JP6685193B2 - 汚泥処理設備用の洗浄剤、汚泥処理設備の洗浄方法、洗浄装置 - Google Patents

汚泥処理設備用の洗浄剤、汚泥処理設備の洗浄方法、洗浄装置 Download PDF

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Description

本発明は、洗浄剤及びその使用に関するものであり、特に、汚泥処理設備に付着した汚泥を洗浄除去する洗浄剤、洗浄方法及び洗浄装置に関する。
従来より、水処理分野などでは汚泥処理設備が用いられており、汚泥処理設備には特に汚泥を脱水する脱水機が広く用いられている。脱水機としては、例えばスクリュープレス形脱水機のような脱水濾過装置が公知であり、スクリュープレス形脱水機では、汚泥から水分を濾過するスクリーン(パンチングメタル)に脱水後の汚泥が付着し、目詰まりの原因となるため、付着汚泥の除去又は洗浄が必要になる。
スクリーンの洗浄方法としては、脱水機本体に付設した洗浄装置によって運転中に洗浄水を吹き付けて汚れを落とす方法が一般的である。
しかしながら、上記方法ではスクリーン表面に漏れ出した汚泥はある程度洗浄できるものの、洗浄水ノズルの閉塞などが原因でスクリーン全体に洗浄水が吹き付けられなくなるとその部分に汚泥が固着し、ドラム孔を閉塞して汚泥処理量低減の原因となる。そのため運転終了後に作業者が人的に洗浄する場合もあるが時間と人的労力が掛かる。
一方、薬品による洗浄方法も公知であり、薬品としてアルカリ水溶液は有機性汚泥の洗浄には効果的である。このような薬品(洗浄剤)はジョウロなどを使用して散布されるが、スクリーンは通常円筒型の金属である為、洗浄剤が汚れを除去したい場所に留まらず直ぐに流れ落ちてしまい、洗浄剤の大部分が無駄になる。
また、洗浄を十分にしようとすると多量のアルカリ水溶液が必要となるので、発生するアルカリ廃液の処分も問題になる。特に、下水の混合生汚泥のように繊維分や夾雑物多い汚泥による閉塞は水洗では完全に洗浄するのは困難である。
近年、脱水ケーキの含水率を低下させる目的で古紙粉砕物、籾殻等の植物或いはセルロース系短繊維を汚泥に添加して脱水することが増加しているが、このような添加物がドラム孔を閉塞してしまった場合にはアルカリ水溶液を使用しても水洗と効果は変わらない。
ろ布などのろ材への付着性、取扱い性を改良した洗浄剤としては、アルカリ性洗浄剤に有機系増粘剤を混合してゲル状にしたろ布洗浄剤(特許文献1)が提案されている。
特公平 7 − 37637 特開平 8 −169391 特開2003−193099 特開2016−3293 特開2001−149710
しかしながら、特許文献1記載の洗浄剤をスクリュープレス形脱水機の洗浄に使用した場合、増粘剤の影響で洗浄剤がクリーム状となっているので、スクリーン上半分では塗布後直ちに流れ落ちるようなことはないものの、スクリーンの下半分においては金属への付着性が不十分で洗浄剤が直に剥がれ落ちてしまい、十分な洗浄ができないのが現状であった。
その原因は、特許文献1の洗浄剤はベルトプレス形脱水機のろ布の洗浄を対象としているので、水平に張られたろ布上に載せるためにある程度の粘度を有していれば良く、円筒状物の全面に塗布することまでは考慮されていない為である。
特許文献4はスクリュープレス部分洗浄用の洗浄剤組成物を開示しているものの、この洗浄剤組成物は一定量の泡安定剤を必須とするため、組成物の組成が制限される。しかも、特許文献4の洗浄剤組成物は、スクリュー内部や汚泥配管内部等の比較的平滑な表面に固着した無機成分(スケール)の除去には効果的であっても(特許文献4の段落0028)、有機物を多量に含む汚泥の洗浄効果は低く、特に、孔や間隙等微細な開口部に入り込んだ汚泥の除去は困難であった。
他方、特許文献5には、スクリュープレス形脱水機におけるスクリーンの洗浄装置が開示されており、この装置は円筒形スクリーンの排水用の微小間隙に付着した汚泥を洗浄除去する(特許文献5の段落0013)。しかし、この装置は、円筒形スクリーンの内部から洗浄水を通水させるため、装置構造や洗浄工程が複雑な上、円筒形スクリーンの外側側面に付着した汚泥は十分に除去できない。しかも、単なる洗浄水を通水させるだけでは、孔や凹凸内部から汚泥を完全に除去するまでに多量の洗浄水が必要となる。
そこで、本発明者等は上記の問題点を解決するべく鋭意検討した結果、水酸化アルカリ金属と界面活性剤とを含む洗浄剤を使用すると、汚泥の除去効率が高く、かつ、安定した泡状態となって洗浄対象に付着することを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明の洗浄剤は以下の通りである。
(1)本発明の洗浄剤は汚泥の除去に使用する洗浄剤であって、水溶液がアルカリ性を示すアルカリ成分(A)と、界面活性剤(B)とを必須成分として含有する。
(2)アルカリ成分(A)は水酸化アルカリ金属を主成分とするものが好ましい。
(3)アルカリ成分(A)は0.5質量部〜20質量部、界面活性剤(B)は0.1質量部〜15質量部を含有する洗浄剤が好ましい。
本発明は更に下記洗浄方法も提供する。
(4)水を含む上記洗浄剤を泡状にし、汚泥処理設備の少なくとも一部の洗浄対象表面に付着させて汚泥を洗浄除去する。
(5)洗浄対象表面には、前記洗浄剤を50g/m〜1000g/m付着させることが好ましい。
(6)汚泥処理設備はスクリュープレス形脱水機を有するものが好ましく、このスクリュープレス形脱水機のスクリーンの表面を前記洗浄対象表面とし、前記洗浄剤を付着させて洗浄する。
(7)洗浄対象表面に前記洗浄剤を付着させた後は放置し、放置後、洗浄剤に汚泥が含浸又は溶解している間に洗浄水で前記洗浄対象表面を水洗すると汚泥がより効果的に除去される。
(8)上記洗浄に使用可能な装置としては、水を含む洗浄剤を泡状にして吐出する洗浄装置がある。
本発明の洗浄剤は安定した泡を形成するので、洗浄対象が曲面を有するものであっても洗浄剤が流れ落ちることなく留まる。洗浄剤は貫通孔などの開口部にも入り込むので、従来洗浄除去が困難であった開口部からも汚泥が除去される。
図1は汚泥処理設備を模式的に示す図である。 図2はスクリュープレス形脱水機10の模式的断面図である。 図3は洗浄装置の第一例を示す図である。 図4は洗浄装置の第二例を示す図である。 図5は洗浄装置の第三例と脱水機との配置を示す模式図である。 図6(a)は洗浄前のスクリーンを撮影した写真であり、図6(b)は洗浄後のスクリーンを撮影した写真である。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は特定の具体例に限定されるものではない。
[洗浄剤]
洗浄剤は、希釈剤(水)で予め希釈された希釈型でもよいし、使用時に希釈剤で希釈する濃縮型であってもよいが、いずれの場合でもアルカリ成分(A)と界面活性剤(B)を必須とする。以下、各成分について説明する。
‐アルカリ成分(A)
本発明の洗浄剤は、希釈型、濃縮型のいずれの場合も、洗浄剤を使用する際には希釈剤としての水を含むため、アルカリ成分としては水に溶解(分散)したときにアルカリ性を呈する物質を使用する。
このようなアルカリ成分は特に限定されず、強塩基、弱塩基のいずれか一方又は両方を用いることができる。具体的には、強塩基としては、水酸化アルカリ金属、次亜塩素酸アルカリ金属、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化アルカリ土類金属、グアニジン、水酸化アルキルスルホニウム、水酸化アルキル(アリール)ヨードニウムなどがあり、弱塩基としてはアンモニア、ピリジン、水酸化アルミニウム等があり、これらを1種又は単独でアルカリ成分として使用する。
このように、アルカリ成分は特に限定されないが、汚泥の洗浄性が高いという点で強塩基が好ましい。また、次亜塩素酸などに含まれる塩素は金属類、繊維類、樹脂類などの多種材料を腐食させるので、強塩基の中でも水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属が好ましく、汚泥の洗浄性が高く、かつ、汚泥処理設備の腐食も少ないという点で、水酸化アルカリ金属が最も好ましい。
従って、最も好ましいアルカリ成分は、水酸化アルカリ金属を主成分(50質量%)とするものであり、より好ましくは水酸化アルカリ金属を80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは実質的に水酸化アルカリ金属からなるアルカリ成分である。水酸化アルカリ金属は特に限定されないが、好ましくは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムのいずれか一方又は両方、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
‐界面活性剤(B)
界面活性剤(B)の使用により、希釈剤を添加した状態の洗浄剤が洗浄対象表面に均一に付着し、洗浄効率を高める。界面活性剤は特に限定されず、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを1種以上用いることが可能であるが、両性イオン性界面活性剤が好ましく、特に下記式(I)で表されるアルキルアミンオキシドが好ましい。
Figure 0006685193
(式中、R1は、炭素数1〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、R2及びR3は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基である。)
上記置換基のうち、R1は炭素原子1〜30、好ましくは1〜20、更に好ましくは8〜14の炭素原子を含む飽和あるいは不飽和、置換あるいは非置換、直鎖あるいは分岐鎖アルキル基である。R2およびR3は炭素原子を含む飽和あるいは不飽和、置換あるいは非置換、直鎖あるいは分岐鎖アルキル基である。より好ましくは、R2およびR3は炭素数1〜2の同一アルキル基であり、最も好ましくはR2およびR3の両方が炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
式(I)で表される化合物の具体例としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、カプロイルアミノプロピルジメチルアミンオキシド、ラウロイルアミノプロピルジメチルアミンオキシド、ミリスチロイルアミノプロピルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリル−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ミリスチル-ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ヤシアルキル-ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンオキシド等のアミンオキシドが挙げられる。アルキルアミンオキシドは一種を単独で用いても良いし、二種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも特に洗浄性能、発泡性能の点から、ラウリルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシドが好ましく、最も好ましくはデシルジメチルアミンオキシドである。
‐希釈剤
本発明の洗浄剤は、少なくとも使用時には希釈剤として水を必須とするが、必要に応じて水に代えて有機溶媒を使用することもできるし、水と有機溶媒の両方を使用することができる。好ましくは希釈剤は水を主成分(50質量%以上)とし、より好ましくは希釈剤は水である。希釈剤は、上記成分(A)、(B)と予め混合してもよいし(希釈型洗浄剤)、使用直前に上記成分(A)、(B)と混合してもよい(濃縮型洗浄剤)。なお、水を含む希釈型洗浄剤であっても、使用の際に希釈剤で所望の濃度まで更に希釈することもできる。
以下、洗浄剤の使用時、すなわち所望濃度に希釈後の各成分の配合量を説明する。
‐配合量
洗浄剤におけるアルカリ成分(A)の配合量は、使用時の洗浄剤全質量を基準として0.5〜20質量%、好ましくは3〜15質量%である。アルカリ成分(A)の配合量が0.5質量%未満では洗浄効果が不十分で洗浄に長時間要するようになる。一方、アルカリ成分(A)の配合量が20質量%を超えると経済的に好ましくない。
界面活性剤(B)の配合量は、使用時の洗浄剤全質量を基準として0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。界面活性剤(B)の配合量が0.1質量%未満であると泡立ちが不良で洗浄効果が不十分となる。一方、界面活性剤(B)の配合量が15質量%を越えると、洗浄剤が対象物表面全体への広がりが遅くなり洗浄が不十分となる。
すなわち、洗浄剤におけるアルカリ成分(A)と界面活性剤(B)の質量割合は、希釈前の濃縮型、希釈後の希釈型いずれも(A)0.5〜20質量部/(B)0.1〜15質量部(質量比(A)/(B)が0.03〜200)である。より好ましくはアルカリ成分(A)を界面活性剤(B)よりも多量(質量比)に使用する。
‐その他(添加剤等)
本発明の洗浄剤には、アルカリ成分(A)、界面活性剤(B)を阻害しない程度で、希釈剤以外の添加剤を添加することもできる。添加剤としては、殺菌剤、着色剤、pH緩衝剤、研磨剤、香料などである。これら添加剤は、希釈前の洗浄剤に添加してもよいし、洗浄剤を希釈する際に添加してもよい。
なお、本発明の洗浄剤には、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、多糖類ポリマーあるいはそれら2種以上の混合物からなる群より選択される泡安定剤を添加してもよいが、上記アルカリ成分(A)と界面活性剤(B)との組合せは、泡安定剤を添加しなくても安定した泡を形成するので、泡安定剤の添加量を、使用時の洗浄剤全体の0.01質量%未満迄減らすことが可能である。
次に、本発明の洗浄剤を用いる洗浄対象について説明する。
[洗浄対象]
本発明の洗浄剤は特に汚泥の洗浄除去に適しているため、汚泥処理設備の一部又は全部の洗浄に好適に使用される。
図1は汚泥処理設備を模式的に示す図面である。本発明は、混合生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥など多様な種類の汚泥用の汚泥処理設備1を洗浄可能であって、その汚泥の処理方法や処理装置の構造も特に限定されないが、例えば、汚泥を脱水する脱水機10を有している。
汚泥処理設備1は、更に、1以上の前処理槽5を有することもあり、汚泥は必要に応じて前処理槽5で1以上の前処理(濃縮、貯留、攪拌)が施された後、脱水機10で脱水される。脱水された汚泥は脱水ケーキとして汚泥処理設備1から排出される。
本発明の洗浄剤の洗浄対象は汚泥処理設備1の任意の装置(部品)であり、具体的には前処理槽5の一部又は全部、脱水機10の一部又は全部、配管、バルブ等の多様な装置(部品)を洗浄対象とすることができる。
これらの装置(部品)のうち、貫通孔、切欠き、スリットなど無底の開口部や、段差、溝、窪みなどの有底の開口部が形成された部分は汚泥が入り込んで蓄積しやすいが、本発明の洗浄剤は開口部からの汚泥除去にも効果を発揮する。
次に、洗浄対象の装置の一例として脱水機10について説明する。
[脱水機]
洗浄対象としての脱水機は特に限定されず、加圧脱水機、真空脱水機など多様なものを利用可能であるが、スクリュープレス形脱水機、ベルトプレス形脱水機などの絞り加圧脱水機が好ましく、特に、洗浄困難な微細な開口部(貫通孔)を多数有する点で、スプレープレス形脱水機での洗浄効果が高い。
図2はスクリュープレス形脱水機10の模式的断面図であり、スクリュープレス形脱水機10は、中空筒状のスクリーン15と、スクリーン15に挿入されたシャフト11とを有している。シャフト11とスクリーン15のいずれか一方又は両方は駆動手段に接続されており、シャフト11とスクリーン15のいずれか一方又は両方が、シャフト11の長手方向と平行な中心軸線を中心に回転する。すなわち、シャフト11は、スクリーン15内部に挿入された状態で、スクリーン15に対し相対的に回転する。
汚泥はシャフト11の一端側からスクリーン15の内部に供給され、シャフト11の相対的な回転により、シャフト11の他端側に向かってスクリーン15とシャフト11の間の空間を移動する。
シャフト11の軸本体は一端が他端よりも小径であって(例:円錐台)、スクリーン15とシャフト11との間の容積は汚泥が供給される側が大きく、その反対側(排出側)程小さくなっているので、容積変化による内部圧力の上昇により汚泥は圧搾される。
スクリーン15には貫通孔(開口部)が複数形成されており、圧搾により汚泥から分離した液体(水分)は貫通孔から排出され、汚泥は脱水される。
汚泥が移動する先の排出側には背圧板(プレッサー)19が設置されており、脱水された汚泥は最後に背圧板19で圧搾され、ケーキ状になった汚泥(脱水ケーキ)がスクリーン15の外部へ排出される。
このように、汚泥処理設備1は最終的に脱水ケーキを排出するが、スクリーン15の貫通孔に汚泥が入り込むと貫通孔が閉塞され、脱水効率が低下してしまう。一例を挙げると、スクリーン15の貫通孔は直径(孔の平面形状が円形以外の場合は最小径)が0.1〜10mm、好ましくは0.5mm〜3mm程度であって、直径(最小径)が20mm以下の微細な開口部では、通常の洗浄水では汚泥の除去が困難であった。
次に、このような微細な開口部(貫通孔)を持つ洗浄対象の洗浄に用いる装置と、それを用いた洗浄方法について説明する。
[洗浄装置]
洗浄装置は洗浄剤を洗浄対象に付着可能であれば特に限定されないが、好ましくは、水を含む洗浄剤を泡状にして吐出する泡吐出機構を有する。以下に、図面を用いて具体例を説明する。
図3〜5は洗浄装置30、40、50を示す模式図であって、洗浄装置30、40、50はタンク31、41、51と、ノズル35、45、55とを有している。タンク31、41、51の台数は特に限定されず、洗浄剤の希釈が必要な場合には、希釈剤(水)用のタンク42を別途設置する。
ノズル35、45、55はタンク31、41、51と直接又は他の装置(例:混合器43、配管等)を介して接続されている。タンク31、41、51の内部空間からノズル35、45、55先端迄の間の流路には、いずれか一カ所以上にポンプのような送液手段39、49、59が接続されている。
送液手段39、49、59は、手動又は自動(機械式)で加圧又は減圧(吸引)し、圧力差で洗浄剤をタンク31、41、51から押し出す。押し出された洗浄剤は必要に応じて混合器43で希釈剤(水)と混合された後、ノズル35、45、55へ送液される。
より具体的には、蓄圧式の場合、バルブ等でノズル35をタンク31から遮断した状態で、送液手段39でタンク31内の気体(空気、窒素ガス等)を圧縮して加圧しておき、バルブを開放してノズル35をタンク31に接続し、圧力差で洗浄剤を送液する。
また、使用時に送液手段49、59を稼働させて加圧又は減圧し、洗浄剤を送液することも可能である(高圧フォーミング洗浄機等)。
いずれの洗浄装置30、40、50も、タンク31、41、51からノズル35、45、55先端迄の流路の一カ所以上に泡形成手段37、47、57が設置されており、この泡形成手段37、47、57とノズル35、45、55とで泡吐出機構が構成され、洗浄剤を泡状にして吐出する。
泡形成手段37、47、57は特に限定されず、発泡剤を用いた化学的発泡法を用いることもできるが、本発明の洗浄剤は発泡性が高いので、洗浄剤を気体(空気、窒素等)と混合して泡状とする機械的発泡法を採用することができる。以下、機械的発泡法による泡形成手段37、47、57を四例挙げて具体的に説明する。
第一例の泡形成手段37、47、57はノズル35、45、55の先端又は内部に設置した多孔体(スポンジ、ネット)であって、洗浄剤が多孔体を通過する間に気体と攪拌混合されて泡状になる。
第二例の泡形成手段37、47、57は、ノズル35、45、55の内壁、配管内壁、混合器43内壁などの硬質部品の表面に洗浄剤を衝突させて気体と混合し、泡状とする。
第三例の泡形成手段37、47、57は、洗浄剤の流路(ノズル35、45、55、配管、混合器)を外部空間へ接続する空気注入孔を設け、洗浄剤が流れるときのエダクター効果により空気を引き込み、洗浄剤と空気を混合して泡状とする。
第四例の泡形成手段37、47、57は、圧縮空気や窒素ガスなどの気体を洗浄剤に送り込んで混合し、発泡させる。
上記第一例〜第四例の泡形成手段37、47、57とその他の泡形成手段は単独で用いてもよいし、1以上組合せて使用してもよいが、いずれの場合も、洗浄剤は泡状となってノズル35、45、55から放出される。
次に、上記洗浄装置30、40、50を用いた洗浄方法について説明する。
[洗浄方法]
先ず、希釈型洗浄剤又は濃縮型洗浄剤のいずれかをタンク31、41、51に収容する。濃縮型洗浄剤を用いる場合、あるいは希釈型であっても更なる希釈が必要な場合は、別途タンク42に水を主成分とする希釈剤を充填しておく。
使用時(希釈後)の洗浄剤濃度は特に限定されないが、例えば、蓄圧式洗浄装置30のように比較的泡径が大きい場合はアルカリ成分(A)が3〜20質量%、界面活性剤(B)が1〜15質量%(水は50質量%以上)、高圧フォーミング洗浄機(洗浄装置40)のように比較的泡径が小さい場合は、アルカリ成分(A)が0.5〜20質量%、界面活性剤(B)が0.1〜15質量%(水は50質量%以上)にそれぞれ希釈してからタンク31、41、51に収容するか、ノズル35、45、55に到達する迄に上記濃度になるようにタンク42の希釈剤で希釈する。
スクリュープレス形脱水機10を洗浄する場合、所定時間、所定量の汚泥の処理が終了した時、汚泥の処理能力が設定基準よりも低下した時、或いは、スクリーン15の汚泥付着量が多いと判断された時、洗浄を開始する。
洗浄を開始する際には、脱水機10の運転中であってもよいが、好ましくは脱水機10の運転を停止し、シャフト11とスクリーン15を静止した状態で洗浄を開始する。
洗浄は上記のような装置30、40、50を用い、泡状の洗浄剤をスクリーン15の外周側面に付着させる。洗浄剤の付着量も特に限定されないが、洗浄対象の面積1m当たり、所望濃度に希釈した洗浄剤を50〜1000g付着させることが好ましい。50g/m未満では汚泥の洗浄効果が低く、1000g/mを超えると洗浄剤が無駄になり、経済的に好ましくない。
スクリーン15は金属材料(ステンレスなど)で形成された硬質表面を有し、従来の洗浄剤は硬質表面への付着力が弱いが、本発明の洗浄剤はアルカリ成分(A)と界面活性剤(B)とを組み合わせにより硬質表面への付着力が高く、かつ、汚泥を溶解、膨潤させる能力が高い。しかも、アルカリ成分(A)と界面活性剤(B)との組合せにより、洗浄剤は最小径20mm以下の微細な開口部(貫通孔)にも入り込む。従って、平坦な表面のみならず、開口部の内部に付着した汚泥をも溶解又は膨潤させ、汚泥が洗浄対象から分離する。
噴霧直後に洗浄剤を他の洗浄液(洗浄水、水)で洗い流してもよいが、より好ましくは洗浄剤が付着(噴霧)してから3分以上、好ましくは5分以上放置して洗浄剤を汚泥と十分に接触、含浸させる。
アルカリ成分(A)と界面活性剤(B)との組み合わせが気泡を隔てる洗浄剤の薄膜を維持し、泡状態が安定して維持されるので、放置している間も洗浄剤は泡状態が維持される。従って、単に洗浄剤を霧状に噴霧した場合とは異なり、スクリーン15のように曲面を有する洗浄対象であっても、洗浄剤が垂れずに曲面上に留まる。
所定時間放置後、洗浄剤が乾燥せず、汚泥が洗浄剤に含浸又は溶解している状態で、(好ましくは洗浄剤の付着終了から1時間以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内)、洗浄対象の表面に洗浄水を吹き付けると、汚泥と共に洗浄剤を洗い流すことができる。
なお、洗浄水は、上記洗浄装置30、40とは別の洗浄装置を使用してもよいが、図5のように、洗浄水のタンク56を洗浄装置50に組み込み、バルブの切り替えによりノズル55から放出する液体(洗浄剤、洗浄水)を切替えてもよいし、別途洗浄水用のノズルを設置してもよい。
洗浄装置30、40は汚泥処理設備からは分離した別装置としてもよいし、洗浄装置50を汚泥処理設備(スクリュープレス形脱水機など)に組み込んでもよい。例えば、スクリュープレス形脱水機に洗浄装置50を組み込む場合、ノズル55をスクリーン15の内部に設置してもよいが、より簡易な方法としては、スクリーン15の外部にノズル55を設置する。本発明の洗浄剤は硬質表面の付着力、汚泥の洗浄能力が高いので、スクリーン15の外側から泡状洗浄剤を付着させても、開口部内の汚泥を十分に除去可能である。
洗浄方法は特に限定されず、洗浄剤を吹き付ける工程と、洗浄水で洗い流す工程のいずれか一方又は両方を、複数回連続して繰り返してもよいし、これら工程を交互に繰り返してもよい。洗浄工程終了後は、必要に応じて洗浄対象を乾燥させる。
以下に本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
洗浄対象として下水処理場で使用されているスクリュープレス形脱水機を選択した。試験に用いた脱水機は混合生汚泥を脱水した後のものであって、図6(a)に示すようにスクリーンの貫通孔が汚泥で目詰まりを起こし、通常の洗浄水では除去できないほど汚泥が付着した状態である。
アルカリ成分(A)として水酸化ナトリウム(和光純薬社製)10重量部、界面活性剤(B)としてデシルジメチルアミンオキシド(ライオン・スペシャリティー・ケミカルズ社製、有効成分40質量%)5重量部、蒸留水85重量部とを混合して洗浄剤を調製した。この洗浄剤1kgを図3の蓄圧式洗浄装置30のタンク31に収容し、上述したスクリュープレス形脱水機のスクリーンに外側からに吹付け、10分間放置した後に水洗を行った。水洗後の写真を図6(b)に示す。図6(b)から明らかなように、汚泥はスクリーンの表面のみならず貫通孔からも除去され、目詰まりは解消された。
[実施例2]
実施例1の洗浄剤を、更に水道水で20倍に希釈するように設定し、図4の高圧フォーミング洗浄機(洗浄装置40)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で洗浄試験を行った。水洗後にスクリーンの目詰まりの状態を観察したが、実施例1と同様に貫通孔内の付着物は除去されて目詰まりは解消されていた。
1 汚泥処理設備
10 スクリュープレス形脱水機
11 シャフト
15 スクリーン
19 背圧板
30、40、50 洗浄装置
31、41、51 洗浄剤のタンク
42 希釈剤のタンク
35、45、55 ノズル
37、47、57 泡形成手段
39、49、59 送液手段
43 混合器

Claims (6)

  1. 汚泥の洗浄除去に使用し泡を形成する洗浄剤であって、
    水溶液がアルカリ性を示すアルカリ成分(A)0.5質量部〜20質量部と、界面活性剤(B)0.1質量部〜15質量部とを含み、
    前記アルカリ成分(A)は、水酸化ナトリウムを主成分とし、
    前記界面活性剤(B)は、アルキルアミンオキシドである、洗浄剤。
  2. 請求項1に記載の洗浄剤を泡状にし、汚泥処理設備の少なくとも一部の洗浄対象表面に付着させることを特徴とする汚泥処理設備の洗浄方法。
  3. 前記洗浄対象表面に前記洗浄剤を50g/m〜1000g/m付着させることを特徴とする請求項に記載の汚泥処理設備の洗浄方法。
  4. 前記汚泥処理設備がスクリュープレス形脱水機を有し、
    前記スクリュープレス形脱水機のスクリーンの表面を前記洗浄対象表面とし、前記洗浄剤を付着させる請求項2又は3に記載の汚泥処理設備の洗浄方法。
  5. 前記洗浄対象表面に前記洗浄剤を付着させた状態で放置し、前記洗浄剤に汚泥が含浸又は溶解している間に洗浄水で前記洗浄対象表面を水洗することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の洗浄方法。
  6. 請求項1または2に記載の洗浄剤を泡状にして吐出する洗浄装置。
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