ここで、発明の望ましい例を示す。
制御部は、車両の動作を停止させる停止条件が成立した場合に動作停止制御を行う構成であってもよい。
この構成によれば、動作を停止させる電圧変換部の数を次第に増加させる動作停止制御を車両の動作を停止させる時期(即ち、車両の走行がなされない時期)に行うことができるため、異常部分を具体的に特定するための停止動作を、車両動作への影響を抑えて行うことができる。
制御部は、停止条件の成立に応じて動作停止制御を行ったときに特定部によって異常が生じている1又は複数の電圧変換部が特定された場合、次回の車両始動条件の成立時に、前回の動作停止制御において特定部によって異常と特定された1又は複数の電圧変換部を選択的に動作させる構成であってもよい。そして、異常検出装置は、次回の車両始動条件の成立時に1又は複数の電圧変換部を選択的に動作させたときの多相変換部からの出力電流又は出力電圧の少なくともいずれかに基づいて、選択的に動作させた1又は複数の電圧変換部が異常であるか否かを判定し、異常である場合に所定の保護動作を行う保護動作部を有していてもよい。
この構成によれば、車両を停止させる時期に異常検出を行ったときに異常部分として1又は複数の電圧変換部が特定された場合、その特定された部分が異常であるか否かを始動時期に再度確認することができる。このような方法により、確実性の高い異常判定が可能となる。しかも、複数回の異常判定を、車両動作を停止させる時期及び次回の始動時期に行うため、動作停止制御や異常の再判定が、走行などの車両動作に影響を及ぼしにくくなる。
制御部は、全ての電圧変換部を動作させる通常制御時には、多相変換部からの出力電流又は出力電圧が第1目標値となるように全ての電圧変換部の駆動を制御する構成であってもよい。次回の車両始動条件の成立時に1又は複数の電圧変換部を選択的に動作させる場合には、出力電流又は出力電圧が第1目標値よりも小さい第2目標値となるように選択された1又は複数の電圧変換部の駆動を制御してもよい。
異常の可能性が高い部分を選択的に動作させて再判定する場合、動作させる電圧変換部には通常とは異なる過大な出力が生じる可能性があるため、上記構成のように目標値を抑えた動作により再判定を行えば、再判定時の過大な出力が抑えられやすくなる。
特定部は、制御部が動作停止制御を行う期間において、いずれか1又は複数の電圧変換部が動作状態から停止状態に切り替えられるときの切り替えの前後で出力電流又は出力電圧の変動量が所定値以下である場合に、変動量が所定値以下となる切り替えがなされた1又は複数の電圧変換部を異常と判定する構成であってもよい。
このような方式で異常判定を行えば、十分な出力がなされない異常部分をより正確に特定することができる。
特定部は、制御部が動作停止制御を行う期間において、いずれか1又は複数の電圧変換部が動作状態から停止状態に切り替えられたことにより、出力電流又は出力電圧が所定の出力閾値を超えた状態から所定の出力閾値以下の状態に変化し且つ変化後に停止状態に切り替えられていない残余の電圧変換部が存在する場合、変化後に存在する残余の電圧変換部を異常と判定する構成であってもよい。
このような方式で異常判定を行えば、十分な出力がなされない異常部分をより正確に特定することができ、しかも、全部の電圧変換部についての異常判定をより早期に終了することができる。
上記異常検出装置と、多相変換部とを含む形で電源装置を構成し得る。この構成によれば、上記異常検出装置と同様の効果を奏する電源装置を実現できる。
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す電源装置1は、車載用の多相型DCDCコンバータとして構成されており、入力側導電路6に印加された直流電圧(入力電圧)を多相方式且つ降圧方式で電圧変換し、入力電圧を降圧した出力電圧を出力側導電路7に出力する構成となっている。更に、電源装置1は、異常検出装置3を備えている。
電源装置1は、入力側導電路6と出力側導電路7とを備えた電源ライン5と、入力された電圧を変換して出力するn個の電圧変換部CV1,CV2…CVnを備えた多相変換部2と、電圧変換部CV1,CV2…CVnを制御信号によって個々に制御する制御部4とを備える。なお、電圧変換部の個数(多相変換部2における最大相数)であるnは2以上の自然数であればよい。以下では、図1で示す構成、即ち、n=4である場合を代表例として説明する。
以下では、制御部4によって異常検出装置3が構成される例を代表例として説明する。但し、この例はあくまで一例であり、異常検出装置3は、制御部4以外の部品を含んだ形で構成されていてもよい。
入力側導電路6は、例えば、相対的に高い電圧が印加される一次側(高圧側)の電源ラインとして構成され、一次側電源部91の高電位側の端子に導通するとともに、その一次側電源部91から所定の直流電圧(例えば、48V)が印加される構成をなす。この入力側導電路6は、各電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4の個別入力路LA1,LA2,LA3,LA4にそれぞれ接続されている。一次側電源部91は、例えば、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電手段によって構成され、高電位側の端子は所定の高電位(例えば48V)に保たれ、低電位側の端子は例えばグラウンド電位(0V)に保たれている。また、入力側導電路6には、オルタネータとして構成される発電機90も接続されている。
出力側導電路7は、相対的に低い電圧が印加される二次側(低圧側)の電源ラインとして構成されている。この出力側導電路7には、出力側導電路7には、一次側電源部91の出力電圧よりも小さい直流電圧(例えば12V)を出力する蓄電手段(鉛蓄電池等)が接続されている。なお、出力側導電路7には、車載用電気機器などの図示しない負荷も接続されている。
入力側導電路6と出力側導電路7との間には、多相変換部2が設けられている。この多相変換部2は、入力側導電路6と出力側導電路7との間に並列に接続されたn個の電圧変換部CV1,CV2…CVnを備える。n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnは、同様の構成をなし、いずれも同期整流方式の降圧型コンバータとして機能する。なお、以下では、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnの各電圧変換部を電圧変換部CVとも称する。入力側導電路6からはn個の電圧変換部CV1,CV2…CVnの各個別入力路LA1,LA2…LAnが分岐している。また、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnの各個別出力路LB1,LB2…LBnは、共通の出力路である出力側導電路7に接続されている。なお、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnは、それぞれ1相目、2相目…n相目とされている。なお、本明細書では、「相に対応する電圧変換部」を単に「相」と称することもある。
n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnのうち、第k相の電圧変換部CVkについて説明する。以下において、kは、n以下の自然数である。第k相の電圧変換部CVkは、ハイサイド側のスイッチ素子SAkと、ローサイド側のスイッチ素子SBkと、インダクタLkと、保護用のスイッチ素子SCkとを備える。例えば、第1相の電圧変換部CV1は、ハイサイド側のスイッチ素子SA1と、ローサイド側のスイッチ素子SB1と、インダクタL1と、保護用のスイッチ素子SC1とを備えており、第2相の電圧変換部CV2は、ハイサイド側のスイッチ素子SA2と、ローサイド側のスイッチ素子SB2と、インダクタL2と、保護用のスイッチ素子SC2とを備えている。第3相、第4相も同様である。
第k相の電圧変換部CVkにおいて、スイッチ素子SAkは、Nチャネル型のMOSFETとして構成され、スイッチ素子SAkのドレインには、入力側導電路6から分岐した個別入力路LAkが接続されている。スイッチ素子SAkのソースには、ローサイド側のスイッチ素子SBkのドレイン及びインダクタLkの一端が接続されている。スイッチ素子SBkは、スイッチ素子SAkとインダクタLkとの接続点にドレインが接続され、ソースはグラウンドに接続されている。インダクタLkの他端は、スイッチ素子SCkのソースに接続されている。スイッチ素子SCkのドレインは、出力側導電路7に接続されている。スイッチ素子SCkは、過電流、過電圧、逆流等の異常時に経路の導通を遮断するように機能するものである。なお、図1ではスイッチ素子SAk,SBk,SCkの各ゲートに接続される制御線は省略しているが、各スイッチ素子SAk,SBk,SCkが個別の制御線を介して制御部4によって制御され得る。
制御部4は、主として、制御回路10とPWM駆動部18とを備える。制御回路10は、例えばCPUを有するマイクロコンピュータを含んでなる。この制御回路10は、後述する特定部及び保護動作部等として機能する部分(CPU等)と、ROM、RAMなどによって構成される記憶部と、アナログ電圧をデジタル信号に変換するA/D変換器16とを備える。A/D変換器16には、後述する電流検出回路9A、電圧検出回路9Bなどから出力される各電圧値が入力される。
制御部4において、制御回路10は、デューティ比を決定する機能、及び決定したデューティ比のPWM信号を生成し出力する機能を有しており、具体的には、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnのそれぞれに対するPWM信号を生成し、出力する。例えば、定常出力状態において、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnを全て駆動する場合、制御回路10は、位相が2π/nずつ異なるPWM信号を生成し、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnのそれぞれに出力する。図1の例のように多相変換部2が4個の電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4によって構成されていれば、制御部4からそれぞれに対して位相が2π/4ずつ異なるPWM信号が与えられる。
PWM駆動部18は、制御回路10で生成された各相に対するPWM信号に基づき、各相のスイッチ素子SAk,SBk(kは、1〜nの自然数)のそれぞれを交互にオンするためのオン信号をスイッチ素子SAk,SBkのゲートに印加する。スイッチ素子SAk,SBkへのPWM信号の出力中においてスイッチ素子SBkのゲートに与えられる信号は、デッドタイムが確保された上で、スイッチ素子SAkのゲートに与えられる信号に対して位相が反転する。
電源装置1は、複数の電圧変換部CV1,CV2…CVnからの共通の出力経路(出力側導電路7)における出力電流及び出力電圧を反映した値をそれぞれ検出する検出部を備える。電流検出回路9Aは、出力側導電路7を流れる電流に対応する電圧値を検出値として出力する構成であればよい。例えば、電流検出回路9Aは、出力側導電路7に介在する抵抗器と差動増幅器とを有し、抵抗器の両端電圧が差動増幅器に入力され、出力側導電路7を流れる電流によって抵抗器に生じた電圧降下量が差動増幅器で増幅され、これを検出値として制御回路10のA/D変換器16に出力するようになっている。電圧検出回路9Bは、例えば出力側導電路7の電圧を反映した値(例えば、出力側導電路7の電圧そのもの、或いは分圧値等)を制御回路10のA/D変換器16に出力する部分として構成されている。以下では、電流検出回路9Aから出力される検出値を「検出電流値」とし、電圧検出回路9Bから出力される検出値を「検出電圧値」として説明する。
次に、制御部4によって行われる多相変換部2の駆動制御について説明する。
まず、定常状態での基本動作について説明する。定常状態での基本動作は、後述する図2の処理が実行される前の動作であり、且つ、後述する図3の処理が実行された後の動作である。制御部4は、電圧変換部CVk(kは、1〜nの自然数)を複数備えてなる多相変換部2を制御対象とし、多相変換部2の各々の電圧変換部CVkに設けられた各々のスイッチ素子SAk,SBkに対しオン信号とオフ信号とを交互に切り替える制御信号を出力する機能を有する。
定常状態のとき、制御部4は、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnのそれぞれに対して、デッドタイムを設定した形でPWM信号を相補的に出力する。例えば、第k相の電圧変換部CVkを構成するスイッチ素子SAk,SBkの各ゲートに対しては、制御部4は、デッドタイムを設定した上で、スイッチ素子SAkのゲートへのオン信号の出力中には、スイッチ素子SBkのゲートにオフ信号を出力し、スイッチ素子SAkのゲートへのオフ信号の出力中には、スイッチ素子SBkのゲートにオン信号を出力する。電圧変換部CVkは、このような相補的なPWM信号に応じて、スイッチ素子SAkのオン動作とオフ動作との切り替えをスイッチ素子SBkのオフ動作とオン動作との切り替えと同期させて行い、これにより、個別入力路LAkに印加された直流電圧を降圧し、個別出力路LBkに出力する。個別出力路LBkの出力電圧は、スイッチ素子SAk,SBkの各ゲートに与えるPWM信号のデューティ比に応じて定まる。このような制御は、上述した自然数kが1からnのいずれの場合でも、即ち、第1相から第n相までのいずれの電圧変換部においても、同様に行われる。
制御部4は、多相変換部2を動作させる場合、複数の電圧変換部CV1,CV2…CVnの一部又は全部を、制御信号(PWM信号)によって個々に制御し、多相変換部2からの出力が設定された目標値となるようにフィードバック制御を行う。具体的には、制御部4は、電流検出回路9Aによって制御回路10に入力された検出値(出力側導電路7の電流値)と、出力電流の目標値(目標電流値)とに基づき、公知のPID制御方式によるフィードバック演算によって各相の制御量(デューティ比)を決定する。例えば、駆動相数がmのときの定常出力状態では、フィードバック演算によって決定したデューティ比のPWM信号を、位相を2π/mずつ異ならせてm個の電圧変換部のそれぞれに出力する。なお、n個の電圧変換部を全て駆動せる場合にはn=mであり、後述する故障判定などによってn個の電圧変換部のうちp個の電圧変換部を駆動させない場合には、m=n−pである。
次に、図2等を参照して異常判定制御を説明する。
図1で示す電源装置1では、制御部4が所定の時期に多相変換部2に対して動作停止制御(動作を停止させる電圧変換部CVの数を次第に増加させる制御)を行うとともに、異常判定を行う。具体的には、車両の動作を停止させる停止条件が成立したとき(例えば、図示しないイグニッションスイッチがオフ状態になり、制御部4にイグニッションスイッチがオフ状態であることを示すIGオフ信号が入力されたとき)から、図2で示す異常判定制御が終了するまでの間が「所定の時期」である。制御部4は、上述した停止条件の成立に応じて図2で示す異常判定制御を実行し、多相変換部2の動作を上述した定常状態のときの動作から切り替える。そして、制御部4は、図2で示す異常判定制御の最中に動作を停止させる電圧変換部CVの数を次第に増加させる動作停止制御を行う。更に、制御部4(具体的には、制御回路10)が特定部として機能し、図2の異常判定制御がなされる期間(動作停止制御を行う期間)における多相変換部2からの出力電流の変化に基づいて、異常が生じている1又は複数の電圧変換部を特定する。
制御部4は、上述した定常状態の制御から図2の異常判定制御へと制御を切り替えた場合、切替直後には、多相変換部2からの出力電流を目標電流値X1とするように定常状態のときに動作していたm個の電圧変換部CVを定常状態のときと同様に動作させる。即ち、m個の電圧変換部CVに対して上述したフィードバック制御を行う。なお、図2の異常判定制御を行うときのフィードバック制御に用いる目標電流値X1は、定常状態の制御で用いる目標電流値と同一であってもよく、これよりも小さい値であってもよい。なお、多相変換部2における全数nの電圧変換部CVのうち、いくつかの電圧変換部CVの故障が既に確定しており、定常状態のときの動作数mがn未満である場合、図2で示す異常判定制御の開始直後にはそのm個の電圧変換部CVの動作を継続することになる。
図2の異常判定制御では、まず、ステップS1においてi=1とし、m個の相(m個の電圧変換部CV)のうちのいずれか1つめの相(電圧変換部CV)を着目対象とする。iの値は、m個の相(電圧変換部CV)のうちの着目する相(電圧変換部CV)の番号を示す値である。なお、m個の電圧変換部CVにおいて、番号(順序)は予め決められた定め方で定めることができ、その定め方は特に限定されない。
制御部4は、ステップS1の後、又は後述するステップS10の後にステップS2の処理を行い、i番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させる。ステップS1の直後にステップS2の処理を行う場合、制御部4は、1番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させることになり、ステップS10の処理の後にステップS2の処理を行う場合、制御部4は、ステップS10で更新されたiで特定されるi番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させることになる。
制御部4は、ステップS2の後のステップS3の処理において、所定時間tの間、多相変換部2からの出力電流が0(A)相当であるか否かを判断する。具体的には、ステップS2でi番目の相の動作停止処理がなされた直後から所定時間tが経過するまでの間、電流検出回路9Aから制御部4に入力される検出値(検出電流値)が、非通電状態を示す所定の出力閾値以下であるか否かを判断する。
制御部4は、ステップS3の処理において条件を満たすと判断した場合、即ち、S2で動作停止処理がなされた直後から所定時間tが経過するまでの間、電流検出回路9Aから制御部4に入力される検出値(検出電流値)が所定の出力閾値以下であると判断した場合(ステップS3でYESの場合)、ステップS4の処理に移行する。
制御部4は、ステップS4の処理において、着目している相(着目している電圧変換部CV)の番号iが図2の異常判定制御を開始したときの動作総数(即ち、定常状態での動作相数)mと一致しているか否かを判断し、i=mであると判断した場合(ステップS4でYESの場合)、ステップS5に処理を移行し、ステップS5の処理においてm番目の相(最後の電圧変換部CV)を正常と判定する。逆に、ステップS4の処理においてiとmが一致していないと判断した場合(ステップS4でNOの場合)、制御部4は、ステップS6において残余の相(i+1番目〜m番目の電圧変換部CV)を故障と仮判定し且つi番目の相(電圧変換部CV)を正常と判定する。
一方、制御部4は、ステップS3の処理において条件を満たさないと判断した場合、即ち、S2で動作停止処理がなされた直後から所定時間tが経過するまでの間に電流検出回路9Aから制御部4に入力される検出値(検出電流値)が所定の出力閾値を超えたと判断した場合(ステップS3でNOの場合)、ステップS7の処理に移行する。制御部4は、ステップS7において、所定時間tの間、多相変換部2からの出力電流が変動しないか否かを判断する。具体的には、ステップS2にてi番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させる際の停止直前の時点から所定時間tが経過するまでの間における多相変換部2からの出力電流の変動量が所定値以下であるかを判断する。所定値は、0より大きく目標電流値X1よりも小さい値であり、例えば、X1/mよりも小さい値とすることができる。
制御部4は、ステップS7の判断において条件を満たすと判断した場合、即ち、ステップS2にてi番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させる直前の時点から所定時間tが経過するまでの間における多相変換部2からの出力電流の変動量が所定値以下であると判断した場合、ステップS8に処理を移行し、i番目の相(電圧変換部CV)を故障と仮判定する。逆に、ステップS2にてi番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させる直前の時点から所定時間tが経過するまでの間における多相変換部2からの出力電流の変動量が所定値を超えると判断した場合、ステップS9に処理を移行し、i番目の相(電圧変換部CV)を正常と判定する。
制御部4は、ステップS8、S9のいずれの処理を行った場合でも、ステップS10において、iの値をインクリメントする。即ち、ステップS10の前に設定されたiの値に1を加算し、その加算後の値を新たなiとする。そして、制御部4は、ステップS10が終わると、ステップS2に処理を移行し、ステップS2以降の処理を上述した流れで同様に行う。
本構成では、制御回路10が特定部の一例に相当し、制御部4が動作停止制御を行う期間における多相変換部2からの出力電流の変化に基づいて、異常が生じている電圧変換部CVを特定する機能を有する。なお、上述した例では、ステップS6又はステップS8において故障と仮判定された電圧変換部CVが「異常が生じている電圧変換部」に相当する。
具体的には、特定部に相当する制御回路10は、ステップS3、S4、S5、S6の処理を行うように構成され、制御部4が動作停止制御を行う期間において、いずれかの電圧変換部CVが動作状態から停止状態に切り替えられたことにより出力電流が所定の出力閾値を超えた状態から所定の出力閾値以下の状態に変化し且つ変化後に停止状態に切り替えられていない残余の電圧変換部CVが存在する場合、変化後に存在する残余の電圧変換部CVを異常(具体的には仮故障)と判定する。
また、特定部に相当する制御回路10は、ステップS7、S8、S9の処理を行うように構成され、制御部4が動作停止制御を行う期間において、いずれかの電圧変換部CVが動作状態から停止状態に切り替えられるときの切り替えの前後で出力電流の変動量(具体的には、ステップS2で動作停止がなされる直前の時点から所定時間tの間における電流の最大値と最小値との差)が所定値以下である場合(即ち、ステップS7でYESと判断される場合)に、変動量が所定値以下となる切り替えがなされた電圧変換部CVを異常(具体的には仮故障)と判定する。
次に、図3等を参照し、再判定制御について説明する。
上述したように、制御部4は、停止条件の成立(具体的には制御部4へのイグニッションオフ信号の入力)に応じて動作停止制御を行うとともに、異常が生じている電圧変換部CVの特定を試みる。そして、その動作停止制御中に異常が生じている電圧変換部CVが特定された場合、制御部4は、次回の車両始動条件の成立時に、前回の動作停止制御において異常と特定された電圧変換部CVを選択的に動作させる。
制御部4は、車両の始動時(具体的には、制御部4に対してイグニンションスイッチがオン状態に切り替わったことを示すIGオン信号が入力されたとき)に、上述した定常状態の制御に先立って図3で示す再判定制御を行う。なお、図3の再判定制御が行われる前は、多相変換部2の全ての電圧変換部CVを動作停止状態で維持する。
図3で示す再判定制御では、まず、故障と仮判定された相(電圧変換部CV)が存在するか否かを判断する。具体的には、前回の車両の停止時に行われた異常判定制御(即ち、図3の再判定制御の前に行われた直近の異常判定制御)において、いずれかの電圧変換部CVが故障と仮判定されているか否かを判断する。前回の車両の停止時に行われた異常判定制御(図2)においてS6又はS8の処理がなされ、いずれかの電圧変換部CVが故障と仮判定されている場合、ステップS11に処理を移行し、全数nの電圧変換部CVのうち、その電圧変換部CV(即ち、前回の車両停止時に故障と仮判定された相)のみを選択的に動作させる。ステップS11において一部の電圧変換部CVを選択的に動作させる場合、制御部4は、多相変換部2からの出力電流(即ち選択された電圧変換部CVからの出力電流)を目標電流値X2とするように選択された電圧変換部CVに対して上述したフィードバック制御を行う。なお、図3のステップ11において、選択された電圧変換部CVを動作させるときのフィードバック制御に用いる目標電流値X2は、上述した異常判定制御で用いる目標電流値X1よりも小さく設定する。
このように、制御部4は、全ての電圧変換部CVを動作させる通常制御時(定常状態において全数nの電圧変換部CVを動作させるとき)には、多相変換部2からの出力電流が第1目標値(例えば目標電流値X1)となるように全ての電圧変換部CVの駆動を制御する。一方、図2の異常判定制御の後、次回の車両始動条件の成立時にいずれかの電圧変換部CVを選択的に動作させる場合には、出力電流が第1目標値(例えば目標電流値X1)よりも小さい第2目標値(目標電流値X2)となるように選択された電圧変換部CVの駆動を制御し、選択された電圧変換部CVのみによって降圧動作を行う。
ステップS11においていずれかの電圧変換部CVを選択的に動作させた場合、目標の出力がなされているか(即ち、ステップS11においていずれかの電圧変換部CVを選択的に動作させたときの出力電流値が所定電流値に達しているか)否かを判断する。ステップS12において、出力電流値が所定電流値に達していると判断した場合、制御部4は、ステップS13に処理を移行し、ステップS11で動作させた電圧変換部CV(即ち、図2の異常判定制御で故障と仮判定された相)についての故障の仮判定を解除し、その電圧変換部CVを正常と判定する。逆に、ステップS12において、出力電流値が所定電流値に達していないと判断した場合、制御部4は、ステップS14に処理を移行し、ステップS11で動作させた電圧変換部CV(即ち、故障と仮判定された相)を異常(故障)と再判定する。ステップS13又はステップS14の後、図3の再判定制御を終了し、上述した定常状態の制御に移行する。
本構成では、図3の再判定処理においていずれかの電圧変換部CVが異常と再判定された場合(S14で故障と判定された場合)、その電圧変換部CVの異常(故障)を確定させる。そして、図3の後に行う定常状態の制御では、S14で異常(故障)が確定した電圧変換部CVを動作させずに動作禁止状態とし、残りの電圧変換部CVを動作させて電圧変換を行う。
本構成では、制御部4(具体的には制御回路10)が保護動作部の一例に相当し、図2の異常判定制御の後、次回の車両始動条件の成立時に電圧変換部CVを選択的に動作させたときの多相変換部2からの出力電流にいずれかに基づいて、選択的に動作させた電圧変換部CVが異常であるか否かを判定し、異常である場合に保護動作を行うように機能する。なお、上述した例では、保護動作の一例として、S14で異常(故障)と再判定された電圧変換部CVの動作を禁止する例を示したが、保護動作はこの例に限定されず、例えば、S14で異常(故障)と再判定された電圧変換部CVが異常である旨の情報を外部装置(例えば上位ECUなど)に通知するような動作であってもよい。
制御部4は、図3のステップS10において、故障と仮判定された相(電圧変換部CV)が存在しないと判断した場合、図3の処理を終了する。この場合、ステップS11〜ステップS14の処理を行わずに、上述した定常状態の制御に移行する。
なお、上述した説明では、図2の異常判定制御でいずれかの電圧変換部CVが故障(異常)と仮判定される例を示したが、図2の異常判定制御で複数の電圧変換部CVが故障(異常)と仮判定された場合、それぞれの電圧変換部CVに対して図3のステップS11〜S14の処理を行い、それぞれの電圧変換部CVの故障(異常)を個別に再判定すればよい。
以上のように、本構成の異常検出装置3では、制御部4が所定の時期に多相変換部2に対して動作を停止させる電圧変換部CVの数を次第に増加させる動作停止制御を行う。この構成では、動作停止制御によりいずれかの電圧変換部CVを切替対象として動作状態から停止状態に切り替えたとき、切替対象が正常であれば多相変換部2の出力が切り替えの前後で適正に変化し、切替対象が異常(例えば、スイッチ素子のオープン異常など)であれば多相変換部2の出力が切り替えの前後で異常な変化を示すことになる。このような特徴を利用し、特定部に相当する制御回路10は、制御部4が動作停止制御を行う期間における多相変換部2からの出力電流の変化に基づいて、異常が生じている電圧変換部CVを特定する。よって、本構成によれば、複数の電圧変換部CVによって電圧変換を行い得る電源装置1の異常部分を具体的に特定することができる。
制御部4は、車両の動作を停止させる停止条件が成立した場合(具体的には、イグニッションスイッチがオン状態に切り替わったことを示すイグニッションオン信号が入力された場合)に動作停止制御を行う構成である。この構成によれば、動作停止制御(動作を停止させる電圧変換部CVの数を次第に増加させる制御)を車両の動作を停止させる時期(即ち、車両の走行がなされない時期)に行うことができるため、異常部分を具体的に特定するための停止動作を、車両動作への影響を抑えて行うことができる。
制御部4は、停止条件の成立に応じて動作停止制御を行ったときに特定部によって異常が生じている電圧変換部CVが特定された場合、次回の車両始動条件の成立時に、前回の動作停止制御において異常と特定された電圧変換部CVを選択的に動作させる。そして、制御回路10が保護動作部として機能し、次回の車両始動条件の成立時に電圧変換部CVを選択的に動作させたときの多相変換部2からの出力電流に基づいて、選択的に動作させた電圧変換部CVが異常であるか否かを判定し、異常である場合に所定の保護動作を行う。
この構成によれば、車両を停止させる時期に異常検出を行ったときに異常部分としての電圧変換部CVが特定された場合、その特定された部分が異常であるか否かを始動時期に再度確認することができる。このような方法により、確実性の高い異常判定が可能となる。しかも、複数回の異常判定を、車両動作を停止させる時期及び次回の始動時期に行うため、動作停止制御や異常の再判定が、走行などの車両動作に影響を及ぼしにくくなる。
制御部4は、全ての電圧変換部CVを動作させる通常制御時(定常状態の制御時)に、多相変換部2からの出力電流が第1目標値となるように全ての電圧変換部CVの駆動を制御する構成をなす。一方、図2の異常判定制御が行われた後の次回の車両始動条件の成立時に実行される図3の再判定制御においていずれかの電圧変換部CVを選択的に動作させる場合には、出力電流が第1目標値よりも小さい第2目標値となるように、選択された電圧変換部CVの駆動を制御する。異常の可能性が高い部分を選択的に動作させて再判定する場合、通常とは異なる過大な出力が生じる可能性もあるため、上記構成のように目標値を抑えた動作により再判定を行えば、再判定時の過大な出力が抑えられやすくなる。
特定部に相当する制御回路10は、制御部4が動作停止制御を行う期間において、いずれかの電圧変換部CVが動作状態から停止状態に切り替えられるときの切り替えの前後で出力電流の変動量が予め定められた所定値以下である場合に、その電圧変換部CV(変動量が所定値以下となる切り替えがなされた電圧変換部CV)を異常と判定する。
この効果については、図4を参照して説明する。図4の例は、駆動するm個の電圧変換部CVのうち2番目の相(電圧変換部CV)のスイッチ素子にオープン故障が生じており、2番目の相に電流が流れない異常が生じている例である。なお、図4では、横軸が時間であり、縦軸が出力電流であり、時間0のときが定常状態の制御から動作停止制御に切り替わったタイミングである。そして、時間0の後、時間T1で駆動数mのうちの1番目の相(電圧変換部CV)を停止させ、時間T2で、駆動数mのうちの2番目の相(電圧変換部CV)を停止させ、時間Tmで、駆動数mのうちのm番目の相(電圧変換部CV)を停止させている。
本構成では、定常状態のとき及び図2の動作停止制御時の目標電流値がX1であり、m個の電圧変換部CVを動作させる場合には各相の電流値はX1/mに制御される。全ての電圧変換部CVが正常状態である多相変換部2に対して上述した動作停止制御を行う場合、電圧変換部CVの動作が停止する毎に、停止する電圧変換部CVに流れていた電流分の電流変動(電流低下)が生じ、その後、残余の電圧変換部CVに対するフィードバック制御によって出力電流値は目標電流値X1に戻されることになる。しかし、図4のように2番目の相(電圧変換部CV)のスイッチ素子にオープン故障が生じており、2番目の相に電流が流れないようになっている場合、時間T1で正常な1番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させたときには電流変動が生じるが、オープン故障が生じている2番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させたときには停止前後で電流変動が生じないため、電流変動量は所定値(例えば0よりも大きくX1/mよりも小さく設定された所定の値)以下となる。図2で示す異常判定制御では、このような異常をステップS7〜S9の処理によって特定することができる。このような方式で異常判定を行えば、十分な出力がなされない異常部分をより正確に特定することができる。
特定部に相当する制御回路10は、制御部4が動作停止制御を行う期間において、いずれかの電圧変換部CVが動作状態から停止状態に切り替えられたことにより、出力電流が所定の出力閾値(0よりも大きく目標電流値X1よりも小さい所定の閾値であり、例えばX1/m以下の値)を超えた状態から所定の出力閾値以下の状態に変化し且つ変化後に停止状態に切り替えられていない残余の電圧変換部CVが存在する場合、変化後に存在する残余の電圧変換部CVを異常と判定する。
この効果については、図5を参照して説明する。図5の例は、駆動するm個の電圧変換部CVのうちm番目の相(電圧変換部CV)のスイッチ素子にオープン故障が生じており、m番目の相に電流が流れない異常が生じている例である。本構成では、時間T1、T2、T3・・・と電圧変換部CVを順次停止させた場合、それぞれの停止タイミングで電圧変動が生じ、それぞれの停止タイミングの後には、再び出力電流を目標電流値X1に戻すように制御がなされる。しかし、図5のようにm番目の相(電圧変換部CV)のスイッチ素子にオープン故障が生じており、m番目の相に電流が流れないようになっている場合、時間Tm-1でm−1番目の相(電圧変換部CV)の動作を停止させたときに電流が0まで低下することになる。図2で示す異常判定制御では、このような異常をステップS3〜S6の処理によって特定することができる。このような方式で異常判定を行えば、十分な出力がなされない異常部分をより正確に特定することができ、しかも、全部の電圧変換部CVについての異常判定をより早期に終了することができる。
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、降圧型の多相コンバータを例示したが、昇圧型の多相コンバータであってもよく昇降圧型の多相コンバータであってもよい。いずれの場合でも、所定の時期に1相ずつ又は複数相ずつ電圧変換部の動作を停止させ、いずれかの停止前後で出力電流の変動量が所定値未満になった場合にその停止対象となった1又は複数の電圧変換部を異常と判定するような方法を用いることができる。
(2)実施例1では、kを1〜nの自然数とし、各相のローサイド側にスイッチ素子SBkを設けたが、接地電位にアノードが接続されたダイオードに置き換えることが可能である。また、スイッチ素子SAk,SBkは、Pチャネル型のMOSFETであってもよく、バイポーラトランジスタ等の他のスイッチ素子であってもよい。
(3)実施例1における一次側電源部91や二次側電源部92はあくまで一例であり、公知の様々な蓄電手段を適用することができる。
(4)実施例1における入力側や出力側の出力構成はあくまで一例であり、いずれの例においても、様々な装置や電子部品を入力側導電路6や出力側導電路7に接続することができる。
(5)図1では、4つの電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4が並列に接続された4相構造の電源装置1を代表例として例示したが、電圧変換部の数は4未満の複数であってもよく、5以上の複数であってもよい。
(6)制御部4は、制御回路10に入力された出力側導電路7の電圧値(検出電圧値)と、出力電圧の目標値(目標電圧値)とに基づき、出力電圧を目標電圧値に近づけるように公知のPID制御方式によるフィードバック演算を行うとともに各電圧変換部CVに与える制御量(デューティ比)を決定してもよい。
(7)実施例1では、イグニッションスイッチがオフ状態になったときに動作停止制御を行う例を示したが、いずれの例においても、この例に限定されない。例えば、エンジン動作中の所定の時期に動作停止制御を行うようにしてもよい。或いは、エンジン始動直後に動作停止制御を行うようにしてもよい。
(8)実施例1では、動作停止制御において、動作を停止させる電圧変換部CVの数を1つずつ増加させる例を示したが、動作を停止させる電圧変換部CVの数を複数個(例えば2個)ずつ増加させるようにしてもよい。この場合も、実施例1と同様の方法で異常を判定することができる。例えば、制御部4が動作停止制御を行う期間において、いずれか2つの電圧変換部CVが動作状態から停止状態に切り替えられるときの切り替えの前後で出力電流の変動量が所定値以下である場合に、それら2つの電圧変換部CVを異常と判定してもよい。この場合、図3の再判定制御では、異常と判定された2つの電圧変換部CVを動作させ、出力電流値が一定値以下の場合にこれら2つの電圧変換部CVを異常と判定し、一定値を超える場合には2つの電圧変換部CVをいずれも正常と判断してもよい。また、この構成では、制御部4が動作停止制御を行う期間において、いずれか2つの電圧変換部CVが動作状態から停止状態に切り替えられたことにより、出力電流が所定の出力閾値を超えた状態から所定の出力閾値以下の状態に変化し且つ変化後に停止状態に切り替えられていない残余の電圧変換部が存在する場合、変化後に存在する残余の電圧変換部を異常と判定してもよい。
(9)特定部に相当する制御回路10は、制御部4が動作停止制御を行う期間において、いずれか1又は複数の電圧変換部CVが動作状態から停止状態に切り替えられるときの切り替えの前後で出力電圧の変動量が所定値以下である場合に、その電圧変換部(変動量が所定値以下となる切り替えがなされた1又は複数の電圧変換部CV)を異常と判定してもよい。
(10)特定部に相当する制御回路10は、制御部4が動作停止制御を行う期間において、いずれか1又は複数の電圧変換部CVが動作状態から停止状態に切り替えられたことにより、出力電圧が所定の出力閾値を超えた状態から所定の出力閾値以下の状態に変化し且つ変化後に停止状態に切り替えられていない残余の前記電圧変換部が存在する場合、変化後に存在する残余の電圧変換部を異常と判定してもよい。