)各1個がそれぞれ結合したトリブロック共重合体がより好ましく、上記トリブロック共重合体がさらに好ましい。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)を構成する全ての(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の合計質量と全ての(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の合計質量との比率[(メタ)アクリル系重合体ブロック(a):(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)]に特に制限はないが、85:15〜1:99であることが好ましく、80:20〜7:93であることがより好ましく、75:25〜10:90であることがさらに好ましい。
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体(X0)の製造方法は、特に限定されないが、通常アニオン重合法またはラジカル重合法が採用される。また、市販品を用いることもできる。
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体(X0)は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)およびブロック共重合体以外の(メタ)アクリル系重合体、例えばランダム共重合体とを任意の比率で混合した混合物であってもよい。
本発明の製造方法にかかる混合工程では、(メタ)アクリル系重合体(X0)、第二級アミン、水および有機溶媒を混合する。
本発明において、第二級アミンは、加水分解反応の触媒としての機能、および窒素上の水素原子が(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基と交換することによる水素原子の供給源としての機能を有する。第二級アミンではなく第一級アミンを使用した場合、副反応によりアミド構造やイミド構造が生成しやすい。また、第三級アミンを使用した場合、水素原子の供給能力を有さず、反応性が低下しカルボキシ基の生成量が低下する。
上記第二級アミンは、加水分解反応および窒素上の水素原子とアルキル基との交換反応以外の副反応を抑制する観点から、下記一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 0006713295
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を表す。ただし、RとRは一緒になって環を形成していてもよい。)
上記RおよびRが表す炭化水素基としては、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。またRとRが一緒になって環を形成する場合、環構造に含まれる炭素数は2〜10であることが好ましい。
そのような炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の第一級アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、1−メチルブチル基等の第二級アルキル基;t−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の第三級アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の脂環式アルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;1−メチルベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基等のアラルキル基;などが挙げられる。また、上記第二級アミンは、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の複素環式アミンであってもよい。中でも、ジメチルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンが好ましく、ジメチルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ジエチルアミンがより好ましい。該第二級アミンは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
上記第二級アミンの使用量は、(メタ)アクリル系重合体(X0)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位に対して、0.1〜300モル%の範囲であることが好ましく、0.2〜150モル%の範囲であることがより好ましく、0.3〜100モル%の範囲であることがさらに好ましい。
上記混合工程で加える水は、特に制限はないが、蒸留水、イオン交換水、純水等の不純物の少ない水が好ましい。水を添加することにより、アミド構造や酸無水物構造の生成を抑制し、効率的にカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)を得ることができる。
上記混合工程で加える水の使用量は、酸無水物構造の生成を抑制する観点から、(メタ)アクリル系重合体(X0)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位に対して、10〜400モル%の範囲であることが好ましく、30〜300モル%の範囲であることがより好ましく、50〜200モル%の範囲であることがさらに好ましい。
上記混合工程で加える有機溶媒は特に限定されないが、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)の溶解性の観点から、ヒドロキシ基を有する化合物を含有することが好ましい。
上記ヒドロキシ基を有する化合物としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコール等のアルキルアルコール;フェノール、ナフトール、ジメチルフェノール、クレゾール等の炭素数1〜4の炭化水素基を置換基として有してもよいフェノール類;などが挙げられ、中でも、副反応の抑制、溶解性の観点から、2−プロパノール、t−ブチルアルコール、フェノールが好ましい。これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
上記混合工程で加える有機溶媒は、(メタ)アクリル系重合体(X0)の溶解性の観点から、さらに溶解度パラメーターの値が8.0以上10.5以下である炭化水素を含有することが好ましい。
上記炭化水素は、溶解度パラメーターの値が8.0以上10.5以下である限り、1つ以上のエーテル結合を任意の位置に有していてもよく、任意の1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい。
上記炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。上記炭化水素の溶解度パラメーターの値は8.0以上10.0以下が好ましく、8.0以上9.5以下がより好ましい。例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(溶解度パラメーターの値8.1)、トルエン(溶解度パラメーターの値9.1)、キシレン(溶解度パラメーターの値9.1)、クロロベンゼン(溶解度パラメーターの値10.4)が好ましく、トルエン、ジエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
上記ヒドロキシ基を有する化合物と上記炭化水素の混合比率の調整により、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)のカルボキシ基含有量を調整することができる。
なお本明細書において、溶解度パラメーターの値とは、Fedorsの推算法に基づき計算されるものであり、凝集エネルギー密度とモル分子容を基に計算されるものである(「SP値 基礎・応用と計算方法」(山本秀樹著、株式会社情報機構、2005年発行)および「ポリマーハンドブック 第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」(J.Brand著、Wiley社、1998年発行)参照)。
上記方法により計算できない場合においては、溶解度パラメーターの値が既知の溶媒に対し溶解するか否かの判定による実験法により溶解度パラメーターの値を算出し、それを代用する。
上記有機溶媒の使用量は、(メタ)アクリル系重合体(X0)100質量部に対して50〜10000質量部であることが好ましく、100〜400質量部であることがより好ましい。
上記混合工程における混合温度は、アミド構造の生成を抑制し、反応速度を高める観点から150〜250℃の範囲であることが好ましく、混合物の分解や着色を抑制する観点から180〜240℃の範囲であることがより好ましく、200〜230℃の範囲であることがさらに好ましい。
上記混合工程における混合時間は、アミド構造の生成を抑制し、反応速度を高める観点から1分〜24時間の範囲であることが好ましく、混合物の分解や着色を抑制する観点から1分〜10時間の範囲であることがより好ましく、1分〜8時間の範囲であることがさらに好ましい。
上記混合工程は、混合中における有機溶媒の蒸発を抑制する観点から耐熱耐圧容器中で行うことが好ましい。
本発明の製造方法で得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)は、他の樹脂と混合して樹脂組成物として用いてもよい。かかる他の樹脂は、混合工程の前に、予め(メタ)アクリル系重合体(X0)と混合しても、混合工程の後に、かかる他の樹脂を添加して混合してもよい。
本発明の製造方法で得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体(X)におけるカルボキシ基の含有量に特に制限はないが、耐熱性、反応性等の観点から、0.002〜10mmol/gの範囲であることが好ましく、0.01〜4mmol/gの範囲であることがより好ましい。かかる含有量は電位差滴定によって定量できる。
以下、実施例などにより本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
(原料)
アミン:N−メチルブチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(全て東京化成工業株式会社製)
水:蒸留水(和光純薬工業株式会社製)
有機溶媒:2−プロパノール、t-ブチルアルコール、フェノール、トルエン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メタノール(全て東京化成工業株式会社製)
[実施例1][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z1)の製造]
ポータブルリアクター(耐圧硝子工業株式会社製:TVS−N2)に、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)としてポリメタクリル酸メチルブロック−ポリアクリル酸n−ブチルブロック共重合体(クラリティ(登録商標)LA2140、株式会社クラレ製、メタクリル酸メチル単位28.5モル%)12.5g、2−プロパノール18.75g、トルエン18.75g、水0.53g、N−メチルブチルアミン1.03g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入し、内部を窒素置換した。
ポータブルリアクター内の温度を220℃に維持し、5時間撹拌したのち、25℃まで冷却し、1.3Pa、100℃にて溶媒を除去し(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z1)」と称する)を得た。
[実施例2][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z2)の製造]
混合温度を180℃にした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z2)」と称する)を得た。
[実施例3][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z3)の製造]
混合温度を240℃にした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z3)」と称する)を得た。
[実施例4][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z4)の製造]
撹拌時間を1時間にした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z4)」と称する)を得た。
[実施例5][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z5)の製造]
撹拌時間を6時間にした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z5)」と称する)を得た。
[実施例6][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z6)の製造]
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)10g、2−プロパノール20g、トルエン20g、水0.43g、N−メチルブチルアミン0.83g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入した以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z6)」と称する)を得た。
[実施例7][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z7)の製造]
N−メチルブチルアミンの添加量を0.26g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して10モルとなる量)とした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z7)」と称する)を得た。
[実施例8][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z8)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてジエチルアミン0.87g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入した以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z8)」と称する)を得た。
[実施例9][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z9)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてN−メチルシクロヘキシルアミン1.34g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入した以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z9)」と称する)を得た。
[実施例10][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z10)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてジメチルアミン0.53g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入した以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z10)」と称する)を得た。
[実施例11][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z11)の製造]
2−プロパノールに代えてフェノール18.75gを用いた以外は実施例7と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z11)」と称する)を得た。
[実施例12][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z12)の製造]
2−プロパノールに代えてt-ブチルアルコール18.75gを用い、N−メチルブチルアミンの添加量を0.52g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して20モルとなる量)とした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z12)」と称する)を得た。
[実施例13][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z13)の製造]
トルエンに代えてジエチレングリコールジメチルエーテル18.75gを用いた以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z13)」と称する)を得た。
[実施例14][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z14)の製造]
トルエンを使用せず、2−プロパノール37.5gを用いた以外は実施例7と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z14)」と称する)を得た。
[実施例15][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z15)の製造]
2−プロパノールを使用せず、トルエン40gを用い、N−メチルブチルアミンの添加量を0.21g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して10モルとなる量)とした以外は実施例6と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z15)」と称する)を得た。
[実施例16][(メタ)アクリル系重合体(X1)の製造]
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)に代えて、(メタ)アクリル系重合体(X0)としてメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルのランダム共重合体(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=97.5/2.5(質量比)、メルトフローレート:2、市販品)を12.5g用い、N−メチルブチルアミンの添加量を1.03g((メタ)アクリル系重合体(X0)中の(メタ)アクリル酸メチル単位100モルに対して9.5モルとなる量)とした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系重合体(X)(以下、「(メタ)アクリル系重合体(X1)」と称する)を得た。
[実施例17][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z16)の製造]
2−プロパノールに代えてメタノール18.75gを用いた以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z16)」と称する)を得た。
[比較例1][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z17)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてシクロヘキシルアミン1.18g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を用いた以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z17)」と称する)を得た。
[比較例2][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z18)の製造]
水を添加しない以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z18)」と称する)を得た。
[比較例3][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z19)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン1.51g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を用いた以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z19)」と称する)を得た。
(カルボキシ基含有量の定量)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体1.0gをテトラヒドロフラン49gに溶解させて溶液を調製した。この溶液に0.01M水酸化カリウムエタノール溶液を0.1mL/minで滴下して電位差滴定を行い、このとき添加した0.01M水酸化カリウムエタノール溶液の体積V〔mL〕から、下記式によって、(メタ)アクリル酸単位由来のカルボキシ基の含有量[α1]〔mmol/g〕を算出した。結果を表1に示す。
[α1]〔mmol/g〕=(0.01×V)/1.0
(酸無水物構造およびアミド構造の確認)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体について以下の条件でIRスペクトルを測定し、酸無水物構造に由来する吸収(1800cm−1、1760cm−1)およびアミド構造に由来する吸収(1640cm−1)の有無によって確認した。
測定器:Bio−Rad社製 赤外分光光度計 「FTS 3000MX」
測定法:ATR法
測定温度:25℃
(酸無水物構造の含有量の定量)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体を粉砕し、80℃の熱水に72時間浸漬することで酸無水物構造をカルボキシ基に変換し、上記の方法(IR測定)によって酸無水物構造が残存しないことを確認した。固体を濾過にて取り出し、乾燥した後、上記カルボキシ基の含有量[α1]と同様に算出したカルボキシ基の含有量[α2]から、下記式によって、酸無水物構造の含有量[β]〔mmol/g〕を決定した。結果を表1に示す。
[β]〔mmol/g〕=([α2]−[α1])/2
その結果、比較例1で得られた(メタ)アクリル系重合体はアミド構造を有し、比較例2で得られた(メタ)アクリル系重合体は酸無水物構造を有することが確認された。
(反応後のポリマー中のメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸n-ブチル単位の定量)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体について下記の条件にてH−NMR分析を行った。例えば、上記実施例および比較例のように、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)としてポリメタクリル酸メチルブロック−ポリアクリル酸n−ブチルブロック共重合体を用いた場合、反応後に得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)のH−NMRスペクトルにおいて、(メタ)アクリル酸メチル単位中の酸素原子に隣接するメチル基のプロトン(以下、「プロトンγ」と称する。)に相当するシグナルが3.65ppm、アクリル酸n-ブチル単位中の酸素原子に直結する炭素原子上のプロトン(以下、「プロトンδ」と称する。)に相当するシグナルが4.1ppm、アクリル酸n-ブチル単位中のカルボニル炭素に隣接する炭素原子上のプロトンに相当するシグナルが2.35ppmに観測される。アクリル酸n-ブチル単位中のカルボニル炭素に隣接する炭素原子上のプロトンに相当するシグナルの積分値を100とした場合の、プロトンγに相当するシグナルの積分値を[γ]、プロトンδに相当するシグナルの積分値を[δ]とし、表1に示した。
本発明の製造方法により、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に由来する重合体ブロックにカルボキシ基が選択的に導入された(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)を製造することが可能であり、これによって用途に応じた複雑なポリマー設計が可能となる。(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)の中でいずれの重合体ブロックにカルボキシ基が導入されているかは、上記H−NMR分析により判定できる。実施例および比較例で用いた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)の場合、理論上、メタクリル酸メチル単位が全てメタクリル酸単位となる場合[γ]=0となり、メチル基が反応の前後で変化しない場合[γ]=119.5となる。また、アクリル酸n−ブチル単位中のブチル基が反応の前後で変化しない場合には[δ]=200となる。
ただし、メタノールが反応系中に存在する場合、アクリル酸n−ブチル単位の一部又は全部がメタノールとのエステル交換によりアクリル酸メチル単位に変化することがあり、この場合には[δ]は200未満となる。またH−NMRスペクトルにおいてプロトンγ由来のシグナルとアクリル酸メチル単位中の酸素原子に隣接するメチル基のプロトン由来のシグナルを区別できないため、[γ]は119.5を超える可能性がある。例えばアクリル酸n-ブチル単位が全てメタノールとエステル交換した場合であって、重合体中の(メタ)アクリル酸メチル単位が全く(メタ)アクリル酸単位とならない場合には、[γ]=419.5、[δ]=0となる。
測定器:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置 「JNM−LA−400」
測定温度:25℃
測定溶媒:重水素化クロロホルム(試料が重水素化クロロホルムに溶解しない場合は、重水素化メタノールを使用した。)
(外観)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体をテトラヒドロフランに溶解させて固形分濃度10質量%の溶液を調製し、該溶液を用いてキャスト法により厚さ約1mmのフィルムを作製した。得られたフィルムの色、透明性を目視で確認した。結果を表1に示す。
Figure 0006713295
表1からわかるように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む重合体、第二級アミン、水および有機溶媒を混合する混合工程を含む実施例1〜17で得られた(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する。一方で、水を混合する工程を含まない比較例2で得られた(メタ)アクリル系重合体は酸無水物構造を有し、また、第二級アミンに代えて第一級アミンを使用した比較例1で得られた(メタ)アクリル系重合体はアミド構造を有することが、IRスペクトルの測定により確認された。このように酸無水物構造やアミド構造を有する場合、カルボキシ基の含有量が制限される。また、第二級アミンに代えて第三級アミンを使用した比較例3で得られた(メタ)アクリル系重合体は、第二級アミンを使用した場合と比較して、カルボキシ基の含有量が少ない。なお、実施例17では[γ]が119.5を上回り、[δ]が200を有意に下回っている。これはメタノールとのエステル交換反応により一部のアクリル酸n−ブチル単位がアクリル酸メチル単位に変化したためと考えられる。同様の傾向は、炭素数3未満の低級アルコールを使用した場合においてもみられた。
本発明の製造方法は、カルボキシ基を有し、透明性に優れる(メタ)アクリル系重合体を、簡便かつ効率的に製造できる点で有用である。得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体は耐熱性や反応性に優れ、電子部材、光学部材、産業資材、日用品等に利用できる。

Claims (5)

  1. (メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む重合体、第二級アミン、水および有機溶媒を混合する混合工程を含む、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法であって、
    前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位を含む(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)、および炭素数2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)からなる(メタ)アクリル系ブロック共重合体であり、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(1)由来の単位が(メタ)アクリル酸メチル単位である、製造方法。
  2. 前記第二級アミンが、下記一般式(1)で示される化合物である、請求項1に記載の製造方法。
    Figure 0006713295

    (式中、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を表す。ただし、RとRは一緒になって環を形成していてもよい。)
  3. 前記有機溶媒がヒドロキシ基を有する化合物を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記ヒドロキシ基を有する化合物が、2−プロパノール、t−ブチルアルコールおよび炭素数1〜4の炭化水素基を置換基として有してもよいフェノールからなる群から選択される一種以上の化合物である、請求項に記載の製造方法。
  5. 前記有機溶媒が、さらに溶解度パラメーターの値が8.0以上10.5以下の炭化水素(ただし、1つ以上のエーテル結合を任意の位置に有していてもよく、任意の1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい。)を含む、請求項またはに記載の製造方法。
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