JP6713166B2 - 不稔化植物、融合タンパク質、融合遺伝子、ベクター、形質転換体、及び不稔化植物の作出方法 - Google Patents

不稔化植物、融合タンパク質、融合遺伝子、ベクター、形質転換体、及び不稔化植物の作出方法 Download PDF

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Description

本発明は、不稔化植物、融合タンパク質、融合遺伝子、ベクター、形質転換体、及び不稔化植物の作出方法に関する。
植物の栽培や遺伝情報の拡散を制御するため、植物の不稔化が望まれている。不稔化方法の一例として、例えば、花粉を生産する雄ずいや、花粉を受粉する雌ずいの形成を制御することにより不稔化する方法が試みられている。
キクは、鑑賞用や食用として、世界中で広く栽培される有用な植物である。キクの花器官の形成制御に関して、非特許文献1には、キククラスC遺伝子の1つを単離し、これをターゲットにアンチセンス植物を作出したことが報告されている。
Aida, et al., "Chrysanthemum flower shape modification by suppression of chrysanthemum-AGAMOUS gene" Plant biotechnology, 2008, 25 (1): 55-59
非特許文献1で作出されたアンチセンス植物における、花の形態異常は軽微であり、花の形態異常が見られた個体の割合も、103個体中1個体と低い。このように非特許文献1に記載の植物体の不稔化は、実用上必ずしも十分ではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、花器官の形態形成が制御された不稔化植物、不稔化植物の作出に有用な融合タンパク質、融合遺伝子、ベクター、形質転換体、及び不稔化植物の作出方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、キククラスC遺伝子のタンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を、植物体内で発現させることにより、有用な不稔化植物を得られることを見出した。また、キククラスC遺伝子の発現を抑制する核酸が導入された植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能が欠損又は抑制されており、
以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能が欠損又は抑制されていることを特徴とする不稔化植物。
(1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
[2]前記CAG type1遺伝子の機能が、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されている、前記[1]に記載の不稔化植物。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
[3]前記CAG type1遺伝子の機能が、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されている、前記[1]に記載の不稔化植物。
[4]前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、前記[3]に記載の不稔化植物。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
[5]キク科の植物である前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の不稔化植物。
]植物内において、
以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能を欠損又は抑制させ、
以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能を欠損又は抑制させることを含む、不稔化植物の作出方法。
(1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
]植物内において、
前記CAG type1遺伝子の機能を、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制し、
前記CAG type2遺伝子の機能を、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制する、前記[6]に記載の不稔化植物の作出方法。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
[8]前記転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドが、Leu−Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Leu−Arg−Leu−Gly−Phe−Alaで表されるアミノ酸配列からなる、前記[7]に記載の不稔化植物の作出方法。
]前記CAG type1遺伝子の機能を、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制し、
前記CAG type2遺伝子の機能を、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制する、前記[]に記載の不稔化植物の作出方法。
10]前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、前記[]に記載の不稔化植物の作出方法。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
11]キク科の植物である前記[]〜[10]のいずれか一つに記載の不稔化植物の作出方法。
本発明により、不稔性に優れた植物を得ることができる。
実施例において、CAG遺伝子のアミノ酸配列、及びその他の植物種のクラスC遺伝子のアミノ酸配列を用いて作成された系統樹である。 実施例における、CAG遺伝子の発現解析結果を示す写真である。 実施例における、CAG type2 long遺伝子の転写調節領域の発現を示す写真である。 実施例において作製された、融合遺伝子の発現カセットを模式的に示した図である。 実施例において作製された、不稔性形質転換体とコントロール植物との花の形態を比較した写真である。 実施例において、CAG type1 cDNA及びCAG type2 cDNAのうち、サイレンシングベクターに用いた領域を模式図的に示す図である。 実施例において作製された発現カセットを模式的に示す図である。 実施例において使用したベクターのマップ図である。 実施例において使用したベクターのマップ図である。 実施例において作製された、不稔性形質転換体とコントロール植物との花の形態を比較した写真である。
≪不稔化植物≫
本発明の不稔化植物は、
以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能が欠損又は抑制されており、
以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能が欠損又は抑制されている。
(1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
<CAG遺伝子>
被子植物の花の発生を説明するモデルとして、ABCモデルが知られている。ABCモデルでは、クラスA遺伝子、クラスB遺伝子、クラスC遺伝子の発現パターンの組合せによって、花器官の発生が制御される。クラスA遺伝子単独の発現領域では、萼が形成され、クラスA遺伝子とクラスB遺伝子の発現領域では、花弁が形成される。クラスB遺伝子とクラスC遺伝子の発現領域では雄ずいが形成され、クラスC遺伝子単独の発現領域では雌ずいが形成される。クラスC遺伝子としてはシロイヌナズナの AGAMOUS (AG)が知られている。
しかし、上記モデルはシロイヌナズナやキンギョソウ等の一部の植物種を対象とした研究で明らかにされたものであり、他のあらゆる植物種においても上記モデルが同様に適用できるか、また、どの遺伝子が各クラスの遺伝子として機能しているかは不明である。
キクにおいても、これまでにクラスC遺伝子の一つと考えられる遺伝子が単離され、これをターゲットにアンチセンス植物を作出したことが報告されている。しかし、観察された花の形態異常は、極めて軽微なものであった。
発明者らは、後述の実施例に示すように、栽培ギクであるイエギク(Chrysanthemum morifolium)の“セイマリン”から、AGAMOUSの塩基配列に基づいてプライマーを設計し、計14の遺伝子をクローニングした。これらの遺伝子は、コードされるアミノ酸配列の相同性に基づき、大きく2タイプに分類可能であり、更に4種類に分類可能であることを明らかにした。上記の2タイプは、CAG Type1とCAG Type2とし、上記の4種類とはCAG Type1 short, CAG Type1 long, CAG Type2 short, CAG Type2 longと名付けた。単離した14遺伝子の上記分類と、各遺伝子にコードされるアミノ酸配列の配列番号を表1に示す。
本発明に係るCAG Type1遺伝子は、前記(1)〜(3)のいずれかの遺伝子である。
一般的に、何らかの生理機能を有するタンパク質は、本来の機能を損なうことなく、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加可能なことが知られている。
前記(2)のタンパク質において、配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されていてもよいアミノ酸の数は、1〜30個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
前記(3)のタンパク質において、配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列との同一性は、90%以上100%未満であり、95%以上100%未満であることが好ましく、98%以上100%未満であることがより好ましい。
アミノ酸配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明におけるアミノ酸配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTPにより得られた値を採用できる。本発明におけるアミノ酸配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
本発明に係るCAG Type2遺伝子は、前記(4)〜(6)のいずれかの遺伝子である。
前記(5)のタンパク質において、配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されていてもよいアミノ酸の数は、1〜30個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
前記(6)のタンパク質において、配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列との同一性は、90%以上100%未満であり、95%以上100%未満であることが好ましく、98%以上100%未満であることがより好ましい。
アミノ酸配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明におけるアミノ酸配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTPにより得られた値を採用できる。本発明におけるアミノ酸配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
前記(1)〜(6)のタンパク質は、転写制御機能を有する。転写制御機能とは、転写因子が有する機能である。タンパク質が転写制御機能を有しているかどうかは、公知の転写因子測定用試薬を用いた手法等により調べることができる。
前記(1)の配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、当該アミノ酸配列のみからなるタンパク質であってもよく、転写制御機能を有する範囲において、当該アミノ酸配列からなるタンパク質に任意の配列が付加されていてもよい。
前記(4)の配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、当該アミノ酸配列のみからなるタンパク質であってもよく、転写制御機能を有する範囲において、当該アミノ酸配列からなるタンパク質に任意の配列が付加されていてもよい。
前記任意の配列とは、例えば、リンカー配列、タグ配列、タンパク質安定化のための修飾配列等が挙げられる。
本発明に係るCAG Type1遺伝子は、本発明に係るCAG Type1タンパク質をコードするものであり、以下の(I)〜(III)のいずれかのポリヌクレオチドである。
(I)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(II)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(III)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
また、本発明に係るCAG Type2遺伝子は、本発明に係るCAG Type2タンパク質をコードするものであり、以下の(IV)〜(VI)のいずれかのポリヌクレオチドである。
(IV)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(V)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(VI)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
前記(I)〜(VI)に示されるポリヌクレオチドにおけるタンパク質としては、前記(1)〜(6)に示される遺伝子において説明したタンパク質と同様である。
前記(I)における配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号15で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号16で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号17で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号22で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号25で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号26で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号27で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号18で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号19で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号20で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号21で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号23で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号24で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号28で表される塩基配列であってもよい。
<融合タンパク質の導入による不稔化>
後述の実施例に示すように、発明者らは、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有するCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質、及び、配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有するCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現させた植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。
本発明の不稔化植物は、前記CAG type1遺伝子の機能が、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されていてもよい。
本発明の不稔化植物は、前記CAG type2遺伝子の機能が、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されていてもよい。
本発明の不稔化植物は、
前記CAG type1遺伝子の機能が、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されているものであることが好ましい。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
融合タンパク質におけるCAG type1タンパク質は、前記CAG type1 shortであることが好ましい。よって、融合タンパク質におけるCAG type1タンパク質は、以下の(A)〜(C)のいずれかのタンパク質であることが好ましい。
(A)配列番号1、2、3、11、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、11、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、11、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
融合タンパク質におけるCAG type2タンパク質は、前記CAG type2 shortであることが好ましい。よって、本発明に係るCAG type2タンパク質は、以下の(D)〜(F)のいずれかのタンパク質であることが好ましい。
(D)配列番号5、9、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号5、9、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号5、9、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
上記の(A)〜(F)のタンパク質としては、それぞれ、本明細書中の上記(1)〜(6)の遺伝子において説明したものが挙げられる。
融合タンパク質において、CAG type1タンパク質が前記CAG type1 shortであり、且つ、CAG type2タンパク質が前記CAG type2 shortであることが好ましい。
<転写抑制転換ペプチド>
近年、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチド(以下「転写抑制転換ペプチド」ということがある。)が開発され、利用されている。転写抑制転換ペプチドの例としては、SRDXと呼ばれる転写抑制ドメインが挙げられる。例えば、SRDXを任意の転写因子のC末端に付加することにより、転写因子を転写抑制因子に変換可能である(Hiratusu et al. (2003)Plant J. 34(5):733-739)。SRDXのアミノ酸配列は、Leu−Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Leu−Arg−Leu−Gly−Phe−Alaで表されるアミノ酸配列[LDLDLELRLGFA(配列番号68)]である。
転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドとは、当該ペプチドが転写因子に付加されてなる融合タンパク質と、これを付加されていない、もともとの該転写因子とを比較して、融合タンパク質の転写活性化能を有意に低下させる機能を有するペプチドを意味する。転写活性化能を低下させるとは、転写活性化能を消失させることも包含される。当該ペプチドにより転写活性化能が低下した転写因子は、本来の転写活性化の対象の遺伝子に対する、他の転写因子による転写活性化も抑制し得ることにより、対象の遺伝子の転写が効率的に抑制され得る。また、機能重複した複数の転写因子の同時抑制も可能であり得る。
ペプチドが、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有しているかどうかは、例えば、解析対象の遺伝子の転写を活性化する転写因子とその発現系を準備し、当該転写因子と、当該転写因子にペプチドを付加したときとで、解析対象の遺伝子の発現を比較すること等により調べることができる。解析対象の遺伝子は、転写因子が本来転写を促進する対象の遺伝子を用いてもよく、人為的に製造されたレポーター遺伝子等を用いてもよい。
転写抑制転換ペプチドの配列は公知であり、これら公知の転写抑制転換ペプチドを使用できる。転写抑制転換ペプチドとして知られている配列は、前記SRDXの他にも、DLTLRL、DLSLRL、DLSLSLの配列などが知られており、これらのなかではSRDXが好ましい。
前記(A)〜(F)のタンパク質は、転写制御機能を有する。転写制御機能とは、転写因子が有する機能である。タンパク質が転写制御機能を有しているかどうかは、公知の転写因子測定用試薬を用いた手法等により調べることができる。
本発明に係るCAG type1タンパク質において、(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質は、当該アミノ酸配列のみからなるタンパク質であってもよく、本発明に係るCAG type1タンパク質が転写制御機能を有する範囲において、当該アミノ酸配列からなるタンパク質に任意の配列が付加されていてもよい。
本発明に係るCAG type2タンパク質において、(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質は、当該アミノ酸配列のみからなるタンパク質であってもよく、本発明に係るCAG type2タンパク質が転写制御機能を有する範囲において、当該アミノ酸配列からなるタンパク質に任意の配列が付加されていてもよい。
前記任意の配列とは、例えば、リンカー配列、タグ配列、タンパク質安定化のための修飾配列等が挙げられる。
本発明の融合タンパク質は、公知の手法により製造可能である。例えば、CAG type1タンパク質をコードするDNAと転写抑制転換ペプチドをコードするDNAとが連結された配列を、発現ベクターに組み込み、これを発現させることで、融合タンパク質を合成してもよい。または、ポリペプチド合成装置によりCAG type1タンパク質と転写抑制転換ペプチドが連結された融合タンパク質を合成してもよい。
後述する≪不稔化植物の作出方法≫及び実施例において示すように、例えば、CAG Type1に係る本発明の融合タンパク質をコードする融合遺伝子、及び、CAG Type2に係る本発明の融合タンパク質をコードする融合遺伝子が植物体に導入されることで、融合タンパク質が植物内で発現し、CAG Type1遺伝子及びCAG Type2遺伝子の機能を抑制可能である。
<発現を抑制させる核酸の導入による不稔化>
発明者らは、イエギクのCAG Type1遺伝子の発現を抑制する核酸、及びイエギクのCAG Type2遺伝子の発現を抑制する核酸が導入された植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。
本発明の不稔化植物は、前記CAG Type1遺伝子の機能の欠損又は抑制が、前記CAG Type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されていてもよい。
本発明の不稔化植物は、前記CAG Type2遺伝子の機能の欠損又は抑制が、前記CAG Type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されていてもよい。
本発明の不稔化植物は、
前記CAG Type1遺伝子の機能が、前記CAG Type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG Type2遺伝子の機能が、前記CAG Type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されているものであることが好ましい。
遺伝子の発現を抑制させる核酸としては、RNAi誘導性核酸、アンチセンス核酸、リボザイム等が挙げられる。RNAi誘導性核酸としては、siRNA、miRNA、shRNA、これらの前駆体となる核酸等が挙げられる。
本発明において核酸とは、RNA、DNAの他、LNA等の核酸アナログや、ペプチド核酸(PNA)、およびそれらの混成物も包含する意味で用いている。
アンチセンス核酸としては、例えば、抑制対象となる遺伝子のmRNAの配列であるセンス配列と相補的な塩基配列を有する核酸が挙げられる。
配列番号69で表される塩基配列は、本発明に係るCAG Type1遺伝子のcDNAの塩基配列である。配列番号69で表される塩基配列のうち、748〜931番目の領域は3’UTRの領域である。
本発明に係るCAG Type1遺伝子の発現を抑制するアンチセンス核酸は、当業者であれば、例えば、配列番号69で表される塩基配列に基づき設計可能である。
配列番号70で表される塩基配列は、本発明に係るCAG Type2遺伝子のcDNAの塩基配列である。配列番号70で表される塩基配列のうち、799〜1014番目の領域は3’UTRの領域である。
本発明に係るCAG Type2遺伝子の発現を抑制するアンチセンス核酸は、当業者であれば、例えば、配列番号70で表される塩基配列に基づき設計可能である。
リボザイムは、触媒活性を有するRNAである。リボザイムは、標的となる核酸と反応する活性部位、及び標的となる核酸と結合する基質結合部位を有する。リボザイムとしては、例えば、基質結合部位として、抑制対象となる遺伝子のmRNAの配列と相補的な配列を有するリボザイムが挙げられる。
本発明に係るCAG Type1遺伝子の発現を抑制するリボザイムは、当業者であれば、配列番号69で表される塩基配列に基づき設計可能である。本発明に係るCAG Type2遺伝子の発現を抑制するリボザイムは、当業者であれば、配列番号70で表される塩基配列に基づき設計可能である。
RNAi誘導性核酸としては、shRNA、siRNA、miRNA、それらの前駆体等が挙げられ、例えば、抑制対象となる遺伝子のmRNAの配列と同一の塩基配列又はその部分配列を有する二本鎖構造のRNAがあげられる。抑制対象となる遺伝子の発現を抑制可能な範囲において、RNAi誘導性核酸は、抑制対象となる遺伝子のmRNAの配列と同一の塩基配列又はその部分配列を有する二本鎖構造のRNAであってもよい。
欠損又は抑制されるCAG type1遺伝子は、CAG type1 shortであることが好ましい。欠損又は抑制されるCAG type2遺伝子は、CAG type1 longであることが好ましい。
CAG Type1 short遺伝子の発現を抑制する核酸の一態様として、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸を挙げることができる。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸
CAG Type2 long遺伝子の発現を抑制する核酸の一態様として、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸を挙げることができる。
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
配列番号71で表される塩基配列に対応するアンチセンス鎖が発現するだけでもアンチセンス核酸となり、CAG type1遺伝子の発現を抑制し得る。配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸が発現することで、2本鎖RNAが形成され、siRNAの形成などにより、植物体内でサイレンシングが効率よく引き起こされる。
同様に、配列番号72で表される塩基配列に対応するアンチセンス鎖が発現するだけでもアンチセンス核酸となり、CAG type2遺伝子の発現を抑制し得る。配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸が発現することで、2本鎖RNAが形成され、siRNAの形成などにより、植物体内でサイレンシングが効率よく引き起こされる。
一般的に、何らかの生理機能を有する核酸は、本来の機能を損なうことなく、1〜数個の塩基配列が欠失、置換又は付加可能なことが知られている。
前記(h)の核酸において、配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されていてもよい塩基の数は、1〜30個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
前記(i)の塩基において、配列番号71で表される塩基配列との同一性は、90%以上100%未満であり、95%以上100%未満であることが好ましく、98%以上100%未満であることがより好ましい。
塩基配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明における塩基配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTにより得られた値を採用できる。本発明における塩基配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
前記(k)の核酸において、配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されていてもよい塩基の数は、1〜30個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
前記(l)の塩基において、配列番号72で表される塩基配列との同一性は、90%以上100%未満であり、95%以上100%未満であることが好ましく、98%以上100%未満であることがより好ましい。
塩基配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明における塩基配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTにより得られた値を採用できる。本発明における塩基配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
前記(g)〜(l)に示される核酸において、センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖は、該センス鎖又はその一部と完全に相補する配列からなるものが好ましいが、植物内でセンス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能で、抑制対象となる遺伝子の発現を抑制可能なものであれば、該センス鎖と部分的に相補する配列からなるものであってもよい。
前記(g)〜(i)に示される核酸において、配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖の一部とは、配列番号71で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基からなるものを例示できる。
前記(g)〜(i)に示される核酸において、センス鎖の一部となる配列番号71で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基長としては、抑制対象となる遺伝子によって適宜定めればよく、一例として19〜701塩基程度、100〜701塩基程度、300〜701塩基長程度、19〜600塩基程度、20〜100塩基程度、21〜50塩基程度とすることができる。
前記(g)〜(i)に示される核酸において、センス鎖の一部となる配列番号71で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基は、配列番号71で表される塩基配列中の520〜702番目の塩基配列からなる領域の一部(連続する19個以上の塩基)又は全部を含むものが好ましい。配列番号71で表される塩基配列中の520〜702番目の塩基配列からなる領域は、配列番号69で表される塩基配列のうちの3’UTRの領域に対応する。
前記(j)〜(l)に示される核酸において、配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖の一部とは、配列番号72で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基からなるものを例示できる。
前記(j)〜(l)に示される核酸において、センス配列の一部となる配列番号72で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基長としては、抑制対象となる遺伝子によって適宜定めればよく、一例として19〜736塩基程度、100〜736塩基程度、300〜736塩基程度、19〜500塩基程度、20〜100塩基程度、21〜50塩基程度とすることができる。
前記(j)〜(l)に示される核酸において、センス鎖の一部となる配列番号72で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基は、配列番号72で表される塩基配列中の523〜737番目の塩基配列からなる領域の一部(連続する19個以上の塩基)又は全部を含むものが好ましい。配列番号72で表される塩基配列中の523〜737番目の塩基配列からなる領域は、配列番号70で表される塩基配列のうちの3’UTRの領域に対応する。
前記(g)〜(i)の核酸は、CAG type1遺伝子の発現を抑制する活性を有する。(g)〜(i)の核酸が、CAG type1遺伝子の発現を抑制する活性を有しているかどうかは、常法により調べることができる。例えば、後述する実施例において例示するように、(g)〜(i)のいずれかの核酸が導入された植物と、(g)〜(i)のいずれかの核酸が導入されていない植物とを比較し、(g)〜(i)のいずれかの核酸が導入された植物で、CAG type1遺伝子の発現量が有意に減少している場合に、(g)〜(i)のいずれかの核酸が、CAG type1遺伝子の発現を抑制する活性を有していると判断できる。
前記(j)〜(l)の核酸は、CAG type2遺伝子の発現を抑制する活性を有する。(j)〜(l)の核酸が、CAG type2遺伝子の発現を抑制する活性を有しているかどうかは、常法により調べることができる。例えば、後述する実施例において例示するように、(j)〜(l)のいずれかの核酸が導入された植物と、(j)〜(l)のいずれかの核酸が導入されていない植物とを比較し、(j)〜(l)のいずれかの核酸が導入された植物で、CAG type2遺伝子の発現量が有意に減少している場合に、(j)〜(l)のいずれかの核酸が、CAG type2遺伝子の発現を抑制する活性を有していると判断できる。
前記(g)〜(i)に示される核酸は、CAG type1遺伝子の発現を抑制可能なものであれば、前記各センス鎖又はその一部、及び前記各アンチセンス鎖又はその一部の他に、任意の核酸が付加されていてもよい。
前記(j)〜(l)に示される核酸は、CAG type2遺伝子の発現を抑制可能なものであれば、前記各センス鎖又はその一部、及び前記各アンチセンス鎖又はその一部の他に、任意の核酸が付加されていてもよい。
前記CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現は、前記CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸が導入されて、欠損又は抑制されてもよい。
CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸の一態様として、以下の(m)〜(o)のいずれかの核酸を挙げることができる。
(m)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、
配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖又はその一部と、を含む核酸、
(n)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、
配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子及び前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(o)配列番号71で表される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、
配列番号72で表される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子及び前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
が挙げられる。
前記(m)〜(o)に示される核酸において、センス鎖、該センス鎖の一部、アンチセンス鎖としては、前記(g)〜(l)に示される核酸において説明したものと同様である。
前記(m)〜(o)に示される核酸は、CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現を抑制可能なものであれば、前記各センス鎖又はその一部、及び前記各アンチセンス鎖の他に、任意の核酸が付加されていてもよい。
前記CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸の一例として、以下の(p)〜(r)のいずれかの核酸を挙げることができる。
(p)配列番号73で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(q)配列番号73で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、CAG type1遺伝子及び前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(r)配列番号73で表される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子及び前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
配列番号73で表される塩基配列は、配列番号71で表される塩基配列及び配列番号72で表される塩基配列が連結したものであるので、前記(p)〜(r)に示される核酸において、センス鎖、該センス鎖の一部、アンチセンス鎖としては、前記(g)〜(l)に示される核酸において説明したものと同様である。
前記(p)〜(r)に示される核酸は、CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現を抑制可能なものであれば、前記各センス鎖又はその一部、及び前記各アンチセンス鎖の他に、任意の核酸が付加されていてもよい。
前記(p)の核酸としては、配列番号74で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドを例示できる。
なお、配列番号74で表される塩基配列において、1〜1439番目の塩基からなる部分は、アンチセンス鎖の部分であり、1440〜2358番目の塩基からなる部分は、スペーサー部分であり、2359〜3797番目に塩基からなる部分はセンス鎖の部分である。
後述する≪不稔化植物の作出方法≫及び実施例において示すように、例えば、CAG Type1遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な核酸、及び、CAG Type2遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な核酸が植物体に導入されることで、当該核酸が植物内で発現し、CAG Type1遺伝子及びCAG Type2遺伝子の発現を抑制可能である。
本発明の不稔化植物において、「遺伝子の機能が欠損又は抑制」されているとは、人為的な操作によって、植物が本来有する内在性の該遺伝子またはその発現を制御されることにより、該遺伝子産物の活性が欠損又は抑制されている、或いは、該遺伝子の発現が欠損又は抑制されていることを指す。
不稔化植物において遺伝子の機能が欠損又は抑制していることは、人為的な操作により作出された不稔化植物と、人為的な操作を受けていないコントロールとなる野生型等の植物と比較して判断できる。
人為的な操作とは、例えば、対象とする遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸やタンパク質等が人為的に導入又は発現されることが挙げられる。
本発明の不稔化植物において、本発明に係るCAG Type1遺伝子及びCAG Type2遺伝子のそれぞれについて、該遺伝子産物の活性の欠損又は抑制の程度、或いは、該遺伝子の発現の欠損又は抑制の程度は、植物体の不稔化が達成される程度であればよく、植物体の完全不稔化が達成される程度であることが好ましい。
本発明の不稔化植物において、本発明に係るCAG Type1遺伝子及びCAG Type2遺伝子のそれぞれについて、該遺伝子産物の活性の欠損又は抑制の生じる部位、或いは、該遺伝子の発現の欠損又は抑制の生じる部位は、植物体の不稔化が達成される程度であればよく、植物体の完全不稔化が達成される程度であることが好ましい。例えば、遺伝子産物の活性が花で特異的に欠損又は抑制することで、植物の不稔化又は完全不稔化が達成されてもよい。
本発明及び本明細書において、不稔化とは、植物個体が有する花器官のうち一部若しくは全部の雄ずい及び/又は雌ずいの稔性が失われることである。雌性不稔化とは、植物個体が有する花器官のうち一部若しくは全部の雌ずいの稔性が失われることである。雄性不稔化とは、植物個体が有する花器官のうち一部若しくは全部の雄ずいの稔性が失われることである。完全不稔化とは、植物個体が有する花器官の全ての雄ずい及び雌ずいの稔性が失われることである 。
雄ずいの不稔化としては、雄ずいが正常に形成されず花粉が生産されないことによるもの、雄ずいが他の器官に置き換わり花粉が生産されないことによるもの、花粉は生産されたが稔性を有さないことによるもの等が挙げられる。同様に、雌ずいの不稔化としては、雌ずいが正常に形成されないことによるもの、雌ずいが他の器官に置き換わることによるもの、雌ずいは形成されるが稔性を有さないことによるもの等が挙げられる。
雄ずい側の不稔は、雄ずいが花弁等の他の器官に置き換わる等を形態観察により調べてもよく、正常個体の雌ずいとの掛け合わせにより種子が形成されるかどうかによっても容易に調べることができる。雌ずい側の不稔は、雌ずいが花弁等の他の器官に置き換わる等を形態観察により調べてもよく、正常個体の雄ずいとの掛け合わせにより種子が形成されるかどうかによっても容易に調べることができる。
本発明において不稔化植物とは植物体のみならず、植物体を作出した場合に不稔化されているものであれば、細胞を包含する意味で用いている。細胞は、組織又は器官の状態であってもよい。本発明において不稔化植物とは、それらの後代若しくはクローンの生物又は細胞であってもよい。例えば、前記クローンの植物体としては挿し木または挿し芽等により得られた植物体が挙げられる。
本発明の本発明の不稔化植物は、被子植物であることが好ましく、キク科(Asteraceae)の植物体であることがより好ましい。キク科の植物としては、キク、ガーベラ、アスター、ヒマワリ等を挙げることが出来る。好ましいキクの種類としては、一般的に栽培ギク(輪菊、中ギク、小ギク、スプレーギク、ポットマム等)、イエギク等と称されるChrysanthemum morifoliumが挙げられる。
本発明の不稔化植物が、
前記CAG type1遺伝子の機能が、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されているものである場合、これらの融合タンパク質は少なくとも花において発現していることが好ましい。
当該融合タンパク質を花において発現させる場合、花において特異的に融合タンパク質を発現させる転写調節領域によって、融合タンパク質を発現させてもよく、花を含む植物体全体で融合タンパク質を発現させる恒常的プロモーター等の転写調節領域によって、融合タンパク質を発現させてもよい。
恒常的プロモーターとしては、CaMV35S(カリフラワーモザイクウイルス35S)プロモーターが挙げられる。
なかでも、後述の≪融合遺伝子≫の<転写調節領域>において詳説する、花において転写調節可能な転写調節領域の制御下で、融合タンパク質を発現させることが好ましく、そのなかでも、後述のCAG Type2 long遺伝子の転写調節領域の制御下で、融合タンパク質を発現させることが好ましい。
本発明の不稔化植物が、
前記CAG Type1遺伝子の機能が、前記CAG Type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG Type2遺伝子の機能が、前記CAG Type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されているものである場合、これらの核酸は少なくとも花において発現していることが好ましい。
当該核酸を花において発現させる場合、花において特異的に核酸を発現させる転写調節領域によって、核酸を発現させてもよく、花を含む植物体全体で核酸を発現させる恒常的プロモーター等の転写調節領域によって、核酸を発現させてもよい。
恒常的プロモーターとしては、アクチンプロモーターが挙げられ、イエギク等と称されるChrysanthemum morifolium由来のアクチンプロモーターが好ましい。
≪融合タンパク質≫
本発明の融合タンパク質は、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質である。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
また、本発明に係るCAG type2タンパク質は、以下の(D)〜(F)のいずれかのタンパク質である。
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
上記の(A)〜(F)のタンパク質としては、それぞれ、本明細書中の上記≪不稔化植物≫で説明したものが挙げられる。
上記の転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドとしては、それぞれ、本明細書中の上記≪不稔化植物≫で説明したものが挙げられる。
≪融合遺伝子≫
本発明の融合遺伝子は、本発明の融合タンパク質をコードするものである。
具体的には、本発明の融合遺伝子は、
CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド、
CAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
本発明に係るCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする融合遺伝子は、以下の(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(c)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
また、本発明に係るCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする融合遺伝子は、以下の(d)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドである。
(d)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(e)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(f)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
前記(a)、(d)における配列番号1〜14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、上記の<CAG遺伝子>において例示したように、それぞれ配列番号15〜28で表される塩基配列であってもよい。
本発明に係るポリヌクレオチドは、公知の手法により製造可能である。例えば、CAG type1タンパク質をコードするDNAと転写抑制転換ペプチドをコードするDNAとを、周知の遺伝子組み換え技術を用いて連結することで得られる。CAG type1タンパク質をコードするDNAは、例えば、自然界から取得したゲノムDNAを鋳型とし、配列番号15〜28の塩基配列に基づいて設計したプライマーにより、CAG type1タンパク質をコードするDNAをPCR等により増幅し、得ることができる。転写抑制転換ペプチドは、例えばオリゴDNA合成装置により合成可能である。
本発明に係るCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする融合遺伝子は、該融合タンパク質をコードする塩基配列のみからなるポリヌクレオチドであってもよく、本発明に係るCAG type1タンパク質の融合タンパク質が転写抑制作用を有する範囲において、当該塩基配列のみからなるポリヌクレオチドに任意の配列が付加されていてもよい。
本発明に係るCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする融合遺伝子は、該融合タンパク質をコードする塩基配列のみからなるポリヌクレオチドであってもよく、本発明に係るCAG type2タンパク質の融合タンパク質が転写抑制作用を有する範囲において、当該塩基配列のみからなるポリヌクレオチドに任意の配列が付加されていてもよい。
前記任意の配列とは、例えば、リンカー配列、タグ配列、タンパク質安定化のための修飾配列等が挙げられる。
<転写調節領域>
本発明の融合遺伝子は、花において転写調節可能な転写調節領域(クラスC遺伝子のMADS-boxドメインの下流に位置する第2イントロンに相当する領域であるが、プロモーター活性を有する転写調節可能な配列)が前記融合タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドに作動可能に連結されることが好ましい。
「作動可能に連結されている」とは、前記転写調節領域が前記融合遺伝子の発現を調節可能であることを意味する。
「転写調節領域」としては、転写開始や転写効率を制御可能な配列であり、プロモーター、エンハンサー、応答配列が挙げられる。
「花において転写調節可能な転写調節領域」とは、花を構成する細胞において前記融合遺伝子の発現を調節可能であることを意味する。より詳しくは、花において転写調節可能な転写調節領域とは、前記融合遺伝子が雄ずい及び/又は雌ずいの形成に作用可能なように転写調節可能な転写調節領域であり、花において特異的に融合遺伝子の発現をもたらし得る転写調節領域が好ましく、雄ずい及び雌ずいにおいて特異的に前記融合遺伝子の発現をもたらし得る転写調節領域あるいはプロモーターがより好ましい。
花において転写調節可能な転写調節領域は、AGAMOUS遺伝子の第2イントロンに相当する転写調節領域であることが好ましい。AGAMOUS遺伝子の第2イントロンに相当する転写調節領域は、キク科植物由来のものが好ましく、Chrysanthemum morifolium由来のものがより好ましい。Chrysanthemum morifolium由来のAGAMOUS遺伝子の転写調節領域は、前記CAG Type1 short、 CAG Type1 long、 CAG Type2 short、又はCAG Type2 longのいずれかの遺伝子の転写調節領域が好ましく、CAG Type2 short、又はCAG Type2 longの遺伝子の転写調節領域がより好ましい。
後述する実施例に示すように、発明者らはCAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と本発明に係る融合遺伝子を連結し、本発明に係る融合遺伝子を発現させた植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。実施例において使用したCAG Type2 long遺伝子の転写調節領域の塩基配列を配列番号29に表す。
本発明に係るCAG Type2 long遺伝子の転写調節領域は、下記(I)〜(III)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。
(I)配列番号29で表される塩基配列、
(II)配列番号29で表される塩基配列のうちの1〜数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなり、且つ花において転写調節可能な活性を有する塩基配列、
(III)配列番号29で表される塩基配列と80%以上の配列同一性を有し、且つ花において転写調節可能な活性を有する塩基配列。
配列番号29で表される塩基配列は、配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子(CAG Type2 long遺伝子)の第2イントロン部分に相当する塩基配列である。仮に、当該配列単独でプロモーター活性を有さない場合には、当該配列は、広く転写調節領域として扱われてもよい。当該配列単独でプロモーター活性を有さない場合には、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの−60bp core領域をTATA−boxのコア領域等のコアプロモーター領域を併用し、本発明に係る転写調節領域として利用してもよい。
本発明に係る遺伝子は、配列番号29で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドの下流に、本発明に係る融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが結合されることが好ましい。
一般的に、何らかの生理機能を有するポリヌクレオチドは、本来の機能を損なうことなく、1〜数個の塩基を欠失、置換若しくは付加可能なことが知られている。
前記(II)の塩基配列において、配列番号29に記載の塩基配列に対して欠失、置換又は付加されていてもよいヌクレオチドの数は、1〜30個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
前記(III)の塩基配列において、配列番号29に記載の塩基配列と同一性は、80%以上100%未満であり、85%以上100%未満が好ましく、90%以上100%未満がより好ましく、95%以上100%未満がさらに好ましく、98%以上100%未満がさらに好ましい。
塩基配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明における塩基配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTNにより得られた値を採用できる。本発明における塩基配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
本発明に係る転写調節領域であるポリヌクレオチドにおいて、(I)配列番号29で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、当該塩基配列のみからなるポリヌクレオチドであってもよく、本発明に係る転写調節領域であるポリヌクレオチドが花において転写調節可能な活性を有する範囲において、当該塩基配列からなるヌクレオチドに任意の配列が付加されていてもよい。
前記任意の配列とは、例えば、リンカー配列、タグ配列、タンパク質安定化のための修飾配列等が挙げられる。
<転写調節領域と遺伝子との組み合わせ>
本発明に係る融合遺伝子において、花において転写調節可能な転写調節領域と、融合タンパク質におけるCAGタンパク質の遺伝子と、の組み合わせは制限されるものではないが、以下の組み合わせが挙げられる。
CAG Type1 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 longタンパク質との組み合わせ。
上記の組み合わせのなかでは、CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質の組み合わせ、又はCAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質の組み合わせ好ましい。
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域、CAG type1 shortタンパク質、CAG type2 shortタンパク質としては、それぞれ、本明細書中で上記に説明したものが挙げられる。
本発明に係る転写調節領域であるポリヌクレオチドは、公知の手法により製造可能である。例えば、自然界から取得したゲノムDNAを鋳型とし、配列番号29の塩基配列に基づいて設計したプライマーにより、CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域であるDNAをPCR等により増幅し、得ることができる。
≪ベクター≫
本発明のベクターは、本発明の融合遺伝子を含むベクターであり、宿主細胞において、本発明の融合タンパク質を発現し得る発現ベクターとなり得る。
前記発現ベクターとしては、プロモーター配列を有するDNA、本発明に係る融合タンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、ターミネーター配列を有するDNAを含むベクターが挙げられ、これらが上流から順に連結されてなるDNAを含むベクターが好ましい。本発明のベクターは、本発明の融合遺伝子の他に、薬剤耐性配列等の配列を有していてもよい。
本発明のベクターは、本発明の融合遺伝子として、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする融合遺伝子、及びCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする融合遺伝子を含むことが好ましい。ここで、CAG type1タンパク質としては、CAG type1 shortタンパク質が好ましく、CAG type2タンパク質としては、CAG type2 shortタンパク質が好ましい。
本発明のベクターは、周知の遺伝子組み換え技術を用いて、本発明の融合遺伝子をベクターに組み込むことで製造可能である。本発明の融合遺伝子を組み込む際には、市販の発現用ベクター作製キットを用いてもよい。
≪形質転換体≫
本発明の形質転換体は、本発明の融合タンパク質を発現するものであり、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質、又はCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現するものである。
本発明の形質転換体は、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質、及びCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現するものが好ましい。
本発明の形質転換体は、本発明の融合タンパク質が、花において転写調節可能な転写調節領域の制御下で発現するものであることが好ましい。花において転写調節可能な転写調節領域としては、上記のものが挙げられ、上記のCAG Type2 long遺伝子の転写調節領域が好ましい。
本発明の形質転換体は、後述する≪不稔化植物の作出方法≫及び実施例において示すように、公知の遺伝子組み換え技術を用いて作出可能である。
本発明において形質転換体とは生物個体のみならず細胞を包含する意味で用いている。細胞は、組織又は器官の状態であってもよい。形質転換体は、植物体、植物細胞、植物の組織又は植物の器官であることが好ましい。本発明において形質転換体とは、本発明の融合タンパク質を発現する限りにおいて、形質転換体として作製された生物又は細胞は、それらの後代若しくはクローンの生物又は細胞であってもよい。例えば、前記クローンの植物体としては挿し木により得られた植物体が挙げられる。
本発明の形質転換体は、被子植物であることが好ましく、キク科(Asteraceae)の植物体であることがより好ましい。キク科の植物としては、キク、ガーベラ、アスター、ヒマワリ等を挙げることが出来る。好ましいキクの種類としては、一般的に栽培ギク(輪菊、中ギク、小ギク、スプレーギク、ポットマム等)、イエギク等と称されるChrysanthemum morifoliumが挙げられる。
≪不稔化植物の作出方法≫
後述の実施例に示すように、発明者らは、本発明に係る融合タンパク質を発現させた植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。また、後述の実施例に示すように、発明者らは、本発明に係る、CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を発現させた植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。
本発明の不稔化植物の作出方法は、植物内において、以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能を欠損又は抑制させ、以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能を欠損又は抑制させることを含むものである。
(1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
上記の(1)〜(6)の遺伝子としては、それぞれ、本明細書中の上記≪不稔化植物≫で説明したものが挙げられる。
本発明の不稔化植物の作出方法は、植物内において、CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の機能を、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質、及びCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制するものであることが好ましい。
融合タンパク質としては、それぞれ、本明細書中の上記≪不稔化植物≫で説明したものが挙げられる。
本発明の不稔化植物の作出方法は、前記CAG type1遺伝子の機能を、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制し、前記CAG type2遺伝子の機能を、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制するものであることが好ましい。
遺伝子の発現を抑制させる核酸としては、それぞれ、本明細書中の上記≪不稔化植物≫で説明したものが挙げられる。
前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、請求項17に記載の不稔化植物の作出方法。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
であることが好ましい。
上記の(g)〜(l)の核酸としては、それぞれ、本明細書中の上記≪不稔化植物≫で説明したものが挙げられる。
融合タンパク質を発現させることによって、不稔化植物を作出する場合、融合タンパク質を導入してもよく、融合タンパク質をコードする融合遺伝子を植物体に導入し、植物体内で融合タンパク質を発現させてもよい。
遺伝子の発現を抑制させる核酸を植物体に導入することによって、不稔化植物を作出する場合、当該核酸を植物体に導入してもよく、当該核酸を発現可能な遺伝子を植物体に導入し、植物体内で当該核酸を発現させてもよい。
融合遺伝子は、融合タンパク質を発現可能なベクターの状態で、植物体に導入されてもよい。
より詳しくは、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクター、及びCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターが導入されたものであってもよい。
或いは、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする遺伝子、及びCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターが導入されたものであってもよい。
融合遺伝子は、上述の≪不稔化植物≫で例示した、種々の転写調節領域と連結されて、転写調節領域の制御下で発現させることができる。
遺伝子の発現を抑制させる核酸を発現可能な遺伝子は、該遺伝子を発現可能なベクターの状態で、植物体に導入されてもよい。
より詳しくは、CAG Type1遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な遺伝子を含むベクター、及びCAG Type2遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な遺伝子を含むベクターが導入されたものであってもよい。
或いは、CAG Type1遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な遺伝子、及びCAG Type2遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な遺伝子を含むベクターが導入されたものであってもよい。
遺伝子の発現を抑制させる核酸を発現可能な遺伝子は、上述の≪不稔化植物≫で例示した、種々の転写調節領域と連結されて、転写調節領域の制御下で発現させることができる。
発現ベクターを用いて形質転換体を作出する方法は、特に限定されず、当技術分野で通常行われている方法により行うことが可能である。当該方法としては、例えば、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法が挙げられ、アグロバクテリウム法が好ましい。
導入された遺伝子の発現を抑制させる核酸は、ゲノム上に導入されていてもよく、ゲノム上に導入されていなくてもよいが、ゲノム上に導入されることが好ましい。
遺伝子の発現を抑制する核酸を導入する対象の植物としては、植物体、植物細胞、植物培養細胞、カルス等が挙げられる。
不稔化植物は、被子植物であることが好ましく、キク科(Asteraceae)の植物体であることがより好ましい。キク科の植物としては、キク、ガーベラ、アスター、ヒマワリ等を挙げることが出来る。好ましいキクの種類としては、一般的に栽培ギク(輪菊、中ギク、小ギク、スプレーギク、ポットマム等)、イエギク等と称されるChrysanthemum morifoliumが挙げられる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1-1.遺伝子の単離
まず、イエギク(Chrysanthemum morifolium)の“セイマリン”の雄蕊および雌蕊から抽出した総RNAからRT−PCRによりcDNAを得た。
プライマー:5’‐AAAGGGAGTGATTAAGAGGGTTTGC‐3’(配列番号:30)とプライマー:5’‐CTTAGGACACACATTGTTCACACGC‐3’(配列番号:31)を用いて前記cDNAから配列を増幅し、配列番号15で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドを得た。以下の各配列番号で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドの増幅に使用したプライマーの配列を表2に示す。
得られた配列番号15〜28で表される塩基配列を含む配列からオープンリーディングフレームを推定し、それらをアミノ酸配列に変換し、配列番号1〜14で表されるアミノ酸配列を得た。
それらのアミノ酸配列に基づき、GENETYX(Ver.8)を使用して、系統樹を作成した。GENETYXでの作製条件は、Neighbor-Joining Method(近隣結合法)で、bootstrap値(10000)、その他デフォルト値である。得られた系統樹を図1に示す。
配列番号1,2,3,11,13で表されるアミノ酸配列がひとまとまりの群を形成したため、これらをCAG Type 1 shortとした。
配列番号8,12で表されるアミノ酸配列がひとまとまりの群を形成したため、これらをCAG Type 1 longとした。
配列番号5,9,14で表されるアミノ酸配列がひとまとまりの群を形成したため、これらをCAG Type 2 shortとした。
配列番号4,6,7,10で表されるアミノ酸配列がひとまとまりの群を形成したため、これらをCAG Type 2 longとした。
CAG Type1に分類されたアミノ酸配列とCAG Type2に分類されたアミノ酸配列との間では、各アミノ酸配列の同一性は84〜88%の範囲内であった。
CAG Type1 shortに分類されたアミノ酸配列とCAG Type1 longに分類されたアミノ酸配列との間では、各アミノ酸配列の同一性は98〜99%の範囲内であった。
CAG Type2 shortに分類されたアミノ酸配列とCAG Type2 longに分類されたアミノ酸配列との間では、各アミノ酸配列の同一性は98〜99%の範囲内であった。
1-2.発現解析
単離した14遺伝子の、特に4種に分類した群に含まれる遺伝子同士の配列は非常に似ているため、4種に分類した群全体の遺伝子の配列をRT−PCRで解析した。RT−PCRに用いたプライマーの配列を表3に示す。
イエギクの“セイマリン”の葉、がく、花床、舌状花の花弁、舌状花の雌ずい、管状花の花弁、管状花の雌ずい、管状花の雄ずいから抽出した総RNAに対し、それぞれRT−PCRを行った。
図2に、RT−PCRの結果を示す。CAG Type1 short、CAG Type2 short、CAG Type1 longの遺伝子の発現が、舌状花の雌ずい、管状花の雄ずい、管状花の雌ずいにおいて確認された。CAG Type1 longの遺伝子の発現は弱いながらも、舌状花の雌ずい、管状花の雄ずい、管状花の雌ずいにおいて確認された。
2−1.転写調節領域の単離
イエギクの“セイマリン”からDNAを抽出し、プライマー:5’‐ATGGCAAATTCTGATGCTTTT‐3’(配列番号:66)とプライマー:5’‐TTACACTAACTGGAGAGGAGTTTGG‐3’(配列番号:67)を用いて前記cDNAから配列を増幅し、オープンリーディングフレーム(ORF)と、エキソン、イントロンの領域を推定し、配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子(CAG Type2 long遺伝子)のイントロン部分の塩基配列である、配列番号29で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドを得た。
2−2.転写調節の確認
配列番号29で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドの下流にGUSレポーター遺伝子を連結したDNA断片を、ベクター(pBI121)上の35Sプロモーター配列と置換し、バイナリーベクターを作製した。このバイナリーベクターをアグロバクテリウムに導入し、次いでこのアグロバクテリウムを用いて、アグロバクテリウム法によりイエギクの“セイマリン”に導入し形質転換体を作製した。
得られた形質転換体におけるGUSレポーター遺伝子の発現を、常法により解析した。結果を図3に示す。舌状花では、舌状花弁の基部に付随した雌ずいのみがで染色が確認された。筒状花では、筒状花(上図)の花弁を除くと、花弁の内側にある雄ずいと雌ずい全体(下図)が、どちらも染色されているのが確認された。一方、葉や茎では染色が確認されなかった。以上のことから、配列番号29で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが、雄蕊および雌蕊において特異的な転写調節活性を有することが明らかとなった。
3−1.キク形質転換体の作出
上記で得た配列番号15で表される塩基配列からなるDNA(CAG Type1 short遺伝子(配列番号1))とSRDX(転写抑制転換ペプチド)とを連結し、融合遺伝子CAG1S(no.1)−SRDXを作製した。CAG1S(no.1)−SRDXに、さらに配列番号29で表される塩基配列からなるDNA[配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子(CAG Type2 long遺伝子)の転写調節領域]を連結した。
上記で得た配列番号19で表される塩基配列からなるDNA(CAG Type2 short遺伝子(配列番号5))とSRDX(転写抑制転換ペプチド)とを連結し、融合遺伝子CAG2s(no.5)−SRDXを作製した。CAG2s(no.5)−SRDXに、さらに配列番号29で表される塩基配列からなるDNA[配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子(CAG Type2 long遺伝子)の転写調節領域]を連結した。
上記の融合遺伝子CAG1S(no.1)−SRDXを含むDNA断片とCAG2 s(no.5)−SRDXを含むDNA断片とを連結した。
図4に上記で作製された、2つの融合遺伝子が連結された発現カセットを模式的に示す。
図4中、35Scoreは、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV) の35Sプロモーターのコアプロモーター配列を示す。ADH5’は、ADH(Alcohol Dehydrogenase)遺伝子由来の5’非翻訳領域(5’−UTR)配列を示す。HSPtrerは、HSP(Heat Shock Protein)遺伝子由来のterminatorを示す。
この図4に示す発現カセットを、ベクター(P35SSRDXG2)上のHindIII/EcoRIサイトの位置と置換し、LR反応にてpBCKKベクターに導入したバイナリーベクターを、アグロバクテリウムに導入し、次いでこのアグロバクテリウムを用いて、アグロバクテリウム法によりイエギクの“セイマリン”に導入し形質転換体(5221−5系統)を作製した。
3−2.キク形質転換体の形質
得られた形質転換体(5221−5系統)の花の形態を図5に示す。形質転換体(5221−5系統)の花は、コントロールのイエギクの“セイマリン”(野生型)の花と比較して、舌状花と管状花の配置は保たれており、萼と花弁の形成が繰り返される態様を伴わない、キクの花特有の形態を有する美しいものであった。
一方で、形質転換体(5221−5系統)では、雌しべが完全に花弁化しており、また雄ずいが完全に花弁化していた。その結果、形質転換体(5221−5系統)では完全不稔化されていた。
このように、本発明に係るキクは、キク特有の花の姿が持つ鑑賞性の高さと完全不稔性とを兼ね備えた非常に有用な植物体であった。
形質転換体(5221−5系統)を切り戻し、再花させても完全不稔形質は維持されていた。形質転換体(5221−5系統)は完全不稔化のため種ができず、挿し木又は培養植物として植物個体を維持した。
4−1.キク形質転換体の作出
上記の通り、イエギク(Chrysanthemum morifolium)の“セイマリン”の雄蕊および雌蕊から抽出した総RNAからRT−PCRによりcDNAを得た。
その後、プライマー:5’‐atgtctttaccggaaaatgactcgg‐3’(配列番号:75)とプライマー:5’‐tgaggataaacaagttatttcttag‐3’(配列番号:76)を用いて前記cDNAから配列を増幅し、配列番号69で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドを得た。
プライマー:5’‐atggcaagttctgatgcttttgag‐3’(配列番号:77)とプライマー:5’‐tttagatagattgcatacataatacg‐3’(配列番号:78)を用いて前記cDNAから配列を増幅し、配列番号70で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドを得た。
図6に示すように、上記で得た配列番号69(CAG Type1 shortのcDNAの配列)に基づき、MADS domainを含まないように、配列番号69の部分配列である配列番号71で表される702bの塩基配列を選出した。
図6に示すように、上記で得た配列番号70(CAG Type2 longの cDNAの配列)に基づき、MADS domainを含まないように、配列番号70の部分配列である配列番号72で表される737bの塩基配列を選出した。
プライマー:5’‐aaaAAGCTTgctccatgaaacgtataggatg‐3’(配列番号:79、大文字部はHindIII制限酵素サイト)とプライマー:5’‐ AAAggatccCATcttatgttatctatatttac‐3’(配列番号:80、ggatccはBamHI制限酵素サイト)を用いて、前記Chrysanthemum morifolium由来のゲノミックDNAから配列を増幅し、配列番号82で表されるアクチンプロモーター(CmACT promoter)のポリヌクレオチドを得た。
上記で得られたアクチンプロモーター(CmACT promoter)の下流に、配列番号72で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA(CAG Type2 longのアンチセンス鎖の部分配列)と、配列番号71で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA(CAG Type1 shortのアンチセンス鎖の部分配列)と、スペーサーとして配列番号81で表される塩基配列からなるDNA(GUS遺伝子の配列)と、配列番号71で表される塩基配列からなるDNA(CAG Type1 shortのセンス鎖の部分配列)と、配列番号72で表される塩基配列からなるDNA(CAG Type2 longのセンス鎖の部分配列)と、HSPterとを、この順に連結し、配列番号74で表される塩基配列からなるDNAを得た(図7)。
この図7に模式的に示す発現カセットを、ベクター(P35SSRDXG-HSPter)上のHindIII/SalIサイト(図8)の位置と置換し、LR反応にてpBCKKベクター(図9)に導入したバイナリーベクターを、アグロバクテリウムに導入し、次いでこのアグロバクテリウムを用いて、アグロバクテリウム法によりキクに導入し、形質転換体(5275-12系統 組換えキク)を作製した。
4−2.キク形質転換体の形質
得られた形質転換体(5275−12系統)の花の形態を図10に示す。形質転換体(5275−12系統)の花は、コントロールのイエギクの“セイマリン”(野生型)の花と比較して、舌状花と管状花の配置は保たれており、萼と花弁の形成が繰り返される態様を伴わない、キクの花特有の形態を有する美しいものであった。
一方で、形質転換体(5275−12系統)では、雌しべが完全に花弁化しており、また雄ずいが完全に花弁化していた。その結果、形質転換体(5275−12系統)では完全不稔化されていた。
このように、本発明に係るキクは、キク特有の花の姿が持つ鑑賞性の高さと完全不稔性とを兼ね備えた非常に有用な植物体であった。
形質転換体(5275−12系統)を切り戻し、再花させても完全不稔形質は維持されていた。形質転換体(5275−12系統)は完全不稔化のため種ができず、挿し木又は培養植物として植物個体を維持した。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。

Claims (11)

  1. 以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能が欠損又は抑制されており、
    以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能が欠損又は抑制されていることを特徴とする不稔化植物。
    (1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
  2. 前記CAG type1遺伝子の機能が、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されており、
    前記CAG type2遺伝子の機能が、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されている、請求項1に記載の不稔化植物。
    (A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
    (B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
    (C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
    (D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
    (E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
    (F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
  3. 前記CAG type1遺伝子の機能が、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されており、
    前記CAG type2遺伝子の機能が、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されている、請求項1に記載の不稔化植物。
  4. 前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
    前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、請求項3に記載の不稔化植物。
    (g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
    (h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
    (i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
    (j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
    (k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
    (l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
  5. キク科の植物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の不稔化植物。
  6. 植物内において、
    以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能を欠損又は抑制させ、
    以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能を欠損又は抑制させることを含む、不稔化植物の作出方法。
    (1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
    (6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
  7. 植物内において、
    前記CAG type1遺伝子の機能を、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制し、
    前記CAG type2遺伝子の機能を、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制する、請求項6に記載の不稔化植物の作出方法。
    (A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
    (B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
    (C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
    (D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
    (E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
    (F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
  8. 前記転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドが、Leu−Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Leu−Arg−Leu−Gly−Phe−Alaで表されるアミノ酸配列からなる、請求項7に記載の不稔化植物の作出方法。
  9. 前記CAG type1遺伝子の機能を、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制し、
    前記CAG type2遺伝子の機能を、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制する、請求項に記載の不稔化植物の作出方法。
  10. 前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
    前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、請求項に記載の不稔化植物の作出方法。
    (g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
    (h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
    (i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
    (j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
    (k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
    (l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
  11. キク科の植物である請求項10のいずれか一項に記載の不稔化植物の作出方法。
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