JP6684488B2 - 導電性dlc膜の製造方法 - Google Patents

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本発明は、導電性DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜の製造方法に関する。
DLCの定義は厳密ではないが、DLCとは、通常、高硬度(HV900以上)、低摩擦係数、ガスバリア性、生体適合性などの特性を有し、多くの場合水素原子を含むアモルファス状の炭素材料に対してつけられた呼び名である。そして、種々の特性を示すDLC膜を有するDLC構造体が開発され、その特性に応じて、工具、摺動部品等の様々な用途に応用され、広く市場に提供されつつある。
DLC膜の形成方法としては、炭化水素ガスを原料とする化学気相成長法(CVD法)が主流であったが、近年アーク放電により生じる炭素イオンを用いて水素原子を含まないDLC膜を形成するフィルター型カソーディック真空アーク(FCVA)方式の物理気相成長法(PVD法)が開発され、超高硬度を有するDLC膜の形成方法として広がりつつある。これらの従来法で得られるDLC膜は絶縁性である。しかし、電子、電気分野の応用の中には絶縁性のみならず導電性が求められる応用も多く存在する。
従来の報告の中には、基板を加熱して成膜する方法(このときボロン原子やリン原子が添加される場合もある)により、導電性DLC膜が得られたという報告がある。しかしながら、このような報告には、形成された物質がDLC膜の範疇に含まれることを示唆する硬度や摩擦係数等の物性やDLC膜に特有のラマン散乱スペクトル等の情報が欠落しており、導電性DLC膜が形成されたことを明確に示すデータはない。また、導電性DLC膜が実際の応用に供されている報告もない。
特許文献1は、真空容器内に基材を設置し、基材を200℃以上に加熱し、かつ1kV以上のパルス電圧の印加下に、該真空容器内にアセチレンガスやメタンガス等の炭化水素系原料ガスを導入して放電プラズマを発生させ、放電プラズマと基材とを接触させることで、基材表面に導電性層を形成する方法を開示する。特許文献1の導電性層は、非晶質炭素の中にグラファイト微結晶とダイヤモンド微結晶とが混在したものと記載されているが(段落[0029])、生成するのはグラファイトに近い膜であると考えられる。また、当業者の技術常識によれば、ダイヤモンドとグラファイトとが同時に生成することはあり得ない。
特開2010−24476号公報
成膜法により導電性DLC膜形成を試みた報告では、いずれもDLC膜を形成する基板(基材)の温度を250〜350℃程度まで昇温した状態で成膜を行なっている。しかしながら、非晶質炭素膜は水素原子を含むか否かに関係なく熱に対して弱く、250℃を超える温度環境では水素原子の離脱、非晶質状態からグラファイト結合への再結晶が始まる。従って、基板を250〜350℃に加熱する条件では、導電性は有するものの、低硬度の多結晶グラファイト構造を有する炭素膜が形成されている可能性が高い。
例えば、CVD法により基板を350℃に加熱して形成された導電性層の走査型電子顕微鏡写真がインターネット上に公開されている(https//www.kiss.or.jp/number1/pdf/45
_ecR9l)。該電子顕微鏡写真によれば、該導電性層はグラファイトの多結晶が柱状に成長した構造であり、DLC構造ではない。また、該導電性層は、DLCを特徴づけるに充分な高硬度(HV900以上)と化学的な安定性とを有するとは考え難い。また、このような構造では粒界にピンホールが発生し易くなり、用途として例えば固体高分子型燃料電池用金属セパレータ保護膜のような用途には適さない。
本発明の目的は、気相成長法又は物理気相成長法により成膜された非導電性DLC膜を導電性DLC膜に変換する、導電性DLC膜の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者は、化学気相成長法又は物理気相成長法で成膜された非導電性DLC膜に対してイオンビームを照射する方法を着想した。そして、本発明者は、この方法において非導電性DLC膜を透過可能な加速エネルギーを有するイオンビームを所定の照射条件で非導電性DLC膜に照射することにより、非導電性DLC膜を導電性DLC膜に変換できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(3)の導電性DLC膜の製造方法を提供する。
(1)化学気相成長法又は物理気相成長法により非導電性DLC膜を成膜する工程と、前記工程で得られた非導電性DLC膜に、該非導電性DLC膜を透過可能な加速エネルギーを有するイオンビームを、照射量3×1015/cm2〜1×1018/cm2の範囲で照射し、非導電性DLC膜を導電性DLC膜に変換する工程と、を含む、導電性DLC膜の製造方法。
(2)非導電性DLC膜の水素含有量が5原子組成%以下である、上記(1)の導電性DLC膜の製造方法。
(3)イオンビームのエネルギー密度が0.2W/cm2以上である、上記(1)又は(2)の導電性DLC膜の製造方法。
本発明によれば、従来には存在しなかった導電性DLC膜が提供される。また、導電性DLC膜を基材表面に形成する場合には、基材に対する密着力が高く、ピンホールのない導電性DLC膜が提供される。
導電性DLC膜の抵抗率(mΩ・cm)とイオンビーム照射量(/cm2)との関係を示すグラフである。 導電性DLC膜の硬度(GPa)とイオンビーム照射量(/cm2)との関係を示すグラフである。 イオンビーム照射前の非導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルを示す。 イオンビーム照射後の導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルを示す。 イオンビーム照射前の非導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルを示す。 イオンビーム照射後の導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルを示す。
本発明の導電性DLC膜の製造方法(以下単に「本発明の製造方法」と呼ぶことがある)は、化学気相成長法又は物理気相成長法により成膜された非導電性DLC膜に対して、該非導電性DLC膜を透過可能な加速エネルギーを有するイオンビームを照射し、かつイオンビーム照射量を3×1015/cm2〜1×1018/cm2という特定の範囲とすることにより、非導電性DLC膜を導電性DLC膜に変換するものである。本発明の製造方法により得られる導電性DLC膜(以下「本発明の導電性DLC膜」と呼ぶことがある)は、イオンビーム照射導電性DLCとして特有のほぼ台形状のラマン散乱スペクトルを有し、さらに従来の非導電性DLC膜が有する各特性と共に、導電性を有することを特徴とする。
本発明の導電性DLC膜は、非導電性DLC膜中にグラファイト粒子が混在することにより導電性を示すものではなく、導電性高分子として知られているポリアセチレンに近い構造が生成することにより導電性を示すものと考えられる。本発明の導電性DLC膜の四探針法による抵抗率は、イオンビームの照射量にもよるが、通常10mΩ・cm以下である。また、本発明の導電性DLC膜は、高導電性だけでなく、従来の非導電性DLC膜に遜色のない高硬度(HV900以上)、低摩擦係数、ガスバリア性、生体適合性等の特性を有する。また、本発明の導電性DLC膜を基材表面に形成した場合には、基材に対する密着性が高い。さらに、本発明の導電性DLC膜は、緻密性に優れ、ピンホールの発生が非常に少なく、例えば、基材の保護膜としても極めて有用である。
本発明の導電性DLC膜は、従来の非導電性DLC膜と異なり、ラマンシフト1570/cm付近のGバンドと、ラマンシフト1350/cm付近のDバンドだけでは説明できないラマン散乱スペクトルを有する。従来の非導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルは、Gバンドのラマン散乱強度とDバンドのラマン散乱強度との差が比較的大きく、高さの異なる2つのピーク(GバンドピークとDバンドピーク)が1つの谷間を介して繋がった形状である。一方、本発明の導電性DLC膜は、その抵抗率が減少するにつれて、すなわち導電性が高まるにつれて、Gバンドのラマン散乱強度が低下し、Gバンド及びDバンドの各頂点を繋いだ線が台形の上底となる、ほぼ台形状の特異的な形状を有するラマン散乱スペクトルとなり、従来の非導電性DLC膜とは明らかに異なる。
この台形状のラマン散乱スペクトルを解析するためには、Gバンド、Dバンド以外に1150/cmおよび1500/cm付近にピークを持つ2成分について考察する必要がある。これらの成分はそれぞれ導電性高分子であるポリアセチレンのC−C結合およびC=C結合に対応するとみなされる場合があることから、本発明の導電性DLC膜は、グラファイト構造とは全く異なる1次元的な構造に由来する導電性を示すものと考えられる。
また、本発明の導電性DLC膜を基材表面に形成する場合には、イオンビームの照射量に応じて、基材と、導電性DLC膜と、これらの間に介在し、基材を構成する材料と導電性DLCとが混在したミキシング層と、を有する別形態の導電性DLC構造体とすることができる。この別形態の導電性DLC構造体は、ミキシング層の存在により、基材と導電性DLC膜との接着性又は導電性DLC膜の基材に対する密着性がより一層向上する。
本発明において、導電性DLC膜を基材表面に有する導電性DLC構造体を形成する場合、基材を構成する材料としては特に限定されず、例えば、金属材料、半導体材料、樹脂材料、ゴム材料、セラミック材料、ガラス材料、木質材料等が挙げられる。これらの中でも、得られた導電性DLC構造体の電気、電子デバイスへの応用等の観点から、金属材料、半導体材料等が好ましい。金属材料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銅、錫、亜鉛、アルミニウム合金、銅合金、錫合金、鉄、ステンレス鋼等が挙げられる。基材は、これらの金属材料の1種又は2種以上を含むものでもよい。これらの金属材料の中でも、軽量性が求められる用途には軽金属材料が好ましく、アルミニウムやアルミニウム合金がより好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。また、半導体材料としては特に限定されず、例えば、単結晶シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム、炭化珪素等が挙げられる。基材は、これらの半導体材料の1種又は2種以上を含むものでもよい。
本発明において、基材は、得られる導電性DLC構造体(基材と、基材表面の少なくとも一部に形成された導電性DLC膜と、を含む構造体)の設計用途等に応じて所望の形状に成形したものでもよい。このように、所望の形状に成形された基材に対して、本発明の製造方法により導電性DLC膜を形成することにより、該設計用途にそのまま使用できるような導電性DLC構造体を得ることができる。本発明の導電性DLC構造体の具体的な用途としては、例えば、燃料電池(特に固体高分子型燃料電池)用セパレータ等が挙げられる。
本発明の導電性DLC膜の製造方法は、気相成長法又は物理成長法により非導電性DLC膜を成膜する工程(以下「工程(1)」と呼ぶ)と、工程(1)で得られた非導電性DLC膜に所定条件でイオンビームを照射して導電性DLC膜に変換する工程(以下「工程(2)」と呼ぶ)と、を含むことを特徴とする。以下に、本発明の導電性DLC膜の製造方法についてより具体的に説明する。
工程(1)において、イオンビームを照射する非導電性DLC膜は、基材の表面に形成された非導電性DLC膜でもよい。非導電性DLC膜は、化学気相法(以下「CVD法」と呼ぶことがある)又は物理気相成長法(以下「PVD法」と呼ぶことがある)により成膜される。CVD法及びPVD法を利用した非導電性DLC膜の成膜方法はほぼ確立された技術であり、既に多くの報告がなされている。したがって、例えば、CVD法又はPVD法を実現可能な成膜装置(市販の成膜装置)を利用すれば、非導電性DLC膜を容易に得ることができる。
CVD法の具体例としては、例えば、DCプラズマ法、RFプラズマ法、ECRプラズマ法、アンバランスマグネトロンスパッタ(UBMS)法などが挙げられる。PVD法の具体例としては、例えば、フィルター型カソーディック(FCVA)法などが挙げられる。なお、UBMS法は手法は通常PVD法に属するものであるが、非導電性DLC膜の成膜時にはCVD法に準じた手法で装置を動作させるので、本明細書ではCVD法に分類する。
CVD法により得られる非導電性DLC膜には、全量に対して10〜40原子組成%の水素を含む場合がある。CVD法は等方的な成膜手法であるので、基材表面の形状にかかわらず表面全体に対する被覆性に優れる。また、PVD法により得られる非導電性DLC膜には、微量の水素、通常は全量に対して原子組成百分率として1原子組成%以下の水素を含む場合がある。PVD法はやや異方的な成膜手法であり、基材の表面の平坦性が求められる場合に利用されることが多い。
非導電性DLC膜における水素の存在は、得られる導電性DLC膜の物性に影響を及ぼす場合があるので、導電性DLC膜の用途などに応じて。CVD法又はPVD法のいずれを利用して非導電性DLC膜を成膜するかを適宜決定するのがよい。なお、水素含有量が原子組成百分率として全量の5原子組成%以下、より好ましくは1原子組成%以下の非導電性DLC膜を用いることにより、導電性DLC膜の導電性及び硬度を顕著に向上させることができる。なお、水素含有量が5原子組成%以下の非導電性DLC膜は、例えば、PVD法中でもFCVA法により得ることができる。
工程(1)で形成される非導電性DLC膜の膜厚は特に限定されないが、好ましくは3nm〜10μm程度、より好ましくは5nm〜5μm,さらに好ましくは10nm〜1μmである。これよりも大きな膜厚では導電化に必要なイオンビームのエネルギーが高くなり、イオンビーム照射の高コスト化をもたらし、実用的ではない場合がある。また、非導電性DLC膜の膜厚が大きすぎると、非導電性DLC膜を透過する加速エネルギーを有するイオンビームを照射した場合でも、非導電性DLC膜の表層のみが導電性DLC膜に変換されることもある。また、これよりも小さい膜厚では導電性DLC膜が得られたとしても、その耐久性などが不十分になり、種々の用途に使用できない場合がある。
また、基材表面に非導電性DLC膜を成膜する場合、非導電性DLC膜と基材との密着性を一層向上させるために、Cr、Ti、W等を含む中間層を形成した後に、非導電性Dを入れることも可能である。この場合も、中間層込の全体の膜厚を上記範囲内に収めることが好ましい。
次に、工程(2)では、工程(1)で得られた非導電性DLC膜に対して所定のイオンビームを照射することにより、非導電性DLC膜を導電性DLC膜に変換できる。所定のイオンビームとは、非導電性DLC膜を透過する加速エネルギーを有するイオンビームであり、かつイオンビーム照射量を3×1015/cm2〜1×1018/cm2の範囲とすることである。高導電性の導電性DLC膜を安定的に得るためには、イオンビーム照射量は好ましくは1×1016/cm2〜1×1018/cm2の範囲である。
本発明の製造方法では、非導電性DLC膜に照射するイオンビームが、該非導電性DLC膜を透過する加速エネルギー(運動エネルギー)を有することが必要である。非導電性DLC膜を透過するとは、イオンビームが到達する距離(深さ)が高分子膜を貫通して基材に達することを意味する。なお、イオンビームが到達する距離は、同じ加速エネルギーでもイオン種(元素)によって到達距離及び照射量に影響が生じる場合がある。イオンビームの元素種、非導電性DLC膜を構成する成分の種類、非導電性DLC膜の厚さ等を適宜変更して予備実験を行なうことにより、非導電性DLC膜を透過可能なイオンビームの加速エネルギーをイオンビームの元素種に応じて容易に求めることができる。
導電性DLC膜を得るためのイオンビーム照射量は、3×1015/cm2〜1×1018/cm2の範囲である。この範囲を外れた量のイオンビームを照射しても、本発明の導電性DLC膜を得ることはできない。また、イオンビームの照射量を上記所定範囲から選択すると共に、イオンビーム照射時のエネルギー密度(加速(運動)エネルギー×ビーム電流密度)も抵抗率を決定する大きな要素となる。本発明では、イオンビームのエネルギー密度を0.2W/cm2以上とすることが好ましい。これにより、安定的に低抵抗率すなわち高導電性のDLC膜を得ることができる。
イオンビーム照射に用いる装置はイオン源、質量分離器、加速部、ビームスキャナーから構成されるいわゆるイオン注入装置であれば特に限定されず、また、イオン種も多種のものを用いることができる。本発明の目的におけるイオンビーム装置ではイオン種に制限はないので、ヘリウム、窒素、ネオン、アルゴン等のガスを原料とするイオン源、加速部、試料ステージのみからなるような簡易な低コストの装置を利用することができる。また、イオンビームのイオン種としては特に制限はないが、例えば、Ga+、Si+、Au+などの金属イオンビーム、He+、Ne+、Ar+、Kr+、N+などの不活性ガスイオンビームなどがあげられる。
本発明は非導電性DLC膜へのイオンビームの照射による導電性DLC膜の製造に関する技術であるが、本発明のイオンビーム照射条件は、高抵抗炭素材料の導電化にも有効である。高抵抗炭素材料としては特に限定されないが、例えば、炭素からなるスパッタ膜などが挙げられる。このような高抵抗炭素膜に対して上記照射条件でイオンビームを照射することにより、導電性DLC膜が得られるものと考えられる。
以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、本実施例において、イオンビームの照射は、イオンビーム照射装置(商品名:SR20、日新イオン機器(株)製)を用いて実施した。
(実施例1)
アンバランスマグネトロンスパッタ(UBMS)蒸着装置(商品名:UBMS202、(株)神戸製鋼所製)を用いて、非導電性DLC膜を形成した。
酸化層(SiO2層)100nmを表面に持つシリコン基板及びカーボンターゲットを該蒸着装置のチャンパ―内の所定位置に導入した。次いで、カーボンターゲットに2.0kWの電圧を印加し、メタン5体積%と残部Arとからなるプロセスガスを用い、全圧1.0Pa、負バイアス電圧100Vで成膜を行なった。得られた膜厚約200nmの膜は、ラマン散乱スペクトルの測定結果からDLC膜であり、さらに抵抗率の測定結果から非導電性であった。なお、抵抗率及びラマン散乱スペクトルの測定方法については後述する。
得られた非導電性DLC膜に対し、加速エネルギー75keV、電流密度30〜50
μA/cm2の範囲、イオンビーム照射量3×1015〜1×1017/cm2の範囲で窒素イオンビームを照射し、本発明の導電性DLC膜を作製した。
(実施例2)
フィルター型カソーディック真空蒸着(FCVA)装置を用いて、非導電性DLC膜を形成した。すなわち、酸化層(SiO2層)100nmを表面に持つシリコン基板を該蒸着装置のチャンパ―内の所定位置に導入した。次いで、キャンパー内にガスを導入することなく、該シリコン基板に負バイアス電圧100V(DC)を印加しつつ成膜を行なった。得られた膜厚約200nmの膜は、ラマン散乱スペクトルの測定結果からDLC膜であり、さらに抵抗率の測定結果から非導電性であった。得られた非導電性DLC膜は水素を含まないものであった。この非導電性DLC膜に対し、実施例1と同じ条件で窒素イオンビームを照射し、本発明の導電性DLC膜を作製した。
(実施例3)
実施例1〜2において、導電性DLC膜作製時のイオンビーム照射量を1×1015/cm2、1×1016/cm2、5.0×1016/cm2又は1×1017/cm2とする以外は実施例1〜2と同様にして、それぞれ、導電性DLC膜として実施例1に準じたcvdDLC膜及び実施例2に準じたfcvaDLC膜を作製した。
得られた各導電性DLC膜の抵抗率(mΩ・cm)を、抵抗率計(商品名:ロレスタ、四探針法、三菱化学アナリテック(株)製)により評価した。結果を図1に示す。図1から、いずれの非導電性DLC膜も、イオンビームの照射により、10mΩ・cm未満への低抵抗化(導電化)が可能であり、特に実施例2に準じた水素を含まない非導電性DLC膜にイオンビームを照射することにより、非常に高い導電性が得られることが分る。したがって、本発明の条件により、非導電性DLC膜が導電性DLC膜に変換されることが確認された。
(実施例4)
実施例1〜2において、導電性DLC膜作製時のイオンビーム照射量を5×1015/cm2、1×1016/cm2又は5.0×1016/cm2とする以外は実施例1〜2と同様にして、それぞれ導電性DLC膜として、実施例1に準じたcvdDLC膜及び実施例2に準じたfcvaDLC膜を作製した。
得られた各導電性DLC膜の硬度を、ナノインデンター(商品名:ENT−1100、(株)エリオニクス製)を用いて測定した。結果を図2に示す。図2によれば、DLCの範疇に入るか否か境界線であるHV900(ほぼ9GPa)と同程度かそれを超えていることが明らかである。また、特に実施例2に準じた水素を含まない非導電性DLC膜にイオンビームを照射することにより、非常に高い硬度が得られることが分る。以上の結果から、非導電性DLC膜に本発明の条件でイオンビームを照射しても、非導電性DLC膜が本来有している高硬度が維持され、さらに向上することが確認された。
(実施例5)
実施例1において、導電性DLC膜作製時のイオンビーム照射量を3×1016/cm2とする以外は、実施例1と同様にしてDLC膜を作製した。イオンビーム照射前の非導電性DLC膜及びイオンビーム照射後の導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルを、ラマン分光光度計(商品名:NRS−5100、日本分光(株)製)により測定した。結果を図3及び図4に示す。図3は、イオンビーム照射前の非導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルである。図4は、イオンビーム照射後の導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルである。
(実施例6)
実施例2において、導電性DLC膜作製時のイオンビーム照射量を3×1016/cm2とする以外は、実施例2と同様にしてDLC膜を作製した。イオンビーム照射前の非導電性DLC膜及びイオンビーム照射後の導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルを、ラマン分光光度計(商品名:NRS−5100、日本分光(株)製)により測定した。結果を図5及び図6に示す。図5は、イオンビーム照射前の非導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルである。図6は、イオンビーム照射後の導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルである。
図3及び図5から、イオンビーム照射前の非導電性DLC膜は、ラマンシフト1570/cm付近のGバンド、及びラマンシフト1350/cm付近のDバンドというDLCに特有のピークを有し、DLC膜であることが確認された。また、図4及び図6から、イオンビーム照射後の導電性DLC膜のラマン散乱スペクトルにおいても、ラマンシフト1570/cm付近のGバンド、及びラマンシフト1350/cm付近のDバンドは保持され、DLC構造が維持されていることが確認された。
また、本発明の導電性DLC膜は、DLCに特有のGバンド及びDバンドを維持しながら、全体としてほぼ台形状のピークを有するという特徴を有している。このようなほぼ台形状のピークが形成される理由としては、通常のGバンドとDバンド以外に非導電性DLCではほとんど認識できない1150/cm付近のピーク及び1500/cm付近のピークが明確に現れることによるものと推測される。これら2つのピークは、現状ではポリアセチレン構造又はそれに近い構造に由来するものと推測される。
以上の結果から、本発明の条件でイオンビームを照射することにより、非導電性であるDLC膜が、そのDLC構造や特性を維持したまま、導電性DLC膜に変換されることが明らかである。
(参考例1)
スパッタ装置に炭素ターゲットを装着し、50nmの酸化膜を表面に持つシリコン基板上に膜厚およそ100nmの炭素膜を形成した。抵抗率計(ロレスタ)により抵抗率を測定すると244Ω・cmであり、十分な導電性を有していなかった。この炭素膜に加速エネルギー75keV、電流密度30〜50μA/cm2の範囲、イオンビーム照射量3×1016〜1×1017/cm2の範囲で窒素イオンビームを照射した。得られた炭素膜の抵抗率は17〜19mΩ・cmに低下し、導電性の向上が確認された、これは、イオンビームの照射により、DLC膜ではない高抵抗の炭素膜が導電性DLC膜に変換されたがものであると考えられる。

Claims (3)

  1. 化学気相成長法又は物理気相成長法により非導電性DLC膜を成膜する工程と、前記工程で得られた前記非導電性DLC膜に、該非導電性DLC膜を透過可能な加速エネルギーを有するイオンビームを、照射量3×1015/cm2〜1×1018/cm2の範囲で照射し、前記非導電性DLC膜を導電性DLC膜に変換する工程と、を含む、導電性DLC膜の製造方法。
  2. 前記非導電性DLC膜の水素含有量が5原子組成%以下である、請求項1に記載の導電性DLC膜の製造方法。
  3. 前記イオンビームのエネルギー密度が0.2W/cm2以上である、請求項1又は2に記載の導電性DLC膜の製造方法。
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