以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(形状測定装置の全体構成について)
まず、図1〜図2Bを参照しながら、本発明の実施形態に係る形状測定装置の全体構成について、簡単に説明する。図1は、本実施形態に係る形状測定装置の全体構成の一例を模式的に示した説明図である。図2A及び図2Bは、本実施形態で被測定物として着目する軌条(レール)の形状について説明するための説明図である。
本実施形態に係る形状測定装置10は、着目している被測定物Sについて、いわゆる光切断法により被測定物Sの形状(表面形状)を測定する装置である。この形状測定装置10は、図1に模式的に示したように、被測定物Sについてのデータを取得するデータ取得装置100と、データ取得装置100により取得された各種のデータに基づき所定の演算処理を行うことで、被測定部Sの形状に関するデータを算出する演算処理装置200と、を有している。
データ取得装置100は、被測定物Sの被測定面に対して線状レーザ光を照射して、かかる被測定面における線状レーザ光の輝度分布を撮像した光切断像のデータを取得する。また、データ取得装置100は、かかる光切断像のデータとともに、被測定物Sの表面形状を表す形状プロフィールのデータを取得する。かかるデータ取得装置100の詳細な構成については、以下で改めて説明する。
また、演算処理装置200は、データ取得装置100の駆動状態を制御するとともに、データ取得装置100により取得された光切断像のデータ及び形状プロフィールのデータに基づき、以下で詳述するような演算処理を行うことで、被測定物の形状に関するデータを算出する。かかる演算処理装置200の詳細な構成についても、以下で改めて説明する。
ここで、本実施形態に係る形状測定装置10が測定対象とする被測定物Sは、特に限定するものではないが、所定の形状を有する各種の金属片、金属板、軌条等といった、略同一の断面を有する長尺物であることが好ましい。以下では、かかる略同一の断面を有する長尺物として、図2A及び図2Bに示したような軌条(レール)を例に挙げて説明を行うものとする。
軌条は、図2Aに模式的に示したように、所定の規格に対応した略同一の断面形状を有する長尺物である。以下の説明では、便宜的に、軌条の断面を便宜的にxy平面とし、軌条の長手方向をz軸方向とする。また、図2Aに示したように、x軸方向を軌条の高さ方向とし、y軸方向を軌条の幅方向とする。
ここで、軌条は、図2Bに模式的に示したように、頭部S1、腹部S2、底部S3の3つの部分からなる。図2Bにおいて符号S4で示した部分は、頭頂部と呼ばれ、符号S5で示した部分は、頭部側面又は頭側と呼ばれることが多い。また、図2Bにおいて符号S6で示した部分は、腹部側面又は柱と呼ばれ、符号S7で示した部分は、下首部又は足と呼ばれることが多い。また、頭部側面S5から腹部側面S6に至る連結部を、顎下ということもある。以下の説明では、これら軌条の各部名称を用いる場合がある。
(データ取得装置の構成について)
次に、図3A及び図3Bを参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10が備えるデータ取得装置100の構成について、詳細に説明する。図3A及び図3Bは、本実施形態に係る形状測定装置が備えるデータ取得装置の構成を模式的に示した説明図である。なお、図3A及び図3Bでは、データ取得装置100により、被測定物Sである軌条の頭部側面〜腹部側面〜下首部〜底部側面にかけての表面に関して、各種のデータを取得する場合を例に挙げて図示を行っている。
本実施形態に係るデータ取得装置100は、図3A及び図3Bに示したように、線状レーザ光源101と、撮像装置103と、変位センサ105と、を少なくとも有している。線状レーザ光源101、撮像装置103及び変位センサ105は、これらの設置位置について意図しない変化が生じないように、非図示の公知の手段により固定されている。
線状レーザ光源101は、演算処理装置200による制御のもとで、被測定物Sの被測定面に対して、被測定物Sの長手方向(図3Aにおけるz軸方向)に対して直交する方向(図3Aの場合、x軸方向)に伸びた線状レーザ光LSを照射する装置である。この線状レーザ光源101は、例えば、可視光帯域等のように所定波長のレーザ光を射出する光源ユニットと、光源ユニットから射出されたレーザ光をx軸方向に拡げながら線幅方向に集光して線状光にするためのレンズ(例えば、シリンドリカルレンズやロッドレンズやパウエルレンズ等)と、で構成される。このレンズの線幅方向のピントを変更することで、レーザ照射位置での線状レーザ光LSのz軸方向に沿った太さ(すなわち、線状レーザ光LSの線幅)を調整することが可能となる。被測定物Sの表面に到達する直前での線状レーザ光LSの線幅は、求める測定精度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、数百μm程度とすることができる。
被測定物Sの表面の線状レーザ光LSが照射された部分には、図3Aに模式的に示したように、x軸方向に沿って線状の明るい部位が形成される。この線状の明るい部位に対応する線分は、光切断線と呼ばれる。
撮像装置103は、演算処理装置200の制御のもとで、線状レーザ光LSが照射された被測定物Sの表面を撮像する装置である。この撮像装置103は、所定の開放絞り値及び焦点距離を有するレンズと、撮像素子として機能するCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の各種センサと、を有している。かかる撮像装置103は、モノクロカメラであってもよいし、カラーカメラであってもよい。
撮像装置103に搭載されるレンズの焦点距離や画角等は、特に規定するものではないが、被測定物Sの表面のx方向全体が視野内に収まるように、選択されることが好ましい。また、撮像装置103に搭載される撮像素子の大きさや画素サイズも特に規定するものではないが、生成される画像の画質や画像分解能を考慮すると、画素サイズが小さく画素数が多い高解像度の撮像素子を利用することが好ましい。
撮像装置103が、被測定物Sの表面に照射されている線状レーザ光LSを撮像することで、線状レーザ光LSの照射部分に対応する線分(換言すれば、照射部分における線状レーザ光LSの輝度分布)である光切断線が撮像された、いわゆる光切断像が生成される。撮像装置103は、かかる光切断像を生成すると、生成した光切断像のデータを、演算処理装置200へと出力する。
変位センサ105は、演算処理装置200の制御のもとで、線状レーザ光LSの輝線と平行となるように移動しつつ、被測定物Sの被測定面までの離隔距離を計測する装置である。すなわち、変位センサ105は、図3Aに示した例では、静止した状態にある被測定物Sのあるz位置について、非図示の駆動機構によってx軸方向に平行移動しながら、被測定物Sの被測定面までの離隔距離を計測していく。これにより、変位センサ105は、被測定物Sの表面形状を表す形状プロフィールを測定することができる。このような変位センサ105は、特に限定されるものではなく、所望の測定精度を実現することが可能な公知の各種の1次元変位センサを適宜利用することが可能である。変位センサ105は、上記のような形状プロフィールを特定すると、得られた形状プロフィールのデータを、演算処理装置200へと出力する。
続いて、図3Bを参照しながら、線状レーザ光源101、撮像装置103及び変位センサ105の光学的な位置関係について説明する。なお、図3Bは、図3Aに示したようなデータ取得装置100を、被測定物Sである軌条の底面側から見た図となっている。
本実施形態に係るデータ取得装置100では、線状レーザ光源101の光軸方向と、被測定物Sである軌条の長手方向(すなわち、z軸方向)とが互いに直交するように(換言すれば、線状レーザ光源101が被測定物Sの被測定面と正対するように)、線状レーザ光源101が設置される。また、撮像装置103の光軸方向(図3Bにおいて一点鎖線で示した方向)は、線状レーザ光源101の光軸方向に対して、所定の角度θで傾斜している。
図3Bに示した角度θを大きくすると測定プロフィールのy軸方向の分解能が向上する一方で、y軸方向の測定範囲が狭くなる、又は、レーザ光が被測定体Sの表面で拡散する度合いが大きくなるために、撮像装置103への入射光量が減少し光切断像が暗くなる、というトレードオフの関係が存在する。従って、図3Bに示した角度θの大きさは、分解能と測定範囲、撮像条件や撮像装置103の設置上の制約を考慮のうえ決定することが好ましい。以上の条件を考慮のうえで、一般的には、図3Bに示した角度θの大きさは、20度〜60度程度が用いられる。
また、本実施形態に係るデータ取得装置100では、変位センサ105の光軸方向と、被測定物Sである軌条の長手方向(すなわち、z軸方向)とが互いに直交するように(換言すれば、変位センサ105が被測定物Sの被測定面と正対するように)、変位センサ105が設置される。更に、線状レーザ光源101と変位センサ105とは、被測定物Sの長手方向(図3Bの場合、z軸方向)に沿って所定の間隔z0で離隔して配置されている。ここで、間隔z0の具体的な大きさは、特に限定されるものではなく、線状レーザ光源101、撮像装置103及び変位センサ105の設置上の制約が存在しない範囲で、適宜設定すればよい。
本実施形態に係るデータ取得装置100では、被測定物Sが所定の位置に載置されると、被測定物Sを静止させた状態で、変位センサ105による被測定物Sの測定を実施する。変位センサ105による測定が終了すると、被測定物Sとデータ取得装置100との相対位置をz0だけ変化させて、変位センサ105によって測定された被測定物Sの位置を、線状レーザ光源101及び撮像装置103により撮像して、光切断像を生成させる。被測定物Sの同じ位置を、変位センサ105及び撮像装置103の双方で測定することで、同じ位置についての形状プロフィールと光切断像を得ることができる。本実施形態に係る形状測定装置10では、これら形状プロフィール及び光切断像を利用して、後述する校正処理を実施する。ひとたび校正処理が終了すれば、その後、線状レーザ光源101や撮像装置103の配置を変更しなくてすむような、断面形状・サイズが同程度の被測定物Sについては、被測定物Sを移動させながら線状レーザ光源101及び撮像装置103により光切断像を連続的に生成して、いわゆる光切断法による形状測定を実施していくことができる。
本実施形態に係るデータ取得装置100では、変位センサ105により被測定物Sの表面を計測することで、変位センサ105の位置における被測定物Sの表面形状を表す形状プロフィールを、ある程度の正確さで特定することができる。しかしながら、変位センサ105による表面形状の測定は、被測定物Sを静止させた状態で、変位センサ105を平行移動させながら測定しなければならず、また、着目している被測定物Sの広い範囲をまとめて測定することはできない。そのため、変位センサ105のみで表面形状の測定を行う場合には、被測定物Sの全体について測定を行うために、多くの時間を要してしまう。そこで、本実施形態に係るデータ取得装置100では、変位センサ105とは別に、線状レーザ光源101及び撮像装置103を設け、これら線状レーザ光源101及び撮像装置103によりいわゆる光切断法による光切断像の生成を行って、被測定物Sの全体について、高速な測定を可能としている。
以上、図3A及び図3Bを参照しながら、本実施形態に係るデータ取得装置100の構成について、詳細に説明した。
(演算処理装置について)
<演算処理装置の全体構成について>
次に、図4を参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10が備える演算処理装置200の全体構成について説明する。図4は、本実施形態に係る形状測定装置が備える演算処理装置の全体構成の一例を模式的に示したブロック図である。
先だって言及したように、本実施形態に係る演算処理装置200は、データ取得装置100の駆動状態を制御するとともに、データ取得装置100により取得された光切断像のデータ及び形状プロフィールのデータに基づき、被測定物の形状に関するデータを算出する装置である。
この演算処理装置200は、図4に模式的に示したように、データ取得装置制御部201と、データ取得部203と、演算処理部205と、結果出力部207と、表示制御部209と、記憶部211と、を主に備える。
データ取得装置制御部201は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。データ取得装置制御部201は、本実施形態に係るデータ取得装置100による被測定物Sに関するデータ取得処理の制御を実施する。より詳細には、データ取得装置制御部201は、静止した状態にある被測定物Sについて、変位センサ105の位置を変化させるための駆動機構の駆動制御を行いつつ、変位センサ105の駆動制御をあわせて行い、被測定物Sの形状プロフィールのデータを生成させる。変位センサ105による形状プロフィールの生成処理が終了すると、データ取得装置制御部201は、被測定物Sとデータ取得装置100との相対位置を変化させる(具体的には、z軸方向にz0だけ変化させる)。その上で、線状レーザ光源101に対して、線状レーザ光LSの発振を開始させるための制御信号を送出するとともに、撮像装置103に対して、光切断線の撮像を開始させるためのトリガ信号を送出する。
後述するような校正処理が終了した後は、データ取得装置制御部201は、被測定物Sの撮像を開始する際に、線状レーザ光源101に対して線状レーザ光LSの発振を開始させるための制御信号を送出する。
また、一般に、被測定物S(例えば、軌条)の測定は、被測定物Sを搬送するための搬送ラインで実施されることが多く、かかる搬送ラインには、被測定物Sの移動速度を検出するために、例えばPLG(Pulse Logic Generator:パルス型速度検出器)等が設けられている。そこで、データ取得装置制御部201は、PLGから入力される1パルスのPLG信号に基づき、定期的に制御信号を撮像装置103に対して送信し、制御信号に基づき撮像装置103を機能させることができる。これにより、撮像装置103は、被測定物Sが所定の距離又は所定の時間だけ移動する毎に、被測定物Sの表面を撮像して、複数の光切断像を生成することが可能となる。
データ取得部203は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。データ取得部203は、データ取得装置100の変位センサ105から、かかる変位センサ105により生成された形状プロフィールのデータを取得する。また、データ取得部203は、データ取得装置100の撮像装置103から、かかる撮像装置103により生成された光切断像のデータを取得する。データ取得部203は、これら形状プロフィールのデータ及び光切断像のデータを取得すると、取得したこれらのデータを、後述する演算処理部205に出力する。
また、データ取得部203は、取得した形状プロフィールのデータ及び光切断像のデータに対して、これらのデータを取得した日時等に関する時刻情報を関連付けた上で、これらデータを、記憶部211等に履歴情報として記録してもよい。
演算処理部205は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。演算処理部205は、データ取得部203から出力された光切断像のデータ及び形状プロフィールのデータに基づき、以下で詳述するような所定の演算処理を行うことで、最終的に被測定物Sの形状に関するデータを算出する処理部である。
より詳細には、本実施形態に係る演算処理部205では、光切断像と形状プロフィールとに基づいて、光切断像から抽出される光切断線を射影変換する際に用いられる変換パラメータを校正する校正処理が実施される。また、本実施形態に係る演算処理部205では、校正された変換パラメータと、光切断像から抽出される光切断線と、を用いて、被測定物Sの表面形状を表すデータが算出される。
演算処理部205は、上記のような各種の演算処理を実施すると、得られた処理結果に関する情報を、後述する結果出力部207に出力する。
なお、この演算処理部205については、以下で改めて詳細に説明する。
結果出力部207は、演算処理部205から出力された各種の演算処理結果に関する情報を、表示制御部209に出力する。これにより、上記の変換パラメータの校正結果や、被測定物Sの形状に関する情報等が、表示部(図示せず。)に出力されることとなる。また、結果出力部207は、得られた演算処理結果を、製造管理用プロコン等の外部の装置に出力してもよく、得られた演算処理結果を利用して、製品の欠陥帳票等を作成してもよい。また、結果出力部207は、各種の演算処理結果に関する情報を、当該情報を算出した日時等に関する時刻情報と関連づけて、記憶部211等に履歴情報として格納してもよい。
表示制御部209は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置等により実現される。表示制御部209は、結果出力部207から伝送された、各種の演算処理結果を、演算処理装置200が備えるディスプレイ等の出力装置や演算処理装置200の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、形状測定装置10の利用者は、変換パラメータの校正結果や、被測定物Sの表面形状に関する測定結果等を、その場で把握することが可能となる。
記憶部211は、例えば本実施形態に係る演算処理装置200が備えるRAMやストレージ装置等により実現される。記憶部211には、本実施形態に係る演算処理装置200が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。この記憶部211は、データ取得装置制御部201、データ取得部203、演算処理部205、結果出力部207、表示制御部209等が、リード/ライト処理を実行することが可能である。
<演算処理部205について>
続いて、図5〜図10Bを参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200が備える演算処理部205について、詳細に説明する。
図5は、本実施形態に係る演算処理装置が有する演算処理部の構成の一例を示したブロック図である。図6は、本実施形態に係るデータ取得装置における光学配置について説明するための説明図である。図7は、本実施形態に係る演算処理装置における校正処理について説明するための説明図である。図8A及び図8Bは、本実施形態に係る校正処理における校正対象点の一例を示したグラフ図である。図9A及び図9Bは、本実施形態に係る校正処理における校正対象点検出処理の一例について説明するための説明図である。図10は、本実施形態に係る演算処理装置における校正処理について説明するための説明図である。
本実施形態に係る演算処理部205では、先だって言及したように、最終的には、光切断像に基づき、かかる光切断像から抽出された光切断線を射影変換することで、被測定物Sの形状に関するデータが算出される。しかしながら、射影変換処理により被測定物Sの正確な形状を算出するためには、射影変換に用いられる変換パラメータの値を、正確に特定することが重要となる。そのため、本実施形態に係る演算処理部205では、被測定物Sの形状に関するデータを算出するに先立って、射影変換に用いられる変換パラメータの値を正確に特定するための校正処理が、少なくとも一度実施される。
このような処理を実施するために、本実施形態に係る演算処理部205は、図5に模式的に示したように、校正処理部221と、形状算出部229と、を有している。
校正処理部221は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。校正処理部221は、データ取得部203から出力された光切断像及び形状プロフィールに基づいて、光切断像から抽出される光切断線を射影変換する際に用いられる変換パラメータを校正する校正処理を実施する。
また、形状算出部229は、校正処理部221により校正された変換パラメータと、光切断像から抽出される光切断線と、を用いて、被測定物Sの表面形状を表すデータを算出する。
以下では、これら校正処理部221及び形状算出部229の詳細な機能について説明するに先立って、本実施形態に係る演算処理部205で実施される各処理の概略について、まず説明することとする。本実施形態に係る演算処理部205で実施される各処理の概略をまず説明することで、本実施形態に係る校正処理部221及び形状算出部229の機能の理解に役立つと思われるからである。
[射影変換処理について]
本実施形態に係る演算処理部205では、先だって言及したように、最終的には、光切断像に基づき、かかる光切断像から抽出された光切断線を射影変換することで、被測定物Sの形状に関するデータが算出される。そこで、以下では、本実施形態に係る演算処理部205(特に、形状算出部229)により実施される射影変換処理について、詳細に説明する。
まず、射影変換処理における座標系について、図6を参照しながら説明する。
以下で説明する射影変換処理を説明するために、図6に示したような座標系に着目する。具体的には、物体側座標(被測定物Sにおける座標)に関して、軌条の長手方向をz軸にとり、線状レーザ光源101から射出される線状レーザ光LSは、y軸に沿ってz=0の断面(xy平面)内に照射されているものとする。また、撮像装置103の光軸は、yz平面内にあって、物体側原点(x,y,z)=(0,0,0)を通り、線状レーザ光LSが含まれるxy平面に対して角度θをなすように配置されているものとする。
また、データ取得装置100において、撮像装置103に装着されているレンズLEから物体側原点までの距離をLとし、レンズLEの焦点距離をfとする。
線状レーザ光LSが、撮像装置103の撮像面p2に写る場合を考える。この際、線状レーザ光LS上の輝点(x,y)の、撮像面p2に対して平行な射影平面p1へ射影された点(x’,y’)=(x,y・sinθ)が、撮像面p2上の点(X,Y)へと縮小されて写っていると考えることができるため、以下の式(101)が成立する。
ここで、上記式(101)において、M’は、射影平面p1と撮像面p2の像の大きさの比率である拡大率である。ここで、レンズLEから射影平面p1までの距離は、図6に示した幾何学的な関係から明らかなようにL−y・cosθであるため、拡大率M’は、レンズの結像公式により、以下の式(103)のように表すことができる。ここで、以下の式(103)におけるMは、物体側原点を通る射影平面p0での拡大率であり、以下の式(105)のように表される。
上記式(103)を式(101)に代入し、(x,y)について解くと、撮像面座標(X,Y)から物体側座標(x,y)への射影変換を表す、以下の式(107)を得ることができる。以下の式(107)から明らかなように、撮像面座標(X,Y)で表される点は、拡大率M、レンズLEの焦点距離f、及び、撮像装置103の設置角度θの値に応じて、物体側座標(x,y)に対応する。
ここで、上記式(107)に含まれる撮像装置103の設置角度θと、物体側原点での拡大率Mは、概算値は既知であっても正確な値は未知である、求めるべき変換パラメータである。従って、これら2種類の変換パラメータの値を正確に特定することができれば、射影変換式(107)によって、撮像面p2上の光切断線から、被測定物Sの表面形状を表す形状プロフィールを復元することができる。そこで、以下の説明では、この求めるべき変換パラメータのことを、「復元パラメータ」と称することとする。かかる復元パラメータを利用した射影変換で復元される、被測定物Sの表面形状を表す形状プロフィールが、被測定物Sの表面形状を表すデータとなる。
従って、本実施形態に係る演算処理部205では、2種類の復元パラメータの正確な値を特定するための校正処理が、被測定物Sの表面形状を表す形状プロフィールの算出に先だって、少なくとも一度実施される。
[校正処理について]
次に、図7〜図10を参照しながら、本実施形態に係る校正処理部221で実施される校正処理の全体的な流れについて、詳細に説明する。
本実施形態に係る校正処理部221で実施される校正処理では、データ取得装置100の変位センサ105により測定された形状プロフィールが、被測定物Sの真の表面形状を表した、校正の基準となる断面プロフィールであるとして取り扱われる。そこで、以下の説明では、変位センサ105により測定された形状プロフィールを、校正プロフィールと称することとする。
本実施形態に係る校正処理において、校正処理部221は、まず、データ取得部203から、校正プロフィールのデータと、光切断像のデータと、を取得する(処理1)。その後、校正処理部221は、校正プロフィール及び光切断像のそれぞれから、校正処理の対象となる点(以下、「校正対象点」ともいう。)を検出する(処理2)。
続いて、校正処理部221は、検出した校正対象点に着目して、上記の2種類の復元パラメータを算出するとともに(処理3)、位置合わせパラメータを算出する(処理4)。ここで、位置合わせパラメータとは、校正された変換パラメータ(復元パラメータ)を用いて光切断線を射影変換することで得られる測定プロフィールと、校正プロフィールと、を一致させるために用いられるパラメータである。
校正処理部221は、復元パラメータと、位置合わせパラメータと、を算出すると、これらのパラメータを形状算出部229に出力して(処理5)、校正処理を終了する。
○校正対象点の検出処理
続いて、校正処理部221で実施される校正対象点の検出処理について説明する。
校正処理に用いられる校正プロフィール及び光切断像は、データ取得装置100が、着目している被測定物Sの同じ位置についてデータ取得処理を行うことで生成されるものである。従って、校正プロフィール上のある点は、光切断像から抽出される光切断線上の点の何れかに対応しているはずであり、このような点の対応関係は、射影変換によっても不変となる。そこで、校正処理では、校正プロフィールと光切断線との間で互いに対応関係にある点に着目し、このような対応関係にある点の組み合わせを、校正対象点とする。
このような校正対象点は、校正プロフィール及び光切断線のそれぞれにおいて、複数見出すことができる。また、以下で詳述する校正処理では、理論上、校正プロフィールと光切断線との間で互いに対応関係にある点の組み合わせであれば、任意の組み合わせを利用することが可能である。
しかしながら、本実施形態に係る校正処理では、上記の校正対象点として、(1)校正プロフィール及び光切断線のそれぞれにおける直線部位の端点(以下、「直線部端点」ともいう。)、及び、(2)校正プロフィール及び光切断線のそれぞれにおける曲率変化点(以下、「曲率変化点」ともいう。)という2種類の点を、校正対象点として用いることが好ましい。これら直線部端点及び曲率変化点は、以下で詳述するように、変曲点や曲率という座標変換に対して不変な量を利用して特定する点であるため、これらの点を校正対象点とすることで、校正処理の精度をより一層向上させることが可能となる。また、直線部端点及び曲率変化点を校正対象点とすることで、曲線部が存在する可能性のある被測定物Sそのものを利用して校正処理を行うことが可能となる。
図8Aは、ある軌条の校正プロフィール上における校正対象点の候補となる点と、直線部端点と、を表したものであり、図8Bは、ある軌条の校正プロフィール上における校正対象点の候補となる点と、曲率変化点と、を表したものである。図8A及び図8Bからも明らかなように、校正対象点の候補となる点は、校正プロフィール及び光切断線のそれぞれにおいて、複数存在しうる。しかしながら、校正対象点が着目している被測定物Sのある一部分に偏って存在していると、校正処理に誤差が重畳する可能性が高くなる。従って、校正対象点は、着目している被測定物Sの被測定面においてバランス良く存在するように、選択することが好ましい。
本実施形態に係る校正対象点の検出処理では、図8A及び図8Bに示したような、校正対象点の候補となる点の全てを校正対象点として利用してもよいし、校正対象点の候補となる点のうちの一部を校正対象点として利用してもよい。校正対象点の候補となる点の一部を校正対象点として利用する場合、候補点の中から選択する校正対象点の個数は、校正プロフィール及び光切断線のそれぞれから3点以上とすることが重要である。これは、以下で詳述するように、本実施形態では、復元パラメータの算出を行う際に図形の合同条件を利用するが、図形の合同を規定する際に、3点以上の点が存在しないと、図形の合同を議論できないためである。
また、校正対象点の候補となる点のうちの一部を校正対象点として利用する場合、被測定物Sの形状において、特に着目したい位置の近傍に存在する校正対象点の候補点(特に、曲率変化点の候補点)を、校正対象点として用いることが好ましい。
以下に、直線部端点及び曲率変化点の検出処理の流れについて、図9A及び図9Bを参照しながら詳細に説明する。なお、校正プロフィール上の校正対象点の検出方法と、光切断線上の校正対象点の検出方法とは、処理内容自体は同一であり、処理に用いるデータの内容が異なるのみである。従って、以下では、校正プロフィール上の校正対象点の検出方法、及び、光切断線上の校正対象点の検出方法について、まとめて説明するものとし、処理に用いるデータを、「プロフィール」と総称する。
◇直線部端点の検出処理
まず、図9Aを参照しながら、直線部端点の検出処理について説明する。
直線部端点の検出処理では、まず、各プロフィールの移動平均を算出することで、平滑化プロフィールが生成される(処理11)。校正対象点の検出処理において、得られたデータをそのまま利用しても良いが、得られたデータには、測定ノイズが重畳しているものである。そこで、各プロフィールの移動平均から平滑化プロフィールが生成されることで、かかるノイズの影響を抑制することが可能となる。
具体的には、移動平均前のプロフィール上の点の座標を(xk,yk)としたときに、移動平均後の平滑化プロフィールの点の座標(xk,f(xk))は、以下の式(111)のように算出される。ここで、以下の式(111)において、wj(j=1,2,・・・,2m+1)は、重みづけ係数であり、mは、自然数である。
次に、上記式(111)により得られた平滑化プロフィールに対して、2階差分処理が実施される(処理12)。各プロフィール上の点は、実際には離散データの集合であるため、2階差分処理は、プロフィールのデータ間隔をΔxとし、差分幅h=m・Δxとしたときに、以下の式(113)のように算出される。
なお、本説明では、上記式(111)におけるmと、2階差分処理における差分幅mとを、便宜上同じ記号を用いて表記したが、これら設定値は、一般に異なるとする。
続いて、2階差分データ(xk,f”(xk))に対して、|f”(xk)|が所定の閾値以上となるピークの位置が検出される(処理13)。具体的には、|f”(xk)|が所定の閾値以上となるピークのピークx座標xpが検出される。
次に、検出したピークx座標xpに対応する平滑化プロフィール上の点(xp,f(xp))が特定され(処理14)、直線部端点の座標とされる。
この際に、ピークx座標xp自身を含む周辺の点(xk,f”(xk))を用いてf”(x)の補間処理を行い、ピークx座標xp’を求めてもよい。この場合には、ピークx座標xp’に相当する平滑化プロフィール上の点(xp’,f(xp’))を、同様にf(x)の補間処理で算出し、直線部端点の座標とすればよい。
◇曲率変化点の検出処理
次に、図9Bを参照しながら、曲率変化点の検出処理について説明する。
曲率変化点の検出処理では、まず、各プロフィールに対して、直線部端点を検出する場合と同様の移動平均処理が実施され、平滑化プロフィールが生成される(処理21)。
次に、上記式(111)により得られた平滑化プロフィールを用いて、平滑化プロフィール上の点の座標(xk,f(xk))に対して、以下の式(115)に基づき、x座標xkにおける曲率g(xk)が算出される(処理22)。ここで、以下の式(115)において、f”(xk)は、上記式(113)で表される2階差分であり、f’(xk)は、プロフィールのデータ間隔をΔxとし、差分幅h=m・Δxとして、以下の式(117)のように算出される1階差分である。
続いて、上記式(115)により得られた曲率データ(xk,g(xk))に対して、以下の式(119)により、x座標xkにおける曲率変化を表す曲率1階差分が算出される(処理23)。
なお、上記式(113)、式(117)と、式(119)とで、差分幅は、便宜的に同じ記号hを用いて表記したが、一般に、差分幅の設定値は、曲率と曲率1階差分とで異なるものとする。
続いて、曲率1階差分データ(xk,g’(xk))に対して、|g’(xk)|が所定の閾値以上となるピークの位置が検出される(処理24)。具体的には、|g’(xk)|が所定の閾値以上となるピークのピークx座標xpが検出される。
次に、検出したピークx座標xpに対応する平滑化プロフィール上の点(xp,f(xp))が特定され(処理25)、曲率変化点の座標とされる。
この際に、ピークx座標xp自身を含む周辺の点(xk,g’(xk))を用いてg’(x)の補間処理を行い、ピークx座標xp’を求めてもよい。この場合には、ピークx座標xp’に相当する平滑化プロフィール上の点(xp’,f(xp’))を、同様にf(x)の補間処理で算出し、曲率変化点の座標とすればよい。
以上、本実施形態における校正対象点の検出処理について、具体的に説明した。
○復元パラメータの算出処理
続いて、図10を参照しながら、本実施形態における復元パラメータの算出処理について説明する。
図10の上段に示したように、上記のようにして特定した光切断線上の校正対象点の集合を利用して射影変換を行うことで、射影変換後の校正対象点の座標をそれぞれ特定することができる。一方、校正プロフィールと光切断線とは、被測定物Sの同じ位置に着目することで得られたものであるから、図10の右側に示したように、射影変換後の校正対象点の集合で規定される図形と、校正プロフィール上の校正対象点の集合で規定される図形とは、合同となるはずである。
本実施形態で実施される復元パラメータの算出処理では、上記のような2つの図形の合同を考慮する際に、2つの校正対象点を結ぶ線分(以下、この線分を「対応線分」ともいう。)の長さに着目する。
図10に示した例では、校正プロフィール及び光切断線でそれぞれ4点の校正対象点に着目しているため、4C2=6本の対応線分を考慮することができる。
例えば、校正プロフィール上の校正対象点の座標を(ui,vi)とし、校正対象点(ui,vi)と(uj,vj)とを結ぶ対応線分の長さをdijとすると、dijは、以下の式(121)のように表される。
また、撮像装置103の撮像面p2上の光切断線上において、校正対象点の座標を(Xi,Yi)とし、光切断線上の校正対象点を射影変換して得られる点の座標を(xi,yi)とする。この場合に、射影変換後の校正対象点(xi,yi)と(xj,yj)とを結ぶ対応線分の長さをδijとすると、δijは、射影変換式(107)を用いて、以下の式(123)のように表される。ここで、以下の式(123)の最右辺では、t=cotθという変数の置き換えを行っている。
ここで、例えば図10に示したような2つの図形が合同となる条件として、図形を構成する辺の長さが全て同じという条件を考えることができる。そこで、復元パラメータを算出するためには、「校正プロフィール上の対応線分の長さdijと射影変換後の対応線分の長さδijが一致する」という合同条件について、この合同条件を満たす撮像装置の設置角度θ(あるいは、置換変数のt)と拡大率Mとの組み合わせを求めればよいことになる。
ここで、上記のような対応線分の合同条件として、以下の式(125)に示すような残差二乗和Eを評価関数とし、かかる残差二乗和Eを最小化するθ(又はt)とMとの組み合わせを決定する方法が考えられる。
しかしながら、上記式(125)を用いた場合、上記式(123)を反映して、式(125)の具体的な評価関数中に、未知数tと校正対象点座標とが混在する無理関数や分数関数が含まれるようになる。そのため、上記式(125)で表される評価関数Eの最小化を考えた場合、未知数tと分離した形で対応線分の本数分の総和がとれず、数値演算で収束可能な安定的な解が得られない可能性がある。
そこで、本実施形態で実施される復元パラメータの算出処理では、式(123)の二乗及び分数の通分を考慮した、以下の式(127)で表される残差二乗和Eを、評価関数として用い、かかる評価関数Eの値を最小化するような解を特定する。式(127)の評価関数Eは、未知数tに関する多項式となっているため、式(127)をtの次数ごとに整理することが可能であり、その係数は、校正プロフィール上の対応線分の長さ、光切断線上の校正対象点の座標、及び、光切断像の生成に用いられたカメラの焦点距離を含む項の、対応線分の本数分の総和となる。
上記式(127)の残差二乗和Eを最小化するような解は、EのM2での偏微分∂E/∂M2=0という方程式と、Eのtでの偏微分∂E/∂t=0という方程式と、を用いて求めることができる。具体的には、M2での偏微分に関する方程式を整理すると、式(129)が得られ、また、tでの偏微分に関する方程式について、式(129)を用いてMを消去し整理すると、tだけに依存する式(131)が得られる。
ここで、上記式(129)及び式(131)において、
A(t):変数tの6次多項式
B(t):変数tの4次多項式
P(t):変数tの3次多項式
Q(t):変数tの5次多項式
R(t):変数tの7次多項式
である。また、A(t)、B(t)、P(t)、Q(t)、R(t)の具体的な内容は、以下の通りである。
上記のA(t)、B(t)、P(t)、Q(t)、R(t)の具体的な内容から明らかなように、式(127)の評価関数Eを最小化する合同条件から導出される、式(129)及び式(131)は、校正プロフィール上の対応線分の長さ、光切断線上の校正対象点の座標、及び、光切断像の生成に用いられたカメラの焦点距離をパラメータとして含み、かつ、対応線分の本数分の総和を係数に有する、未知数tに関する多項式からなることがわかる。
ここで、上記式(131)は、1変数tに関する方程式であるため、例えばニュートン法等といった公知の様々な数値演算アルゴリズムにより、容易に解tを算出することが可能である。ここで、変数tは、t=cotθ=1/tanθの関係がある。そのため、逆正接関数Acrtanを用いて、θ=Arctan(1/t)の演算を行うことで、復元パラメータの一つである撮像装置103の設置角度θを、数値演算により求めることができる。
また、式(131)から求めた解tを上記式(129)に代入し、平方根をとることで、復元パラメータの一つである拡大率Mを求めることができる。また、拡大率Mは、上記式(105)で表される関係が成立するため、求めた拡大率Mと、撮像装置103に装着されたレンズLEの焦点距離fと、を用いて、式(105)から、図6に示した距離Lを算出することも可能である。
このように、本実施形態に係る復元パラメータの算出処理では、数値演算の安定性、及び、数値演算の容易さ・簡便さを重視して、例えば式(127)のように、合同条件を表す評価関数Eを、校正プロフィール上の対応線分の長さ、光切断線上の校正対象点の座標、及び、光切断像の生成に用いられたカメラの焦点距離をパラメータとして含み、かつ、対応線分の本数分の総和を係数に有する、未知数tに関する多項式とする。これにより、本実施形態に係る復元パラメータの算出処理では、より正確な復元パラメータをより簡便な方法で特定することが可能となる。
本実施形態では、以上のような方法で復元パラメータ(θ,M)を算出し、得られた復元パラメータ(θ,M)を用いて、先だって説明したような射影変換処理を行うことで、着目している被測定物Sの形状を表すデータ(測定プロフィール)を算出することができる。
○位置合わせパラメータの算出処理
続いて、本実施形態における位置合わせパラメータの算出処理について説明する。
以上説明したような処理により、拡大率Mと撮像装置103の設置角度θとからなる復元パラメータを確定し、先だって説明した式(107)に基づき射影変換処理を行うことで、着目している被測定物Sの測定プロフィールを得ることができる。
ここで、測定された校正プロフィールと算出された測定プロフィールとの間には、回転や並進に起因する見かけ上の位置ズレが生じている可能性がある。そのため、校正プロフィールと測定プロフィールとを一致させるための回転角と並進ベクトルとを、位置合わせパラメータとして算出することが好ましい。かかる位置合わせパラメータを用いて測定プロフィールに含まれる回転や並進に伴う見かけ上の位置ズレを補正し、測定プロフィールと校正プロフィールとの一致度合いを検証することが可能となる。
測定プロフィールに生じうる回転の大きさを表す回転角をαとし、並進ベクトルの成分を(x0,y0)とする。この場合に、測定プロフィール上の点(xi,yi)の回転・並進後の座標(ui’,vi’)は、以下の式(151)のように表される。
また、回転・並進後の点(ui’,vi’)と、校正プロフィール上の点(ui,vi)との残差二乗和Eを、以下の式(153)のように定義すると、かかる残差二乗和Eを最小化することで、両対応点が一致する条件を見出すことができる。ここで、以下の式(153)において、Nは、対応する点の個数である。
上記式(153)で表されるEを最小化する条件は、∂E/∂x0=∂E/∂y0=∂E/∂α=0である。従って、かかる条件に基づき式を整理すると、並進ベクトルの成分(x0,y0)と回転角αとは、以下の式(155)〜式(157)のように算出することができる。また、下記の式(157)におけるatan2(a,b)という関数は、(−π/2,π/2)の開区間に値域をもつ逆正接関数Arctan(b/a)に対し、a,bの値に応じて値域が(−π,π]になるように拡張された、以下の式(165)で定義される逆正接関数である。
従って、上記の演算により、並進ベクトルの成分(x0,y0)と回転角αとを位置合わせパラメータとして算出した上で、上記式(151)により測定プロフィールをアフィン変換することで、回転や並進に起因する見かけ上の位置ズレが補正された測定プロフィールを得ることができる。得られた補正後の測定プロフィールと、校正プロフィールと、を比較することで、測定結果として得られた測定プロフィールと、校正プロフィールとの一致度合いを検証することが可能である。
測定結果として得られた測定プロフィールと、校正プロフィールとの一致度合いは、両者を重ねて図示するなどの定性的な方法で検証してもよいし、補正後の測定プロフィールと校正プロフィールとの残差二乗和等を算出することで、定量的に検証してもよい。また、検証の結果、測定プロフィールと校正プロフィールとの一致度合いが不十分であった場合には、一致度合いが十分となるまで、測定プロフィールの算出(換言すれば、復元パラメータの算出)を繰り返せばよい。
以上、本実施形態における位置合わせパラメータの算出処理について説明した。
[演算処理部205の構成について]
以上説明したような、本実施形態に係る各種の演算処理方法を踏まえ、再び図5に戻って、本実施形態に係る演算処理部205の構成について、詳細に説明する。
演算処理部205が有する校正処理部221は、先ほど説明したような校正処理を実施する処理部である。この校正処理部221は、図5に示したように、校正対象点検出部223と、復元パラメータ算出部225と、位置合わせパラメータ算出部227と、を有している。
校正対象点検出部223は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。校正対象点検出部223は、先ほど説明したような校正処理のうち、校正対象点の検出処理を実施する処理部である。校正対象点検出部223は、データ取得部203から取得した形状プロフィールのデータと、光切断像のデータと、を用いて、先ほど説明したような校正対象点の検出処理を実施する。この際、データ取得部203から取得した形状プロフィールは、校正プロフィールとして取り扱われる。校正対象点検出部223は、形状プロフィールと光切断線のそれぞれから校正対象点を検出すると、検出した校正対象点に関する情報(各校正対象点の座標に関する情報等)を、後述する復元パラメータ算出部225に出力する。また、校正対象点検出部223は、検出した校正対象点に関する情報を、結果出力部207に対して出力してもよい。
復元パラメータ算出部225は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。復元パラメータ算出部225は、先ほど説明したような校正処理のうち、復元パラメータの算出処理を実施する処理部である。復元パラメータ算出部225は、校正対象点検出部223から出力された校正対象点に関する情報と、データ取得装置制御部201や記憶部211から取得した、撮像装置103に装着されたレンズLEの焦点距離fに関する情報と、を用いて、先ほど説明したような復元パラメータの算出処理を実施する。復元パラメータ算出部225は、拡大率M及び撮像装置103の設置角度θからなる復元パラメータを算出すると、得られた復元パラメータに関する情報を、後述する位置合わせパラメータ算出部227及び形状算出部229に出力する。また、復元パラメータ算出部225は、算出した復元パラメータに関する情報を、結果出力部207に対して出力してもよい。
なお、復元パラメータ算出部225により算出される拡大率M及び撮像装置103の設置角度θの値は、データ取得装置100の設置条件等から定まる概略値と近い値を有しているはずである。そこで、復元パラメータ算出部225は、データ取得装置100の設置条件等から定まる概略値と、算出した拡大率M及び設置角度θと、を比較して、両者の差分が所定の閾値以上に大きい場合には、復元パラメータの算出処理のやり直しを行ったり、形状測定装置10の使用者に警告を発したりするなどの処理を行っても良い。
位置合わせパラメータ算出部227は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。位置合わせパラメータ算出部227は、先ほど説明したような校正処理のうち、位置合わせパラメータの算出処理を実施する処理部である。位置合わせパラメータ算出部227は、取得した形状プロフィール(校正プロフィール)と、校正された変換パラメータ(すなわち、復元パラメータ算出部225により算出された復元パラメータ)を用いて光切断線を射影変換することで得られる測定プロフィールと、の間の回転及び/又は並進に伴う位置ズレを補正するための位置合わせパラメータを、先ほど説明したように算出する。ここで、位置合わせパラメータの算出に用いる測定プロフィールは、位置合わせパラメータ算出部227が、算出された復元パラメータと光切断線とを用いて算出したものであってもよいし、形状算出部229により算出されたものであってもよい。位置合わせパラメータ算出部227は、回転角及び並進ベクトルの成分に関する位置合わせパラメータを算出すると、算出した位置合わせパラメータに関する情報を、形状算出部229に出力する。また、位置合わせパラメータ算出部227は、算出した位置合わせパラメータに関する情報を、結果出力部207に対して出力してもよい。
形状算出部229は、校正処理部221の復元パラメータ算出部225により算出された復元パラメータと、データ取得部203から出力された光切断像のデータと、を用いて、先ほど説明したような射影変換処理により、被測定物Sの表面形状を表すデータである測定プロフィールを算出する処理部である。形状算出部229は、射影変換処理により被測定物Sの表面形状に関する測定プロフィールの情報を、結果出力部207に出力する。
また、形状算出部229は、算出した測定プロフィールに関する情報を、校正処理部221の位置合わせパラメータ算出部227に出力して、位置合わせパラメータ算出部227における位置合わせパラメータの算出処理に、算出した測定プロフィールを利用させてもよい。
更に、形状算出部229は、位置合わせパラメータ算出部227から位置合わせパラメータに関する情報を取得した場合に、算出した測定パラメータと、取得した位置合わせパラメータと、を用いて、先だって説明したような回転・並進の補正処理を実施し、補正後の測定パラメータと、校正パラメータと、の一致度合いを検証してもよい。
以上、図4〜図10を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200の構成について、詳細に説明した。
以上、本実施形態に係る演算処理装置200の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
(形状測定方法について)
次に、図11を参照しながら、以上説明したような本実施形態に係る形状測定装置10で実施される形状測定方法の流れの一例について、簡単に説明する。図11は、本実施形態に係る形状測定方法の流れの一例を示した流れ図である。
本実施形態に係る形状測定方法では、まず、データ取得装置100が取得した形状プロフィール及び光切断像を用いて、演算処理装置200により、先だって説明したような校正処理が実施され、復元パラメータ及び位置合わせパラメータが算出される(ステップS101)。
続いて、データ取得装置100により、着目している被測定物Sの光切断像のデータが取得され(ステップS103)、演算処理装置200へと出力される。演算処理装置200の演算処理部205に設けられた形状算出部229は、算出された各パラメータと、光切断像のデータと、を用いて、先だって説明したような射影変換処理が実施され、被測定物Sの表面形状を表す測定プロフィールが算出される(ステップS105)。
ここで、演算処理装置200のデータ取得装置制御部201は、予め取得していた被測定物Sの長手方向の長さ等を参考にして、着目している被測定物Sの光切断像の生成が終了したか否かを判断する(ステップS107)。光切断像の生成が終了していない場合には(ステップS107−NO)、ステップS103に戻って処理が継続される。一方、光切断像の生成が終了した場合には(ステップS107−YES)、結果出力部207から、被測定物Sの形状測定結果が出力される(ステップS109)。
以上、図11を参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10で実施される形状測定方法の流れの一例について、簡単に説明した。
(演算処理装置のハードウェア構成について)
次に、図12を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成について、詳細に説明する。図12は、本実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
演算処理装置200は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理装置200は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、中心的な処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、又はリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、演算処理装置200内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理装置200の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。更に、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。ユーザは、この入力装置909を操作することにより、演算処理装置200に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプなどの表示装置や、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、演算処理装置200の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理装置200に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を演算処理装置200に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート、HDMI(登録商標)(High−Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、演算処理装置200は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線もしくは無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、社内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る演算処理装置200の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
以上説明したように、本実施形態に係る形状測定装置及び形状測定方法によれば、より正確な復元パラメータをより簡便な方法で特定することが可能となる。
また、復元パラメータの算出に用いられる校正対象点として、2階差分で検出可能な直線部端点と、曲率1階差分で検出可能な曲率変化点とを用いることで、曲線部を有する被測定物Sそのもの(例えば、軌条そのもの)を用いて校正処理を行うことが可能となる。そのため、例えば軌条の製造過程において、軌条のサイズ変更時の測定における信頼性確保のための校正処理を、製品である軌条そのものを用いて実施することで、校正用の軌条の配置による製造時間のロスを防ぐことが可能となる。
続いて、実施例を示しながら、本発明に係る形状測定装置、演算処理装置、形状測定方法、演算処理方法について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係る形状測定装置、演算処理装置、形状測定方法、演算処理方法のあくまでも一例にすぎず、本発明に係る形状測定装置、演算処理装置、形状測定方法、演算処理方法が下記の例に限定されるものではない。
<データ取得装置100>
以下に示す実施例では、被測定物Sとして軌条を利用した。
データ取得装置100の線状レーザ光源101として、波長660nmのレーザ光を出射するレーザ光源を用いて、出力35mW、広がり角60°の線状レーザ光LSを実現した。また、撮像装置103として、撮像面の画素数が2048×2048画素であり、画素サイズΔX=ΔY=0.0055mmの撮像素子を有するエリアカメラと、焦点距離f=35mmの単焦点レンズと、を用いた。撮像装置103の設置角度θは、約35°に設定した。
また、変位センサ105としては、基準距離が150mmであり、かつ、測定範囲が±40mmである1次元レーザ変位計を用い、かかる1次元レーザ変位計を、ステッピングモータ駆動の自動ステージに搭載した。変位センサ105は、被測定物Sである軌条の頭部側面〜腹部側面〜下首部〜底部側面にかけての表面を0.1mm間隔で走査しながら断面プロフィールを測定し、得られた測定結果を、形状プロフィール(校正プロフィール)として利用した。
上記の撮像装置103により得られる光切断像のデータ間隔ΔXは、ΔX=0.0055mmであり、上記変位センサ105により得られる形状プロフィールのデータ間隔Δuは、Δu=0.1mmとなる。
また、図3A及び図3Bに示した間隔z0は、100mmとし、変位センサ105により形状プロフィールを取得後、軌条を長手方向に100mm移動させて、光切断像を取得した。
<校正対象点の検出>
[直線部端点の検出]
得られた形状プロフィール及び光切断線から、直線部端点を以下のように検出した。
得られた校正プロフィールに対し、式(111)において、m=8とするとともに、重みづけ係数wjを全て1として移動平均を行い、平滑化プロフィールを得た。得られた平滑化プロフィールに対し、式(113)において、差分幅をh=8・Δx(m=8,Δx=0.1mm)として、2階差分データを得た。得られた2階差分データに対し、閾値0.5以上で所定の区間内にあるピークx座標xpを求めた。
また、ピークx座標xp自身を含む周辺の9点の2階差分データ(xk,f”(xk))に対して放物線近似を行い、放物線の軸に対応する補間されたピークx座標xp’を求めた。更に、補間されたピークx座標xp’に対応する平滑化プロフィール上の点(xp’,f(xp’))を、直線補間によって求めた。
かかる処理により、直線部端点として、4点の校正対象点が検出された。
図13Aに、校正プロフィールと、校正プロフィールを移動平均して得た平滑化プロフィールと、平滑化プロフィールに対する2階差分データと、2階差分データのピーク検出から得た直線部端点と、をあわせて図示したグラフ図を示した。なお、校正プロフィールと平滑化プロフィールとはほぼ一致していたため、図13Aにおいては、平滑化プロフィールは、校正プロフィールに隠れてしまっている。また、図13Aに示した点a〜点dの直線部端点の具体的な座標を、図16に示した。
続いて、得られた光切断線に対し、式(111)においてm=10とするとともに、重みづけ係数wjを全て1として移動平均を行い、平滑化プロフィールを得た。得られた平滑化プロフィールに対し、式(113)式において、差分幅をh=10・Δx(m=10,Δx=0.0055mm)として、2階差分データを得た。得られた2階差分データに対し、閾値2.0以上で所定の区間内にあるピークx座標xpを求めた。
また、ピークx座標xp自身を含む周辺の11点の2階差分データ(xk,f”(xk))に対して放物線近似を行い、放物線の軸に対応する補間されたピークx座標xp’を求めた。更に、補間されたピークx座標xp’に対応する平滑化プロフィール上の点(xp’,f(xp’))を、直線補間によって求めた。
かかる処理により、直線部端点として、4点の校正対象点が検出された。
図13Bに、光切断線と、光切断線を移動平均して得た平滑化プロフィールと、平滑化プロフィールに対する2階差分データと、2階差分データのピーク検出から得た直線部端点と、をあわせて図示したグラフ図を示した。なお、光切断線と平滑化プロフィールとはほぼ一致していたため、図13Bにおいては、平滑化プロフィールは、光切断線に隠れてしまっている。また、図13Bに示した点a’〜点d’の直線部端点の具体的な座標を、図16に示した。
[曲率変化点の検出]
得られた形状プロフィール及び光切断線から、2種類の曲率変化点を以下のように検出した。
○第1の曲率変化点の検出
得られた校正プロフィールに対し、式(111)においてm=10とするとともに、重みづけ係数wjを全て1として移動平均を行い、平滑化プロフィールを得た。得られた平滑化プロフィールに対し、式(113)、式(117)のそれぞれにおいて差分幅をh=33・Δx(m=33,Δx=0.1mm)として、2階差分データ及び1階差分データを得た。得られた2種類の差分データを、式(115)に代入して、曲率データを得た。得られた曲率データに対し、式(119)において差分幅をh=17・Δx(m=17,Δx=0.1mm)として、曲率1階差分データを得た。得られた曲率1階差分データに対し、閾値0.005以上で所定の区間内にあるピークx座標xpを求めた。
また、ピークx座標xp自身を含む周辺の35点の曲率1階差分データ(xk,g’(xk))に対して放物線近似を行い、放物線の軸に対応する補間されたピークx座標xp’を求めた。更に、補間されたピークx座標xp’に対応する平滑化プロフィール上の点(xp’,f(xp’))を、直線補間によって求めた。
かかる処理により、第1の曲率変化点として、2点の校正対象点が検出された。
図14Aに、校正プロフィールと、校正プロフィールを移動平均して得た平滑化プロフィールと、平滑化プロフィールに対する曲率1階差分データと、曲率1階差分データのピーク検出から得た曲率変化点と、をあわせて図示したグラフ図を示した。なお、校正プロフィールと平滑化プロフィールとはほぼ一致していたため、図14Aにおいては、平滑化プロフィールは、校正プロフィールに隠れてしまっている。また、図14Aに示した点e及び点fの曲率変化点の具体的な座標を、図16に示した。
続いて、得られた光切断線に対し、式(111)においてm=15とするとともに、重みづけ係数wjを全て1として移動平均を行い、平滑化プロフィールを得た。得られた平滑化プロフィールに対し、式(113)、式(117)のそれぞれにおいて差分幅をh=40・Δx(m=40,Δx=0.0055mm)として、2階差分データ及び1階差分データを得た。得られた2種類の差分データを、式(115)に代入して、曲率データを得た。得られた曲率データに対し、式(119)において差分幅をh=20・Δx(m=20,Δx=0.0055mm)として、曲率1階差分データを得た。得られた曲率1階差分データに対し、閾値0.5以上で所定の区間内にあるピークx座標xpを求めた。
また、ピークx座標xp自身を含む周辺の41点の曲率1階差分データ(xk,g’(xk))に対して放物線近似を行い、放物線の軸に対応する補間されたピークx座標xp’を求めた。更に、補間されたピークx座標xp’に対応する平滑化プロフィール上の点(xp’,f(xp’))を、直線補間によって求めた。
かかる処理により、第1の曲率変化点として、2点の校正対象点が検出された。
図14Bに、光切断線と、光切断線を移動平均して得た平滑化プロフィールと、平滑化プロフィールに対する曲率1階差分データと、曲率1階差分データのピーク検出から得た曲率変化点と、をあわせて図示したグラフ図を示した。なお、光切断線と平滑化プロフィールとはほぼ一致していたため、図14Bにおいては、平滑化プロフィールは、光切断線に隠れてしまっている。また、図14Bに示した点e’及び点f’の曲率変化点の具体的な座標を、図16に示した。
○第2の曲率変化点の検出
得られた校正プロフィールに対し、式(111)においてm=41とするとともに、重みづけ係数wjを全て1として移動平均を行い、平滑化プロフィールを得た。得られた平滑化プロフィールに対し、式(113)、式(117)のそれぞれにおいて差分幅をh=150・Δx(m=150,Δx=0.1mm)として、2階差分データ及び1階差分データを得た。得られた2種類の差分データを、式(115)に代入して、曲率データを得た。得られた曲率データに対し、式(119)において差分幅をh=72・Δx(m=72,Δx=0.1mm)として、曲率1階差分データを得た。得られた曲率1階差分データに対し、閾値0.0001以上で所定の区間内にあるピークx座標xpを求めた。
また、ピークx座標xp自身を含む周辺の73点の曲率1階差分データ(xk,g’(xk))に対して放物線近似を行い、放物線の軸に対応する補間されたピークx座標xp’を求めた。更に、補間されたピークx座標xp’に対応する平滑化プロフィール上の点(xp’,f(xp’))を、直線補間によって求めた。
かかる処理により、第2の曲率変化点として、1点の校正対象点が検出された。
図15Aに、校正プロフィールと、校正プロフィールを移動平均して得た平滑化プロフィールと、平滑化プロフィールに対する曲率1階差分データと、曲率1階差分データのピーク検出から得た曲率変化点と、をあわせて図示したグラフ図を示した。なお、校正プロフィールと平滑化プロフィールとはほぼ一致していたため、図15Aにおいては、平滑化プロフィールの大部分は、校正プロフィールに隠れてしまっている。また、図15Aに示した点gの曲率変化点の具体的な座標を、図16に示した。
続いて、得られた光切断線に対し、式(111)においてm=50とするとともに、重みづけ係数wjを全て1として移動平均を行い、平滑化プロフィールを得た。得られた平滑化プロフィールに対し、式(113)、式(117)のそれぞれにおいて差分幅をh=181・Δx(m=181,Δx=0.0055mm)として、2階差分データ及び1階差分データを得た。得られた2種類の差分データを、式(115)に代入して、曲率データを得た。得られた曲率データに対し、式(119)において差分幅をh=90・Δx(m=90,Δx=0.0055mm)として、曲率1階差分データを得た。得られた曲率1階差分データに対し、閾値0.01以上で所定の区間内にあるピークx座標xpを求めた。
また、ピークx座標xp自身を含む周辺の91点の曲率1階差分データ(xk,g’(xk))に対して放物線近似を行い、放物線の軸に対応する補間されたピークx座標xp’を求めた。更に、補間されたピークx座標xp’に対応する平滑化プロフィール上の点(xp’,f(xp’))を、直線補間によって求めた。
かかる処理により、第2の曲率変化点として、1点の校正対象点が検出された。
図15Bに、光切断線と、光切断線を移動平均して得た平滑化プロフィールと、平滑化プロフィールに対する曲率1階差分データと、曲率1階差分データのピーク検出から得た曲率変化点と、をあわせて図示したグラフ図を示した。なお、光切断線と平滑化プロフィールとはほぼ一致していたため、図15Bにおいては、平滑化プロフィールの大部分は、光切断線に隠れてしまっている。また、図15Bに示した点g’の曲率変化点の具体的な座標を、図16に示した。
<復元パラメータ及び位置合わせパラメータの算出>
図16に示した各7点の校正対象点を用いて、復元パラメータ及び位置合わせパラメータの算出を行った。
既知のパラメータであるレンズの焦点距離f=35mmと、校正プロフィール上の校正対象点(ui,vi)を式(121)に代入して得られる対応線分の長さdijと、光切断線上の校正対象点の座標(Xi,Yi)を式(133)〜式(141)に代入し、対応線分の21本(7C2=21)分の総和を計算することで、合同条件式である式(131)の多項式の係数を求めた。
数値演算アルゴリズムであるニュートン法により、合同条件式である式(131)を解くと、t=cotθ=1.437となり、撮像装置103の設置角度θは、図17に示したように、34.825度となった。
また、得られたt=1.437(θ=34.825度)の値を式(129)に代入して平方根をとると、図17に示したように、拡大率M=15.113となった。なお、得られた拡大率M=15.113と、f=35mmとを用いて、式(105)から距離Lを逆算すると、距離L=563.959mmとなった。
続いて、式(155)及び式(157)から、位置合わせパラメータである回転角αと、並進ベクトルの成分(x0,y0)を算出した。得られた結果を、図17にあわせて示した。
<測定プロフィールの算出>
以上のようにして得られた復元パラメータを用い、得られた光切断線を射影変換することで、測定プロフィールを得た。得られた測定プロフィールについて、得られた位置合わせパラメータを用いて回転・並進の補正を行い、補正後の測定プロフィールを得た。かかる処理により得られた復元プロフィールと、変位センサ105により得られた校正プロフィールと、を図18にあわせて示した。図18から明らかなように、本発明に係る手法で復元した測定プロフィールは、校正プロフィールと非常に良く一致しており、製品の軌条を用いて校正処理を実施可能であることが明らかとなった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。