JP6701817B2 - 電荷移動性薄膜、それが具備された電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents
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Description
ΔG=ΔH−TΔS
[2] 前記有機化合物は、前記最安定構造に由来するポテンシャルエネルギーの最小値から21kJ/molの範囲内に前記極小点を48〜500個有する、[1]に記載の電荷移動性薄膜。
[3] 前記有機化合物は、下記一般式(1)で表される、[1]又は[2]に記載の電荷移動性薄膜。
Xは、独立して−NR1、−O−、又は−SiR2(R3)を表し、
R1〜R3は、独立して置換基を表し、
A1〜A4は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、6〜20個の芳香族環原子を有する置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、又は5〜20個の芳香族環原子を有する置換若しくは無置換の芳香族複素環基を表し、且つA1〜A4のうち少なくとも3つが前記置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基又は前記置換若しくは無置換の芳香族複素環基であり、
nは、1〜3の整数を表し、
nが1のとき、Lは、水素原子又は置換若しくは無置換の1価の芳香族炭化水素基を表し、
nが2又は3のとき、Lは、単結合又は置換若しくは無置換の2又は3価の芳香族炭化水素基を表す)
[4] 前記一般式(1)のA1〜A4のうち少なくとも3つが、前記置換若しくは無置換の芳香族複素環基である、[3]に記載の電荷移動性薄膜。
[5] 前記一般式(1)のA1〜A4のうち少なくとも2つが、置換若しくは無置換のジベンゾフリル基又は置換若しくは無置換の9−フェニルカルバゾリル基である、[4]に記載の電荷移動性薄膜。
[6] 前記一般式(1)において、Xが−NR1又は−O−であり、且つA1〜A4のうち少なくとも2つが無置換のジベンゾフリル基又は無置換の9−フェニルカルバゾリル基である、[5]に記載の電荷移動性薄膜。
[7] 遅延蛍光を発する化合物をさらに含む、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の電荷移動性薄膜。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の電荷移動性薄膜を含む、電子デバイス。
[9] [1]〜[7]のいずれかに記載の電荷移動性薄膜を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
[10] [9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、表示装置。
[11] [9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、照明装置。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
本論に入る前に、本発明の技術思想と関連する、有機ELの発光方式及び発光材料について述べる。
有機ELの発光方式としては三重項励起状態から基底状態に戻る際に光を発する「リン光発光」と、一重項励起状態から基底状態に戻る際に光を発する「蛍光発光」の二通りがある。
有機ELのような電界で励起する場合には、三重項励起子が75%の確率で、一重項励起子が25%の確率で生成するため、リン光発光の方が蛍光発光に比べ発光効率を高くすることが可能で、低消費電力化を実現するには優れた方式である。
一方、蛍光発光においても、75%の確率で生成してしまう、通常では、励起子のエネルギーが、無輻射失活により、熱にしかならない三重項励起子を、高密度で存在させることによって、二つの三重項励起子から一つの一重項励起子を発生させて発光効率を向上させるTTA(Triplet−Triplet Annihilation、また、Triplet−Triplet Fusion:「TTF」と略記する。)機構を利用した方式が見つかっている。
前述のとおり、リン光発光は発光効率的には蛍光発光よりも理論的には3倍有利であるが、三重項励起状態から一重項基底状態へのエネルギー失活(=リン光発光)は禁制遷移であり、また同様に一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差も禁制遷移であるため、通常その速度定数は小さい。すなわち、遷移が起こりにくいため、励起子寿命はミリ秒から秒オーダーと長くなり、所望の発光を得ることが困難である。
ただし、イリジウムや白金などの重金属を用いた錯体が発光する場合には、中心金属の重原子効果によって、前記の禁制遷移の速度定数が三桁以上増大し、配位子の選択によっては、100%のリン光量子収率を得ることも可能となる。
しかしながら、このような理想的な発光を得るためには、希少金属であるイリジウムやパラジウム、白金などのいわゆる白金属と呼ばれる貴金属を用いる必要があり、大量に使用されることになるとその埋蔵量や金属自体の値段が産業上大きな問題となってくる。
一般的な蛍光発光性化合物は、リン光発光性化合物のような重金属錯体である必要性は特になく、炭素、酸素、窒素及び水素などの一般的な元素の組み合わせから構成される、いわゆる有機化合物が適用でき、さらに、リンや硫黄、ケイ素などその他の非金属元素を用いることも可能で、また、アルミニウムや亜鉛などの典型金属の錯体も活用できるなど、その多様性はほぼ無限と言える。
ただし、従来の蛍光化合物では前記のように励起子の25%しか発光に適用できないために、リン光発光のような高効率発光は望めない。
[励起三重項−三重項消滅(TTA)遅延蛍光化合物]
蛍光発光性化合物の問題点を解決すべく登場したのが遅延蛍光を利用した発光方式である。三重項励起子同士の衝突を起源とするTTA方式は、下記のような一般式で記述できる。すなわち、従来、励起子のエネルギーが、無輻射失活により、熱にしか変換されなかった三重項励起子の一部が、発光に寄与しうる一重項励起子に逆項間交差できるメリットがあり、実際の有機EL素子においても従来の蛍光発光素子の約2倍の外部取り出し量子効率を得ることができている。
一般式: T* + T* → S* + S
(式中、T*は三重項励起子、S*は一重項励起子、Sは基底状態分子を表す。)
しかしながら、上式からも分かるように、二つの三重項励起子から発光に利用できる一重項励起子は一つしか生成しないため、この方式で100%の内部量子効率を得ることは原理上できない。
もう一つの高効率蛍光発光であるTADF方式は、TTAの問題点を解決できる方式である。
蛍光発光性化合物は前記のごとく無限に分子設計できる利点を持っている。すなわち、分子設計された化合物の中で、特異的に三重項励起状態と一重項励起状態のエネルギー準位差の絶対値(以降、ΔEstと記載する。)が極めて近接する化合物が存在する。
このような化合物は、分子内に重原子を持っていないにもかかわらず、ΔEstが小さいために通常では起こりえない三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差が起こる。さらに、一重項励起状態から基底状態への失活(=蛍光発光)の速度定数が極めて大きいことから、三重項励起子はそれ自体が基底状態に熱的に失活(無輻射失活)するよりも、一重項励起状態経由で蛍光を発しながら基底状態に戻る方が速度論的に有利である。そのため、TADFでは理想的には100%の蛍光発光が可能となる。
即ち、有機機能層に用いられる前述のような有機材料は、一般的に、電荷移動度が小さく電流を通しづらい絶縁物であるが、サブミクロン程度に薄膜化し、数V〜数十V程度の電圧を印加することで電流を流すことが可能である。これは、電極からの注入電荷密度が薄膜内部の密度よりも大きくなると、オーム電流ではなく空間電荷制限電流によって電子が流れる現象を利用しているためである。しかし、有機材料を、有機EL素子に必要なサブミクロン単位の薄膜とするために単結晶を作ることは非常に難しい。そのため、有機EL素子には分子の配列に規則性がないアモルファス膜が用いられている。アモルファス膜は、単結晶に比べて電荷の移動度は低いが、粒界が多数存在するアモルファスと結晶の混合膜にするよりは、むしろ完璧なアモルファス膜にした方が、均一に電界が掛かるため面上発光を得るには好都合となる。
アモルファス膜で膜質変化が生じる理由を、熱力学的観点から考察する。図1A及び図1Bは、電荷移動性薄膜での経時での膜質変化の例を示す模式図である。
しかしながら、膜のエントロピーを大きくするに当たり、有機材料で形成される薄膜中を電荷が移動する際の電荷トラップを考慮する必要がある。
本発明の電荷移動性薄膜は、「横軸をねじれ角(°)、縦軸をポテンシャルエネルギー(kJ/mol)とするエネルギーダイヤグラムにおいて、MM2を分子力場とする分子動力学計算により算出される最安定構造に由来するポテンシャルエネルギーの最小値から21kJ/molの範囲内に、局所安定構造に由来するポテンシャルエネルギーの極小点を24個以上有する有機化合物」(以下、「特定の有機化合物」ともいう)を、一種または複数種有する。
特定の有機化合物における「局所安定構造」とは、真の安定状態である最安定構造とは異なるが、大きな乱れが与えられない限り、安定に存在できるような構造である。そのような局所安定構造は、特定の分子構造に存在するのではなく、様々な分子に存在している。また、局所安定構造は一つだけとは限らず、化合物によっては一つの分子構造に多数存在し得る。
1)まず、MM2を分子力場として用いた分子動力学計算ソフトウェアMaestro Materials Science(Schrodinger社製)を用いて、有機化合物の最安定構造を特定する。
2)次いで、Materials ScienceのConformational Search機能を用いて、有機化合物のねじれ角(°)を変化させたときの、有機化合物のポテンシャルエネルギー(kJ/mol)の変化を示すエネルギーダイヤグラムを得る。そして、最安定構造に由来するポテンシャルエネルギーの最小値から21kJ/molの範囲内にある極小点の数とそのポテンシャルエネルギーを、局所安定構造の数及びそのポテンシャルエネルギーとする。
本発明の電荷移動性薄膜(正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極の間に少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該発光層の少なくとも1層が、上述の特定の有機化合物を含有する電荷移動性薄膜であることが好ましい。
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
本発明に用いられる発光層は、単層又は複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
本発明に用いられる電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
本発明に用いられる正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除いた層を「有機層」ともいう。
また、本発明の有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
本発明に用いられる発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に用いられる発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
発光層の層厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
また、本発明に用いられる個々の発光層の層厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
本発明に用いられる発光層は、一層で構成されてもよいし、複数の層で構成されてもよい。上述の特定の有機化合物を発光層に用いる場合、単独で用いてもよいし、後述のホスト化合物、蛍光発光性化合物、りん光発光性化合物等と混合して用いてもよい。発光層の少なくとも一層が、発光性化合物を含有し、さらにホスト化合物を含有することが好ましい。発光層の少なくとも一層が、上述の特定の有機化合物と、ホスト化合物とを含有すると、発光効率が向上するため好ましい。発光層の少なくとも一層が、上述の特定の有機化合物と、蛍光発光性化合物及びリン光発光性化合物のうち少なくとも1種類とを含有すると、発光効率が向上するため好ましい。発光層の少なくとも一層が、上述の特定の有機化合物と、蛍光発光性化合物及びリン光発光性化合物のうち少なくとも1種類と、ホスト化合物とを含有すると、発光効率が向上するため好ましい。
発光性化合物としては、蛍光発光性化合物とリン光発光性化合物が好ましく用いられる。本発明においては、発光層が、上述の特定の有機化合物を蛍光発光性化合物又はアシストドーパントとして、0.1〜50質量%の範囲内で含有し、特に、1〜30質量%の範囲内で含有することが好ましい。
発光層中の発光性化合物の濃度については、使用される特定の発光性化合物及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができ、発光層の層厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、本発明で用いられる発光性化合物は、複数種を併用して用いてもよく、構造の異なる蛍光発光性化合物同士の組み合わせや、蛍光発光性化合物とリン光発光性化合物とを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
効果が発現する機構としては、いずれの場合も同様であり、上述の有機化合物上に生成した三重項励起子を逆項間交差(RISC)で一重項励起子へと変換する点にある。
これにより、上述の特定の有機化合物上に生成した理論上すべての励起子エネルギーを発光性化合物にエネルギー移動することができ、高発光効率の発現を可能にする。
したがって、発光層が、上述の特定の有機化合物、発光性化合物及びホスト化合物の3成分を含有する場合は、当該有機化合物のS1とT1のエネルギー準位は、ホスト化合物のS1とT1のエネルギー準位よりも低く、発光性化合物のS1とT1のエネルギー準位よりも高い方が好ましい。
同様に、発光層が、上述の特定の有機化合物と発光性化合物の2成分を含有する場合は、当該有機化合物のS1とT1のエネルギー準位は、発光性化合物のS1とT1のエネルギー準位よりも高い方が好ましい。
さらに、図6及び図7では、発光材料として蛍光発光性化合物を用いて示しているが、これに限定されず、リン光発光性化合物を用いてもよいし、蛍光発光性化合物とリン光発光性化合物の両者を用いてもよい。
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光性化合物を含有し、白色発光を示すことも好ましい。
白色を示す発光性化合物の組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組合わせ等が挙げられる。
本発明の有機EL素子における白色とは、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/m2でのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
蛍光発光性化合物は、上述の特定の有機化合物を用いてもよいし、有機EL素子の発光層に使用される公知の蛍光発光性化合物や遅延蛍光を発する化合物(遅延蛍光発光性化合物)の中から適宜選択して用いてもよい。
蛍光減衰測定は、一般的には以下のように行うことができる。遅延蛍光発光性化合物の溶液又は薄膜に、窒素雰囲気下で励起光を照射し、ある発光波長の光子数を計測する。そしてこのとき、放射される蛍光の減衰速度の異なる成分が2種類以上ある場合に、遅延蛍光発光性化合物が遅延蛍光性を示すものとする。
本発明に用いられるリン光発光性ドーパントについて説明する。
本発明に用いられるリン光発光性ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号、米国特許出願公開第2009/0108737号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号明細書、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2009/0165846号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号、米国特許第7396598号、米国特許出願公開第2006/0263635号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許出願公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号明細書、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号、米国特許第7534505号、米国特許第7445855号、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号、米国特許出願公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号、米国特許出願公開第2006/098120号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許出願公開第2012/228583号明細書、米国特許出願公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特願2011−181303号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
本発明に用いられるホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
ホスト化合物は、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機エレクトロルミネッセンス素子を高効率化することができる。
以下に、本発明において好ましく用いられるホスト化合物について述べる。
ホスト化合物は、発光層内においてキャリアの輸送及び励起子の生成を担う。そのため、カチオンラジカル状態、アニオンラジカル状態、及び励起状態の全ての活性種の状態において安定に存在でき、分解や付加反応などの化学変化を起こさないこと、さらに、層中において通電経時でホスト分子がオングストロームレベルで移動しないことが好ましい。
このような要件を満たすためには、ホスト化合物自体が電子のホッピング移動性が高いこと、かつ、正孔のホッピング移動が高いこと、三重項励起状態となったときの構造変化が小さいことが必要である。このような要件を満たすホスト化合物の代表格としてカルバゾール骨格、アザカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格又はアザジベンゾフラン骨格などの、高T1エネルギー準位を有するものが好ましく挙げられる。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121−2012に準拠した方法により求められる値である。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号、米国特許出願公開第2006/0280965号、米国特許出願公開第2005/0112407号、米国特許出願公開第2009/0017330号、米国特許出願公開第2009/0030202号、米国特許出願公開第2005/0238919号、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書、国際公開第2011/055933号、国際公開第2012/035853号、特開2015−38941号公報等である。特開2015−38941号公報に記載のホスト化合物の例には、明細書の[0255]〜[0293]に記載の化合物H−1〜H−230が含まれる。
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
電子輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総層厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の層厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm2/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されたものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
米国特許第6528187号、米国特許第7230107号、米国特許出願公開第2005/0025993号明細書、米国特許出願公開第2004/0036077号明細書、米国特許出願公開第2009/0115316号明細書、米国特許出願公開第2009/0101870号明細書、米国特許出願公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号、米国特許出願公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、欧州特許第2311826号明細書、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記のごとく陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその層厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な層(膜)であってもよい。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
正孔輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT/PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
さらに不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許出願公開第2003/0162053号明細書、米国特許出願公開第2002/0158242号明細書、米国特許出願公開第2006/0240279号明細書、米国特許出願公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、EP650955、米国特許出願公開第2008/0124572号明細書、米国特許出願公開第2007/0278938号明細書、米国特許出願公開第2008/0106190号明細書、米国特許出願公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、電子阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物も電子阻止層に好ましく用いられる。
正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記のごとく陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
前述した有機層は、更に他の添加物が含まれていてもよい。
添加物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
添加物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
有機層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、中間層等)の形成方法について説明する。
有機層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、かつ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・ツー・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
更に層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層(膜)厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
有機層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
電荷移動性薄膜に電界を引火する際における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5V以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
本発明の有機EL素子、有機薄膜太陽電池及び色素増感型太陽電池等に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等とも言う)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。有機EL素子の場合、支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
本発明の有機EL素子、有機薄膜太陽電池及び色素増感型太陽電池等の封止に用いられる封止手段としては、たとえば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
有機層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜あるいは前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために、保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に、封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
インピーダンス分光法(Impedance Spectroscopy;IS)は、微小正弦波電圧信号を有機電界発光素子に印加し、その応答電流信号の振幅と位相からインピーダンスを算出し、印加電圧信号の周波数の関数としてインピーダンススペクトルを得る測定方法である。
本発明の有機EL素子は、電子機器、例えば、表示装置、ディスプレイ、各種発光装置として用いることができる。
発光装置として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
本発明の有機EL素子を具備する表示装置は単色でも多色でもよいが、ここでは多色表示装置について説明する。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、スピンコート法及び印刷法である。
図12は有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
制御部Bは表示部Aと配線部Cを介して電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線ごとの画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部Cと複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図13においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
画素3は走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサー13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色及び青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が計れる。
本発明の有機EL素子を用いることにより、発光効率が向上した表示装置が得られた。
本発明の有機EL素子は、照明装置に用いることもできる。
本発明の有機EL素子は、共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
また、本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、パッシブマトリクス方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。又は、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が白色発光である。
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図16及び図17に示すような照明装置を形成することができる。
図16は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子(照明装置内の有機EL素子101)はガラスカバー102で覆われている。なお、ガラスカバーでの封止作業は、照明装置内の有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行うことができる。
図17は、照明装置の断面図を示し、105は陰極、106は有機層、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
本発明の有機EL素子を用いることにより、発光効率が向上した照明装置が得られる。
以下のスキームに従って化合物A−24を合成した。
2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)カルバゾール(5.00g、17.1mmol)、2−ブロモ−メチルピリジン(4.41g、25.7mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.95g、3.42mmol)、炭酸カリウム(4.73g、34.2mmol)にトルエン(80ml)、水(10ml)、1,4−ジオキサン(10ml)を加え、100℃で20時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。濃縮物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル=80/20)で精製し、2−(4−メチルピリジン−2−イル)−9H−カルバゾールを得た(収量2.96g、収率67%)。
2−(4−メチルピリジン−2−イル)−9H−カルバゾール(2.96g、11.5mmol)、4−ブロモジベンゾ[b,d]フラン(11.4g、46.0mmol)、ジクロロ(p-シメン)ルテニウム(II) ダイマー(528mg、0.86mmol)、トリフェニルホスフィン(905mg、3.45mmol)、炭酸カリウム(4.73g、34.2mmol)2−ブロモ−メチルピリジン(4.41g、25.7mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.95g、3.42mmol)、炭酸カリウム(9.54g、34.2mmol)にN−メチル−2−ピロリドン(100ml)を加え、200℃で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル=90/10)で精製し、1,3−ビス(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−2−(4−メチルピリジン−2−イル)−9H−カルバゾールを得た(収量5.84g、収率86%)。
1,3−ビス(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−2−(4−メチルピリジン−2−イル)−9H−カルバゾール(3.00g、5.08mmol)、ヨードベンゼン(10.3g、50.8mmol)、酸化銅(II)(202mg、2.54mmol)、ジピバロイルメタン(936mg、5.08mmol)、リン酸カリウム(2.16g、10.2mmol)にジメチルスルホキシド(50ml)を加え、160−180℃で5時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル=90/10)で精製し、化合物A−24を得た(収量1.42g、収率42%)。
<有機EL素子1−1の作製>
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った。その後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
有機EL素子1−1の作製において、ホスト化合物及び発光性化合物を表2に記載の化合物に変えた以外は同様にして有機EL素子1−2〜1−26を作製した。
得られた有機EL素子を用いて図16及び17に示すような照明装置を作製し、インピーダンス分光測定装置よる発光層の抵抗値の変化率を測定した。
具体的には、窒素雰囲気下(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)に調整されたグローブボックス内で、ガラスカバー側の周囲にシール剤としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラクストラックLC0629B)を塗布し、上記有機EL素子の透明電極付きガラス基板の有機EL層が形成された面に貼り合わせて密着させた。次いで、透明電極付きガラス基板の裏面側から有機EL層を除いた周囲部分にUV光を照射して、シール剤を硬化させた。それにより、透明電極付きガラス基板107、有機EL素層106、及び陰極105がこの順に積層された有機EL素子が、ガラスカバー102で覆われた照明装置101を得た(図17参照)。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
具体的には、得られた照明装置101を室温(約23℃〜25℃)、2.5mA/cm2の定電流条件下で1000時間駆動する前後のインピーダンスを、『薄膜の評価ハンドブック』テクノシステム社刊423ページ〜425ページに記載の測定方法を参考に、Solartron社製1260型インピーダンスアナライザ及び1296型誘電体インターフェイスを使って、バイアス電圧1Vにてそれぞれ測定した。得られたCole−Coleプロットから、作製した照明装置を構成する有機EL素子の発光層の駆動前後の抵抗値をそれぞれ測定した。Cole−Coleプロットから発光層の抵抗値を測定する方法は、前述の<インピーダンス分光測定よる薄膜抵抗値の測定例>と同様にして行った。そして、測定により得られた発光層の抵抗値を下記計算式に当てはめて、抵抗値の変化率を求めた。表2には有機EL素子1−1の抵抗値の変化率を100としたときの相対比率を記載した。
駆動前後の抵抗値の変化率(%)=|(駆動後の抵抗値/駆動前の抵抗値)−1|×100
値が0に近い方が駆動前後の変化率が小さいことを示す。
<有機EL素子2−1〜2−17の作製>
有機EL素子1−1の作製において、電子輸送材料としてのBCPを表3に記載の化合物に変えた以外は同様にして有機EL素2−1〜2−17を作製した。
得られた有機EL素子を用いて実施例1と同様にして図16及び17に示すような照明装置を作製した。そして、照明装置を構成する有機EL素子の電子輸送層の駆動前後における抵抗値を、実施例1と同様の方法にてそれぞれ測定し、電子輸送層の抵抗値の変化率を求めた。評価結果を表3に示す。
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサー
101 照明装置内の有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
A 表示部
B 制御部
C 配線部
Claims (8)
- 横軸をねじれ角(°)、縦軸をポテンシャルエネルギー(kJ/mol)とするエネルギーダイヤグラムにおいて、MM2を分子力場とする分子動力学計算により算出される最安定構造に由来するポテンシャルエネルギーの最小値から21kJ/molの範囲内に、局所安定構造に由来するポテンシャルエネルギーの極小点を24個以上有する有機化合物を少なくとも一種以上含み、
前記有機化合物は、下記一般式(1)で表される、
電荷移動性薄膜。
Xは、独立して−NR 1 、−O−、又は−SiR 2 (R 3 )を表し、
R 1 〜R 3 は、独立して置換基を表し、
A 1 〜A 4 は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、6〜20個の芳香族環原子を有する置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、又は5〜20個の芳香族環原子を有する置換若しくは無置換の芳香族複素環基を表し、且つA 1 〜A 4 のうち少なくとも3つが、前記置換若しくは無置換の芳香族複素環基であり、
nは、1〜3の整数を表し、
nが1のとき、Lは、水素原子又は置換若しくは無置換の1価の芳香族炭化水素基を表し、
nが2又は3のとき、Lは、単結合又は置換若しくは無置換の2又は3価の芳香族炭化水素基を表す) - 前記一般式(1)のA1〜A4のうち少なくとも2つが、置換若しくは無置換のジベンゾフリル基又は置換若しくは無置換の9−フェニルカルバゾリル基である、
請求項1に記載の電荷移動性薄膜。 - 前記一般式(1)において、Xが−NR1又は−O−であり、且つA1〜A4のうち少なくとも2つが無置換のジベンゾフリル基又は無置換の9−フェニルカルバゾリル基である、
請求項2に記載の電荷移動性薄膜。 - 遅延蛍光を発する化合物をさらに含む、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電荷移動性薄膜。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電荷移動性薄膜を含む、
電子デバイス。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電荷移動性薄膜を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、
表示装置。 - 請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、
照明装置。
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