JP6708096B2 - 二次電池の断線検出システム - Google Patents

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Description

本開示は、二次電池の断線検出システムに係り、特に、複数の電池セルが並列接続されたセルブロックを含む二次電池の断線検出システムに関する。
車両に搭載される二次電池は、必要な高電圧大電力を確保するため、複数の電池セルを直列及び並列に接続した組電池とし、これが電池パックとして用いられる。
特許文献1には、複数の電池セルが並列接続されたセルブロックが複数段で直列接続された内蔵電池を含む電池パックにおいて、断線時の抵抗変化に基づいて、セルブロック内の並列電池セルの一部の接続の脱落を検出する抵抗法が以下のように開示されている。
すなわち、充電前のテスト期間と満充電後で放電前の期間とにおいて各セルブロックの開放回路電圧(Open Circuit Voltage:OCV)を測定し、充放電時の端子間電圧とOCVとの差電圧を充放電電流で除して各セルブロックの内部抵抗を算出する。セルブロックが2つ電池セルの並列の場合、セルブロックの内部抵抗は正常時で20〜25mΩ、2つの電池セルの並列の一方の接続が脱落すると正常時の倍の40〜50mΩとなることを利用する。
特許文献2には、リチウムイオン電池について、電極表面におけるリチウムイオンの出入りに関する抵抗成分を反応抵抗として、反応抵抗と電解液の塩濃度との関係を以下のように述べている。すなわち、所定の塩濃度を境界にして、塩濃度が高い領域では塩濃度の変化に対する反応抵抗の変化が小さく、塩濃度が低い領域では塩濃度の変化に対する反応抵抗の変化が大きい。
特開2008−027658号公報 特開2010−060406号公報
n個の電池セルが並列接続されたセルブロックでは、n個の内、x個の電池セルが断線すると、セルブロック全体の抵抗上昇は、断線が全くない正常状態の抵抗に対して[{x/(n−x)}]であり、抵抗上昇率は、{x/(n−x)}×100(%)となる。すなわち、並列接続数nが大きくなると、断線による抵抗上昇率は小さくなる。断線による抵抗上昇率が小さくなると、断線有無に関する検知感度が低下し、抵抗法を用いた断線検知において、断線の有無に関する誤検知が生じ得る。
そこで、複数の電池セルが並列接続されたセルブロックを含む二次電池において、電池セルの並列接続からの断線の有無に関する誤検知を抑制できる二次電池の断線検出システムが要望される。
本開示に係る二次電池の断線検出システムは、電気化学反応に寄与する反応物質を内部に含む正極と負極、及び、イオン化した反応物質を正極と負極と間で伝導する電解液を含んだイオン伝導体を有する電池セルを複数個並列に接続したセルブロックを含む二次電池と、セルブロックの端子間電圧を検出する端子間電圧検出部と、セルブロックに流れる電流を検出する電流検出部と、セルブロックの端子間電圧及び電流の検出データに基づき、セルブロックにおける複数の電池セルの接続に関する断線を検知する断線検知部と、電解液中におけるイオン化した反応物質の濃度を塩濃度として、二次電池の充放電履歴、及び、電解液におけるイオン化した反応物質の拡散定数と輸率に基づいて、電池セルの正負極間の塩濃度分布を求め、塩濃度分布における塩濃度差を算出する塩濃度差算出部と、塩濃度差が大きくなるにつれて電池セルの抵抗が大きくなる特性において、抵抗の増加が予め定めた値以上となる塩濃度差を判定塩濃度差とし、算出した塩濃度差が判定塩濃度差よりも大きいか否かを判定する塩濃度差判定部と、塩濃度差判定部の判定が肯定されるときは、複数の電池セルの接続に関し断線検知部による断線検知を許可し、判定が否定されるときは、断線検知部による断線検知を禁止する断線検知許可部と、を備える。
上記構成によれば、電池セルの抵抗が予め定めた値以上となる塩濃度差のときに、複数の電池セルの接続に関する抵抗法による断線検知を許可し、それ以外は抵抗法による断線検知を禁止するので、断線の有無に関する誤検知を抑制できる。
本開示の二次電池の断線検出システムによれば、複数の電池セルが並列接続されたセルブロックを含む二次電池において、電池セルの並列接続からの断線の有無に関する誤検知を抑制できる。
実施の形態に係る二次電池の断線検出システムの構成図である。 実施の形態に係る二次電池の断線検出システムに用いられる電池セルにおけるリチウムイオンの状態を示す図である。図2(a)は、電池セルの電極間におけるリチウムイオンと電子の流れを示す図であり、(b)は、リチウムイオン濃度である塩濃度の分布を示す図であり、(c)は、長時間放電後の塩濃度分布を示す図である。 実施の形態に係る二次電池の断線検出システムに用いられる電池セルの抵抗と塩濃度との関係を示す図である。 図3の関係が生じる理由として、塩濃度とイオン伝導率との関係を示す図である。 図3に関連し、電池セルに放電するときに生じる電圧降下の変化を示す図である。図5(a)は、放電電流の大小について、放電による電圧降下と放電時間との関係を示す図であり、(b)は、(a)における放電電流の大小を示す図である。 実施の形態に係る二次電池の断線検出システムにおける断線検出の手順を示すフローチャートである。 図6において、判定塩濃度差と塩枯れ領域発生の判定との関係を示す図である。図6(a)は、電池セルの抵抗と判定塩濃度差との関係を示す図であり、(b)は、判定塩濃度差と塩枯れ領域発生に関する判定値との関係を示す図である。 実施の形態に係る二次電池の断線検出システムにおいて、平均塩濃度の変化が生じるときについて、図3に対応する図である。 図8について、平均塩濃度の変化が生じるときの判定塩濃度差の補正を示す図である。図9(a)は、平均塩濃度の変化が生じるときについて図6(a)に対応する図であり、(b)は、図6(b)に対応する図である。 実施の形態に係る二次電池の断線検出システムにおいて、電極面内で生じる塩濃度差を示す図である。 図10について、電極面内で塩濃度差が生じるときの判定塩濃度差の補正を示す図である。図9(a)は、電極面内で塩濃度差が生じるときについて図6(a)に対応する図であり、(b)は、図6(b)に対応する図である。 実施の形態に係る二次電池の断線検出システムにおける断線検出の手順について、図6に図9と図11の判定塩濃度差の補正を追加したフローチャートである。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、二次電池として、リチウムイオン電池を述べるが、これは説明のための例示である。二次電池は電解液を用いるが、その中で電解液中の塩濃度が充放電により偏る性質を有する二次電池であればよい。
以下では、回転電機によって駆動される電気自動車(EV車両)に搭載される二次電池の断線検出システムを述べる。電気自動車としたのは、比較的長い充電時間に亘って二次電池が充電され、比較的長い放電時間に亘って二次電池が放電され、電極間における塩濃度分布について塩濃度差が生じやすい車両の例示である。電気自動車でなくても、比較的長い充電時間を有するプラグインハイブリッド車両であってもよく、大電流で充放電を繰り返す場合のあるハイブリッド車両であってもよい。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、電気自動車に搭載される二次電池の断線検出システム10の構成図である。以下では、特に断らない限り、二次電池の断線検出システム10を、断線検出システム10と呼ぶ。
断線検出システム10は、回転電機12と、回転電機12に接続される駆動回路部14と、駆動回路部14に接続される二次電池20と、制御装置60とを含む。
回転電機12は、電気自動車の駆動源となるモータ・ジェネレータ(MG)である。モータ・ジェネレータは、駆動回路部14から電力が供給されるときはモータとして機能し、電気自動車の制動時には発電機として機能する三相同期型回転電機である。
駆動回路部14は、電力変換器とインバータ回路とを含む。電力変換器は、二次電池20とインバータ回路の間に接続配置され、二次電池20の直流電圧と、インバータ回路の正極母線と負極母線の間の電圧であるシステム電圧値との間との電圧差を同じにする昇降圧用の電力変換回路である。電力変換器は、リアクトルと、スイッチング素子等を含んで構成される。インバータ回路は、二次電池20の直流電力を回転電機12の三相交流電力への電力変換、または、回転電機12の三相交流電力を二次電池20の直流電力への電力変換を行う回路である。インバータ回路は、複数のスイッチング素子と複数のダイオードとを含んで構成される。
二次電池20は、放電によって、回転電機12に対し駆動回路部14を介して電力を供給し、また、回転電機12から駆動回路部14を介して充電電力を受け取り充電される蓄電装置である。二次電池20は、回転電機12の駆動等に必要な高電圧大電力を、複数の電池セル30を並列及び直列に接続して構成される組電池である。図1の例では、二次電池20は、電池セル30をn個並列に接続したセルブロック22をm個直列に接続して構成され、二次電池20は、(n×m)個の電池セル30を含む組電池である。図1では、m個のセルブロック22の内の3つを、セルブロック221,222,22mと示す。n,mの一例を示すと、n=15、m=5である。以下では、この15並列5直列型の二次電池20について述べる。
電池セル30は、電解液を用いて構成される単電池である。かかる電池セル30として、リチウムイオン電池セルを用いる。電気自動車に搭載される二次電池20を構成する電池セル30としては、リチウムイオン電池セルとは別の種類の電池セルを用いることができるが、以下では、特に、電解液中の塩濃度が充放電により偏る性質を有する電池セル30の例として、リチウムイオン電池セルについて述べる。
電池セル30は、正極にリチウムと遷移金属の複合酸化物、負極に炭素材料、電解質に有機溶媒等の非水電解液を用いる。図2は、電池セル30の構成と、電池セル30におけるリチウムイオンLi+の状態とを示す図であり、その内、図2(a)は、電池セル30の模式図で、正極32と負極34との間におけるリチウムイオンLi+と電子e-の流れを示す図である。
電池セル30は、正極32と、負極34と、セパレータ36とを含む。図2に、直交する3方向として、X方向、Y方向、Z方向を示す。X方向は、正極32、負極34の厚さ方向であり、Z方向は、正極32、負極34の高さ方向であり、Y方向は、図2では紙面に垂直な方向で、正極32、負極34の幅方向である。正極32、負極34の電極面は、YZ平面に平行な面であり、電池セル30内でリチウムイオンLi+の移動する方向がX方向である。
正極32と負極34とは、電池セル30における電気化学反応に寄与する反応物質を内部に含む。リチウムイオン電池セルにおいて、反応物質はLiであり、イオン化した反応物質は、リチウムイオンLi+である。
正極32は、リチウムイオンLi+を放出または吸蔵する反応物質である正極活物質38の集合体で構成される。正極32には、リチウムイオンLi+の放出と吸蔵とに対応して生じる電子e-を集電する正極集電体31が設けられる。正極集電体31はアルミニウムで構成され、電池セル30における正極端子となる。正極活物質38は、リチウムと遷移金属の複合酸化物の粉末が導電性黒鉛および結着材とともに混合され、正極集電体31の上に塗布される。リチウムと遷移金属の複合酸化物としては、例えば、LiCoO2,LiNiO2,LiMnO2等が用いられる。導電性黒鉛としては、カーボンブラック等が用いられる。結着材の例はVdFである。
負極34は、リチウムイオンLi+を放出または吸蔵する反応物質である負極活物質40の集合体で構成される。負極34には、リチウムイオンLi+の放出と吸蔵とに対応して生じる電子e-を集電する負極集電体33が設けられる。負極集電体33は銅で構成され、電池セル30における負極端子となる。負極活物質40は、黒鉛が結着材とともに混合され、負極集電体33の上に塗布される。黒鉛としては、天然黒鉛の他、人造黒鉛等が用いられる。
セパレータ36は、正極32と負極34との間が電気的に短絡しないように、例えば、電解液42を浸透させた樹脂によって構成でき、正極32と負極34との間に配設される。電解液42としては、LiPF6等のリチウム塩を、炭酸エチレンや炭酸ジエチル等の有機溶媒に含ませた非水電解液が用いられる。樹脂としては、多孔質のポリオレフィン樹脂が用いられる。セパレータ36は、電池セル30におけるイオン伝導体に対応する。上記の材料は、説明のための例示であり、リチウムイオン電池セルの材料として周知の他の材料を用いてもよい。
図2(a)では、正極端子である正極集電体31と負極端子である負極集電体33との間に駆動回路部14を接続して、電池セル30の放電状態を示す。このときの駆動回路部14は、図1において、二次電池20から回転電機12に電力を供給するときの機能を有し、電池セル30に対し負荷として働く。電池セル30の放電時には、負極34の負極活物質40の界面上で、リチウムイオンLi+及び電子e-を放出する化学反応が生じ、放出されたリチウムイオンLi+は電解液42に溶け出し、放出された電子e-は負極集電体33によって集電され、駆動回路部14を経由して、正極集電体31に流れる。一方、正極32の正極活物質38の界面上では、正極集電体31に流れ込む電子e-と、セパレータ36を介して電解液42を拡散してきたリチウムイオンLi+を吸蔵する化学反応が生じる。このように、セパレータ36を介するリチウムイオンLi+の授受によって、電池セル30の放電が行なわれ、駆動回路部14に放電電流が流れる。
図1において、回転電機12が発電するときは、駆動回路部14は、回転電機12から二次電池20に対し充電電力を供給する機能となり、電池セル30に対し、電源として働く。このときは、図2とは逆方向の反応が生じ、正極32側の正極活物質38の界面上で、リチウムイオンLi+及び電子e-が放出され、負極34側の負極活物質40の界面上で、リチウムイオンLi+及び電子e-が吸蔵される。このように、セパレータ36を介して、放電時とは逆方向のリチウムイオンLi+の授受が生じ、電池セル30の充電が行なわれる。このように、放電時と充電時とは、リチウムイオンLi+と電子e-の流れ方が逆になるだけの相違であるので、以下では、主として、放電時について述べる。
放電時には、負極34から電解液42中に放出されたリチウムイオンLi+は、拡散及び泳動によって正極32へ移動し、正極32に吸蔵される。このとき、電解液42におけるリチウムイオンLi+の拡散に遅れが生じると、負極34側でリチウムイオンLi+濃度が増加するが、正極32側ではリチウムイオンLi+濃度が減少し、電解液42においてリチウムイオンLi+の濃度分布が生じる。リチウムイオン電池セル30においては、電解液中のLiPF6等のリチウム塩濃度を、電解液42中のリチウムイオンLi+濃度と言い換えることができるので、以下では、特に断らない限り、リチウムイオンLi+濃度を、塩濃度Ceと呼ぶ。
図2(b)は、電解液42におけるリチウムイオンLi+の拡散に遅れが生じたときの塩濃度分布80を示す図である。横軸は、図2(a)と同様にX方向の位置を示し、縦軸は塩濃度Ceである。電池セル30のX方向についての塩濃度の平均値を平均塩濃度81とすると、平均塩濃度81に対し、塩濃度分布80は、負極34側で塩濃度Ceが高く、正極32側で塩濃度Ceが低くなっている。負極34と電解液42との界面における塩濃度79と、正極32と電解液42との界面における塩濃度89との差が、電解液42における塩濃度差ΔCeである。
図2(b)は、電池セル30の放電時の塩濃度分布80であるが、充電時にはこれとは逆に、正極32側で塩濃度Ceが高く、負極34側で塩濃度Ceが低くなる。したがって、適当な電流レベルで適当な時間間隔で充電と放電とを繰り返すときには、塩濃度差ΔCeが平均化されて小さな値に留まる。これに対し、長時間に渡って放電を継続すると、図2(b)の傾向が解消されずに累積し、塩濃度差ΔCeが増加する。長時間に渡り充電を継続する場合も同様に塩濃度差ΔCeが増加する。また、充放電を繰り返す場合であって充電頻度と放電頻度に差がある場合には、塩濃度差ΔCeの増加が生じ得る。
図2(c)は、電池セル30について長時間放電後の塩濃度分布82を実線で示す図である。図2(b)と同様に、横軸はX方向の位置を示し、縦軸は塩濃度である。破線は、図2(b)の塩濃度分布80で、適当な放電時間のときの塩濃度分布に相当する。長時間放電のときの塩濃度分布82における塩濃度差ΔCe’は、適当な放電時間の塩濃度分布80における塩濃度差ΔCeよりも増加している。
塩濃度差ΔCeが生じると、電池セル30の電極間の抵抗Rが増加する。抵抗Rは、{(電池セル30の端子間電圧)/(電池セル30を流れる電流)}によって算出される。電池セル30が図1におけるセルブロック221を構成する例では、抵抗R={(セルブロック221の端子間電圧V1)/(二次電池20を流れる電流I)}である。電池セル30がセルブロック221,22mを構成する場合も、電池セル30の抵抗Rを同様に求めることができる。
図3は、電池セル30の抵抗Rと、塩濃度差ΔCeとの関係特性84を示す図である。横軸は塩濃度差ΔCeであり、縦軸は電池セル30の抵抗Rである。関係特性84において、塩濃度差ΔCeが小さい間は、Rはほぼ一定のR0であるが、塩濃度差ΔCeがある程度大きくなると、塩濃度差ΔCeが増加するほどRも増加する。
図4は、塩濃度Ceと、電解液42中のイオン導電率との関係を示す図で、これを用いて、図3の現象が生じる理由を説明する。図4の横軸は塩濃度Ceで、縦軸はイオン電導度である。図4に示すように、電解液42中のイオン導電率は塩濃度Ceに対し非線形特性を有し、特に塩濃度Ceが低濃度の領域でイオン導電率が極端に小さくなる。ここで、塩濃度差ΔCeがあるときは、図2(b),(c)に示すように、正極32側か負極34側のいずれか側において、塩濃度Ceが低濃度となり、この領域のイオン導電率が小さな値となる。電池セル30の正極端子と負極端子の間の抵抗Rは、その間の高抵抗領域で律されるので、塩濃度差ΔCeが増加して塩濃度Ceが低濃度となる領域が生じると、電池セル30の抵抗Rが増加し、図3の特性となる。
換言すれば、電池セル30の抵抗Rが増加するのは、電解液42の正極32側か負極34側のいずれか側において、塩濃度Ceが低濃度となり枯渇する領域が発生するときである。塩濃度Ceが枯渇する領域を、塩枯れ領域と呼ぶと、電池セル30の抵抗Rが増加するのは、電解液42において塩枯れ領域が発生するときである。
図5(a)は、図3に関連し、電池セル30に放電することで生じる電圧降下ΔVの変化を示す図である。放電することで生じる電圧降下ΔVとは、電池セル30の端子間電圧の成分の内で、抵抗Rによって損失となる成分で、電池セル30に流れる電流をIとして、電圧降下ΔV=IRで与えられる。I=0のときの電池セル30の端子間電圧をV0とすると、V0にはΔR=IRが含まれない。電池セル30に電流Iが流れると、Rによって電圧降下IRが生じるので、電池セル30の電気化学反応には、(V0−IR)が寄与する。図5(a)の横軸は時間で、縦軸は、放電による電圧降下ΔVである。電圧降下ΔVは、電池セル30に通電しないときの状態をΔV=0として、縦軸の下側に向かうほど大きな降下値となる。
図5(b)に電池セル30に流す放電電流Iと時間の関係を示す。図5(b)の横軸は時間で、図5(a)と時間軸の原点を合わせてある。図5(b)の縦軸は放電電流Iである。実線は、小電流放電の例で、「I小」と示す。破線は、大電流放電の場合で、「I大」と示す。時間t=0ではI=0で、時間t=t0から「I小」または「I大」の放電が行われる。
図5(b)の放電条件に応じて、図5(a)において、時間t=0ではΔV=0であり、時間t=t0から電圧降下ΔVが生じる。時間t=t0からの経過時間が短いうちは、電圧降下ΔVの大きさは放電電流Iとほぼ比例する。すなわち、ほぼ{ΔV(I大)/ΔV(I小)}=k{(I大)/(I小)}の関係で、係数kは時間に関係せずほぼ一定である。時間t=t0からの経過時間が長い長時間放電になると、電圧降下ΔVの大きさは放電電流Iと比例しなくなり、{ΔV(I大)/ΔV(I小)}=k{(I大)/(I小)}の関係が崩れ、係数kは、時間経過とともに増大する。図5(a)において、係数kが時間経過とともに増大する領域を縦線引きした領域で示す。この縦線引きした領域が、図3においてΔCeが増大するとともに抵抗Rが増大する領域、すなわち、電解液42における塩枯れ領域に対応する。
図1に戻り、端子間電圧検出部501は、セルブロック221の端子間電圧V1を検出する電圧検出手段である。同様に、端子間電圧検出部502は、セルブロック222の端子間電圧V2を検出する電圧検出手段であり、端子間電圧検出部50mは、セルブロック22mの端子間電圧Vmを検出する電圧検出手段である。電流検出部52は、二次電池20を流れる電流Iを検出する電流検出手段である。m個のセルブロックは互いに直列接続されるので、各セルブロック221,222,22mを流れる電流は、二次電池20を流れる電流Iに等しいので、電流検出部52は、各セルブロック221,222,22mを流れる電流Iを検出していることになる。これらの検出データは、適当な信号線を介して、制御装置60に伝送される。
制御装置60は、二次電池20の断線検出に関し、断線検出システム10の各構成要素の動作を制御する。制御装置60は、端子間電圧検出部501,502,50m、電流検出部52からそれぞれ伝送された端子間電圧V1,V2,Vm、電流Iを取得し、駆動回路部14の動作状態が二次電池20に対し負荷の状態か電源の状態かを取得する。駆動回路部14の動作状態が二次電池20に対し負荷の状態とは、二次電池20が放電する直流電力を受け取り、これを交流電力に変換して回転電機12に駆動電力として供給する動作状態である。駆動回路部14の動作状態が二次電池20に対し電源の状態とは、制動時にある回転電機12が発電する交流電力を直流電力に変換し、二次電池20に充電電力として供給する動作状態である。かかる制御装置60は、車両搭載に適したコンピュータを用いることができる。制御装置60は、独立の装置としてもよいが、場合によっては、電気自動車に搭載される他の制御装置の一部としてもよい。例えば、電気自動車の統合制御装置の一部を制御装置60としてもよい。
制御装置60は、塩濃度差ΔCeを算出する塩濃度差算出部62、算出された塩濃度差ΔCeが予め定めた判定塩濃度差ΔCeth以上か否かを判定する塩濃度差判定部64、塩濃度差判定部64の判定に従って抵抗法による断線検知を許可するか禁止するかを定める断線検知許可部66、抵抗法による断線検知を行う断線検知部68を含む。
かかる機能は、制御装置60に搭載されたソフトウェアを実行することで実現される。具体的には、制御装置60がソフトウェアとしての断線検出プログラムを実行することで実現できる。かかる機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
制御装置60と接続される記憶部70は、制御装置60が実行するプログラムを格納する。記憶部70は、制御装置60の塩濃度差判定部64において用いられる判定塩濃度差ΔCethに関する判定パラメータファイル72を記憶する。表示部74は、制御装置60の断線検知許可部66の結果等を表示する表示装置である。表示装置としては、ディスプレイ等を用いることができる。
上記構成の作用、特に、制御装置60の各機能について、図6以下を用いてさらに詳細に説明する。図6は、断線検出の手順を示すフローチャートである。各手順は、断線検出プログラムの各処理手順に対応する。
電気自動車の動作システムが立ち上がると、断線検出システム10の各構成要素の初期化等が行われ、断線検出プログラムが立ち上がる。そして、定められた断線検出制御の制御周期ごとに、そのときの二次電池20の充放電履歴に基づき、二次電池20を構成する電池セル30について図2で述べた塩濃度分布が推定され、推定された塩濃度分布に基づいて塩濃度差ΔCeが算出される(S10)。この処理手順は、制御装置60の塩濃度差算出部62の機能によって実行される。二次電池20の充放電履歴は、定められた検出周期において、電流検出部52が検出する充電電流データと放電電流データとに基づいて作成される。電流検出部52が充電電流と放電電流との間の区別ができない仕様のときは、駆動回路部14から伝送されてくる動作状態データに基づいて、放電状態か充電状態かを区別することが可能である。充放電履歴としては、塩濃度差ΔCeに関連する履歴が特に重要である。例えば、長時間に渡り放電を継続した履歴、長時間に渡り充電継続した履歴、充放電を繰り返す場合であって充電頻度と放電頻度に差がある履歴等である。これらの各履歴においては、塩濃度差ΔCeの増加が生じ得るからである。
充放電履歴に基づいて行う塩濃度分布の推定は、電解液実効拡散係数Def eff、リチウムイオンLi+の輸率t+ 0、及び塩濃度Ceとの関係式(1)に基づいて行うことができる。輸率t+ 0は、電解液42に電流を流した際に、リチウムイオンLi+が担った電流成分の全電流に占める割合である。
Figure 0006708096
ここで、添え字のjは、電極識別子で、j=1は正極を示し、j=2は負極を示す。xは、X方向に沿った位置であり、tは時間であり、ナブラ∇はxに関する微分演算子である。添え字でないjは、単位時間・単位体積当たりのリチウムイオンLi+の生成量であり、これを時間積分すると電流密度iとなる。電流密度iは、単位面積当たりの充放電電流Iに相当する。したがって、充放電履歴は、tとjとiとに反映される。θは、活物質界面におけるリチウムの局部的SOC(State Of Charge)である。εeは、電解液42の体積についての分率、Fはファラデー定数である。
塩濃度分布の推定に関係式(1)以外の推定式を用いてもよい。例えば、輸率t+ 0にx依存性がないときは、関係式(1)の右辺の第三項を省略した推定式を用いることができる。
塩濃度分布の推定が行われると、正極32の電解液界面における塩濃度89と、負極34の電解液界面における塩濃度79とをそれぞれ求め、その差から塩濃度差ΔCeを算出する。
塩濃度差ΔCeが算出されると、図3で述べた塩濃度差ΔCeと抵抗Rとの間の関係を用いて、塩濃度差ΔCeが予め定めた判定塩濃度差ΔCethより大きいか否かを判定する(S12)。この処理手順は、制御装置60の塩濃度差判定部64の機能によって実行される。判定塩濃度差ΔCethは、電池セル30の抵抗Rが増加する塩枯れ領域が発生しているか否かを判定するために用いる塩濃度差ΔCeである。
図7に、判定塩濃度差ΔCethの定め方を示す。図7(a)は、図3で述べた関係特性84である。関係特性84は、塩濃度Ceが平均塩濃度81の付近であって塩濃度差ΔCeが小さい間は、電池セル30の抵抗Rはほぼ一定のR0であるが、塩濃度差ΔCeが大きくなるにつれて電池セル30の抵抗RはR0から次第に単調増加する特性である。RがR0から増加を始めるときは、電解液42中に塩枯れ領域が発生するときである。判定塩濃度差ΔCethは、塩枯れ領域が発生するときの塩濃度差ΔCeである。図7(b)は、横軸に塩濃度差ΔCeを取り、縦軸に、S12の判定値を示す。(塩濃度差ΔCe)<(判定塩濃度差ΔCeth)のときは、判定値=LOWで、であり、(塩濃度差ΔCe)≧(判定塩濃度差ΔCeth)のときは、判定値=HIGHとなる。判定値=HIGHのΔCeの領域が、塩枯れ領域に相当する。
ΔCethは、関係特性84において、抵抗RのR0からの増加である抵抗変化ΔR=(R−R0)が、予め定めた値ΔRth以上となる塩濃度差ΔCeとして設定される。ΔRthは、図1におけるセルブロック221,222,22mにおける電池セル30の並列接続数nに基づいて定める。抵抗法を用いて電池セル30の並列接続に関する断線検知を行うと、並列接続数nが大きいほど、断線検知の感度が低下する。塩枯れ領域が発生すると、電池セル30の抵抗Rは、R0より大きくなり、抵抗変化ΔRが生じ、断線検知の感度が増加する。ΔCethにおけるΔRthは、抵抗法を用いるときに、断線検知の誤検知を抑制できる断線検知感度に基づいて定めることができる。
例えば、電池セル30の抵抗RをR0として、n=2の場合、断線が無いときのセルブロック全体の抵抗は、(R0/2)である。ここで、n=2の内1つが断線すると、セルブロック全体の抵抗はR0に変化する。抵抗変化ΔR=(R0/2)であり、これは、断線がないときのセルブロック全体の抵抗を基準にすると、100%の抵抗上昇率に相当し、断線検知について誤検知の恐れがない。
図1の場合は、n=15であるので、断線が無いときのセルブロック全体の抵抗は、(R0/15)である。ここで、n=2の内1つが断線すると、セルブロック全体の抵抗は(R0/14)に変化する。抵抗変化ΔRは、{(R0/14)−(R0/15)}=(R0/15)×{(15/14)−1}=(R0/15)×(1/14)であり、これは、断線がないときのセルブロック全体の抵抗(R0/15)を基準にすると、約7%の抵抗上昇率に過ぎない。
一例として、抵抗法による断線検出のために必要な抵抗上昇感度を、断線がないときの抵抗に対し10〜15%とすると、塩濃度差ΔCeによる抵抗Rの増加がなく、R=R0の場合、約7%の抵抗上昇率では、断線の有無に関して誤検知する恐れがある。この場合でも、断線検知の感度向上を1.5倍〜2倍とできれば、n=15の場合でも、抵抗法による断線検出を行っても誤検知しない。すなわち、図7(a)において、Rが(1.5〜2)R0となるように、ΔCethにおけるΔRthを設定する。図7(a)には、R=2R0、ΔRth=R0となるときのΔCeを判定塩濃度差ΔCethとする例を示す。この場合、図7(b)においてHIGHとなる塩枯れ領域は、電池セル30の抵抗Rが2R0以上となる領域となる。
上記の例のように、抵抗法による断線検出を行っても誤検知しない抵抗上昇感度を、断線がないときの抵抗に対し10〜15%とすると、n=2のときは、ΔCeth=0としてよい。n=10のときに、1つが断線したときの抵抗変化ΔRを計算すると、(R0/10)×(1/9)である。これは、断線がないときのセルブロック全体の抵抗(R0/10)を基準にすると、約11%の抵抗上昇率となるので、抵抗法による断線検出の限界に近い。この場合には、例えば、抵抗Rの増加の程度が(1.1〜1.2)R0となるように、ΔCethのときのΔRthを設定することがよい。このように、ΔCethは、抵抗法による断線検出を行ったときの誤検知抑制に必要な抵抗変化感度と、セルブロック221,222,22mにおける電池セル30の並列接続数nに基づいて定めることができる。以下では、電池セル30の並列接続数n=15として、上記のように、ΔRth=R0のときの塩濃度差ΔCeを判定塩濃度差ΔCethに設定するものとする。
判定塩濃度差ΔCethは、関係特性、ΔRをパラメータとして、予め実験やシミュレーションによって求められる。求められた結果は、記憶部70の判定パラメータファイル72に記憶される。S12では、該当する関係特性やΔRを検索キーとして記憶部70からΔCethを読み出し、S10で算出されたΔCeと比較して、ΔCe≧ΔCethの判定を行う。
S12の判定が肯定されるときは、電池セル30の抵抗Rは、2R0より大きくなるので、電池セル30の並列接続数n=15の内、1つが断線したときでも、抵抗法による断線検出を行ったときの誤検知抑制に必要な抵抗変化感度を確保できる。そこで、S14に進み、抵抗法による断線検知が許可される。この処理手順は、制御装置60の断線検知許可部66の機能によって実行される。
S14において抵抗法による断線検知が許可されると、m個のセルブロック221,222,22mのそれぞれについて、順次、抵抗法による断線検知が行われる(S16)。この処理手順は、制御装置60の断線検知部68の機能によって実行される。具体的には、端子間電圧検出部501が検出するセルブロック221の端子間電圧V1を取得し、電流検出部52が検出する電流Iを取得する。そして、(V1/I)を、セルブロック221の全体としての抵抗として算出する。一方で、1つの電池セル30の抵抗R0を予め実験等で取得しておく。電池セル30の並列接続数n=15において、全く断線がない正常状態のときのセルブロック221の全体の抵抗は、(R0/15)である。この(R0/15)と、算出された(V1/I)とを比較して、断線の有無、断線があるときの断線数を求める。これらの算出は、抵抗法による断線検出として周知であるので、詳細な説明を省略する。セルブロック221についての抵抗法による断線検知が終わると、次に、セルブロック222について同様の処理手順が実行される。これが繰り返され、m個目のセルブロック22mについて同様の処理手順が実行される。これが終了すると、S16の処理手順が終了する。
S12の判定が否定されるときは、電池セル30の抵抗Rは、2R0より小さいので、電池セル30の並列接続数n=15の内、1つが断線したときにおける抵抗法による断線検出を行うと誤検知の恐れがある。そこで、S18に進み、抵抗法による断線検知が禁止される。この処理手順も、制御装置60の断線検知許可部66の機能によって実行される。S16の結果、及びS18の結果は、表示部74に表示され、断線がある場合、抵抗法による断線検出が行われなかった場合には、別途定めた対応処理に進む。全ての処理手順が終了すると、断線検出制御の次の制御周期において、S10に戻り、上記の処理手順が繰り返される。
上記では、電池セル30の抵抗Rの上昇の原因となる塩枯れ領域の発生について、正極32と負極34との間の塩濃度差ΔCeに基づくΔCethを用いて判定するものとした。正極32と負極34との間の塩濃度差ΔCeの他に、電解液42中の平均塩濃度の変化や、電極面内の塩濃度分布における塩濃度差が生じることがある。これらは、塩枯れ領域の発生に影響を与える。以下では、塩枯れ領域の発生に影響を与えるこれらについてのΔCethの補正について述べる。
図8は、電解液42中の平均塩濃度が変化する例を示す図である。図8は、図2(b)に対応する図で、横軸はX方向の位置を示し、縦軸は塩濃度Ceである。破線は、図2(b)で述べた塩濃度分布80と、その平均塩濃度81である。電池セル30を長時間動作させると、主として、正極活物質38、負極活物質40の表面に皮膜が形成され、そのために電解液42中のリチウム塩が消費されるので、電解液42中の平均塩濃度が低下する。そのときの塩濃度分布86と、平均塩濃度87を実線で示す。平均塩濃度87は、図2(b)で述べた平均塩濃度81よりも低下している。平均塩濃度の変化をΔ(平均Ce)で示す。Δ(平均Ce)={(平均塩濃度81)−(平均塩濃度87)}である。
平均塩濃度が低下すると、電解液42の抵抗が増加するので、電池セル30の抵抗Rも増加する。これによって、より低い塩濃度差ΔCeで塩枯れ領域が発生する。そのために、判定塩濃度差ΔCethの補正が必要となる。
図9は、図7に対応する図で、図9(a)の横軸は塩濃度差ΔCeであり、縦軸は電池セル30の抵抗Rである。図9(b)の横軸は塩濃度差ΔCeであり、縦軸はS12の判定値を示す。破線は、図3、図7(a)で述べた関係特性84である。実線の関係特性88は、図8の塩濃度分布86に対応する特性で、関係特性84に比較して、同じ塩濃度差ΔCeにおける抵抗Rが高い値となっている。判定塩濃度差ΔCethをR=2R0に対応する塩濃度差として、関係特性88におけるΔCethは、関係特性84におけるΔCethよりも小さい値である。図9(b)に示すように、平均塩濃度が低下すると、その分だけ小さい塩濃度差で塩枯れ領域が生じる。そこで、図6において、S12の判定におけるΔCethを補正する必要がある。その補正値をΔCeth補正1とすると、(ΔCeth補正1)={(関係特性84におけるΔCeth)−(関係特性88におけるΔCeth)}である。
ΔCeth補正1は、関係特性84,88、平均塩濃度、Δ(平均Ce)をパラメータとして、予め実験やシミュレーションによって求められる。ここで、Δ(平均Ce)は、塩濃度分布80の算出に用いる関係式(1)に基づいても算出できるが、その他に、実験等で温度等の関数として二次電池20のSOCの低下速度を見積り、アレニウス式等を用いて算出する方法を用いてもよい。求められた結果は、記憶部70の判定パラメータファイル72に記憶される。
図10は、電極面内の塩濃度分布における塩濃度差の例として、正極32の電極面内における塩濃度分布90と、塩濃度分布90における塩濃度差を示す図である。正極32の電極面とは、正極32と電解液42との界面で、YZ平面に平行な面である。図2(b)で述べたように、正極32と電解液42との界面のYZ平面内では、一定の塩濃度89である。電池セル30が充放電によって発熱し、電解液42の膨張・収縮や、正極活物質38及び負極活物質40の膨張・収縮が起こると、正極32の電極面内及び負極34の電極面内で電解液42の流れが生じ、これによって、電極面内の塩濃度分布における塩濃度差が生じる。図10では、正極32の電極面内においてY方向に沿った塩濃度分布90を示す。塩濃度分布90は、正極32の電極面の中央部で最小の塩濃度で、電極面の両側の端部において最大の塩濃度となっている。この塩濃度分布90における塩濃度差が、面内塩濃度差であり、Δ(面内Ce)で示す。Δ(面内Ce)={(中央部における最大塩濃度)−(端部における最小塩濃度)}である。
図11は、図9に対応する図で、図11(a)の横軸は塩濃度差ΔCeであり、縦軸は電池セル30の抵抗Rである。図11(b)の横軸は塩濃度差ΔCeであり、縦軸はS12の判定値を示す。破線は、図3、図7(a)で述べた関係特性84である。実線の関係特性92は、図10の塩濃度分布90に対応する特性で、関係特性84に比較して、同じ塩濃度差ΔCeにおける抵抗Rが高い値となっている。判定塩濃度差ΔCethをR=2R0に対応する塩濃度として、関係特性92におけるΔCethは、関係特性84におけるΔCethよりも小さい値である。図11(b)に示すように、Δ(面内Ce)が生じると、その分だけ小さい塩濃度差で塩枯れ領域が生じる。そこで、図6において、S12の判定におけるΔCethを補正する必要がある。その補正値をΔCeth補正2とすると、(ΔCeth補正1)={(関係特性84におけるΔCeth)−(関係特性92におけるΔCeth)}である。
ΔCeth補正2は、関係特性84,92をパラメータとして、予め実験やシミュレーションによって求められる。求められた結果は、記憶部70の判定パラメータファイル72に記憶される。
図12は、電解液42における平均塩濃度差であるΔ(平均Ce)によるΔCeth補正1と、電極面内の塩濃度分布における塩濃度差であるΔ(面内Ce)によるΔCeth補正2を行うときの断線検出の手順を示すフローチャートである。
図12において、塩濃度差ΔCe算出(S10)の内容は、図6のS10と同じである。次のΔCeth算出(S11)は、図6のS12の内容の内で、判定塩濃度差ΔCethにおけるΔRの設定に関する部分であるので、詳細な説明を省略する。
図6のS12では、ΔRの設定で定まる判定塩濃度差ΔCethを用いて、S10で算出された塩濃度差ΔCeと判定塩濃度差ΔCethとの比較を行うが、図12では、その前に、平均塩濃度差であるΔ(平均Ce)の算出(S20)及びΔCeth補正1の算出(S22)と、面内塩濃度差であるΔ(面内Ce)の算出(S24)及びΔCeth補正2の算出(S26)とを行う。これは、Δ(平均Ce)の発生と、Δ(面内Ce)とが、独立して発生する可能性があるためである。Δ(平均Ce)に関するS20,S22の処理手順と、Δ(面内Ce)に関するS24,S26とは、いずれを先に処理してもよく、可能であれば、並列に処理しても構わない。
S20,S22,S24,S26の内容は、それぞれ、図8、図9、図10、図11に関連して述べた。ここで、ΔCeth補正1、ΔCeth補正2は、それらの算出データが記憶部70に記憶されているので、S22では、該当する関係特性84,88、平均塩濃度、Δ(平均Ce)を検索キーとして記憶部70からΔCeth補正1を読み出す処理を行う。同様に、S24では、該当する関係特性84,92を検索キーとして記憶部70からΔCeth補正2を読み出す処理を行う。
S13は、図6のS12の内で、ΔCeとΔCethとを比較する処理手順に相当する部分である。ここでは、S22においてΔCeth補正1が算出され、S26においてΔCeth補正2が算出されているので、S11で算出されたΔCethについて、これらの補正を行い、(補正後のΔCeth)とする。そして、ΔCeが(補正後のΔCeth)以上か否かを判定する。ΔCeth補正1とΔCeth補正2とは独立であるので、(補正後のΔCeth)は、4つの可能性がある。1つ目は、(ΔCeth補正1)=(ΔCeth補正2)=0で、このときは、(補正後のΔCeth)=(S11のΔCeth)である。2つ目は、(ΔCeth補正1)のみが0の場合で、このときは、(補正後のΔCeth)={(S11のΔCeth)−(ΔCeth補正2)}となる。3つ目は、(ΔCeth補正2)のみが0の場合で、このときは、(補正後のΔCeth)={(S11のΔCeth)−(ΔCeth補正1)}となる。4つ目は、(ΔCeth補正1)も(ΔCeth補正2)も0でない場合で、このときは、(補正後のΔCeth)={(S11のΔCeth)−(ΔCeth補正1)−(ΔCeth補正2)}となる。
S13の判定が肯定されるとS14,S16に進み、否定されると、S18に進む。S14,S16,S18の内容は、図6のS14,S16,S18と同じであるので、詳細な説明を省略する。このようにして、正負極間の塩濃度差ΔCe、平均塩濃度差であるΔ(平均Ce)、面内塩濃度差であるΔ(面内Ce)が生じるときの電池セル30の抵抗Rの上昇を利用し、抵抗法による断線検知の誤検知を抑制することができる。
本実施の形態に係る二次電池の断線検出システム10は、電池セル30を複数個並列に接続したセルブロック221,222,22mを含む二次電池20を備える。電池セル30は、電気化学反応に寄与する反応物質を内部に含む正極と負極、及び、イオン化した反応物質を正極と負極と間で伝導する電解液を含んだイオン伝導体を有する。二次電池の断線検出システム10は、さらに、セルブロック221,222,22mの端子間電圧V1,V2,Vmを検出する端子間電圧検出部501,502,50mと、セルブロック221,222,22mに流れる電流Iを検出する電流検出部52とを備える。さらに、セルブロック221,222,22mの端子間電圧V1,V2,Vm及び電流Iの検出データに基づき、セルブロック221,222,22mにおける複数の電池セル30の接続に関する断線を検知する断線検知部68を備える。さらに、電池セル30の正負極間の塩濃度分布を求め、塩濃度分布における塩濃度差を算出する塩濃度差算出部62を備える。ここで、塩濃度差算出部62は、電解液中におけるイオン化した反応物質の濃度を塩濃度として、二次電池20の充放電履歴、及び、電解液におけるイオン化した反応物質の拡散定数と輸率に基づいて、電池セル30の正負極間の塩濃度分布を求める。さらに、塩濃度差が大きくなるにつれて電池セル30の抵抗が大きくなる特性において、抵抗の増加が予め定めた値以上となる塩濃度差を判定塩濃度差とし、算出した塩濃度差が判定塩濃度差よりも大きいか否かを判定する塩濃度差判定部64を備える。さらに、塩濃度差判定部の判定が肯定されるときは、複数の電池セルの接続に関し断線検知部による断線検知を許可し、判定が否定されるときは、断線検知部による断線検知を禁止する断線検知許可部66を備える。
上記構成によれば、電池セル30の抵抗が予め定めた値以上となる塩濃度差のときに、複数の電池セル30の接続に関する抵抗法による断線検知を許可し、それ以外は抵抗法による断線検知を禁止するので、断線の有無に関する誤検知を抑制できる。
10 (二次電池の)断線検出システム、12 回転電機、14 駆動回路部、20 二次電池、22,221,222,22m セルブロック、30 (リチウムイオン)電池セル、31 正極集電体、32 正極、33 負極集電体、34 負極、36 セパレータ(イオン伝導体)、38 正極活物質、40 負極活物質、42 電解液、501,502,50m 端子間電圧検出部、52 電流検出部、60 制御装置、62 塩濃度差算出部、64 塩濃度差判定部、66 断線検知許可部、68 断線検知部、70 記憶部、72 判定パラメータファイル、74 表示部、79,89 塩濃度、80,82,86,90 塩濃度分布、81,87 平均塩濃度、84,86,88,92 関係特性。

Claims (1)

  1. 電気化学反応に寄与する反応物質を内部に含む正極と負極、及び、イオン化した反応物質を前記正極と前記負極と間で伝導する電解液を含んだイオン伝導体を有する電池セルを複数個並列に接続したセルブロックを含む二次電池と、
    前記セルブロックの端子間電圧を検出する端子間電圧検出部と、
    前記セルブロックに流れる電流を検出する電流検出部と、
    前記セルブロックの前記端子間電圧及び前記電流の検出データに基づき、前記セルブロックにおける複数の前記電池セルの接続に関する断線を検知する断線検知部と、
    前記電解液中における前記イオン化した反応物質の濃度を塩濃度として、前記二次電池の充放電履歴、及び、前記電解液における前記イオン化した反応物質の拡散定数と輸率に基づいて、前記電池セルの正負極間の塩濃度分布を求め、該塩濃度分布における塩濃度差を算出する塩濃度差算出部と、
    前記塩濃度差が大きくなるにつれて前記電池セルの抵抗が大きくなる特性において、前記抵抗の増加が予め定めた値以上となる前記塩濃度差を判定塩濃度差とし、前記算出した塩濃度差が前記判定塩濃度差よりも大きいか否かを判定する塩濃度差判定部と、
    前記塩濃度差判定部の前記判定が肯定されるときは、複数の前記電池セルの接続に関し前記断線検知部による断線検知を許可し、前記判定が否定されるときは、前記断線検知部による前記断線検知を禁止する断線検知許可部と、
    を備える、二次電池の断線検出システム。
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