以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の正面断面図である。図2は、画像形成ユニット20B、20Y、20C、20M(図1)周辺の拡大図である。図3は、画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
本実施形態では、画像形成装置1は、図1に示すように、トナー像を中間転写ベルト8(転写体)に一次転写(転写)し、中間転写ベルト8に一次転写されたトナー像を用紙に二次転写する、カラー印刷形式の画像形成装置であるとする。
具体的には、画像形成装置1の本体2の内部には、給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3は、内部に印刷用の用紙Pを積載して収容している。用紙Pは、図1において給紙カセット3の左上方に向けて1枚ずつ送り出される。尚、給紙カセット3は、本体2の前面側から水平に引き出すことが可能である。
本体2の内部であって、給紙カセット3の左方には、第一用紙搬送部4が備えられている。第一用紙搬送部4は、本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。第一用紙搬送部4は、給紙カセット3から送り出された用紙Pを受け取り、当該受け取った用紙Pを、本体2の左側面に沿って垂直上方の二次転写装置40まで搬送する。
給紙カセット3の上方であって、第一用紙搬送部4が形設された本体2の左側面とは反対側の右側面には、手差し給紙部5が備えられている。手差し給紙部5には、給紙カセット3に収容できないサイズの用紙Pや、厚紙やOHPシート等の一枚ずつ手動で送り込みたい用紙P等が載置される。
手差し給紙部5の左方には、第二用紙搬送部6が備えられている。第二用紙搬送部6は、給紙カセット3の上方において、手差し給紙部5から第一用紙搬送部4まで略水平に延び、第一用紙搬送部4に合流している。第二用紙搬送部6は、手差し給紙部5から送り出された用紙Pを受け取り、略水平に第一用紙搬送部4まで搬送する。
第二用紙搬送部6の上方には、露光装置7が配置されている。露光装置7は、後述する各感光体ドラム(感光体)21M、21C、21Y、21B(図2)の周面が帯電された後、制御装置100の制御下で、各感光体ドラム21M、21C、21Y、21Bの周面に向けて、制御装置100から入力された画像データに基づくレーザー光Lを照射する。これにより、感光体ドラム21M、21C、21Y、21Bの周面には、画像データが示す画像の静電潜像が形成される。
露光装置7の上方には、4個(複数個)の画像形成ユニット20M、20C、20Y、20Bが備えられている。各画像形成ユニット20M、20C、20Y、20Bの上方には、図1及び図2における時計回りに周回する無端ベルト状の中間転写ベルト8が備えられている。
図1及び図2に示すように、中間転写ベルト8は、複数の駆動ローラーに巻き掛けられて支持されている。各駆動ローラーは、不図示の駆動モーターによって与えられる回転駆動力によって、図1及び図2における時計回りに回転する。これにより、中間転写ベルト8も、図1及び図2における時計回りに回転する。
4個の画像形成ユニット20M、20C、20Y、20Bは、中間転写ベルト8の周回方向に沿って、上流側から下流側に向けて一列に配置されている。4台の画像形成ユニット20M、20C、20Y、20Bには、其々、マゼンタ色、シアン色、イエロー色、ブラック色に対応する不図示のトナー供給容器及びトナー搬送装置によって、各色のトナーが供給される。
画像形成ユニット20Mは、制御装置100による制御の下、マゼンタ色のトナー像を感光体ドラム21Mの周面に形成し、当該トナー像を中間転写ベルト8に一次転写する。同様に、画像形成ユニット20C、20Y、20Mは、其々、制御装置100による制御の下、シアン色、イエロー色、ブラック色のトナー像を感光体ドラム21C、21Y、21Bの周面に形成し、当該トナー像を中間転写ベルト8に一次転写する。以降の説明では、特に限定する必要がある場合を除き、「M」「C」「Y」「B」の識別記号を省略する。
具体的には、画像形成ユニット20は、図2及び図3に示すように、感光体ドラム21、帯電装置22、現像装置23、一次転写装置(転写装置)24、清掃装置25及び記憶装置26を備えている。
感光体ドラム21は、円筒形状の感光体である。感光体ドラム21は、トナー像が形成される周面を形成する感光層を備える。具体的には、当該感光層は、プラス極性(正極性)に帯電可能な単層の有機感光層である。感光体ドラム21は、中間転写ベルト8に対向して配置される。感光体ドラム21は、制御装置100(図3)による制御の下、不図示の駆動モーターによって図1及び図2における反時計回りに回転される。感光体ドラム21は、交換自在な部品であり、画像形成装置1の本体2(図1)に対して着脱可能に構成されている。
帯電装置22は、帯電ローラー221(帯電器)を備える。帯電ローラー221は、感光体ドラム21の周面に当接して配置され、感光体ドラム21に対して従動回転する。帯電装置22は、制御装置100(図3)による制御の下、プラス極性の帯電電圧Vbを帯電ローラー221に印加することによって、感光体ドラム21の周面を略一様に帯電させる。尚、帯電装置22は、感光体ドラム21の周面がマイナス極性に帯電可能に構成されている場合、マイナス極性の帯電電圧Vbを帯電ローラー221に印加する。
現像装置23は、制御装置100(図3)による制御の下、感光体ドラム21の周面に形成された静電潜像にトナーを供給することによって、感光体ドラム21の周面に当該静電潜像に応じたトナー像を形成する。
一次転写装置24は、一次転写ローラー241(転写器)を備える。一次転写ローラー241は、感光体ドラム21に対向する箇所において、中間転写ベルト8を挟むようにして、感光体ドラム21の周面に近接して配置されている。一次転写装置24は、制御装置100(図3)による制御の下、トナーとは反対極性の一次転写電圧Vt1(転写電圧)を一次転写ローラー241に印加する。
尚、本実施形態では、トナーがプラス極性であり、一次転写電圧Vt1がマイナス極性であるとする。つまり、一次転写電圧Vt1は、プラス極性の帯電電圧Vbとは反対極性のマイナス極性であるとする。ただし、これに限らず、帯電電圧Vbがマイナス極性であり、トナーがマイナス極性であり、一次転写電圧Vt1がプラス極性であってもよい。
中間転写ベルト8の回転とともに、所定のタイミングで一次転写ローラー241に一次転写電圧Vt1が印加されると、感光体ドラム21の周面と中間転写ベルト8との間で所定の電流が流れる。これにより、感光体ドラム21の周面に形成されたトナー像が一次転写ローラー241に向けて移動する。その結果、一次転写ローラー241と感光体ドラム21との間にある中間転写ベルト8の表面(図2における下方の面)に、感光体ドラム21の周面に形成されたトナー像が一次転写される。このようにして、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像を重ね合わせたカラートナー像が、中間転写ベルト8表面に形成される。
清掃装置25は、中間転写ベルト8にトナー像が一次転写された後に、感光体ドラム21の周面に残存するトナーを除去する。清掃装置25によって残存トナーが除去された感光体ドラム21の周面は、再度、帯電装置22によって一様に帯電される。その後、上述のように、感光体ドラム21の周面へのトナー像の形成が新たに行われる。
記憶装置26は、制御装置100と通信可能な例えば無線タグ(ICチップ)等の記憶装置によって構成され、画像形成ユニット20に関する情報を記憶する。具体的には、記憶装置26には、制御装置100による制御の下、画像形成ユニット20に含まれる感光体ドラム21が回転した回数の累積値や、感光体ドラム21が回転した時間の累積値等が記憶される。また、記憶装置26には、後述する印加電圧テーブル等、制御装置100による画像形成ユニット20の制御に用いられるデータ等が予め記憶されている。
二次転写装置40は、二次転写ローラー41を備える。二次転写ローラー41は、中間転写ベルト8を支持する駆動ローラー8aに対向する箇所において、中間転写ベルト8に近接して配置されている。二次転写装置40は、制御装置100(図3)による制御の下、トナーとは反対極性の二次転写電圧を二次転写ローラー41に印加する。
尚、本実施形態では、トナーがプラス極性であり、二次転写電圧がマイナス極性であるとする。ただし、これに限らず、帯電電圧Vbがマイナス極性であり、トナーがマイナス極性であり、二次転写電圧がプラス極性であってもよい。
二次転写ローラー41に第二転写電圧が印加されると、二次転写ローラー41と中間転写ベルト8との間で所定の電流が流れる。これにより、中間転写ベルト8表面に担持されているカラートナー像が、二次転写ローラー41に向けて移動する。これにより、第一用紙搬送部4によって二次転写ローラー41と中間転写ベルト8との間に送られてきた用紙Pの表面(中間転写ベルト8側の面)に、カラートナー像が二次転写される。二次転写ローラー41は、カラートナー像が転写された後の用紙Pを上方に搬送する。
二次転写装置40の上方には、定着部10が備えられている。定着部10は、制御装置100(図3)による制御の下、用紙Pを加熱及び加圧することで、用紙Pに二次転写されたカラートナー像を、用紙Pに定着させる。
定着部10の上方には、分岐部11が備えられている。定着部10から排出された用紙Pは、両面印刷を行わない場合、分岐部11から画像形成装置1の上部に設けられた用紙排出部12に排出される。分岐部11から用紙排出部12に向かって用紙Pが排出される排出口部分は、スイッチバック部13として機能する。両面印刷を行う場合、スイッチバック部13において、定着部10から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、分岐部11、定着部10の左方、及び二次転写装置40の左方を通って下方に送られ、再度第一用紙搬送部4を経て二次転写装置40へと送られる。
中間転写ベルト8の周回方向において、画像形成ユニット20Mよりも上流側には、クリーニング装置9が設けられている。クリーニング装置9は、中間転写ベルト8表面に担持されているカラートナー像が用紙Pに二次転写された後、制御装置100(図3)による制御の下、中間転写ベルト8表面に残留するトナーを回収する。
画像形成装置1は、更に、操作部70、通信部80、記憶部90及び制御装置100(図3)を備える。
操作部70は、ユーザーによる種々の操作指示を入力可能に構成されている。具体的には、操作部70は、液晶ディスプレイ等の不図示の表示部と、不図示の操作キー部と、を備えている。操作キー部は、例えば、数値や記号を入力するためのテンキーや、表示部に表示されたカーソルを移動させるための方向キー等の各種キーを備えている。
通信部80は、不図示のネットワークに接続され、ネットワークに接続されたパソコン等の外部装置との間で各種データを送受信する。例えば、通信部80は、外部装置においてユーザーにより入力された印刷ジョブを示すデータ(以降、印刷ジョブと略記する)を、ネットワークを介して受信し、当該受信した印刷ジョブを制御装置100へ出力する。
印刷ジョブには、用紙Pに形成する対象の画像を表す画像データや、出力(印刷)する用紙Pの枚数や用紙Pの種類(例:普通紙、厚紙、OHPシート等)等の印刷条件を表すデータ(以降、印刷条件と略記する)が含まれる。
記憶部90は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置によって構成される。記憶部90には、制御装置100による露光装置7、二次転写装置40、クリーニング装置9、定着部10、操作部70及び通信部80の制御に用いられるデータが予め記憶されている。
制御装置100は、画像形成装置1全体の制御を司る。制御装置100は、CPU、RAM、ROM等を備えたマイクロコンピューターで構成される。制御装置100は、例えば、実行部101、印加部102及び調整部103として機能する。
実行部101は、通信部80によって制御装置100に印刷ジョブが入力されると、当該印刷ジョブに含まれる印刷条件に従って、4個の画像形成ユニット20M、20C、20Y、20Bの其々を制御対象にして、制御対象の画像形成ユニット20(以降、対象ユニット)に含まれる感光体ドラム21、帯電装置22及び一次転写装置24を用いた画像形成処理(対象画像形成処理)を実行する。
具体的には、実行部101は、通信部80によって制御装置100に印刷ジョブが入力されると、4個の画像形成ユニット20M、20C、20Y、20Bのうち、中間転写ベルト8の回転方向において最も上流側に配置されている画像形成ユニット20Mを制御対象とする。そして、実行部101は、対象ユニットである画像形成ユニット20Mに含まれる感光体ドラム21M、帯電装置22M及び一次転写装置24Mを用いた画像形成処理を実行する。
実行部101は、画像形成ユニット20Mを対象ユニットとする画像形成処理を開始すると、不図示の駆動モーターを制御して、感光体ドラム21Mを回転させた状態にする。そして、実行部101は、帯電装置22Mを制御して、帯電ローラー221Mに帯電電圧Vbを印加させることによって、感光体ドラム21Mの周面を帯電させる。
その後、実行部101は、露光装置7を制御して、印刷ジョブに含まれる画像データが表す静電潜像を感光体ドラム21Mの周面に形成させる。その後、実行部101は、現像装置23Mを制御して、当該静電潜像にマゼンタ色のトナーを供給し、前記周面に当該静電潜像に応じたマゼンタ色のトナー像を形成させる。そして、実行部101は、一次転写装置24Mを制御して、一次転写ローラー241に一次転写電圧Vt1を印加させることによって、マゼンタ色のトナー像を中間転写ベルト8に一次転写させる。
以降、同様にして、実行部101は、画像形成ユニット20C、20Y、20Bを順次制御対象とし、画像形成ユニット20Cを対象ユニットとする画像形成処理、画像形成ユニット20Yを対象ユニットとする画像形成処理、及び画像形成ユニット20Bを対象ユニットとする画像形成処理を実行する。
尚、実行部101は、各画像形成ユニット20を対象ユニットとする画像形成処理において、感光体ドラム21を回転させた回数の累積値及び感光体ドラム21が回転した時間の累積値のうち、少なくとも一の累積値を、対象ユニットが備える記憶装置26(図3)に記憶する。
実行部101は、4個の画像形成ユニット20M、20C、20Y、20Bの其々を対象ユニットとする画像形成処理を終了すると、二次転写装置40及び定着部10(図1)等を制御して、中間転写ベルト8に一次転写されたトナー像を用紙Pに二次転写させ、用紙Pにトナー像を定着させた後、用紙Pを用紙排出部12に排出する。また、実行部101は、クリーニング装置9を制御して、二次転写装置40による二次転写後に中間転写ベルト8に残留したトナーを回収させる。
印加部102は、対象ユニットに含まれる感光体ドラム21、帯電装置22及び一次転写装置24を用いた画像形成処理が実行されていないときに、当該対象ユニットに含まれる感光体ドラム21、帯電装置22及び一次転写装置24を用いた電圧印加処理(対象電圧印加処理)を実行する。
具体的には、印加部102は、画像形成ユニット20Mを対象ユニットとする画像形成処理が実行されていないときに、対象ユニットに含まれる感光体ドラム21M、帯電装置22M及び一次転写装置24Mを用いた電圧印加処理を実行する。画像形成ユニット20Mを対象ユニットとする画像形成処理が実行されていないときとは、一次転写装置24Mの制御を終了した後から、次に帯電装置22Mを制御するまでの期間を示す。
図4は、電圧印加処理の概念図である。印加部102は、画像形成ユニット20Mを対象ユニットとして、感光体ドラム21M、帯電装置22M及び一次転写装置24Mを用いた電圧印加処理を開始すると、不図示の駆動モーターを制御して、感光体ドラム21Mを回転させた状態にする。そして、印加部102は、図4に示すように、帯電装置22Mを制御して、帯電電圧Vbと同極性の第一調整電圧Vb1を、帯電ローラー221Mに印加させ、且つ、一次転写装置24Mを制御して、帯電電圧Vbと同極性の第二調整電圧Vb2を、一次転写ローラー241Mに印加させる。
同様にして、印加部102は、画像形成ユニット20Cを対象ユニットとする画像形成処理が実行されていないときに、感光体ドラム21C、帯電装置22C及び一次転写装置24Cを用いた電圧印加処理を実行する。印加部102は、画像形成ユニット20Yを対象ユニットとする画像形成処理が実行されていないときに、感光体ドラム21Y、帯電装置22Y及び一次転写装置24Yを用いた電圧印加処理を実行する。印加部102は、画像形成ユニット20Bを対象ユニットとする画像形成処理が実行されていないときに、感光体ドラム21B、帯電装置22B及び一次転写装置24Bを用いた電圧印加処理を実行する。
尚、印加部102は、各画像形成ユニット20に含まれる感光体ドラム21、帯電装置22及び一次転写装置24を用いた電圧印加処理において、対象ユニットが備える記憶装置26(図3)に記憶されている、感光体ドラム21を回転させた回数の累積値及び感光体ドラム21が回転した時間の累積値のうちの前記少なくとも一の累積値を更新する。
調整部103は、感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さが第一厚さであるときの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を、前記感光層の厚さが第一厚さよりも厚い第二厚さであるときよりも低く調整する。
具体的には、調整部103は、対象ユニットの記憶装置26(図3)に予め記憶されている印加電圧テーブルTbを用いて、印加部102が対象ユニットに含まれる感光体ドラム21、帯電装置22及び一次転写装置24を用いた電圧印加処理を実行する直前に、当該電圧印加処理で用いる第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を決定する。
図5は、印加電圧テーブルTbの一例を示す図である。図5に示すように、印加電圧テーブルTbは、対象ユニットに含まれる感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さ(例:寿命中盤2(20μm))と、画像形成処理時に対象ユニットに含まれる帯電装置22によって帯電ローラー221に印加させる帯電電圧Vb(例:+700V)及び一次転写装置24によって一次転写ローラー241に印加させる一次転写電圧Vt1(例:−1200V)と、電圧印加処理時に、対象ユニットに含まれる帯電装置22によって帯電ローラー221に印加させる、帯電電圧Vbと同極性の第一調整電圧Vb1(例:+700V)及び一次転写装置24によって一次転写ローラー241に印加させる、帯電電圧Vbと同極性の第二調整電圧Vb2(例:+700V)と、を対応付けた情報である。
尚、印加電圧テーブルTbにおいて、対象ユニットに含まれる新品の感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さ(例:34μm)と対応付けられている、帯電電圧Vb(例:+1200V)、一次転写電圧Vt1(例:−1200V)、第一調整電圧Vb1(例:+1200V)及び第二調整電圧Vb2(例:+1200V)は、其々、帯電電圧Vb、一次転写電圧Vt1、第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2の初期値を示す。
また、図5に示すように、印加電圧テーブルTbでは、対象ユニットに含まれる感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さが第一厚さ(例:寿命中盤1(30μm))であるときの第一調整電圧Vb1(例:+1050V)及び第二調整電圧Vb2(例:+1050V)が、前記感光層の厚さが第一厚さよりも厚い第二厚さ(例:新品(34μm))であるときの第一調整電圧Vb1(例:+1200V)及び第二調整電圧Vb2(例:+1200V)よりも低く定められている。
調整部103は、対象ユニットに含まれる感光体ドラム21、帯電装置22及び一次転写装置24を用いた電圧印加処理で用いる第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を決定する場合、先ず、対象ユニットに含まれる記憶装置26に記憶されている前記少なくとも一の累積値に基づき、対象ユニットに含まれる感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さを算出する。
例えば、対象ユニットに含まれる記憶装置26に感光体ドラム21が回転した回数の累積値が記憶されている場合、調整部103は、記憶装置26に記憶されている当該累積値と所定の第一係数との積を、感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さ(例:30μm)として算出する。同様にして、対象ユニットに含まれる記憶装置26に感光体ドラム21が回転した時間の累積値が記憶されている場合、調整部103は、記憶装置26に記憶されている当該累積値と所定の第二係数との積を、感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さ(例:20μm)として算出する。
このようにして、調整部103は、各画像形成ユニット20に含まれる記憶装置26に記憶されている、感光体ドラム21が回転した回数の累積値及び感光体ドラム21が回転した時間の累積値のうち、少なくとも一の累積値を用いて、各画像形成ユニット20に含まれる感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さを個別に適切に算出できる。
そして、調整部103は、対象ユニットの記憶装置26(図3)に記憶されている印加電圧テーブルTb(図5)において、当該算出した感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さ(例:30μm)と対応付けられている第一調整電圧Vb1(例:+1050V)及び第二調整電圧Vb2(例:+1050V)を、電圧印加処理で用いる第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2として決定する。
また、調整部103は、対象ユニットに含まれる記憶装置26に、感光体ドラム21を回転させた回数の累積値及び感光体ドラム21が回転した時間の累積値の何れも記憶されていない場合、対象ユニットに含まれる感光体ドラム21が新品に交換されたと判断する。この場合、調整部103は、対象ユニットの記憶装置26(図3)に記憶されている印加電圧テーブルTb(図5)において、新品の感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さ(例:34μm)と対応付けられている第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2の初期値(Vb1の初期値:+1200V、Vb2の初期値:+1200V)を、電圧印加処理で用いる第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2として決定する。
尚、実行部101は、画像形成処理において、帯電ローラー221及び一次転写ローラー241の其々に印加する帯電電圧Vb及び一次転写電圧Vt1を、調整部103と同様に、対象ユニットの記憶装置26(図3)に記憶されている印加電圧テーブルTb(図5)を用いて決定する。
具体的には、実行部101は、画像形成処理を実行する直前に、調整部103と同様、対象ユニットに含まれる感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さを算出する。そして、実行部101は、対象ユニットの記憶装置26(図3)に記憶されている印加電圧テーブルTb(図5)において、当該算出した厚さ(例:30μm)に対応付けられている帯電電圧Vb(例:+1050V)及び一次転写電圧Vt1(例:−1200V)を、画像形成処理において、帯電ローラー221及び一次転写ローラー241の其々に印加する帯電電圧Vb及び一次転写電圧Vt1として決定する。
また、実行部101は、対象ユニットに含まれる記憶装置26に、感光体ドラム21を回転させた回数の累積値及び感光体ドラム21が回転した時間の累積値の何れも記憶されていない場合、対象ユニットの記憶装置26(図3)に記憶されている印加電圧テーブルTb(図5)において、新品の感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さ(例:34μm)と対応付けられている帯電電圧Vb及び一次転写電圧Vt1の初期値(Vbの初期値:+1200V、Vt1の初期値:−1200V)を、画像形成処理において帯電ローラー221及び一次転写ローラー241の其々に印加する帯電電圧Vb及び一次転写電圧Vt1として決定する。
ただし、実行部101が、画像形成処理において帯電ローラー221及び一次転写ローラー241の其々に印加する帯電電圧Vb及び一次転写電圧Vt1を、其々、感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さに関係しない固定値に定め、対象ユニットの記憶装置26(図3)又は記憶部9に予め記憶するようにしてもよい。
つまり、本実施形態の構成によれば、画像形成処理が実行されていないときに、電圧印加処理が行われ、感光体ドラム21が回転した状態で、帯電電圧Vbと同極性の第一調整電圧Vb1が帯電ローラー221に印加され、且つ、帯電電圧Vbと同極性の第二調整電圧Vb2が一次転写ローラー241に印加される。このため、一次転写ローラー241を用いず、帯電ローラー221にだけ第一調整電圧Vb1を印加する場合よりも迅速に、前記感光層に含まれる帯電電圧Vbと反対極性のトラップキャリアを、帯電電圧Vbと同極性の電圧が印加された帯電ローラー221及び一次転写ローラー241に向けて移動させ、前記感光層からトラップキャリアを迅速に消滅させることができる。つまり、本実施形態の構成によれば、感光体ドラム21の周面を形成する感光層を、迅速に、トラップキャリアを含まない、ゴースト等の画像不良が発生し難い状態にして、画像形成処理を迅速に開始できる。これにより、良好な画質の画像を迅速に形成できる。
また、本実施形態の構成によれば、感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さが薄くなる程、電圧印加処理において帯電ローラー221及び一次転写ローラー241の其々に印加される第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2が低く調整される。このため、感光体ドラム21の周面の使用機会が増大し、前記周面の摩耗によって前記周面を形成する感光層の厚さが薄くなることで、前記感光層の抵抗値が低くなった場合でも、感光体ドラム21の周面に流れ込む電流量が増大することを抑制できる。これにより、前記周面に掛かる負担を軽減できる。その結果、感光体ドラム21の寿命を長くすることができる。
また、本実施形態の構成によれば、交換後の新品の感光体ドラム21を含む画像形成ユニット20を対象ユニットとする電圧印加処理において、第一調整電圧Vb1の初期値(例:+1200V(図5))が帯電ローラー221に印加され、第二調整電圧Vb2の初期値(例:+1200V(図5))が一次転写ローラー241に印加される。このため、新品の感光体ドラム21の周面を形成する感光層に含まれ得るトラップキャリアの量に応じた、第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2の初期値を定めておくことで、当該電圧印加処理において、新品の感光体ドラム21の周面を形成する感光層に含まれ得るトラップキャリアを迅速に消滅させることができる。
また、従来から、本実施形態の感光体ドラム21の周面を形成する、正極性に帯電可能な単層の有機感光層は、負極性に帯電可能な単層又は積層の有機感光層や正極性に帯電可能な積層の有機感光層等の他の有機感光層より、トラップキャリアを含む割合が高い特性を有することが知られている。本実施形態の構成によれば、このような特性を有する感光層に含まれる比較的多くのトラップキャリアを迅速に低減でき、且つ、当該感光層を備えた感光体ドラム21の寿命を長くすることができる。
また、本実施形態の構成によれば、画像形成処理及び電圧印加処理において用いられる帯電ローラー221が感光体ドラム21の周面に当接して配置されている。このため、帯電ローラー221に代えて、前記周面に近接して帯電ローラー221とは他の帯電器が配置されている場合よりも、低い電圧を当該帯電ローラー221に印加して、画像形成処理及び電圧印加処理を実行できる。つまり、本実施形態の構成によれば、画像形成処理及び電圧印加処理に必要な電力を低減できる。
以下、従来の前帯電処理及び本発明に係る電圧印加処理の実行結果について説明する。図6及び図7は、従来の前帯電処理及び電圧印加処理の実行結果の一例を示す図である。尚、以下の説明では、新品の感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さは34μmであるものとする。
図6は、一の画像形成ユニット20を対象ユニットとし、対象ユニットの感光体ドラム21の周面の厚さが30μmまで摩耗した場合に、従来のように、対象ユニットにおける帯電処理前に+500Vの帯電電圧Vbを印加する前帯電処理を実行した結果を示す。また、対象ユニットにおける全画像形成処理の終了後にのみ、+900Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行した結果及び+1050Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行した結果を示す。また、紙間時に、+900Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行した結果を示す。
ここで、対象ユニットにおける全画像形成処理とは、複数枚の用紙Pの其々に画像を形成することを指示する印刷ジョブが制御装置100に入力された場合に、対象ユニットにおいて行われる全て(複数枚と同じ数)の画像形成処理を示す。対象ユニットにおける帯電処理とは、対象ユニットにおける全画像形成処理において最初に行われる、帯電装置22による感光体ドラム21の周面を帯電させる処理を示す。紙間時とは、対象ユニットにおける全画像形成処理に含まれる一の画像形成処理の終了後から、次の一の画像形成処理が開始されるまでの期間を示す。
図6の第一行目に示すように、感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さが30μmまで摩耗した場合に、対象ユニットにおける帯電処理前に+500Vの帯電電圧Vbを印加する前帯電処理を実行することによって、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得るためには、当該前帯電処理において、感光体ドラム21を四回転以上回転させる必要があることがわかった。
一方、図6の第二行目に示すように、対象ユニットにおける全画像形成処理の終了後にのみ、+900Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行することによって、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得るためには、当該電圧印加処理において、感光体ドラム21を三回転以上回転させる必要があることがわかった。
また、図6の第三行目に示すように、対象ユニットにおける全画像形成処理の終了後にのみ、+1050Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行することによって、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得るためには、当該電圧印加処理において、感光体ドラム21を二回転以上回転させる必要があることがわかった。
また、図6の第四行目に示すように、紙間時に、+900Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行することによって、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得るためには、当該電圧印加処理において、感光体ドラム21を一回転以上回転させればよいことがわかった。
つまり、図6の第一行目に示す実行結果と第二行目以降に示す実行結果とから、電圧印加処理を実行することによって、従来の前帯電処理を実行するよりも、迅速に、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得られることがわかった。また、図6の第二行目と第三行目に示す実行結果から、電圧印加処理において用いる第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2が高い程、迅速に、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得られることがわかった。また、図6の第三行目と第四行目に示す実行結果から、電圧印加処理の実行機会が多い程、迅速に、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得られることがわかった。
図7は、一の画像形成ユニット20を対象ユニットとし、対象ユニットの感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さが更に20μmまで摩耗した場合に、従来のように、対象ユニットにおける帯電処理前に+500Vの帯電電圧Vbを印加する前帯電処理を実行した結果を示す。また、対象ユニットにおける全画像形成処理の終了後にのみ、+600Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行した結果及び+700Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行した結果を示す。また、紙間時に、+700Vの第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2を用いて電圧印加処理を実行した結果を示す。
図7の第一行目に示す実行結果と第二行目以降に示す実行結果とからも、電圧印加処理を実行することによって、従来の前帯電処理を実行するよりも、迅速に、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得られることがわかった。また、図7の第二行目と第三行目に示す実行結果から、電圧印加処理において用いる第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2が高い程、迅速に、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を得られることがわかった。
また、図6の第三行目と図7の第三行目に示す実行結果から、感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さが薄い程、ゴーストが発生していない良好な画質の画像を迅速に得るために必要な、電圧印加処理において用いる第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2は、低くてよいことがわかった。
尚、上記実施形態は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を上記実施形態に限定する趣旨ではない。例えば、以下に示す、変形実施形態であってもよい。
(1)帯電装置22は、帯電ローラー221(図2)に代えて、感光体ドラム21の周面に当接せずに近接して配置された、帯電ローラー221よりも高い電圧が印加されるコロナ放電式の帯電器を備えてもよい。
(2)感光体ドラム21の周面を形成する感光層は、プラス極性に帯電可能な積層の有機感光層や、マイナス極性に帯電可能な単層又は積層の有機感光層等であってもよい。
(3)印加電圧テーブルTbにおいて定められている感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さは、図5に示す四個の厚さ(例:34μm、30μm、20μm、15μm)に限らない。印加電圧テーブルTbにおいて、一個以上の感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さと、帯電電圧Vb、一次転写電圧Vt1、第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2とを対応付けるようにしてもよい。また、印加電圧テーブルTbにおいて、帯電電圧Vb、一次転写電圧Vt1、第一調整電圧Vb1及び第二調整電圧Vb2と対応付ける感光体ドラム21の周面を形成する感光層の厚さは、其々、所定範囲を有するようにしてもよい(例:34μm〜30μm、30μm〜20μm、20μm〜15μm、15μm未満)。
(4)各画像形成ユニット20が、記憶装置26(図3)を備えないようにしてもよい。これに合わせて、実行部101及び調整部103が、各画像形成ユニット20の感光体ドラム21を回転させた回数の累積値及び各画像形成ユニット20の感光体ドラム21が回転した時間の累積値のうち、少なくとも一の累積値を、記憶部90(図3)に記憶するようにしてもよい。ただし、この場合、各画像形成ユニット20の感光体ドラム21が交換された場合には、記憶部90(図3)に記憶されている、当該交換前の感光体ドラム21についての前記少なくとも一の累積値を削除(リセット)する必要がある。また、各画像形成ユニット20の記憶装置26に予め記憶する印加電圧テーブルTb(図5)を、記憶部90(図3)に予め記憶するようにしてもよい。
(5)上記実施形態及び変形実施形態では、画像形成装置1は、中間転写ベルト8を用いてトナー像を用紙Pに転写するカラー印刷形式の画像形成装置であるとしていた。しかし、これに限らず、本発明に係る画像形成装置は、三個の画像形成ユニット20Y、20C、20M(図1、図2)を備えずに、画像形成ユニット20B(図1、図2)のみを備えた、中間転写ベルト8を用いてブラック色のトナー像を用紙Pに転写するモノクロ印刷形式の画像形成装置であってもよい。
または、本発明に係る画像形成装置は、中間転写ベルト8(図1、図2)及び三個の画像形成ユニット20Y、20C、20M(図1、図2)を備えずに、画像形成ユニット20B(図1、図2)のみを備えた、一次転写装置24Bによってトナー像を直接用紙Pに転写するモノクロ印刷形式の画像形成装置であってもよい。