JP6704691B2 - 赤ビート色素の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、赤ビート色素の製造方法に関するものである。詳細には、赤ビートの主色素成分であるべタニンを変性・異性化させることなく、高純度・高濃度な赤ビート色素を、赤ビート根から効率的に抽出、精製する方法等に関するものである。
甜菜(ビート)には、シュガービート、赤ビートなどの種類があり、シュガービートは砂糖抽出原料としてだけでなく、各種機能性成分(ラフィノース、ベタインなど)の抽出原料としても使用されている(特許文献1、2)。また、赤ビートは、そのまま食用とされるだけでなく、色素(赤ビート色素)の抽出原料としても使用されている。
この赤ビート色素は、ベタレイン系の色素であり、高い抗酸化能を有するベタニンを主色素成分とする色素物質である。そして、天然物由来の食品用着色料や抗酸化性の機能素材として利用されている。このベタレイン系色素は、ツルナ科、ヒユ科、スベリヒユ科、ツルムラサキ科、サボテン科、アカザ科、オシロイバナ科などの中心子目植物にだけ含まれるものであり、その中でヒユ科の赤ビートは有用なベタレイン系色素抽出原料となっている。
しかし、この赤ビート色素については、光、熱、pH、酸素、金属及び内在性の酵素等により分解又は変性が促進されることが一般的に知られている(非特許文献1)。特に、赤ビート根からの抽出時において、内在性の色素分解酵素の存在が問題となることが多い。そして、赤ビート根もしくはその抽出液の短時間の加熱処理は、当該酵素を部分的に不活性化・失活させ、色素分解を低減させることが知られているが、赤ビート色素自体が熱に弱く、加熱処理や濃縮において細心の注意が必要とされる。また、当該酵素は赤ビート根の表皮付近に偏在していることが知られており、表皮部の除去により、当該酵素を部分的に除去できることが知られているが、この表皮部除去だけでは十分でない場合も多い。
つまり、赤ビート色素は単離精製が非常に難しく、この高純度品を効率的に抽出・精製する工業的製造方法は今のところ見出されていない。例えば、市販される一般的な赤ビート色素粉末や濃縮赤ビート搾汁の色素含量は0.4〜0.5g(ベタニン換算)/100g程度で、多くの不純物を含む。不純物の存在は、粉末の潮解性につながり、色素製品の保存性を低下させる恐れがある。また、不純物の雑風味は、赤ビート色素を適用できる食品等を制限している。加えて、市販の赤ビート色素粉末や濃縮赤ビート搾汁は、ベタニンと等量かそれ以上のイソベタニン(ベタニン異性体)を含み、天然の存在比よりも多くのイソベタニンを含む(非特許文献2)。また、ベタニンが分解・変性して形成された複数種の色素も含む(非特許文献3)。これらは、赤ビート色素の製造中に形成されるものと推定される。また、ベタニンの純品は市販されておらず、ベタニンの機能性評価試験等に用いるためには、市販の色素製品のベタニン純度はあまりにも低い。したがって、赤ビート色素やベタニンの機能性、生合成経路の研究などは、いくつかの生理作用等の報告があるが(特許文献3、4)、他の植物色素(カロチノイド系色素、アントシアニン系色素、クロロフィル系色素等)と比較するとあまり進んでいない。
このような背景の中、赤ビート色素を工業生産したり、該色素を利用したりする業界などにおいて、赤ビートの主色素成分であるべタニンを変性・異性化させることなく、赤ビート根から高純度・高濃度な赤ビート色素を効率的に抽出、精製できるような赤ビート色素製造方法の開発が求められていた。
特開平10−042900号公報 特開2000−109453号公報 特表2004−018828号公報 特表2011−529906号公報
Int J Food Sci & Tech 44:2365−2376 J Sci Food Agric 81:932−399 Food Chem 127:42−53
本発明は、赤ビートの主色素成分であるべタニンを変性・異性化させることなく、高純度・高濃度な赤ビート色素(ベタニンを主色素成分とする色素物質)を、赤ビート根から効率的に抽出、精製することのできる赤ビート色素製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究の結果、赤ビート根を0〜30℃の水又は0.1〜0.5g/Lクエン酸水溶液で抽出処理し、得られた抽出液をpH2.0〜4.0に調整した後に遠心分離し、この遠心分離後の上清をpH1.5〜2.0に調整した後に合成吸着剤に接触させ、この合成吸着剤を水洗後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又は水酸化ナトリウム(水酸化Na)含有アルコール水溶液で溶出する工程、あるいは、得られた抽出液に70%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた後に遠心分離し、この遠心分離後の上清を逆相系樹脂又は合成吸着剤に接触させ、この逆相系樹脂又は合成吸着剤を水又はクエン酸水溶液で洗浄後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又はクエン酸含有アルコール水溶液で溶出する工程により赤ビート色素を製造することで、高純度・高濃度な赤ビート色素を効率よく取得できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の実施形態を例示すると次のとおりである。
(1)赤ビート根を、0〜30℃の水又はクエン酸を0.1〜0.5g/L含有するクエン酸水溶液で抽出処理し、得られた抽出液をpH2.0〜4.0(例えば2.0〜3.5)に調整した後に遠心分離し、この遠心分離後の上清をpH1.5〜2.0に調整した後に合成吸着剤に接触(色素吸着)させ、この合成吸着剤を水洗後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又は水酸化Na含有アルコール水溶液で溶出する工程からなることを特徴とする、赤ビート色素の製造方法。
(2)抽出液のpHを2.0〜3.0に調整することを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)溶出に用いるアルコール水溶液(水酸化Na含有アルコール水溶液も含む)が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールから選ばれる少なくともひとつを30%(v/v)以上含有する水溶液であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)溶出に用いるアルコール水溶液(水酸化Na含有アルコール水溶液も含む)が、40%(v/v)以上の濃度のエタノール水溶液であることを特徴とする、(3)に記載の方法。
(5)溶出に用いる水酸化Na含有アルコール水溶液の水酸化Na濃度が、0.5〜5.0g/Lであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6)合成吸着剤が、スチレン及びジビニルベンゼンの共重合体(スチレンジビニルベンゼン共重合体)であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)赤ビート根を、0〜30℃の水又はクエン酸を0.1〜0.5g/L含有するクエン酸水溶液で抽出処理し、得られた抽出液に70%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた後に遠心分離し、この遠心分離後の上清を逆相系樹脂又は合成吸着剤に接触(色素吸着)させ、この逆相系樹脂又は合成吸着剤を水又はクエン酸水溶液で洗浄後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又はクエン酸含有アルコール水溶液で溶出する工程からなることを特徴とする、赤ビート色素の製造方法。
(8)逆相系樹脂又は合成吸着剤の洗浄に用いるクエン酸水溶液のクエン酸濃度が、0.1〜0.5g/Lであることを特徴とする、(7)に記載の方法。
(9)溶出に用いるアルコール水溶液(クエン酸含有アルコール水溶液も含む)が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールから選ばれる少なくともひとつを5〜50%(v/v)含有する水溶液であることを特徴とする、(7)又は(8)に記載の方法。
(10)溶出に用いるクエン酸含有アルコール水溶液のクエン酸濃度が、0.01〜0.05g/Lであることを特徴とする、(7)〜(9)のいずれか1つに記載の方法。
(11)逆相系樹脂が逆相シリカゲルであること、及び/又は、合成吸着剤がスチレン及びジビニルベンゼンの共重合体(スチレンジビニルベンゼン共重合体)であることを特徴とする、(7)〜(10)のいずれか1つに記載の方法。
(12)遠心分離後の上清の、酢酸緩衝液(pH5.4)中における660nmの吸光度(濁度)に対する535nmの吸光度(色素成分濃度)の比が100以上となるように清澄化されることを特徴とする、(1)〜(11)のいずれか1つに記載の方法。
(13)遠心分離後の上清の、酢酸緩衝液(pH5.4)中における535nmの吸光度より定量される色素成分濃度(g(ベタニン換算)/L)に対するタンパク質含有量(g(BSA換算)/L)の比が1.6未満、さらには1.5未満であることを特徴とする、(1)〜(12)のいずれか1つに記載の方法。
(14)合成吸着剤又は逆相系樹脂からの溶出液中の色素成分濃度が4g(ベタニン換算)/L以上、さらには5g(ベタニン換算)/L以上であることを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか1つに記載の方法。
(15)合成吸着剤又は逆相系樹脂からの溶出液中の色素成分純度が20g(ベタニン換算)/100g乾物以上、さらには30g(ベタニン換算)/100g乾物以上であることを特徴とする、(1)〜(14)のいずれか1つに記載の方法。
(16)合成吸着剤又は逆相系樹脂に接触させる液の色素成分濃度が1.5g(ベタニン換算)/L未満、さらには1.0g(ベタニン換算)/L未満、且つ、色素成分純度が2g(ベタニン換算)/100g乾物未満、さらには1g(ベタニン換算)/100g乾物未満であることを特徴とする、(1)〜(15)のいずれか1つに記載の方法。
(17)抽出液中と合成吸着剤又は逆相系樹脂からの溶出液中の、HPLCにより535nmでモニタリングした時のイソベタニンのベタニンに対するピーク面積比が0.3以下となり、且つ、ベタニンとイソベタニンのピーク面積の和が総面積に対して95%以上となることを特徴とする、(1)〜(16)のいずれか1つに記載の方法。
(18)合成吸着剤又は逆相系樹脂からの溶出液を減圧濃縮してアルコールを除去し、賦形剤を添加して噴霧乾燥により粉末化することを特徴とする、(1)〜(17)のいずれか1つに記載の方法。
本発明によれば、赤ビートの主色素成分であるベタニンを変性・異性化させることなく、簡便な数段階の工程で、効率的に赤ビート根から赤ビート色素を抽出・精製することができる。そして、不純物が極めて少ない、高純度・高濃度な赤ビート色素を大量に工業生産することが可能となり、これにより、食品分野や医薬品分野での更なる赤ビート色素の研究及び利用が進み、当業界の技術発展に大きく貢献することとなる。
実施例1のpH未調整(pH6.1)及びpH2.0〜5.0に調整した色素粗抽出液(黒塗り)とその遠心上清(白抜き)の濁度(OD660、N=3、平均値±標準偏差)を示す。 実施例1のpH未調整(pH6.1)及びpH2.0〜5.0に調整して遠心分離したときの、遠心分離前後の濁度差(ΔOD660、N=3、平均値±標準偏差:左図)、及び、遠心分離により除去される沈殿量(g湿重量/L、N=2:右図)を示す。 実施例1のpH未調整(pH6.1)及びpH2.0〜5.0に調整した色素粗抽出液(黒塗り)とその遠心上清(白抜き)のHPLCにより定量したベタニン含量を色素粗抽出液に対する相対値(%、N=3、平均値±標準偏差)で示したものである。 実施例1のpH未調整(pH6.1)及びpH2.0〜5.0に調整した色素粗抽出液(黒塗り)とその遠心上清(白抜き)を遮光条件下で25℃、20時間静置し、535nmの吸光度により定量した色素含量を静置直後に対する相対値(%、N=3、平均値±標準偏差)で示したものである。 実施例1の色素粗抽出液(菱形)、pH3.0に調整した色素粗抽出液(遠心分離前:四角)、およびpH3.0に調整した色素粗抽出液の遠心上清(三角)を酢酸緩衝液(pH5.4)で100倍(v/v)希釈し、同一pH、遮光条件下、25℃で静置した際の色素含量の経時変化を静置直後に対する相対値で示したもの(N=1)である。 実施例1において、赤ビート色素粗抽出液をpH未調整及びpH1.5〜3.0の間でランダムに調整したサンプルの遠心上清(25mL)に合成吸着剤(セパビーズSP700)を1mL添加、4℃で15min振盪後、合成吸着剤に吸着されずに残った上清のベタニン量をHPLCにより測定し、合成吸着剤添加直後に対する相対値(%、N=2)で示したものである。 実施例1で、色素粗抽出液をpH3.0に調整して遠心分離により得た遠心上清をpH2.0に再調整して調製した色素供給液を、遮光条件下、4℃(菱形)、15℃(四角)、25℃(三角)の温度で静置し、535nmの吸光度により定量した色素含量を静置直後に対する相対値(%、N=1)で示したものである。 実施例1で、色素供給液を、合成吸着剤(SP700:三菱化学株式会社製品)を充填したカラム(内径2.2×75cm、200mL)に通液し(SV2×24hr,4℃)、色素成分を合成吸着剤に吸着させ、色素成分を吸着させた合成吸着剤を水洗し(SV2×1hr,4℃)、5%(細い点線)、20%(太い点線)、40%(実線)(v/v)濃度の各エタノール水溶液(溶出液)で溶出した際の色素溶出量を示すグラフである。縦軸が色素溶出量(A535)、横軸が溶出液通液量(L/L−R)を示す。 実施例1において、色素粗抽出液、合成吸着剤に吸着後、溶出して調製した色素精製液、色素精製液を減圧濃縮してエタノールを除去後、デキストリンを添加してスプレードライにより調製した色素粉末、市販品粉末A、および市販品粉末B(精製品)をHPLCにより分析した際のクロマトグラムである。縦軸が吸光度(A535、スケールは任意)、横軸が保持時間(min)を示す。保持時間5min付近のピークはベタニン、10min付近のピークはイソベタニンである。 実施例1の色素粉末(左図)及び市販品粉末A(右図)の吸光スペクトルを示す。
本発明は、赤ビート(根部)を原料とし、ここから赤ビート色素を抽出、精製する方法に係るものであるが、本発明において、赤ビートとは、ヒユ科フダンソウ属ビートの中で赤ビートあるいはテーブルビートと呼ばれる品種群を意味する。赤ビートとしては、例えば、Moneta、Crosby's Egyptian、Cylindra、Pablo F1、Cardeal、Chioggia、Moulin Rouge、Detroit2、Detroit darkred、Boltardyなどの品種が例示されるが、これら以外の品種も使用可能である。本発明においては、限定されるものではないが、Moulin RougeあるいはCylindra、Detroit darkredを使用するのがより好ましい。
そして、この赤ビート根部は、抽出前に表面洗浄(水洗)を行うのが好ましい。さらに、色素分解酵素の影響を低減するため、2%程度(例えば1〜3%)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液中で短時間蒸煮する、あるいは、表皮部の除去を行うことも好適である。けれども、このような表面洗浄や酵素の不活化処理、表皮部除去を行わない実施態様を完全に除外するものではない。
この赤ビート根部からの色素成分抽出は、破砕、裁断等した赤ビート根部に0〜30℃、より好ましくは0〜25℃の水又はクエン酸を0.1〜0.5g/L含有するクエン酸水溶液を0.5〜2倍量程度加え、水温を保ち且つ時々攪拌をしながら0.5〜5時間程度、好ましくは1〜2時間程度で抽出工程を行う。抽出後は、メッシュ等により不溶性固形分を除去することで、色素粗抽出液を得ることができる。
次に、上記色素粗抽出液を前処理して色素前処理液を作製する。この前処理により、色素粗抽出液中に含まれるタンパク質を主体とした不純物を除去・清澄化し、純度を高めるだけでなく、後の工程で使用する合成吸着剤や逆相系樹脂への変性タンパク質の不可逆的吸着による劣化リスクや、浮遊物質による樹脂塔の閉塞リスク等も低減する。また、色素分解酵素等の不純物による色素分解を低減し、色素の安定性を高める。前処理は、色素粗抽出液を塩酸、有機酸(クエン酸など)等によりpH2.0〜4.0、好ましくは2.0〜3.0、例えば2.5〜3.0に調整した後に、あるいは、色素粗抽出液に70%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた後に遠心分離し、この遠心分離後の上清を色素前処理液とする。遠心分離の条件は、析出する固形分を沈殿、除去させることができる条件であれば特段限定されないが、例えば、0〜25℃で1000〜7000×g、5〜30分間等の条件が例示される。この前処理により、酢酸緩衝液(pH5.4)中において、660nmにおける吸光度(濁度)に対する535nmにおける吸光度(色素成分濃度)の比が100以上となり、かつ、酢酸緩衝液(pH5.4)中における535nmの吸光度より定量される色素含量(g(ベタニン換算)/L)に対するタンパク質含有量(g(BSA換算)/L)の比が1.6未満となるように清澄化されることが好ましい。
得られた色素前処理液は、酸性沈殿により前処理した場合は再度塩酸、有機酸等によりpH1.5〜2.0、例えば1.5〜1.8に調整した後合成吸着剤に接触させ、硫酸アンモニウム沈殿により前処理をした場合にはそのまま逆相系樹脂(逆相担体)又は合成吸着剤に接触させ、色素成分を吸着させる。合成吸着剤又は逆相系樹脂への接触は、合成吸着剤又は逆相系樹脂を充填したカラムへの通液(例えば、SV(space velocity:空間速度)2〜8程度となるような流量での通液)をする方法だけでなく、色素含有液への合成吸着剤又は逆相系樹脂の混合・攪拌を行う方法でも良い。
使用する合成吸着剤は、スチレン及びジビニルベンゼンの共重合体(スチレンジビニルベンゼン共重合体)を用いるのが好ましく、市販品も使用可能である。例えば、セパビーズSP700(三菱化学株式会社製品)、アンバーライトXAD−2(オルガノ株式会社製品)などが好ましいものとして例示される。また、使用する逆相系樹脂は、逆相シリカゲル(逆相クロマトグラフィー用シリカゲルカラム、C18逆相カラムやODSなど)が好ましい。けれども、これら以外の樹脂の使用を完全に除外するものではない。
そして、この色素成分を吸着させた合成吸着剤又は逆相系樹脂から、アルコール水溶液、水酸化Na含有アルコール水溶液、又はクエン酸含有アルコール水溶液による色素成分溶出を行う。まず、酸性沈殿により前処理した液を合成吸着剤に通液した場合は、溶出前に合成吸着剤を水洗し、その後アルコール水溶液又は水酸化Na含有アルコール水溶液での溶出を行う。アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールから選ばれる少なくともひとつを使用するのが好適であるが、低級アルコールであれば他のアルコール類を使用しても差し支えない。なお、エタノールを使用するのが、経口摂取用として色素を用いる際の安全性等の点で特に好適である。また、このアルコール濃度は30%(v/v)以上、例えば40%(v/v)以上が好適であり、水酸化Na濃度は0.5〜5.0g/L、例えば1.0g/L程度含まれるのが好ましい。
硫酸アンモニウム沈殿により前処理をした後に逆相系樹脂又は合成吸着剤に通液した場合には、溶出前に水又はクエン酸水溶液(好ましくは0.1〜0.5g/L程度のクエン酸水溶液)で逆相系樹脂又は合成吸着剤を洗浄し、その後アルコール水溶液又はクエン酸含有アルコール水溶液での溶出を行う。使用可能なアルコールの種類は前段落に記載のものと同じであり、また、アルコール濃度は5〜50%(v/v)、好適には5〜10%(v/v)含まれ、クエン酸濃度は0.01〜0.05g/L程度含まれるのが好ましい。
なお、色素前処理液の合成吸着剤又は逆相系樹脂への接触、洗浄工程は0〜25℃、好ましくは0〜15℃で行う。色素成分溶出工程は、0〜25℃で行うのが好ましい。この色素前処理液の合成吸着剤又は逆相系樹脂への接触及び色素成分溶出工程は、非加熱工程であるため赤ビート色素の分解の懸念が極めて少ない。また、主色素成分であるベタニンのイソベタニンへの異性化や、その他色素への変性もほとんど起こらない。色素は合成吸着剤又は逆相系樹脂へ選択的に吸着され、色素吸着量は例えばSP700の場合最大22g(ベタニン換算)/Lである。吸着された色素は1〜3CV(column volume)のアルコール水溶液、水酸化Na含有アルコール水溶液、又はクエン酸含有アルコール水溶液により容易に溶出されるため、色素前処理液中の赤ビート色素の精製と濃縮を同時に(一工程で)行うことができることが大きな特徴である。さらに、色素回収率も70〜80%vsフィードと十分に高い。
このようにして得られた色素精製液の色素含量は、色素粗抽出液や色素前処理液の1.5g(ベタニン換算)/L未満と比較して非常に高く、4g(ベタニン換算)/L以上となる。色素純度は、色素粗抽出液や色素前処理液の1g(ベタニン換算)/100g乾物未満と比較して著しく高く、20g(ベタニン換算)/100g乾物以上となる。色素精製液は必要であれば、水酸化Na等のアルカリにより色素が最も安定なpH4.0〜5.5に調整を行い、減圧濃縮によりアルコールを除去後、さらに必要であれば防腐剤、色素を安定化させるクエン酸、賦形剤等を添加して、凍結乾燥させることができる。
また、凍結乾燥の代わりに、噴霧乾燥(スプレードライ)工程により粉末化することもできる。噴霧乾燥は公知のあらゆる様式(噴霧方式としてノズル噴霧方式、遠心噴霧方式など、回収方式としてテークアップ方式、ブローダウン方式、バグフィルター一括捕集方式など)の装置を使用することができ、特段の限定はない。また、公知の賦形剤(デキストリン、加工澱粉、セルロースなど)を液固形分に対して等量〜4倍量程度になるように加えることが好ましいが、噴霧乾燥時の回収率が高く、乾燥に不備がなければこの範囲外の添加量でも問題はない。なお、液固形分に対して4倍量の賦形剤を添加した場合は、色素含量が4〜7%(w/w)程度の粉末が得られる。
このようにして、赤ビート根を0〜30℃の水又はクエン酸を0.1〜0.5g/L含有するクエン酸水溶液で抽出処理し、得られた抽出液をpH2.0〜4.0に調整した後に遠心分離し、この遠心分離後の上清をpH1.5〜2.0に調整した後に合成吸着剤に接触させ、この合成吸着剤を水洗後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又は水酸化Na含有アルコール水溶液で溶出する工程、あるいは、得られた抽出液に70%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた後に遠心分離し、この遠心分離後の上清を逆相系樹脂又は合成吸着剤に接触させ、この逆相系樹脂又は合成吸着剤を水又はクエン酸水溶液で洗浄後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又はクエン酸含有アルコール水溶液で溶出する工程により赤ビート色素を製造することで、赤ビートの主色素成分であるべタニンを変性・異性化させることなく、効率的に高純度・高濃度な赤ビート色素を大量に工業生産することが可能となる。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
(赤ビート根からの赤ビート色素製造I)
赤ビート根を抽出原料とした赤ビート色素製造(抽出、精製、濃縮)工程について検討するため、以下の通り試験を行った。
約10kgの赤ビート(品種:Detoroit darkred)根部を水洗及び市販のフードプロセッサーですりおろし、等量の0.1g/Lクエン酸水溶液(4℃)により1時間抽出し、280メッシュの濾布を用いて遠心分離により粗濾過して約15kgの色素粗抽出液(pH5.0〜6.5,固形分(Brix)5〜7)を得た。食品添加物公定書に記載の方法に則り、該色素粗抽出液を酢酸緩衝液(pH5.4)で適時希釈して、535nmにおける吸光度を測定した。吸光度に基づき、以下の計算式により該色素粗抽出液中の色素含量を算出した。
サンプルの吸光度(Abs535nm,1cm)/ベタニン百分率吸光係数(Abs535nm,1cm、1%(w/v))×サンプル希釈倍率×10=色素含量(g(ベタニン換算)/L)
*535nmにおける吸収をすべてベタニンによるものと仮定
*ベタニン百分率吸光係数(Abs535nm,1cm、1%(w/v))=1120
上記により、この色素粗抽出液中の色素含量は、0.30〜0.50g(ベタニン換算)/Lで色素純度は0.5〜0.7g(ベタニン換算)/100g乾物であった。この色素粗抽出液をクエン酸でpH2.0〜4.0に調整し、遠心分離(5000×g,5min,4℃)することにより、pH未調整やpH5.0に調整したものと比較して非常に清澄な上清(色素前処理液)が得られた(図1)。遠心分離前後の濁度差(660nmにおける吸光度の差:ΔOD660)及び沈殿として除去される不純物の量(g湿重量/L)は、pH未調整時やpH5.0に調整した時と比較してpH2.0〜4.0に調整した時は非常に大きく、この範囲へのpH調整と遠心分離(酸性沈殿処理)により効果的に不純物を除去できることがわかった(図2)。また、色素粗抽出液と色素前処理液(色素粗抽出液をpH3.0に調整し、遠心分離により調製した上清)の、酢酸緩衝液(pH5.4)中における濁度(660nmにおける吸光度)に対する色素含量(535nmにおける吸光度)の比(A535/OD660)、タンパク質定量法(Bradford法)により定量したタンパク質含量(g(BSA換算)/L)、酢酸緩衝液(pH5.4)中における吸光度により定量した色素含量(g(ベタニン換算)/L)、およびタンパク質含量と色素含量の重量比を表1に示した。ここからわかるように、色素粗抽出液の上記比が19〜24であるのに対し、色素前処理液はこの比が101〜173であった。
Figure 0006704691
続いて、遠心分離前後に赤ビートの主色素成分であるベタニン含量を以下の条件でHPLCにより定量した。いずれのpHでも上記前処理によるベタニンの大幅なロスは確認されなかった(図3)。
HPLC条件
カラム Hydrosphere C18,5μm,150×4.6mmI.D.
移動相 A:B=92:8
(A)0.01Mリン酸ナトリウム水溶液(pH4.0):メタノール=95:5
(B)メタノール
流速 1mL/min
注入量 5μL
検出 535nm
さらに、酸性沈殿により前処理する際のpHを色素安定性の面から評価した。各pHに調整した色素粗抽出液を25℃、遮光条件下で20時間静置したところ、pH4.0〜5.0では色素が不安定化する傾向が得られたが、pH2.0〜3.0では未調整と同程度に安定であり、このpH範囲で前処理することが好ましいと考えられた(図4)。また、遠心上清については、pH2.0〜3.0の範囲について未調整と比較して色素が特に安定化する傾向が得られ、この点からpH2.0〜3.0の範囲で前処理することが特に好ましいと考えられた(図4)。pH未調整の色素粗抽出液、pH3.0に調整した色素粗抽出液(遠心分離前)、およびその遠心上清をそれぞれ酢酸緩衝液(pH5.4)で100倍(v/v)希釈し、同一のpH条件、25℃、遮光条件下で静置して色素の安定性を評価した。三液の中で遠心上清の色素安定性が最も高く、pH調整・遠心分離(酸性沈殿)による前処理により色素が安定化することがわかった(図5)。
以上より、色素の安定性並びに不純物の除去率を考慮すると、pHの調整範囲は2.0〜4.0、好ましくは2.0〜3.0が適当であることがわかった。
続いて、前処理により除去される成分について調べた。上記の色素粗抽出液と色素前処理液(pH3.0)のタンパク質量を、Bradford法により比較したところ、前処理により処理前の7〜8割程度のタンパク質が除去され、タンパク質含有量が0.5g(BSA換算)/L以下となった(表1)。色素含量(g(ベタニン換算)/L)に対するタンパク質含有量(g(BSA換算)/L)の比が、色素粗抽出液では4.5〜5.1であるのに対し、色素前処理液では0.6〜1.4であった。また、前処理により除去される固形分の内、約4割がタンパク質であると推定された。一般的に、内在性の酵素により色素分解が促進されることが報告されているが(非特許文献1)、前処理により色素分解に関わる酵素等のタンパク質が除去され、上記の様に色素が安定化すると推定される。
次に、赤ビート色素粗抽出液について、塩酸でpH1.5〜3.0の間でランダムに調整したサンプルを各種作製し、それぞれ上記と同様の方法で遠心分離し、この上清(25mL)に合成吸着剤(セパビーズSP700)を1mL添加、4℃で15min攪拌後、合成吸着剤に吸着されずに残った上清のベタニン量をHPLCにより測定した。
この結果である合成吸着剤への色素吸着力と処理液のpHの関係を図6に示した。色素前処理液を合成吸着剤への接触前に酸性側(1.5〜2.0)にpHを調整することで、合成吸着剤への色素成分吸着力が著しく増加することが明らかとなった。
この結果を踏まえ、色素前処理液(pH3.0)をpH2.0に再調整し、色素供給液を調製した。この液を遮光条件下、4℃、15℃、25℃の各温度にて最大72時間静置した結果を図7に示した。25℃では24時間で1割程度色素の分解が確認されたが、4℃〜15℃では少なくとも24時間色素が安定して存在していた。この結果より、色素供給液を合成吸着剤へ接触させる際の温度は、色素の分解を防ぐため、4℃〜15℃が好ましいと考えられた。
続いて、この色素供給液を合成吸着剤(SP700:三菱化学株式会社製品)を充填したカラム(内径2.2×75cm、200mL)に通液し(SV2×24hr,4℃)、色素成分を合成吸着剤に吸着させた。そして、色素成分を吸着させた合成吸着剤を水洗し(SV2×1hr,4℃)、5、20および40%(v/v)のエタノール水溶液を用意し、溶出条件を検討した(図8)。SV2、4℃条件下においては、十分に濃縮された色素精製液を得るためには、20%(v/v)程度では十分ではなく、20%(v/v)を超える、例えば30%(v/v)、あるいは40%(v/v)程度のエタノール濃度が必要と考えられた。
また、上記と同様に色素供給液を合成吸着剤カラムに通液したところ、カラム出口液の色素含量が色素供給液の色素含量の5〜10%に達するまでに、最大22g(ベタニン換算)/L−R色素を吸着させることができ、通液した色素のうちの99%が樹脂に吸着された(表2、試験2)。このカラムを水洗(SV2×1hr,4℃)後、50%(v/v)エタノール水溶液又は0.1%(w/v,つまり1.0g/L)水酸化Na含有50%(v/v)エタノール水溶液で溶出(SV2×1hr,20℃)し、水で押出して(SV2×0.5hr,20℃)、色素が溶出され始めてから1.6〜2.4CVの範囲で溶出液を回収した。この液を水酸化Na水溶液でpHを4.5〜5.5に調整し、色素含量5.0〜9.1g(ベタニン換算)/L、色素純度29〜33g(ベタニン換算)/100g乾物の高度に濃縮かつ精製された色素精製液を得ることができた。
Figure 0006704691
この色素精製液を40℃で減圧濃縮してエタノールを除去し、重量比で2倍程度濃縮後、液固形分重量に対して重量比で約4倍量のデキストリンを加え、ミニスプレードライヤ(SD―1000型、東京理化器械株式会社)により下記条件でスプレードライし、赤ビート色素粉末を得た。当該色素粉末(水分約3%)のベタニン含量は3.9〜6.7%(w/w)であり、市販一般品と比較して約10倍、市販精製品と比較して2〜3倍高濃度な粉末品の調製が可能であった。
スプレードライ条件
入口温度:150℃
出口温度:68℃
吐出圧力:250kPa
ブロア風量:0.3m3/min
サンプル流量:0.4L/min
続いて、色素粗抽出液、色素精製液および色素粉末の色素組成をHPLCにより調べた(表3および図9)。色素粗抽出液、色素精製液および色素粉末のベタニンとイソベタニンのピーク面積比はいずれも1:0.18で変化しておらず、精製中にベタニンのイソベタニンへの異性化が起こっていないことが明らかとなった。当該色素粉末のベタニンに対するイソベタニンの割合は、市販品(1:0.96〜1.06)や非特許文献3に記載される値(スプレードライ品1:0.60〜1:15、フリーズドライ品1:0.21〜0.29)のいずれよりも小さい値であった。さらに、当該色素粉末においては、市販品で確認されるような保持時間5〜10minの変性した色素由来と推定されるピークも確認されず、結果としてトータル面積に対するベタニンとイソベタニンの面積の合計の割合は市販品と比較して大きかった(表3)。
Figure 0006704691
最後に、調製した色素粉末および市販品粉末Aの吸光スペクトルを図10に示した。調製した色素粉末で535nmの吸収に対する300〜400nm、及び600〜700nmにおける相対的な吸収が市販品と比較して明らかに小さい。
以上より、当該製造方法は赤ビートの主色素成分であるベタニンの異性化・変性を著しく低減し、高度に濃縮、精製できる方法であると言える。
(赤ビート根からの赤ビート色素製造II)
赤ビート根を抽出原料とした赤ビート色素製造(抽出、精製、濃縮)工程について、実施例1と別の工程を検討するため、以下の通り試験を行った。
赤ビート(品種:Moulin Rouge)根部を水洗し、0.5倍量の0.5g/Lクエン酸水溶液(常温)を加えてミキサーにかけ、粗濾過して色素粗抽出液を得た。これに、70%飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、遠心分離(5000×g,5min,4℃)して、清澄な上清(色素前処理液)を得た。
次に、この色素前処理液を逆相シリカゲルODSカラムに通液し(SV2×24hr,4℃)、色素成分を逆相系樹脂に吸着させた。そして、色素成分を吸着させた逆相シリカゲルを0.5g/Lクエン酸水溶液で洗浄し(SV2×1hr,4℃)、0.05g/Lクエン酸含有10%(v/v)エタノール水溶液で色素を溶出した(SV2×2.5hr,4℃)。この結果、実施例1で得られたものとほぼ同等の、高度に濃縮、精製された色素精製液が得られた。
以上の結果から、本発明によれば、赤ビートの主色素成分であるべタニンを変性・異性化させることなく、赤ビート色素粗抽出液から簡便な精製工程で、不純物が極めて少ない高純度な赤ビート色素を高収率で安定に取得できることが明らかになった。
本発明を要約すれば、以下の通りである。
本発明は、赤ビートの主色素成分であるベタニンを変性・異性化させることなく、高純度・高濃度な赤ビート色素を、赤ビート根から効率的に抽出、精製する方法を提供することを目的とする。
そして、赤ビート根を0〜30℃の水又は0.1〜0.5g/Lクエン酸水溶液で抽出処理し、得られた抽出液をpH2.0〜4.0に調整した後に遠心分離し、この遠心分離後の上清をpH1.5〜2.0に調整した後に合成吸着剤に接触させ、この合成吸着剤を水洗後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又は水酸化Na含有アルコール水溶液で溶出する工程、あるいは、得られた抽出液に70%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた後に遠心分離し、この遠心分離後の上清を逆相系樹脂又は合成吸着剤に接触させ、この逆相系樹脂又は合成吸着剤を水又はクエン酸水溶液で洗浄後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又はクエン酸含有アルコール水溶液で溶出する工程により、赤ビート色素を製造することで上記課題を解決する。

Claims (16)

  1. 赤ビート根を、0〜30℃の水又はクエン酸を0.1〜0.5g/L含有するクエン酸水溶液で抽出処理し、得られた抽出液をpH2.0〜4.0に調整した後に遠心分離し、この遠心分離後の上清をpH1.5〜2.0に調整した後に、スチレン及びジビニルベンゼンの共重合体である合成吸着剤に接触させ、この合成吸着剤を水洗後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又は水酸化ナトリウム含有アルコール水溶液で溶出する工程からなることを特徴とする、赤ビート色素の製造方法。
  2. 抽出液のpHを2.0〜3.0に調整することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 溶出に用いるアルコール水溶液が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールから選ばれる少なくともひとつを30%(v/v)以上含有する水溶液であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 溶出に用いるアルコール水溶液が、40%(v/v)以上の濃度のエタノール水溶液であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 溶出に用いる水酸化ナトリウム含有アルコール水溶液の水酸化ナトリウム濃度が、0.5〜5.0g/Lであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 赤ビート根を、0〜30℃の水又はクエン酸を0.1〜0.5g/L含有するクエン酸水溶液で抽出処理し、得られた抽出液に70%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えた後に遠心分離し、この遠心分離後の上清を逆相シリカゲルである逆相系樹脂又はスチレン及びジビニルベンゼンの共重合体である合成吸着剤に接触させ、この逆相系樹脂又は合成吸着剤を水又はクエン酸水溶液で洗浄後に吸着した色素成分をアルコール水溶液又はクエン酸含有アルコール水溶液で溶出する工程からなることを特徴とする、赤ビート色素の製造方法。
  7. 洗浄に用いるクエン酸水溶液のクエン酸濃度が、0.1〜0.5g/Lであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  8. 溶出に用いるアルコール水溶液が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールから選ばれる少なくともひとつを5〜50%(v/v)含有する水溶液であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 溶出に用いるクエン酸含有アルコール水溶液のクエン酸濃度が、0.01〜0.05g/Lであることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 遠心分離後の上清の、酢酸緩衝液(pH5.4)中における660nmの吸光度に対する535nmの吸光度の比が100以上となることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 遠心分離後の上清の、酢酸緩衝液(pH5.4)中における535nmの吸光度より定量される色素成分濃度(g(ベタニン換算)/L)に対するタンパク質含有量(g(BSA換算)/L)の比が1.6未満であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 合成吸着剤又は逆相系樹脂からの溶出液中の色素成分濃度が4g(ベタニン換算)/L以上であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 合成吸着剤又は逆相系樹脂からの溶出液中の色素成分純度が20g(ベタニン換算)/100g乾物以上であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 合成吸着剤又は逆相系樹脂に接触させる液の色素成分濃度が1.5g(ベタニン換算)/L未満、且つ、色素成分純度が2g(ベタニン換算)/100g乾物未満であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. HPLCにより535nmでモニタリングした時の、イソベタニンのベタニンに対するピーク面積比が0.3以下となり、且つ、ベタニンとイソベタニンのピーク面積の和が総面積に対して95%以上となることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 合成吸着剤又は逆相系樹脂からの溶出液を減圧濃縮してアルコールを除去し、賦形剤を添加して噴霧乾燥により粉末化することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。


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