JP6701456B1 - バインダー組成物、成形体、成形体の製造方法及びバインダー硬化物 - Google Patents

バインダー組成物、成形体、成形体の製造方法及びバインダー硬化物 Download PDF

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Abstract

原料に無機酸イオンを用いることなく、バインダーを架橋反応させる際の反応速度が十分であり、強度や弾性率などの力学的特性が良好であり、無機繊維などの適用対象を腐食させることがないバインダー組成物を提供する。糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないバインダー組成物、該バインダー組成物を用いた成形体、及び該バインダー組成物を用いた成形体の製造方法である。例えば、糖類は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトース、及びラクトースなどの還元糖であり、ラジカル発生剤が、アゾ化合物や過酸化物(過酸化水素水や有機過酸化物)であり、有機酸化合物が、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種以上である。

Description

本発明は、バインダー組成物、成形体、成形体の製造方法及びバインダー硬化物に関する。
従来、グラスウール、ロックウール、セラミックファイバー等の無機繊維を用いた断熱材、防音材、木材ボード製品等の成形体の製造に用いられるバインダーとして、機械的強度等の性能に優れ、低コストであることからフェノール樹脂系のバインダーが、汎用されている。
無機繊維を用いた成形体を製造する際には、無機繊維にバインダーを付着させ、製品の形状とした後に、加熱によりバインダーを硬化させる。バインダーとしては、過去、原料にホルムアルデヒドを使用するフェノール樹脂系のバインダーが広く用いられていたが、近年、原料にホルムアルデヒドを使用していないバインダーが望まれている。
原料にホルムアルデヒドを使用しない、いわゆるノンホルムアルデヒドタイプのバインダーとしては、糖類をベースとして、ポリカルボン酸や無機酸アンモニウム塩等と組み合わせたバインダーが提案されている。
特許文献1には、少なくとも1種の非還元糖、少なくとも1種の無機酸アンモニウム塩と添加剤、および水から成る、鉱物繊維用のホルムアルデヒドを含まないサイズ剤組成物が記載されている。
特許文献2には、ガラスファイバーおよびセルロース繊維からなる群より選択される集合体とバインダーとを含む組成物に関し、バインダーが、シリコーン化合物および脱水反応混合物の架橋結合メラノイジン反応物を含むことが記載されている。脱水反応混合物は、単量体ポリカルボン酸のアンモニウム塩と単糖とからなる。
特許文献3は、非還元糖と、不飽和モノカルボン酸塩と、無機酸アンモニウム塩とを含むバインダー組成物が記載されている。
特許第5931901号公報 特許第5455169号公報 特許第6062099号公報
特許文献1に記載のバインダーを、成形体の製造に用いた場合、熱硬化後の強度や弾性率などの力学的特性が、フェノール樹脂系バインダーと比べて劣っていることがあった。
また、特許文献2に記載のバインダーは、反応速度が遅く、製造工程において十分に硬化しないことがあった。
さらに、本発明者らは、特許文献1や特許文献3に記載されているバインダーのように、無機酸アンモニウム塩を用いた場合、触媒量であるにもかかわらず無機酸アンモニウム塩由来の無機酸イオンが無機繊維を腐食させてしまうという課題があることを見出した。
具体的には、無機酸イオンとして硫酸イオンを含むバインダー組成物を用いた場合、時間が経過するとともにバインダー硬化物が大気中の水分を吸収し、硫酸イオンを含む水が生成し、バインダー組成物中を移動し、繊維を腐食させてしまうことが新たに見出された。無機繊維がロックウールの場合、硫酸カルシウム(CaSO)が生成し、繊維の表面でCaSO・2HOとなる。また、無機繊維がグラスウールの場合、硫酸ナトリウム(NaSO)が生成して繊維表面に析出する。
したがって、原料に無機酸イオンを用いることなく、バインダーを架橋反応させる際の反応速度が十分であり、強度や弾性率などの力学的特性が、フェノール樹脂系バインダーと同程度又は、フェノール樹脂系バインダーよりも優れたノンホルムアルデヒドタイプのバインダーを提供する必要があることを、本発明者らは新たに見出した。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、原料に無機酸イオンを用いることなく、バインダーを架橋反応させる際の反応速度が十分であり、強度や弾性率などの力学的特性が良好であり、無機繊維などの適用対象を腐食させることがないバインダー組成物、該バインダー組成物を用いた成形体、該バインダー組成物を用いた成形体の製造方法及びバインダー硬化物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないバインダー組成物が熱を与えられると、無機酸イオンを用いない場合であっても、架橋反応させる際の反応速度が十分であり、熱硬化後に良好な力学的特性を示すこと、無機繊維などの適用対象を腐食させることがないことを見出し、本発明をするに至った。
したがって、前記課題は、本発明に係るバインダー組成物によれば、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないことにより解決される。
本発明のバインダー組成物は、ホルムアルデヒドを含まないという利点を有し、グラスウール成形体やロックウール成形体などの成形体の製造に用いた場合に、力学的特性がフェノール樹脂系バインダーを用いた場合と同等である。また、従来のノンホルムアルデヒドタイプのバインダー組成物のように、無機酸イオンを用いていないため、時間が経過しても無機繊維などの適用対象を腐食させてしまうことがない。
このとき、前記糖類が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトース、及びラクトースからなる群より選択される少なくとも1種以上の還元糖であるとよい。
特にグルコースやフルクトースは工業的にとうもろこしを原料として製造されており、安価かつ容易に入手できる植物由来の天然物成分であり、人間にも環境にも優しい物質である。
このとき、前記ラジカル発生剤が、アゾ化合物及び過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であるとよい。
ラジカル発生剤としても、無機酸イオンを含まないアゾ化合物及び過酸化物を用いることで、時間が経過しても無機繊維を腐食させてしまうことがより一層抑制される。
このとき、前記過酸化物が、過酸化水素水及び有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であるとよい。
ラジカル発生剤としても、無機酸イオンを含まない過酸化水素水及び有機過酸化物を用いることで、時間が経過しても無機繊維を腐食させてしまうことがより一層抑制される。
このとき、前記有機酸化合物が、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種以上であるとよい。
このとき、前記有機酸化合物が、クエン酸及びクエン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種以上であるとよい。
このとき、更にアミン化合物を含むとよい。
アンモニアなどのアミン化合物を含む場合、バインダー組成物の硬化物を含む成形体の力学的特性が良好なものとなる。
前記課題は、本発明に係る成形体によれば、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないことを特徴とするバインダー組成物と、無機繊維、木材、鋳物砂から選択される1種以上の対象物と、を含むことにより解決される。
このとき、前記無機繊維としてロックウール、ストーンウール、スラグウール、ミネラルウール、グラスウール、及びミネラルグラスウールからなる群より選択される少なくとも1種以上の鉱物繊維を含むとよい。
このとき、前記糖類が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトース、及びラクトースからなる群より選択される少なくとも1種以上の還元糖であり、前記ラジカル発生剤が、アゾ化合物及び過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であり、前記有機酸化合物が、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種以上であるとよい。
本発明のバインダー組成物は、フェノール樹脂系バインダーの代替品として使用可能であり、グラスウール、ロックウールなど無機繊維用のバインダーとして使用する以外に、木質ボードに用いられる木材チップ用の接着剤、鋳型に用いられる鋳物砂用の接着剤としても使用可能である。
前記課題は、本発明に係る成形体を製造する方法によれば、成形体を製造する方法であって、無機繊維、木材、鋳物砂から選択される1種以上の対象物に糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないことを特徴とするバインダー組成物を付着させる付着工程と、前記バインダー組成物が付着した前記対象物を加熱し、前記バインダー組成物を架橋反応させる加熱・硬化工程と、を行うことにより解決される。
このとき、更に前記バインダー組成物を調製するバインダー組成物調製工程を含み、前記バインダー組成物調製工程において、前記糖類が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトース、及びラクトースからなる群より選択される少なくとも1種以上の還元糖であり、前記ラジカル発生剤が、アゾ化合物及び過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であり、前記有機酸化合物が、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種以上であるとよい。
このとき、前記加熱・硬化工程の前に前記バインダー組成物が付着した前記対象物を所望の成形体に対応した形状に成形する成形工程を行うとよい。
前記課題は、本発明に係るバインダー硬化物によれば、無機酸及び無機酸塩を実質的に含まず、水に浸漬して得られる溶出液のpHが6以上8.4未満であることにより解決される。
前記課題は、本発明に係る成形体によれば、上記のバインダー組成物の硬化物と、無機繊維、木材、鋳物砂から選択される1種以上の対象物と、を含むことにより解決される。
本発明によれば、原料に無機酸イオンを用いることなく、バインダーを架橋反応させる際の反応速度が十分であり、強度や弾性率などの力学的特性が良好であるバインダー組成物、該バインダー組成物を用いた成形体、及び該バインダー組成物を用いた成形体の製造方法を提供することができる。
本発明のバインダー組成物を用いた場合、糖類ベースのバインダーでありながら、無機酸イオンを含まないため、時間が経過しても無機繊維を腐食させてしまうことがない。
本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法を示すフロー図である。 本発明の一実施形態に係るロックウールマットの製造方法を示す図である。 実施例1及び比較例1〜8のバインダー組成物の弾性率E’(MPa)を温度(℃)の関数としてプロットしたグラフである。 実施例1及び比較例4及び比較例5のバインダー組成物の弾性率E’(MPa)を温度(℃)の関数としてプロットしたグラフである。 実施例1〜3及び比較例4のバインダー組成物の弾性率E’(MPa)を温度(℃)の関数としてプロットしたグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図3Cを参照しながら説明する。
本実施形態は、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないバインダー組成物、該バインダー組成物を用いた成形体、及び該バインダー組成物を用いた成形体の製造方法の発明に関するものである。
本実施形態の成形体は、住宅等の建物において外壁と内壁との間に配置される断熱材や工場等の配管の外側に配置される断熱材に好適に用いられる。
<バインダー組成物>
本実施形態に係るバインダー組成物は、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まない。以下に、各成分について詳述する。
(糖類)
本実施形態のバインダー組成物は1種以上の糖類を含み、該糖類としては、還元糖又は非還元糖、それらの誘導体等が挙げられる。
(還元糖)
本実施形態のバインダー組成物に用いることができる還元糖としては、単糖、オリゴ糖、多糖、それらの誘導体等が挙げられる。
本明細書において、還元糖とは、開放鎖形態でアルデヒド基を有するアルドース又はケトン基を有するケトースを意味し、オリゴ糖とは2以上10以下の単糖が結合したものを指し、多糖とは11以上の単糖が結合したものを指す。
還元糖として、単糖又は二糖を用いることが好ましく、特に3〜8個の炭素原子を含む単糖、好ましくはグルコース(ブドウ糖)を用いることが好ましい。グルコースは、とうもろこしを原料としており、植物由来の天然物成分であり、容易に大量のグルコースを、安価に入手することができる。
また、工業的にグルコースから製造される異性化糖を用いることもできる。ここで、異性化糖とは、特定組成比のD−グルコースとD−フルクトースを主組成分とする混合糖を意味し、一般的には、でん粉をアミラーゼ等の酵素または酸により加水分解して得られた、主にグルコースからなる糖液を、グルコースイソメラーゼまたはアルカリにより異性化したグルコースおよびフルクトースを主成分とする液状の糖のことを指す。
還元糖として、例えば、トウモロコシシロップ、高フルクトーストウモロコシシロップ等を使用することも可能である。
フルクトースは、グルコースよりも開放鎖形態での存在が大きいため、グルコースよりも迅速にメイラード反応の開始反応が起こることが知られており、フルクトースを含有する異性化糖は、本実施形態のバインダー組成物に用いることができる。また、フルクトースは、グルコースと比較し、水への溶解度が高いため、高濃度のバインダー溶液を作製したい場合に好適に用いることができる。
還元糖として、上記の単糖に限定されることはなく、ガラクトース、マンノース、フルクトース等の単糖を用いることも可能である。
還元糖として用いることができる二糖としては、ラクトース、アラビノース、マルトースなどが挙げられる。
(非還元糖)
本実施形態のバインダー組成物に用いることができる非還元糖としては、オリゴ糖、多糖、それらの誘導体等が挙げられる。
本明細書において、「非還元糖」とは、還元性を示さない等であり、還元糖ではない糖を指す。ここで、「還元糖」とは、開放鎖形態でアルデヒド基を有するアルドース又はケトン基を有するケトースを意味し、単糖はすべて還元糖である。
オリゴ糖とは2以上10以下の単糖が結合したものを指し、多糖とは11以上の単糖が結合したものを指す。
非還元糖として、2以上10以下の単糖が結合したオリゴ糖を用いることが好ましく、二糖、三糖、四糖、五糖を用いることがより好ましく、特に好ましくはスクロース又はトレハロース等の二糖を用いることが好ましい。スクロース(ショ糖)は、サトウキビを原料としており、砂糖として用いられている、植物由来の天然物成分である。また、トレハロースは、デンプンを原料としており、植物由来の天然物成分である。
特にスクロースは、世界中の家庭で広く使用されており、容易に大量に入手可能であり、高い安全性を有し、保存安定性にも優れた化合物であるため、本実施形態のバインダー組成物に好適に用いることができる。
非還元糖として用いることができる二糖としては、スクロース又はトレハロースに限定されることはなく、イソトレハロース、イソスクロースなどが挙げられる。
非還元糖として用いることができる三糖としては、メレジトース、ゲンチアノース、ラフィノース、エルロース、ウンベリフェロースなどが挙げられる。
非還元糖として用いることができる四糖としては、スタキオースなどが挙げられる。
非還元糖として用いることができる五糖としては、ベルバスコースなどが挙げられる。
非還元糖として、例えば、サトウキビシロップ、サトウダイコン(テンサイ)シロップ等を使用することも可能である。
糖類(還元糖又は非還元糖)は、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、カルボニル基もしくは他の置換基で置換されていてもよい。
さらに、バインダー組成物に用いる糖類として、天然および合成の還元糖の立体異性体又は光学異性体も用いることが可能である。
糖類は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
糖類として、還元糖であるグルコースや、加水分解することで還元糖であるグルコースとフルクトースを生じるスクロースを用いることが加熱したときのバインダー組成物の硬化速度の観点、原料の入手のしやすさの観点から好ましい。
バインダー組成物中の、糖類の含有量は、糖類とラジカル発生剤、及び有機酸化合物とから構成される混合物の総重量の、50〜90重量%、好ましくは60〜85重量%、及び有利には65〜80重量%であることが好ましい。
(ラジカル発生剤)
本明細書において、「ラジカル発生剤」とは、ラジカル反応を進めるために穏和な反応条件でラジカルを発生させる化合物をいう。ここで、ラジカルとは、不対電子を持つ原子や分子、あるいはイオンのこと意味し、フリーラジカル又は遊離基と同義である。
本実施形態のバインダー組成物に含まれる、ラジカル発生剤としては、無機酸を実質的に含むものでなく、本発明の目的を損なわないものであれば、特に制限されることはなく、例えば、アゾ化合物及び過酸化物が例示される。
アゾ化合物は、熱及び/又は光によって分解し、炭素ラジカルを発生するアゾ基(R−N=N−R’)をもつ化合物である。具体的には、2,2’−アゾビスブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。
過酸化物としては、有機過酸化物、無機過酸化物、過酸化水素などがあるが、本実施形態のバインダー組成物では、有機過酸化物や過酸化水素が用いられる。
有機過酸化物は、ペルオキシド構造(−O−O−)を含む化合物であり、例えば、過酸化ベンゾイルが代表的である。
過酸化水素は、化学式Hで表される化合物である。
水性媒体への溶解性や、糖類との相溶性の観点から、ラジカル発生剤として、無機酸を含まない過酸化物である過酸化水素を用いることが好ましい。
バインダー組成物に含まれる、ラジカル発生剤の割合は、糖類のモル比を1としたときに、ラジカル発生剤のモル比が0.01〜0.1であることが好ましく、0.02〜0.08であることが特に好ましい。
(糖類及びラジカル発生剤の反応生成物)
本実施形態のバインダー組成物に含まれる、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物(変性糖)は、糖類の化学構造がラジカル発生剤によって変化した化合物である。
糖類は、ヒドロキシ基とカルボニル基をもつ直鎖構造と、糖類自身のヒドロキシル基を含んで環状アセタール又はケタールの環状構造の2つの構造をとることが知られている。糖類及びラジカル発生剤の反応生成物は、糖類の環状アセタール構造がラジカル発生剤によって開環して直鎖構造に変化し、さらに高分子量化した化合物を含むと推定される。
バインダー組成物中の、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物(変性糖)の含有量は、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物とから構成される混合物の総重量の、70〜99重量%、好ましくは80〜97重量%、及び有利には85〜95重量%であることが好ましい。
(有機酸化合物)
本実施形態のバインダー組成物に含まれる、有機酸化合物としては、例えば、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本明細書において、「ポリカルボン酸」とは、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸など、2以上のカルボキシル基を含むカルボン酸を意味する。
また、ポリカルボン酸としては、低分子ポリカルボン酸(単量体ポリカルボン酸)、その無水物、及びそれらの組み合わせ、並びに高分子ポリカルボン酸、その無水物、その共重合体、及びそれらの組み合わせが例として挙げられる。
(低分子ポリカルボン酸)
低分子ポリカルボン酸であるジカルボン酸としては、不飽和脂肪族ジカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、不飽和環状ジカルボン酸、飽和環状ジカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体、ハロ置換誘導体、アルキル置換誘導体、アルコキシ置換誘導体等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
具体的な化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、トラウマチン酸、樟脳酸、フタル酸及びこれらの誘導体などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
低分子ポリカルボン酸であるトリカルボン酸としては、不飽和脂肪族トリカルボン酸、飽和脂肪族トリカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、不飽和環状トリカルボン酸、飽和環状トリカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体、ハロ置換誘導体、アルキル置換誘導体、アルコキシ置換誘導体等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
具体的な化合物としては、例えば、クエン酸、トリカルバリル酸、1,2,4−ブタントリカルバリル酸、アコニット酸、へミメリト酸、トリメリト酸及び甜菜リメシン酸及びこれらの誘導体などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
(高分子ポリカルボン酸)
高分子ポリカルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等の酸、ならびに同様の高分子ポリカルボン酸、それらの共重合体、それらの無水物、およびそれらの混合物であってもよい。
低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
有機酸化合物は、好ましくは低分子ポリカルボン酸及び低分子ポリカルボン酸塩から選択され、より好ましくは、クエン酸又はクエン酸塩である。
特に、有機酸化合物として、ポリカルボン酸塩、例えば、クエン酸塩であるクエン酸トリアンモニウムを用いることが好ましい。
バインダー組成物に含まれる、有機酸化合物の割合は、糖類(糖類及びラジカル発生剤の反応生成物:変性糖)のモル比を1としたときに、有機酸化合物のモル比が0.05〜1.0であることが好ましく、0.1〜0.5であることがより好ましく、0.1〜0.2であることがより一層好ましい。
糖類のモル比を1としたときに、有機酸化合物のモル比が0.05以上のバインダー組成物を用いると、所定の温度及び時間で硬化を完了させることが可能となる。
(アミン化合物)
本明細書において、「アミン化合物」とは、アンモニア及びアミンを含む総称を意味する。
アンモニアは、分子式NHで表される無機化合物であり、常温常圧で無色の気体である。
アミンは、アンモニアの水素原子が炭化水素基及び芳香族原子団等の置換基で置換された化合物であり、置換された水素の数が1つであれば第一級アミン、2つであれば第二級アミン、3つであれば第三級アミンと呼ばれる。更に置換基が第三級アミンに結合した場合、第四級アンモニウムカチオンとなる。
本実施形態において用いることができるアミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンが例として挙げられる。
脂肪族アミンの例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
また、芳香族アミンとしては、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン等が挙げられる。
さらに、複素環式アミンとしては、ピロリジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、オキサゾール、チアゾール等が挙げられる。
本実施形態のバインダー組成物では、アミン化合物として、アンモニアを含むことが好ましい。アンモニアを用いる場合、バインダー組成物の硬化物を含む成形体の力学的特性が良好なものとなる。アミン化合物を用いると糖類及びラジカル発生剤の反応生成物(変性糖)は、アミン化合物に由来する構造を有することになる。
本実施形態のバインダー組成物は、無機酸を実質的に含まない。ここで、バインダー組成物が無機酸を実質的に含まないとは、無機酸の含有量がバインダー組成物を付着させる対象を腐食させない程度であることを言う。例えば、無機繊維に対してバインダー組成物を適用して成形体を製造したときに、酸に弱いグラスウールやロックウールが腐食していないことを言う。
なお、無機繊維の腐食は、例えば、成形体を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したときに、繊維上に無機酸由来の析出物による凸凹が確認できるか否かで評価をすることが可能である。具体的には、成形体を作製して所定期間経過後(例えば23.5℃、50RH%の環境下で3週間経過後)に、成形体をSEMで観察したときに、繊維上に無機酸の塩が析出している場合に腐食があると評価できる。このとき、析出物が無機酸の塩であることはSEM−EDS(EDS:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)およびX線回折装置(XRD)を用いて確認することが可能である。
また、バインダー組成物が無機酸を実質的に含まないことを定量的に確認するには、バインダー組成物を無機繊維などの対象物に付着させ、架橋反応させて硬化物としたときに、水に浸漬して得られる溶出液中に無機酸イオンが含まれていないことを確認すればよい。例えば、バインダー組成物を架橋反応させて硬化物としたときに、水に浸漬して得られる溶出液を、高速液体クロマトグラフ(HPLC、高速液体クロマトグラフィーを行うための装置)で分析したときに、無機酸イオンの検出量が装置の検出下限値以下であることを確認すればよい。
また、以下に示す実施例(表2)に基づくと、無機酸を実質的に含まないとは、糖として単糖(グルコース)を用いた場合には、無機酸イオン(例えば、硫酸イオン)の含有量が、単糖1molあたり(つまり、変性糖(変性糖1)1mol)あたりに換算して、0.17mol未満であればよく、好ましくは0.10mol未満、より好ましくは0.05mol未満、更に好ましくは0.01mol未満であることを意味する。
また、糖として二糖(スクロース)を用いた場合には、無機酸を実質的に含まないとは、無機酸イオン(例えば、硫酸イオン)の含有量が、二糖1molあたり(つまり、変性糖(変性糖2)1mol)あたりに換算して、0.10mol未満であればよく、好ましくは0.08mol未満、より好ましくは0.05mol未満、更に好ましくは0.01mol未満であることを意味する。
(その他成分)
本実施形態に係るバインダー組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、密着性向上剤、粘度調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、ワックス、顔料若しくは染料、帯電防止剤、抗菌剤、防かび剤、香料、難燃剤、分散剤、造膜助剤及び湿潤剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上のその他の添加剤を併用してもよい。
バインダー組成物中のこれら添加物の含有量は、硬化後のバインダー組成物の力学的特性に影響を与えない範囲である必要があり、糖類とラジカル発生剤、及び有機酸化合物とから構成される混合物の総重量の5重量%以下、好ましくは2重量%以下であるとよい。
また、無機繊維としてロックウールやグラスウールを用いる場合、バインダー組成物は、アミノシランなどのシラン、オイル、グリセロール、シリコーン、増量剤など、従来公知の添加剤を含むことができる。
シランは、繊維とバインダー組成物との間のカップリング剤であると共に、アンチエージング剤としても働く。オイルは、防塵性及び疎水性の観点から添加される。グリセロールは、可塑剤として働き、バインダー溶液のプレゲルを防ぐ。シリコーンは、成形体による水の吸収を低減させる役割を有する疎水性物質である。増量剤は、有機又は無機のフィラーであり、バインダー組成物中に可溶か又は分散可能であり、特に、バインダー組成物のコストを低下させる。
(バインダー組成物の水溶液のpH)
本実施形態のバインダー組成物は、バインダー水溶液とした際のpHが6以上9以下の中性から弱アルカリ性であることを特徴とする。バインダー組成物のpHが、pHが6以上8以下であることがより好ましく、特に、6以上7以下であることが好ましい。なお、本明細書において、酸性とはpHが1以上6未満、中性とは6以上8以下、アルカリ性とは8より大きく12以下であると定義する。
無機繊維系断熱材として、一般的に、グラスウールやロックウールが用いられている。ロックウールはグラスウールと比較して融点が高く耐熱性に優れるが、グラスウールよりも酸に弱い。従来のノンホルムアルデヒドタイプのバインダー水溶液は、pHが6.0未満と、酸性のものも存在し、ロックウールに用いると、ロックウールが溶解し、製品として要求される水準の成形体を得ることができないこともあった。
一方、本実施形態のバインダー組成物は、水溶液とした際のpHが6以上9以下の中性〜弱アルカリ性領域にあるため、ロックウールが溶解せず、ロックウールを用いた成形体の製造にも好適に使用できる。
また、従来のノンホルムアルデヒドタイプのバインダーは、ロックウール以外の酸による損傷を受け易い鉱物繊維、例えば、ストーンウール、スラグウール、ミネラルウールにも使用することが困難であったが、本実施形態のバインダー組成物は、水溶液とした際のpHが6以上9以下の中性〜弱アルカリ性領域にあるため、酸による損傷を受け易い鉱物繊維にも好適に適用できる。
酸性のバインダー溶液に、過剰なアンモニアを添加することで、pHを中性〜アルカリ性領域にすることも可能であるが、過剰なアンモニアがバインダー溶液から揮発することにより作業環境が悪化してしまうことがあった。
また、酸性のバインダー溶液に、過剰な水酸化ナトリウムを加えることにより、pHを中性〜アルカリ性領域にすることも可能であるが、ナトリウムが残ることにより、バインダーを塗付した材料の表面が、強アルカリ性になってしまうことがあった。
本実施形態のバインダー組成物は、水溶液とした際のpHが6以上9以下の中性〜弱アルカリ性領域にあるため、過剰なアンモニアや水酸化ナトリウムを添加することなく用いることが可能である。
さらに、フェノール樹脂系バインダーはpHが7〜9で中性〜弱アルカリ性であったため、従来の成形体の製造装置には鋼材が用いられている。従って、バインダー水溶液が酸性であると、当該バインダーを用いて成形体を製造する際に、製造装置に使用されている鋼材、特にS50Cなどの炭素鋼材が錆びてしまう。従って、バインダー組成物が酸性であると、バインダー組成物を塗付する際に使用する設備に鋼材が使うことができない。酸性のバインダー水溶液を用いるために、成形体の製造装置をステンレス化するなどの対策を行う場合、莫大な費用が必要となってしまうが、本実施形態のバインダー組成物は、水溶液とした際のpHが6以上9以下程度の中性〜弱アルカリ性領域にあるので、従来の成形体の製造装置を、そのまま用いることが可能である。
また、本実施形態のバインダー組成物は、従来のフェノール樹脂系バインダーと同様に中性〜弱アルカリ性であり、酸性ではないため、ロックウール等の鉱物繊維に限定されることなく、それ以外の酸に弱い材料に対しても使用可能であり、フェノール樹脂系バインダーの代替品として幅広い用途に用いることができる。
(バインダー硬化物の溶出液のpH)
本実施形態のバインダー組成物は、架橋反応させて硬化物としたときに、水に浸漬して得られる溶出液のpHが6以上7以下であることを特徴とする。バインダー組成物を架橋反応させて硬化物としたときに、水に浸漬して得られる溶出液のpHが6以上6.8以下であることがより好ましく、特に、6以上6.6以下であることが好ましい。
従来のノンホルムアルデヒドタイプのバインダー組成物は、無機酸や無機酸塩(例えば、硫酸アンモニウム)を使用しているため、架橋反応させて硬化物としたときに、水に浸漬して得られる溶出液のpHが3.5未満と低く、酸性である。したがって、無機酸や無機酸塩を含有する従来のノンホルムアルデヒドタイプのバインダーをグラスウールやロックウールに用いると、時間が経過するとともにバインダー硬化物が大気中の水分を吸収し、グラスウールやロックウールが溶解し、製品として要求される水準を維持可能な成形体を得ることができなかった。
一方、本実施形態のバインダー組成物は、無機酸を実質的に含まないため、架橋反応させて硬化物としたときに、水に浸漬して得られる溶出液のpHが6以上7以下である中性領域にあるため、グラスウールやロックウールが溶解せず、グラスウールやロックウールなどの酸に影響を受ける無機繊維を用いた成形体の製造にも好適に使用できる。
また、従来のノンホルムアルデヒドタイプのバインダーは、ロックウール以外の酸による損傷を受け易い鉱物繊維、例えば、ストーンウール、スラグウール、ミネラルウールにも使用した場合、時間の経過とともに繊維が劣化してしまう可能性があったが、本実施形態のバインダー組成物は、架橋反応させて硬化物としたときに、水に浸漬して得られる溶出液のpHが6以上7以下の中性領域にあるため、酸による損傷を受け易い鉱物繊維にも好適に適用できる。
<バインダー組成物を用いた成形体>
本実施形態に係るバインダー組成物を用い、グラスウール、ロックウール、セラミックファイバー等の無機繊維を用いた断熱材、防音材などの成形体を製造することができるが、これに限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂系バインダーに代表される熱硬化性バインダーが用いられる各種用途、例えば鋳造用、摩擦材用、砥石用、ろ紙用、成形材料用、合板加工用、化粧板用、積層板用に使用することが可能である。
本実施形態に係る成形体は、本実施形態のバインダー組成物を用いて、無機繊維等を成形してなるものであり、例えば断熱材、吸音材、木材ボード製品(チップボード、配向性ストランドボード、パーティクルボード、ファイバーボード等)、その他各種成形体(自動車の屋根、ボンネットのライナー等)として利用できる。
成形体に用いられる無機繊維としては、例えばロックウール、ストーンウール、スラグウール、ミネラルウール、グラスウール、ミネラルグラスウール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら無機繊維を、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。汎用性、断熱性、防音性等の観点から、無機繊維として、グラスウール又はロックウールを用いることが好ましい。
本実施形態に係る成形体は、例えば梱包のための表皮材等の、該成形体以外の他の部材をさらに備えるものであってもよい。
また、無機繊維以外にも、木材(木材チップ、木材繊維等)、鋳物砂等の対象物を、本実施形態に係るバインダー組成物を用いて成形することで、木材ボード製品、鋳型等の成形体を提供することができる。本明細書において、対象物とは、無機繊維、木材、鋳物砂などのバインダー組成物の適用対象を意味する。なお、バインダー組成物を適用する際の対象物の状態は、無機繊維、木材、鋳物砂が集積していない状態であっても良く、無機繊維、木材、鋳物砂が集積した状態であっても良い。
<バインダー組成物を用いた成形体の製造方法>
本実施形態に係る成形体は、バインダーとして、本実施形態に係るバインダー組成物を用いる以外は、従来、成形体の製造に用いられている公知の方法を利用することができる。
例えば、本実施形態に係る成形体を製造する方法は、無機繊維、木材、鋳物砂から選択される1種以上の対象物に糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないことを特徴とするバインダー組成物を付着させる付着工程(ステップ1)と、前記バインダー組成物が付着した前記対象物を加熱し、前記バインダー組成物を架橋反応させる加熱・硬化工程(ステップ2)と、を行うことを特徴とする。
付着工程(ステップ1)では、無機繊維、木材、鋳物砂から選択される1種以上の対象物に本実施形態に係るバインダー組成物を付着させる。対象物にバインダー組成物を付着させる方法としては、例えば、対象物に対し、スプレー装置等を用いてバインダーを吹き付ける方法、集積体をバインダー溶液に含浸させる方法等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
加熱・硬化工程(ステップ2)では、バインダー組成物が付着した対象物を加熱し、バインダー組成物を架橋反応させる。
また、事前にバインダー組成物を調製するバインダー組成物調製工程(ステップ0)を行っても良く、バインダー組成物調製工程では、糖類が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトース、及びラクトースからなる群より選択される少なくとも1種以上の還元糖であり、ラジカル発生剤が、アゾ化合物及び過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であり、有機酸化合物が、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種以上であるとよい。
また、付着工程(ステップ1)を行った後、加熱・硬化工程(ステップ2)を行う前に、バインダー組成物が付着した集積体を所望の成形体に対応した形状に成形する成形工程(ステップ1A)を行ってもよい。
(無機繊維成形体の製造方法)
以下、無機繊維成形体の製造方法について具体的に説明を行う。
本実施形態に係る無機繊維成形体の製造方法は、バインダーとして、本実施形態に係るバインダー組成物を用いる以外は、従来、無機繊維成形体の製造に用いられている公知の方法を利用することができる。
例えば、本実施形態に係る、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないバインダー組成物を調製する工程(以下、バインダー組成物調製工程)と、無機繊維に本実施形態に係るバインダー組成物を付着させる工程(以下、付着工程)と、前記バインダー組成物が付着した無機繊維を集積し、集積体とする工程(以下、集積工程)と、前記集積体を、所望の無機繊維成形体に対応した形状に成形する工程(以下、成形工程)と、前記成形された集積体を加熱し、バインダー組成物を架橋反応させる工程(以下、加熱・硬化工程)と、前記加熱工程で架橋したバインダー組成物を冷却する工程(以下、冷却工程)と、を順次行う方法が挙げられる。
以下、各工程について図1を参照して詳細に説明する。
(バインダー組成物調製工程)
バインダー組成物調製工程では、本実施形態に係る、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸を実質的に含まないバインダー組成物を調製する(ステップS1)。
この時、バインダー組成物を、水、アルコール等の溶媒を用いてバインダー溶液として調製する。
(付着工程)
付着工程では、無機繊維に本実施形態に係るバインダー組成物を付着させる(ステップS2)。
無機繊維としては、グラスウール、ロックウール、セラミックファイバー等を用いることができ、無機繊維の繊維長や繊維径は、無機繊維成形体に応じて選択すればよく、通常、繊維径が3〜10μmの範囲内のものが用いられるが、これに限定されるものではない。
無機繊維は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものをそのまま用いてもよい。無機繊維は、一般的には、溶融した原料(ガラス、玄武岩等の鉱物、鉄炉スラグなど)を繊維化することにより製造され、繊維化方法としては、火炎法、遠心法等が挙げられる。
無機繊維にバインダー組成物を付着させる方法としては、例えば、無機繊維に対し、スプレー装置等を用いてバインダーを吹き付ける方法、無機繊維をバインダーに含浸させる方法等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
無機繊維に付着させるバインダー組成物の量は、特に限定されないが、無機繊維を100質量%としたときに、バインダー組成物の固形成分が、0.5〜20質量%の範囲内であるとよい。バインダー組成物の量は、無機繊維成形体の性質に影響し、バインダー組成物の量が多いほど、無機繊維成形体の機械的強度が強くなる。
(集積工程)
集積工程では、前記付着工程において、バインダー組成物が付着した無機繊維を集積し、集積体とする(ステップS3)。
集積工程は、公知の方法により実施することができる。バインダー組成物が付着した無機繊維を回転するベルトに堆積させ、フリースを形成させるなどして、集積体とすればよい。
(成形工程)
成形工程では、前記集積体を、所望の無機繊維成形体に対応した形状に成形する(ステップS4)。
成形工程は、公知の方法により実施することができる。無機繊維成形体として板状のものを製造する場合を例に挙げると、コンベア上に集積体を積層させればよい。このとき、積層した集積体を鉛直方向から押圧して圧縮する圧縮工程を行ってもよい。
(加熱・硬化工程)
加熱・硬化工程では、成形された集積体を加熱し、前記バインダー組成物を架橋反応させる(ステップS5)。
成形された集積体を硬化炉へと送り、加熱して前記バインダー組成物を反応させることにより、異なる重合物(メラノイジン重合物やカラメル化反応重合物)間がエステル結合で架橋した構造を形成させる。
加熱・硬化工程における加熱温度は、バインダー組成物が架橋する範囲内であればよく、110℃以上300℃以下の範囲内であることが好ましい。110℃未満の場合、バインダー組成物の架橋が不充分となり、機械的強度が不足する可能性がある。300℃を超えると、バインダー組成物が分解し、機械的強度が低下する可能性がある。
加熱・硬化工程における加熱時間は、バインダー組成物が架橋する範囲内であればよく、集積体のサイズ、加熱温度等によって適宜調整され、特に限定されないが、30秒〜30分であればよい。
(冷却工程)
冷却工程では、前記加熱工程で架橋した、前記バインダー組成物を冷却する(ステップS6)。
具体的には、硬化炉から送出される無機繊維成形体を室温まで冷却する。なお、冷却には、送風等を行い積極的に冷却することや、送風などを行わずに自然乾燥にて冷却することも含まれる。
得られた無機繊維成形体は、そのまま製品としてもよく、必要に応じてさらに、切断する切断工程や、表皮材による梱包等を施す梱包工程を行ってもよい。
(ロックウールマットの製造方法)
本実施形態に係るバインダー組成物を用いた成形体の製造方法の具体例として、ロックウールマットの製造方法を説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかるロックウールマットの製造方法を示す図である。
本実施形態のロックウールマットは、ロックウールの積層体からなるマットであり、ロックウールは硬化したバインダーにより互いに付着している。
溶融した原料1を、高速で回転するロール11に垂らす。原料1が周囲に伝わって流れるロール11に、エアーと共にバインダーを吹きかけ、原料1を繊維化して、スチールベルト(第1のベルト)13に吹き飛ばす。スチールベルト13上に繊維が堆積してフリース3が形成される。このフリース3はスチールベルト13の移動と共に移動し、所定の位置でペンジュラム(第2のベルト)15に移る。その後、フリース3はさらに移動して、所定の位置でコンベア(第3のベルト)17上に移る。コンベア17上でフリースを重ねて積層体5とする。この積層体5を硬化炉19に通して、バインダーを硬化させ、ロックウールマット7が得られる。
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<変性糖溶液の作製>
以下の手順に従い、表1に記載の配合量で変性糖溶液を作製した。
1)水、糖、アンモニア水を混合した溶液を90℃に加熱した。
2)この混合溶液にラジカル発生剤を4時間かけて滴下した。
3)その後1時間90℃にて攪拌した。
4)室温まで冷却をして、変性糖50質量%の変性糖溶液を得た。
Figure 0006701456
<バインダー水溶液の調製>
表2に記載の配合量にて、水に各成分を攪拌しながら加え、実施例1〜3及び比較例1〜7、9のバインダー水溶液(濃度50質量%)を得た。なお、表2において、糖1molから生成する変性糖(糖類及びラジカル発生剤の反応生成物)を1molとして表記している。
また、バインダー性能の指標として、市販のレゾールタイプのフェノール樹脂系バインダー(レヂトップ、群栄化学工業社製、無機繊維製品用)を、比較例8のバインダーとした。
Figure 0006701456
得られたバインダー水溶液を用いて、以下の手順で成形体の作製及び各種特性の測定を行った。
<試験例1:成形体の作製及び引張強度の測定>
以下の手順に従い、成形体の作製及び引張強度の測定を行った。
1)ガラス濾紙(ワットマン社製、グレードGF/A、120mm×25mm)をバインダー水溶液に含浸させた。
2)バインダー組成物が付着したガラス濾紙を100℃で1時間乾燥した。
3)バインダー組成物を硬化温度(200℃)で30分硬化させ、バインダー硬化物が付着したガラス濾紙を得た。
4)バインダー硬化物が付着したガラス濾紙の重量を100重量%としたときに、バインダー硬化物重量が70重量%となるようにした。
5)試験を行うガラス濾紙を、荷重フルスケール200N、引張り速度25.4mm/分の条件で、万能材料試験機(オリエンテック社製、RTC−1150A)を用いて、引張試験を行い、引張強度及び引張弾性率を得た。
なお、ガラス濾紙は、評価を簡便に行うために無機繊維の代替品として使用したものであり、グラスウール等の無機繊維を用いた場合の結果と同様の傾向を示すと推定される。
<試験例2:バインダー硬化物の水溶出率及び水溶出pHの測定>
以下の手順に従い、硬化物からの溶出物量,溶出液のpH測定を行った。
1)ガラス濾紙(ワットマン社製、グレードGF/A、φ150mm)をバインダー液に含浸させた。
2)バインダー組成物が付着したガラス濾紙を100℃で1時間乾燥した。
3)バインダー組成物を硬化温度(200℃)で30分硬化させ、バインダー硬化物が付着したガラス濾紙を得た。
4)バインダー硬化物が付着したガラス濾紙の重量を100重量%としたときに、バインダー硬化物重量が70重量%となるようにした。
5)バインダー硬化物が付着したガラス濾紙の重量を測定し、浸漬前重量とした。
6)バインダー硬化物が付着したガラス濾紙をイオン交換水中に浸漬した。バインダー硬化物1gに対し,350gのイオン交換水を用いた。
7)12時間浸漬後、溶液のpHを測定した。
8)pH測定後、バインダー硬化物が付着したガラス濾紙を取り出し、100℃で12時間乾燥した。
9)バインダー硬化物が付着したガラス濾紙の乾燥後の重量を測定し、乾燥後重量とした。
10)(浸漬前重量−乾燥後重量)÷(浸漬前重量)×100の計算式より、水溶出率を算出した。
<試験例3:成形体の作製及び曲げ強度の測定>
以下の手順に従い、成形体の作製及び曲げ強度の測定を行った。
1)ブラスティング用ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ株式会社製、グレードJ−70)にバインダー液を加え、攪拌した。
2)バインダー水溶液の付着したガラスビーズを金型に入れ、205℃、30分間でプレス成形を行い、幅15mm×長さ80mm×厚み6mmの曲げ試験体を得た。
3)バインダー硬化物が付着したガラスビーズの重量を100重量%としたときに、バインダー硬化物重量が3重量%となるようにした。
4)試験体を、荷重フルスケール500N、引張り速度50mm/分、支点間距離40mmの条件で、万能材料試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS−500NX)を用いて、曲げ試験を行い、曲げ強度を測定した。
<試験例4:反応速度の測定>
以下の手順に従い、バインダーの硬化特性を明らかにするため、動的機械分析(DMA)法による架橋開始温度と架橋終了温度を求めた。動的機械分析装置としては、TAインスツルメント社製動的粘弾性スペクトロメーターRSAIIIを用いた。
1)ろ紙(パルプ製,12.5mm×45mmにバインダー50質量%溶液を1滴(約50mg)滴下して測定用の試料を作製した。
2)試料を装置の2つのチャック間に水平に固定した。なおチャック間距離は20mmにした。
3)試料を4℃/分の速度で30℃から250℃まで温度に加熱し、弾性率E’の変化曲線を取得した。
4)この際、振動数を1rad/秒,歪0.1%とした。
<試験例5:繊維腐食性の評価>
繊維腐食性は、成形体を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したときに、繊維上に無機酸由来の析出物による凸凹が確認できるか否かで評価をした。具体的には、成形体を作製して所定期間経過後(例えば23.5℃、50RH%の環境下で3週間経過後又は40℃85%RHの高温・高湿度の加速条件で5日経過後)に、成形体をSEMで観察したときに、繊維上に無機酸の塩が析出していない場合に「〇(腐食無)」とし、無機酸の塩が析出している場合に「×(腐食)」とした。なお、析出物が無機酸の塩であることはSEM−EDSおよびX線回折装置(XRD)を用いて確認した。
<試験例1〜5の結果>
試験例1〜5で得られた各種特性の測定結果を、バインダー水溶液のpHと共に、以下の表3に示す。
Figure 0006701456
(比較例8の結果)
表3に示すように、フェノール樹脂系バインダー(比較例8)を用いた場合の引張強度及び引張弾性率の値を、バインダー性能を判断する際の指標とした。pHは7.5であった。
(実施例1〜3の結果)
表3に示すように、実施例1のバインダー組成物を用いた場合、引張強度が8.9MPa、引張弾性率が1002MPaであり、適切な力学的特性を示していた。
また、バインダー水溶液のpHは6.8であり、中性領域であった。更に、硬化物の水溶出液のpHも6.3と中性領域であった。
さらに、繊維腐食性が「〇(腐食無)」となっていた。
同様に、実施例2、3のバインダー組成物を用いた場合、引張強度が8.5〜8.7MPa、引張弾性率が976〜988MPaであり、適切な力学特性を示していた。
また、バインダー水溶液のpHは6.6〜6.7であり、中性領域であった。更に、硬化物の水溶液もpH8.2〜8.3(つまり8.4未満)であり、弱アルカリ性領域であった。
さらに繊維腐食性が「○(腐食無)」となっていた。
(比較例1〜7、9の結果)
表3に示すように、無機酸アンモニウムとして硫酸アンモニウムを用いた比較例1〜3、5〜7やリン酸水素2アンモニウムを用いた比較例9では、バインダー硬化物の溶出率が2.4〜3.9質量%と高く、溶出液のpHも2.9〜3.4と酸性が強いものとなっていた。これに起因して、繊維腐食性が「×(腐食)」となっていた。
比較例1〜6、9では、実施例1よりも引張弾性率が低かった。また、引張強度について、実施例1が比較例2〜6、9、フェノール樹脂(比較例8)よりも大きくなっていた。
以上の結果から、実施例1〜3のバインダー組成物を用いた場合、原料に無機酸を用いていないことから、無機繊維の腐食がなく、力学特性もフェノール樹脂よりも優れていた。
<試験例4の結果>
弾性率E’(MPa)を温度(℃)の関数としてプロットした結果を図3A、図3B及び図3Cに示す。
図3A及び図3Cに示すように、実施例1のバインダー組成物の反応速度は、硫酸アンモニウム等の無機酸を用いないバインダーの中では最高の反応速度であった。実施例1のバインダー組成物の反応速度は、糖とクエン酸アンモニウムを組み合わせた比較例4のバインダー組成物よりも早く、従来の製造工程を用いても、十分に硬化することができることが示された。
<試験のまとめ>
以上の結果から、本実施形態に係るバインダー組成物について、原料に無機酸イオンを用いていないのにもかかわらず、バインダーを架橋反応させる際の反応速度が十分であり、強度や弾性率などの力学的特性が良好であることが示された。
本実施形態に係るバインダー組成物を用いた場合、糖類ベースのバインダーでありながら、無機酸イオンを含まないため、時間が経過しても無機繊維を腐食させてしまうことがない。
1 溶融した原料
3 フリース
5 積層体
7 ロックウールマット
11 ロール
13 スチールベルト(第1のベルト)
15 ペンジュラム(第2のベルト)
17 コンベア(第3のベルト)
19 硬化炉

Claims (19)

  1. 糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、
    有機酸化合物と、を含み、
    無機酸イオンの含有量が前記反応生成物1molあたり0.17mol未満であることを特徴とするバインダー組成物。
  2. pHが6以上9以下であることを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
  3. 前記糖類が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトース、及びラクトースからなる群より選択される少なくとも1種以上の還元糖であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバインダー組成物。
  4. 前記ラジカル発生剤が、アゾ化合物及び過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
  5. 前記過酸化物が、過酸化水素水及び有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項に記載のバインダー組成物。
  6. 前記有機酸化合物が、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
  7. 前記有機酸化合物が、クエン酸及びクエン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
  8. 更にアミン化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
  9. 糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸イオンの含有量が前記反応生成物1molあたり0.17mol未満であることを特徴とするバインダー組成物と、
    無機繊維、木材、鋳物砂から選択される1種以上の対象物と、
    を含むことを特徴とする成形体。
  10. 前記バインダー組成物のpHが6以上9以下であることを特徴とする請求項9に記載の成形体。
  11. 前記無機繊維としてロックウール、ストーンウール、スラグウール、ミネラルウール、グラスウール、及びミネラルグラスウールからなる群より選択される少なくとも1種以上の鉱物繊維を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の成形体。
  12. 前記糖類が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトース、及びラクトースからなる群より選択される少なくとも1種以上の還元糖であり、
    前記ラジカル発生剤が、アゾ化合物及び過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であり、
    前記有機酸化合物が、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の成形体。
  13. 成形体を製造する方法であって、
    無機繊維、木材、鋳物砂から選択される1種以上の対象物に糖類及びラジカル発生剤の反応生成物と、有機酸化合物と、を含み、無機酸イオンの含有量が前記反応生成物1molあたり0.17mol未満であることを特徴とするバインダー組成物を付着させる付着工程と、
    前記バインダー組成物が付着した前記対象物を加熱し、前記バインダー組成物を架橋反応させる加熱・硬化工程と、
    を行うことを特徴とする成形体の製造方法。
  14. 更に前記バインダー組成物を調製するバインダー組成物調製工程を含み、
    前記バインダー組成物調製工程において、
    前記糖類が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトース、及びラクトースからなる群より選択される少なくとも1種以上の還元糖であり、
    前記ラジカル発生剤が、アゾ化合物及び過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種以上であり、
    前記有機酸化合物が、低分子ポリカルボン酸、低分子ポリカルボン酸塩、高分子ポリカルボン酸、及び高分子ポリカルボン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項13に記載の成形体の製造方法。
  15. 前記バインダー組成物調製工程において、前記バインダー組成物のpHが6以上9以下であることを特徴とする請求項14に記載の成形体の製造方法。
  16. 前記加熱・硬化工程の前に前記バインダー組成物が付着した前記対象物を所望の成形体に対応した形状に成形する成形工程を行うことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  17. 硬化前のバインダー組成物における無機酸イオンの含有量が糖類及びラジカル発生剤の反応生成物1molあたり0.17mol未満であり、かつ、pHが6以上9以下であり、
    前記硬化前のバインダー組成物は、糖類及びラジカル発生剤の反応生成物を含むものであり、
    水に浸漬して得られる溶出液のpHが6以上8.4未満であることを特徴とするバインダー硬化物。
  18. 引張弾性率が976MPa以上であることを特徴とする請求項17に記載のバインダー硬化物。
  19. 請求項17又は18に記載のバインダー組成物の硬化物と、
    無機繊維、木材、鋳物砂から選択される1種以上の対象物と、を含むことを特徴とする成形体。
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