JP6708281B2 - 板状アルミナ粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、高アスペクト比と板状の形状を有し、粒子内にモリブデンを含む板状アルミナ粒子およびその製造方法に関する。
無機フィラーであるアルミナ粒子は、様々な用途で利用されている。特に、板状のアルミナ粒子は、熱伝導性フィラー、高輝度顔料、化粧料、研磨材、導電性粉体基材、樹脂フィルムの滑剤など幅広い領域で利用されており、特に凝集性が低く、高い分散を有する高アスペクト比の板状アルミナ粒子が求められている。
板状アルミナ粒子の製造方法としては、従来より各種の方法が知られている。例えば、特許文献1には、原料の仮焼工程で弗化アルミニウム等の鉱化剤を添加する方法が知られている。又、水熱合成法によるアルミナ粒子の製造方法としては、例えば特許文献2に記載のものが知られている。しかしながら、これらの方法は粒子径の制御、特に高アスペクト比の板状アルミナの製造が困難である。また、得られた板状アルミナ粒子が複数枚重なり合ったり、双晶が生じてしまったりなど、凝集の問題がある。
サイズ、形状などが制御された板状アルミナ粒子の製造については、近年、種々の報告がある。例えば、特許文献3には、リン酸イオンを形状制御剤として用いて、350℃以上、圧力50〜200気圧の水熱条件化で、直径0.2〜15μm、アスペクト比15〜50の板状アルミナ粒子の製造方法が開示されている。このようなアスペクト比は化粧料や高輝度顔料など応用に対して、十分な機能が得られない場合があり、また水熱法は高温、高圧また特殊な装置が必要、製造コスト高いという問題点がある。
特許文献4には、酸化亜鉛を結晶制御剤として用い、高温融剤である硫酸塩の存在下で1000℃以上の温度で焼成することで、厚みが0.1〜0.5μm、平均粒子径が15〜25μm、アスペクト比50〜250の酸化亜鉛を含む板状α−アルミナ粒子が報告されている。得られた板状アルミナ粒子が高いアスペクトを示すことで、真珠光沢顔料として優れた特性を有する。しかしながら、この方法で得られる板状アルミナが凝集する傾向にあり、例えば、焼成後、融剤である硫酸塩を除去した後に、0.5%硫酸溶液中60℃の温度で48時間の攪拌で凝集を分散させることが必要である。また、大量の硫酸塩を融剤として使用、焼成後に焼成物を焼成容器から固体粉体として容易に取り出すことができなく、工業化が困難である問題がある。
特公昭35−6977号公報 特公昭37−7750号公報 特開平9−59018 特許第4825264公報
本発明は凝集性が低く、高い分散性を有する高アスペクト比の板状アルミナ粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、モリブデン化合物と形状制御剤の存在下、アルミニウム化合物を焼成することで、粒子形状が多角の板状であり、厚みが0.01〜5μmであり、平均粒子径が0.1〜500μmであり、厚みに対する粒子径の比率であるアスペクト比が2〜500であり、粒子内にモリブデンを含む板状アルミナ粒子が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明はシリコンあるいはシリコン原子を含む化合物またはナトリウムあるいはナトリウム原子を含む化合物を形状制御剤として用い、フラックス剤であるモリブデン化合物の存在下でアルミニウム化合物を焼成する工程を有することを特徴とする板状アルミナ粒子を提供するものである。
また本発明は、前記アルミニウム化合物と前記モリブデン化合物が反応しモリブデン酸アルミニウムを形成する工程と、該モリブデン酸アルミニウムが分解し板状アルミナ粒子を得る工程とを有する板状アルミナ粒子の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記アルミニウム化合物中のアルミニウム原子と、前記モリブデン化合物中のモリブデン原子のモル比が、モリブデン/アルミニウム=0.01〜3.0の範囲である板状アルミナ粒子の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、高い分散性と高アスペクト比を有する粒子内にモリブデンを含む板状アルミナ粒子を得ることができる。この板状アルミナ粒子を熱伝導性フィラー、高輝度顔料、化粧料、研磨剤、導電性粉体基材、樹脂フィルムの滑剤として用いたときに最大限に効果を発揮することができる。
前駆体として用いるアルミニウム化合物と、モリブデン化合物と、形状制御剤との配合比、形状制御剤の種類や添加方式などを調節することで、得られる板状アルミナ粒子の平均粒子径、厚み、アスペクト比などを制御することができ、特にアスペクト比の高い板状アルミナ粒子を得ることができる。さらに、モリブデン化合物をフラックス剤として用いることで、得られる板状アルミナ粒子は、粒子内にモリブデンを含むアルミナであり、自形を持つ、優れた分散性を有する。
また、本発明の製造方法は、固体粉末同士を焼成するだけでの簡便な工程であり、溶剤や廃液の排出、高価な設備、複雑のプロセス、後処理などがなく、環境負荷を伴わない簡便な製造方法である。
また、通常のアルミナは、ゼータ電位における等電点が中性であり、分散性に課題がある。しかし、本発明で得られる板状アルミナは、モリブデンを含むことで通常のアルミナに比べてゼータ電位の等電点が酸性側にシフトしているため、分散性に優れる。
実施例1で得た板状アルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得た板状アルミナ粒子の粉末XRDチャートである。 実施例3で得た板状アルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得た板状アルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例6で得た板状アルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例7で得た板状アルミナの粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
<板状アルミナ粒子>
本形態に係る板状アルミナ粒子は、粒子内にモリブデンを含み、かつ、多角の板状である。また、本発明の効果を損なわない限り、原料または形状制御剤などからの不純物を含んでもよい。なお、板状アルミナ粒子はさらに有機化合物等を含んでいてもよい。
本発明でいう「板状」は平均粒子径を厚みで除したアスペクト比が2以上であることを指す。なお、本明細書において、「板状アルミナ粒子の厚み」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定された値を採用するものとする。また、「板状アルミナ粒子の粒子径」は、板の輪郭線上の2点間の距離のうち、最大の長さと最小の長さとの算数平均値を意味し、その値は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定された値を採用するものとする。「平均粒子径」の値は、任意の100個の板状アルミナ粒子の粒子径を走査型電子顕微鏡(SEM)により得られたイメージから測定、算出された値を意味する。
板状アルミナ粒子は、厚みが0.01〜5μm、平均粒子径が0.1〜500μm、厚みに対する粒子径の比率であるアスペクト比が2〜500であることが好ましい。板状アルミナ粒子のアスペクト比が2以上であると、2次元の配合特性を有しうることから好ましく、板状アルミナ粒子のアスペクト比が500以下であると、機械的強度に優れるからである。より好ましくは、厚みが0.03〜3μm、平均粒子径が0.5〜100μm、厚みに対する粒子径の比率であるアスペクト比が10〜300である。アスペクト比が10〜300であると、顔料とした際に高輝度となるため、好ましい。
本発明の板状アルミナ粒子における、その厚み、平均粒子径、アスペクト比等は、モリブデン化合物と、アルミニウム化合物と、形状制御剤との使用割合、形状制御剤の種類、形状制御剤とアルミニウム化合物との存在状態を選択することにより、制御することができる。
本発明に係る板状アルミナ粒子は、粒子内にモリブデンを含有してさえいれば、どの様な製造方法に基づいて得たものであっても良いが、よりアスペクト比が高く、より分散性に優れ、より生産性に優れる点で、モリブデン化合物と形状制御剤の存在下でアルミニウム化合物を焼成する事により得ることが好ましい。すなわち、本発明に係る板状アルミナ粒子は、モリブデン化合物がアルミニウム化合物と高温で反応し、モリブデン酸アルミニウムを形成した後、このモリブデン酸アルミニウムが、さらに、より高温でアルミナと酸化モリブデンに分解する際に、モリブデン化合物を板状アルミナ粒子内に取り込む事で、より容易に得られる。酸化モリブデンが昇華し、回収して、再利用することもできる。以下、この製造方法をフラックス法という。このフラックス法については、後に詳記する。
形状制御剤は板状結晶成長に重要な役割を果たす。一般的に行なわれる酸化モリブデンフラックス法では酸化モリブデンがアルミナのα結晶の[113]面に選択的に吸着し、結晶成分は[113]面に供給されにくくなり、[001]面の出現を完全に抑制できるとするものであることから、六角両錘型をベースした多面体粒子を形成する。本発明は形状制御剤を用いて、フラックス剤である酸化モリブデンが[113]面に選択的な吸着を抑制することで、[001]面の発達した熱力学的に最も安定的な稠密六方格子の結晶構造を有する板状形態を形成することができる。モリブデン化合物をフラックス剤として用いることで、α結晶化率が高い、中でもα結晶化率が90%以上の、モリブデンを含む板状アルミナ粒子をより容易に形成できる。
前記板状アルミナ粒子は、モリブデンを活用することにより、アルミナは高いα結晶率を有し、自形を持つことから、優れた分散性と機械強度、高熱伝導性を実現することができる。
また、本発明の板状アルミナ粒子にモリブデンを含むことから、通常のアルミナに比べてゼータ電位の等電点が酸性側にシフトしているため、分散性に優れる。また、板状アルミナ粒子に含まれたモリブデンの特性を利用して、酸化反応触媒、光学材料の用途に適用することが可能となりうる。
[アルミナ]
本発明に係る「アルミナ」は酸化アルミニウムであり、粒子内にモリブデンを含めれば特に制限されず、例えば、γ、δ、θ、κ、δ等の各種の結晶形の遷移アルミナであっても、または遷移アルミナ中にアルミナ水和物を含んでであっても良いが、より機械的な強度または熱伝導性に優れる点で、基本的にα結晶形であることが好ましい。
[モリブデン]
モリブデンは触媒機能、光学的機能を有する。また、モリブデンを活用することにより、後述するように製造方法において、高アスペクト比と優れた分散性を有する板状アルミナ粒子を製造することができる。
当該モリブデンとしては、特に制限されないが、モリブデン金属の他、酸化モリブデンや一部が還元されたモリブデン化合物等が含まれる。
モリブデンの含有形態は、特に制限されず、板状アルミナ粒子の表面に付着する形態で含まれていても、アルミナの結晶構造のアルミニウムの一部に置換された形態で含まれていてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
本発明の板状アルミナ粒子中のモリブデンの含有量は、三酸化モリブデン換算で、好ましくは、10質量%以下であり、焼成温度、焼成時間、モリブデン化合物の昇華速度を調整する事で、より好ましくは、0.001〜8質量%であり、さらに好ましくは、0.01〜5質量%以下である。モリブデンの含有量が10質量%以下であると、アルミナのα単結晶品質を向上させることから好ましい。
[有機化合物]
一実施形態において、板状アルミナ粒子は有機化合物を含んでいてもよい。当該有機化合物は、板状アルミナ粒子の表面に存在し、板状アルミナ粒子の表面物性を調節する機能を有する。例えば、表面に有機化合物を含んだ板状アルミナ粒子は樹脂との親和性を向上することから、フィラーとして板状アルミナ粒子の機能を最大限に発現することができる。
有機化合物としては、特に制限されないが、有機シラン、ホスホン酸、およびポリマーが挙げられる。
前記有機シランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等のアルキル基の炭素数が1〜22までのアルキルトリメトキシシランまたはアルキルトリクロロシラン類、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン類等が挙げられる。
前記ホスホン酸としては、例えばメチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、2_エチルヘキシルホスホン酸、シクロヘキシルメチルホスホン酸、シクロヘキシルエチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
前記ポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート類を好適に用いることができる。具体的には、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリベンジル(メタ)アクリレート、ポリシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリt−ブチル(メタ)アクリレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート等であり、また、汎用のポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニル酢酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等ポリマーを挙げることができる。
なお、上記有機化合物は、単独で含まれていても、2種以上を含んでいてもよい。
有機化合物の含有形態としては、特に制限されず、アルミナと共有結合により連結されていてもよいし、アルミナを被覆していてもよい。
有機化合物の含有率は、板状アルミナ粒子の質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10〜0.01質量%であることがさらに好ましい。有機化合物の含有率が20質量%以下であると、板状アルミナ粒子由来の物性発現が容易にできることから好ましい。
<板状アルミナ粒子の製造方法>
板状アルミナ粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の技術が適宜適用されうるが、相対的に低温で高α結晶化率を有するアルミナを好適に制御することができる観点から、好ましくはモリブデン化合物を利用したフラックス法での製造方法が適用されうる。
より詳細には、板状アルミナ粒子の好ましい製造方法は、モリブデン化合物および形状制御剤の存在下で、アルミニウム化合物を焼成する工程を含む。
[焼成工程]
焼成工程は、モリブデン化合物および形状制御剤の存在下で、アルミニウム化合物を焼成する工程である。
(アルミニウム化合物)
本発明におけるアルミニウム化合物は、本発明の板状アルミナ粒子の原料であり、熱処理によりアルミナになるものであれば特に限定されず、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、遷移アルミナ(γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナなど)、α−アルミナ、二種以上の結晶相を有する混合アルミナなどが使用でき、これら前駆体としてのアルミニウム化合物の形状、粒子径、比表面積等の物理形態については、特に限定されるものではない。
下で詳記するフラックス法によれば、本発明の板状アルミナ粒子の形状には、原料のアルミニウム化合物の形状は、殆ど反映されることはないため、例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤ、ファイバー、リボン、チューブなど)、シートなどのいずれであっても好適に用いることができる。
同様に、アルミニウム化合物の粒子径は、下で詳記するフラックス法によれば、本発明の板状アルミナ粒子に、殆ど反映されないため、数nmから数百μmまでのアルミニウム化合物の固体を好適に用いることができる。
アルミニウム化合物の比表面積も特に限定されるものではない。モリブデン化合物が効果的に作用するため、比表面積が大きい方が好ましいが、焼成条件やモリブデン化合物の使用量を調整する事で、いずれの比表面積のものでも原料として使用することができる。
また、アルミニウム化合物は、アルミニウム化合物のみからなるものであっても、アルミニウム化合物と有機化合物との複合体であってもよい。例えば、有機シランを用いて、アルミニウム化合物を修飾して得られる有機/無機複合体、ポリマーを吸着したアルミニウム化合物複合体などであっても好適に用いることができる。これらの複合体を用いる場合、有機化合物の含有率としては、特に制限はないが、板状アルミナ粒子を効率的に製造できる観点より、当該含有率は60質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
(形状制御剤)
本発明の板状アルミナ粒子を形成するために、形状制御剤を用いることが必須である。形状制御剤はモリブデン化合物の存在下でアルミナ化合物を焼成によるアルミナの板状結晶成長に重要な役割を果たす。
形状制御剤の存在状態は、アルミニウム化合物との接触ができれば、特に制限されない。例えば、形状制御剤とアルミニウム化合物と物理混合物、形状制御剤がアルミニウム化合物の表面または内部に均一または局在に存在した複合体などが好適に用いることができる。
また、形状制御剤がアルミニウム化合物に添加しても良いが、アルミニウム化合物中に不純物として含んでも良い。
形状制御剤の種類については、モリブデン化合物の存在下高温焼成中酸化モリブデンがα−アルミナの[113]面に選択的な吸着を抑制し、板状形態を形成することが出来れば、特に制限されない。よりアスペクト比が高く、より分散性に優れ、より生産性に優れる点で、モリブデン化合物とアルミニウム化合物を除く金属化合物を用いることが好ましい、シリコンあるいはシリコン原子を含む化合物またはナトリウムあるいはナトリウム原子を含む化合物を用いることがより好ましい。
シリコンあるいはシリコン原子を含む化合物としては、特に制限されず、公知のものが使用されうる。シリコンあるいはシリコン原子を含む化合物の具体例としては、金属シリコン、有機シラン、シリコン樹脂、シリカ微粒子、シリカゲル、メソポーラスシリカ、SiC、ムライト等の人工合成シリコン化合物;バイオシリカ等の天然シリコン化合物等が挙げられる。これらのうち、アルミニウム化合物との複合、混合がより均一的に形成できる観点から、有機シラン、シリコン樹脂、シリカ微粒子を用いることが好ましい。なお、シリコンあるいはシリコン原子を含む化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコンあるいはシリコン原子を含む化合物の形状は、特に制限されず、例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤ、ファイバー、リボン、チューブなど)、シートなどを好適に用いることができる。
シリコンあるいはシリコン原子を含む化合物の使用量は特に制限されないが、アルミニウム化合物中のアルミニウム金属1モルに対して、0.0001〜1モルであることが好ましく、0.001〜0.5モルであることがより好ましい。シリコンあるいはシリコン原子を含む化合物の使用量が上記範囲にあると、高アスペクト比と優れた分散性を有する板状アルミナ粒子が得られやすいことから好ましい。
ナトリウムあるいはナトリウム原子を含む化合物としては、特に制限されず、公知のものが使用されうる。ナトリウムあるいはナトリウム原子を含む化合物の具体例としては、炭酸ナトリウム、モリブデンナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、金属ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、工業的に容易入手と取扱いし易さの観点から炭酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウムを用いることが好ましい。なお、ナトリウムあるいはナトリウム原子を含む化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ナトリウムあるいはナトリウム原子を含む化合物の形状は、特に制限されず、例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤ、ファイバー、リボン、チューブなど)、シートなどを好適に用いることができる。
ナトリウムあるいはナトリウム原子を含む化合物の使用量は特に制限されないが、アルミニウム化合物中のアルミニウム金属1モルに対して、0.0001〜2モルであることが好ましく、0.001〜1モルであることがより好ましい。ナトリウムあるいはナトリウム原子を含む化合物の使用量が上記範囲にあると、高アスペクト比と優れた分散性を有する板状アルミナ粒子が得られやすいことから好ましい。
(モリブデン化合物)
モリブデン化合物は、後述するように、相対的に低温においてアルミナのα結晶成長にフラックス機能をする。
モリブデン化合物としては、特に制限されないが、酸化モリブデン、モリブデン金属が酸素との結合からなる酸根アニオン(MoOx n-)を含有する化合物が挙げられる。
前記酸根アニオン(MoOx n-)を含有する化合物としては、特に制限されないが、モリブデン酸、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム、H3PMo1240、H3SiMo1240、NH4Mo712、二硫化モリブデン等が挙げられる。
モリブデン化合物にナトリウムまたはシリコンを含むことも可能であり、その場合、該ナトリウムまたはシリコンを含むモリブデン化合物がフラックス剤と形状制御剤と両方の役割を果たす。
上述のモリブデン化合物のうち、コストの観点から、酸化モリブデンを用いることが好ましい。また、上述のモリブデン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
モリブデン化合物の使用量は、特に制限されないが、アルミニウム化合物中のアルミニウム金属1モルに対して、0.01〜3.0モルであることが好ましく、0.03〜0.7モルであることがより好ましい。モリブデン化合物の使用量が上記範囲にあると、高アスペクト比と優れた分散性を有する板状アルミナ粒子が得られやすいことから好ましい。
(焼成)
本発明の板状アルミナ粒子は、例えば、モリブデン化合物および形状制御剤の存在下で、アルミニウム化合物を焼成することで得られる。上記した通り、この製造方法はフラックス法と呼ばれる。モリブデン化合物の存在下でアルミニウム化合物を焼成すると、モリブデン化合物がアルミニウム化合物と高温で反応し、モリブデン酸アルミニウムを形成した後、このモリブデン酸アルミニウムが、さらに、より高温でアルミナと酸化モリブデンに分解し、形状制御剤の存在下でα‐アルミナの板状結晶を成長させることで、板状アルミナ粒子が容易に得られる。得られる板状アルミナ粒子は、粒子内にモリブデンを含み、かつ、粒子形状が多角板状であり、厚みが0.01〜5μmであり、平均粒子径が0.1〜500μmであり、厚みに対する粒子径の比率であるアスペクト比が2〜500である。
焼成の方法は、特に限定はなく、公知慣用の方法で行う事ができる。焼成温度が700℃を超えると、アルミニウム化合物と、モリブデン化合物が反応して、モリブデン酸アルミニウムを形成する。さらに、焼成温度が900℃以上になると、モリブデン酸アルミニウムが分解し、形状制御剤の作用で板状アルミナ粒子を形成する。また、板状アルミナ粒子は、モリブデン酸アルミニウムが分解することで、アルミナと酸化モリブデンになる際に、モリブデン化合物を酸化アルミニウム粒子内に取り込む事で得られる。
また、焼成する時に、アルミニウム化合物と、形状制御剤と、モリブデン化合物の状態は特に限定されず、モリブデン化合物および形状制御剤がアルミニウム化合物に作用できる同一の空間に存在すれば良い。具体的には、モリブデン化合物と形状制御剤とアルミニウム化合物との粉体を混ぜ合わせる簡便な混合、粉砕機等を用いた機械的な混合、乳鉢等を用いた混合であっても良く、乾式状態、湿式状態での混合であっても良い。
焼成温度の条件に特に限定は無く、目的とする本発明の板状アルミナ粒子の平均粒子径、アスペクト比、分散性等により、適宜、決定される。通常、焼成の温度については、最高温度がモリブデン酸アルミニウム(Al2(MoO43)の分解温度である900℃以上であればよい。
一般的に、焼成後に得られるα−アルミナの形状を制御しようとすると、α−アルミナの融点に近い2000℃以上の高温焼成を行う必要があるが、焼成炉へ負担や燃料コストの点から、産業上利用する為には大きな課題がある。
本発明の製造方法は、2000℃を超えるような高温であっても実施可能であるが、1600℃以下というα−アルミナの融点よりかなり低い温度であっても、前駆体の形状にかかわりなくα結晶化率が高くアスペクト比の高い板状形状となるα−アルミナを形成することができる。
本発明に依れば、最高焼成温度が900℃〜1600℃の条件であっても、アスペクト比が高く、α結晶化率が90%以上である板状アルミナ粒子の形成を低コストで効率的に行うことができ、最高温度が950〜1500℃での焼成がより好ましく、最高温度が1000〜1400℃の範囲の焼成が最も好ましい。
焼成の時間については、所定最高温度への昇温時間を15分〜10時間の範囲で行い、且つ焼成最高温度における保持時間を5分〜30時間の範囲で行うことが好ましい。板状アルミナ粒子の形成を効率的に行うには、10分〜15時間程度の時間の焼成保持時間であることがより好ましい。
焼成の雰囲気としては、本発明の効果が得られるのであれば特に限定されないが、例えば、空気や酸素のといった含酸素雰囲気や、窒素やアルゴンといった不活性雰囲気が好ましく、コストの面を考慮した場合は空気雰囲気がより好ましい。
焼成するための装置としても必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。焼成炉は昇華した酸化モリブデンと反応しない材質で構成されていることが好ましく、さらに酸化モリブデンを効率的に利用するように、密閉性の高い焼成炉を用いる事が好ましい。
[モリブデン除去工程]
板状アルミナ粒子の製造方法は、焼成工程後、必要に応じてモリブデンの少なくとも一部を除去するモリブデン除去工程をさらに含んでいてもよい。
上述のように、焼成時においてモリブデンは昇華を伴うことから、焼成時間、焼成温度等を制御することで、板状アルミナ粒子に含まれるモリブデン含有量を制御することができる。
モリブデンは、板状アルミナ粒子の表面に付着しうる。当該モリブデンは水、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、酸性水溶液で洗浄することにより除去することができる。
この際、使用する水、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、酸性水溶液の濃度、使用量、および洗浄部位、洗浄時間等を適宜変更することで、モリブデン含有量を制御することができる。
[有機化合物層形成工程]
一実施形態において、板状アルミナ粒子の製造方法は、有機化合物層形成工程をさらに含んでいてもよい。当該有機化合物層形成工程は、通常、焼成工程の後、またはモリブデン除去工程の後に行われる。
有機化合物層を形成する方法としては、特に制限されず、公知の方法が適宜採用されうる。例えば、有機化合物を含む液をモリブデンを含む板状アルミナ粒子に接触させ、乾燥する方法が挙げられる。
なお、有機化合物層の形成に使用されうる有機化合物としては、上述したものが用いられうる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断わりがない限り、「%」は「質量%」を表わす。
[走査電子顕微鏡による板状アルミナ粒子の形状分析]
試料を両面テープにてサンプル支持台に固定し、それをキーエンス製表面観察装置VE−9800にて観察した。
[蛍光X線による板状アルミナ粒子の組成分析]
試料約100mgをろ紙にとり、PPフィルムをかぶせて蛍光X線測定(ZSX100e/株式会社リガク社製)を行った。
[X線回折(XRD)法による分析]
作製した試料を測定試料用ホルダーにのせ、それを広角X線回折装置[Rint−Ultma、株式会社リガク社製]にセットし、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード1.0°/分、走査範囲5〜80°の条件で測定を行った。
[焼成法]
焼成は、株式会社アサヒ理化製作所製セラミック電気炉ARF−100K型にAMF−2P型温度コントローラ付きの焼成炉装置にて行った。
[ゼータ電位の測定]
ゼータサイザーナノZSP(マルバーン社)を使用し、ゼータ電位の測定を行った。
試料を純水で3000倍希釈した後、0.1N HCl、0.01N HCl、0.1N NaOH、を用いてpHタイトレーションを実施した。
実施例1<板状アルミナ粒子の製造>
活性化アルミナ(和光純薬工業株式会社製、平均粒径45μm)の5gと、シリカナノ粒子(日本触媒株式会社製、KE−P10、平均粒径0.1〜0.2μm)の0.01gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の5gとを乳鉢で混合し、混合物の10.01gを得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて1100℃で3時間焼成を行なった。酸化モリブデンの殆どが昇華し、降温後、坩堝を取り出し、5.1gの青色の粉末を得た。
得られた粉末は、SEM観察により、形状が多角で、厚みが500nm,平均粒子径が10μm、アスペクト比が20である事を確認した(図1)。また、SEM観察により双晶または複数の板が重なり合う凝集体が観察されず、優れた分散性を示唆する板状形状の粒子であることが確認された。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなかった(図2)。また、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で1.38%含むものである事を確認した。
また、得られた前記青色粉末の4gを10%アンモニア水の4mLに分散し、分散溶液を室温(25〜30℃)で3時間攪拌後、ろ過によりアンモニア水を除き、水洗浄と乾燥を行う事で、粒子表面に残存するモリブデンを除去し、3.9gの粉末を得た。得られた粉末の蛍光X線定量評価測定を行った結果、粉末の中のモリブデンの量が三酸化モリブデン換算で0.84質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.3であることが解った。
実施例2<板状アルミナ粒子の製造>
シリカナノ粒子の使用量を0.5gに変えた以外は実施例1と同様に実験を行い、5.4gの青色の粉末を得た。得られた粉末は、SEM観察により、形状が多角で、厚みが250nm,平均粒子径が8μm、アスペクト比が32である事を確認した。また、SEM観察により双晶または複数の板が重なり合う凝集体が観察されず、優れた分散性を示唆する板状形状の粒子であることが確認された。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなかった。また、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で1.04%含むものである事を確認した。また、実施例1と同様の方法で粒子表面に残存するモリブデンを除去した後、蛍光X線定量評価測定でモリブデン量が三酸化モリブデン換算で0.93質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.5であることが解った。
実施例3<板状アルミナ粒子の製造>
三酸化モリブデンの使用量を1.25gに変えた以外は実施例1と同様に実験を行い、5.0gの青色の粉末を得た。得られた粉末は、SEM観察により、形状が多角で、厚みが250nm,平均粒子径が20μm、アスペクト比が80である事を確認した(図3)。また、SEM観察により双晶または複数の板が重なり合う凝集体が観察されず、優れた分散性を示唆する板状形状の粒子であることが確認された。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなかった。また、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で0.59%含むものである事を確認した。また、実施例1と同様の方法で粒子表面に残存するモリブデンを除去した後、蛍光X線定量評価測定でモリブデン量が三酸化モリブデン換算で0.50質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.4であることが解った。
実施例4<板状アルミナ粒子の製造>
シリコンを0.04%含有するベーマイト(大明化学株式会社製、平均粒径1μm)の20gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の2gとを乳鉢で混合し、混合物の25gを得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて1100℃で10時間焼成を行なった。酸化モリブデンの殆どが昇華し、降温後、坩堝を取り出し、17.0gの青色の粉末を得た。
得られた粉末は、SEM観察により、形状が多角で、厚みが600nm,平均粒子径が30μm、アスペクト比が50である事を確認した(図4)。また、SEM観察により双晶または複数の板が重なり合う凝集体が観察されず、優れた分散性を示唆する板状形状の粒子であることが確認された。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなかった。また、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で0.50%含むものである事を確認した。また、実施例1と同様の方法で粒子表面に残存するモリブデンを除去した後、蛍光X線定量評価測定でモリブデン量が三酸化モリブデン換算で0.43質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.5であることが解った。
実施例5<板状アルミナ粒子の製造>
Na2Oを0.31重量%含有する水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、平均粒径0.9μm)の20gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の1.5gとを乳鉢で混合し、混合物の21.5gを得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて1100℃で10時間焼成を行なった。酸化モリブデンの殆どが昇華し、降温後、坩堝を取り出し、13gの青色の粉末を得た。
得られた粉末は、SEM観察により、形状が多角で、厚みが1.5μm,平均粒子径が3.5μm、アスペクト比が2.3である事を確認した。また、SEM観察により双晶または複数の板が重なり合う凝集体が観察されなかったから、優れた分散性を示唆する板状形状の粒子であることが確認された。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなかった。また、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で1.39%含むものである事を確認した。また、実施例1と同様の方法で粒子表面に残存するモリブデンを除去した後、蛍光X線定量評価測定でモリブデン量が三酸化モリブデン換算で0.90質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.6であることが解った。
実施例6<板状アルミナ粒子の製造>
アクリルシランで処理した水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、平均粒径4.0μm、SiO2含有量0.01重量%)の30gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の19.5gとを乳鉢で混合し、混合物の49.5gを得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて1100℃で10時間焼成を行なった。酸化モリブデンの殆どが昇華し、降温後、坩堝を取り出し、19.3gの青色の粉末を得た。
得られた粉末は、SEM観察により、厚みが400nm,平均粒子径が8μm、アスペクト比が20である事を確認した(図5)。また、SEM観察により双晶または複数の板が重なり合う凝集体が観察されず、優れた分散性を示唆する板状形状の粒子であることが確認された。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなかった。また、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で0.66%含むものである事を確認した。また、実施例1と同様の方法で粒子表面に残存するモリブデンを除去した後、蛍光X線定量評価測定でモリブデン量が三酸化モリブデン換算で0.57質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.6であることが解った。
実施例7<板状アルミナ粒子の製造>
水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、平均粒径1μm)の4gと、炭酸ナトリウムの0.5g(和光純薬工業株式会社製)と、酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の1gとを乳鉢で混合し、混合物の5.5gを得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて1100℃で5時間焼成を行なった。降温後、坩堝を取り出し、水洗浄を経て、2.1gの粉末を得た。
得られた粉末は、SEM観察により、凝集体を含まず、形状が六角板状であり、厚みが1.5μm,平均粒子径が4μm、アスペクト比が2.7である事を確認した(図6)。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなかった。また、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で0.22%含むものである事を確認した。さらに、実施例1と同様の方法で粒子表面に残存するモリブデンを除去した後、蛍光X線定量評価測定でモリブデン量が三酸化モリブデン換算で0.2質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.5であることが解った。
実施例8<板状アルミナ粒子の製造>
炭酸ナトリウムの使用量を1gに変えた以外は実施例7と同様に実験を行なった。降温後、坩堝を取り出し、水洗浄を経て、2.6gの粉末を得た。得られた粉末は、SEM観察により、凝集体を含まず、厚みが50nm,平均粒子径が600nm、アスペクト比が12である事を確認した。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナの他に、遷移アルミナに由来する散乱ピークが表れ、α結晶構造と遷移アルミナ結晶構造が共存していることを確認した。また、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で0.16%含むものである事を確認した。さらに、実施例1と同様の方法で粒子表面に残存するモリブデンを除去した後、蛍光X線定量評価測定でモリブデン量が三酸化モリブデン換算で0.15質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.4であることが解った。
実施例9<板状アルミナ粒子の製造>
水酸化アルミニウム(平均粒径、<1μm)の20gと、モリブデン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)の6.5gとを乳鉢で混合し、混合物の26.5gを得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて1100℃で10時間焼成を行なった。酸化モリブデンの殆どが昇華し、降温後、坩堝を取り出し、水洗浄を経て、12.5gの粉末を得た。得られた粉末は、SEM観察により、凝集体を含まず、厚さが900nm,平均粒子径が13μm、アスペクト比が14.4である板状形状の粒子であることを確認した。さらに、実施例1と同様の方法で粒子表面に残存するモリブデンを除去した後、蛍光X線定量評価測定でモリブデン量が三酸化モリブデン換算で0.2質量%であり、粒子内部にモリブデンを含むアルミナ粒子であることを確認した。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH5.7であることが解った。
比較例1
三酸化モリブデンを使用しない以外は実施例1と同様に実験を行った。降温後、坩堝を取り出し、39gの白い粉末を得た。得られた粉末は、SEM観察により、形状は前駆体と同様な45μmの無定形粒子径のアルミナ粒子であった。フラックス剤である三酸化モリブデンを使用しないため、板状アルミナ粒子を形成することができなかった。
また、ゼータ電位の測定を行ったところ、得られたアルミナ粒子の等電点はpH7.4であることが解った。
本発明の高いアスペクト比を有する板状アルミナは、凝集していない上、等電点が酸性にシフトしているため、優れた分散性が期待できることから、熱伝導性フィラー、化粧料、研磨材、高輝性顔料、滑材、導電性粉体の基材、セラミックス材料などに好適に使用できる。

Claims (1)

  1. 厚みが0.01〜5μm、
    平均粒子径が0.1〜500μm、
    厚みに対する粒子径の比率であるアスペクト比が2〜500、
    多角板状であり、
    粒子内にモリブデンを含むことを特徴とする板状アルミナ粒子。
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