JP6678557B2 - 光学ガラス、精密モールドプレス用プリフォーム及び光学素子 - Google Patents

光学ガラス、精密モールドプレス用プリフォーム及び光学素子 Download PDF

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Description

本発明は、光学ガラス、精密モールドプレス用プリフォーム及び光学素子に関し、特に、中屈折率高分散性を有し、可視光に対する透明性が高い光学ガラス、並びに、当該光学ガラスを用いた、精密モールドプレス用プリフォーム及び光学素子に関する。
近年、デジタル光学機器の普及及び発展に伴い、高性能であり且つコンパクトな光学素子が強く要求されている。この要求に応じるためには、精密プレス成形などによる非球面レンズを使用した光学設計が、不可欠な要素となっている。
光学設計における非球面レンズの用途の例として、収差補正が挙げられる。光学系のレンズは、旧来、いくつかの球面レンズを組み合わせることで収差補正を行い、カメラなどの製品に搭載されてきたが、近年の高解像度化などの要求に伴って球面レンズを明るくしたり、広角化、大口径化したりするにつれて、当該球面レンズによる収差補正は困難になる。そのような場合に、非球面レンズを用いて、球面収差や色収差の補正を行うことができる。
ここで、色収差補正用のレンズは、一般に、光の屈折率及び分散性が異なる凹凸レンズを組み合わせることにより作製され、また、色の違いによるピントのずれを消す目的で使用されることから、色消しレンズとしても知られている。そして、当該色消しレンズの凹側には、通常、高分散性を少なくとも有するガラスが使用される。
高分散性を少なくとも有するガラスとしては、種々のものが知られており、特に、高分散性を有するP系のガラスとしては、例えば、特許文献1〜8に記載されているものが挙げられる。
特開2010−260742号公報 特開2010−260745号公報 特開2010−222236号公報 特開2011−195358号公報 特開2011−219313号公報 特開2012−017260号公報 特開2012−017261号公報 特開2003−335549号公報
しかしながら、上述した特許文献1〜8に記載の従来のP系のガラスは、いずれも、高分散性を有し得るものの、ガラスの着色が強くなり、短波長の可視光の透過率が低い傾向にあるという問題があった。特に、上述した従来のP系のガラスは、屈折率(nd)が概ね1.70以上と比較的高いがゆえに、短波長の光の吸収が強くなり、これも、ガラスの着色の原因の一つとなっていた。かかる問題は、上述した色消しレンズ等の光学素子にとっては特に回避されることが望まれるため、中程度の屈折率(およそ1.6〜1.72の屈折率(nd)。「中屈折率」と称することがある。)及び高分散性を有しつつ、可視光に対する透明性を高める点で、従来のガラスには改良の余地があった。
本発明は、上記の問題に鑑み開発されたもので、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い、光学ガラス、並びに、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い、精密モールドプレス用プリフォーム及び光学素子を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討したところ、上述した従来のP系のガラスは、Nb、WO、Bi、TiOといった成分を多く含有するため、溶融性が悪く溶融に高温を要し、上述した成分の還元や、溶融の際に用いる坩堝からの貴金属イオンの溶け込みなどが発生し、その結果として、ガラスが黄色又は褐色に着色し易くなることが分かった。
そして、本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を更に重ねた結果、P、RO(R:アルカリ金属元素)、Al及びNbを主成分とし、組成の適正化を図り、且つ、アッべ数(νd)と屈折率(nd)とが所定の関係性を満たすことにより、中屈折率高分散性を有し、且つ、可視光に対する透明性が高い光学ガラスが得られることを見出した。
即ち、本発明の光学ガラスは、
モル%で、
:27%以上42%以下、
LiO:1%以上33%以下、
NaO:0%以上32%以下、
O:0%以上24%以下、
Nb:8%超23%以下、
Al:5%超14%以下、
ZnO:0%以上27%以下、
Bi:0%以上4.5%未満、
WO:0%以上10%以下、
TiO:0%以上11%以下、
ZrO:0%以上1.5%以下、
BaO:0%以上7%以下、
MgO:0%以上7%以下、
CaO:0%以上8%以下、
SrO:0%以上7%以下で、
Sb:0%以上0.2%未満
の組成を有し、
LiO、NaO及びKOの合計の含有量が25%以上50%以下であり、
を含まず、
アッベ数(νd)が28以上40以下であり、且つ、屈折率(nd)が式(1):
1.72−0.0025×νd≦nd≦1.79−0.0025×νd・・・(1)
を満たし、
厚さ10mmにおける分光透過率80%を示す波長(λ80)が、425nm未満である、
ことを特徴とする。かかる光学ガラスは、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い。
また、本発明の精密モールドプレス用プリフォームは、本発明の光学ガラスを素材として用いたことを特徴とする。かかる精密モールドプレス用プリフォームは、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い。
更に、本発明の光学素子は、本発明の光学ガラスを素材として用いたことを特徴とする。かかる光学素子は、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い。
本発明によれば、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い、光学ガラス、並びに、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い、精密モールドプレス用プリフォーム及び光学素子を提供することができる。
本発明の一実施形態の光学ガラスが有するアッべ数(νd)及び屈折率(nd)の範囲を示す図である。
(光学ガラス)
以下、本発明の光学ガラスを具体的に説明する。
まず、本発明において、光学ガラスの組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
なお、成分に関する「%」表示は、特に断らない限り、モル%を意味するものとする。
<P
本発明の光学ガラスにおいて、Pは、ガラスの形成に寄与するとともに、ガラスの溶融温度を下げて、ガラスの耐失透性を高めることができる、必須成分である。しかしながら、Pの含有量が42%を超えると、屈折率及び分散性の低下を招き、所望の高分散性が得られなくなり、一方、27%未満であると、耐失透性を向上させる効果が得られず、可視光に対する透明性を十分に高めることができない。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、Pの含有量を27%以上42%以下の範囲とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるPの含有量は、28%以上であることが好ましく、また、40%以下であることが好ましい。
<LiO>
本発明の光学ガラスにおいて、アルカリ金属酸化物の一つであるLiOは、高温時におけるガラスの粘度を下げて溶融性を高めることができ、また、転移点(Tg)及び屈伏点(At)などを低下させるのに有効な、必須成分である。しかしながら、LiOの含有量が33%を超えると、化学的耐久性及び耐失透性が低下する虞があり、一方、1%未満であると、溶融性を高める効果が十分でなく、ガラスの着色の影響等により、可視光に対する透明性を十分に高めることができない。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、LiOの含有量を1%以上33%以下の範囲とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるLiOの含有量は、3%以上であることが好ましく、また、30%以下であることが好ましい。
<NaO>
本発明の光学ガラスにおいて、アルカリ金属酸化物の一つであるNaOは、上述したLiOと同様、高温時におけるガラスの粘度を下げて溶融性を高めることができ、また、転移点(Tg)及び屈伏点(At)などを低下させるのに有効な成分である。しかしながら、NaOの含有量が32%を超えると、化学的耐久性及び耐失透性が低下する虞がある。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、NaOの含有量を0%以上32%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるNaOの含有量は、30%以下であることが好ましい。
<KO>
本発明の光学ガラスにおいて、アルカリ金属酸化物の一つであるKOは、上述したLiO及びNaO程ではないものの、ガラスの溶融性を高めることができ、更に、上述したLiO及びNaO以上に、分散性を高めるのに有効な成分である。しかしながら、KOの含有量が24%を超えると、化学的耐久性及び耐失透性が低下する虞がある。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、KOの含有量を0%以上24%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるKOの含有量は、22%以下であることが好ましい。
<LiO、NaO及びKOの合計>
ここで、本発明の光学ガラスは、LiO、NaO及びKOの合計の含有量が25%以上50%以下であることを要する。これらのアルカリ金属酸化物の合計の含有量が25%未満であると、ガラスの溶融性を十分に高めることができず、ガラスの着色の影響等により、可視光に対する透明性を良好なものとすることができない。また、これらのアルカリ金属酸化物の合計の含有量が50%を超えると、化学的耐久性が低下する上、これらのアルカリ金属酸化物以外の成分によってもたらされる効果を十分に得ることができない。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるLiO、NaO及びKOの合計の含有量は、26%以上であることが好ましく、また、47%以下であることが好ましい。
<Nb
本発明の光学ガラスにおいて、Nbは、ガラスの屈折率及び分散性を高めることができる、必須成分である。しかしながら、Nbの含有量が23%を超えると、所定のアッべ数(νd)と屈折率(nd)との関係性を満たすことができなくなるとともに、屈伏点(At)が過度に高くなる虞がある上、ガラスが着色し易くなり、短波長の可視光に対する透明性の悪化を抑制することが困難となる。一方、Nbの含有量が8%以下であると、所望の高分散性を得ることができない。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、Nbの含有量を8%超23%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるNbの含有量は、22%以下であることが好ましい。
<Al
本発明の光学ガラスにおいて、Alは、耐失透性及び耐久性を高めることができるとともに、光学恒数(アッべ数(νd)及び屈折率(nd))の調整に有効な、必須成分である。しかしながら、Alの含有量が14%を超えると、ガラスの耐失透性及び溶融性が著しく悪化し、ガラスの濃密な着色が発生する虞があり、一方、5%以下であると、所定のアッべ数(νd)と屈折率(nd)との関係性を満たすことができなくなって、ガラスの着色を十分に回避することができない虞がある。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、Alの含有量を5%超14%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるAlの含有量は、12%以下であることが好ましい。
<ZnO>
本発明の光学ガラスにおいて、ZnOは、ガラスの溶融性及び耐失透性を高めることができるとともに、屈折率及び分散性を高める効果を有する成分である。しかしながら、ZnOの含有量が27%を超えると、化学的耐久性及び耐失透性が低下するため、可視光に対する透明性が悪化する。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、ZnOの含有量を0%以上27%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるZnOの含有量は、25%以下であることが好ましい。
<Bi
本発明の光学ガラスにおいて、Biは、ガラスの屈折率及び分散性を高めるのに有効であるとともに、ガラスの溶融性を高めることができる成分である。しかしながら、Biの含有量が4.5%以上であると、ガラスが着色し易くなり、短波長の可視光に対する透明性の悪化を抑制することが困難となる。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、Biの含有量を0%以上4.5%未満とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるBiの含有量は、4.0%以下であることが好ましい。
<WO
本発明の光学ガラスにおいて、WOは、上述したBiと同様、ガラスの屈折率及び分散性を高めるのに有効な成分である。しかしながら、WOの含有量が10%を超えると、ガラスが着色し易くなり、短波長の可視光に対する透明性の悪化を抑制することが困難となる。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、WOの含有量を0%以上10%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるWOの含有量は、9%以下であることが好ましい。
<TiO
本発明の光学ガラスにおいて、TiOは、上述したBi及びWOと同様、ガラスの屈折率及び分散性を高めるのに有効な成分である。特に、本発明の光学ガラスにおいて、TiOによる分散性を高める効果は、Nb、Bi及びWOによる効果とそれぞれ比べても、大きい。しかしながら、TiOの含有量が11%を超えると、ガラスの溶融性が悪化し、ガラスが着色し易くなり、可視光に対する透明性を良好なものとすることができない。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、TiOの含有量を0%以上11%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるTiOの含有量は、10%以下であることが好ましい。
<ZrO
本発明の光学ガラスにおいて、ZrOは、屈折率及び化学的耐久性を高めることができる成分である。しかしながら、ZrOの含有量が1.5%を超えると、著しく溶融性が悪化し、熔け残り及び可視光に対する透明性の悪化の原因となる。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、ZrOの含有量を0%以上1.5%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるZrOの含有量は、1%以下であることが好ましい。
<BaO>
本発明の光学ガラスにおいて、BaOは、ガラスの溶融性及び耐失透性を高めることができる成分である。しかしながら、BaOの含有量が7%を超えると、耐久性が悪化して、製品としての光学ガラスに求められる品質を確保できなくなる虞がある。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、BaOの含有量を0%以上7%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるBaOの含有量は、6%以下であることが好ましい。
<MgO>
本発明の光学ガラスにおいて、MgOは、ガラスの溶融性及び安定性を高めることができる成分である。しかしながら、MgOの含有量が7%を超えると、耐久性が悪化して、製品としての光学ガラスに求められる品質を確保できなくなる虞がある。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、MgOの含有量を0%以上7%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるMgOの含有量は、6%以下であることが好ましい。
<CaO>
本発明の光学ガラスにおいて、CaOは、ガラスの溶融性及び安定性を高めることができる成分である。しかしながら、CaOの含有量が8%を超えると、耐久性が悪化して、製品としての光学ガラスに求められる品質を確保できなくなる虞がある。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、CaOの含有量を0%以上8%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるCaOの含有量は、7%以下であることが好ましい。
<SrO>
本発明の光学ガラスにおいて、SrOは、ガラスの溶融性及び安定性を高めることができる成分である。しかしながら、SrOの含有量が7%を超えると、耐久性が悪化して、製品としての光学ガラスに求められる品質を確保できなくなる虞がある。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、SrOの含有量を0%以上7%以下とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるSrOの含有量は、6%以下であることが好ましい。
<Sb
本発明の光学ガラスにおいて、Sbは、適量添加することによりガラスの脱泡作用及び清澄作用をもたらすとともに、Nb、Bi、WO及びTiO等が還元することによる着色の発生を抑制する効果を有する任意成分である。しかしながら、Sbの含有量を0.2%以上にしたとしても、上述した効果は上がらない。そのため、本発明の光学ガラスにおいては、Sbの含有量を0%以上0.2%未満とした。同様の観点から、本発明の光学ガラスにおけるSbの含有量は、0.1%以下であることが好ましい。
なお、本発明の光学ガラスは、上述したそれぞれの含有量の範囲内で、P、LiO、NaO、KO、Nb、Al、ZnO、Bi、WO、TiO、ZrO、BaO、MgO、CaO、SrO、及びSbのみからなる組成を有するものであってもよい。
<B(不含成分)>
なお、上述した成分を含有する光学ガラスにおいて、Bは、ガラスの化学的耐久性及び溶融性の向上に寄与しないこと、並びに、ホウ素の揮発による品質(光学恒数、及び可視光に対する透明性を含む)の悪化の虞や、成形性に悪影響を及ぼす虞があることが判明した。そこで、本発明においては、Bを含まないこととした。
<P、LiO、NaO、KO、Al、Nb、Bi、WO、TiOの関係性>
本発明の光学ガラスは、モル%で、Alの含有量をEとし、Nbの含有量をFとし、Biの含有量をGとし、WOの含有量をHとし、TiOの含有量をIとしたときに、下記式(I):
1.0≦(F+G+H+I)/E≦4.0 ・・・(I)
を満たすことが好ましい。具体的にいうと、Alの含有量に対するNb、Bi、WO及びTiOの合計の含有量の割合を1.0以上とすることで、高い溶融性を保持することができ、溶融温度の上昇が抑えられて、ガラスの着色、ひいては可視光に対する透明性の悪化の原因となるNb、Bi、WO、TiO等の成分の還元をより効果的に抑制することができる。また、Alの含有量に対するNb、Bi、WO及びTiOの合計の含有量の割合を4.0以下とすることで、所定のアッべ数(νd)と屈折率(nd)との関係性を実現しつつ、ガラスの濃密な着色をより効果的に抑制することができる。
また、本発明の光学ガラスは、モル%で、Pの含有量をAとし、Nbの含有量をFとし、Biの含有量をGとし、WOの含有量をHとし、TiOの含有量をIとしたときに、下記式(II):
0.30≦(F+G+H+I)/A≦0.75・・・(II)
を満たすことが好ましい。具体的にいうと、Pの含有量に対するNb、Bi、WO及びTiOの合計の含有量の割合を0.30以上とすることで、屈折率及び分散性を高め、所定のアッべ数(νd)と屈折率(nd)との関係性をより確実に実現することができる。また、Pの含有量に対するNb、Bi、WO及びTiOの合計の含有量の割合を0.75以下とすることで、耐失透性の悪化をより効果的に抑制することができる。
更に、本発明の光学ガラスは、モル%で、LiOの含有量をBとし、NaOの含有量をCとし、KOの含有量をDとし、Nbの含有量をFとし、Biの含有量をGとし、WOの含有量をHとし、TiOの含有量をIとしたときに、下記式(III):
0.25≦(F+G+H+I)/(B+C+D)≦0.65・・・(III)
を満たすことが好ましい。具体的にいうと、LiO、NaO及びKOの合計の含有量に対するNb、Bi、WO及びTiOの合計の含有量の割合を0.25以上とすることで、化学的耐久性及び耐失透性の悪化をより効果的に抑制することができる。また、LiO、NaO及びKOの合計の含有量に対するNb、Bi、WO及びTiOの合計の含有量の割合を0.65以下とすることで、高い溶融性を保持することができ、溶融温度の上昇が抑えられて、ガラスの濃密な着色、ひいては可視光に対する透明性の悪化をより効果的に抑制することができる。
<アッベ数(νd)>
次に、本発明の光学ガラスの物性等について説明する。
本発明の光学ガラスは、高分散性を有する。具体的にいうと、本発明の光学ガラスは、アッべ数(νd)が40以下であり、好ましくは39以下である。また、本発明の光学ガラスは、所定のアッべ数(νd)と屈折率(nd)との関係性を実現して可視光に対する透明性を高める観点から、アッべ数(νd)が28以上であり、好ましくは29以上である。光学ガラスのアッべ数(νd)が28未満であると、高分散性を有することはできるものの、屈折率(nd)も過度に高くなり、可視光に対する高い透明性を得ることができない。
<屈折率(nd)>
本発明の光学ガラスは、中屈折率を有する。具体的にいうと、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は、上述したアッべ数(νd)の値を用い、式(1):
1.72−0.0025×νd≦nd≦1.79−0.0025×νd・・・(1)
を満たすことを要する。なお、図1に、アッベ数(νd)をx軸とし、屈折率(nd)をy軸とする直交座標系において、本発明の光学ガラスにおけるアッベ数(νd)及び屈折率(nd)の範囲を示している。
また、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は、アッべ数(νd)の値を用い、式(2):
1.725−0.0025×νd≦nd≦1.785−0.0025×νd・・・(2)
を満たすことが好ましい。これにより、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い光学ガラスを実現しつつ、光学設計における自由度をより広げることができる。
<可視光に対する透明性>
本発明の光学ガラスは、上述した通り、可視光に対する透明性が高い。具体的にいうと、本発明の光学ガラスは、厚さ10mmにおける分光透過率80%を示す波長(λ80)が、425nm未満である。このように、本発明の光学ガラスは、可視光に対する透明性が高いため、色消しレンズや大口径のレンズに好適に用いることができる。
また、本発明の光学ガラスは、厚さ10mmにおける分光透過率80%を示す波長(λ80)が、400nm未満であることが好ましい。これにより、ガラスの吸収端が紫外線領域に達し、可視光領域の全ての光を通すこととなり、透明性の高い明るいレンズ等の光学素子の材料として、好適に用いることができる。
なお、「厚さ10mmにおける分光透過率80%を示す波長」は、日本光学硝子工業会規格のJOGIS02−2003「光学ガラスの着色度の測定方法」に準拠して測定される値を指す。
<屈伏点(At)>
本発明の光学ガラスは、屈伏点(At)が560℃以下であることが好ましい。光学ガラスの屈伏点(At)が560℃以下であれば、精密モールドプレスを600℃以下の温度で行うことができ、金型の劣化(具体的には、金型材料に使用される超硬合金等の劣化)を抑制することができる。同様の観点から、本発明の光学ガラスは、屈伏点(At)が550℃以下であることがより好ましい。
なお、光学ガラスの屈伏点(At)は、十分に歪の除かれた光学ガラスの熱膨張曲線において、見かけ上、ガラスの膨張が停止する温度を指す。
<光学ガラスの製造方法>
次に、本発明の光学ガラスの製造方法について説明する。
本発明の光学ガラスの製造方法としては、特に限定されることなく、従来の製造方法に従って製造することができる。
例えば、まず、本発明の光学ガラスに含まれ得る各成分の原料として、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩などを所定の割合で秤量し、十分混合したものをガラス調合原料とする。次いで、この原料を、ガラス原料等と反応性のない溶融容器(例えば貴金属坩堝)に投入して、電気炉にて1000〜1200℃に加熱して溶融しながら適時撹拌する。次いで、電気炉で清澄、均質化してから、適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ後、電気炉内で徐冷して歪みを取り除くことで、本発明の光学ガラスを製造することができる。
(精密モールドプレス用プリフォーム)
以下、本発明の精密モールドプレス用プリフォームについて、具体的に説明する。
ここで、精密モールドプレス用プリフォーム(以下、単に「プリフォーム」と称することがある。)は、周知の精密プレス成形法に用いられる予備成形されたガラス素材であり、すなわち、加熱して精密プレス成形に供されるガラス予備成形体を意味する。
ここで、精密プレス成形とは、周知のようにモールドオプティクス成形とも呼ばれ、最終的に得られる光学素子の光学機能面をプレス成形型の成形面を転写することにより形成する方法である。なお、光学機能面とは、光学素子における、制御対象の光を屈折したり、反射したり、回折したり、入出射させたりする面を意味し、例えば、レンズにおけるレンズ面などが、この光学機能面に相当する。
そして、本発明の精密モールドプレス用プリフォームは、本発明の光学ガラスを素材として用いたことを特徴とする。このように、本発明の精密モールドプレス用プリフォームは、本発明の光学ガラスを素材として用いているため、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い。
なお、本発明の精密モールドプレス用プリフォームは、所望の性能を得る観点から、本発明の光学ガラスについて既述した、各成分の組成並びに屈折率及びアッベ数に関する必須要件を満たすことが好ましく、本発明の光学ガラスについて既述した、好ましいとされる各種要件を満たすことがより好ましい。
なお、精密プレス成形時において、ガラスとプレス成形型の成形面との反応及び/又は融着を防止しつつ、成形面に沿ってガラスの延びが良好になるようにするため、プリフォームの表面には、離型膜を被覆することが好ましい。離型膜の種類としては、貴金属(白金、白金合金)、酸化物(Si、Al、Zr、Yの酸化物など)、窒化物(B、Si、Alの酸化物など)、炭素含有膜が挙げられる。炭素含有膜としては、炭素を主成分とするもの(膜中の元素含有量を原子%で表したとき、炭素の含有量が他の元素の含有量よりも多いもの)が望ましく、具体的には、炭素膜や炭化水素膜などを例示することができる。炭素含有膜の成膜法としては、炭素原料を使用した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法や、炭化水素などの材料ガスを使用した熱分解などの公知の方法を用いればよい。その他の膜については、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法等を用いて成膜することが可能である。
本発明のプリフォームの作製方法としては、特に限定されない。ただし、本発明のプリフォームは、上記光学ガラスの優れた特質を活かして、次の作製方法により作製することが望ましい。
第1のプリフォームの作製方法(「プリフォーム製法I」とする。)は、素材としての本発明の光学ガラスを溶融し、得られた溶融ガラスを流出して溶融ガラス塊を分離し、該溶融ガラス塊を冷却する過程で、プリフォームに成形する方法である。
第2のプリフォームの作製方法(「プリフォーム製法II」とする。)は、素材としての本発明の光学ガラスを溶融し、得られた溶融ガラスを成形してガラス成形体を作製し、該成形体を加工して、プリフォームを得る方法である。
プリフォーム製法I、IIとも、素材としての光学ガラスから均質な溶融ガラスを得る工程を含む点において共通する。この工程では、例えば、所望の特性が得られるように調合して製造した光学ガラス原料を白金製の溶融容器内に入れ、加熱、熔融、清澄、均質化して均質な溶融ガラスを用意し、温度調整された白金または白金合金製の流出ノズルあるいは流出パイプから流出することができる。なお、光学ガラス原料を粗熔解してカレットを作製し、このカレットを調合して加熱、溶融、清澄、均質化して均質な溶融ガラスを得、上記流出ノズルあるいは流出パイプから流出するようにしてもよい。
ここで、小型のプリフォームや球状のプリフォームを作製する場合は、例えば、溶融ガラスを流出ノズルから所望質量の溶融ガラス滴として滴下し、それをプリフォーム成形型によって受けてプリフォームに成形することができる。或いは、同じく所望質量の溶融ガラス滴を流出ノズルより液体窒素などに滴下してプリフォームを成形することができる。一方、中大型のプリフォームを作製する場合は、例えば、流出パイプより溶融ガラス流を流下させ、溶融ガラス流の先端部をプリフォーム成形型で受け、溶融ガラス流のノズルとプリフォーム成形型との間にくびれ部を形成した後、プリフォーム成形型を真下に急降下して、溶融ガラスの表面張力によってくびれ部にて溶融ガラス流を分離し、受け部材に所望質量の溶融ガラス塊を受けてプリフォームに成形することができる。
なお、キズ、汚れ、シワ、表面の変質などがない滑らかな表面、例えば自由表面を有するプリフォームを得るためには、プリフォーム成形型などの上で溶融ガラス塊に風圧を加えて浮上させながらプリフォームに成形したり、液体窒素などの常温、常圧下では気体の物質を冷却して液体にした媒体中に溶融ガラス滴を入れてプリフォームに成形したりする方法などが用いられる。
ここで、溶融ガラス塊を浮上させながらプリフォームに成形する場合、溶融ガラス塊には、ガス(浮上ガスという)が吹きつけられ、上向きの風圧が加えられることになる。この際、溶融ガラス塊の粘度が低すぎると、浮上ガスがガラス中に入り込み、プリフォーム中に泡となって残ってしまう。しかし、溶融ガラス塊の粘度を3〜60dPa・sにすることにより、浮上ガスがガラス中に入り込むことなく、ガラス塊を浮上させることができる。
プリフォームに浮上ガスが吹き付けられる際に用いられるガスとしては、空気、Nガス、Oガス、Arガス、Heガス、水蒸気等が挙げられる。また、風圧は、プリフォームが成形型表面等の固体と接することなく浮上できれば、特に制限はない。
プリフォームより製造される精密プレス成形品(例えば、光学素子)は、レンズのように回転対称軸を有するものが多いため、プリフォームの形状も回転対称軸を有する形状が望ましい。具体例としては、球あるいは回転対称軸を一つ備えるものを示すことができる。回転対称軸を一つ備える形状としては、前記回転対称軸を含む断面において角や窪みがない滑らかな輪郭線をもつもの、例えば上記断面において短軸が回転対称軸に一致する楕円を輪郭線とするものなどがあり、球を扁平にした形状(球の中心を通る軸を一つ定め、前記軸方向に寸法を縮めた形状)を挙げることもできる。
プリフォーム製法Iでは、本発明の光学ガラスを塑性変形可能な温度域で成形するので、ガラス塊をプレス成形することによりプリフォームを得てもよい。その場合、プリフォームの形状を比較的自由に設定することができるので、目的とする精密プレス成形品の形状に近似させ、例えば、対向する面の一方を凸、他方を凹形状にしたり、両方を凹面にしたり、一方の面を平面、他方の面を凸面にしたり、一方の面を平面、他方の面を凹面にしたり、両面とも凸面にしたりすることができる。
プリフォーム製法IIでは、例えば、溶融ガラスを鋳型に鋳込んで成形した後、成形体の歪をアニールによって除去し、切断または割断して、所定の寸法、形状に分割し、複数個のガラス片を作製し、ガラス片を研磨して表面を滑らかにするとともに、所定の質量のガラスからなるプリフォームを得ることができる。このようにして作製したプリフォームの表面にも、炭素含有膜を被覆して使用することが好ましい。プリフォーム製法IIは、研削、研磨を容易にすることができる球状のプリフォーム、平板状のプリフォームなどの製造に好適である。
いずれの製法においても、使用する本発明の光学ガラスの熱的安定性や耐失透安定性が優れているため、ガラスの失透、脈理などを理由とする不良品が発生しにくく、高品質なプリフォームを安定して製造することができ、また、光学素子の製造プロセス全体の量産性を高めることができる。
次に、精密プレス成形による光学素子等の成形品の量産性を更に高める上から、より好ましいプリフォームについて説明する。
本発明の光学ガラスは、ガラス素材の面から、優れた精密プレス成形性を提供するが、精密プレス成形におけるガラスの変形量を減少させることにより、精密プレス成形時のガラスと成形型の温度の低下、プレス成形に要する時間の短縮化、プレス圧力の低減などが可能になる。その結果、ガラスと成形型成形面との反応性が低下し、精密プレス成形時に発生する上記不具合が低減され、量産性がより高まる。
ここで、プリフォームを精密プレス成形してレンズを作製する場合における好ましいプリフォームは、互いに反対方向を向く被プレス面(精密プレス成形時に対向する成形型成形面でプレスされる面)を有するプリフォームであり、更に2つの被プレス面の中心を貫く回転対称軸を有するプリフォームがより好ましい。こうしたプリフォームのうち、メニスカスレンズの精密プレス成形に好適なものは、被プレス面の一方が凸面、他方が凹面、平面、前記凸面より曲率が小さいと凸面のいずれかであるプリフォームである。
また、両凹レンズの精密プレス成形に好適なプリフォームは、被プレス面の一方が凸面、凹面、平面のいずれかであり、他方が凸面、凹面、平面のいずれかであるプリフォームである。
一方、両凸レンズの精密プレス成形に好適なプリフォームは、被プレス面の一方が凸面であり、他方が凸面または平面であるプリフォームである。
いずれの場合においても、プリフォームは、精密プレス成形品の形状により近似する形状のプリフォームであることが好ましい。
なお、プリフォーム成形型を用いて溶融ガラス塊をプリフォームに成形する場合、前記成形型上のガラスの下面は、成形型における成形面の形状によって概ね定まる。一方、前記ガラスの上面は、溶融ガラスの表面張力とガラスの自重とによって定まる形状となる。ここで、精密プレス成形時におけるガラスの変形量を低減するには、プリフォーム成形型において成形中のガラスの上面の形状も制御する必要がある。溶融ガラスの表面張力とガラスの自重とによって定まるガラス上面の形状は、凸面状の自由表面となるが、上面を平面、凹面あるいは前記自由表面よりも曲率が小さい凸面にするには、前記ガラス上面に圧力を加えることができる。具体的には、ガラス上面を所望形状の成形面を有する成形型でプレスしたり、ガラス上面に風圧を加えて所望形状に成形したりすることができる。なお、成形型でガラス上面をプレスする際、成形型の成形面に複数のガス噴出口を設け、これらガス噴出口からガスを噴出して成形面とガラス上面の間にガスクッションを形成し、ガスクッションを介してガラス上面をプレスしてもよい。あるいは、上記自由表面よりも曲率の大きい面にガラス上面を成形したい場合は、ガラス上面を近傍に負圧を発生させて上面を盛り上げるように成形してもよい。
また、プリフォームは、精密プレス成形品の形状により近似する形状とするため、表面を研磨したプリフォームであることも好ましい。例えば、被プレス面の一方が平面または球面の一部になるように研磨され、他方が球面の一部または平面になるように研磨されたプリフォームが好ましい。ここで、球面の一部は凸面でも凹面でもよいが、凸面とするか凹面とするかは、上記のように精密プレス成形品の形状によって決めることが望ましい。
上記各プリフォームは、直径が10mm以上のレンズの成形に好ましく用いることができ、直径が20mm以上のレンズの成形により好ましく用いることができる。また、中心肉厚が2mmを超えるレンズの成形にも好ましく用いることができる。
(光学素子)
以下、本発明の光学素子を具体的に説明する。
本発明の光学素子は、本発明の光学ガラスを素材として用いたことを特徴とする。このように、本発明の光学素子は、本発明の光学ガラスを素材として用いているため、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い。
なお、本発明の光学素子は、所望の性能を得る観点から、本発明の光学ガラスについて既述した、各成分の組成並びに屈折率及びアッベ数に関する必須要件を満たすことが好ましく、本発明の光学ガラスについて既述した、好ましいとされる各種要件を満たすことがより好ましい。
光学素子の種類は限定されないが、典型的なものとしては、非球面レンズ、球面レンズ、あるいは平凹レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、両凸レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズなどのレンズ;マイクロレンズ;レンズアレイ;回折格子付きレンズ;プリズム;レンズ機能付きプリズム;などを例示することができる。光学素子として、好ましくは、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのレンズ、プリズム、回折格子を例示することができる。上記各レンズは非球面レンズであってもよいし、球面レンズであってもよい。表面には必要に応じて反射防止膜や波長選択性のある部分反射膜などを設けてもよい。
<光学素子の製造方法>
次に、本発明の光学素子の製造方法について説明する。
本発明の光学素子は、例えば、上記本発明のプリフォームをプレス成形型を用いて精密プレス成形することにより、製造することができる。
ここで、精密プレス成形では、予め成形面を所望の形状に高精度に加工されたプレス成形型を用いることができるが、成形面には、プレス時のガラスの融着を防止するため、離型膜を形成してもよい。離型膜としては、炭素含有膜や窒化物膜、貴金属膜が挙げられ、炭素含有膜としては水素化カーボン膜、炭素膜などが好ましい。
また、プレス成形型並びにプリフォームの加熱及び精密プレス成形工程は、プレス成形型の成形面あるいは前記成形面に好適に設けられた離型膜の酸化を防止するため、窒素ガス、あるいは窒素ガスと水素ガスの混合ガスなどのような非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガス雰囲気中では、プリフォームの表面を被覆する離型膜、特には炭素含有膜が酸化されずに、当該膜が、精密プレス成形された成形品の表面に残存することになる。この膜は、最終的には除去するべきものであるが、炭素含有膜等の離型膜を比較的容易に且つ完全に除去するには、精密プレス成形品を酸化性雰囲気、例えば大気中において加熱すればよい。炭素含有膜等の離型膜の除去は、精密プレス成形品が加熱により変形しないような温度で行うべきである。具体的には、炭素含有膜等の離型膜の除去は、ガラスの転移温度未満の温度範囲で行うことが好ましい。
なお、本発明の光学素子の製造方法としては、特に限定されず、以下に示す2つの製造方法が挙げられる。ここで、本発明の光学素子の製造においては、上記本発明の精密プレス成形用プリフォームを、同一のプレス成形型を用いて精密プレス成形する工程を繰り返すことが、光学素子の量産の観点で好ましい。
第1の光学素子の製造方法(「光学素子製法I」とする。)は、プリフォームをプレス成形型に導入し、前記プリフォームとプレス成形型とを一緒に加熱して精密プレス成形し、光学素子を得る方法である。
第2の光学素子の製造方法(「光学素子製法II」とする。)は、加熱したプリフォームを予熱したプレス成形型に導入し、精密プレス成形し、光学素子を得る方法である。
光学素子製法Iでは、成形面が精密に形状加工された対向した一対の上型と下型との間にプリフォームを供給した後、ガラスの粘度が10〜10dPa・s相当の温度まで成形型及びプリフォームの両者を加熱してプリフォームを軟化し、これを加圧成形することによって、成形型の成形面をガラスに精密に転写することができる。光学素子製法Iは、面精度、偏心精度など成形精度の向上が重視される場合に、推奨される方法である。
光学素子製法IIでは、成形面が精密に形状加工された対向した一対の上型と下型との間に、予めガラスの粘度で10〜10dPa・sに相当する温度に昇温したプリフォームを供給し、これを加圧成形することによって、成形型の成形面をガラスに精密に転写することができる。光学素子製法IIは、生産性向上が重視される場合に、推奨される方法である。
加圧時の圧力及び時間は、ガラスの粘度などを考慮して適宜決定することができ、例えば、プレス圧力は約5〜15MPa、プレス時間は10〜300秒とすることができる。プレス時間、プレス圧力などのプレス条件は成形品の形状、寸法に合わせて周知の範囲で適宜設定すればよい。
この後、成形型と精密プレス成形品を冷却し、好ましくは歪点以下の温度となったところで、離型し、精密プレス成形品を取出す。なお、光学特性を精密に所望の値に合わせるため、冷却時における成形品のアニール処理条件、例えばアニール速度等を適宜調整してもよい。
なお、本発明の光学素子は、プレス成形工程を経なくても作製することはできる。例えば、均質な溶融ガラスを鋳型に鋳込んでガラスブロックを成形し、アニールして歪を除去するとともに、ガラスの屈折率が所望の値になるようにアニール条件を調整して光学特性の調整を行ったのち、次にガラスブロックを切断または割断してガラス片を作り、更に研削、研磨して光学素子に仕上げることにより得ることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の光学ガラスを具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
表1,2に記載の各成分の原料として、各々相当するメタ燐酸塩、酸化物、炭酸塩、硝酸塩などを、ガラス化した後に表1,2に記載の組成の割合となるように秤量し、十分混合したものを調合原料とした。この調合原料を白金坩堝に投入し、電気炉にて1000〜1200℃の温度で数時間溶融しながら、白金製撹拌棒で適時撹拌することで均質化、清澄させ、その後、適当な温度に予熱した金型に鋳込み、徐冷することで、透明で均質な、実施例1〜26及び比較例1〜5の光学ガラスをそれぞれ得た。それぞれの光学ガラスについて、以下に示す手順に従い、屈伏点(At)、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、分光透過率80%を示す波長(λ80)を測定した。
光学ガラスの屈伏点(At)は、株式会社マック・サイエンス製「TD5000S」を用いて熱膨張曲線を得、この熱膨張曲線から求めた。
光学ガラスの屈折率(nd)及びアッベ数(νd)は、カルニュー光学工業株式会社製「KPR−200」を用い、日本規格協会の「JIS B 7071−1:2015 光学ガラスの屈折率測定方法:最小偏角法」に準拠して測定した。
また、実施例1〜26の光学ガラスの屈折率及びアッべ数の測定結果を、図1の直交座標系にプロットした。
光学ガラスの分光透過率80%を示す波長(λ80)は、光学ガラスを厚さ10mmに加工して、株式会社日立製作所製「U−4100」を用い、日本光学硝子工業会規格のJOGIS02−2003「光学ガラスの着色度の測定方法」に準拠して測定した。この測定値が小さいほど、可視光に対する透明性が高いことを示す。
Figure 0006678557
Figure 0006678557
表1,2及び図1から、本発明に従う実施例1〜26の光学ガラスは、いずれも、所定の屈折率(nd)とアッべ数(νd)との関係性を満たし、中屈折率高分散性を有することが分かるとともに、分光透過率80%を示す波長(λ80)が425nm未満であることから、可視光に対する透明性が高いことが分かる。
また、本発明に従う実施例1〜26の光学ガラスは、いずれも、屈伏点(At)が560℃以下であるため、金型の劣化を抑制して、精密モールドプレスを600℃以下の温度で行うことができることも分かる。
これに対し、比較例1の光学ガラスは、分光透過率80%を示す波長(λ80)が476nmと高く、可視光に対する透明性に劣ることが分かる。これは、Alを含有していないため、アッべ数(νd)及び屈折率(nd)が所定の関係性を満たすように調整できていないこと、Nb及びBiの含有量が多すぎるため、ガラスの着色が発生したこと等に因るものと考えられる。
また、比較例2の光学ガラスは、分光透過率80%を示す波長(λ80)が566nmと著しく高く、可視光に対する透明性に劣ることが分かる。これは、Alを含有していないため、アッべ数(νd)及び屈折率(nd)が所定の関係性を満たすように調整できていないこと等に因るものと考えられる。
また、比較例3の光学ガラスは、高分散性を有するものの、分光透過率80%を示す波長(λ80)が438nmと高く、可視光に対する透明性に劣ることが分かる。これは、TiOの含有量が多すぎるため、ガラスの溶融性が悪化し、ガラスが着色し易くなったこと等に因るものと考えられる。
また、比較例4の光学ガラスは、所定の屈折率(nd)とアッべ数(νd)との関係性を満たし、高分散性を有するものの、分光透過率80%を示す波長(λ80)が441nmと高く、可視光に対する透明性に劣ることが分かる。これは、Alの含有量が多すぎるため、ガラスの溶融性が著しく悪化し、ガラスの着色が発生したこと等に因るものと考えられる。
そして、比較例5の光学ガラスは、所定の屈折率(nd)とアッべ数(νd)との関係性を満たし、高分散性を有するものの、分光透過率80%を示す波長(λ80)が480nmと高く、可視光に対する透明性に劣ることが分かる。これは、LiOを含有していない上、LiO、NaO及びKOの合計の含有量が少なすぎるため、ガラスの溶融性を十分に高めることができず、ガラスの着色が発生したこと等に因るものと考えられる。
本発明によれば、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い、光学ガラス、並びに、中屈折率高分散性を有する上、可視光に対する透明性が高い、精密モールドプレス用プリフォーム及び光学素子を提供することができる。

Claims (3)

  1. モル%で、
    :27%以上42%以下、
    LiO:1%以上33%以下、
    NaO:0%以上32%以下、
    O:0%以上24%以下、
    Nb:8%超23%以下、
    Al:5%超14%以下、
    ZnO:0%以上27%以下、
    Bi:0%以上4.5%未満、
    WO:0%以上10%以下、
    TiO:0%以上11%以下、
    ZrO:0%以上1.5%以下、
    BaO:0%以上7%以下、
    MgO:0%以上7%以下、
    CaO:0%以上8%以下、
    SrO:0%以上7%以下で、
    Sb:0%以上0.2%未満
    の組成を有し、
    LiO、NaO及びKOの合計の含有量が25%以上50%以下であり、
    を含まず、
    アッベ数(νd)が28以上40以下であり、且つ、屈折率(nd)が式(1):
    1.72−0.0025×νd≦nd≦1.79−0.0025×νd・・・(1)
    を満たし、
    厚さ10mmにおける分光透過率80%を示す波長(λ80)が、425nm未満である、
    ことを特徴とする、光学ガラス。
  2. 請求項1に記載の光学ガラスを素材として用いたことを特徴とする、精密モールドプレス用プリフォーム。
  3. 請求項1に記載の光学ガラスを素材として用いたことを特徴とする、光学素子。
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