JP6711278B2 - イソプレノイド化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イソプレンモノマー等のイソプレノイド化合物の製造方法などに関する。
タイヤ及びゴム製造業界において、天然ゴムは非常に重要な原材料である。新興国を中心とするモータリゼーションで今後需要が拡大していく中で、森林伐採規制やパームとの競合で農園拡大は容易でないことから天然ゴムの収量増加は見込みにくく、天然ゴムの需給バランスはタイトになっていくことが予想される。天然ゴムに代わる材料として、合成ポリイソプレンがある。その原料は、イソプレンモノマー(本明細書中、単に「イソプレン」と呼ばれる)である。イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)は、主にナフサのクラッキング解により得られたC5留分から抽出することで得られる。しかし近年、クラッカーのフィードのライト化に伴い、イソプレンの生産量は減少傾向にあり、供給が懸念されている。また、近年では石油価格の変動の影響も強く受けることから、イソプレンの安定した確保のために、非石油資源由来でイソプレンを安価に生産する系の確立が要望されている。
このような要望に対して、イソプレン生産能を付与した微生物および誘導剤を用いてイソプレンを発酵法にて生産する方法が知られている(特許文献1)。
また、誘導剤の代わりに、光または温度等の環境因子を利用する方法が知られている。例えば、光を利用してイソプレンを生産する方法(非特許文献1)、および温度を利用して、目的タンパク質(例、インターフェロンγ、インスリン)を生産する方法が知られている(非特許文献2)。
国際公開第2009/076676号
Pia Lindberg,Sungsoon Park,Anastasios Melis,Metabolic Engineering 12(2010):70−79 Norma A Valdez−Cruz,Luis Caspeta,Nestor O Perez,Octavio T Ramirez,Mauricio A Trujillo−Roldan,Microbial Cell Factories 2010,9:18 TL Sivy, R Fall, TN Rosenstiel, Biosci Biotechnol Biochem, Jan 2011; 75(12): 2376−83. Martin V, Pitera D, Withers S, Newman J, Keasling J, Nat. Biotechnol., 21, 796−802, 2003
特許文献1や非特許文献1−4に記載されるように、イソプレンを含むイソプレノイド化合物を微生物により生産する場合、メバロン酸(MVA)経路やメチルエリスリトール(MEP)経路が利用される。イソプレノイド化合物の生産量を向上させるためにMVA経路の代謝流量を増加させることにより、微生物の増殖が阻害され得る(非特許文献3,4)。微生物の増殖を回避するために、微生物の増殖期と物質の生成期を分ける方法が有効であり得る。発酵法による物質生産において、微生物の増殖と物質の生産を行う期間を分離する概念は知られたものである(発酵ハンドブック,財団法人バイオインダストリー協会、発酵と代謝研究会(編)、2001年)。この概念を達成するためには、微生物の増殖期から物質の生成期への移行を行うための手段、及び、物質の生成期にて物質を生産し続けるための手段が要求される。イソプレン発酵においては、誘導剤を添加する事でイソプレンを生産する微生物を用いて、誘導剤非添加条件で増殖させ、充分の菌体量を確保した後に、誘導剤を添加し、イソプレンを生成させる例が知られている(特許文献1)。誘導剤としては、IPTG(イソプロピル β−D−1−チオガラクトピラノシド)やテトラサイクリンなどが使用できる。IPTGやテトラサイクリンが培養槽内に存在する場合に、微生物はイソプレンを製造する活性を持ち続けるが、やがて、IPTGやテトラサイクリンが分解することにより微生物がイソプレンの生産能を保持できなくなる。そのため、継続的にIPTGやテトラサイクリンを添加しなくてはならない。しかし、これらの誘導剤は高価であり、イソプレンの製造費を上げる事から、誘導剤を添加しない製造プロセスの構築が望まれる。
誘導剤を使用せずにイソプレン生成期へと移行する方法としては、強光下で転写活性が上昇するプロモーターを用いて、光の強度を上げる事によりイソプレン生産を誘導する手法が、藍藻などで報告されている(非特許文献1)。この方法を利用可能な微生物は、光応答型の代謝スイッチ機能を有する微生物や光合成が可能な微生物に限定される。
イソプレンとは異なるが、誘導剤を使用しない物質生産の例としてEscherichia coliではインターフェロンγやインスリンなどのタンパク質を発酵法にて生産する際に、微生物の増殖期からタンパク質の生成期への移行を、培養温度を上昇させる(30℃から42℃)事で可能にしている(非特許文献2)。この方法はタンパク質生産に有効である一方、42℃という培養温度はE.coliの至適代謝速度を示す温度から乖離しており、グルコースなどの基質の消費速度を低下させる。本手法をイソプレン発酵に適用した場合、二つの培養温度条件を使用する発酵プロセスとなるため、菌体増殖、もしくは、イソプレン発酵を利用しようとする宿主の至適代謝速度から乖離した条件で培養することが要求される。その結果、発酵生産プロセス全体を見た場合、至適代謝速度を示す温度のみで培養を行う発酵生産プロセスと比較して、温度を上昇させる培養条件におけるイソプレン生産性は低下することが懸念される。
このように、誘導剤を使用せずにイソプレンの生成期へ微生物を移行させる方法、及びその生成期にてイソプレンの生産活性を維持することが求められている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、先ず、増殖促進剤の十分な濃度下でイソプレノイド化合物生成微生物を増殖させ、次いで、増殖促進剤の濃度を減少させることにより、イソプレン等のイソプレノイド化合物を効率的に生成できることを見出した。本発明者らはまた、発酵微生物の酸素消費速度と発酵槽への酸素供給速度がほぼ等しい培養制御条件や培養液中に一定濃度以下のリン酸が存在する場合においてイソプレノイド化合物の生成を実現できる事などを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕以下を含む、イソプレノイド化合物の製造方法:
1)十分な濃度の増殖促進剤の存在下でイソプレノイド化合物生成微生物を培養して、イソプレノイド化合物生成微生物を増殖させること;
2)増殖促進剤の十分な濃度を減少させて、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生成を誘導すること;および
3)イソプレノイド化合物生成微生物を培養してイソプレノイド化合物を生成すること。
〔2〕イソプレノイド化合物生成微生物が、増殖促進剤逆依存性プロモーターに依存してイソプレノイド化合物を生成する能力を有する、上記方法。
〔3〕増殖促進剤が酸素である、上記方法。
〔4〕イソプレノイド化合物生成微生物が好気性微生物である、上記方法。
〔5〕前記プロモーターが微好気誘導型プロモーターである、上記方法。
〔6〕微好気誘導型プロモーターが、乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のプロモーター、またはα−アセトラクテイトデカルボシラーゼをコードする遺伝子のプロモーターである、上記方法。
〔7〕イソプレノイド化合物がモノテルペンであり、イソプレノイド化合物生成微生物がモノテルペン生成微生物である、上記方法。
〔8〕イソプレノイド化合物がリモネンであり、イソプレノイド化合物生成微生物がリモネン生成微生物である、上記方法。
〔9〕イソプレノイド化合物がリナノールであり、イソプレノイド化合物生成微生物がリナノール生成微生物である、上記方法。
〔10〕イソプレノイド化合物がイソプレンモノマーであり、イソプレノイド化合物生成微生物がイソプレン生成微生物である、上記方法。
〔11〕以下を含む、イソプレノイド化合物の製造方法:
1’)イソプレノイド化合物生成微生物を含む液相、および気相を備える系における液相中に酸素を供給して、十分な濃度の溶存酸素の存在下でイソプレノイド化合物生成微生物を増殖させること;
2’)液相中の溶存酸素濃度を減少させて、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生成を液相中で誘導すること;
3’)イソプレン生成微生物を液相中で培養してイソプレノイド化合物を生成すること;および
4’)イソプレノイド化合物を回収すること。
〔12〕上記イソプレノイド化合物がイソプレンである、上記方法。
〔13〕気相中の酸素濃度が液相中の溶存酸素濃度に依存して制御され、
液相中の溶存酸素濃度を減少させて、気相中でのイソプレン爆発を回避する、上記方法。
〔14〕2’)および3’)において、液相中の溶存酸素濃度が0.34ppm以下である、上記方法。
〔15〕誘導期のイソプレン生成速度が80ppm/vvm/h以下である、上記方法。
〔16〕増殖促進剤がリン化合物である、上記方法。
〔17〕前記プロモーターがリン欠乏型誘導プロモーターである、上記方法。
〔18〕リン欠乏誘導型プロモーターが、酸性フォスファターゼをコードする遺伝子のプロモーター、またはリン取り込み担体をコードする遺伝子のプロモーターである、上記方法。
〔19〕50mg/L以下の総リン濃度の存在下でイソプレノイド生成微生物によるイソプレノイドの生成が誘導される、上記方法。
〔20〕誘導期のイソプレノイド生成速度が600ppm/vvm/h以下である、上記方法。
〔21〕上記イソプレノイド化合物がイソプレンである、上記方法。
〔22〕イソプレノイド化合物生成微生物が、メチルエリスリトールリン酸経路によるジメチルアリル二リン酸の合成能を有する、上記方法。
〔23〕イソプレノイド化合物生成微生物が、メバロン酸経路によるジメチルアリル二リン酸の合成能を有する、上記方法。
〔24〕イソプレノイド化合物生成微生物が、腸内細菌科に属する微生物である、上記方法。
〔25〕イソプレノイド化合物生成微生物が、パントエア属、エンテロバクター属またはエシェリヒア属に属する微生物である、上記方法。
〔26〕イソプレノイド化合物生成微生物が、パントエア・アナナティス、エンテロバクター・アエロゲネスまたはエシェリヒア・コリである、上記方法。
〔27〕以下(I)および(II)を含む、イソプレンポリマーの製造方法:
(I)上記方法によりイソプレンモノマーを生成すること;
(II)イソプレンモノマーを重合してイソプレンポリマーを生成すること。
〔28〕上記方法により製造されるイソプレンモノマーに由来するポリマー。
〔29〕上記ポリマーを含むゴム組成物。
〔30〕上記ゴム組成物を使用することにより製造されるタイヤ。
本発明によれば、高価な誘導剤を用いずに微生物の増殖期とイソプレノイド化合物の生成期とを分けてイソプレノイド化合物を安価に製造することができる。
図1は、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08/Para)および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08/Para)の培養における溶存酸素(DO)濃度の経時的測定を示す図である。 図2は、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08/Para)および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08/Para)の培養による、(A)増殖、ならびに(B)イソプレン生成量(mg/Batch)を示す図である。 図3は、微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08/Para)の培養における溶存酸素(DO)濃度の経時的測定を示す図である。 図4は、溶存酸素の各種濃度条件下における微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08/Para)の培養による、(A)増殖、ならびに(B)イソプレン生成量(mg/Batch)を示す図である。 図5は、E.coli Paraプロモーターおよびリプレッサー遺伝子araCの制御下にあるE.faecalis由来mvaESオペロンを保有するpAH162−Para−mvaESプラスミドを示す図である。 図6は、pAH162−mvaESのマップを示す図である。 図7は、pAH162−MCS−mvaES染色体固定用プラスミドを示す図である。 図8は、(A)PlldD、(B)PphoC、または(C)PpstSの転写制御下にあるmvaES遺伝子を保持する染色体固定用プラスミドのセットを示す図である。 図9は、pAH162−λattL−KmR−λattRベクターの構築の概要を示す図である。 図10は、pAH162−Ptac染色体固定用発現ベクターを示す図である。 図11は、化学合成により得られたKDyIオペロン中のコドン最適化を示す図である。 図12は、コドン最適化したKDyIオペロンを保持する、(A)pAH162−Tc−Ptac−KDyI、および(B)pAH162−Km−Ptac−KDyIの染色体固定プラスミドを示す図である。 図13は、M.paludicola由来のメバロン酸キナーゼ遺伝子を保持する染色体固定プラスミドを示す図である。 図14は、(A)ΔampC::attBphi80、(B)ΔampH::attBphi80、および(C)Δcrt::attBphi80のゲノム改変体のマップを示す図である。 図15は、(A)Δcrt::pAH162−Ptac−mvk(X)、および(B)Δcrt::Ptac−mvk(X)のゲノム改変物のマップを示す図である。 図16は、(A)ΔampH::pAH162−Km−Ptac−KDyI、(B)ΔampC::pAH162−Km−Ptac−KDyI、および(C)ΔampC::Ptac−KDyIの染色体改変物のマップを示す図である。 図17は、(A)ΔampH::pAH162−Px−mvaES、および(B)ΔampC::pAH162−Px−mvaESの染色体改変物のマップを示す図である。 図18は、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM)およびリン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC/ispSM、SWITCH−PpstS/ispSM)の培養における総リン濃度の経時的測定を示す図である。 図19は、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM)およびリン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC/ispSM、SWITCH−PpstS/ispSM)の培養による、(A)増殖、および(B)イソプレン生成量(mg/Batch)を示す図である。 図20は、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM)およびリン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC/ispSM、SWITCH−PpstS/ispSM)の培養における発酵ガス中のイソプレン濃度(ppm)を示す図である。 図21は、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM)および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−lld/ispSM)の培養における溶存酸素(DO)濃度の経時的測定を示す図である。 図22は、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM)および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−lld/ispSM)の培養による、(A)増殖、(B)イソプレン生成量(mg/Batch)、および(C)イソプレン生成量(ppm)を示す図である。 図23は、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM)および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−lld/ispSM)の培養における発酵ガス中のイソプレン濃度(ppm)を示す図である。 図24は、気相(ヘッドスペース)中におけるイソプレンの爆発限界および臨界酸素濃度を示す図である(US8420360B2より抜粋)。 図25は、グルコースデヒドロゲナーゼ(gcd)遺伝子が破壊されたリン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC Δgcd/ispSM)の培養による、(A)増殖、および(B)イソプレン生成量(mg/Batch)を示す図である。 図26は、gcd遺伝子が破壊されたリン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC Δgcd/IspSM)の培養液中のグルコン酸蓄積の経時変化を示す図である。
本発明は、イソプレノイド化合物の製造方法を提供する。
イソプレノイド化合物は、分子式(Cを有する1以上のイソプレン単位からなる。イソプレン単位の前駆体は、イソペンテニルピロリン酸、またはジメチルアリルピロリン酸である。30,000種のイソプレノイド化合物が同定されており、新たな化合物が同定されている。イソプレノイド化合物は、「テルペン」または「テルペノイド」とも呼ばれる。テルペンとテルペノイドとの相違は、テルペンが炭化水素であるのに対し、テルペノイドはさらなる官能基を含む点にある。テルペンは、分子中のイソプレン単位数により分類される〔例えば、ヘミテルペン(C5)、モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、セステルテルペン(C25)、トリテルペン(C30)、セスカルテルペン(C35)、テトラテルペン(C40)、ポリテルペン、ノルイソプレノイド〕。モノテルペンとしては、例えば、ピネン、ネロール、シトラール、カンファー、メントール、リモネン、およびリナロールが挙げられる。セスキテルペンとしては、例えば、ネロリドール、およびファルネソールが挙げられる。ジテルペンとしては、例えば、フィトール、およびビタミンA1が挙げられる。スクアレンはトリテルペンの例であり、カロテン(プロビタミンA1)はテトラテルペンである(Nature Chemical Biology 2,674〜681(2006);Nature Chemical Biology 5,283〜291(2009);Nature Reviews Microbiology 3,937〜947(2005);Adv Biochem Eng Biotechmol(DOI:10.1007/10_2014_288)。不規則なイソプレノイドおよびポリテルペンが報告されており、これらもイソプレノイド化合物に含まれる。「イソプレノイド」、「イソプレノイド化合物」、「テルペン」、「テルペン化合物」、「テルペノイド」、および「テルペノイド化合物」という表現は、本明細書で互換的に使用される。
好ましくは、イソプレノイド化合物は、イソプレン(モノマー)である。
本発明の方法は、以下の1)〜3)を含む。
1)十分な濃度の増殖促進剤の存在下でイソプレノイド化合物生成微生物を培養して、イソプレン生成微生物を増殖させること;
2)増殖促進剤の濃度を減少させて、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生成を誘導すること;および
3)イソプレノイド化合物生成微生物を培養してイソプレノイド化合物を生成すること。
イソプレノイド化合物合成の基質であるIPP(isopentenyl diphosphate)またはDMAPP(dimethylallyl diphosphate)は、ペプチドグリカンや電子受容体(メナキノン等)の前駆体であり、微生物の増殖に必須であることが知られている(Fujisaki et al.,J.Biochem.,1986;99:1137−1146)。本発明は、効率的なイソプレノイド化合物の製造の観点から、微生物の増殖期に対応する工程1)、およびイソプレノイド化合物の生成期に対応する工程3)が分離される。また、微生物の増殖期からイソプレノイド化合物の生成期に移行させるため、イソプレノイド化合物生成の誘導期に対応する工程2)を含む。
本発明では、増殖促進剤とは、微生物により消費され得る、微生物の増殖に必須の因子または微生物の増殖の促進作用を有する因子であって、微生物により消費され培地中の量が減少すると微生物の増殖が喪失または低減するものをいう。例えば、ある量の増殖促進剤を用いた場合、その量の増殖促進剤が消費されるまで微生物は増殖し続けるが、一旦増殖促進剤が全て消費されると、微生物は増殖し得ず、または増殖速度が低下し得る。したがって、増殖促進剤により、微生物の増殖の程度を調節することができる。このような増殖促進剤としては、例えば、酸素(ガス)等の物質;鉄、マグネシウム、カリウム、カルシウムのイオン等のミネラル;リン酸(例、モノリン酸、ニリン酸、ポリリン酸)またはその塩等のリン化合物;アンモニア、硝酸、亜硝酸、尿素等の窒素化合物(ガス);硫酸アンモニウム、チオ硫酸等の硫黄化合物;ビタミン(例、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、アスコルビン酸)、およびアミノ酸(例、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチヂン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、セレノシステイン)等の栄養素が挙げられる。本発明の方法では、1種の増殖促進剤を用いてもよいし、2種以上の増殖促進剤を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、イソプレノイド化合物生成微生物とは、増殖促進剤に依存して増殖する能力、および増殖促進剤逆依存プロモーターに依存してイソプレノイド化合物を生成する能力を有する、酵素反応によるイソプレノイド化合物合成能を付与された微生物をいい得る。イソプレノイド化合物生成微生物は、イソプレノイド化合物生成微生物の増殖に十分な濃度の増殖促進剤の存在下で、増殖できる。ここで、「十分な濃度」とは、イソプレノイド化合物生成微生物の増殖に有効な濃度で増殖促進剤が用いられることをいい得る。表現「増殖促進剤逆依存プロモーターに依存してイソプレノイド化合物を生成する能力」とは、相対的に高い濃度の増殖促進剤の存在下では、イソプレノイド化合物を生成できず、またはイソプレノイド化合物の生成効率が低いが、相対的に低い濃度の増殖促進剤の存在下または増殖促進剤の不在下では、イソプレノイド化合物を生成できること、またはイソプレノイド化合物の生成効率が高いことを意味し得る。したがって、本発明で用いられるイソプレノイド化合物生成微生物は、十分な濃度の増殖促進剤の存在下では、良好に増殖し得るが、イソプレノイド化合物を生成できず、またはイソプレノイド化合物の生成効率が低い。イソプレノイド化合物生成微生物はまた、不十分な濃度の増殖促進剤の存在下または増殖促進剤の不在下では、良好に増殖し得ないが、イソプレノイド化合物を生成でき、またはイソプレノイド化合物の生成効率が高い。好ましくは、イソプレノイド化合物生成微生物は、イソプレン生成微生物である。
このようなイソプレノイド化合物生成微生物では、イソプレノイド化合物合成酵素遺伝子が増殖促進剤逆依存性プロモーターの制御下にあり得る。表現「増殖促進剤逆依存性プロモーター」とは、相対的に高い濃度の増殖促進剤の存在下では、転写活性を有しない、または低い転写活性を有するが、相対的に低い濃度の増殖促進剤の存在下または増殖促進剤の不在下では、転写活性を有する、または高い転写活性を有するプロモーターを意味し得る。したがって、増殖促進剤逆依存性プロモーターは、イソプレノイド化合物生成微生物の増殖に十分な濃度の増殖促進剤の存在下では、イソプレノイド化合物合成酵素遺伝子の発現を抑制でき、一方、イソプレノイド化合物生成微生物の増殖に不十分な濃度の増殖促進剤の存在下では、イソプレノイド化合物合成酵素遺伝子の発現を促進できる。具体的には、イソプレノイド化合物生成微生物は、増殖促進剤逆依存性プロモーターの制御下にあるイソプレノイド化合物合成酵素遺伝子を含む発現ベクターで形質転換された微生物である。イソプレノイド化合物合成酵素遺伝子とは、イソプレノイド化合物の合成に関与する1以上の酵素をコードする1以上の遺伝子をいう。イソプレノイド化合物合成酵素遺伝子としては、例えば、イソプレンシンターゼ遺伝子、ゲラニル二リン酸シンターゼ遺伝子、ファルネシル二リン酸シンターゼ遺伝子、リナロールシンターゼ遺伝子、アモルファ−4,11−ジエン合成酵素遺伝子、β−カリオフィレン合成酵素遺伝子、ゲルマクレンA合成酵素遺伝子、8−エピセドロール合成酵素遺伝子、バレンセン合成酵素遺伝子、(+)−δ−カジネン合成酵素遺伝子、ゲルマクレンC合成酵素遺伝子、(E)−β−ファルネセン合成酵素遺伝子、カスベン合成酵素遺伝子、ベチスピラジエン合成酵素遺伝子、5−epi−アリストロケン合成酵素遺伝子、アリストロケン合成酵素遺伝子、フムレン合成酵素遺伝子、(E、E)−α−ファルネセン合成酵素遺伝子、(−)−β−ピネン合成酵素遺伝子、γ−テルピネン合成酵素遺伝子、リモネンサイクラーゼ遺伝子、リナロール合成酵素遺伝子、1、8−シネオール合成酵素遺伝子、サビネン合成酵素遺伝子、E−α−ビザボレン合成酵素遺伝子、(+)−ボルニル二リン酸合成酵素遺伝子、レボピマラジエン合成酵素遺伝子、アビエタジエン合成酵素遺伝子、イソピマラジエン合成酵素遺伝子、(E)−γ−ビザボレン合成酵素遺伝子、タキサジエン合成酵素遺伝子、コパリルジホスファート合成酵素遺伝子、カウレン合成酵素遺伝子、ロンギホレン合成酵素遺伝子、γ−フムレン合成酵素遺伝子、δ−セリネン合成酵素遺伝子、β−フェランドレン合成酵素遺伝子、リモネン合成酵素遺伝子、ミルセン合成酵素遺伝子、テルピノレン合成酵素遺伝子、(−)−カンフェン合成酵素遺伝子、(+)−3−カレン合成酵素遺伝子、syn‐コパリルジホスファート合成酵素遺伝子、α−テルピネオール合成酵素遺伝子、syn−ピマラ−7、15、−ジエン合成酵素遺伝子、ent−サンダラコピマラジエン合成酵素遺伝子、ステマル−13−エン合成酵素遺伝子、E−β−オシメン合成酵素遺伝子、S−リナロール合成酵素遺伝子、ゲラニオール合成酵素遺伝子、epi−セドロール合成酵素遺伝子、α−ジンギベレン合成酵素遺伝子、グアイアジエン合成酵素遺伝子、カスカリラジエン合成酵素遺伝子、cis−ムウロラジエン合成酵素遺伝子、アフィジコラン−16b−オール合成酵素遺伝子、エリザベスアトリエン合成酵素遺伝子、サンタロール合成酵素遺伝子、パチュロール合成酵素遺伝子、ジンザノール合成酵素遺伝子、セドロール合成酵素遺伝子、スクラレオール合成酵素遺伝子、コパロール合成酵素遺伝子、マノオール合成酵素遺伝子、リモネンモノオキシゲナーゼ遺伝子、カルベオールデヒドロゲナーゼ遺伝子が挙げられるが、イソプレンシンターゼ遺伝子、ゲラニル二リン酸シンターゼ遺伝子、ファルネシル二リン酸シンターゼ遺伝子、リナロールシンターゼ遺伝子、及びリモネン合成酵素遺伝子が好ましい。
例えば、増殖促進剤が酸素である場合、微好気誘導型プロモーターを利用することができる。微好気誘導型プロモーターとは、微好気条件下で下流遺伝子の発現を促進できるプロモーターをいい得る。一般的に、飽和溶存酸素濃度は7.22ppmである(気圧760mmHg、温度33℃、酸素20.9%の水蒸気が飽和した大気中)。微好気条件とは、(溶存)酸素濃度0.35ppm以下の条件をいい得る。微好気条件下の(溶存)酸素濃度は、0.30ppm以下、0.25ppm以下、0.20ppm以下、0.15ppm以下、0.10ppm以下、または0.05ppm以下であってもよい。微好気誘導型プロモーターとしては、例えば、D−またはL−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(例、lld、ldhA)のプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(例、adhE)のプロモーター、ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードする遺伝子(例、pflB)のプロモーター、およびα−アセトラクテイトデカルボシラーゼをコードする遺伝子(例、budA)のプロモーターが挙げられる。
また、増殖促進剤がリン化合物である場合、リン欠乏誘導型プロモーターを利用することができる。表現「リン欠乏誘導型プロモーター」とは、低濃度のリン化合物で下流遺伝子の発現を促進できるプロモーターをいい得る。低濃度のリン化合物とは、(遊離)リン濃度100mg/L下の条件をいい得る。表現「リン」は、表現「リン化合物」と同義であり、それらは交換可能な様式で使用され得る。総リン濃度は、溶液中の全種のリン化合物を、強酸あるいは酸化剤によってオルトリン酸態リンに分解して定量可能である。リン欠乏条件下の総リン濃度は、50mg/L以下、10mg/L以下、5mg/L以下、1mg/L以下、0.1mg/L以下、または0.01mg/L以下であってもよい。リン欠乏誘導型プロモーターとしては、例えば、アルカリフォスファターゼをコードする遺伝子(例、phoA)のプロモーター、酸性フォスファターゼをコードする遺伝子(例、phoC)のプロモーター、センサーヒスチジンキナーゼをコードする遺伝子(例、phoR)のプロモーター、レスポンスレギュレーターをコードする遺伝子(例、phoB)のプロモーター、およびリン取り込み担体をコードする遺伝子(例、pstS)のプロモーターが挙げられる。
増殖促進剤がアミノ酸である場合、アミノ酸欠乏誘導型プロモーターを利用することができる。アミノ酸欠乏誘導型プロモーターとは、低アミノ酸濃度で下流遺伝子の発現を促進できるプロモーターをいい得る。低アミノ酸濃度とは、(遊離)アミノ酸またはその塩の濃度が100mg/L以下である条件をいい得る。アミノ酸欠乏条件下の(遊離)アミノ酸またはその塩の濃度は、50mg/L以下、10mg/L以下、5mg/L以下、1mg/L以下、0.1mg/L以下、または0.01mg/L以下であってもよい。アミノ酸欠乏型プロモーターとしては、例えば、トリプトファンリーダーペプチドをコードする遺伝子(例、trpL)のプロモーター、およびN−アセチルグルタメイトシンターゼをコードする遺伝子(例、ArgA)のプロモーターが挙げられる。
イソプレノイド化合物生成微生物は、イソプレンシンターゼ等のイソプレノイド化合物合成酵素発現ベクターで宿主微生物を形質転換することにより得ることができる。イソプレンシンターゼとしては、例えば、葛(Pueraria montana var.lobata)、ポプラ(Populus alba x Populus tremula)、ムクナ(Mucuna bracteata)、ヤナギ(Salix)、ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)、フジ(Wisterria)、ユーカリ(Eucalyptus globulus)、茶ノ木(Melaleuca alterniflora)由来のイソプレンシンターゼが挙げられる(例、Evolution 67 (4),1026−1040(2013)を参照)。イソプレノイド化合物合成酵素発現ベクターは、組込み型(integrative)ベクターであっても、非組込み型ベクターであってもよい。発現ベクターにおいて、イソプレノイド化合物合成酵素をコードする遺伝子は、増殖促進剤逆依存プロモーターの制御下に配置され得る。
遺伝子、プロモーター等の核酸配列、またはタンパク質等のアミノ酸配列について本明細書中で用いられる語句「由来」は、微生物により天然またはネイティブに合成される、あるいは天然または野生型の微生物から単離され得る核酸配列またはアミノ酸配列を意味し得る。
イソプレノイド化合物生成微生物は、イソプレノイド化合物合成酵素に加えて、メバロン酸キナーゼをさらに発現していてもよい。したがって、イソプレノイド化合物生成微生物は、メバロン酸キナーゼ発現ベクターで形質転換されていてもよい。メバロン酸キナーゼ遺伝子としては、例えば、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)等のメタノサルシナ(Methanosarcina)属、メタノセラ・パルディコラ(Methanocella paludicola)等のメタノセラ(Methanocella)属、コリネバクテリウム・ヴァリアビル(Corynebacterium variabile)等のコリネバクテリウム(Corynebacterium)属、メタノセタ・コンキリ(Methanosaeta concilii)等のメタノセタ(Methanosaeta)属、およびニトロソプミラス・マリチマス(Nitrosopumilus maritimus)等のニトロソプミラス(Nitrosopumilus)属に属する微生物の遺伝子が挙げられる。メバロン酸キナーゼ発現ベクターは、組込み型(integrative)ベクターであっても、非組込み型ベクターであってもよい。発現ベクターにおいて、メバロン酸キナーゼをコードする遺伝子は、構成型プロモーター、または誘導型プロモーター(例、増殖促進剤逆依存プロモーター)の制御下に配置され得る。具体的には、メバロン酸キナーゼをコードする遺伝子は、構成型プロモーターの制御下に配置され得る。構成型プロモーターとしては、例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、およびSP6プロモーターが挙げられる。
イソプレノイド化合物の前駆体(例、イソプレン合成の基質)であるDMAPPは、通常、微生物が固有またはネイティブに有するメチルエリスリトールリン酸経路またはメバロン酸経路のいずれかにより生合成される。したがって、効率的なイソプレノイド化合物の製造のためのDMAPPの供給の観点から、本発明で用いられるイソプレノイド化合物生成微生物は、後述するように、メチルエリスリトールリン酸経路および/またはメバロン酸経路が強化されていてもよい。
本発明で宿主として用いられるイソプレノイド化合物生成微生物は、細菌又は真菌であり得る。細菌は、グラム陽性菌であってもグラム陰性菌であってもよい。イソプレノイド化合物生成微生物としては、腸内細菌科に属する微生物、特に後述する微生物のうち腸内細菌科に属する微生物であり得る。
グラム陽性細菌としては、例えば、バシラス(Bacillus)属細菌、リステリア(Listeria)属細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌等が挙げられ、バシラス(Bacillus)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌が好ましい。
バシラス(Bacillus)属細菌としては、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、セレウス菌(Bacillus cereus)等が挙げられ、枯草菌(Bacillus subtilis)がより好ましい。
コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)等が挙げられ、コリネバクテリウム・グルタミカムがより好ましい。
グラム陰性細菌としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌、サルモネラ(Salmonella)属細菌、ビブリオ(Vivrio)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌等が挙げられ、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌が好ましい。
エシェリヒア(Escherichia)属細菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が好ましい。
パントエア(Pantoea)属細菌としては、例えば、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)等が挙げられ、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)が好ましい。また、パントエア属細菌としては、欧州特許出願公開0952221号に例示された株を使用してもよい。パントエア属細菌の代表的な株としては、例えば、欧州特許出願公開0952221号に開示されるパントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP−6614)、パントエア・アナナティスAJ13356株(FERM BP−6615)、パントエア・アナナティスSC17株(FERMBP−11902)、およびパントエア・アナナティスSC17(0)株(VKPM B−9246;Katashikina JI et al.,BMC Mol Biol 2009;10:34)が挙げられる。
エンテロバクター(Enterobacter)属細菌としては、例えば、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられ、エンテロバクター・アエロゲネス(Engerobacter aerogenes)が好ましい。また、エンテロバクター属細菌としては、欧州特許出願公開0952221号に例示された菌株を使用してもよい。エンテロバクター属細菌の代表的な株としては、例えば、エンテロバクター・アグロメランスATCC12287株、エンテロバクター・アエロゲネスATCC13048株、エンテロバクター・アエロゲネスNBRC12010株(Biotechnol Bioeng. 2007 Mar 27;98(2):340−348)、エンテロバクター・アエロゲネスAJ110637(FERM BP−10955)株等が挙げられる。エンテロバクター・アエロゲネスAJ110637株は、2007年8月22日付で国立研究開発法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6;現在、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(IPOD NITE) 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)に受託番号FERM P−21348として寄託され、2008年3月13日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP−10955の受領番号が付与されている。
真菌としては、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フザリウム(Fusarium)属、ムコール(Mucor)属の微生物等が挙げられ、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、またはトリコデルマ(Trichoderma)属の微生物が好ましい。
サッカロミセス(Saccharomyces)属の微生物としては、例えば、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ディアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシー(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベラ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロミセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)が挙げられ、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)が好ましい。
シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属の微生物としては、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)が好ましい。
ヤロウイア(Yarrowia)属の微生物としては、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が好ましい。
トリコデルマ(Trichoderma)属の微生物としては、例えば、トリコデルマ・ハルジアヌム(Ttichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギー(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギフラキアム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)が挙げられ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)が好ましい。
イソプレノイド化合物生成微生物は、さらにイソプレノイド化合物の前駆体(例、イソプレンシンターゼの基質)であるジメチルアリル二リン酸(DMAPP)を合成する経路が強化されていてもよい。このような強化のため、イソペンテニル二リン酸(IPP)からジメチルアリル二リン酸(DMAPP)への変換能を有するイソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼの発現ベクターが、イソプレノイド化合物生成微生物に導入されてもよい。また、IPPおよび/またはDMAPPの生成に関連するメバロン酸経路および/またはメチルエリスリトールリン酸経路に関与する1以上の酵素の発現ベクターが、イソプレノイド化合物生成微生物に導入されてもよい。このような酵素の発現ベクターは、組込み型ベクターであっても、非組込み型ベクターであってもよい。このような酵素の発現ベクターはさらに、メバロン酸経路および/またはメチルエリスリトールリン酸経路に関与する複数の酵素(例、1種、2種、3種または4種以上)を一緒または個別に発現するものであってもよく、例えば、ポリシストロニックmRNAの発現ベクターであってもよい。メバロン酸経路および/またはメチルエリスリトールリン酸経路に関与する1以上の酵素の由来は、宿主に対して同種であってもよいし、異種であってもよい。メバロン酸経路および/またはメチルエリスリトールリン酸経路に関与する酵素の由来が宿主に対して異種である場合、例えば、宿主が上述したような細菌(例、大腸菌)であり、かつ、メバロン酸経路に関与する酵素が真菌(例、サッカロミセス・セレビシエ)に由来するものであってもよい。また、宿主が、メチルエリスリトールリン酸経路に関与する酵素を固有に産生するものである場合、宿主に導入される発現ベクターは、メバロン酸経路に関与する酵素を発現するものであってもよい。
イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ(EC:5.3.3.2)としては、例えば、Idi1p(ACCESSION ID NP_015208)、AT3G02780(ACCESSION ID NP_186927)、AT5G16440(ACCESSION ID NP_197148)、およびIdi(ACCESSION ID NP_417365)が挙げられる。発現ベクターにおいて、イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼをコードする遺伝子は、増殖促進剤逆依存性プロモーターの制御下に配置されてもよい。
メバロン酸(MVA)経路に関与する酵素としては、例えば、メバロン酸キナーゼ(EC:2.7.1.36;例1、Erg12p、ACCESSION ID NP_013935;例2、AT5G27450、ACCESSION ID NP_001190411)、ホスホメバロン酸キナーゼ(EC:2.7.4.2;例1、Erg8p、ACCESSION ID NP_013947;例2、AT1G31910、ACCESSION ID NP_001185124)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(EC:4.1.1.33;例1、Mvd1p、ACCESSION ID NP_014441;例2、AT2G38700、ACCESSION ID NP_181404;例3、AT3G54250、ACCESSION ID NP_566995)、アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ(EC:2.3.1.9;例1、Erg10p、ACCESSION ID NP_015297;例2、AT5G47720、ACCESSION ID NP_001032028;例3、AT5G48230、ACCESSION ID NP_568694)、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ(EC:2.3.3.10;例1、Erg13p、ACCESSION ID NP_013580;例2、AT4G11820、ACCESSION ID NP_192919;例3、MvaS、ACCESSION ID AAG02438)、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ(EC:1.1.1.34;例1、Hmg2p、ACCESSION ID NP_013555;例2、Hmg1p、ACCESSION ID NP_013636;例3、AT1G76490、ACCESSION ID NP_177775;例4、AT2G17370、ACCESSION ID NP_179329、EC:1.1.1.88、例、MvaA、ACCESSION ID P13702)、アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ/ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ(EC:2.3.1.9/1.1.1.34、例、MvaE、ACCESSION ID AAG02439)が挙げられる。発現ベクターにおいて、メバロン酸(MVA)経路に関与する1以上の酵素(例、ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ/ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ(好ましくはmvaE)、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ(好ましくはmvaS))をコードする遺伝子は、増殖促進剤逆依存性プロモーターの制御下に配置されてもよい。
好ましい実施形態では、アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ/ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼは、配列番号32のアミノ酸配列に対して70%以上のアミノ酸配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつアセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ活性またはヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ活性を有するタンパク質であり、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼは、配列番号35のアミノ酸配列に対して70%以上のアミノ酸配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ活性を有するタンパク質である。アミノ酸配列同一性%は、例えば、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ活性またはヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ活性とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAおよび2NADPHからメバロン酸ならびに2NADPおよびHSCoAを生成する活性をいう。ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ活性とは、アセトアセチル−CoAおよびアセチル−CoAから3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAおよびHSCoAを生成する活性をいう。
アミノ酸配列の同一性%および後述するような塩基配列の同一性%は、例えばKarlinおよびAltschulによるBLASTアルゴリズム(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993))、PearsonによるFASTAアルゴリズム(MethodsEnzymol.,183,63(1990))を用いて決定することができる。このBLASTアルゴリズムに基づいて、BLASTP、BLASTNとよばれるプログラムが開発されているので(http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)、これらのプログラムをデフォルト設定で用いて、塩基配列およびアミノ酸配列の同一性%を計算してもよい。また、アミノ酸配列の相同性としては、例えば、Lipman−Pearson法を採用している株式会社ゼネティックスのソフトウェアGENETYX Ver7.0.9を使用し、ORFにコードされるポリペプチド部分全長を用いて、Unit Size to Compare=2の設定でSimilarityをpercentage計算させた際の数値を用いてもよい。塩基配列およびアミノ酸配列の同一性%として、これらの計算で導き出される値のうち、最も低い値を採用してもよい。
別の好ましい実施形態では、アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ/ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼは、配列番号32のアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸残基が変異しているアミノ酸配列を含み、かつアセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ活性またはヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ活性を有するタンパク質であり、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼは、配列番号35のアミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸残基が変異しているアミノ酸配列を含み、かつヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ活性を有するタンパク質である。アミノ酸残基の変異としては、例えば、アミノ酸残基の欠失、置換、付加および挿入が挙げられる。1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異は、アミノ酸配列中の1つの領域に導入されてもよいが、複数の異なる領域に導入されてもよい。用語「1個もしくは数個」は、タンパク質の立体構造や活性を大きく損なわない範囲を示すものである。タンパク質の場合における用語「1もしくは数個」が示す数は、例えば、1〜100個、好ましくは1〜80個、より好ましくは1〜50個、1〜30個、1〜20個、1〜10個または1〜5個であり得る。
アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ/ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼは、同一条件で測定された場合、配列番号32のアミノ酸配列からなるタンパク質のアセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ活性またはヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ活性の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の活性を有することが好ましい。ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼは、同一条件で測定された場合、配列番号35のアミノ酸配列からなるタンパク質のヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ活性の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の活性を有することが好ましい。
上記酵素では、目的活性を保持し得る限り、触媒ドメイン中の部位、および触媒ドメイン以外の部位に変異が導入されていてもよい。目的活性を保持し得る、変異が導入されてもよいアミノ酸残基の位置は、当業者に自明である。具体的には、当業者は、1)同種の活性を有する複数のタンパク質のアミノ酸配列を比較し、2)相対的に保存されている領域、および相対的に保存されていない領域を明らかにし、次いで、3)相対的に保存されている領域および相対的に保存されていない領域から、それぞれ、機能に重要な役割を果たし得る領域および機能に重要な役割を果たし得ない領域を予測できるので、構造・機能の相関性を認識できる。したがって、当業者は、上記酵素のアミノ酸配列において変異が導入されてもよいアミノ酸残基の位置を特定できる。
アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、保存的置換であってもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「保存的置換」とは、所定のアミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することをいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で周知である。例えば、このようなファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位分岐側鎖を有するアミノ酸(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、ヒドロキシル基(例、アルコール性、フェノール性)含有側鎖を有するアミノ酸(例、セリン、スレオニン、チロシン)、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(例、システイン、メチオニン)が挙げられる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、アスパラギン酸とグルタミン酸との間での置換、アルギニンとリジンとヒスチジンとの間での置換、トリプトファンとフェニルアラニンとの間での置換、フェニルアラニンとバリンとの間での置換、ロイシンとイソロイシンとアラニンとの間での置換、およびグリシンとアラニンとの間での置換であってもよい。
別の好ましい実施形態では、アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ/ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号33または配列番号34の塩基配列と70%以上の塩基配列同一性を有する塩基配列を含み、かつアセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ活性またはヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであってもよく、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号36または配列番号37の塩基配列と70%以上の塩基配列同一性を有する塩基配列を含み、かつヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであってもよい。塩基配列同一性%は、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。
別の好ましい実施形態では、アセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ/ヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼをコードする遺伝子は、配列番号33または配列番号34の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼ活性またはヒドロキシメチルグルタリル−CoAリダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであってもよく、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼをコードする遺伝子は、配列番号36または配列番号37の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、このような条件は、高い同一性を有する実質的に同一のポリヌクレオチド同士、例えば上述した同一性%を有するポリヌクレオチド同士がハイブリダイズし、それより低い相同性を示すポリヌクレオチド同士がハイブリダイズしない条件である。具体的には、このような条件としては、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS中、50〜65℃での1または2回以上の洗浄が挙げられる。
メチルエリスリトールリン酸(MEP)経路に関与する酵素としては、例えば、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸シンターゼ(EC:2.2.1.7、例1、Dxs、ACCESSION ID NP_414954;例2、AT3G21500、ACCESSION ID NP_566686;例3、AT4G15560、ACCESSION ID NP_193291;例4、AT5G11380、ACCESSION ID NP_001078570)、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸リダクトイソメラーゼ(EC:1.1.1.267;例1、Dxr、ACCESSION ID NP_414715;例2、AT5G62790、ACCESSION ID NP_001190600)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチル−D−エリスリトールシンターゼ(EC:2.7.7.60;例1、IspD、ACCESSION ID NP_417227;例2、AT2G02500、ACCESSION ID NP_565286)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチル−D−エリスリトールキナーゼ(EC:2.7.1.148;例1、IspE、ACCESSION ID NP_415726;例2、AT2G26930、ACCESSION ID NP_180261)、2−C−メチル―D−エリスリトール−2,4−シクロニリン酸シンターゼ(EC:4.6.1.12;例1、IspF、ACCESSION ID NP_417226;例2、AT1G63970、ACCESSION ID NP_564819)、1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル−4−ニリン酸シンターゼ(EC:1.17.7.1;例1、IspG、ACCESSION ID NP_417010;例2、AT5G60600、ACCESSION ID NP_001119467)、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブテニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2;例1、IspH、ACCESSION ID NP_414570;例2、AT4G34350、ACCESSION ID NP_567965)が挙げられる。発現ベクターにおいて、メチルエリスリトールリン酸(MEP)経路に関与する1以上の酵素をコードする遺伝子は、増殖促進剤逆依存性プロモーターの制御下に配置されてもよい。
更に、イソプレノイド化合物生成微生物において、イソプレノイド化合物の前駆体(例、イソプレンシンターゼの基質)であるジメチルアリル二リン酸やイソペンテニル二リン酸を合成するメバロン酸経路又はメチルエリスリトールリン酸経路の酵素をコードする遺伝子が導入されていてもよい。このような酵素としては、ピルビン酸塩とD−グリセルアルデヒド−3−ホスフェートを1−デオキシ−D−キシロース−5−ホスフェートに転換する1−デオキシ−D−キシロース−5−ホスフェートシンターゼ;イソペンテニル二リン酸をジメチルアリル二リン酸に転換するイソペンチルジホスフェートイソメラーゼ等が挙げられる。発現ベクターにおいて、ジメチルアリル二リン酸を合成するメバロン酸経路又はメチルエリスリトールリン酸経路の酵素をコードする遺伝子は、上述したような構成型プロモーター、または誘導型プロモーター(例、増殖促進剤逆依存プロモーター)の制御下に配置され得る。
上述したような遺伝子を含む発現ベクターによる宿主の形質転換は、1以上の公知の方法を用いて行うことができる。このような方法としては、例えば、カルシウム処理された菌体を用いるコンピテント細胞法や、エレクトロポレーション法等が挙げられる。また、プラスミドベクター以外にもファージベクターを用いて、菌体内に感染させ導入する方法によってもよい。
本発明の方法における工程1)では、イソプレノイド化合物生成微生物が、十分な濃度の増殖促進剤の存在下で増殖される。より具体的には、イソプレノイド化合物生成微生物の増殖は、十分な濃度の増殖促進剤の存在下で、培地中でイソプレノイド化合物生成微生物を培養することにより行うことができる。
例えば、酸素が増殖促進剤として用いられる場合、イソプレノイド化合物生成微生物は、好気性微生物であり得る。好気性微生物は、十分な濃度の酸素の存在下で良好に増殖することができるので、酸素は、好気性微生物に対する増殖促進剤として作用することができる。増殖促進剤が酸素である場合、1)において、好気性微生物の増殖に十分である培地中の溶存酸素の濃度は、好気性微生物の増殖を促進できる濃度である限り特に限定されず、例えば0.50ppm以上、1.00ppm以上、1.50ppm以上、または2.00ppm以上であってもよい。好気性微生物の増殖のための溶存酸素の濃度はまた、例えば7.00ppm以下、5.00ppm以下、または3.00ppm以下であってもよい。
また、リン化合物もしくはアミノ酸が増殖促進剤として用いられる場合、イソプレノイド化合物生成微生物は、十分な濃度のリン化合物もしくはアミノ酸の存在下で良好に増殖することができるので、リン化合物やアミノ酸は、増殖促進剤として作用することができる。増殖促進剤がリン化合物やアミノ酸である場合、1)において、増殖に十分なリン化合物やアミノ酸の濃度は、特に限定されないが、例えば200mg/L以上、300mg/L以上、500mg/L以上、1000mg/L以上、または2000mg/L以上であってもよい。増殖のためのリン化合物もしくはアミノ酸の濃度はまた、例えば20g/L以下、10g/L以下、または5g/L以下であってもよい。
本発明の方法における工程2)では、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生成の誘導が、増殖促進剤の濃度を減少させることにより行われる。より具体的には、増殖促進剤の濃度の減少は、培地中への増殖促進剤の供給量を低下させることにより、行うことができる。増殖促進剤の濃度の減少はまた、培地中への増殖促進剤の供給量を1)2)を通じて一定にした場合であっても、微生物の増殖を利用して行うことができる。1)における微生物の増殖の初期では、微生物が十分に増殖しておらず、培地中の微生物数が少ないため、微生物による増殖促進剤の消費も相対的に少ない。したがって、増殖の初期では、培地中の増殖促進剤の濃度は、相対的に高い。一方、1)における微生物の増殖の後期では、微生物が十分に増殖しており、培地中の微生物数が多いため、微生物による増殖促進剤の消費も相対的に多い。したがって、増殖の後期では、培地中の増殖促進剤の濃度は、相対的に低くなる。このように、一定量の増殖促進剤を、1)2)を通じて培地中に供給し続けた場合、微生物の増殖と反比例して、培地中の増殖促進剤の濃度は減少する。この減少した濃度をトリガーとして、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物(例、イソプレンモノマー、リナロール、リモネン)の生成を誘導することができる。
例えば、酸素が増殖促進剤として用いられる場合、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生成を誘導できる培地中の溶存酸素の濃度は、例えば0.35ppm以下、0.15ppm以下、または0.05ppm以下であり得る。培地中の溶存酸素の濃度はまた、上述したような微好気条件下の濃度であってもよい。
また、リン化合物またはアミノ酸が増殖促進剤として用いられる場合、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生成を誘導できる培地中のリン化合物またはアミノ酸の培地中の濃度は、例えば100mg/L以下、50mg/L以下、または10mg/L以下であり得る。
本発明の方法における工程3)では、イソプレノイド化合物の生成が、イソプレノイド化合物生成微生物を培養することにより行われる。より具体的には、イソプレノイド化合物の生成は、増殖促進剤の濃度が減少した2)の条件下において培地中でイソプレノイド化合物生成微生物を培養することにより行うことができる。培地中の増殖促進剤の濃度は、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生成を可能にするため、2)で上述したような濃度に維持され得る。3)において、培地中の生成イソプレノイド化合物濃度は、工程2)の条件下で培養培地中のイソプレノイド化合物生成微生物を培養後、例えば誘導後6時間以内、または誘導後5、4または3時間以内において、例えば、600ppm以上、700ppm以上、800ppm以上、または900ppm以上であり得る。
本発明の方法はまた、イソプレノイド化合物がイソプレンである場合、誘導期におけるイソプレン生成速度により特徴付けることができる。誘導期におけるイソプレン生成速度(ppm/vvm/h)は、vvm(volume per volume per minuteあたりの最大イソプレン濃度(ppm/vvm)をその誘導時間で除算することにより決定することができる、誘導効率の指標値である。ここで、誘導時間は、イソプレン生成開始(発酵ガス中のイソプレン濃度を50ppmと定義する)から最大イソプレン濃度に到達するまでの時間である。「vvm(volume per volume per minute)」という値は、培養装置における培養溶液容積当たりの単位時間ガス通気量を示す。かかるイソプレン生成速度は、増殖促進剤の種類によって変動し得る。例えば、酸素が増殖促進剤として用いられる場合、かかるイソプレン生成速度は、20ppm/vvm/h以上、40ppm/vvm/h以上、50ppm/vvm/h以上、60ppm/vvm/h以上、または70ppm/vvm/h以上であり、また、100ppm/vvm/h以下、90ppm/vvm/h以下、または80ppm/vvm/h以下であり得る。リン化合物が増殖促進剤として用いられる場合、かかる速度は、50ppm/vvm/h以上、100ppm/vvm/h以上、150ppm/vvm/h以上、200ppm/vvm/h以上、または250ppm/vvm/h以上であり、また、1000ppm/vvm/h以下、900ppm/vvm/h以下、または800ppm/vvm/h以下、700ppm/vvm/h以下、または600ppm/vvm/h以下であり得る。
本発明の方法では、3)におけるイソプレノイド化合物生成微生物の培養期間を、1)のその期間よりも長く設定することも可能である。誘導剤を利用する従来の方法では、より多量のイソプレノイド化合物を得るためには、イソプレノイド化合物の生成期において誘導剤を用いて微生物を長期培養する必要があった。しかし、長期培養すると誘導剤が分解することから、微生物がイソプレノイド化合物の生産能を維持できなくなる。そのため、誘導剤を継続的に培養培地に添加する必要があるが、誘導剤は高価であり得、イソプレノイド化合物製造費が上昇し得る。したがって、イソプレノイド化合物の生成期において誘導剤を用いる微生物の長期培養は、その培養期間の長さに応じて、イソプレノイド化合物の製造費が上昇し得るという問題があった。一方、3)において誘導剤等の特定物質を用いない本発明の方法では、当該特定物質の分解を考慮する必要がなく、イソプレノイド化合物の生成期における長期培養がイソプレノイド化合物製造費の上昇を引き起こすという従来の問題も生じない。したがって、本発明の方法は、誘導剤を用いる従来の方法とは異なり、3)の期間を長く設定し易い。本発明の方法では、3)の期間を長く設定すればするほど、より多量のイソプレノイド化合物を製造することができる。
イソプレノイド化合物が揮発性のある物質である場合、本発明の方法は、液相および気相を備える系において、行うことができる。揮発性のある物質とは、20℃において0.01kPa以上の蒸気圧を有する化合物を意味する。蒸気圧の測定方法として、一般的に、静止法、沸点法、アイソテニスコープ法、気体流通法、DSC法といった手法が知られている(特開2009−103584)。揮発性のあるイソプレノイド化合物の一例としてイソプレンが挙げられる。このような系としては、生成するイソプレンの拡散による消失を回避するため、閉鎖されている系、例えば、発酵槽、発酵タンク等の反応器を利用することができる。液相としては、イソプレン生成微生物を含む培地を用いることができる。気相は、系における液相上部の空間であり、ヘッドスペースとも呼ばれ、発酵ガスを含む。イソプレンは、標準大気圧で沸点が34℃であり、かつ水に対して難溶性(水に対する溶解性:0.6g/L)で20℃における蒸気圧が60.8kPaであることから(例、Brandes et al.,Physikalish Technische Bundesanstalt(PTB),2008)、イソプレン生成微生物を34℃以上の温度条件下の液相中で培養した場合、液相中で生成したイソプレンは容易に気相中に移行し得る。したがって、このような系を用いる場合、液相中で生成したイソプレンを、気相中から回収することができる。また、液相中で生成したイソプレンは容易に気相中に移行し得ることから、液相中のイソプレン生成微生物によるイソプレン生成反応(イソプレンシンターゼによる酵素反応)を、常に、イソプレン生成側に傾斜させることもできる。リモネンは、水に対して難溶性(水に対する溶解性:13.8mg/L)で20℃における蒸気圧が0.19kPaであることから((R)−(+)−リモネン 安全データシート 純正化学株式会社 82205jis−1,2014/05/19)、リモネン生成微生物を34℃以上の温度条件下の液相中で培養した場合、液相中で生成したイソプレンは容易に気相中に移行し得る。リナロールは、水に対して難溶性(水に対する溶解性:0.16g/100mL)で25℃における蒸気圧が0.021Paであることから(リナロール 安全データシート 東京化成工業株式会社 2013/12/10)、リナロール生成微生物を34℃以上の温度条件下の液相中で培養した場合、液相中で生成したイソプレンは容易に気相中に移行し得る。したがって、このような系を用いる場合、液相中で生成した揮発性のあるイソプレノイド化合物を、気相中から回収することができる。また、液相中で生成した揮発性のあるイソプレノイド化合物は容易に気相中に移行し得ることから、液相中のイソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物生成反応(イソプレノイド化合物合成酵素による酵素反応)を、常に、イソプレノイド化合物生成側に傾斜させることもできる。
液相および気相を備える系において本発明の方法が行われる場合、気相中の酸素濃度を制御することが望ましい。揮発性のある有機化合物の中には爆発性があるものが含まれる。例えば、イソプレンは爆発限界が1.0〜9.7%(w/w)(例、Brandes et al.,Physikalish Technische Bundesanstalt(PTB),2008)であり爆発し易い性質を有すること、およびイソプレンは気相中での酸素との混合比率に応じて爆発範囲が変動することから(US8420360B2、図24を参照)、爆発の回避の観点から、気相中の酸素濃度を制御する必要があるためである。リモネンは爆発範囲が0.7〜6.1%(例、Brandes et al.,Physikalish Technische Bundesanstalt(PTB),2008)であり爆発し易い性質を有することより、爆発の回避の観点から、気相中の酸素濃度を制御する必要があるためである。
気相中の酸素濃度の制御は、酸素濃度を調節した気体を系中に供給することにより行うことができる。系中に供給される気体は、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の酸素以外の気体成分を含んでいてもよい。より具体的には酸素濃度が爆発範囲を持つガスの限界酸素濃度以下になるよう不活性ガスを加える事で気相中の酸素濃度を制御できる。酸素以外の気体成分として不活性ガスであることが望ましい。好ましくは、酸素濃度を調節した気体は液相中に供給され、それにより気相中の酸素濃度が間接的に制御される。気相中の酸素濃度は、以下のとおり、液相中の溶存酸素濃度の調節により制御できるためである。
液相中に供給された気体中の酸素は液相中に溶存し、やがて飽和濃度に達する。一方、微生物が存在する系においては、液相中の溶存酸素は、培養される微生物の代謝活動により消費され、その結果、溶存酸素濃度は飽和濃度以下に低下する。飽和濃度以下の酸素を含む液相において、気液平衡により気相中の酸素、あるいは新たに供給する気体中の酸素は液相への移動が可能である。すなわち、微生物の酸素消費速度に依存して、気相中の酸素濃度は低下する。また、培養される微生物の酸素消費速度を制御する事により、気相中の酸素濃度を制御することも可能である。
例えば、微生物の炭素源の代謝速度を上げることにより、酸素消費速度をあげ、気相中の酸素濃度を9%(v/v)以下(例、5%(v/v)以下、0.8%(v/v)以下、0.6%(v/v)以下、0.5%(v/v)以下、0.4%(v/v)以下、0.3%(v/v)以下、0.2%(v/v)以下、もしくは0.1%(v/v)以下)または実質的に0%(v/v)に設定することができる。あるいは、初期に供給する気体中の酸素濃度を、低く設定することでも成し得る。したがって、気相中の酸素濃度の設定は、液相中の微生物による酸素の消費速度と供給する気体中の酸素濃度を考慮した上で、設定ができる。
微生物の増殖期である1)では、液相中に溶存酸素が一定濃度で存在しない場合、微生物はその種類によっては液相中で良好に増殖することができない場合がある。また、1)では、イソプレンが未生成であるため、爆発の回避の観点から、気相中の酸素濃度を制御する必要は必ずしもない。
例えば、酸素が増殖促進剤として用いられる場合、好気性微生物等の微生物の増殖に好適である溶存酸素濃度が液相中で維持されるように、酸素濃度を調節した気体を液相中に供給することができる。液相中に供給された気体は、攪拌により液相中に溶存することができる。液相中の溶存酸素濃度は、イソプレン生成微生物の十分な増殖を可能にするものであれば特に限定されず、溶存酸素濃度は、好気性微生物等の利用される微生物の種類に依存して変動し得る。例えば、好気性微生物の増殖に十分である培地中の溶存酸素の濃度として上述したような濃度を採用することができる。具体的には、酸素が増殖促進剤として用いられる場合、イソプレン生成微生物を含む液相、および気相を備える系における液相中に酸素を供給して、十分な濃度の溶存酸素の存在下でイソプレン生成微生物を増殖させることができる。
イソプレン生成の誘導期である2)では、微生物の液相中での増殖の観点よりも、誘導後の3)で生成するイソプレンと酸素との混合気体による爆発を回避する観点から、系中の酸素濃度が調節される。例えば、気相中の酸素濃度は、続く工程3)において生成するイソプレンと酸素との混合気体による爆発を回避する観点から、後述するように、3)と同様であってもよい。
例えば、酸素が増殖促進剤として用いられる場合には、上述した観点、およびイソプレン生成微生物によるイソプレンモノマーの生成を液相中で誘導する観点から、系中の酸素濃度が調節される。例えば、液相中の溶存酸素濃度は、上記観点を達成できるようなものであれば特に限定されず、利用されるイソプレン生成微生物および利用されるプロモーターの種類等によっても異なるが、例えば0.35ppm以下、0.25ppm以下、0.15ppm、0.10ppm以下、または0.05ppm以下であってもよい。液相中の溶存酸素濃度はまた、上述したような微好気条件下の濃度であってもよい。液相中の溶存酸素濃度の減少は、液相中への酸素の供給量を低下させることにより、行うことができる。液相中の溶存酸素濃度の減少はまた、液相中への酸素の供給量を1)2)を通じて一定にした場合であっても、培養される微生物の増殖を利用して行うことができる。1)における微生物の増殖の初期では、微生物が十分に増殖しておらず、培地中の微生物数が少ないため、微生物による酸素消費も相対的に少ない。したがって、増殖の初期では、液相中の溶存酸素濃度、および気相中の酸素濃度は、相対的に高い。一方、1)における微生物の増殖の後期では、微生物が十分に増殖しており、培地中の微生物数が相対的に多いため、微生物による酸素消費も相対的に多い。したがって、増殖の後期では、液相中の溶存酸素濃度、および気相中の酸素濃度は、相対的に低くなる。このように、一定濃度の酸素を含む気体を、1)2)を通じて液相中に供給し続けた場合、微生物の増殖と反比例して、液相中の溶存酸素濃度は減少する。この減少した液相中の酸素濃度をトリガーとして、イソプレン生成微生物によるイソプレンモノマーの生成を誘導することができる。
イソプレンの生成期である3)では、気相中の酸素濃度は、イソプレンと酸素との混合気体による爆発を回避できる濃度である限り特に限定されないが、このような混合気体中の酸素濃度が約9.5%(v/v)以下であれば気相中のイソプレン濃度によらず爆発を回避できることから(図24を参照)、気相中の酸素濃度は約9.5%(v/v)以下であり得る。爆発に対する酸素濃度の安全域を確保する観点から、気相中の酸素濃度は、9%(v/v)以下、8%(v/v)以下、7%(v/v)以下、6%(v/v)以下、5%(v/v)以下、4%(v/v)以下、3%(v/v)以下、2%(v/v)以下、または1%(v/v)以下であり得る。3)では、このような酸素濃度が気相中で維持されるように、酸素濃度を調節した気体を液相中に供給することができる。
例えば、酸素が増殖促進剤として用いられる場合、2)で上述したような液相中の酸素濃度条件下でイソプレン生成微生物を液相中で培養することにより、イソプレンモノマーを生成することができる。この場合、2)で上述したような液相中の酸素濃度、および3)で上述したような気相中の酸素濃度を両立させることが所望される。液相中の微生物の種類およびその増殖の程度などを考慮しつつ、酸素を含む気体の供給量を調節することにより、2)で上述したような液相中の酸素濃度、および3)で上述したような気相中の酸素濃度を両立させることができる。
液相および気相を備える系においてイソプレンの生成が行われる場合、液相中で生成したイソプレンは、上述したとおり、気相(発酵ガス)中から回収することができる。気相からのイソプレンの回収は、公知の方法により行うことができる。気相からのイソプレンの回収法としては、例えば、吸収法、冷却法、圧力スイング吸着法(PSA法)、膜分離法が挙げられる。気相は、これらの方法に付される前に、必要に応じて、脱水、昇圧、減圧等の予備処理に付されてもよい。
本発明の方法は、イソプレノイド化合物の生成量をさらに向上させる観点等から、他の方法と併用されてもよい。このような方法としては、例えば、光(Pia Lindberg,Sungsoon Park,Anastasios Melis,Metabolic Engineering 12(2010):70−79)または温度(Norma A Valdez−Cruz,Luis Caspeta,Nestor O Perez,Octavio T Ramirez,Mauricio A Trujillo−Roldan,Microbial Cell Factories 2010,9:1)等の環境因子を利用する方法、pHの変化(EP 1233068 A2)、界面活性剤の添加(JP 11009296 A)、自己誘導法(WO2013/151174)が挙げられる。
本発明の方法で用いられる培地は、イソプレノイド化合物生成のための炭素源を含んでいてもよい。炭素源としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類等の炭水化物;ショ糖を加水分解した転化糖;グリセロール;メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸塩、一酸化炭素、二酸化炭素等の炭素数が1の化合物(以下、C1化合物という。);コーン油、パーム油、大豆油等のオイル;アセテート;動物油脂;動物オイル;飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸等の脂肪酸;脂質;リン脂質;グリセロ脂質;モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド等のグリセリン脂肪酸エステル;微生物性タンパク質、植物性タンパク質等のポリペプチド;加水分解されたバイオマス炭素源等の再生可能な炭素源;酵母エキス;又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養源としては、ビタミンB1、L−ホモセリンなどの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。なお、本発明で用いる培地は、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じてその他の有機微量成分を含む培地であれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。
単糖類としては、ケトトリオース(ジヒドロキシアセトン)、アルドトリオース(グリセルアルデヒド)等のトリオース;ケトテトロース(エリトルロース)、アルドテトロース(エリトロース、トレオース)等のテトロース;ケトペントース(リブロース、キシルロース)、アルドペントース(リボース、アラビノース、キシロース、リキソース)、デオキシ糖(デオキシリボース)等のペントース;ケトヘキソース(プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、アルドヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース)、デオキシ糖(フコース、フクロース、ラムノース)等のヘキソース;セドヘプツロース等のヘプトースが挙げられ、フルクトース、マンノース、ガラクトース、グルコース等のC6糖;キシロース、アラビノース等のC5糖の炭水化物が好ましい。
二糖類としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース等が挙げられ、スクロース、ラクトースが好ましい。
オリゴ糖類としては、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖類;アカルボース、スタキオース等の四糖類;フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、マンナンオリゴ糖(MOS)等のその他のオリゴ糖類が挙げられる。
多糖類としては、グリコーゲン、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、デキストリン、グルカン(β−1,3−グルカン)が挙げられ、デンプン、セルロースが好ましい。
微生物性タンパク質としては、酵母または細菌由来のポリペプチドが挙げられる。
植物性タンパク質としては、大豆、コーン、キャノーラ、ジャトロファ、パーム、ピーナッツ、ヒマワリ、ココナッツ、マスタード、綿実、パーム核油、オリーブ、紅花、ゴマ、亜麻仁由来のポリペプチドが挙げられる。
脂質としては、C4以上の飽和、不飽和脂肪酸を1以上含む物質が挙げられる。
オイルとしては、C4以上の飽和、不飽和脂肪酸が1以上含み、室温で液体の脂質であり得、大豆、コーン、キャノーラ、ジャトロファ、パーム、ピーナッツ、ヒマワリ、ココナッツ、マスタード、綿実、パーム核油、オリーブ、紅花、ゴマ、亜麻仁、油性微生物細胞、ナンキンハゼ、又はこれらの2以上の組み合わせからなるものが挙げられる。
脂肪酸としては、式RCOOH(「R」は2以上の炭素原子を有する炭化水素基を表す。)で表される化合物が挙げられる。
不飽和脂肪酸は、上記の基「R」における2つの炭素原子間に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物であり、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、パルミテライジン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
飽和脂肪酸は、「R」が飽和脂肪族基である化合物であり、ドコサン酸、イコサン酸、オクタデカン酸、ヘキサデカン酸、テトラデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。
中でも、脂肪酸としては、1以上のC2からC22の脂肪酸が含まれるものが好ましく、C12脂肪酸、C14脂肪酸、C16脂肪酸、C18脂肪酸、C20脂肪酸、C22脂肪酸が含まれるものがより好ましい。
また、炭素源としては、これら脂肪酸の塩、誘導体、誘導体の塩も挙げられる。塩としては、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。
また、炭素源としては、脂質、オイル、油脂、脂肪酸、グリセロール脂肪酸エステルとグルコース等の炭水化物との組み合わせが挙げられる。
再生可能な炭素源としては、加水分解されたバイオマス炭素源が挙げられる。
バイオマス炭素源としては、木、紙、及びパルプの廃材、葉状植物、果肉等のセルロース系基質;柄、穀粒、根、塊茎等の植物の一部分が挙げられる。
バイオマス炭素源として用いられる植物としては、コーン、小麦、ライ麦、ソルガム、トリティケイト、コメ、アワ、大麦、キャッサバ、エンドウマメ等のマメ科植物、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、サトウキビ、タピオカ等が挙げられる。
バイオマス等の再生可能な炭素源を細胞培地に添加する際には、炭素源は、前処理され得る。前処理としては、酵素的前処理、化学的前処理、酵素的前処理と化学的前処理の組み合わせが挙げられる。
再生可能な炭素源を細胞培地に添加する前に、その全部または一部を加水分解することが好ましい。
また、炭素源としては、酵母エキス、または酵母エキスと、グルコース等の他の炭素源との組み合わせが挙げられ、酵母エキスと、二酸化炭素やメタノール等のC1化合物との組み合わせが好ましい。
本発明の方法では、イソプレノイド化合物生成微生物を生理食塩水と栄養源を含む標準的培地で培養することが好ましい。
培養培地としては、特に限定されず、Luria Bertani(LB)ブロス、Sabouraud Dextrose(SD)ブロス、Yeast medium(YM)ブロス等の一般的に市販されている既成の培地が挙げられる。特定の宿主細胞の培養に適した培地を適宜選択して用いることができる。
培地には適切な炭素源の他に、適切なミネラル、塩、補助因子、緩衝液、及び培養に適していること、またはイソプレン等のイソプレノイド化合物の産出を促進することが当業者にとって公知の成分が含まれていることが望ましい。
イソプレノイド化合物生成微生物の培養条件としては、上述したとおり増殖促進剤の濃度を調節すること以外は、標準的な培養条件を用いることができる。
培養温度としては、20℃〜40℃であり得、pHが、約4.5〜約9.5であり得る。
また、イソプレノイド化合物生成微生物の宿主の性質に応じて好気性、無酸素性、又は嫌気性条件下で培養を行うことが好ましい。培養方法としては、バッチ培養法、流加培養法、連続培養法等の公知の発酵方法を適宜用いることができる。
本発明はまた、イソプレンポリマーの製造方法を提供する。本発明のイソプレンポリマーの製造方法は、以下(I)および(II)を含む:
(I)本発明の方法によりイソプレンモノマーを生成すること;
(II)イソプレンモノマーを重合してイソプレンポリマーを生成すること。
工程(I)は、上述した本発明のイソプレンモノマーの製造方法と同様にして行うことができる。工程(II)におけるイソプレンモノマーの重合は、当該分野で公知の任意の方法(例、付加重合等の有機化学的な合成法)により行うことができる。
ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物は、本発明のイソプレンの製造方法により製造されるイソプレンに由来するポリマーを含む。イソプレンに由来するポリマーは、同種ポリマー(即ち、イソプレンポリマー)、またはイソプレンモノマー単位およびイソプレンモノマー単位以外の1以上のモノマー単位を含む異種ポリマー(例、ブロック共ポリマー等の共ポリマー)であり得る。好ましくは、イソプレンに由来するポリマーは、本発明のイソプレンポリマーの製造方法により製造される同種ポリマー(即ち、イソプレンポリマー)である。本発明のゴム組成物はさらに、上記ポリマー以外の1以上のポリマー、1以上のゴム成分、および/または他の成分を含んでいてもよい。本発明のゴム組成物は、イソプレンに由来するポリマーを用いて製作することができる。例えば、本発明のゴム組成物は、イソプレンに由来するポリマーを、このポリマー以外の1以上のポリマー、1以上のゴム成分、ならびに/または他の成分(例、補強材、架橋剤、加硫促進剤、および抗酸化剤)と混合することにより調製することができる。
タイヤの製造方法
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いることにより製作される。本発明のゴム組成物は、制限されることなく、タイヤの任意の部分に利用することができ、その目的に応じて適切に選択され得る。例えば、本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴムおよびビードフィラーにおいて用いてもよい。タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ未加硫ゴムから構成されるカーカス層、ベルト層、トレッド層、および通常のタイヤ製造に用いられる他の部材をタイヤ成形用ドラム上に順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例、空気式タイヤ)を製造することができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1:イソプレノイド化合物生成微生物(アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物:エンテロバクター・アエロゲネスGI08−Para/ispSK株、および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物:エンテロバクター・アエロゲネスGI08−Pbud/ispSK株)の構築
1.1.GI05(ES04Δlld::Ptac−KDyI株)の構築
エンテロバクター・アエロゲネスAJ110637(FERM BP−10955)株から構築したES04株(US2010−0297716A1)の染色体上のlld遺伝子を、E.coli MG1655 Ptac−KDyI株由来(参考例1を参照)のPtac−KDyI遺伝子で置換することにより、エンテロバクター・アエロゲネスGI05(ES04Δlld::Ptac−KDyI)株を構築した。配列番号1にエンテロバクター・アエロゲネスAJ110637(FERM BP−10955)株のlld遺伝子の塩基配列を記載する。
1.1.1.λattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI遺伝子断片の構築
MG1655 Ptac−KDyI株由来のPtac−KDyI遺伝子は、tacプロモーターの制御下にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のホスホメバロン酸キナーゼ(遺伝子名PMK)とジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(遺伝子名MVD)、更にはイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(遺伝子名yIDI)がコードされている。MG1655 Ptac−KDyI株のゲノムDNAを鋳型に、上記塩基配列を基に設計した配列番号2と配列番号3に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・420sec.,30cycle)を実施し、両端にD−乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(遺伝子名lld)の組み換え配列を有したλattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI遺伝子断片を得た。
1.1.2.ES04/RSFRedTER株の構築
ES04株(US20100297716A1)をLB液体培地にて終夜培養した。その後、培養液100μLを新たなLB液体培地4mLに植菌し、34℃で3時間振盪培養を行った。菌体を回収した後、10%グリセロールで3回洗浄したものをコンピテントセルとし、エレクトロポレーション法により、RSFRedTERを導入した(Katashkina JI et al.,BMC Mol Biol.2009;10:34)。尚、エレクトロポレーションはGENE PULSER II(BioRad社製)を用い、電場強度20kV/cm、コンデンサー容量25μF、抵抗値200Ωの条件で行った。SOC培地(バクトトリプトン 20g/L、イーストエキストラクト 5g/L、NaCl 0.5g/L、グルコース 10g/L)で2時間培養後、40mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB培地に塗布し、16時間培養を行った。その結果、クロラムフェニコール耐性を示す形質転換体を取得し、ES04/RSFRedTER株と命名した。
1.1.3.ES04Δlld::λattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI株の構築
ES04/RSFRedTER株をLB液体培地にて終夜培養した。その後、培養液1mLを、終濃度1mMのIPTGと40mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB液体培地100mLに植菌して、34℃で3時間振盪培養を行った。菌体を回収した後、10%グリセロールで3回洗浄したものをコンピテントセルとした。増幅したλattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI遺伝子断片をWizard PCR Prep DNA Purification System(Promega社製)を用いて精製したものをエレクトロポレーション法によりコンピテントセルに導入した。SOC培地で2時間培養後、テトラサイクリン30mg/Lを含むLB培地に塗布し、16時間培養を行った。出現したコロニーを同培地で純化した後、配列番号4と配列番号5に記載したプライマーを用いてコロニーPCR(TaKaRa Speed star(登録商標),92℃・10sec.,56℃・10sec.,72℃・60sec.,40cycle)を行い、染色体上のlld遺伝子がλattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI遺伝子に置換している事を確認した。得られた株を、10%シュークロース、1mM IPTGを含むLB寒天培地に塗布し、RSFRedTERプラスミドを脱落させ、ES04Δlld::λattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI株を得た。
1.1.4.ES04Δlld::λattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI株からのテトラサイクリン耐性遺伝子除去
ES04Δlld::λattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI株からテトラサイクリン耐性遺伝子を除去する為に、RSF−int−xis(US20100297716A1)プラスミドを用いた。ES04Δlld::λattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI株にRSF−int−xisをエレクトロポレーション法で導入し、40mg/Lクロラムフェニコールを含有するLB培地に塗布後30℃で培養し、ES04Δlld::λattL−Tet−λattR−Ptac−KDyI/RSF−int−xis株を得た。得られたプラスミド保持株を、40mg/Lクロラムフェニコール及び1mM IPTGを含有するLB培地で純化し、シングルコロニーを複数得た。その後、30mg/Lのテトラサイクリンを加えた培地に塗布し、37℃で一晩培養し、生育出来ない事を確認する事で、テトラサイクリン耐性遺伝子が除去された株である事を確認した。次に、得られた株からRSF−int−xisプラスミドを脱落させるため、10%シュークロース及び1mM IPTGを添加したLB培地に塗布し、37℃で一晩培養した。出現したコロニーの中から、クロラムフェニコール感受性を示した株をGI05(ES04Δlld::Ptac−KDyI)株と命名した。
1.2.GI06(GI05 ΔpoxB::Ptac−PMK)株の構築
エンテロバクター・アエロゲネスGI05株の染色体上のピルビン酸オキシダーゼ遺伝子(遺伝子名poxB)を、E.coli MG1655 Ptac−KDyI株由来のホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)遺伝子で置換することにより、エンテロバクター・アエロゲネスGI06(ES04Δlld::Ptac−KDyIΔpoxB::Ptac−PMK)株を構築した。配列番号6にエンテロバクター・アエロゲネスAJ110637(FERM BP−10955)株のpoxB遺伝子の塩基配列を記載する。手順を以下に示す。
1.2.1.λattL−Km−λattR−Ptac−PMK遺伝子断片の構築
E.coli MG1655 Ptac−KDyI株由来のゲノムDNAを鋳型に、上記塩基配列を基に設計した配列番号7と配列番号8に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・120sec.,30cycle)を実施し、PMKのORF領域を含むDNA断片を取得した。また、λattL−Km−λattR−Ptac(WO2008090770A1)を含むDNA断片を鋳型に、配列番号9と配列番号10に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・90sec.,30cycle)を実施し、λattL−Km−λattR−Ptacを含むDNA断片を取得した。次に、PMKのORF領域を含むDNA断片とλattL−Km−λattR−Ptacを含むDNA断片を鋳型にして、配列番号7と配列番号9に記載したプライマーを用いてOverlapping−PCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・180sec.,35cycle)を行い、両端にピルビン酸オキシダーゼをコードする遺伝子(遺伝子名poxB)の組み換え配列を有したλattL−Km−λattR−Ptac−PMK遺伝子断片を得た。
1.2.2.λ−Red法によるGI06株の取得
前述のGI05株を構築した手順と同様に、GI05株にRSFRedTERを導入し、λ−Red法にてλattL−Km−λattR−Ptac−PMK遺伝子断片をpoxBに導入し、100mg/Lのカナマイシンを含むLB培地にて選択し、カナマイシン耐性を示すGI05ΔpoxB::λattL−Km−λattR−Ptac−PMKを取得した。取得したコロニーを同培地で純化した後、配列番号11と配列番号12に記載したプライマーを用いてコロニーPCR(TaKaRa Speed star(登録商標),92℃・10sec.,56℃・10sec.,72℃・60sec.,40cycle)を行い、染色体上のpoxB遺伝子がλattL−Km−λattR−Ptac−PMK遺伝子に置換している事を確認した。つづいてRSFRedTERが脱落したGI05ΔpoxB::λattL−Km−λattR−Ptac−PMK株からカナマイシン耐性遺伝子を除去する為に、pRSF−int−xisを導入し、GI05株を構築した手順と同様に薬剤耐性遺伝子を除去し、カナマイシン感受性を示した株をGI06(GI05ΔpoxB::Ptac−PMK)株と命名した。
1.3.GI07(GI06 ΔpflB::Ptac−MVD)株の構築
エンテロバクター・アエロゲネスGI06株の染色体上のピルビン酸ギ酸リアーゼB遺伝子(遺伝子名pflB)を、E.coli MG1655 Ptac−KDyI株由来のジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MVD)遺伝子で置換することにより、エンテロバクター・アエロゲネスGI07(GI06 ΔpflB::Ptac−MVD)株を構築した。配列番号13にエンテロバクター・アエロゲネスAJ110637(FERM BP−10955)株のpflB遺伝子の塩基配列を記載する。手順を以下に示す。
1.3.1.λattL−Km−λattR−Ptac−MVD遺伝子断片の構築
E.coli MG1655 Ptac−KDyI株由来のゲノムDNAを鋳型に、上記塩基配列を基に設計した配列番号14と配列番号15に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・120sec.,30cycle)を実施し、MVDのORF領域を含むDNA断片を取得した。また、λattL−Km−λattR−Ptac(WO2008090770A1)を含むDNA断片を鋳型に、配列番号16と配列番号17に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・90sec.,30cycle)を実施し、λattL−Km−λattR−Ptacを含むDNA断片を取得した。次に、MVDのORF領域を含むDNA断片とλattL−Km−λattR−Ptacを含むDNA断片を鋳型にして、配列番号15と配列番号16に記載したプライマーを用いてOverlapping−PCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・240sec.,35cycle)を行い、両端にピルビン酸ギ酸リアーゼBをコードする遺伝子(遺伝子名pflB)の組み換え配列を有したλattL−Km−λattR−Ptac−MVD遺伝子断片を得た。
1.3.2.λ−Red法によるGI07株の取得
前述のGI05株を構築した手順と同様に、GI06株にRSFRedTERを導入し、λ−Red法にてλattL−Km−λattR−Ptac−MVD遺伝子断片をpflBに導入し、100mg/Lのカナマイシンを含むLB培地にて選択し、カナマイシン耐性を示すGI06ΔpflB::λattL−Km−λattR−Ptac−MVD株を取得した。取得したコロニーを同培地で純化した後、配列番号18と配列番号19に記載したプライマーを用いてコロニーPCR(TaKaRa Speed star(登録商標),92℃・10sec.,56℃・10sec.,72℃・60sec.,40cycle)を行い、染色体上のpflB遺伝子がλattL−Km−λattR−Ptac−MVD遺伝子に置換している事を確認した。つづいてRSFRedTERが脱落したGI06ΔpflB::λattL−Km−λattR−Ptac−MVD株からカナマイシン耐性遺伝子を除去する為に、pRSF−int−xisを導入し、GI05株を構築した手順と同様に薬剤耐性遺伝子を除去し、カナマイシン感受性を示した株をGI07(GI06ΔpflB::Ptac−MVD)株と命名した。
1.4.GI08(GI07 ΔpflA::Ptac−yIDI)株の構築
エンテロバクター・アエロゲネスGI07株の染色体上のピルビン酸ギ酸リアーゼA遺伝子(遺伝子名pflA)を、E.coli MG1655 Ptac−KDyI株由来のイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(yIDI)遺伝子で置換することにより、エンテロバクター・アエロゲネスGI08(GI07 ΔpflA::Ptac−yIDI)株を構築した。配列番号20にエンテロバクター・アエロゲネスAJ110637(FERM BP−10955)株のpflA遺伝子の塩基配列を記載する。手順を以下に示す。
1.4.1.λattL−Km−λattR−Ptac−yIDI遺伝子断片の構築
E.coli MG1655 Ptac−KDyI株由来のゲノムDNAを鋳型に、上記塩基配列を基に設計した配列番号21と配列番号22に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・120sec.,30cycle)を実施し、yIDIのORF領域を含むDNA断片を取得した。また、λattL−Km−λattR−Ptac(WO2008090770A1)を含むDNA断片を鋳型に、配列番号23と配列番号24に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・90sec.,30cycle)を実施し、λattL−Km−λattR−Ptacを含むDNA断片を取得した。次に、yIDIのORF領域を含むDNA断片とλattL−Km−λattR−Ptacを含むDNA断片を鋳型にして、配列番号23と配列番号24に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・240sec.,35cycle)を行い、両端にピルビン酸ギ酸リアーゼAをコードする遺伝子(遺伝子名pflA)の組み換え配列を有したλattL−Km−λattR−Ptac−yIDI遺伝子断片を得た。
1.4.2.λ−Red法によるGI08株の取得
前述のGI05株を構築した手順と同様に、GI07株にRSFRedTERを導入し、λ−Red法にてλattL−Km−λattR−Ptac−yIDI遺伝子断片をpflAに導入し、100mg/Lのカナマイシンを含むLB培地にて選択し、カナマイシン耐性を示すGI07ΔpflA::λattL−Km−λattR−Ptac−yIDI株を取得した。取得したコロニーを同培地で純化した後、配列番号25と配列番号26に記載したプライマーを用いてコロニーPCR(TaKaRa Speed star(登録商標),92℃・10sec.,56℃・10sec.,72℃・60sec.,40cycle)を行い、染色体上のpflA遺伝子がλattL−Km−λattR−Ptac−yIDI遺伝子に置換している事を確認した。つづいてRSFRedTERが脱落したGI07ΔpflA::λattL−Km−λattR−Ptac−yIDI株からカナマイシン耐性遺伝子を除去する為に、pRSF−int−xisを導入し、GI05株を構築した手順と同様に薬剤耐性遺伝子を除去し、カナマイシン感受性を示した株をGI08(GI07ΔpflA::Ptac−yIDI)株と命名した。
1.5.アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物GI08−Para/ispSK株(GI08/pMW−Para−mvaES−Ttrp/pSTV28−Ptac−ispSK)の構築
GI08株にイソプレノイド化合物生産能を付与する為、pMW−Para−mvaES−Ttrp(参考例2を参照)とpSTV28−Ptac−ispSK(WO2013/179722参照)をエレクトロポレーション法にて導入した。上記の方法に従った、GI08株のコンピテントセルを調整後、pMW−Para−mvaES−TtrpとpSTV28−Ptac−ispSKをエレクトロポレーション法にて導入し、カナマイシン100mg/Lとクロラムフェニコール 60mg/LのLB培地で選択をし、両プラスミドを保持したGI08株/pMW−Para−mvaES−Ttrp/pSTV28−Ptac−ispSKをGI08−Para/ispSK株と命名した。
1.6.pMW−Pbud−mvaESの構築
エンテロバクター・アエロゲネスは微好気条件下で2,3−butandiolを生成することが知られている(Converti, A et al.,Biotechnol.Bioeng.,82,370−377,2003)。2,3−butandiolの生成経路と触媒反応に関わる酵素群は、既に明らかとなっており、エンテロバクター・アエロゲネスKCTC2190のゲノム配列(NC_015663)から、それらの遺伝子情報やアミノ酸配列も明らかである。2,3−butandiol生成経路は、α−アセトラクテイトデカルボキシラーゼ(遺伝子名budA)、アセトラクテイトシンターゼ(遺伝子名budB)、更にはアセトインレダクターゼ(遺伝子名budC)より構成される。これらの遺伝子はゲノム配列上でオペロンを形成しており、その発現量を転写因子であるBudR(遺伝子名budR)が制御している。BudRとbudオペロンのプロモーター領域を以下の手順でpMW−Para−mvaES−Ttrpにクローニングした。BudRとbudオペロンのプロモーター領域を配列番号29に示す。
エンテロバクター・アエロゲネスAJ11063株由来のゲノムDNAを鋳型に、配列番号27と配列番号28に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・120sec.,30cycle)を実施し、BudRのORF領域とbudオペロンのプロモーター領域を含むDNA断片を取得した。
次に、pMW−Para−mvaES−Ttrpを鋳型に配列番号30と配列番号31に記載したプライマーを用いてPCR反応(TaKaRa Prime star GXL(登録商標),94℃・10sec.,54℃・20sec.,72℃・240sec.,30cycle)を実施し、アラビノースプロモーターが欠落したpMW−Para−mvaES−TtrpのDNA断片を取得した。上記、BudRのORF領域とbudオペロンのプロモーター領域を含むDNA断片とアラビノースプロモーターが欠落したpMW−Para−mvaES−TtrpのDNA断片をIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。アラビノースプロモーターがBudRのORF領域とbudオペロンのプロモーター領域に置換されたプラスミドをpMW−Pbud−mvaES−Ttrpと名付けた。
1.7.微好気誘導型イソプレノイド化合物微生物GI08−Pbud/ispSK株(GI08/pMW−Pbud−mvaES/pSTV28−Ptac−ispSK)の構築
GI08株にイソプレノイド化合物生産能を付与する為、pMW−Pbud−mvaES−TtrpとpSTV28−Ptac−ispSK(WO2013/179722参照)をエレクトロポレーション法にて導入した。上記の方法に従った、GI08株のコンピテントセルを調整後、pMW−Pbud−mvaES−TtrpとpSTV28−Ptac−ispSKをエレクトロポレーション法にて導入し、カナマイシン100mg/Lとクロラムフェニコール 60mg/LのLB培地で選択をし、両プラスミドを保持したGI08株/pMW−Pbud−mvaES/pSTV28−Ptac−ispSKをGI08−Pbud/ispSK株と命名した。
実施例2:イソプレノイド化合物生成微生物GI08−Para/ispSK株とGI08−Pbud/ispSK株のジャー培養条件
イソプレノイド化合物生成微生物GI08−Para/ispSK株とGI08−Pbud/ispSK株の菌体増殖のため、ジャー培養を行った。ジャー培養には1L容積の発酵槽(液相および気相を備える系)を使用した。グルコース培地は表1に示す組成になるように調整した。クロラムフェニコール(60mg/L)およびカナマイシン(50mg/L)を含むLBプレートにイソプレノイド化合物生成微生物GI08−Para/ispSK株とGI08−Pbud/ispSK株を塗布し、37℃にて16時間培養を実施した。0.3Lのグルコース培地を1L容積の発酵槽に投入後、充分に増殖したプレート1枚分の菌体を接種し、培養を開始した。培養条件は、pH7.0(アンモニアガスにて制御)、30℃であり、150mL/min(酸素濃度:20%(v/v)の空気を培地中に供給した。ガルバニ式DOセンサーSDOU型(エイブル株式会社)を用いて培養液中の溶存酸素(Dissolved Oxigen,DO)濃度を測定し、DOが任意の濃度になるように撹拌による制御を行った。培養中は、培地中のグルコース濃度が10g/L以上になるよう500g/Lに調整したグルコースを連続的に添加した。OD値(微生物の増殖の指標)は分光光度計(HITACHI U−2900)によって600nmで測定した。
DO濃度の測定に用いたガルバニ式DOセンサーSDOU型の検出限界は、0.003ppmである。本明細書中以降、測定されたDO濃度が検出限界以下である場合、「DO≒0ppm」と表記する。
A区とB区を0.15L調整後、115℃、10minで加熱滅菌を行った。放冷後A区とB区を混合し、クロラムフェニコール(60mg/L)およびカナマイシン(50mg/L)を添加し、培地として使用した。
実施例3:イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生産
3.1.イソプレン生成期への誘導
アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08−Para/ispSK)は、メバロン酸経路上流遺伝子をアラビノースプロモーターにて発現させるため、L−アラビノース(和光純薬工業)存在下でイソプレン生産量が顕著に向上する。イソプレン生成期への誘導のため、培養液を経時的に分析し、OD値が16になった時点で終濃度20mMとなるようにL−アラビノースを添加した。
微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08−Pbud/ispSK)は、メバロン酸経路上流遺伝子を微好気誘導型プロモーターであるbudオペロンのプロモーターにて発現制御させるため、微好気条件下でイソプレン生産量が顕著に向上する。本実施例では、通気量と撹拌数を一定の条件で培養を行い、菌体の増加に伴って培地中の溶存酸素濃度を検出限界以下(DO≒0ppm)とすることで、イソプレン生成期へ誘導した。
上記のとおりイソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレン生成を誘導した後、イソプレン生成のためイソプレノイド化合物生成微生物の培養を継続した。
3.2.発酵ガス中のイソプレン濃度測定
イソプレンは水に不溶性であり容易に揮発するため、液相(培地)中で生成したイソプレンは、速やかに気相中に発酵ガスとして移行する。したがって、生成したイソプレンの測定は、発酵ガス中のイソプレン濃度の定量により行った。具体的には、イソプレン誘導後から適時、発酵ガスをガスバッグにて収集し、ガスクロマトグラフィー(島津社製 GC−2010 Plus AF)により、イソプレン濃度を定量した。イソプレンの検量線は以下のイソプレン標準試料を用いて作成した。以下にガスクロマトグラフィーの分析条件を記載する。
イソプレン標準試料の調整
試薬イソプレン(東京化成、比重0.681)を冷却したメタノールで10、100、1000、10000、100000倍希釈し、添加用標準溶液を調整した。その後、水1mLを入れたヘッドスペースバイアルに各添加用標準溶液を、それぞれ1μL添加し、標準試料とした。
Headspace Sampler (Perkin Elmer社製 Turbo Matrix 40)
バイアル保温温度 40℃
バイアル保温時間 30min
加圧時間 3.0min
注入時間 0.02min
ニードル温度 70℃
トランスファー温度 80℃
キャリアガス圧力(高純度ヘリウム) 124kPa
ガスクロマトグラフィー(島津社製 GC−2010 Plus AF)
カラム(Rxi(登録商標)−1ms: 長さ30m、内径0.53mm、液相膜厚1.5μm cat♯13370)
カラム温度 37℃
圧力 24.8kPa
カラム流量 5mL/min
流入方法 スプリット 1:0(実測1:18)
トランスファー流量 90mL
GC注入量 1.8mL(トランスファー流量×注入時間)
カラムへの試料注入量 0.1mL
注入口温度 250℃
検出機 FID(水素 40mL/min、空気 400mL/min、メイクアップガス ヘリウム 30mL/min)
検出器温度 250℃
3.3.アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物の培養によるイソプレン生成
アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08−Para/ispSK)および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08−Pbud/ispSK)を上記実施例2に記載されるジャー培養条件にて培養を行い、イソプレンの生成量を測定した。図1で示すように培養中の撹拌数を調節する事により、GI08−Para/ispSKを培養した培地中の溶存酸素濃度は培養14時間目から1.7ppmを維持し、GI08−Pbud/ispSKを培養した培地中の溶存酸素濃度は培養9時間目から検出限界以下(DO≒0ppm)となった。図2(A)に示すように、GI08−Para/ispSKおよび GI08−Pbud/ispSKは、発酵槽(液相および気相を備える系)を用いたジャー培養条件下で良好に増殖した。図2(B)に示すようにGI08−Pbud/ispSKは培養11時間目から、GI08−Para/ispSKは培養8時間目からイソプレン生産が検出され、イソプレン生産が誘導されたことが示された。培養21時間におけるイソプレンの生成量はGI08−Para/ispSKが63mg、GI08−Pbud/ispSKが66mgであった。この結果から、微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物はアラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物と同等のイソプレン生産能を有していることが示された。
実施例4:各種溶存酸素条件下における微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレン生成量
酸素濃度20%(v/v)の空気を培地中に供給し、培養中の撹拌数を調節することにより、微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(GI08−Pbud/ispSK)をDO≒0ppm、DO=0.7ppm、DO=1.7ppm、DO=3.4ppmの溶存酸素条件下で培養した。培地における溶存酸素濃度の経時変化を図3に示す。培養中のOD値(微生物の増殖の指標)はそれぞれDO≒0ppm条件下で35、DO=0.7ppm条件下で55、DO=1.7ppm条件下で57、DO=3.4ppm条件下で57となり、DO≒0ppm条件に比べて好気培養条件下でOD値が高かった(図4)。DO≒0ppm条件下ではDO≒0ppmとなる培養9時間目以降でイソプレン生産が誘導され、OD値が頭打ちになる培養13時間目以降で高いイソプレン生産性を示した。培養21時間におけるイソプレン生成量は、DO≒0ppm条件下で66mg、DO=0.7ppm条件下で21mg、DO=1.7ppm条件下で24mg、DO=3.4ppm条件下で25mgであった(図4)。この結果から、微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物においては溶存酸素濃度が検出限界以下になることでイソプレン生成期に移行し、その後もイソプレン生産が維持されることが示された。
実施例5:微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Plld/IspSM)及びリン酸欠乏誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC/IspSM,SWITCH−PpstS/IspSM)、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/IspSM)の構築
5−1)pMW−Para−mvaES−Ttrpの構築
5−1−1)Enterococcus faecalis由来mvaE遺伝子の化学合成
acetyl−CoA acetyltransferaseとhydroxymethlglutaryl−CoAreductaseをコードするEnterococcus faecalis由来mvaEの塩基配列、及びアミノ酸配列はすでに知られている(塩基配列のACCESSION番号:AF290092.1、(1479..3890)、アミノ酸配列のACCESSION番号:AAG02439)(J.Bacteriol.182(15),4319−4327(2000))。Enterococcus faecalis由来mvaEタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子の塩基配列を配列番号32、及び配列番号33にそれぞれ示す。mvaE遺伝子をE.coliで効率的に発現させるためにE.coliのコドン使用頻度に最適化したmvaE遺伝子を設計し、これをEFmvaEと名付けた。この塩基配列を配列番号34に示す。mvaE遺伝子は化学合成された後、pUC57(GenScript社製)にクローニングされ、得られたプラスミドをpUC57−EFmvaEと名付けた。
5−1−2)Enterococcus faecalis由来mvaS遺伝子の化学合成
hydroxymethylglutaryl−CoA synthaseをコードするEnterococcus faecalis由来mvaSの塩基配列、及びアミノ酸配列はすでに知られている(塩基配列のACCESSION番号:AF290092.1、complement(142..1293)、アミノ酸配列のACCESSION番号:AAG02438)(J.Bacteriol.182(15),4319−4327(2000))。Enterococcus faecalis由来mvaSタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子の塩基配列を配列番号35、及び配列番号36にそれぞれ示す。mvaS遺伝子をE.coliで効率的に発現させるためにE.coliのコドン使用頻度に最適化したmvaS遺伝子を設計し、これをEFmvaSと名付けた。この塩基配列を配列番号37に示す。mvaS遺伝子は化学合成された後、pUC57(GenScript社製)にクローニングされ、得られたプラスミドをpUC57−EFmvaSと名付けた。
5−1−3)アラビノース誘導型mvaES発現ベクターの構築
アラビノース誘導型メバロン酸経路上流遺伝子発現ベクターは次の手順で構築した。プラスミドpKD46を鋳型として配列番号38と配列番号39に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによりE.coli由来araCとaraBADプロモーター配列からなるParaを含むPCR断片を得た。プラスミドpUC57−EFmvaEを鋳型として配列番号40と配列番号41に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによりEFmvaE遺伝子を含むPCR断片を得た。プラスミドpUC57−EFmvaSを鋳型として配列番号42と配列番号43に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによりEFmvaS遺伝子を含むPCR断片を得た。プラスミドpSTV−Ptac−Ttrp(WO2013069634A1)を鋳型として配列番号44と配列番号45に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによりTtrp配列を含むPCR断片を取得した。これら4つのPCR断片を得るためのPCRにはPrime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いた。反応溶液はキットに添付された組成に従って調整し、98℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて1分/kbの反応を30サイクル行った。精製したParaを含むPCR産物とEFmvaE遺伝子を含むPCR産物を鋳型として配列番号38と配列番号41に示す合成オリゴヌクレオチドを、精製したEFmvaS遺伝子を含むPCR産物とTtrpを含むPCR産物を鋳型として配列番号42と配列番号45に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。その結果、ParaとEFmvaE遺伝子、EFmvaSとTtrp含むPCR産物を取得した。プラスミドpMW219(ニッポンジーン社製)は常法に従ってSmaI消化した。SmaI消化後pMW219と精製したParaとEFmvaE遺伝子を含むPCR産物、EFmvaS遺伝子とTtrpを含むPCR産物はIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。得られたプラスミドは、pMW−Para−mvaES−Ttrpと命名した。
5−2)メバロン酸経路の上流および下流遺伝子を保有する組込み型コンディショナル複製プラスミドの構築
5−2−1)
メバロン酸経路の上流および下流遺伝子を保有する組込み型プラスミドを構築するため、pAH162−λattL−TcR−λattR vector(Minaeva NI et al.,BMC Biotechnol.2008;8:63)を用いた。
pMW−Para−mvaES−TtrpのKpnI−SalIフラグメントを、pAH162−λattL−TcR−λattRのSphI−SalI認識部位中にクローニングした。その結果、E.coli Paraプロモーターおよびリプレッサー遺伝子araCの制御下にあるE.faecalis由来mvaESオペロンを保有するpAH162−Para−mvaESプラスミドを構築した(図5)。
オペロンのプロモーター欠損バリアントを得るために、pMW219−Para−mvaES−TtrpのEcl136II−SalIフラグメントを、同じ組込み型ベクター中にサブクローニングした。得られたプラスミドのマップを、図6に示す。
異なるプロモーターの制御下にあるmvaES遺伝子を保持する染色体固定用プラスミドのセットを構築した。この目的のために、I−SceI、XhoI、PstIおよびSphI認識部位を含むポリリンカーを、mvaES遺伝子の上流に位置する唯一のHindIII認識部位中に挿入した。この目的を達成するために、プライマー1および2(表2)とポリヌクレオチドキナーゼを用いてアニーリングを行った。得られた二本鎖DNAフラグメントを、ポリヌクレオチドキナーゼで5’リン酸化し、得られたリン酸化フラグメントをHindIIIにて切断したpAH162−mvaESプラスミドにライゲーション反応により挿入した。得られたpAH162−MCS−mvaESプラスミド(図7)は、mvaES遺伝子の前で所望の配向性を保ちながらプロモーターをクローニングに都合が良いものである。lldD、phoCおよびpstS遺伝子の調節領域を保持するDNAフラグメントを、P.ananatis SC17(0)株(Katashkina JI et al.,BMC Mol Biol.,2009;10:34)のゲノムDNAを鋳型として、ならびにプライマー3および4、プライマー5および6、ならびにプライマー7および8(表2)をそれぞれ用いて、PCRにより生成し、pAH162−MCS−mvaESの適切な制限酵素認識部位中にクローニングした。得られたプラスミドを、図8に示す。クローニングされたプロモーターフラグメントの配列決定を行い、予想されるヌクレオチド配列に正確に対応することを確認した。
5−2−2)pAH162−Km−Ptac−KDyI染色体固定用プラスミドの構築
tetAR遺伝子を含むpAH162−λattL−Tc−λattR(Minaeva NI et al.,BMC Biotechnol.,2008;8:63)のAatII−ApaIフラグメントを、プライマー9および10(表2)、ならびにpUC4Kプラスミド(Taylor LAおよびRose RE.,Nucleic Acids Res.,16,358,1988)を鋳型として用いたPCRで得られたDNAフラグメントと置換した。その結果、pAH162−λattL−Km−λattRが得られた(図9)。
tacプロモーターを、pAH162−λattL−Tc−λattRベクター(Minaeva NI et al.,BMC Biotechnol.,2008;8:63)のHindIII−SphI認識部位に挿入した。その結果、染色体固定用発現ベクターpAH162−Ptacが構築された。クローニングしたプロモーターフラグメントの配列を決定し、設計通りの配列であることを確認した。pAH162−Ptacのマップを、図10に示す。
ATG Service Gene(ロシア)により化学合成された、レアコドンを同義コドンに置換したS.cerevisiae由来PMK、MVDおよびyIdI遺伝子を保持するDNAフラグメント(図11)を、染色体固定用ベクターpAH162−PtacのSphI−KpnI制限酵素認識部位中にサブクローニングした。化学合成されたKDyIオペロンを含むDNA配列を配列番号70に示す。Ptac−KDyI発現カセットを保持する得られたプラスミドpAH162−Tc−Ptac−KDyIを、図12(A)に示す。その後、薬剤耐性マーカー遺伝子を置換する目的でtetAR遺伝子を保持するpAH162−Tc−Ptac−KDyIのNotI−KpnIフラグメントを、pAH162−λattL−KmR−λattRにて対応するフラグメントにより置換した。その結果、カナマイシン耐性遺伝子kanをマーカーとするpAH162−Km−Ptac−KDyIプラスミドを得た(図12(B))。
古典的SD配列に連結された、メタノセラ・パルディコラ(Methanocella paludicola)株であるSANAE[完全ゲノム配列については、GenBankアクセッション番号AP011532を参照]由来の推定mvk遺伝子のコーディング部分を含む化学合成DNAフラグメントを、上記組込み型発現ベクターpAH162−PtacのPstI−KpnI認識部位中にクローニングした。mvk遺伝子を保持する染色体固定プラスミドのマップを、図13に示す。
5−3)レシピエント株SC17(0) ΔampC::attBphi80 ΔampH::attBphi80 Δcrt::Ptac−mvk(M.paludicola)の構築
attLphi80およびattRphi80に隣接したkan遺伝子、ならびに標的染色体部位に相同な40bp配列を含むPCR増幅DNAフラグメントのλRed依存的な組込み(Katashkina JI et al.,BMC Mol Biol.,2009;10:34)、続いて、カナマイシン耐性マーカーのファージphi80 Int/Xis依存的な除去(Andreeva IG et al.,FEMS Microbiol Lett.,2011;318(1):55−60)を含む2段階の手法を用いて、ΔampH::attBphi80およびΔampC::attBphi80染色体改変を、P.ananatis SC17(0)株に段階的に導入した。SC17(0)は、P.ananatis AJ13355のλRed耐性誘導体である(Katashkina JI et al.,BMC Mol Biol.,2009;10:34);P.ananatis AJ13355の注釈付完全ゲノム配列は、PRJDA162073またはGenBankアクセッション番号AP012032.1およびAP012033.1として利用可能である。pMWattphiプラスミド[Minaeva NI et al.,BMC Biotechnol.,2008;8:63]を鋳型として用いて、プライマー11および12、ならびにプライマー13および14(表2)をプライマーとして用いて、それぞれampHおよびampC遺伝子領域への組込みに使用されるDNAフラグメントを生成した。プライマー15および16、ならびにプライマー17および18(表2)を、得られた染色体改変物のPCR検証に用いた。
並行して、P.ananatis AJ13355ゲノムの一部である、pEA320 320kbメガプラスミド上に位置するcrtオペロンの代わりにphi80ファージのattB部位を保持するP.ananatis SC17(0)の誘導体を構築した。この株を得るために、ゲノム中の標的部位に相同な40bp領域に隣接したattLphi80−kan−attRphi80を保持するPCR増幅DNAフラグメントのλRed依存的な組込みを、以前に記載された手法(Katashkina JI et al.,BMC Mol Biol.,2009;10:34)にしたがって行った。attLphi80−kan−attRphi80によるcrtオペロンの置換に用いられるDNAフラグメントを、プライマー19および20(表2)を用いる反応で増幅した。pMWattphiプラスミド(Minaeva NI et al.,BMC Biotechnol.,2008;8:63)を、この反応で鋳型として用いた。得られた組込み体を、SC17(0)Δcrt::attLphi80−kan−attRphi80と名付けた。プライマー21および22(表2)を、SC17(0)Δcrt::attLphi80−kan−attRphi80.の染色体構造のPCR検証に用いた。構築株からのカナマイシン耐性マーカーの除去を、既報の手法に従いpAH129−catヘルパープラスミドを用いて行った(Andreeva IG et al.,FEMS Microbiol Lett.,2011;318(1):55−60)。オリゴヌクレオチド21および22を、得られたSC17(0)Δcrt::attBphi80株のPCR検証に用いた。得られたΔampC::attBphi80、ΔampH::attBphi80およびΔcrt::attBphi80ゲノム改変物のマップをそれぞれ、図14(A)、(B)および(C)に示す。
上記pAH162−Ptac−mvk(M.paludicola)プラスミドを、既報のプロトコル(Andreeva IG et al.,FEMS Microbiol Lett.,2011;318(1):55−60)にしたがってSC17(0)Δcrt::attBphi80のattBphi80部位に組み込んだ。プラスミドの組込みを、プライマー21および23、ならびにプライマー22および24(表2)を用いたポリメラーゼ連鎖反応で確認した。その結果、SC17(0)Δcrt::pAH162−Ptac−mvk(M.paludicola)株を得た。Δcrt::pAH162−Ptac−mvk(M.paludicola)改変物のマップを、図15(A)に示す。
その後、ゲノムDNAエレクトロポレーション手法(Katashkina JI et al.,BMC Mol Biol.,2009;10:34)を介してSC17(0)Δcrt::pAH162−Ptac−mvk(M.paludicola)の遺伝形質をSC17(0) ΔampC::attBphi80 ΔampH::attBphi80へ移行させた。得られた株はテトラサイクリン耐性遺伝子tetRAをマーカーとして利用している。tetRAマーカー遺伝子を含むpAH162−Ptac−mvk(M.paludicola)組込み型プラスミドのベクター部分を、既報のpMW−intxis−catヘルパープラスミド[Katashkina JI et al.,BMC Mol Biol.,2009;10:34]を用いて除去した。その結果、マーカー遺伝子欠損株SC17(0) ΔampH::attBφ80 ΔampC::attBφ80 Δcrt::Ptac−mvk(M.paludicola)を得た。Δcrt::Ptac−mvk(M.paludicola)ゲノム改変物のマップを、図15(B)に示す。
5−4)SWITCH株のセットの構築
pAH162−Km−Ptac−KDyIプラスミドを、既報のプロトコル(Andreeva IG et al. FEMS Microbiol Lett. 2011;318(1):55−60)にしたがい、SC17(0)ΔampH::attBφ80 ΔampC::attBφ80 Δcrt::Ptac−mvk(M.paludicola)/pAH123−cat株の染色体に組み込んだ。50mg/Lカナマイシンを含むLBアガー上に細胞を撒いた。増殖したKmクローンを、プライマー11および15、ならびにプライマー11および17(表2)を用いたPCR反応で試験した。ΔampH::attBφ80またはΔampC::attBφ80mに組み込まれたpAH162−Km−Ptac−KDyIプラスミドを保持する株を選択した。ΔampH::pAH162−Km−Ptac−KDyIおよびΔampC::pAH162−Km−Ptac−KDyI染色体改変物のマップを、図16(A)および(B)に示す。
pAH162−Px−mvaES(ここで、Pxは、以下の調節領域のうちの一つである:araC−Para(E.coli)、PlldD、PphoC、PpstS)を、既報のプロトコル[Andreeva IG et al.,FEMS Microbiol Lett.,2011;318(1):55−60]にしたがってpAH123−catヘルパープラスミドを用いてSC17(0) ΔampC::pAH162−Km−Ptac−KDyI ΔampH::attBphi80 Δcrt::Ptac−mvk(M.paludicola)およびSC17(0) ΔampC::attBphi80 ΔampH::pAH162−Km−Ptac−KDyI Δcrt::Ptac−mvk(M.paludicola)レシピエント株のattBphi80部位に挿入した。その結果、SWITCH−Px−1およびSWITCH−Px−2とそれぞれ名付けられた2セットの株を得た。ΔampH::pAH162−Px−mvaESおよびΔampC::pAH162−Px−mvaES染色体改変物のマップを図17に示す。
5−5)イソプレンシンターゼ発現プラスミドの導入
常法に従いSWITCH菌のコンピテントセルを作成し、エレクトロポレーションによりムクナ由来イソプレンシンターゼの発現プラスミドであるpSTV28−Ptac−IspSM(WO2013/179722)を導入した。得られたイソプレノイド化合物生成微生物をそれぞれ、SWITCH−Para/IspSM、SWITCH−Plld/IspSM、SWITCH−PpstS/IspSM、SWITCH−PphoC/IspSMと命名した。
実施例6:リン酸欠乏誘導型イソプレノイド化合物生成微生物SWITCH−PphoC/IspSM、SWITCH−PpstS/IspSMおよびアラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物SWITCH−Para/IspSMの培養
6−1)イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM、SWITCH−PphoC/ispSM、SWITCH−PpstS/ispSM)の培養
イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM、SWITCH−PphoC/ispSM、SWITCH−PpstS/ispSM)の培養には1L容積の発酵槽を使用した。グルコース培地は表3に示す組成になるように調整した。クロラムフェニコール(60mg/L)を含むLBプレートにこれらのイソプレノイド化合物生成微生物それぞれ塗布し、34℃にて16時間培養した。0.3Lのグルコース培地を1L容積の発酵槽に投入後、充分に生育したプレート1枚分の菌体を接種し、培養を開始した。培養条件は、pH7.0(アンモニアガスにて制御)、30℃、150mL/minとなるように通気した。好気培養を行う場合には、ガルバニ式DOセンサーSDOU型(エイブル株式会社)を用いて培養液中の酸素濃度(Dissolved Oxigen,DO)を測定し、DOが任意の濃度になるように撹拌による制御を行った。培養中は、培地中のグルコース濃度が10g/L以上になるよう500g/Lに調整したグルコースを連続的に添加した。ODは分光光度計(HITACHI U−2900)によって600nmで測定した。
A区とB区を0.15L調整後、115℃、10minで加熱滅菌を行った。放冷後A区とB区を混合し、クロラムフェニコール(60mg/L)を添加し、培地として使用した。
6−2)イソプレン生産期への誘導方法
アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物は、メバロン酸経路上流遺伝子をアラビノース誘導型プロモーターにて発現させるため、L−アラビノース(和光純薬工業)存在下でイソプレン生産量が顕著に向上する。イソプレン生産期への誘導方法として、培養液を経時的に分析し、OD値が16になった時点で終濃度20mMとなるようにL−アラビノースを添加した。
リン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物は、メバロン酸経路上流遺伝子をリン欠乏型誘導プロモーターにて発現させるため、培地中のリンがある一定濃度以下になることでイソプレン生産量が顕著に向上する。
6−3)発酵ガス中のイソプレン濃度測定方法と培養液中の総リン濃度の測定方法
発酵ガス中のイソプレン濃度はマルチガスアナライザー(GASERA社製 F10)を用いて測定した。培養液中の総リン濃度はホスファC−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。
6−4)アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物およびリン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物のジャー培養におけるイソプレン生成量
アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM)およびリン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC/ispSM、SWITCH−PpstS/ispSM)を上記のジャー培養条件にて培養を行い、イソプレンの生成量(mg/Batch)、および発酵ガス中のイソプレン濃度(ppm)を測定した(図19、20)。培養液中の総リン濃度は図18に示すように培養9時間目でSWITCH−PphoC/ispSM、SWITCH−PpstS/ispSMともに50mg/L以下となり、タイミングを同じくしてイソプレンの生産が検出された。SWITCH−PphoC/ispSMおよびSWITCH−PpstS/ispSMは、SWITCH−Para/ispSMと比較してイソプレンの生成開始からイソプレン生成最大速度を示すまでの時間が短く、急激にイソプレン生成速度が増加した(図19)。培養48時間におけるイソプレンの生成量はSWITCH−Para/ispSMが563mg、SWITCH−PphoC/ispSMが869mg、SWITCH−PpstS/ispSMが898mgであった(図19)。この結果から、リン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物は総リン濃度が50mg/L以下となる条件下でイソプレン生成が誘導され、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物よりも優れたイソプレン生産能を有していることが示された。
実施例7:微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Plld/IspSM)の培養およびアラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/IspSM)の培養
7−1)イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM、SWITCH−lld/ispSM)の培養
イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM、SWITCH−lld/ispSM)の培養は6−1)と同様の条件にて行った。
7−2)イソプレン生産期への誘導方法
アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物は、6−2)と同様の方法にてイソプレン生産期へ誘導した。
微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−lld/ispSM)は、酸素濃度20%(v/v)の空気を培地中に供給し培養中の撹拌数を調節することにより、培地中の溶存酸素をDO≒0ppmとすることでイソプレン生産期へ誘導した。培地における溶存酸素濃度の経時変化を図21に示す。
7−3)発酵ガス中のイソプレン濃度測定方法と培養液中の溶存酸素の測定方法
発酵ガス中のイソプレン濃度はマルチガスアナライザー(GASERA社製 F10)を用いて測定した。培養液中の溶存酸素濃度はガルバニ式DOセンサーSDOU型(エイブル株式会社)を用いて測定した。
7−4)アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物のジャー培養におけるイソプレン生成量
アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−Para/ispSM)および微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−lld/ispSM)を上記のジャー培養条件にて培養を行い、イソプレンの生成量(mg/Batch)、および発酵ガス中のイソプレン濃度(ppm)を測定した(図22、23)。培養液中の溶存酸素濃度は図21に示すように培養8時間目でDO≒0ppmとなり、間もなくしてイソプレンの生産が検出された。培養48時間におけるイソプレンの生成量はSWITCH−Para/ispSMが563mg、SWITCH−Plld/ispSMが642mgであった(図22)。この結果から、微好気誘導型イソプレノイド化合物生成微生物はDO≒0ppm以下となる条件でイソプレンの生成が誘導され、アラビノース誘導型イソプレノイド化合物生成微生物と同等のイソプレン生産能を有していることが示された。
参考例1)E.coli MG1655 Ptac−KDyI株の構築
E.coli MG1655 Ptac−KDyI株は、MG1655 Ptac−KKDyI株〔WO2013/179722の実施例7−5)を参照〕においてERG12遺伝子を欠損させることにより作製した。具体的には以下のとおりである。
MG1655 Ptac−KKDyI株に温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46をエレクトロポレーション法により導入した。プラスミドpKD46[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,vol.97,No.12,p6640−6645]は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRedシステムの遺伝子(λ、β、exo遺伝子)を含むλファージの合計2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBLアクセッション番号:J02459,第31088番目〜33241番目)を含む。MG1655 Ptac−KKDyI株のコンピテントセルを調整後、エレクトロポレーション法によりpKD46を導入し、100(mg/L)のアンピシリンを含むLBプレートに均一に塗布し、37℃にて18時間培養した。その後、得られたプレートから、アンピシリン耐性を示す形質転換体を取得した。E.coli MG1655 Ptac−KDDyI株にpKD46が導入された株をMG1655 Ptac−KDDyI/pKD46株と名付けた。attL−tetR−attR−Ptac遺伝子断片(WO2013/179722の配列番号38)を鋳型とし、WO2013/179722の配列番号39と配列番号40から成る合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして、Prime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてPCRを行った。反応溶液はキットに添付された組成に従って調整し、98℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて1分/kbの反応を30サイクル行った。その結果、attL−tetR−attR−Ptacを含むMVK遺伝子欠損用断片を取得した。MG1655 Ptac−KKDyI/pKD46株のコンピテントセルを調整後、精製したattL−tetR−attR−Ptacを含むMVK遺伝子欠損用断片をエレクトロポレーション法により導入した。エレクトロポレーションの後、テトラサイクリン耐性を獲得したコロニーを取得した。WO2013/179722の配列番号41と配列番号42から成る合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR反応を行い、染色体上のERG12遺伝子が欠損していることを確認した。得られた変異体をE.coli MG1655 Ptac−KDyIと名付けた。
参考例2)アラビノース誘導型mvaES発現ベクター(pMW−Para−mvaES−Ttrp)の構築
アラビノース誘導型メバロン酸経路上流遺伝子発現ベクター(pMW−Para−mvaES−Ttrp)は次の手順で構築した。プラスミドpKD46を鋳型としてWO2013/179722の配列番号49と配列番号50に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによりE.coli由来araCとaraBADプロモーター配列からなるParaを含むPCR断片を得た。プラスミドpUC57−EFmvaEを鋳型としてWO2013/179722の配列番号51と配列番号52に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによりEFmvaE遺伝子を含むPCR断片を得た。プラスミドpUC57−EFmvaSを鋳型としてWO2013/179722の配列番号53と配列番号54に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによりEFmvaS遺伝子を含むPCR断片を得た。プラスミドpSTV−Ptac−Ttrpを鋳型(プラスミド源)としてWO2013/179722の配列番号55と配列番号56に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRによりTtrp配列を含むPCR断片を取得した。これら4つのPCR断片を得るためのPCRにはPrime Starポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いた。反応溶液はキットに添付された組成に従って調整し、98℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて1分/kbの反応を30サイクル行った。精製したParaを含むPCR産物とEFmvaE遺伝子を含むPCR産物を鋳型として配列番号49と配列番号52に示す合成オリゴヌクレオチドを、精製したEFmvaS遺伝子を含むPCR産物とTtrpを含むPCR産物を鋳型としてWO2013/179722の配列番号53と配列番号56に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。その結果、ParaとEFmvaE遺伝子、EFmvaSとTtrp含むPCR産物を取得した。プラスミドpMW219(ニッポンジーン社製)は常法に従ってSmaI消化した。SmaI消化後pMW219と精製したParaとEFmvaE遺伝子を含むPCR産物、EFmvaS遺伝子とTtrpを含むPCR産物はIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結した。得られたプラスミドは、pMW−Para−mvaES−Ttrpと命名した。
リン酸飢餓誘導
(背景)
本検討では細胞増殖期から物質生産期への移行をリン酸飢餓応答の代謝スイッチにより実現させようとしたものである。一般的に、増殖期と物質生産期では最適な代謝状態は異なっている。従来、各期で最適な代謝状態を実現する方法は知られているが、増殖期に最適な培養条件から物質生産期に最適な培養条件に切り替えても細胞活性の低下等の理由により切り替えがうまくいかないことが多い。
E.coliにおいて細胞内におけるリン酸濃度の低下は、ATP獲得量の低下を引き起こす事が知られている(Schuhmacher, T., Loffler, M., Hurler, T., Takors, R., 2014. Phosphate limited fed−batch processes: Impact on carbon usage and energy metabolism in Escherichia coli. J. Biotechnol. doi:10.1016/j.jbiotec.2014.04.025)。その為、ATPの要求量が高い代謝産物の生産においては、リン酸濃度の低下が代謝産物の生産速度を低下させる事が予測される。
イソプレンの生成経路であるメバロン酸経路ではATPを基質として多段階のリン酸化反応が存在する(Michelle C Y Chang & Jay D Keasling, Production of isoprenoid pharmaceuticals by engineered microbes, Nature Chemical Biology 2, 674 − 681 (2006))ため、イソプレン発酵はATPの要求量が高い代謝物の生産と考えられる。従って、メバロン酸経路を有するイソプレン生産菌を低リン酸濃度で培養することは、イソプレン生産量の低下を引き起こすが容易に懸念された。
リン酸飢餓応答が遺伝子の発現制御に対し迅速に作用する事は文献等で知られている(Baek JH et al.,J Microbiol Biotechnol. 2007 Feb;17(2):244−52;WO 2003054140 A2)が、リン酸飢餓応答と恒常発現型の遺伝子発現制御を組み合わせた上で、酵素レベルでの阻害などが知られた条件において、リン酸飢餓応答により代謝が迅速に切り替わり、物質生産レベルで素早い応答が観測されることは容易に期待しえない。
(検討により観察された効果の例)
我々の構築したリン酸飢餓誘導型イソプレン生産菌では、対照であるアラビノース誘導型イソプレン生産菌よりも、高いイソプレン濃度が確認された。
また、予期せぬ効果として、応答性(最大イソプレン濃度に到達するまでの時間)が速い結果が観察された。(実施例6、図19)。これまでのイソプレン発酵における先行事例では主に誘導剤としてIPTGが使用されている。(US 8,288,148 B2、US8,361,762 B2、US8,470,581 B2、US 8,569,026 B2、US 8,507,235 B2、US 8,455,236 B2、US 2010−0184178 A1)。これらの事例においては誘導剤を添加後、菌体あたりのイソプレン生産能が最大値に達する、あるいは、イソプレン蓄積が最大値に達するまでの時間はおよそ8時間から22時間かかっている。これに対し、実施例6に示すリン酸飢餓誘導の手法を用いると、リン酸欠乏後、反応容器内のイソプレンガス濃度の最大値に3から6時間以内に到達した。
微好気誘導
(背景)
本検討では細胞増殖期から物質生産期への移行を溶存酸素濃度の欠乏により引き起こされる代謝の変化により実現させようとしたものである。一般的に、微生物が酸素を利用可能な培養条件と利用できない培養条件では細胞の代謝状態が大きく異なっていることが知られている(Martinez I., Bennett G. N., San K. Y.. 2010. Metabolic impact of the level of aeration during cell growth on anaerobic succinate production by an engineered Escherichia coli strain. Metab. Eng. 12:499−509)。従来、好気的な条件や嫌気的な条件にて最適な代謝状態を実現する方法は知られている。このことを応用し、培養中の酸素濃度条件を変更する事により、増殖期に最適な培養条件から物質生産期に最適な培養条件に切り替える事は、コハク酸やアルコール発酵など本質的に嫌気条件の発酵を行うために検討されることが多い(Blombach B, Riester T, Wieschalka S, Ziert C, Youn JW, Wendisch VF, Eikmanns BJ. Corynebacterium glutamicum tailored for efficient isobutanol production. Appl Environ Microbiol. 2011 May;77(10):3300−10)。これに対し、イソプレンやグルタミン酸など余剰還元力を酸素呼吸により再酸化する事が要求される発酵においては、溶存酸素濃度が欠乏した条件が物質生産に適した代謝状態をもたらす条件と見なさない為、同業他社が積極的に採用する細胞増殖期から物質生産期への移行方法ではない。
より詳細には次のとおりである。好気条件下では、通常、酸素が最終電子受容体として機能する事でNADHの再酸化が行われる(呼吸)。微好気条件下などの低酸素濃度環境下では、酸素の供給量が律速となり、細胞内のNADH濃度が向上する。E. coliではこの余剰NADHの再酸化反応として、乳酸やエタノール合成経路が存在し、これらの物質を生産する過程でNADHの再酸化を行う。P. ananatisにおいても同様に、低酸素濃度環境下では2,3−butadiol、乳酸、エタノール等を合成する事で細胞内の酸化還元バランスを維持する。つまり、低酸素濃度環境下では、これらの物質への代謝流量が増加する為、イソプレン生産量が低下する事が推察される。メバロン酸経路を介してグルコースからイソプレンを生産するとき、余剰のNADHが生じることが理論収率の計算上明らかである(Yadav GV et al., The future of metabolic engineering and synthetic biology: Towards a systematic practice, Metabolic Engineering, 14, 233−241, 2012)。通常このNADHの再酸化には酸素が必要となる為、当業者はあえて、酸素濃度が低い環境下での培養を選択しない。実際、Saccharomyces cerevisiaeによるイソプレン生産の検討において、培養条件の比較検討の結果、溶存酸素濃度が欠乏した微好気条件下よりも十分な溶存酸素濃度を供給した好気条件下において、菌体生育とイソプレン生産能が向上する事知られている(Lv X et al.,Journal of Biotechnology,186,128−136,2014)。
(検討により観察された効果の例)
E.aerogenesをイソプレン生産菌の親株として用いた場合、GI08/Pbud/IspSKは溶存酸素濃度(DO)がほぼゼロの場合に、成功裏に増殖期からイソプレン生産期に移行する事が示された(実施例4、図4)。
P.ananatisをイソプレン生産菌の親株として用いた場合、一定期間、溶存酸素濃度(DO)がほぼゼロの条件に曝すことにより増殖期からイソプレン生産期に移行し、イソプレン生産期では再び溶存酸素濃度を上昇する事により、イソプレン生産に適した代謝状態へ移行した(実施例7、図22,23)。図23に示すように対照であるアラビノース誘導型イソプレン生産菌よりも、高いイソプレン濃度が確認された。
実施例8:ポリイソプレンの製造
イソプレンを、発酵排気管を通過させることにより液体窒素冷却トラップで回収する。回収したイソプレンを、十分に乾燥した100mLガラス容器中で、窒素雰囲気下で35gのヘキサン(Sigma−Aldrich)、ならびに10gのシリカゲル(Sigma−Aldrich,カタログ番号236772)、および10gのアルミナ(Sigma−Aldrich,カタログ番号267740)と混合する。得られた混合液を、室温で5時間放置する。次いで、上清液を採取し、十分に乾燥した50mLガラス容器中に加える。
一方で、グローブ・ボックスにおいて窒素雰囲気下、40.0μmolのトリス[ビス(トリメチルシリル)アミド]ガドリニウム、150.0μmolのトリブチルアルミニウム、40.0μmolのビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]アミン、40.0μmolのトリフェニルカーボニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CBC6F5)4)をガラス溶液に用意し、これを5mLのトルエン(Sigma−Aldrich,カタログ番号245511)中に溶解させて、触媒液を得る。その後、触媒液をグローブ・ボックスから採り、モノマー液に加え、次いで、これをポリマー反応(50℃で120分間)に供する。
ポリマー反応後、5質量%の2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)を含む1mLのイソプロパノール溶液を加えて、反応を停止させる。次いで、多量のメタノールをさらに加えて、ポリマーを単離し、70℃で真空乾燥させて、ポリマーを得る。
実施例9:ゴム組成物の製造
表5に示されるように処方されるゴム組成物を調製し、145℃で35分間加硫処理する。
実施例10:SC17(0)ΔgcdとSWITCH−PhoCΔgcdの構築とイソプレンシンターゼの導入
P.アナナティスのgcd遺伝子は、グルコースデヒドロゲナーゼをコードしており、P.アナナティスは好気性増殖中にグルコン酸を蓄積することが知られている(Andreeva IGら,FEMS Microbiol Lett.2011 May;318(1):55−60)。
プライマーgcd−attLおよびgcd−attR(表6)及び鋳型としてpMW118−attL−kan−attRプラスミドを用いるPCRで得られたDNAフラグメントのλRed依存的な組込み(Minaeva NIら,BMC Biotechnol.2008;8:63)により、gcd遺伝子を欠損したSC17(0)Δgcd株を構築する。組込み体を確認するため、プライマーgcd−t1およびgcd−t2(表6)を用いる。
SC17(0)Δgcd株のゲノムDNAを、Wizard Genomic DNA Purification Kit(プロメガ)を用いて単離し、既報の方法〔Katashkina JIら,BMC Mol Biol.2009;10:34〕にしたがってSWITCH−PphoC株のマーカーを含まない誘導体中に電気形質転換する。その結果、SWITCH−PphoC−Δgcd(KmR)株を得る。プライマーgcd−t1およびgcd−t2を、得られた組込み体のPCR解析に用いる。カナマイシン耐性マーカー遺伝子を、標準的なλIng/Xis媒介手法〔Katashkina JIら,BMC Mol Biol.2009;10:34〕にしたがって得る。得られた株を、SWITCH−PphoC Δgcd株と命名する。
SWITCH−PphoC Δgcd株のコンピテントセルを標準的な方法にしたがって調製し、ムクナ由来のイソプレンシンターゼ発現用ベクターであるpSTV28−Ptac−IspSM(WO2013/179722)をエレクトロポレーションにより導入した。得られたイソプレノイド化合物生成微生物を、SWITCH−PphoC Δgcd/IspSMと命名した。
実施例11:SWITCH−PhoCΔgcd/IspSMの培養評価
11−1)イソプレノイド化合物生成微生物のジャー培養条件
イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC/IspSM、SWITCH−PphoCΔgcd/IspSM)の培養には1L容積の発酵槽を使用した。グルコース培地は表7に示す組成になるように調整した。クロラムフェニコール(60mg/L)を含むLBプレートにこれらのイソプレノイド化合物生成微生物をそれぞれ塗布し、34℃にて16時間培養した。0.3Lのグルコース培地を1L容積の発酵槽に投入後、充分に生育したプレート1枚分の菌体を接種し、培養を開始した。培養条件は、pH 7.0(アンモニアガスにて制御)、温度30℃、150 mL/minとなるように通気した。好期培養を行う場合には、ガルバニ式DOセンサーSDOU型(エイブル株式会社)を用いて培養液中の酸素濃度(Dissolved Oxigen, DO)を測定し、DO値が5%になるように撹拌による制御を行った。培養中は、培地中のグルコース濃度が10 g/L以上になるよう500 g/Lに調整したグルコースを連続的に添加した。ODは分光光度計(HITACHI U−2900)によって600nmで測定した。48時間の培養でSWITCH−PphoC/IspSM、SWITCH−PphoCΔgcd/IspSMは、それぞれ63.9g、77.8gのグルコースを消費した。
A区とB区を0.15L調整後、115℃、10minで加熱滅菌を行った。放冷後A区とB区を混合し、クロラムフェニコール(60mg/L)を添加し、培地として使用した。
11−2)イソプレン生産期への誘導方法
リン欠乏型イソプレノイド化合物生成微生物は、メバロン酸経路上流遺伝子をリン欠乏型誘導プロモーターにて発現させるため、培地中のリンがある一定濃度以下になることでイソプレン生産量が顕著に向上する。
11−3)発酵ガス中のイソプレン濃度測定方法
発酵ガス中のイソプレン濃度はマルチガスアナライザー(GASERA社製 F10)を用いて測定した。
11−4)培養液中のグルコン酸濃度の測定方法
培養上清を純水で10倍希釈し、0.45μmフィルターでろ過した後、高速液体クロマトグラフ(日立ハイテクノロジーズ)ELITE LaChromを用いて下記の方法に従って分析した。
<分離条件>
カラム Shim−pack SCR−102H(8mmI.D.×300mmL)二本直列接続
ガードカラム SCR−102H(6mmI.D.×50mmL)
移動相 5mM p−トルエンスルホン酸
流量 0.8ml/min
温度 50℃
Injection.Volume 10μl
<検出条件>
緩衝液 5mM p−トルエンスルホン酸および100μM EDTAを含む20mM Bis−Tris水溶液
流量 0.8ml/min
検出器 CDD−10AD polarity + response SLOW temperature 53℃(カラム温度+3℃) scale1×2μS/cm
11−5)イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC/IspSM、SWITCH−PphoCΔgcd/IspSM)のジャー培養におけるイソプレン生成量
イソプレノイド化合物生成微生物(SWITCH−PphoC/IspSM、SWITCH−PphoCΔgcd/IspSM)を上記のジャー培養条件に従って培養を行い、イソプレンの生成量を測定した。SWITCH−PphoC/IspSMはイソプレン生成開始後にO.D.値が低下し(図25(A))、培養48時間で2-ケトグルコン酸を30.9g/L蓄積した(図26)。SWITCH−PphoCΔgcd/IspSMはイソプレン生成開始後もO.D.は一定の値を示し(図25(A))、培養48時間の2-ケトグルコン酸蓄積は1.4g/Lと極めて低い値であった(図26)。培養48時間におけるイソプレンの生成量はSWITCH−PphoC/IspSMが1771mg、SWITCH−PphoCΔgcd/IspSMが2553mgであった(図25(B))。この結果から、SWITCH−PphoCΔgcd/IspSMは2-ケトグルコン酸の生成が抑えられ、イソプレンの生成量が向上することが示された。
実施例12:リナロール合成酵素発現プラスミドの構築
12−1)Actinidia arguta(サルナシ)由来リナロールシンターゼ遺伝子の取得
Actinidia arguta由来リナロールシンターゼ(AaLINS)遺伝子の塩基配列(GenBank accession number:GQ338153)、及びアミノ酸配列(GenPept accession number: ADD81294)は既に知られている。Actinidia arguta由来リナロールシンターゼタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子の塩基配列を配列番号75、及び配列番号76に示す。AaLINS遺伝子を効率的に発現させる為、二次構造を解消させるようにコドンを最適化し、さらに葉緑体移行シグナルが切断されたAaLINS遺伝子を設計し、これをopt_AaLINSと名付けた。opt_AaLINSの塩基配列を配列番号77に示す。opt_AaLINS遺伝子にtacプロモーター領域(deBoer,et al.,(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80,21−25)を付加したDNAは化学合成された後、pUC57(GenScript社製)にクローニングされ、得られたプラスミドをpUC57−Ptac−opt_AaLINSと名付けた。
12−2)Coriandrum sativum(コリアンダー)由来リナロールシンターゼ遺伝子の取得
Coriandrum sativum由来リナロールシンターゼ(CsLINS)遺伝子の塩基配列(GenBank accession number:KF700700)、及びアミノ酸配列(GenPept accession number: AHC54051)は既に知られている。Coriandrum sativum由来リナロールシンターゼタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子配列を配列番号78、及び配列番号79に示す。CsLINS遺伝子を効率的に発現させる為、二次構造を解消させるようにコドンを最適化し、さらに葉緑体移行シグナルが切断されたCsLINS遺伝子を設計し、これをopt_CsLINSと名付けた。opt_CsLINSの塩基配列を配列番号80に示す。opt_CsLINS遺伝子にtacプロモーター領域(deBoer, et al.,(1983) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80,21−25)を付加したDNAは化学合成された後、pUC57(GenScript社製)にクローニングされ、得られたプラスミドをpUC57−Ptac−opt_CsLINSと名付けた。
12−3)Escherichia coli由来変異型ファルネシル二リン酸シンターゼ遺伝子の取得
Escherichia coliのファルネシル二リン酸シンターゼは、ispA遺伝子(配列番号81)によりコードされている(Fujisaki S., et al.(1990) J.Biochem.(Tokyo) 108:995−1000.)。Bacillus stearothermophilus由来のファルネシル二リン酸シンターゼにおいて、菌体内のゲラニル二リン酸の濃度を高める変異が明らかにされている(Narita K.,et al.(1999) J Biochem 126(3):566−571.)。本知見を基にEscherichia coliのファルネシル二リン酸シンターゼにおいても、同様の変異体が作出されている(Reiling KK et al.(2004) Biotechnol Bioeng.87(2) 200−212.)。ゲラニル二リン酸生成活性の高いispA変異体(S80F)遺伝子を効率的に発現させるため、二次構造を解消させるようにコドンを最適化した配列を設計し、これをispAと名付けた。ispAの塩基配列を配列番号82に示す。ispA遺伝子は化学合成された後、pUC57(GenScript社製)にクローニングされ、得られたプラスミドをpUC57−ispAと名付けた。
12−4)opt_AaLINS、及びispA遺伝子の同時発現プラスミドの構築
配列番号83に示したプライマーと配列番号85に示したプライマーを用いてpUC57−Ptac−opt_AaLINSを鋳型にPCRを行い、Ptac−opt_AaLINS断片を得た。さらに、配列番号86に示したプライマーと配列番号87に示したプライマーを用いてpUC57−ispAを鋳型にPCRを行い、ispA断片を得た。精製したPtac−opt_AaLINS断片、及びispA断片を制限酵素PstIとScaIで消化したpACYC177(ニッポンジーン社製)にIn−Fusion HD cloning kit(クロンテック社製)を用いて連結し、pACYC177−Ptac−opt_AaLINS−ispAを構築した。
12−5)opt_CsLINS、及びispA*遺伝子の同時発現用プラスミドの構築
配列番号83に示したプライマーと配列番号88に示したプライマーを用いてpUC57−Ptac−opt_CsLINSを鋳型にPCRを行い、Ptac−opt_CsLINS断片を得た。さらに、配列番号89に示したプライマーと配列番号87に示したプライマーを用いてpUC57−ispAを鋳型にPCRを行い、ispA*断片を得た。精製したPtac−opt_CsLINS断片、及びispA*断片を制限酵素PstIとScaIで消化したpACYC177(ニッポンジーン社製)にIn−Fusion HD cloning kit(クロンテック社製)を用いて連結し、pACYC177−Ptac−opt_CsLINS−ispAを構築した。
12−6)リナロール生産株の作製
SWITCH−PphoC Δgcdのコンピテントセルを調製し、エレクトロポレーションによりpACYC177、pACYC177−Ptac−opt_AaLINS−ispAあるいはpACYC177−Ptac−opt_CsLINS−ispAを導入した。得られた株をそれぞれ、SWITCH−PphoC Δgcd/pACYC177、SWITCH−PphoC Δgcd/AaLINS−ispA、SWITCH−PphoC Δgcd/CsLINS−ispAと命名した。
実施例13:SWITCH−PphoC Δgcd株由来リナロールシンターゼ発現株のリナロール生産能の評価
実施例12で得られたSWITCH−PphoC Δgcd/AaLINS−ispA株、SWITCH−PphoC Δgcd/CsLINS−ispA株、及びSWITCH−PphoC Δgcd/pACYC177株のグリセロールストックを融解し、各株の菌体懸濁液50μLを50mg/Lのカナマイシンを含むLBプレートに均一に塗布し、34℃にて16時間培養した。得られたプレート上の菌体を、イノキュレーティングループ10μL(Thermo Fisher Scientific社製)のループ部分1/4程度の量を掻き取り、AGCテクノグラス社製試験管(直径×長さ×肉厚(mm)=25×200×1.2)中の、50mg/Lのカナマイシンを含む以下に記載の発酵培地5mLに接種し、往復振とう培養装置で30℃、120rpmの条件にて24時間培養した。
滅菌完了後に上記A区、B区、C区を混合した。試験管に分注した5mLの発酵培地に対して、1mLのミリスチン酸イソプロピル(東京化成工業社製)を添加した。
培養開始から24時間後に、ミリスチン酸イソプロピル、及び培養上清中のリナロール濃度をガスクロマトグラフGC−2025AF(島津製作所社製)を用いて以下の条件にて測定した。カラムはDB−5(アジレント社製 長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を使用し、リナロール標準液は試薬リナロール(和光純薬社製)を用いて調整した。
気化室温度 360.0℃
注入量 1.0μL
注入モード スプリット 1:10
キャリアガス He
制御モード 線速度
圧力 125.5kPa
全流量 20.5mL/min
カラム流量 1.59mL/min
線速度 36.3cm/sec
パージ流量 3.0mL/min
カラムオーブン温度プログラム 合計時間 21.5分
レート(℃/min) 温度(℃) ホールド時間(min)
65.0 5.0
5.0 105.0 0.5
35.0 297.5 2.5
検出器温度 375.0℃
検出器 FID
メイクアップガス He(30.0mL/min)
水素流量 40.0mL/min
空気 400.0mL/min
リナロール濃度は培地量に換算した値として示す。試験管2本の結果の平均値を表9に示す。対照ベクターpACYC177を導入した対照株ではリナロール生産は認められなかったが、SWITCH−PphoC Δgcd/AaLINS−ispA株、SWITCH−PphoC Δgcd/CsLINS−ispA株においてリナロール生産が確認された。
実施例14:リモネン合成酵素発現プラスミドの構築
14−1)Picea sitchensis(アラスカトウヒ)由来リモネンシンターゼ遺伝子の取得
Picea sitchensis由来リモネンシンターゼ(PsLMS)遺伝子の塩基配列(GenBank accession number:DQ195275.1)、及びアミノ酸配列(GenPept accession number:ABA86248.1.)は、既に知られている。P.sitchensis由来リモネンシンターゼタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子の塩基配列を配列番号90、及び配列番号91に示す。PsLMS遺伝子を効率的に発現させる為、二次構造を解消させP.ananatisのコドン使用頻度と同一となるようにコドンを最適化した。さらに葉緑体移行シグナルを切断した。得られる遺伝子をopt_PsLMSと名付けた。opt_PsLMSの塩基配列を配列番号92に示す。opt_PsLMS遺伝子を化学合成した後、pUC57(GenScript社製)にクローニングし、得られたプラスミドをpUC57−opt_PsLMSと名付けた。
14−2)Abies grandis(アメリカオオモミ)由来リモネンシンターゼ遺伝子の取得
Abies grandis由来リモネンシンターゼ(AgLMS)遺伝子の塩基配列(GenBank accession number:AF006193.1)、及びアミノ酸配列(GenPept accession number:AAB70907.1.)は既に知られている。A.grandis由来リモネンシンターゼタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子配列を配列番号93、及び配列番号94に示す。AgLMS遺伝子を効率的に発現させる為、二次構造を解消させP.ananatisのコドン使用頻度と同一となるようにコドンを最適化した。さらに葉緑体移行シグナルを切断した。得られる遺伝子をopt_AgLMSと名付けた。opt_AgLMSの塩基配列を配列番号95に示す。opt_AgLMS遺伝子を化学合成した後、pUC57(GenScript社製)にクローニングし、得られたプラスミドをpUC57−opt_AgLMSと名付けた。
14−3)Mentha spicata(スペアミント)由来リモネンシンターゼ遺伝子の取得
Mentha spicata由来リモネンシンターゼ(MsLMS)遺伝子の塩基配列(GenBank accession number:L13459.1)、及びアミノ酸配列(GenPept accession number:AAC37366.1)は既に知られている。M.spicata由来リモネンシンターゼタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子配列を配列番号96、及び配列番号97に示す。MsLMS遺伝子を効率的に発現させる為、二次構造を解消させP.ananatisのコドン使用頻度と同一となるようにコドンを最適化した。さらに葉緑体移行シグナルを切断した。得られる遺伝子をopt_MsLMSと名付けた。opt_MsLMSの塩基配列を配列番号98に示す。opt_MsLMS遺伝子を化学合成した後、pUC57(GenScript社製)にクローニングし、得られたプラスミドをpUC57−opt_MsLMSと名付けた。
14−4)Citrus unshiu(ウンシュウミカン)由来リモネンシンターゼ遺伝子の取得
Citrus unshiu由来リモネンシンターゼ(CuLMS)遺伝子の塩基配列(GenBank accession number:AB110637.1)、及びアミノ酸配列(GenPept accession number:BAD27257.1)は既に知られている。C.unshiu由来リモネンシンターゼタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子配列を配列番号99、及び配列番号100に示す。CuLMS遺伝子を効率的に発現させる為、二次構造を解消させP.ananatisのコドン使用頻度と同一となるようにコドンを最適化した。さらに葉緑体移行シグナルを切断した。得られる遺伝子をopt_CuLMSと名付けた。opt_CuLMSの塩基配列を配列番号101に示す。opt_CuLMS遺伝子を化学合成した後、pUC57(GenScript社製)にクローニングし、得られたプラスミドをpUC57−opt_CuLMSと名付けた。
14−5)Citrus limon(レモン)由来リモネンシンターゼ遺伝子の取得
Citrus limon由来リモネンシンターゼ(ClLMS)遺伝子の塩基配列(GenBank accession number:AF514287.1)、及びアミノ酸配列(GenPept accession number:AAM53944.1.)は既に知られている。C.limon由来リモネンシンターゼタンパク質のアミノ酸配列、及び遺伝子配列を配列番号102、及び配列番号103に示す。ClLMS遺伝子を効率的に発現させる為、二次構造を解消させP.ananatisのコドン使用頻度と同一となるようにコドンを最適化した。さらに葉緑体移行シグナルを切断した。得られる遺伝子をopt_ClLMSと名付けた。opt_ClLMSの塩基配列を配列番号104に示す。opt_ClLMS遺伝子を化学合成した後、pUC57(GenScript社製)にクローニングし、得られたプラスミドをpUC57−opt_ClLMSと名付けた。
14−6)opt_PsLMS、及びispA*遺伝子の同時発現用プラスミドの構築
配列番号105に示したプライマーと配列番号106に示したプライマーを用いてpUC57−opt_PsLMSを鋳型にPCRを行った。次に、得られたPCR断片を鋳型として配列番号107に示したプライマーと配列番号106に示したプライマーを用いてPCRを行い、Ptac−opt_PsLMS断片を得た。さらに、配列番号108に示したプライマーと配列番号109に示したプライマーを用いてpUC57−ispA*を鋳型にPCRを行い、ispA*断片を得た。精製したPtac−opt_PsLMS断片、及びispA*断片を制限酵素PstIとScaIで消化したpACYC177(ニッポンジーン社製)にIn−Fusion HD cloning kit(クロンテック社製)を用いて連結し、pACYC177−Ptac−opt_PsLMS−ispA*を構築した。
14−7)opt_AgLMS、及びispA*遺伝子の同時発現用プラスミドの構築
配列番号110に示したプライマーと配列番号111に示したプライマーを用いてpUC57−opt_AgLMSを鋳型にPCRを行った。次に、得られたPCR断片を鋳型として配列番号107に示したプライマーと配列番号111に示したプライマーを用いてPCRを行い、Ptac−opt_AgLMS断片を得た。さらに、配列番号108に示したプライマーと配列番号109に示したプライマーを用いてpUC57−ispA*を鋳型にPCRを行い、ispA*断片を得た。精製したPtac−opt_AgLMS断片、及びispA*断片を制限酵素PstIとScaIで消化したpACYC177(ニッポンジーン社製)にIn−Fusion HD cloning kit(クロンテック社製)を用いて連結し、pACYC177−Ptac−opt_AgLMS−ispA*を構築した。
14−8)opt_MsLMS、及びispA*遺伝子の同時発現用プラスミドの構築
配列番号112に示したプライマーと配列番号113に示したプライマーを用いてpUC57−opt_MsLMSを鋳型にPCRを行った。次に、得られたPCR断片を鋳型として配列番号107に示したプライマーと配列番号113に示したプライマーを用いてPCRを行い、Ptac−opt_MsLMS断片を得た。さらに、配列番号108に示したプライマーと配列番号109に示したプライマーを用いてpUC57−ispA*を鋳型にPCRを行い、ispA*断片を得た。精製したPtac−opt_MsLMS断片、及びispA*断片を制限酵素PstIとScaIで消化したpACYC177(ニッポンジーン社製)にIn−Fusion HD cloning kit(クロンテック社製)を用いて連結し、pACYC177−Ptac−opt_MsLMS−ispA*を構築した。
14−9)opt_CuLMS、及びispA*遺伝子の同時発現用プラスミドの構築
配列番号114に示したプライマーと配列番号115に示したプライマーを用いてpUC57−opt_CuLMSを鋳型にPCRを行った。次に、得られたPCR断片を鋳型として配列番号107に示したプライマーと配列番号115に示したプライマーを用いてPCRを行い、Ptac−opt_CuLMS断片を得た。さらに、配列番号108に示したプライマーと配列番号109に示したプライマーを用いてpUC57−ispA*を鋳型にPCRを行い、ispA*断片を得た。精製したPtac−opt_CuLMS断片、及びispA*断片を制限酵素PstIとScaIで消化したpACYC177(ニッポンジーン社製)にIn−Fusion HD cloning kit(クロンテック社製)を用いて連結し、pACYC177−Ptac−opt_CuLMS−ispA*を構築した。
14−10)opt_ClLMS、及びispA*遺伝子の同時発現用プラスミドの構築
配列番号116に示したプライマーと配列番号117に示したプライマーを用いてpUC57−opt_ClLMSを鋳型にPCRを行った。次に、得られたPCR断片を鋳型として配列番号107に示したプライマーと配列番号117に示したプライマーを用いてPCRを行い、Ptac−opt_ClLMS断片を得た。さらに、配列番号108に示したプライマーと配列番号109に示したプライマーを用いてpUC57−ispA*を鋳型にPCRを行い、ispA*断片を得た。精製したPtac−opt_ClLMS断片、及びispA*断片を制限酵素PstIとScaIで消化したpACYC177(ニッポンジーン社製)にIn−Fusion HD cloning kit(クロンテック社製)を用いて連結し、pACYC177−Ptac−opt_ClLMS−ispA*を構築した。
14−11)リモネン生成株の構築
SWITCH−PphoC Δgcdのコンピテントセルを調製し、エレクトロポレーションによりpACYC177、pACYC177−Ptac−opt_PsLMS−ispA*、pACYC177−Ptac−opt_AgLMS−ispA*、pACYC177−Ptac−opt_MsLMS−ispA*、pACYC177−Ptac−opt_CuLMS−ispA*あるいはpACYC177−Ptac−opt_ClLMS−ispA*を導入した。得られた株をそれぞれ、SWITCH−PphoC Δgcd/pACYC177株、SWITCH−PphoC Δgcd/PsLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/AgLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/MsLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/CuLMS−ispA*株及びSWITCH−PphoC Δgcd/ClLMS−ispA*株と命名した。
実施例15:SWITCH PphoCΔgcd株由来リモネンシンターゼ発現株のリモネン生産能の評価
実施例14で得られたSWITCH−PphoC Δgcd/PsLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/AgLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC−Δgcd/MsLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/CuLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/ClLMS−ispA*株、及びSWITCH−PphoC Δgcd/pACYC177株のグリセロールストックを融解し、10μLを50mg/Lのカナマイシンを含むLBプレートに均一に塗布し、34℃にて16時間培養した。得られたプレート上の菌体を、NuncTMディスポーザブルループ1μL(Thermo Fisher Scientific社製)の1ループ程度の量を掻き取った。掻き取った菌体をヘッドスペースバイアル(Perkin Elmer社製 22mL CLEAR CRIMP TOP VIAL cat♯B0104236)中の、50mg/Lのカナマイシンを含む以下の表10に記載のリモネン発酵用培地1mLに接種し、バイアルはヘッドスペースバイアル用キャップブチルゴムセプタム付(Perkin Elmer社製CRIMPS cat♯B0104240)を用いて密栓した。往復振とう培養装置で30℃、120rpmの条件にてSWITCH−PphoC Δgcd/pACYC177株、SWITCH−PphoC Δgcd/PsLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/AgLMS−ispA*株及びSWITCH−PphoC Δgcd/MsLMS−ispA*株は48時間培養した。SWITCH−PphoC Δgcd/pACYC177株、SWITCH−PphoC Δgcd/CuLMS−ispA*株及びSWITCH−PphoC Δgcd/ClLMS−ispA*株は同様に発酵を行い、これらの株の培養時間を72時間とした。
滅菌完了後に上記A区、B区、C区を混合した。
培養終了後に、ヘッドスペースサンプラー(Perkin Elmer社製 TurboMatrix 40)付きガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所社製 GCMS−QP2010)を用いてヘッドスペースバイアル中のリモネン濃度を測定した。分析条件の詳細を下記に記す。GCのカラムとして、HP−5ms Ultra Inert(Agilent社製)を使用し、リモネン標準液は試薬リモネン(東京化成工業製)を用いて調製した。
ヘッドスペースサンプラー
注入時間 0.02min
オーブン温度 80℃
ニードル温度 80℃
トランスファー温度 80℃
GCサイクル時間 5min
加圧時間 3min
引き上げ時間 0.2min
保温時間 5min
キャリアガス圧力 124kPa
ガスクロマトグラフィー部
キャリアガス He
気化室温度 200.0℃
温度条件 175℃(定温)
質量分析部
イオン源温度 250℃
インターフェイス温度 250℃
検出器電圧 0.1kV
検出イオン分子量 68
補助イオン分子量 93
フィラメント点灯時間 2.0−3.5min
リモネン濃度は培地量に換算した値として示した。バイアル2本の結果の平均値を表11及び12に示す。対照ベクターpACYC177を導入した対照株ではリモネン生産は認められなかったが、SWITCH−PphoC Δgcd/PsLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/AgLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/MsLMS−ispA*株、SWITCH−PphoC Δgcd/CuLMS−ispA*株及びSWITCH−PphoC Δgcd/ClLMS−ispA*株においてリモネン生産が確認された。
その好ましい実施形態を参照して本発明を詳細に記述したが、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更が為され得ること、および均等物が採用され得ることは、当業者に明らかである。本明細書中の全ての引用文献は、本願の一部として参照により援用される。
本発明の方法は、イソプレンモノマーおよびイソプレンポリマーの製造に有用である。

Claims (20)

  1. 以下:
    1)十分な濃度の増殖促進剤の存在下でイソプレノイド化合物生成微生物を培養して、イソプレノイド化合物生成微生物を増殖させること;
    2)増殖促進剤の十分な濃度を減少させて、イソプレノイド化合物生成微生物によるイソプレノイド化合物の生成を誘導すること;および
    3)イソプレノイド化合物生成微生物を培養してイソプレノイド化合物を生成すること
    を含み、
    イソプレノイド化合物生成微生物が、前記増殖促進剤に対して逆依存性であるプロモーターに依存してイソプレノイド化合物を生成する能力を有し、
    イソプレノイド化合物生成微生物が、細菌であり、
    増殖促進剤が、リン化合物である、
    イソプレノイド化合物の製造方法。
  2. イソプレノイド化合物生成微生物が、前記プロモーターの制御下にあるイソプレノイド化合物合成酵素遺伝子を含む、請求項1記載の方法。
  3. イソプレノイド化合物生成微生物が、メチルエリスリトールリン酸経路および/またはメバロン酸経路が強化されている、請求項1または2記載の方法。
  4. イソプレノイド化合物がモノテルペンであり、イソプレノイド化合物生成微生物がモノテルペン生成微生物である、請求項1〜のいずれか一項記載の方法。
  5. イソプレノイド化合物がリモネンであり、イソプレノイド化合物生成微生物がリモネン生成微生物である、請求項1〜のいずれか一項記載の方法。
  6. イソプレノイド化合物がリナロールであり、イソプレノイド化合物生成微生物がリナロール生成微生物である、請求項1〜のいずれか一項記載の方法。
  7. イソプレノイド化合物がイソプレンモノマーであり、イソプレノイド化合物生成微生物がイソプレン生成微生物である、請求項1〜のいずれか一項記載の方法。
  8. 前記プロモーターがリン欠乏誘導型プロモーターである、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
  9. リン欠乏誘導型プロモーターが、酸性フォスファターゼをコードする遺伝子のプロモーター、またはリン取り込み担体をコードする遺伝子のプロモーターである、請求項記載の方法。
  10. 50mg/L以下の総リン濃度の存在下でイソプレノイド生成微生物によるイソプレノイドの生成が誘導される、請求項または記載の方法。
  11. 誘導期のイソプレノイド生成速度が600ppm/vvm/h以下である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
  12. 記イソプレノイド化合物がイソプレンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  13. イソプレノイド化合物生成微生物が、メチルエリスリトールリン酸経路によるジメチルアリル二リン酸の合成能を有する、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
  14. イソプレノイド化合物生成微生物が、メバロン酸経路によるジメチルアリル二リン酸の合成能を有する、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
  15. イソプレノイド化合物生成微生物が、腸内細菌科に属する微生物である、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
  16. イソプレノイド化合物生成微生物が、パントエア属、エンテロバクター属またはエシェリヒア属に属する微生物である、請求項15記載の方法。
  17. イソプレノイド化合物生成微生物が、パントエア・アナナティス、エンテロバクター・アエロゲネスまたはエシェリヒア・コリである、請求項16記載の方法。
  18. 以下(I)および(II)を含む、イソプレンポリマーの製造方法:
    (I)請求項17のいずれか一項記載の方法によりイソプレンモノマーを生成すること;
    (II)イソプレンモノマーを重合してイソプレンポリマーを生成すること。
  19. 以下(A)および(B)を含む、ゴム組成物の製造方法:
    (A)請求項18記載の方法によりイソプレンポリマーを調製すること;
    (B)前記イソプレンポリマーを1以上のゴム組成物成分と混合すること。
  20. 以下(i)および(ii)を含む、タイヤの製造方法:
    (i)請求項19記載の方法によりゴム組成物を生成すること;
    (ii)前記ゴム組成物を利用してタイヤを製作すること。
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