本実施形態の渦電流式発熱装置は、発熱部材が軸方向に熱膨張することによる熱回収効率の低下を抑制するため、以下のような構成を備える。
本実施形態による渦電流式発熱装置は、回転軸と、円筒形状の発熱部材と、複数の永久磁石と、磁石保持部材と、熱回収機構と、を備える。回転軸は、非回転部に回転可能に支持される。回転軸は、第1回転軸と第2回転軸に分割される。第1回転軸又は第2回転軸は軸方向の移動を許容される。発熱部材は、第1回転軸及び第2回転軸に固定される。永久磁石は、発熱部材に隙間を空けて対向し、互いに隣接するもの同士で磁極の配置が交互に異なる。磁石保持部材は、永久磁石を保持し、非回転部に固定される。熱回収機構は、発熱部材に生じた熱を回収する。
本実施形態の渦電流式発熱装置によれば、発熱部材に対向する磁石の磁極の配置が、互いに隣接する磁石同士で交互に異なるため、磁石からの磁界が広がり、発熱部材に到達する磁束密度が多くなる。これにより、磁石からの磁界の作用によって発熱部材に生じる渦電流が大きくなり、十分な発熱が得られる。しかも、本実施形態の発熱装置では、回転軸が第1回転軸と第2回転軸に分割される。第1回転軸又は第2回転軸は、軸方向に移動可能である。したがって、発熱部材が軸方向に熱膨張しても、第1回転軸又は第2回転軸が発熱部材の熱膨張に追従して移動する。そのため、発熱部材に過大な熱応力が生じにくい。その結果、発熱部材の変形が抑制され、熱エネルギを効率的に回収できる。
上記の発熱装置は、第1回転軸と第2回転軸とをつなぐ伸縮部材を備えるのが好ましい。第1回転軸と第2回転軸とは、発熱部材を介してつながる。そのため、一方の回転軸の回転トルクが大きい場合、発熱部材に負荷されるトルクが大きくなる。この場合、発熱部材が損傷しやすい。第1回転軸と第2回転軸とをつなぐ伸縮部材を設けると、伸縮部材が、発熱部材に負荷されるトルクの一部を負担する。これにより、回転軸の回転トルクが大きい場合であっても、発熱部材が損傷しにくい。また、伸縮部材は回転軸の軸方向に伸縮可能である。したがって、発熱部材が軸方向に熱膨張しても、伸縮部材は発熱部材に負荷されるトルクを負担できる。
また、本実施形態の渦電流式発熱装置は、発熱部材が半径方向に熱膨張することによる熱回収効率の低下を抑制するため、以下のような構成を備える。
本実施形態による渦電流式発熱装置は、回転軸と、円筒形状の発熱部材と、複数の永久磁石と、磁石保持部材と、熱回収機構と、を備える。回転軸は、非回転部に回転可能に支持される。発熱部材は、回転軸に固定される。発熱部材は、一方の端部から他方の端部まで伸びる切れ目を有する。永久磁石は、発熱部材に隙間を空けて対向し、互いに隣接するもの同士で磁極の配置が交互に異なる。磁石保持部材は、永久磁石を保持し、非回転部に固定される。熱回収機構は、発熱部材に生じた熱を回収する。
本実施形態の発熱装置によれば、上述したように発熱部材に対向する磁石の磁極の配置が、互いに隣接する磁石同士で交互に異なる。そのため、発熱部材に生じる渦電流が大きくなり、十分な発熱が得られる。しかも、本実施形態の発熱装置では、発熱部材が切れ目を有する。したがって、発熱部材の熱膨張は、半径方向よりも切れ目の隙間を変化させる方向へ、すなわち、後述の通りに周方向又は軸方向へ優先的に生じる。そのため、発熱部材に過大な熱応力が生じにくい。その結果、発熱部材の変形が抑制され、熱エネルギを効率的に回収できる。
発熱部材の切れ目は、発熱部材の軸方向に沿って伸びてもよいし、発熱部材の軸方向から傾きをもって伸びてもよい。この場合、切れ目は複数設けられてもよい。複数の切れ目同士の周方向の間隔は等しい方が好ましい。
一方、発熱部材の切れ目は、発熱部材の軸方向に対してらせん状に伸びてもよい。
このような切れ目は、上述の軸方向の熱膨張により生じる発熱部材の熱応力を低減する発熱装置に適用してもよい。
上記の発熱装置は、風力発電設備、水力発電設備等のように流体運動エネルギを利用した発電設備に搭載することができる。また、上記の発熱装置は、車両に搭載することができる。いずれの場合でも、発熱装置は回転軸の運動エネルギを熱エネルギに変換して回収する。回収した熱エネルギは、例えば電気エネルギの生成に利用される。
以下に、図面を参照して、本発明の渦電流式発熱装置の実施形態について詳述する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の発熱装置の縦断面図である。図2は、第1実施形態の発熱装置の横断面図である。図1及び図2には、風力発電設備に搭載した発熱装置1を例示する。図1及び図2に示すように、第1実施形態の発熱装置1は、回転軸3と、発熱部材4と、複数の永久磁石5と、磁石保持部材6と、を備える。
回転軸3は、分割された第1回転軸3Aと第2回転軸3Bとを含む。すなわち、第1回転軸3Aは、第2回転軸3Bとつながっていない。第1回転軸3A及び第2回転軸3Bは、非回転部である固定の本体2に対し、軸受7を介して回転可能に支持される。第2回転軸3Bは、第1回転軸3Aと同軸上に配置される。第1実施形態の発熱装置1では、第1回転軸3Aは回転軸3の軸方向に固定され、第2回転軸3Bは回転軸3の軸方向に移動可能である。すなわち、第2回転軸3Bと本体2との間には隙間SPが設けられる。ここで、第1回転軸3Aが軸方向に移動可能で、第2回転軸3Bが軸方向に固定されていてもよい。要するに、第1回転軸3A及び第2回転軸3Bは、相対的に移動可能であればよい。第1回転軸3A及び第2回転軸3Bは、円板状の連結部材3Cを含む。
発熱部材4は、円筒形状である。発熱部材4は、第1回転軸3A及び第2回転軸3Bに固定される。より具体的には、発熱部材4は、連結部材3Cに固定される。図2に示すように、連結部材3Cには、軽量化及び熱回収のために、複数の貫通穴3Dが設けられる。磁石保持部材6は、発熱部材4の外側に配置され、本体2に固定される。磁石保持部材6は、円筒部材6aを含む。円筒部材6aは磁石5を保持する。
磁石5は、発熱部材4の外側に配置される。磁石5は、円筒部材6aの内周面に固定され、発熱部材4の外周面に対し隙間を空けて対向する。ここで、図2に示すように、磁石5は、円周方向にわたり配列される。これらの磁石5の磁極(N極、S極)の配置は、回転軸3を中心とする径方向であって、円周方向に隣接する磁石5同士で交互に異なる。このような磁石の配置の場合、磁石5を直接保持する円筒部材6aの材質は、強磁性材料である。
発熱部材4の材質、特に磁石5と対向する発熱部材4の外周面の表層部の材質は、導電性材料である。導電性材料としては、強磁性金属材料(例:炭素鋼、鋳鉄等)、弱磁性金属材料(例:フェライト系ステンレス鋼等)、又は非磁性金属材料(例:アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼、銅合金等)が挙げられる。
また、発熱部材4と磁石5との隙間には、円筒状の隔壁15が配置される。この隔壁15は本体2に固定され、発熱部材4を包囲する密閉容器を形成する。隔壁15の材質は非磁性材料である。磁石5から発熱部材4への磁界に悪影響を及ぼさないようにするためである。
回転軸3が回転すると、発熱部材4が回転軸3と一体で回転する(図1中の白抜き矢印参照)。これにより、磁石5と発熱部材4との間に相対的な回転速度差が生じる。このとき、図2に示すように、発熱部材4の外周面と対向する磁石5に関し、磁極(N極、S極)の配置は、回転軸3を中心とする径方向であって、円周方向に隣接する磁石5同士で交互に異なる。また、磁石5を保持する円筒部材6aが強磁性体である。
このため、磁石5からの磁束(磁界)は、次のような状況になる。互いに隣接する磁石5のうちの一方の磁石5のN極から出た磁束は、この磁石5に対向する発熱部材4に達する。発熱部材4に達した磁束は、他方の磁石5のS極に達する。他方の磁石5のN極から出た磁束は、円筒部材6aを通じて一方の磁石5のS極に達する。つまり、円周方向に隣接する磁石5同士、磁石5を保持する円筒部材6a、及び発熱部材4との間に、磁石5による磁気回路が形成される。このような磁気回路が、円周方向の全域にわたり、交互にその磁束の向きを逆向きにして形成される。そうすると、磁石5からの磁界が広がり、発熱部材4に到達する磁束密度が多くなる。
磁石5と発熱部材4との間に相対的な回転速度差が生じた状態において、磁石5から発熱部材4に磁界が作用すると、発熱部材4の外周面に渦電流が発生する。この渦電流と、磁石5からの磁束密度との相互作用により、フレミングの左手の法則に従い、回転軸3と一体で回転する発熱部材4には回転方向と逆向きの制動力が発生する。
更に、渦電流の発生により、制動力が発生すると同時に、発熱部材4に熱が発生する。上記のとおり、発熱部材4に到達する磁束密度が多いので、磁石5からの磁界の作用によって発熱部材4に生じる渦電流が大きくなり、十分な発熱が得られる。
発熱装置1は、発熱部材4に生じた熱を回収して活用するために、熱回収機構を備える。第1実施形態では、熱回収機構として、隔壁15と一体で密閉容器を構成する本体2に、密閉容器の内部空間、すなわち発熱部材4が存在する空間(以下、「発熱部材存在空間」ともいう)に繋がる入口11及び出口12が設けられる。この発熱部材存在空間の入口11及び出口12のそれぞれには、図示しない入側配管及び出側配管が接続される。入側配管及び出側配管は、図示しない蓄熱装置に接続される。発熱部材存在空間(密閉容器の内部空間)、入側配管、出側配管、及び蓄熱装置は一連の経路を形成し、この経路中を熱媒体が流通して循環する(図1中の実線矢印参照)。
発熱部材4に生じた熱は、発熱部材存在空間を流通する熱媒体に伝達される。発熱部材存在空間内の熱媒体は、発熱部材存在空間の出口12から排出され、出側配管を通じて蓄熱装置に導かれる。蓄熱装置は、熱交換によって熱媒体から熱を受け取って回収し、その熱を蓄える。蓄熱装置を経た熱媒体は、入側配管を通じ、入口11から発熱部材存在空間に戻る。このようにして、発熱部材4に生じた熱が回収される。
第1実施形態の発熱装置1においては、上記のとおり、発熱部材4で十分な発熱が得られる。したがって、回転軸3の運動エネルギを熱エネルギに有効に変換して回収することができる。
第1実施形態の発熱装置1は、風力発電設備に搭載される。すなわち、図1に示すように、発熱装置1の第1回転軸3Aの延長線上に、風車である羽根車20が設けられる。羽根車20の回転軸21は、固定の本体2に対し、軸受25を介して回転可能に支持される。
羽根車20の回転軸21と第1回転軸3Aとの間には、クラッチ装置23及び増速装置24が配置される。クラッチ装置23は以下の機能を有する。発熱装置1で発熱が必要な場合には、クラッチ装置23は、羽根車20の回転軸21と発熱装置1の第1回転軸3Aとを接続する。これにより、羽根車20の回転動力が発熱装置1に伝達される。蓄熱装置に蓄積された熱量が許容量に達し、発熱装置1で発熱の必要が無くなった場合、メンテナンスのために発熱装置1を停機する場合等には、クラッチ装置23は、羽根車20の回転軸21と発熱装置1の第1回転軸3Aとの接続を切る。これにより、羽根車20の回転動力が発熱装置1に伝達されない。このときに羽根車20が風力で自由に回転することのないように、羽根車20とクラッチ装置23との間に、羽根車20の回転を止める摩擦式、電磁式等のブレーキ装置22を設置するのが好ましい。第1回転軸3Aの回転速度は、増速装置24によって調整される。増速装置24には、例えば遊星歯車機構が適用される。
このような風力発電設備では、羽根車20が風力を受けて回転する(図1の白抜き矢印参照)。羽根車20の回転に伴って発熱装置1の第1回転軸3Aが回転する。これにより、発熱部材4で熱が発生し、発生した熱は蓄熱装置に回収される。すなわち、羽根車20の回転に基づく発熱装置1の第1回転軸3Aの運動エネルギの一部が熱エネルギに変換されて回収される。その際、羽根車20と発熱装置1との間には、特許文献1の風力発電設備のような油圧ポンプ及び油圧モータが無いため、エネルギの変換ロスが少ない。蓄熱装置に回収された熱は、例えば、熱素子、スターリングエンジン等による発電に利用される。
上記のとおり、発熱部材4に発生した渦電流により、発熱部材4が発熱する。このため、磁石5は発熱部材4からの輻射熱によって温度が上昇し、保有する磁力が低下するおそれがある。そこで、磁石5の温度上昇を抑制する工夫を施すことが望ましい。
この点、第1実施形態の発熱装置1では、発熱部材4からの輻射熱が密閉容器の隔壁15によって遮断される。これにより、磁石5の温度上昇を防止することができる。また、この場合、磁石5と隔壁15との間に、断熱材が充填されたり、磁石5と隔壁15との間が真空状態にされたりすることが好ましい。発熱部材4からの輻射熱をより確実に遮断することができるからである。
図3は、第1実施形態の発熱装置における発熱部材の好適な態様の一例を示す横断面図である。図3では、磁石5と対向する発熱部材4の外周面近傍を拡大して示す。図3に示すように、発熱部材4は、基材4aの外周面に、第1層4b、第2層4c及び酸化防止皮膜層4dが順に積層される。基材4aの材質は、熱伝導率の高い導電性金属材料(例:銅合金、アルミニウム合金等)である。第1層4bの材質は、強磁性金属材料(例:炭素鋼、鋳鉄等)である。第2層4cの材質は、非磁性金属材料又は弱磁性金属材料であり、特に第1層4bに比べて導電率の高い材料(例:アルミニウム合金、銅合金等)が望ましい。酸化防止皮膜層4dは、例えばNi(ニッケル)めっき層である。
基材4aと第1層4bとの間、第1層4bと第2層4cとの間、第2層4cと酸化防止皮膜層4dとの間には、それぞれ緩衝層4eが積層される。緩衝層4eの線膨張係数は、隣接する一方の材料の線膨張係数よりも大きく、他方の材料の線膨張係数よりも小さい。各層の剥離を防止するためである。緩衝層4eは、例えばNiP(ニッケル−リン)めっき層である。
このような積層構造によれば、磁石5からの磁界の作用によって発熱部材4に生じる渦電流がより大きくなり、高い制動力とより十分な発熱を得ることが可能になる。ただし、第2層4cは省いて構わないし、緩衝層4eも省いて構わない。このような構成は、後述する第2〜第4実施形態の発熱装置にも適用できる。
ところで、従来の風力発電設備に搭載される発熱装置では、発熱部材が固定される回転軸は、分割されていなかった。また、回転軸は軸方向の移動が許容されていなかった。そのため、発熱部材が高温になると、発熱部材が熱膨張し変形することがあった。この点について、図4を参照して説明する。
図4は、従来の風力発電設備に搭載される発熱装置の縦断面図である。従来の発熱装置100は、分割されていない回転軸300を備える。発熱部材400が高温になると、発熱部材400は熱膨張する。しかし、発熱部材400は、2つの連結部材300Cを介して回転軸300に固定される。さらに、回転軸300は、軸方向の移動が許容されていない。すなわち、発熱部材400は、連結部材300Cによって拘束されている。したがって、発熱部材400は高温になっても軸方向に膨張しにくいため、発熱部材400に熱応力が生じる。発熱部材400に生じる熱応力が過大になると、図4に示すように、発熱部材400は、樽形に変形する。これにより、発熱部材400と磁石500との間隔が変化するため、発熱部材400の発熱量が変化し、熱エネルギが効率的に回収されない。また、発熱部材400が損傷しやすい。
そこで、図1に示すように本実施形態の発熱装置1は、回転軸3が第1回転軸3Aと第2回転軸3Bとに分割される。さらに、第1回転軸3A及び第2回転軸3Bは、相対的に移動可能である。これにより、発熱部材が高温になっても、発熱部材が変形しにくい。この点について図5を参照して説明する。
図5は、図1の発熱装置において発熱部材が熱膨張したときの状態を示す縦断面図である。発熱部材4が高温になると、発熱部材4は軸方向に熱膨張する。このとき、第2部材3Bと本体2との間には隙間SPが存在するため、第2回転軸3Bは第1回転軸3Aに対して軸方向に移動可能である。そのため、第2回転軸3Bは発熱部材4の軸方向の熱膨張に追従して移動する(図5中の実線矢印参照)。これにより、発熱部材4は軸方向に拘束されないため、発熱部材4に熱応力は生じにくい。その結果、発熱部材4の変形が抑制され、熱エネルギを効率的に回収できる。
第1実施形態では、第2回転軸3Bが第1回転軸3Aに対して移動する場合を説明した。しかし、第1実施形態の発熱装置1は、第2回転軸3Bが第1回転軸3Aに対して移動する場合に限定されない。第1回転軸3Aが第2回転軸3Bに対して移動する構成としてもよい。要するに、第1回転軸3A及び第2回転軸3Bが相対的に移動できる構成であればよい。
[第2実施形態]
図1に示す発熱装置では、羽根車20から第1回転軸3Aに伝達されたトルクは、全て発熱部材4に負荷される。羽根車の直径が数十メートル以上の大型の風力発電設備では、羽根車の回転により発生するトルクが大きい。すなわち、大型の風力発電設備では、発熱部材4に負荷されるトルクが大きいため、発熱部材が破損する可能性がある。
図6は、第2実施形態の発熱装置の縦断面図である。第2実施形態の発熱装置1は、第1実施形態の発熱装置に伸縮部材が追加される。第2実施形態の発熱装置1のその他の構成は、第1実施形態の発熱装置と同じである。
伸縮部材8は、第1回転軸3Aと第2回転軸3Bとをつなぐ。より具体的には、伸縮部材8は、第1回転軸3Aと第2回転軸3Bを直接接続してもよいし、第1回転軸3A及び第2回転軸3Bそれぞれにつながる連結部材3Cに直接接続してもよい。また、伸縮部材8の数は、特に限定されない。すなわち、第1回転軸3Aのトルクの大きさ及び発熱部材4の強度を考慮して伸縮部材8の数は適宜決定される。
伸縮部材8は、例えば、2本の金属管をはめ込んだものである。発熱部材4の軸方向の熱膨張に追従して第2部材3Bが移動すると、伸縮部材8の一方の金属管が他方の金属管に対しスライドする。すなわち、伸縮部材8が伸びる。このような構成により、伸縮部材8は、発熱部材4の軸方向に伸縮可能である。したがって、伸縮部材8は発熱部材4の軸方向の熱膨張を拘束しないため、発熱部材4に熱応力は生じにくい。また、伸縮部材8の一端は第1回転軸3Aに固定され、他端は第2回転軸3Bに固定される。そのため、伸縮部材8が発熱部材4に負荷されるトルクの一部を負担できる。したがって、発熱部材4が破損しにくい。
[第3実施形態]
上述の実施形態では、発熱部材の軸方向への熱膨張を許容する発熱装置について説明した。以下の第3実施形態では、発熱部材の半径方向への熱膨張を抑制する発熱装置について説明する。
図4に示すように、従来の発熱部材400は円筒部材であり、周方向にわたり連続している。この発熱部材400は、連結部材300Cを介して回転軸300に取り付けられる。このため、発熱部材400の半径方向の膨張は、連結部材300Cによって拘束される。したがって、発熱部材400が半径方向に熱膨張すると、発熱部材400に熱応力が生じ、発熱部材400が変形することがある。
図7は、第3実施形態の発熱装置の発熱部材の斜視図である。第3実施形態の発熱部材4は、発熱部材4の一方の端部41から他方の端部42まで伸びる切れ目9を有する。図7では、発熱部材3が複数の切れ目9を有する場合を例示する。また、図7では、切れ目9が発熱部材4の軸方向に沿って伸びる場合を例示する。しかし、切れ目9の数及び伸びる方向は、図7に示す場合に限定されない。切れ目9は、1つであってもよい。切れ目9は、発熱部材4の軸方向に対して斜めに伸びていてもよい。また、図7では、切れ目9同士の発熱部材周方向の間隔が等しい場合を例示する。しかし、切れ目9同士の間隔は等間隔でなくてもよい。要するに、第3実施形態の発熱部材4は、全体として円筒形状であるが、周方向にわたり連続していない。図7に示すような発熱部材4では、切れ目9の領域において隙間が存在する。
図8は、図7の発熱部材が熱膨張した状態を示す斜視図である。図7に示す発熱部材4が高温になると、発熱部材4は、切れ目9の隙間があるために、半径方向よりも切れ目9の隙間を小さくする方向、すなわち周方向へ優先的に膨張する。これにより、発熱部材4の半径方向への変形が抑制されるため、熱エネルギを効率的に回収できる。
図7に示すように分割された発熱部材の場合、分割された発熱部材それぞれが連結部材3Cを介して回転軸3に固定される。また、切れ目9の数及び切れ目9の隙間の大きさは、特に限定されず、発熱部材の大きさ、熱膨張係数等を考慮して適宜設定される。
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態の発熱部材の斜視図である。第4実施形態の発熱部材4は、切れ目9が発熱部材4の軸方向に対してらせん状に伸びる点で第3実施形態の発熱部材と相違する。
図10は、図9の発熱部材が熱膨張した状態を示す斜視図である。図9に示す発熱部材4が高温になると、発熱部材4は、切れ目9がらせん状に伸びているため、切れ目9の隙間が広がる方向、すなわち軸方向へ優先的に膨張する。これにより、発熱部材4の半径方向への変形が抑制されるため、熱エネルギを効率的に回収できる。
第3及び第4実施形態のように切れ目8を有する発熱部材4は、上述した第1及び第2実施形態の発熱装置に適用することもできる。この場合、発熱部材の軸方向の熱膨張を許容すると同時に、半径方向の熱膨張を抑制できる。その結果、発熱部材4の変形がより抑制され、熱エネルギがより効率的に回収できる。
上記の実施形態では、いずれも磁石5は回転軸3を中心とする円周方向にわたり配列され、磁石5の磁極の配置は、回転軸3を中心とする径方向である。しかしながら、磁石5の配列及び磁極の配置は、上記実施形態の態様に限定されない。例えば、図11に示すように、円周方向にわたり配列された磁石5の磁極の配置は、回転軸3を中心とする円周方向であってもよい。この場合であっても、磁極の配置は円周方向に隣接する磁石5同士で交互に異なる。また、図12に示すように磁石5の配置は、軸方向にわたり配列されてもよい。この場合、磁極の配置は、回転軸3に沿った軸方向である。この場合であっても、磁極の配置は軸方向に隣接する磁石5同士で異なる。図11及び図12に示す発熱装置の場合、磁石5を直接保持する円筒部材6aの材質は、非磁性材料である。また、隣接する磁石5の間に、強磁性体からなるポールピース10が設けられる。
また、上記の発熱装置は、風力発電設備のみならず、水力発電設備等のように流体運動エネルギを利用した発電設備に搭載することができる。
更に、上記の発熱装置は、車両に搭載することができる。この場合、上記の発熱装置は、補助ブレーキとしての渦電流式減速装置とは別個に設けられてもよいし、補助ブレーキとして兼用されてもよい。補助ブレーキとして兼用される場合、制動と非制動を切り替えるスイッチ機構を設置すればよい。車両に搭載した発熱装置によって回収された熱は、例えば、車体内を暖めるための暖房機の熱源に利用されたり、コンテナ内を冷却するための冷凍機の熱源に利用されたりする。