JP6692649B2 - 乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤 - Google Patents

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Description

本発明は、乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤に関する。
アトピー性皮膚炎やドライスキン、蕁麻疹などの皮膚疾患には、皮膚感覚の1つである「痒み」を伴う。このような痒みは、皮膚を掻破することで一時的には解消される。しかし、皮膚を掻破することで二次的な皮膚病変を形成することがある。したがって、痒みを予防又は改善して痒みをコントロール(緩和)することは、臨床上重要である。
生体内の起痒物質として、ヒスタミンが知られている。生体内でヒスタミンが放出されヒスタミン受容体に結合すると、ヒスタミン受容体が活性化する。ヒスタミン受容体は、痒みを認識するC線維などの知覚神経に発現する。そして、ヒスタミンによりヒスタミン受容体が活性化されると、知覚神経を介して皮膚の痒みが惹起される。
ヒスタミンにより引き起こされるこのような痒みの治療には、抗ヒスタミン剤が広く使用されている。この抗ヒスタミン剤は、蕁麻疹などの急性的な皮膚疾患の治療には有効である。
しかし、抗ヒスタミン剤に対して抵抗性を示す、ヒスタミン非依存性の痒みも存在する。ヒスタミン非依存性の痒みとしては、アトピー性皮膚炎やドライスキン、発汗により生じる痒みなどの慢性的な痒みが知られている。
痒みを認識する知覚神経にはヒスタミン受容体以外にも多くの受容体が存在し、その1つとしてMrgprX1が知られている。このMrgprX1は、クロロキンやウシ副腎髄質ペプチド(8-22)(以下、「BAM(8-22)」ともいう)により活性化される。そして、MrgprX1が活性化されるとC線維などの知覚神経を介して痒みが惹起されること、及びこの痒みに対しては抗ヒスタミン剤は効き目が小さいことが、非特許文献1に記載されている。さらに、ヒトMrgprX1に相当するマウスMrgprA3を欠損したマウスではアトピー性皮膚炎やドライスキンによる慢性的な痒みが惹起されないことが、非特許文献2に記載されている。
したがって、MrgprX1活性を阻害することは、慢性的な痒みを予防又は改善する上で、非常に重要である。これまでに、MrgprX1活性を阻害して痒みを緩和するために、3-置換-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(3-substituted-2-(diphenylmethyl)-1-azabicyclo[2.2.2]octane)などの化合物を投与することが、特許文献1に記載されている。
国際公開第2010/065085号
J.Neurosci.,2011,31(20),p.7563-7567 Nat.Neurosci.,2013,16(2),p.174-182
本発明は、乾燥に伴う皮膚の痒みを早期に予防又は改善する、痒み予防又は改善剤の提供を課題とする。
本発明者等は上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、下記式(1)〜(4)で表される化合物が、MrgprX1活性を阻害し、MrgprX1を介してカルシウムイオンが細胞内へ流入することを抑制する作用を有することを見出した。さらにこれらの化合物が、乾燥に伴う皮膚の痒みを予防又は改善する作用を有することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
本発明は、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、及び下記式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤に関する。
本発明の乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤は、乾燥に伴う皮膚の痒みを早期に予防又は改善することができる。
試験例3の結果を示すグラフである。図1(a)は、MrgprX1が発現している細胞にクロロキンを添加したときの相対蛍光強度比の変化を示すグラフである。図1(b)は、MrgprX1が発現している細胞にBAM(8-22)を添加したときの相対蛍光強度比の変化を示すグラフである。図1(c)は、ヒスタミンH1受容体(H1R)が発現している細胞にヒスタミンを添加したときの相対蛍光強度比の変化を示すグラフである。図1(d)は、ATP受容体サブタイプP2Y2が発現している細胞にATPを添加したときの相対蛍光強度比の変化を示すグラフである。 試験例5の結果を示すグラフである。図2(a)は、式(1)〜(4)で表される化合物のMrgprX1活性阻害作用を示すグラフである。図2(b)は、式(1)〜(4)で表される化合物のH1R活性阻害作用を示すグラフである。図2(c)は、式(1)〜(4)で表される化合物のP2Y2活性阻害作用を示すグラフである。 試験例6の結果を示すグラフである。図3(a)は、痒みが惹起された皮膚に式(1)で表される化合物を塗布したときの痒みの総スコアの変化を示すグラフである。図3(b)は、痒みが惹起された皮膚にMusk ketoneを塗布したときの痒みの総スコアの変化を示すグラフである。
本明細書において「MrgprX1」とは、Mas関連Gタンパク質共役受容体メンバーX1(Mas-related G-protein coupled receptor member X1)を意味する。そしてこのMrgprX1は、ヒトにおいてMRGPRX1遺伝子によってコードされているタンパク質である。
MrgprX1は、痒み及び痛みに関与する感覚ニューロンに特異的な受容体であり、侵害刺激を制御することが知られている。具体的には、クロロキンやBAM(8-22)などのアゴニストがMrgprX1に結合すると、MrgprX1は活性化される。MrgprX1が活性化されると、細胞内のカルシウム濃度の制御に関与するイオンチャネルの活性化や小胞体が刺激される。これら一連の過程により、MrgprX1が発現する細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が誘発され、脱分極が起こり、侵害刺激受容に関与する知覚神経の発火により、痛みや痒みが惹起される。
なお本明細書において「カルシウムイオンがMrgprX1を介して細胞内へ流入する」とは、MrgprX1が活性化されることでイオンチャネルの活性化や小胞体が刺激され、細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇が誘発されることを指す。
本明細書において「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止若しくは遅延、又は個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
また、本明細書において「改善」とは、疾患、症状若しくは状態の好転、疾患、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患、症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
さらに本明細書において「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
本発明の乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤(以下、単に「痒み予防又は改善剤」ともいう)は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする。また、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を適用することで、乾燥に伴う痒みを予防又は改善することができる。
なお、本明細書における「乾燥に伴う痒み」とは、空気の乾燥によって生じる痒みや、皮膚が乾燥することによって生じる痒みを意味する。「乾燥に伴う痒み」の具体的な症状としては、乾癬、ドライスキンなどが挙げられる。
本発明で用いる前記化合物は、市販品であってもよいし、常法に基づき製造することもできる。また本発明において、前記化合物のうち1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお前記化合物には、幾何異性体、光学異性体、立体異性体などの異性体が存在する。ここで、本発明で用いる化合物は式(1)〜(4)で表される化合物に限定するものではなく、これらの化合物の異性体も包含する。さらに、本発明で用いる化合物は、いずれかの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
なお前記化合物はそれぞれ、従来から香料として使用されている、安全性の高い化合物である。ここで、前記化合物の慣用名やIUPAC名等を下記に示す。

式(1)で表される化合物
ガラクソライド(Galaxolide):インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランス
1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチルシクロペンタ(γ)-2-ベンゾピラン(1,3,4,6,7,8-Hexahydro-4,6,6,7,8,8-hexamethylcyclopenta(γ)-2-benzopyran)

式(2)で表される化合物
ジアセチル(Diacetyl)
2,3-ブタンジオン(2,3-butanedione)

式(3)で表される化合物
スザラール(Suzaral):高砂香料工業株式会社
シルビアール(Silvial):ジボタン
2-メチル-3-[4-(2-メチルプロピル)フェニル]プロパナール(2-methyl-3-[4-(2-methylpropyl)phenyl]propanal)

式(4)で表される化合物
トランス-2-デカナール(Trans-2-decenal)
デック-2-エナール(Dec-2-enal)
後述の実施例で実証するように、式(1)〜(4)それぞれで表される化合物は、MrgprX1活性を阻害し、MrgprX1を介した細胞内へのカルシウムイオンの流入を抑制する。さらに、MrgprX1活性を阻害する作用を有する化合物は、MrgprX1を活性化することで惹起された、乾燥に伴う皮膚の痒みを短時間で抑制し緩和する。したがって式(1)〜(4)それぞれで表される化合物は、乾燥に伴う痒みの予防又は改善に有用である。
なお、後述の実施例で実証するように、式(1)〜(4)それぞれで表される化合物は、MrgprX1に作用しMrgprX1活性を阻害する。しかし式(1)〜(4)それぞれで表される化合物は、MrgprX1と同じGタンパク質であるヒスタミン受容体H1RやATP受容体には作用しない。ここで、ヒスタミン受容体H1RやATP受容体は、ヒスタミンやATPの産生が誘導される炎症や細胞傷害等による痒みを誘発する受容体である。これに対してMrgprX1は、ドライスキン等による痒みを誘発する受容体である。したがって、ヒスタミン受容体H1RやATP受容体には作用せず、MrgprX1に作用してMrgprX1活性を阻害する式(1)〜(4)それぞれで表される化合物は、特に、ドライスキンなどの抗ヒスタミン剤の効かないヒスタミン非依存性の慢性的な痒み(乾癬、ドライスキン)等の予防又は改善に特に有用である。
本発明の痒み予防又は改善剤の形態は適宜選択することができる。例えば、前記有効成分単体を本発明の痒み予防又は改善剤として用いてもよい。あるいは、前記有効成分と、薬学的に許容される担体とを含む本発明の痒み予防又は改善剤を医薬組成物として使用してもよい。あるいは、本発明の痒み予防又は改善剤を化粧料組成物として使用するか、又はこれらに含有させてもよい。
医薬組成物を調製する場合は、通常、前記有効成分と好ましくは薬学的に許容される担体を含む製剤として調製する。薬学的に許容される担体とは、一般的に、前記有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体又は液体の、増量剤、希釈剤又はカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール類(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコール等)、適切なそれらの混合物、植物性油などの溶媒又は分散媒体などが挙げられる。
医薬組成物は、経口により、非経口により、例えば、口腔内に、皮膚に、皮下に、粘膜に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、腹腔内に、膣内に、肺に、脳内に、眼に、又は鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤及び吸入剤などが挙げられる。非経口投与製剤としては、坐剤、保持型浣腸剤、点滴剤、点眼剤、点鼻剤、ペッサリー剤、注射剤、口腔洗浄剤、並びに軟膏、クリーム剤、ローション、ゲル剤、制御放出パッチ剤及び貼付剤などの皮膚外用剤などが挙げられる。医薬組成物は、徐放性皮下インプラントの形態で、又は標的送達系(例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン注入、ポリマーマトリックス、リポソーム及びミクロスフェア)の形態で、非経口で投与してもよい。
医薬組成物はさらに医薬分野において慣用の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用できる。長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等が使用できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙げられる。抗酸化剤としては、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸等が挙げられる。必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)を加えてもよい。
化粧料組成物を調製する場合、その形態は適宜選択することができ、溶液、乳液、粉末、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ゲル、タブレット等の固形、エアゾール、ミスト、カプセル及びシート等任意の形態とすることができる。また、化粧料組成物の製品形態も任意であり、例えば、洗顔料、メーク落とし、化粧水、美容液、パック、乳液、クリーム及びサンスクリーン等のスキンケア化粧料、ファンデーション、化粧下地、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、アイブロー、頬紅及びネイルエナメル等のメイクアップ化粧料、ヘアシャンプー、ヘアリンス、整髪料、染毛料及び育毛剤等の毛髪化粧料、石鹸、ボディソープ、デオドラント化粧料及び浴用剤等のボディ洗浄料、歯磨剤及び洗口剤等の口腔化粧料、香水等の芳香化粧料等が挙げられる。また、この化粧料は、日本の薬事法上、化粧品及び医薬部外品のどちらに属しても良い。
化粧料組成物は、化粧品、医薬部外品及び医薬品等に慣用される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて配合し、常法により製造することができる。
その他の化粧料組成物に配合可能な成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等)、美白剤(例えば、アスコルビン酸及びその誘導体、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等)、各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等)、血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等)、抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等)、抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)及び殺菌剤(例えば、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、チモール類、塩化ベンザルコニウム等)等が挙げられる。
前記医薬組成物及び化粧料組成物は、口腔用組成物、外用組成物、内服組成物などの形態で適用することができ、皮膚外用組成物の形態で適用することが好ましい。
皮膚外用組成物の形態で使用する場合、前記有効成分の他に、通常の皮膚外用組成物に用いられる成分、例えば界面活性剤、油性物質、高分子化合物、防腐剤、各種の薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等を適宜配合できる。
本発明の痒み予防又は改善剤は、食料、飲料、飼料、ペットフードに添加したり配合して使用することができる。あるいは、MrgprX1活性の阻害、及び/又はMrgprX1を介したカルシウムイオンの細胞内への流入の抑制により治療、予防又は改善しうる痒みの治療、予防又は改善等をコンセプトとしてその旨を表示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性食品、病者用食品及び特定保健用食品などに添加したり配合して使用することができる。前記の、健康食品、機能性食品、病者用食品、特定保健用食品は、具体的には、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。製剤形態の食品は、医薬製剤と同様に製造することができ、前記有効成分と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤(例えば、でん粉、加工でん粉、乳糖、ブドウ糖、水等)等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。さらに、スープ類、ジュース類、乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料、スポーツ飲料、ダイエット飲料などの液状食品組成物、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品組成物、パン類、うどんなどの麺類、クッキー、チョコレート、キャンディ、ガム、せんべいなどの菓子類、ふりかけ、バター、ジャムなどのスプレッド類等に、本発明の痒み予防若しくは改善剤を添加したり配合して、食品組成物を製造することができる。
本発明の痒み予防又は改善剤における前記有効成分の含有量は適宜決定できる。
例えば、本発明の痒み予防又は改善剤の総量中、前記有効成分の含有量は0.001質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.001〜10質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%がさらに好ましい。
本発明の痒み予防又は改善剤の投与又は摂取対象は、好ましくは温血脊椎動物であり、より好ましくは哺乳動物である。本明細書において哺乳動物は、例えば、ヒト、並びにサル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの非ヒト哺乳動物が挙げられる。本発明の痒み予防又は改善剤は、ヒトへの投与に好適である。
本発明に用いる前記化合物、及び本発明の痒み予防又は改善剤は、皮膚の痒み、好ましくは皮膚のヒスタミン非依存性の慢性的な痒みの抑制を所望する対象者に好ましく適用することができる。また、本発明に用いる前記化合物、及び本発明の痒み予防又は改善剤は、皮膚の痒み、好ましくは皮膚のヒスタミン非依存性の慢性的な痒みが惹起された条件下、好ましくは乾燥条件下で好ましく適用することができる。さらに、本発明に用いる前記化合物、及び本発明の痒み予防又は改善剤は、皮膚に適用するのが好ましく、乾燥に伴う痒みが生じている皮膚、又は乾燥に伴う痒みが生じやすい皮膚に適用するのがより好ましい。
本発明の痒み予防又は改善方法において、投与又は摂取することで適用する前記有効成分の有効量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、投与又は摂取経路、投与又は摂取スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。例えば、前記有効成分の有効量は、1日あたり、体重1kgあたり、好ましくは0.0015mg以上、より好ましくは0.075mg以上、好ましくは22.5mg以下、より好ましくは2.4mg以下、又は好ましくは0.0015〜22.5mg、より好ましくは0.075〜2.4mgである。なお前記有効成分は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。
本発明において前記有効成分の投与量は、J.Neurosci.,2011,31(20),p.7563-7567に記載の方法などの常法に従い、適宜決定することができる。また、前記有効成分の投与又は摂取は、全身への投与又は摂取でもよいし、局所への投与又は摂取でもよい。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の痒み予防又は改善剤、使用、及び方法を開示する。
<1>式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤。
<2>MrgprX1活性を阻害することで乾燥に伴う痒みを予防又は改善する、前記<1>項に記載の乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤。
<3>前記MrgprX1が、ヒト由来のMrgprX1である、前記<2>項に記載の乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤。
<4>前記痒みが、ヒスタミン非依存性の慢性的な痒み、好ましくは空気の乾燥によって生じる痒み、若しくは皮膚が乾燥することによって生じる痒み、より好ましくは乾癬若しくは乾燥に伴う痒み(ドライスキン)、である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤。
<5>前記乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤の総量中、前記有効成分の含有量が、0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、であり、10質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、である、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤。
<6>乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤としての、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
<7>乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤の製造のための、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
<8>式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を、乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤として使用する方法。
<9>式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を適用する、乾燥に伴う痒みの予防又は改善方法。
<10>MrgprX1活性を阻害することで乾燥に伴う痒みを予防又は改善する、前記<6>〜<9>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<11>前記MrgprX1が、ヒト由来のMrgprX1である、前記<10>項に記載の使用又は方法。
<12>前記痒みが、ヒスタミン非依存性の慢性的な痒み、好ましくは空気の乾燥によって生じる痒み、若しくは皮膚が乾燥することによって生じる痒み、より好ましくは乾癬若しくは乾燥に伴う痒み(ドライスキン)、である、前記<6>〜<11>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<13>前記化合物を乾燥に伴う皮膚の痒み、好ましくは皮膚のヒスタミン非依存性の慢性的な痒み、の抑制を所望するヒトに適用する、前記<8>〜<12>のいずれか1項に記載の方法。
<14>乾燥に伴う皮膚の痒み、好ましくは皮膚のヒスタミン非依存性の痒み、が惹起された条件下、好ましくは乾燥条件下、で適用する、前記<8>〜<13>のいずれか1項に記載の方法。
<15>前記化合物を皮膚、好ましくは乾燥に伴う痒みが生じている皮膚、又は乾燥に伴う痒みが生じやすい皮膚、に適用する、前記<8>〜<14>のいずれか1項に記載の方法。
<16>前記乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤の総量中、前記化合物の含有量が、0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、であり、10質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、である、前記<6>〜<15>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<17>乾燥に伴う痒みの予防又は改善方法のために用いる、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物。
<18>乾燥に伴う痒みの予防又は改善薬の製造のための、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
<19>乾燥に伴う痒みの予防又は改善の非治療的な処置方法のために用いる、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
<20>MrgprX1活性を阻害することで乾燥に伴う痒みを予防又は改善する、前記<17>〜<19>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<21>前記MrgprX1が、ヒト由来のMrgprX1である、前記<20>項に記載の化合物又は使用。
<22>前記痒みが、ヒスタミン非依存性の痒み、好ましくは空気の乾燥によって生じる痒み、若しくは皮膚が乾燥することによって生じる痒み、より好ましくは乾癬若しくは乾燥に伴う痒み(ドライスキン)、である、前記<17>〜<21>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<23>前記化合物を乾燥に伴う皮膚の痒み、好ましくは皮膚のヒスタミン非依存性の慢性的な痒み、の抑制を所望するヒトに適用する、前記<17>〜<22>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<24>前記化合物を乾燥に伴う皮膚の痒み、好ましくは皮膚のヒスタミン非依存性の慢性的な痒み、が惹起された条件下、好ましくは乾燥条件下、で適用する、前記<17>〜<23>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<25>前記化合物を皮膚、好ましくは乾燥に伴う痒みが生じている皮膚、又は乾燥に伴う痒みが生じやすい皮膚、に適用する、前記<17>〜<24>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<26>前記化合物を医薬組成物又は化粧料組成物の形態で適用する、前記<17>〜<25>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<27>前記化合物を皮膚外用組成物の形態で適用する、前記<26>項に記載の化合物又は使用。
<28>前記化合物を食品、飲料、又は飼料の形態で適用する、前記<17>〜<25>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<29>前記化合物の含有量が、0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、であり、10質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、である、前記<17>〜<28>のいずれか1項に記載の使用。
<30>式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効量適用する、非治療的な、乾燥に伴う痒みの予防又は改善方法。
<31>MrgprX1活性を阻害することで乾燥に伴う痒みを予防又は改善する、前記<31>項に記載の方法。
<32>前記MrgprX1が、ヒト由来のMrgprX1である、前記<31>項に記載の方法。
<33>前記痒みが、ヒスタミン非依存性の慢性的な痒み、好ましくは空気の乾燥によって生じる痒み、若しくは皮膚が乾燥することによって生じる痒み、より好ましくは乾癬若しくは乾燥に伴う痒み(ドライスキン)、である、前記<30>〜<32>のいずれか1項に記載の方法。
<34>前記化合物を乾燥に伴う皮膚の痒み、好ましくは皮膚のヒスタミン非依存性の慢性的な痒み、の抑制を所望するヒトに適用する、前記<30>〜<33>のいずれか1項に記載の方法。
<35>乾燥に伴う皮膚の痒み、好ましくは皮膚のヒスタミン非依存性の痒み、が惹起された条件下、好ましくは乾燥条件下、で適用する、前記<30>〜<34>のいずれか1項に記載の方法。
<36>前記化合物を皮膚、好ましくは乾燥に伴う痒みが生じている皮膚、又は乾燥に伴う痒みが生じやすい皮膚、に適用する、前記<30>〜<35>のいずれか1項に記載の方法。
<37>前記化合物の有効量が、1日あたり、体重1kgあたり、0.0015mg以上、好ましくは0.075mg以上、であり、22.5mg以下、好ましくは2.4mg以下、である、前記<30>〜<36>のいずれか1項に記載の方法。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(試験例1)受容体遺伝子のクローニング
ヒト神経芽細胞腫SK-N-MC細胞のtotal RNAを逆転写して得られたcDNAを鋳型とし、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(商品名、TaKaRa社製)を用いて、MRGPRX1遺伝子、H1R遺伝子及びP2Y2遺伝子それぞれをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。
PCR条件は、98℃2分→[98℃15秒、68℃1.5分]×30サイクル→68℃2分とした。また、PCRで使用した各種プライマーの塩基配列を下記表1に示す。
得られたPCR産物をHigh Pure PCR Product Purification Kit(商品名、Roche社製)を用いて精製した。そして、pcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(商品名、Life technologies社製)を用いて、精製したPCR産物を発現用ベクター(商品名:pcDNA3.1D/V5His-TOPO、Life technologies社製)に挿入して、受容体遺伝子発現用プラスミドを構築した。なお、受容体遺伝子のインサートのシークエンス解析はタカラバイオ社に委託し、ヒトMRGPRX1遺伝子、H1R遺伝子、及びP2Y2遺伝子がそれぞれ正確に発現ベクターに挿入されていることを確認した。
(試験例2)受容体遺伝子のHEK293細胞への導入、及び受容体遺伝子の強発現
試験例1で構築した各受容体遺伝子発現用プラスミドそれぞれを用いて、大腸菌JM109株を形質転換した。そして、NucleBond Xtra Midi EF(商品名、TaKaRa社製)を用いて、受容体遺伝子発現用プラスミドを大量に抽出し、精製した。
ヒト胎児腎細胞HEK293をT-75細胞培養フラスコで培養した。そして、70〜80%コンフルエントのHEK293に、各受容体遺伝子が挿入されたプラスミド8μgをトランスフェクション試薬(商品名:TransIT-293、Mirus社製)を用いて導入し、24時間培養した。
接着細胞分散試薬(商品名:Detachin、Genlantis社製)を用いて培養フラスコに接着した細胞を剥がした。そして剥がした細胞を96 well Optical Bottom Plate(商品名、Nunc社製)に1.5×104cells/wellとなるように播種して、さらに24時間培養した。
なおコントロールとして、lacZが挿入されたプラスミド(商品名:pcDNA3.1D/V5-His/lacZ、Life technologies社製)をヒト胎児腎細胞HEK293に導入し、前述の方法と同様の方法により細胞を調製した。
(試験例3)受容体活性の測定
受容体の活性化の指標として、各受容体を強発現させた細胞内へのカルシウムイオンの流入量を、Calcium Kit II-fluo-4(商品名、DOJINDO社製)を用いて測定した。測定操作は、キットのプロトコールに準じて実施した。
カルシウム蛍光指示薬(商品名:fluo-4-AM)を含有したLoading bufferを試験例2で調製した細胞に添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、37℃でFDSS(浜松ホトニクス社製)により蛍光強度を測定した。
測定開始30秒後に、MrgprX1、H1R及びP2Y2のいずれかの受容体を発現している細胞に、表2に示す受容体のアゴニストを添加した。その後、蛍光強度を2秒毎に300秒間測定した。アゴニストを添加する前の蛍光強度に対する相対的な蛍光強度比を、アゴニストを添加する前の蛍光強度を1として算出した。
その結果を図1に示す。なお図1(a)は、MrgprX1が発現している細胞にクロロキンを受容体アゴニストとして添加したときの相対蛍光強度比の変化を示すグラフである。図1(b)は、MrgprX1が発現している細胞にBAM(8-22)を受容体アゴニストとして添加したときの相対蛍光強度比の変化を示すグラフである。図1(c)は、H1Rが発現している細胞にヒスタミンを受容体アゴニストとして添加したときの相対蛍光強度比の変化を示すグラフである。図1(d)は、P2Y2が発現している細胞にATPを受容体アゴニストとして添加したときの相対蛍光強度比の変化を示すグラフである。
ヒト由来のMrgprX1、H1R、及びP2Y2の活性を細胞内に流入するカルシウム量の変化に基づいて測定した。その結果、図1(a)〜(d)に示すように、各受容体のアゴニストを添加することにより、蛍光強度が添加するアゴニストの濃度に依存して増加することが確認された。すなわち各受容体は、アゴニストを添加することにより活性化されることが確認された。
なお、コントロールとしてlacZが挿入されたプラスミド(商品名:pcDNA3.1D/V5-His/lacZ)を導入した場合、蛍光強度の変化は検出されなかった。
(試験例4)MrgprX1活性阻害剤の探索
前記試験例3において、MrgprX1のアゴニストとしてBAM(8-22)を添加したとき、MrgprX1活性がEC50付近となるBAM(8-22)の終濃度は0.5μMであった。
そこで、MrgprX1が発現している細胞に、カルシウム蛍光指示薬(商品名:fluo-4-AM)を含有したLoading bufferと、終濃度が0.5μMとなるようにBAM(8-22)を添加した。ここへさらに各種素材を添加し、試験例3と同様に相対蛍光強度比を測定した。そして、測定した相対蛍光強度比に基づいてMrgprX1活性阻害剤の探索を行った。
その結果、MrgprX1活性を80%以上阻害する素材として、式(1)〜(4)で表される化合物を見出した。
なお式(1)〜(4)で表される化合物は、従来から香料として使用されている。一方、式(1)〜(4)で表される化合物と同様に従来から香料として使用されているMusk ketone(1-(4-tert-butyl-2,6-dimethyl-3,5-dinitrophenyl)ethanone)のMrgprX1活性阻害率は、11.8%であった。
(試験例5)受容体活性の阻害試験
MrgprX1が発現している細胞、H1Rが発現している細胞、及びP2Y2が発現している細胞にカルシウム蛍光指示薬(商品名:fluo-4-AM)を含有したLoading bufferを添加した。ここに、各受容体のアゴニストのBAM(8-22)、ヒスタミン、又はATPと式(1)〜(4)で表される各化合物の混合溶液を添加した。なお、各受容体のアゴニストの添加量は、試験例4の結果から各受容体の活性がEC50付近となるように適宜設定した。また式(1)〜(4)で表される化合物の添加量は、終濃度が0〜0.01%となるように設定した。
そして、前記混合溶液添加後、300秒間蛍光強度の測定を行い、相対蛍光強度比の最大値を測定した。さらに化合物濃度が0%の時の最大相対蛍光強度比の値を1.0とし、各受容体活性を算出した。その結果を図2に示す。
図2に示すように、MrgprX1活性は、式(1)〜(4)で表される化合物を添加することで、これらの化合物の濃度に依存して阻害された。これに対して、式(1)〜(4)で表される化合物はH1R及びP2Y2にはほとんど作用せず、H1R活性及びP2Y2活性を阻害する作用は見られなかった。
以上の結果から、式(1)〜(4)で表される化合物は、Gタンパク質共役受容体のうちMrgprX1に特異的に作用し、MrgprX1活性を阻害することが確認された。
(試験例6)BAM(8-22)の塗布による痒み誘導試験、及び痒みの予防又は改善試験
J.Neurosci.,2011,31(20),p.7563-7567(非特許文献1)に記載の方法を参考に、BAM(8-22)の塗布による痒み誘導試験、及び痒みの予防又は改善試験を行った。
ヒトの皮膚(上腕伸側)に、エタノールを10μL塗布し、1分間静置した後、同部位にプリックランセットで1mm間隔に3ヶ所刺し、30秒後に5mMのBAM(8-22)のHEPES溶液5μLを塗布した。BAM(8-22)の塗布から30秒毎に、5分間、0〜10の痒みスコア(0:痒みなし、10:今までで最悪の痒み)を各自評価した。そして、30秒毎に評価された痒みスコアの総和を痒み総スコアとして算出した。
一方、前述のBAM(8-22)を塗布する前に、式(1)で表される化合物のエタノール溶液(濃度:0.1%)を10μL塗布し、1分間静置した後に、前述の通りにBAM(8-22)を塗布した。そして、上記と同様の操作を行い、0〜10の痒みスコアを各自評価し、痒み総スコアを算出した。
これらの結果を図3(a)に示す。
式(1)で表される化合物に代えて、Musk ketoneを用いた以外は、前記と同様に痒み総スコアを算出した。その結果を図3(b)に示す。
図3に示すように、BAM(8-22)を皮膚に塗布することで痒みが誘導された。一方、図3(a)に示すように、式(1)で表される化合物を塗布することで、痒み総スコアが短時間で大幅に減少した。これは、BAM(8-22)の塗布により誘導された痒みが、式(1)で表される化合物を塗布することにより短時間で緩和することを示している。
これに対し、図3(b)に示すように、式(1)で表される化合物に代えて、MrgprX1活性を阻害する作用を有さないMusk ketoneを塗布しても、痒み総スコアに顕著な低下は見られず、BAM(8-22)の塗布により誘導された痒みは緩和されなかった。
(試験例7)乾燥により生じる痒みの予防又は改善試験
下記表3に示す組成のボディローション(Galaxolide(G)及びPlacebo(P))を調製し、ミストスプレーボトル(1プッシュ当たりの吐出量:0.1mL)に入れて提供した。
冬季に1回/日以上、下肢に乾燥による痒みを感じる健常男/女性4名を対象に、下記に示すスケジュールで痒みの予防又は改善試験を冬季に実施した。
被験品のボディローションを使用する直前の週末より、普段行っている下肢へのケアを停止し、被験品のボディローション(Galaxolide(G)又はPlacebo(P))を、左又は右の下肢に、それぞれの被験品を5日間(月〜金曜日)使用した。
なおボディローションは、朝の起床後及び夜の入浴後(入浴をしなかった場合は就寝前)の1日2回の他、日中、乾燥やかゆみが気になった際に適宜使用した。1日あたりのボディローションの使用量は、それぞれ3.0mLを上限とした。また、痒みの予防又は改善試験は二重盲検試験とし、被験品はボトル詰の段階で符号化され、被験者及びデータ解析者には被験品の中身を通知しなかった。
<痒み評価>
被験品のボディローションを使用している期間中、痒みの程度(主観評価)を毎晩記録した。「1日に感じた痒みの程度の平均」について、痒み強度(10cmVAS、左端(0):痒みを何も感じない、右端(10):非常に強い痒み感じる)と、痒みスコア(0:痒みなし、1:わずかな痒み、2:弱い痒み、3:中程度の痒み、4:強い痒み、5:とても強い痒み)とで評価した。その結果を表5に示す。
表5に示すように、乾燥痒みの10cmVASの5日間の平均値を解析した結果、Galaxolideの使用により、1日に感じた痒みの程度の平均が4名全員で低下した。また、痒みスコアによる指標では、4名中2名でGalaxolideの使用による低下が確認された。さらに、「Galaxolideの方が痒みを抑えている気がする」という回答があり、Galaxoldieによる痒み緩和の実効が感じられていた。
<乾燥の程度の度合>
被験品のボディローションを使用している期間中、肌の乾燥の程度のスコア(主観評価)を毎晩記録した(0:乾燥を感じない、1:わずかな乾燥を感じた、2:少し乾燥を感じた、3:中程度の乾燥を感じた、4:強く乾燥を感じた、5:とても強い乾燥を感じた)。
その結果、試験期間中に感じた乾燥の程度のスコア平均値は、Placebo側が2.85、Galaxolide側が2.80となり、肌の乾燥の程度は左右で変化は無かった。
以上のように、MrgprX1活性を阻害する作用を有する化合物を塗布することで、乾燥に伴う皮膚の痒みが短時間で緩和された。これは、MrgprX1活性を阻害する作用を有する化合物が、乾燥に伴う皮膚の痒みの予防又は改善に有効であることを示している。さらに、MrgprX1活性を阻害する作用を有する化合物は、短時間で乾燥に伴う皮膚の痒みが軽減されるという、乾燥に伴う痒みに対する即効性を有していることを示している。
さらに、上記実施例の結果は、MrgprX1活性を阻害する作用を有する、本発明で規定する化合物は、乾燥に伴う痒みなどのヒスタミン非依存性の慢性的な痒みに対して、予防又は改善する効果を有することを示している。

Claims (4)

  1. 式(1)で表される化合物、
    式(2)で表される化合物、
    式(3)で表される化合物、及び
    式(4)で表される化合物
    からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、乾燥に伴う痒みの予防又は改善剤。
  2. 前記痒みが、ヒスタミン非依存性の慢性的な痒みである、請求項1に記載の乾燥に伴う痒み予防又は改善剤。
  3. 前記痒みが、空気の乾燥によって生じる痒み、又は皮膚が乾燥することによって生じる痒みである、請求項1又は2に記載の乾燥に伴う痒み予防又は改善剤。
  4. 前記痒みが、乾癬及び/又はドライスキンの症状の一つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乾燥に伴う痒み予防又は改善剤。
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