以下に添付図面を参照して、本実施例における紙幣取扱装置の実施の形態を詳細に説明する。以下では、例えば、紙幣取扱装置をATM(Autommated Teller Machine)などの現金自動預払機に適用した場合について説明しているが、これに限らず広く紙幣を取り扱う装置に適用することができる。さらに、例えば、紙幣に限らず、商品券などの紙媒体、硬貨、通帳、カード、明細票等を含む様々な媒体に適用することができる。
図1は、紙幣取扱装置を搭載した現金自動取引装置100の外観を示す斜視図である。この現金自動取引装置100は、銀行などの金融機関によって管理され、利用者(顧客)の操作に応じて各種取引を行うための装置である。現金自動取引装置100は、紙幣取扱装置101と、硬貨取扱装置102と、通帳取扱装置103と、カード明細票取扱装置104と、顧客操作部105と、を備えている。また、図面は省略しているが、現金自動取引装置100は、電源ユニットや、現金自動取引装置100の全体を制御するための本体制御ユニットを備えている。
図2は、現金自動取引装置100の機能ブロック図である。現金自動取引装置100は、上述した紙幣取扱装置101と、硬貨取扱装置102と、通帳取扱装置103と、カード明細票取扱装置104と、顧客操作部105と、電源ユニット106と、ホストコンピュータなどの上位装置との通信部107とが、本体制御ユニット108に接続されている。
紙幣取扱装置101は、利用者により投入された紙幣の入金処理や、利用者に紙幣を放出する出金処理等を実行する装置である。この紙幣取扱装置101については、後から詳述する。硬貨取扱装置102は、利用者により投入された硬貨の入金処理や、利用者に硬貨を放出する出金処理等を実行する。通帳取扱装置103は、通帳を取り扱い、取引に応じて、通帳に記されたマークなどの読み取りや、印字処理などを行う。カード明細票取扱装置104は、磁気ストライプカード(いわゆるキャッシュカード)に記録された情報を読み取ったり、取引に応じて、その内容を記録した取引明細票を発行したりする。顧客操作部105は、入出金取引のための情報表示及び入出金取引のための操作入力を行うための利用者とのインタフェースである。
図3は、現金自動取引装置を背面側から見た斜視図である。図3に示すように、紙幣取扱装置101は、紙幣収納庫71〜75を収納するトレイ110を備えている。紙幣収納庫71〜75は、トレイ110に収納され、紙幣取扱装置101の前後方向に一列に配置されている。これらの紙幣収納庫71〜75は、後述するように、入金紙幣を出金紙幣として用いる環流(リサイクル)紙幣を金種ごとに分類して収納するリサイクル庫、または、入金紙幣のうち出金紙幣に適さない入金リジェクト紙幣や、出金取引時に紙幣収納庫71〜75から繰り出された紙幣のうち、出金紙幣に適さない紙幣である出金リジェクト紙幣を収納するリジェクト庫、紙幣取扱装置101に装填すべき紙幣や、紙幣取扱装置101から回収した紙幣を収納するための装填回収庫としても利用される。
トレイ110は、レール116によって接続されており、トレイ110は紙幣取扱装置101の筐体600に対して、紙幣取扱装置101の前後方向にスライド移動可能となっている。このような構成により、紙幣取扱装置101の背面側から後方にトレイ110を引き出すことができる。
なお、図4に示すように、紙幣取扱装置101の上部ユニット101uを現金自動取引装置100から引き出している間は、図示しないアクチュエータによって、下部ユニットである金庫部101cをロックし、トレイ110を現金自動取引装置100から引き出せないように制御している。また、図3〜図4においては、紙幣取扱装置101を現金自動取引装置100の後面から引き出す構成として説明しているが、紙幣取引装置101を現金自動取引装置100の前面から引き出す構成としても良い。
次に、紙幣取扱装置101について詳細に説明する。紙幣取扱装置101は、上述した複数の紙幣収納庫、及び、紙幣の搬送路を、限られた内部スペースに配置し、紙幣の搬送効率や搬送信頼性の低下を抑制しつつ、これらの紙幣収納庫の一部を多目的に利用可能とするために、以下に説明する構成を備えている。
図5は、紙幣取扱装置の概略構成を示す側断面図である。紙幣取扱装置101は、上部に配置された上部ユニット101uと、下部に配置された下部ユニットである金庫部101cとから構成されている。上部ユニット101uには、利用者との紙幣の授受に必要な機構が集約されており、入金紙幣が投入されると共に、出金紙幣が集積される紙幣入出金口30と、紙幣判別部40と、一時保管庫50と、制御ユニット(図示せず)とを備えている。また、上部ユニット101uは、紙幣を双方向に搬送可能な双方向搬送路10a〜10f(以下、双方向搬送路10a〜10fをまとめて、第1の双方向搬送路10とも称す)と、第2の双方向搬送路20とを備えている。第1の双方向搬送路10及び第2の双方向搬送路20は、それぞれ、複数の搬送ローラや、これらの搬送ローラを双方向に回転させるためのモータ(図示せず)を有している。
第1の双方向搬送路10は、双方向搬送路10aの一方の端部と、双方向搬送路10fの一方の端部とが隣り合うように配置されている。すなわち、第1の双方向搬送路10における一端と他端とが隣り合うことで、環状の双方向搬送路を構成している。また、第2の双方向搬送路20は、双方向搬送路10a、及び、双方向搬送路10fにおける、隣り合ういずれかの端部に接続される。双方向搬送路10aと第2の双方向搬送路20とを接続するか、双方向搬送路10fと第2の双方向搬送路20とを接続するかは、ゲート25gによって切り換えられる。
紙幣入出金口30の内部は、仕切板31によって、紙幣繰出部30iと、紙幣集積部30oとに区分けされている。紙幣繰出部30iは、利用者によって投入された紙幣を搬送路30aに繰り出す繰出機構を備え、搬送路30a(単方向搬送路)を介して、第1の双方向搬送路10に接続されている。搬送路30aは、双方向搬送路10aと双方向搬送路10bとの接続部に合流するように接続される。また、紙幣集積部30oは、搬送路30b(単方向搬送路)から搬送されてきた紙幣を集積するための集積機構を備え、搬送路30bを介して、第1の双方向搬送路10に接続されている。搬送路30bは、双方向搬送路10dと双方向搬送路10eとの接続部から分岐するように接続される。なお、紙幣集積部30oには、紙幣集積部30oに集積された紙幣を紙幣繰出部30i側に移動させるための押圧板32が備えられている。
紙幣判別部40は、双方向搬送路10c上に配置され、双方向搬送路10bから双方向搬送路10c、あるいは、双方向搬送路10dから双方向搬送路10cに搬送されてきた各紙幣について、金種、真偽、表裏、及び、リジェクト紙幣であるか否かを識別し、その識別結果を制御ユニットに出力する。この識別は、例えば、紙幣をスキャンして得られる画像データ、紙幣の表面の凹凸形状、磁気特性、紫外線などに対する光学特性など種々の情報を利用して行うことができる。
一時保管庫50は、双方向搬送路50aを介して、第1の双方向搬送路10に接続されている。第1の双方向搬送路10と双方向搬送路50aとの接続部には、ゲート50gが配置されている。このゲート50gを切り換えることによって、双方向搬送路10eから双方向搬送路50aに紙幣を搬送するか、双方向搬送路10eから双方向搬送路10fに紙幣を搬送するかが切り換えられる。
金庫部101cには、紙幣収納庫71〜75が、紙幣取扱装置101の前後方向に一列に配置されて収納されている。
紙幣収納庫71は、搬送路71a(双方向搬送路)を介して、第2の双方向搬送路20に接続されている。紙幣収納庫71は、搬送路71aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路71aに繰り出す機構を備えている。
紙幣収納庫72は、搬送路72a(双方向搬送路)を介して、双方向搬送路10aに接続されている。そして、双方向搬送路10aと搬送路72aとの接続部には、ゲート72gが配置されている。このゲート72gを切り換えることによって、双方向搬送路10bから双方向搬送路10aに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。紙幣収納庫72は、搬送路72aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路72aに繰り出す機構を備えている。
紙幣収納庫73は、搬送路73a(双方向搬送路)を介して、双方向搬送路10aに接続されている。そして、双方向搬送路10aと搬送路73aとの接続部には、ゲート73gが配置されている。このゲート73gを切り換えることによって、双方向搬送路10bから双方向搬送路10aに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。紙幣収納庫73は、搬送路73aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路73aに繰り出す機構を備えている。
紙幣収納庫74は、搬送路74a(双方向搬送路)を介して、双方向搬送路10aに接続されている。そして、双方向搬送路10aと搬送路74aとの接続部には、ゲート74gが配置されている。このゲート74gを切り換えることによって、双方向搬送路10bから双方向搬送路10aに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。紙幣収納庫74は、搬送路74aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路74aに繰り出す機構を備えている。
紙幣収納庫75は、搬送路75a(双方向搬送路)を介して、双方向搬送路10aに接続されている。そして、双方向搬送路10aと搬送路75aとの接続部には、ゲート75gが配置されている。このゲート75gを切り換えることによって、双方向搬送路10bから双方向搬送路10aに搬送されてきた紙幣の搬送先が切り換えられる。紙幣収納庫75は、搬送路75aから搬送されてきた紙幣を上下方向に集積して収納する機構や、収納されている紙幣を搬送路75aに繰り出す機構を備えている。
なお、上述した各搬送路上には、紙幣の通過を検出するための複数のセンサが配置され、制御ユニット80によって、各搬送路上における紙幣の搬送状況が監視される。制御ユニット80は、内部にCPUや、メモリ等を備えるマイクロコンピュータとして構成され、紙幣判別部40による識別結果や、各搬送路上における紙幣の搬送状況等に基づいて、予め用意されたプログラムに従って、紙幣取扱装置101の動作を制御する。
図6は、紙幣取扱装置101の機能ブロック図である。紙幣取扱装置101は、第1の双方向搬送路10、第2の双方向搬送路20、紙幣入出金口30、紙幣判別部40、一時保管庫50、紙幣収納庫71〜75、制御ユニット80、トレイ110、ロック解除状態を検知するセンサ406に接続されている。制御ユニット80は、紙幣取扱装置101の全体を制御するためのユニットであり、本体制御ユニット108からの指示を基に各機構を制御する。
次に、図7、図8を参照して、紙幣取扱装置101における入金取引の処理動作について説明する。入金取引は、紙幣入出金口30の紙幣繰出部30iに投入された紙幣の真偽判別、金種判別、表裏判別、及び計数を行う入金計数処理と、入金計数処理を経た紙幣を紙幣収納庫71〜75に収納する入金収納処理とに分けられる。
最初に、図7を参照して、入金計数処理について説明する。紙幣入出金口30の紙幣繰出部30iにセットされた紙幣は、一枚ずつ分離され、搬送路30aへ繰り出される。搬送路30aへ繰出された紙幣は、搬送路10bより紙幣判別部40内の搬送路10cを装置の前方から後方に通過する。紙幣判別部40では、その内部に実装されたセンサによって、通過する紙幣の画像が取得され、その紙幣の真偽、金種、表裏、及び正損状態が判別される。
紙幣判別部40を通過した紙幣は、紙幣判別部40の後部から搬送路10dを通って一旦上方へ搬送される。この搬送路10dで搬送している間に、紙幣判別部40による判別が完了して、その判別結果に応じて紙幣振り分けゲート10gの切り替えが行われる。即ち、紙幣判別部40によって受け入れ可能な紙幣であると判別された場合、紙幣振り分けゲート10gは搬送路10eに接続するように切り替えられ、その紙幣は紙幣振り分けゲート50gにより、搬送路10e、50aに搬送されて一時保管庫50に集積される。一方、紙幣判別部40により受け入れ困難な紙幣であると判別された場合、紙幣振り分けゲート10gは搬送路30bに接続するように切り替えられ、その紙幣は紙幣集積部30oに戻されて集積し、利用者に返却される。
この入金計数処理の搬送において、搬送路30a、10b、10c、10d、10eの順に紙幣を搬送する場合の方向を第1の搬送方向と言い、その逆に搬送することを第2の搬送方向ということにする。
このようにして紙幣入出金口30に投入された全ての紙幣を処理し、入金された金額と紙幣取扱装置101の計数した金額とが一致し、利用者によって顧客操作部105より入金取引確定が指示入力されると、一時保管庫50に一時収納されていた紙幣は紙幣収納庫71〜75へ搬送して収納される。
なお、搬送路上の紙幣の搬送動作の起動や停止、搬送方向の切り替え、ゲートの切り替え、等の動作の制御は、制御部(図示省略)の制御により行われる(以下の説明でも同様である)。
次に、図8を参照して、入金収納処理動作について説明する。最初に、紙幣振り分けゲート10g、50gを一時保管庫50と紙幣判別部40を接続するように切り替え、紙幣振り分けゲート11gを搬送路10bと搬送路10aへ接続するように切り替える。
一時保管庫50から一枚ずつ繰出された紙幣は、搬送路50a、10e、10dを通って紙幣判別部40へ搬送される。紙幣判別部40を通過した紙幣は、搬送路10bによって搬送され、紙幣振り分けゲート11gによって搬送路10aを通じて下部へ搬送される。さらに紙幣は、搬送路10a、20によって搬送され、紙幣判別部40で判別された金種に応じて紙幣振り分けゲート72g〜75gが切り替えられて、紙幣収納庫71〜75のいずれかに収納される。
ここで、紙幣判別部40によって受け入れできない紙幣であると判別された場合、紙幣収納庫71〜75のうち、リジェクト庫に設定された紙幣収納庫へその紙幣を搬送し、集積する。その際、紙幣振り分けゲート71gを搬送路71aに接続する、あるいは、紙幣振り分けゲート72gを搬送路72aに接続する、あるいは、紙幣振り分けゲート73gを搬送路73aに接続する、あるいは、紙幣振り分けゲート74gを搬送路74aに接続する、あるいは、紙幣振り分けゲート75gを搬送路75aに接続するように切り替えられ、紙幣収納庫71〜75のうち、リジェクト庫に設定された紙幣収納庫に収納される。
このように、入金収納処理では、搬送路10e、10d、10c、10b、10a、20において、紙幣を第2の搬送方向(第1の搬送方向と逆方向)へ搬送するように動作する。
次に、図9を参照して、出金取引の処理動作について説明する。金種別に収納された紙幣収納庫71〜75から紙幣が一枚ずつ繰り出されて、搬送路10a,10b,10cを紙幣判別部40へ搬送される。紙幣判別部40で当紙幣が出金可能な紙幣か否かを判定する。判別の結果、出金可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート10gを搬送路10dと搬送路30bを接続するように切り替えて、紙幣集積部30oに紙幣を集積する。
一方、判別の結果、出金不可能な紙幣であれば、紙幣振り分けゲート10gを搬送路10dと搬送路10eを接続するように切り替えて、搬送路10f、20を通して、搬送路71aに接続する、あるいは、紙幣振り分けゲート72gを搬送路72aに接続する、あるいは、紙幣振り分けゲート73gを搬送路73aに接続する、あるいは、紙幣振り分けゲート74gを搬送路74aに接続する、あるいは、紙幣振り分けゲート75gを搬送路75aに接続するように切り替えられ、紙幣収納庫71〜75のうち、リジェクト庫に設定された紙幣収納庫に収納される。この紙幣の判別と判別結果による紙幣振り分けゲート10gの切り替え制御は、紙幣を搬送路10dに搬送している間に完了する。
紙幣の搬送動作が終了すると、紙幣入出金口30のシャッタ30sが開き、紙幣集積部30oに集積した紙幣は利用者に抜き取り可能な状態となる。利用者が紙幣を抜き取るとその旨を紙幣入出金口30に内蔵されたセンサ(図示省略)が検知してシャッタ30sを閉じ、一連の出金取引処理を終了する。
このように、出金取引処理動作では、搬送路10a、10b、10d、30b、10e、10f、10cにおいて紙幣を第1の搬送方向へ搬送し、搬送路20において紙幣を第2の搬送方向へ搬送するように動作する。
次に、図10〜図14を参照して紙幣収納庫71〜75のスタッカ構成の紙幣収納庫71〜75のロックと取り出しについて説明する。図10は、ATMを背面から見た外観斜視図であり、図11Aはトレイ110と鍵のロック機構401を示す外観斜視図である。また、図12は紙幣収納庫71〜75とロック用の凸部501の斜視図である。さらに、図13、14はスタッカ構成のトレイ110と紙幣収納庫71〜75のロック構造を示す説明図である。
図10に示すように、スタッカ構成のトレイ110の側面には、ロック機構401と、紙幣収納庫71〜75をトレイ110に固定するための規制部材402が紙幣収納庫71〜75の並び方向であるトレイ110の引き出し方向に沿って取り付けられている。この規制部材402には規制部材動作バネ403を取り付けておき、常にロック解除方向である上記引き出し方向に規制部材402を引く構成とする。図11Aに示すように、ロック機構401は鍵404と鍵の開閉に連動して動作するキープレート405が取り付けられており、このキープレート405が規制部材402の動きを制限する。このキープレート405の位置を検知するセンサ406で、ロック機構401のロック状態を検知する。センサ406は、例えば、遮光センサから構成され、発光部から発せられた光がキープレート405により遮光されると、ロック機構401のロックが解除された状態であると検知される。
図13に示すように、規制部材402には紙幣収納庫側(紙幣収納庫71〜75に向かう方向)に垂直に突出した突起402aがあり、規制部材402の突起402aが紙幣収納庫71〜75の規制部材402側の側面に取り付けられたロック用の凸部501(図12)の上部に位置する。具体的には、図13の下部に示すように、規制部材402の各紙幣収納庫が収納される位置に対応する位置に設けられた上記突起402aと、各紙幣収納庫に設けられた上記凸部501とが、互いに各紙幣収納庫の引き出し方向(図13では上下)に配置されている。上記突起402aと上記凸部501とをこのような位置関係とすることで、紙幣収納庫71〜75をトレイ110から抜き取ろうとする際にロック用の凸部501の動きを妨げ、紙幣収納庫71〜75をトレイ110に固定することができる。本例では、各紙幣収納庫を垂直上方に引き出す構成としているが、上記突起402aと上記凸部501とをこのような位置関係が維持されていれば、斜め上方等の他の方向に各紙幣収納庫を引き出す構成としてもよい。
図14に示すように、鍵404を解除すると連動してキープレート405が回転し、センサ406で、ロック解除状態を検知する。キープレート405によって動作を妨げられていた規制部材402がスライド可能となり、規制部材動作バネ403の力によって、ロック解除方向にスライドし、規制部材402の突起402aが、上記位置関係となる紙幣収納庫71〜75のロック用の凸部501の上部から退避するため、紙幣収納庫71〜75のロック用の凸部501の動きを妨げず、紙幣収納庫71〜75をトレイ110から着脱することができる。
スタッカ構成の場合、トレイ110が筐体600に収納されていないときの紙幣収納庫71〜75の着脱を可能または不可能にするような上記ロック機構が必要となることに対し、カセット構成の場合には、常時トレイ110が筐体600に収納されていないときの紙幣収納庫71〜75の着脱が可能である。したがって、紙幣収納庫71〜75がカセット構成の場合には、常に鍵404を解除したロック解除状態とすることで、常に、紙幣収納庫71〜75のロック用の凸部501の動きを妨げず、紙幣収納庫71〜75をトレイ110から着脱することができる。
又は、カセット構成では、図15に示すように、鍵404のみを取り外して、常に、紙幣収納庫71〜75のロック用の凸部501の動きを妨げず、紙幣収納庫71〜75をトレイ110から着脱することも可能である。
なお、紙幣取扱装置101が、「スタッカ構成」であるか、または「カセット構成」であるかの設定は、紙幣取扱装置101が搭載されたATMの背面に設けられた係員操作部(不図示)から入力され、設定される。入力された設定情報(「スタッカ構成」または「カセット構成」)は、メモリ等の記憶部に記憶される。紙幣取扱装置101は、センサ406がキープレート405の位置をライト状態(ロック状態)として検知している場合にのみ、動作可能となっている。制御部(不図示)は、トレイ110が上記ライト状態を検知したと判定した場合、紙幣取扱装置101が動作することを許可する。一方、制御部は、センサ406がキープレート405の位置をダーク状態(ロック解除状態)として検知したと判定した場合、紙幣取扱装置101が動作することを禁止する。ここでいう動作とは、紙幣の繰り出し、集積、搬送などの紙幣取扱装置の機械的な動作を指す。
このような構成において、上記係員操作部から「スタッカ構成」が設定されている場合、センサ406は、キープレート405により遮光されずロック機構401によりロックされた状態(ライト状態)、およびキープレート405により遮光されてロック機構401によりロックされない状態(ダーク状態)の2通りの状態を検知する。上記ダーク状態の場合にはそれぞれの紙幣収納庫71〜75がロックされず、抜き取り可能な状態である。したがって、上記制御部は、センサ406が上記ダーク状態である場合には、紙幣取扱装置101の動作を禁止する。一方、センサ406が上記ライト状態である場合には、ロック機構401がロック状態であり、紙幣収納庫71〜75を抜き取ることはできない。したがって、この場合には、上記制御部は、トレイ110内の紙幣収納庫71〜75の収納状態は正常であると判断し、紙幣取扱装置101の動作を許可する。
他方、上記係員操作部から「カセット構成」が設定されている場合、センサ406は、キープレート405により遮光されずライト状態の1通りの状態しか検知しない。したがって、上記制御部は、センサ406が上記ダークを検知していると判定した場合、本来の使用状態ではないため紙幣取扱装置101が異常な状態であると判断し、紙幣取扱装置101の動作を禁止する。言い換えれば、紙幣収納庫71〜75がカセット構成である場合、トレイ110が筐体600に収納されている場合にはセンサ406を常時上記ライト状態とすることでいつでも紙幣取扱装置101の動作を許可する。
このように、スタッカ構成とカセット構成とを切り替えて運用可能な紙幣収納庫を収納するトレイを備えた紙幣取扱装置において、係員操作部から設定されたとおりに紙幣収納庫のロック状態が物理的に正しく設定された状態になっていない場合であっても、物理的な状態を優先し、正常な運用でない場合には紙幣取扱装置101の動作を禁止する。したがって、物理的に鍵をかけ忘れてカセットやトレイを筐体に収納した状態でパネルからの設定が誤っていた場合でも、紙幣取扱装置101の動作を禁止することができる。このような状態で紙幣取扱装置の動作を許可したり禁止したりすることで、紙幣取扱装置101の動作中のアクセス制限が正しく設定され、維持されていることがわかる。
さらに、図示はしていないが、トレイ110にセットされている紙幣収納庫71〜75のうち任意の紙幣収納庫のロック用の凸部501のみを取り外す、又は任意の紙幣収納庫に対応する規制部材402の突起402aを取り外すことで、部分的にカセット構成とすることが可能である。例えば、図10に示した紙幣収納庫71〜75のうち、紙幣収納庫71、72に対応する位置に設けられた上記突起402aを設けない構成とし、他の紙幣収納庫73〜75が上記ロック状態となる場合であっても紙幣収納庫71、72を抜き取り可能としてもよい。あるいは、紙幣収納庫71、72に上記凸部501を設けない構成とし、他の紙幣収納庫73〜75が上記ロック状態となる場合であっても紙幣収納庫71、72を抜き取り可能としてもよい。
また、紙幣収納庫71〜75に取り付けたロック用の凸部501は、紙幣収納庫とは別の部材として設けられている必要はなく、例えば、紙幣収納庫71〜75に突起形状を有している場合には当該突起形状を利用しても良く、規制部材402に実装している突起402aは、着脱可能なピンであっても良い。
また、図4に示したように、紙幣取扱装置101が上部ユニット101uを有し、その下部にトレイ110が設けられている場合、上部ユニット101uが引き出されていると、トレイ110に収納されている紙幣収納庫71〜75が露出した状態となり、誰もが紙幣収納庫71〜75にアクセス可能となってしまう。そこで、トレイ110が筐体600に収納されている状態では、筐体600の内部側面で、収納時ロック部材407をロック方向であるトレイ110の引き出し方向にスライドさせて、紙幣収納庫71〜75の抜き取りができないようにトレイ110に固定してもよい。
図11Bは、このような他の例におけるトレイ110と鍵のロック機構401を示す外観斜視図である。図11Bに示すように、トレイ110には、収納時ロック部材407が設けられている。収納時ロック部材407は、トレイ110を収納するときに、筐体600のトレイ110の収納面に設けられた筐体突起部(不図示)から、トレイ110を収納するときの押し込み力に反発する力Pを受ける。収納時ロック部材407が、筐体600から上記反発する力を受けると、一端が収納時ロック部材407に連結されているアームAがトレイ110の収納方向に回転し、アームAの他端に連結されている規制部材402がトレイ110の収納方向Xにスライドする。したがって、例えば、ロック機構401の鍵404をかけ忘れて図14のようにロック解除状態のままトレイ110が筐体600に収納された場合であっても、規制部材402のみが収納時ロック部材407から上記反発する力Pを受けて収納方向にスライドし、図13のように、上記突起402aと上記凸部501とが互いに各紙幣収納庫の引き出し方向に配置された位置関係としてロック状態とすることができる。したがって、鍵404をかけ忘れてトレイ110を収納した場合において上部ユニット101uが引き出されてトレイ110内の紙幣収納庫71〜75が露出した場合であっても、ロック状態を維持することができ、紙幣収納庫71〜75の抜き去りを防止することができる。
このように、本実施例では、紙幣収納庫をカセット構成またはスタッカ構成として切り替えて運用可能な紙幣取扱装置101において、外側面にロック用の凸部501(第1の凸部)を有した紙幣収納庫と、紙幣収納庫を収納するトレイ110と、トレイ110を収納し、トレイ110を引き出し方向に引き出し可能な筐体600と、紙幣収納庫側の側面に設けられた突起402a(第2の凸部)を有し、引き出し方向に移動可能な規制部材402と、規制部材402を、第2の凸部がトレイ110に収納された紙幣収納庫の第1の凸部に対応する位置となるロック状態と、第2の凸部がトレイ110に収納された紙幣収納庫の第1の凸部に対応しない位置となるロック解除状態とに切り替えて保持するロック機構401と、ロック機構401のロック状態またはロック解除状態を検知するセンサ406と、カセット構成またはスタッカ構成のいずれかで運用されている紙幣収納庫に対してセンサ406による検知状態を判定する制御部と、を備える。したがって、紙幣取扱装置に対してスタッカ構成とカセット構成を切り替え使用し、アクセス制限が正しく設定、維持されていることを検出できる。
また、筐体600に収納されたトレイ110の紙幣収納庫をロックする収納時ロック部材407をさらに備え、収納時ロック部材407がトレイ110の収納時の押し込み力に反発する力を筐体600から受けて規制部材402がロック状態に切り替わる。したがって、ロック解除状態のままトレイ110が収納された場合でもトレイ110の筐体600への収納に伴ってロック状態とすることができる。
また、トレイ110は、1又は複数の紙幣収納庫を収納し、規制部材402は、1又は複数の紙幣収納庫のそれぞれに設けられた第1の凸部に対応する位置に第2の凸部が設けられている。したがって、トレイ110が1又は複数の紙幣収納庫を収納する場合でもそのそれぞれに対してセンサ406による検知状態を判定することができる。
また、ロック機構401は、規制部材402をロック状態またはロック解除状態にするためのキープレート405を有し、鍵操作により当該キープレート405をトレイ110の引き出し方向にスライドさせることによりロック状態とロック解除状態とを切り替える。したがって、簡素な構成でロック状態とロック解除状態との切り替えが可能となる。
また、トレイ110は、1又は複数の紙幣収納庫を収納し、規制部材402は、1又は複数の紙幣収納庫のそれぞれに設けられた第1の凸部に対応する位置に第2の凸部が設けられ、ロック機構401は、第1の凸部または第2の凸部ごとに設けられている。したがって、それぞれの紙幣収納庫に対応する第2の凸部について鍵操作によりロック状態とロック解除状態とを切り替えることができる。
なお、本実施例で示した紙幣取扱装置は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、紙幣、硬貨、通帳、カードや他の重要媒体の媒体取扱装置に実施の形態を得ることができる。