JP2017184679A - 不稔化植物、融合タンパク質、融合遺伝子、ベクター、形質転換体、及び不稔化植物の作出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CAG type1遺伝子の機能が欠損又は抑制されており、CAG type2遺伝子の機能が欠損又は抑制されていることを特徴とする不稔化植物。CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質。CAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質。前記融合タンパク質をコードする融合遺伝子。
【選択図】なし
Description
キクは、鑑賞用や食用として、世界中で広く栽培される有用な植物である。キクの花器官の形成制御に関して、非特許文献1には、キククラスC遺伝子の1つを単離し、これをターゲットにアンチセンス植物を作出したことが報告されている。
すなわち、本発明は以下の通りである。
以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能が欠損又は抑制されていることを特徴とする不稔化植物。
(1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
[2] 前記CAG type1遺伝子の機能が、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されている、前記[1]に記載の不稔化植物。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
[3]前記CAG type1遺伝子の機能が、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されている、前記[1]に記載の不稔化植物。
[4]前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、前記[3]に記載の不稔化植物。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
[5]キク科の植物である前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の不稔化植物。
[6]以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
[7]前記ペプチドが、Leu−Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Leu−Arg−Leu−Gly−Phe−Alaで表されるアミノ酸配列からなる前記[6]に記載の融合タンパク質。
[8]以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質。
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
[9]前記ペプチドが、Leu−Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Leu−Arg−Leu−Gly−Phe−Alaで表されるアミノ酸配列からなる前記[8]に記載の融合タンパク質。
[10]前記[6]〜[9]のいずれか一つに記載の融合タンパク質をコードする融合遺伝子。
[11]更に、花において特異的に転写調節可能な転写調節領域が、前記融合タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドに作動可能に連結された前記[10]に記載の融合遺伝子。
[12]前記[10]又は[11]に記載の融合遺伝子を含むベクター。
[13]前記[6]又は[7]に記載の融合タンパク質をコードする融合遺伝子、及び前記[8]又は[9]に記載の融合タンパク質をコードする融合遺伝子を含む前記[12]に記載のベクター。
[14]前記[6]若しくは[7]に記載の融合タンパク質、又は前記[8]若しくは[9]に記載の融合タンパク質を発現する形質転換体。
[15]植物内において、
以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能を欠損又は抑制させ、
以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能を欠損又は抑制させることを含む、不稔化植物の作出方法。
(1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
[16]植物内において、
前記CAG type1遺伝子の機能を、前記[6]又は[7]に記載の融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制し、
前記CAG type2遺伝子の機能を、前記[8]又は[9]に記載の融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制する、前記[15]に記載の不稔化植物の作出方法。
[17]前記CAG type1遺伝子の機能を、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制し、
前記CAG type2遺伝子の機能を、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制する、前記[15]に記載の不稔化植物の作出方法。
[18]前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、前記[17]に記載の不稔化植物の作出方法。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
[19]キク科の植物である前記[15]〜[18]のいずれか一つに記載の不稔化植物の作出方法。
本発明の不稔化植物は、
以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能が欠損又は抑制されており、
以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能が欠損又は抑制されている。
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
被子植物の花の発生を説明するモデルとして、ABCモデルが知られている。ABCモデルでは、クラスA遺伝子、クラスB遺伝子、クラスC遺伝子の発現パターンの組合せによって、花器官の発生が制御される。クラスA遺伝子単独の発現領域では、萼が形成され、クラスA遺伝子とクラスB遺伝子の発現領域では、花弁が形成される。クラスB遺伝子とクラスC遺伝子の発現領域では雄ずいが形成され、クラスC遺伝子単独の発現領域では雌ずいが形成される。クラスC遺伝子としてはシロイヌナズナの AGAMOUS (AG)が知られている。
しかし、上記モデルはシロイヌナズナやキンギョソウ等の一部の植物種を対象とした研究で明らかにされたものであり、他のあらゆる植物種においても上記モデルが同様に適用できるか、また、どの遺伝子が各クラスの遺伝子として機能しているかは不明である。
前記(2)のタンパク質において、配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されていてもよいアミノ酸の数は、1〜30個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
アミノ酸配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明におけるアミノ酸配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTPにより得られた値を採用できる。本発明におけるアミノ酸配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
アミノ酸配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明におけるアミノ酸配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTPにより得られた値を採用できる。本発明におけるアミノ酸配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
前記(4)の配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、当該アミノ酸配列のみからなるタンパク質であってもよく、転写制御機能を有する範囲において、当該アミノ酸配列からなるタンパク質に任意の配列が付加されていてもよい。
前記任意の配列とは、例えば、リンカー配列、タグ配列、タンパク質安定化のための修飾配列等が挙げられる。
(I)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(II)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(III)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(IV)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(V)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(VI)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
前記(I)における配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号16で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号17で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号22で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号25で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号26で表される塩基配列であってもよい。
前記(I)における配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号27で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号19で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号20で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号21で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号23で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号24で表される塩基配列であってもよい。
前記(IV)における配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列としては、配列番号28で表される塩基配列であってもよい。
後述の実施例に示すように、発明者らは、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有するCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質、及び、配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有するCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現させた植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。
本発明の不稔化植物は、前記CAG type2遺伝子の機能が、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されていてもよい。
前記CAG type1遺伝子の機能が、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されているものであることが好ましい。
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(A)配列番号1、2、3、11、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、11、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、11、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(D)配列番号5、9、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号5、9、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号5、9、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
近年、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチド(以下「転写抑制転換ペプチド」ということがある。)が開発され、利用されている。転写抑制転換ペプチドの例としては、SRDXと呼ばれる転写抑制ドメインが挙げられる。例えば、SRDXを任意の転写因子のC末端に付加することにより、転写因子を転写抑制因子に変換可能である(Hiratusu et al. (2003)Plant J. 34(5):733-739)。SRDXのアミノ酸配列は、Leu−Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Leu−Arg−Leu−Gly−Phe−Alaで表されるアミノ酸配列[LDLDLELRLGFA(配列番号68)]である。
本発明に係るCAG type2タンパク質において、(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質は、当該アミノ酸配列のみからなるタンパク質であってもよく、本発明に係るCAG type2タンパク質が転写制御機能を有する範囲において、当該アミノ酸配列からなるタンパク質に任意の配列が付加されていてもよい。
前記任意の配列とは、例えば、リンカー配列、タグ配列、タンパク質安定化のための修飾配列等が挙げられる。
発明者らは、イエギクのCAG Type1遺伝子の発現を抑制する核酸、及びイエギクのCAG Type2遺伝子の発現を抑制する核酸が導入された植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。
本発明の不稔化植物は、前記CAG Type2遺伝子の機能の欠損又は抑制が、前記CAG Type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されていてもよい。
前記CAG Type1遺伝子の機能が、前記CAG Type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG Type2遺伝子の機能が、前記CAG Type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されているものであることが好ましい。
配列番号69で表される塩基配列は、本発明に係るCAG Type1遺伝子のcDNAの塩基配列である。配列番号69で表される塩基配列のうち、748〜931番目の領域は3’UTRの領域である。
本発明に係るCAG Type1遺伝子の発現を抑制するアンチセンス核酸は、当業者であれば、例えば、配列番号69で表される塩基配列に基づき設計可能である。
配列番号70で表される塩基配列は、本発明に係るCAG Type2遺伝子のcDNAの塩基配列である。配列番号70で表される塩基配列のうち、799〜1014番目の領域は3’UTRの領域である。
本発明に係るCAG Type2遺伝子の発現を抑制するアンチセンス核酸は、当業者であれば、例えば、配列番号70で表される塩基配列に基づき設計可能である。
本発明に係るCAG Type1遺伝子の発現を抑制するリボザイムは、当業者であれば、配列番号69で表される塩基配列に基づき設計可能である。本発明に係るCAG Type2遺伝子の発現を抑制するリボザイムは、当業者であれば、配列番号70で表される塩基配列に基づき設計可能である。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
同様に、配列番号72で表される塩基配列に対応するアンチセンス鎖が発現するだけでもアンチセンス核酸となり、CAG type2遺伝子の発現を抑制し得る。配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸が発現することで、2本鎖RNAが形成され、siRNAの形成などにより、植物体内でサイレンシングが効率よく引き起こされる。
前記(h)の核酸において、配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されていてもよい塩基の数は、1〜30個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
塩基配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明における塩基配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTにより得られた値を採用できる。本発明における塩基配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
塩基配列同士の同一性は、公知の各種相同性検索プログラムを用いて求めることができる。本発明における塩基配列同士の同一性は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTにより得られた値を採用できる。本発明における塩基配列同士の同一性は、後述する実施例に示すように市販の遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXにより得られた値を採用できる。
前記(g)〜(i)に示される核酸において、センス鎖の一部となる配列番号71で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基長としては、抑制対象となる遺伝子によって適宜定めればよく、一例として19〜701塩基程度、100〜701塩基程度、300〜701塩基長程度、19〜600塩基程度、20〜100塩基程度、21〜50塩基程度とすることができる。
前記(g)〜(i)に示される核酸において、センス鎖の一部となる配列番号71で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基は、配列番号71で表される塩基配列中の520〜702番目の塩基配列からなる領域の一部(連続する19個以上の塩基)又は全部を含むものが好ましい。配列番号71で表される塩基配列中の520〜702番目の塩基配列からなる領域は、配列番号69で表される塩基配列のうちの3’UTRの領域に対応する。
前記(j)〜(l)に示される核酸において、センス配列の一部となる配列番号72で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基長としては、抑制対象となる遺伝子によって適宜定めればよく、一例として19〜736塩基程度、100〜736塩基程度、300〜736塩基程度、19〜500塩基程度、20〜100塩基程度、21〜50塩基程度とすることができる。
前記(j)〜(l)に示される核酸において、センス鎖の一部となる配列番号72で表される塩基配列中の連続する19個以上の塩基は、配列番号72で表される塩基配列中の523〜737番目の塩基配列からなる領域の一部(連続する19個以上の塩基)又は全部を含むものが好ましい。配列番号72で表される塩基配列中の523〜737番目の塩基配列からなる領域は、配列番号70で表される塩基配列のうちの3’UTRの領域に対応する。
前記(j)〜(l)に示される核酸は、CAG type2遺伝子の発現を抑制可能なものであれば、前記各センス鎖又はその一部、及び前記各アンチセンス鎖又はその一部の他に、任意の核酸が付加されていてもよい。
CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸の一態様として、以下の(m)〜(o)のいずれかの核酸を挙げることができる。
(m)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、
配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖又はその一部と、を含む核酸、
(n)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、
配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子及び前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(o)配列番号71で表される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、
配列番号72で表される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子及び前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
が挙げられる。
(p)配列番号73で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(q)配列番号73で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、CAG type1遺伝子及び前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(r)配列番号73で表される塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子及び前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸
なお、配列番号74で表される塩基配列において、1〜1439番目の塩基からなる部分は、アンチセンス鎖の部分であり、1440〜2358番目の塩基からなる部分は、スペーサー部分であり、2359〜3797番目に塩基からなる部分はセンス鎖の部分である。
不稔化植物において遺伝子の機能が欠損又は抑制していることは、人為的な操作により作出された不稔化植物と、人為的な操作を受けていないコントロールとなる野生型等の植物と比較して判断できる。
人為的な操作とは、例えば、対象とする遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸やタンパク質等が人為的に導入又は発現されることが挙げられる。
本発明の不稔化植物において、本発明に係るCAG Type1遺伝子及びCAG Type2遺伝子のそれぞれについて、該遺伝子産物の活性の欠損又は抑制の程度、或いは、該遺伝子の発現の欠損又は抑制の程度は、植物体の不稔化が達成される程度であればよく、植物体の完全不稔化が達成される程度であることが好ましい。
本発明の不稔化植物において、本発明に係るCAG Type1遺伝子及びCAG Type2遺伝子のそれぞれについて、該遺伝子産物の活性の欠損又は抑制の生じる部位、或いは、該遺伝子の発現の欠損又は抑制の生じる部位は、植物体の不稔化が達成される程度であればよく、植物体の完全不稔化が達成される程度であることが好ましい。例えば、遺伝子産物の活性が花で特異的に欠損又は抑制することで、植物の不稔化又は完全不稔化が達成されてもよい。
雄ずいの不稔化としては、雄ずいが正常に形成されず花粉が生産されないことによるもの、雄ずいが他の器官に置き換わり花粉が生産されないことによるもの、花粉は生産されたが稔性を有さないことによるもの等が挙げられる。同様に、雌ずいの不稔化としては、雌ずいが正常に形成されないことによるもの、雌ずいが他の器官に置き換わることによるもの、雌ずいは形成されるが稔性を有さないことによるもの等が挙げられる。
雄ずい側の不稔は、雄ずいが花弁等の他の器官に置き換わる等を形態観察により調べてもよく、正常個体の雌ずいとの掛け合わせにより種子が形成されるかどうかによっても容易に調べることができる。雌ずい側の不稔は、雌ずいが花弁等の他の器官に置き換わる等を形態観察により調べてもよく、正常個体の雄ずいとの掛け合わせにより種子が形成されるかどうかによっても容易に調べることができる。
前記CAG type1遺伝子の機能が、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されているものである場合、これらの融合タンパク質は少なくとも花において発現していることが好ましい。
当該融合タンパク質を花において発現させる場合、花において特異的に融合タンパク質を発現させる転写調節領域によって、融合タンパク質を発現させてもよく、花を含む植物体全体で融合タンパク質を発現させる恒常的プロモーター等の転写調節領域によって、融合タンパク質を発現させてもよい。
恒常的プロモーターとしては、CaMV35S(カリフラワーモザイクウイルス35S)プロモーターが挙げられる。
なかでも、後述の≪融合遺伝子≫の<転写調節領域>において詳説する、花において転写調節可能な転写調節領域の制御下で、融合タンパク質を発現させることが好ましく、そのなかでも、後述のCAG Type2 long遺伝子の転写調節領域の制御下で、融合タンパク質を発現させることが好ましい。
前記CAG Type1遺伝子の機能が、前記CAG Type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG Type2遺伝子の機能が、前記CAG Type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されているものである場合、これらの核酸は少なくとも花において発現していることが好ましい。
当該核酸を花において発現させる場合、花において特異的に核酸を発現させる転写調節領域によって、核酸を発現させてもよく、花を含む植物体全体で核酸を発現させる恒常的プロモーター等の転写調節領域によって、核酸を発現させてもよい。
恒常的プロモーターとしては、アクチンプロモーターが挙げられ、イエギク等と称されるChrysanthemum morifolium由来のアクチンプロモーターが好ましい。
本発明の融合タンパク質は、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質である。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
上記の転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドとしては、それぞれ、本明細書中の上記≪不稔化植物≫で説明したものが挙げられる。
本発明の融合遺伝子は、本発明の融合タンパク質をコードするものである。
CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド、
CAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(c)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(d)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(e)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
(f)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり転写制御機能を有するタンパク質と、転写抑制転換ペプチドと、が融合してなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド
本発明に係るCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする融合遺伝子は、該融合タンパク質をコードする塩基配列のみからなるポリヌクレオチドであってもよく、本発明に係るCAG type2タンパク質の融合タンパク質が転写抑制作用を有する範囲において、当該塩基配列のみからなるポリヌクレオチドに任意の配列が付加されていてもよい。
前記任意の配列とは、例えば、リンカー配列、タグ配列、タンパク質安定化のための修飾配列等が挙げられる。
本発明の融合遺伝子は、花において転写調節可能な転写調節領域(クラスC遺伝子のMADS-boxドメインの下流に位置する第2イントロンに相当する領域であるが、プロモーター活性を有する転写調節可能な配列)が前記融合タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドに作動可能に連結されることが好ましい。
「作動可能に連結されている」とは、前記転写調節領域が前記融合遺伝子の発現を調節可能であることを意味する。
「転写調節領域」としては、転写開始や転写効率を制御可能な配列であり、プロモーター、エンハンサー、応答配列が挙げられる。
「花において転写調節可能な転写調節領域」とは、花を構成する細胞において前記融合遺伝子の発現を調節可能であることを意味する。より詳しくは、花において転写調節可能な転写調節領域とは、前記融合遺伝子が雄ずい及び/又は雌ずいの形成に作用可能なように転写調節可能な転写調節領域であり、花において特異的に融合遺伝子の発現をもたらし得る転写調節領域が好ましく、雄ずい及び雌ずいにおいて特異的に前記融合遺伝子の発現をもたらし得る転写調節領域あるいはプロモーターがより好ましい。
(I)配列番号29で表される塩基配列、
(II)配列番号29で表される塩基配列のうちの1〜数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなり、且つ花において転写調節可能な活性を有する塩基配列、
(III)配列番号29で表される塩基配列と80%以上の配列同一性を有し、且つ花において転写調節可能な活性を有する塩基配列。
前記(II)の塩基配列において、配列番号29に記載の塩基配列に対して欠失、置換又は付加されていてもよいヌクレオチドの数は、1〜30個が好ましく、1〜20個がより好ましく、1〜10個がさらに好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
前記任意の配列とは、例えば、リンカー配列、タグ配列、タンパク質安定化のための修飾配列等が挙げられる。
本発明に係る融合遺伝子において、花において転写調節可能な転写調節領域と、融合タンパク質におけるCAGタンパク質の遺伝子と、の組み合わせは制限されるものではないが、以下の組み合わせが挙げられる。
CAG Type1 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type1 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 shortタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type1 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 short遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 longタンパク質との組み合わせ、
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域と、CAG type2 longタンパク質との組み合わせ。
CAG Type2 long遺伝子の転写調節領域、CAG type1 shortタンパク質、CAG type2 shortタンパク質としては、それぞれ、本明細書中で上記に説明したものが挙げられる。
本発明のベクターは、本発明の融合遺伝子を含むベクターであり、宿主細胞において、本発明の融合タンパク質を発現し得る発現ベクターとなり得る。
前記発現ベクターとしては、プロモーター配列を有するDNA、本発明に係る融合タンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、ターミネーター配列を有するDNAを含むベクターが挙げられ、これらが上流から順に連結されてなるDNAを含むベクターが好ましい。本発明のベクターは、本発明の融合遺伝子の他に、薬剤耐性配列等の配列を有していてもよい。
本発明の形質転換体は、本発明の融合タンパク質を発現するものであり、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質、又はCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現するものである。
本発明の形質転換体は、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質、及びCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質を発現するものが好ましい。
後述の実施例に示すように、発明者らは、本発明に係る融合タンパク質を発現させた植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。また、後述の実施例に示すように、発明者らは、本発明に係る、CAG type1遺伝子及びCAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を発現させた植物体では、雄ずい及び雌ずいが花弁化され、完全不稔化された植物体が得られることを見出した。
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、請求項17に記載の不稔化植物の作出方法。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
であることが好ましい。
遺伝子の発現を抑制させる核酸を植物体に導入することによって、不稔化植物を作出する場合、当該核酸を植物体に導入してもよく、当該核酸を発現可能な遺伝子を植物体に導入し、植物体内で当該核酸を発現させてもよい。
より詳しくは、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクター、及びCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターが導入されたものであってもよい。
或いは、CAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする遺伝子、及びCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターが導入されたものであってもよい。
より詳しくは、CAG Type1遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な遺伝子を含むベクター、及びCAG Type2遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な遺伝子を含むベクターが導入されたものであってもよい。
或いは、CAG Type1遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な遺伝子、及びCAG Type2遺伝子の発現を抑制する核酸を発現可能な遺伝子を含むベクターが導入されたものであってもよい。
まず、イエギク(Chrysanthemum morifolium)の“セイマリン”の雄蕊および雌蕊から抽出した総RNAからRT−PCRによりcDNAを得た。
プライマー:5’‐AAAGGGAGTGATTAAGAGGGTTTGC‐3’(配列番号:30)とプライマー:5’‐CTTAGGACACACATTGTTCACACGC‐3’(配列番号:31)を用いて前記cDNAから配列を増幅し、配列番号15で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドを得た。以下の各配列番号で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドの増幅に使用したプライマーの配列を表2に示す。
配列番号1,2,3,11,13で表されるアミノ酸配列がひとまとまりの群を形成したため、これらをCAG Type 1 shortとした。
配列番号8,12で表されるアミノ酸配列がひとまとまりの群を形成したため、これらをCAG Type 1 longとした。
配列番号5,9,14で表されるアミノ酸配列がひとまとまりの群を形成したため、これらをCAG Type 2 shortとした。
配列番号4,6,7,10で表されるアミノ酸配列がひとまとまりの群を形成したため、これらをCAG Type 2 longとした。
CAG Type1 shortに分類されたアミノ酸配列とCAG Type1 longに分類されたアミノ酸配列との間では、各アミノ酸配列の同一性は98〜99%の範囲内であった。
CAG Type2 shortに分類されたアミノ酸配列とCAG Type2 longに分類されたアミノ酸配列との間では、各アミノ酸配列の同一性は98〜99%の範囲内であった。
単離した14遺伝子の、特に4種に分類した群に含まれる遺伝子同士の配列は非常に似ているため、4種に分類した群全体の遺伝子の配列をRT−PCRで解析した。RT−PCRに用いたプライマーの配列を表3に示す。
図2に、RT−PCRの結果を示す。CAG Type1 short、CAG Type2 short、CAG Type1 longの遺伝子の発現が、舌状花の雌ずい、管状花の雄ずい、管状花の雌ずいにおいて確認された。CAG Type1 longの遺伝子の発現は弱いながらも、舌状花の雌ずい、管状花の雄ずい、管状花の雌ずいにおいて確認された。
イエギクの“セイマリン”からDNAを抽出し、プライマー:5’‐ATGGCAAATTCTGATGCTTTT‐3’(配列番号:66)とプライマー:5’‐TTACACTAACTGGAGAGGAGTTTGG‐3’(配列番号:67)を用いて前記cDNAから配列を増幅し、オープンリーディングフレーム(ORF)と、エキソン、イントロンの領域を推定し、配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子(CAG Type2 long遺伝子)のイントロン部分の塩基配列である、配列番号29で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドを得た。
配列番号29で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドの下流にGUSレポーター遺伝子を連結したDNA断片を、ベクター(pBI121)上の35Sプロモーター配列と置換し、バイナリーベクターを作製した。このバイナリーベクターをアグロバクテリウムに導入し、次いでこのアグロバクテリウムを用いて、アグロバクテリウム法によりイエギクの“セイマリン”に導入し形質転換体を作製した。
得られた形質転換体におけるGUSレポーター遺伝子の発現を、常法により解析した。結果を図3に示す。舌状花では、舌状花弁の基部に付随した雌ずいのみがで染色が確認された。筒状花では、筒状花(上図)の花弁を除くと、花弁の内側にある雄ずいと雌ずい全体(下図)が、どちらも染色されているのが確認された。一方、葉や茎では染色が確認されなかった。以上のことから、配列番号29で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが、雄蕊および雌蕊において特異的な転写調節活性を有することが明らかとなった。
上記で得た配列番号15で表される塩基配列からなるDNA(CAG Type1 short遺伝子(配列番号1))とSRDX(転写抑制転換ペプチド)とを連結し、融合遺伝子CAG1S(no.1)−SRDXを作製した。CAG1S(no.1)−SRDXに、さらに配列番号29で表される塩基配列からなるDNA[配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子(CAG Type2 long遺伝子)の転写調節領域]を連結した。
上記で得た配列番号19で表される塩基配列からなるDNA(CAG Type2 short遺伝子(配列番号5))とSRDX(転写抑制転換ペプチド)とを連結し、融合遺伝子CAG2s(no.5)−SRDXを作製した。CAG2s(no.5)−SRDXに、さらに配列番号29で表される塩基配列からなるDNA[配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子(CAG Type2 long遺伝子)の転写調節領域]を連結した。
上記の融合遺伝子CAG1S(no.1)−SRDXを含むDNA断片とCAG2 s(no.5)−SRDXを含むDNA断片とを連結した。
図4に上記で作製された、2つの融合遺伝子が連結された発現カセットを模式的に示す。
図4中、35Scoreは、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV) の35Sプロモーターのコアプロモーター配列を示す。ADH5’は、ADH(Alcohol Dehydrogenase)遺伝子由来の5’非翻訳領域(5’−UTR)配列を示す。HSPtrerは、HSP(Heat Shock Protein)遺伝子由来のterminatorを示す。
得られた形質転換体(5221−5系統)の花の形態を図5に示す。形質転換体(5221−5系統)の花は、コントロールのイエギクの“セイマリン”(野生型)の花と比較して、舌状花と管状花の配置は保たれており、萼と花弁の形成が繰り返される態様を伴わない、キクの花特有の形態を有する美しいものであった。
一方で、形質転換体(5221−5系統)では、雌しべが完全に花弁化しており、また雄ずいが完全に花弁化していた。その結果、形質転換体(5221−5系統)では完全不稔化されていた。
このように、本発明に係るキクは、キク特有の花の姿が持つ鑑賞性の高さと完全不稔性とを兼ね備えた非常に有用な植物体であった。
上記の通り、イエギク(Chrysanthemum morifolium)の“セイマリン”の雄蕊および雌蕊から抽出した総RNAからRT−PCRによりcDNAを得た。
その後、プライマー:5’‐atgtctttaccggaaaatgactcgg‐3’(配列番号:75)とプライマー:5’‐tgaggataaacaagttatttcttag‐3’(配列番号:76)を用いて前記cDNAから配列を増幅し、配列番号69で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドを得た。
プライマー:5’‐atggcaagttctgatgcttttgag‐3’(配列番号:77)とプライマー:5’‐tttagatagattgcatacataatacg‐3’(配列番号:78)を用いて前記cDNAから配列を増幅し、配列番号70で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドを得た。
図6に示すように、上記で得た配列番号70(CAG Type2 longの cDNAの配列)に基づき、MADS domainを含まないように、配列番号70の部分配列である配列番号72で表される737bの塩基配列を選出した。
上記で得られたアクチンプロモーター(CmACT promoter)の下流に、配列番号72で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA(CAG Type2 longのアンチセンス鎖の部分配列)と、配列番号71で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNA(CAG Type1 shortのアンチセンス鎖の部分配列)と、スペーサーとして配列番号81で表される塩基配列からなるDNA(GUS遺伝子の配列)と、配列番号71で表される塩基配列からなるDNA(CAG Type1 shortのセンス鎖の部分配列)と、配列番号72で表される塩基配列からなるDNA(CAG Type2 longのセンス鎖の部分配列)と、HSPterとを、この順に連結し、配列番号74で表される塩基配列からなるDNAを得た(図7)。
得られた形質転換体(5275−12系統)の花の形態を図10に示す。形質転換体(5275−12系統)の花は、コントロールのイエギクの“セイマリン”(野生型)の花と比較して、舌状花と管状花の配置は保たれており、萼と花弁の形成が繰り返される態様を伴わない、キクの花特有の形態を有する美しいものであった。
一方で、形質転換体(5275−12系統)では、雌しべが完全に花弁化しており、また雄ずいが完全に花弁化していた。その結果、形質転換体(5275−12系統)では完全不稔化されていた。
このように、本発明に係るキクは、キク特有の花の姿が持つ鑑賞性の高さと完全不稔性とを兼ね備えた非常に有用な植物体であった。
Claims (19)
- 以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能が欠損又は抑制されており、
以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能が欠損又は抑制されていることを特徴とする不稔化植物。
(1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子 - 前記CAG type1遺伝子の機能が、以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質が導入されて、欠損又は抑制されている、請求項1に記載の不稔化植物。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質 - 前記CAG type1遺伝子の機能が、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されており、
前記CAG type2遺伝子の機能が、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸が導入されて、欠損又は抑制されている、請求項1に記載の不稔化植物。 - 前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、請求項3に記載の不稔化植物。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸 - キク科の植物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の不稔化植物。
- 以下の(A)〜(C)のいずれかのCAG type1タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質。
(A)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(C)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質 - 前記ペプチドが、Leu−Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Leu−Arg−Leu−Gly−Phe−Alaで表されるアミノ酸配列からなる請求項6に記載の融合タンパク質。
- 以下の(D)〜(F)のいずれかのCAG type2タンパク質と、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有するペプチドと、が融合してなる融合タンパク質。
(D)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(E)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質
(F)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14に記載のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質 - 前記ペプチドが、Leu−Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Leu−Arg−Leu−Gly−Phe−Alaで表されるアミノ酸配列からなる請求項8に記載の融合タンパク質。
- 請求項6〜9のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする融合遺伝子。
- 更に、花において特異的に転写調節可能な転写調節領域が、前記融合タンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドに作動可能に連結された請求項10に記載の融合遺伝子。
- 請求項10又は11に記載の融合遺伝子を含むベクター。
- 請求項6又は7に記載の融合タンパク質をコードする融合遺伝子、及び請求項8又は9に記載の融合タンパク質をコードする融合遺伝子を含む請求項12に記載のベクター。
- 請求項6若しくは7に記載の融合タンパク質、又は請求項8若しくは9に記載の融合タンパク質を発現する形質転換体。
- 植物内において、
以下の(1)〜(3)のいずれかのCAG type1遺伝子の機能を欠損又は抑制させ、
以下の(4)〜(6)のいずれかのCAG type2遺伝子の機能を欠損又は抑制させることを含む、不稔化植物の作出方法。
(1)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(2)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(3)配列番号1、2、3、8、11、12、又は13で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(5)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
(6)配列番号4、5、6、7、9、10、又は14で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、且つ転写制御機能を有するタンパク質をコードする遺伝子 - 植物内において、
前記CAG type1遺伝子の機能を、請求項6又は7に記載の融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制し、
前記CAG type2遺伝子の機能を、請求項8又は9に記載の融合タンパク質を発現させることによって、欠損又は抑制する、請求項15に記載の不稔化植物の作出方法。 - 前記CAG type1遺伝子の機能を、前記CAG type1遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制し、
前記CAG type2遺伝子の機能を、前記CAG type2遺伝子の発現を欠損又は抑制させる核酸を植物に導入することによって、欠損又は抑制する、請求項15に記載の不稔化植物の作出方法。 - 前記CAG type1遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(g)〜(i)のいずれかの核酸であり、
前記CAG type2遺伝子の発現を抑制する核酸が、以下の(j)〜(l)のいずれかの核酸である、請求項17に記載の不稔化植物の作出方法。
(g)配列番号71で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(h)配列番号71で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(i)配列番号71に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type1遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(j)配列番号72で表される塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含む核酸、
(k)配列番号72で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸、
(l)配列番号72に記載の塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなるセンス鎖又はその一部と、該センス鎖又はその一部と二重鎖を形成可能なアンチセンス鎖と、を含み、前記CAG type2遺伝子の発現を抑制可能な核酸 - キク科の植物である請求項15〜18のいずれか一項に記載の不稔化植物の作出方法。
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