JP6672246B2 - 光ファイバ付きフェルール及び光ファイバ付きフェルールの製造方法 - Google Patents

光ファイバ付きフェルール及び光ファイバ付きフェルールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光ファイバ付きフェルール及び光ファイバ付きフェルールの製造方法に関する。
光コネクタの一例として、例えばMPOコネクタ(JIS C5982に制定されるF13形多心光ファイバコネクタ)が知られている。このMPOコネクタでは、特許文献1に記載されているように、反射減衰量の特性を向上させるために、フェルールの接続端面が斜め研磨されているものがある。このように接続端面が斜め研磨されたフェルールにおいても、対向させた接続端面同士を突き合わせることによって、光ファイバの端面が物理的に接続(Physical Contact)されることになる。特許文献2では、斜め研磨されたフェルールの接続端面同士を突き合わせた際に、位置合わせ用のガイドピンとフェルールのガイド穴との間のクリアランスによって各フェルールが上下にずれることで、光ファイバの軸ずれが生じることが記載されている。
このような光ファイバの軸ずれ(光ファイバのコア同士の位置ずれ)に起因する接続損失の増大を抑制するため、フェルールが上下にずれる量を予め見込んで、光ファイバ穴の上下方向の位置をガイドピン穴中心軸よりも多少ずらした位置とすることがある。
特開2002−006177号公報 特開2005−181832号公報
このようなフェルールにおいても、接続端面から光ファイバ端部が突出している。フェルールの光ファイバ穴の上下方向の位置がガイドピン穴中心軸よりも多少ずらした位置となっているので、光ファイバ端部の頂点もガイドピン穴中心軸よりも多少ずらした位置となっている。したがって、光ファイバの端面同士がはじめに接触する段階では、光ファイバ端部の頂点同士がずれて接触する。このとき、光ファイバの端面同士が接触してから、予め見込んだ量だけ各フェルールを上下にずれることがある。しかし、フェルールがずれる方向の側に相手側の光ファイバ端部の頂点があるような場合、その頂点を乗り越えるようにしてフェルールをずらさなければならないことがある。このような場合、光ファイバの端面の間に働く摩擦力によって、予め見込んだ量ほどフェルールが上下にずれないことがあった。フェルールの光ファイバ穴が、フェルールの上下にずれる量を予め見込んだ位置に設けられているため、フェルールの接続端面同士を突き合わせた際に予め見込んだ量ほどフェルールが上下にずれない場合には、光ファイバの接続損失が増大してしまう。この結果、光ファイバの接続損失にばらつきが生じてしまい、低損失を安定的に実現することが困難になっていた。
本発明は、低損失を安定的に実現することを目的とする。
また、本発明の幾つかの実施形態は、複数の光ファイバ穴が形成され、前記光ファイバ穴の中心軸方向に垂直な面に対して傾斜したフェルール端面を備えるフェルールと、前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ挿入された複数の光ファイバとを有する光ファイバ付きフェルールであって、前記複数の光ファイバは、それぞれ前記フェルール端面から突出する突出部を備え、前記突出部の表面において前記フェルール端面から最も高い点が、前記フェルール端面に垂直な方向から前記突出部を見たときに、前記突出部の中心からの距離が50μm以上となるように位置し、かつ、前記複数の光ファイバが並ぶ方向から前記突出部を見たときに、前記突出部の前記中心に対して、前記傾斜したフェルール端面の突出側に位置しており、前記最も高い点から前記突出部の前記中心に向かう方向に、前記傾斜したフェルール端面からの前記突出部の高さが徐々に低くなることを特徴とする光ファイバ付きフェルールである。
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
本発明の幾つかの実施形態によれば、低損失を安定的に実現することができる。
図1Aは、第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1を有する光コネクタ50の斜視図である。図1Bは、第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1の斜視図である。 図2Aは、フェルール10A及びフェルール10Bがシフトする前の状態において、ガイドピン穴121の中心軸を含む面で切断した断面図である。図2Bは、図2Aにおいて、フェルール10A及びフェルール10Bがシフトした後の状態を示す要部拡大図である。 図3A〜図3Cは、第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1の接続時の様子を示すために、光ファイバ6の中心軸を含む面で切断した断面図である。図3Aは、光ファイバ6の突出部70同士が接触する前の状態を示す断面図である。図3Bは、光ファイバ6の突出部70同士が接触した後、各フェルール10がシフトする前の状態を示す断面図である。図3Cは、図3Bにおいて、各フェルール10がシフトした後の状態を示す断面図である。 図4は、第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1における、光ファイバ6の突出部70の形状を示す説明図である。 図5Aは、比較例の光ファイバ付きフェルール1における、光ファイバ6の突出部70の形状を示す説明図である。図5Bは、比較例の光ファイバ6の突出部70同士が接触した後、各フェルール10がシフトする前の状態を示す断面図である。図5Cは、図5Bにおいて、各フェルール10がシフトした後の状態を示す断面図である。 図6は、第2実施形態の光ファイバ6の突出部70の形状を示す説明図である。 図7は、光ファイバ付きフェルール1の製造方法(組み立て手順)のフロー図である。 図8A及び図8Bは、光ファイバ付きフェルール1の製造方法における、研磨工程の手順を示す図である。
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
複数の光ファイバ穴が形成され、前記光ファイバ穴の中心軸方向に対して傾斜したフェルール端面を備えるフェルールと、前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ挿入された複数の光ファイバとを有する光ファイバ付きフェルールであって、前記複数の光ファイバは、それぞれ前記フェルール端面から突出する突出部を備え、前記突出部の表面における各点の前記フェルール端面からの高さの差が100nm以内である範囲が、前記フェルール端面に垂直な方向から前記突出部を見たときの、前記突出部の中心から半径50μm以上の範囲であることを特徴とする光ファイバ付きフェルールが明らかとなる。このような光ファイバ付きフェルールによれば、低損失を安定的に実現することができる。
複数の光ファイバ穴が形成され、前記光ファイバ穴の中心軸方向に対して傾斜したフェルール端面を備えるフェルールと、前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ挿入された複数の光ファイバとを有する光ファイバ付きフェルールであって、前記複数の光ファイバは、それぞれ前記フェルール端面から突出する突出部を備え、前記突出部の端面において前記フェルール端面から最も高い点が、前記フェルール端面に垂直な方向から前記突出部を見たときの、前記突出部の中心からの距離が50μm以上であることを特徴とする光ファイバ付きフェルールが明らかとなる。このような光ファイバ付きフェルールによれば、低損失を安定的に実現することができる。
複数の光ファイバ穴が形成され、前記光ファイバ穴の中心軸方向に垂直な面に対して傾斜したフェルール端面を備えるフェルールと、前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ挿入された複数の光ファイバとを有する光ファイバ付きフェルールの製造方法であって、前記複数の光ファイバの前記フェルール端面から突出する突出部とともに、前記フェルール端面を研磨すること、前記フェルール端面を研磨した後に、前記突出部を研磨することを特徴とする光ファイバ付きフェルールの製造方法が明らかとなる。このような光ファイバ付きフェルールの製造方法によれば、低損失を安定的に実現することができる。
前記突出部の表面における各点の前記フェルール端面からの高さの差が100nm以内である範囲が、前記フェルール端面に垂直な方向から前記突出部を見たときの、前記突出部の中心から半径50μm以上の範囲であることが望ましい。これにより、低損失を安定的に実現することができる。
前記突出部の端面において前記フェルール端面から最も高い点が、
前記フェルール端面に垂直な方向から前記突出部を見たときの、前記突出部の中心からの距離が50μm以上であることが望ましい。これにより、低損失を安定的に実現することができる。
===第1実施形態===
<光ファイバ付きフェルール1の全体構成>
図1Aは、第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1を有する光コネクタ50の斜視図である。図1Bは、第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1の斜視図である。
図1Aに示す光コネクタ50は、光ファイバ付きフェルール1と、光ファイバ付きフェルール1を収容するハウジング51と、ハウジング51に外挿されるカップリング52とを有する。光コネクタ50は、MPOコネクタ(JIS C5982やIEC 61754−7などに制定)である。
以下の説明では、図に示すように各方向を定義する。すなわち、光ファイバ穴122の中心軸方向(長手方向)を「前後方向」とし、フェルール10の接続端面123の側を「前」とし、逆側(フェルール10に取り付けられる光ファイバテープ5の延び出る側)を「後」とする。また、フェルール10の厚み方向を「上下方向」とし、フェルールの傾斜端面において前側(相手方コネクタの側)に突出する側を「上」とし、逆側を「下」とする。また、前後方向及び上下方向に垂直な方向を「左右方向」とし、後側から前側を見たときの右側を「右」とし、左側を「左」とする。なお、フェルール10の幅方向が「左右方向」となり、2つのガイドピン穴121の並ぶ方向が「左右方向」となる。また、複数の光ファイバ穴122の並び方向が「左右方向」となる。すなわち、光ファイバテープ5を構成する複数の光ファイバ6の並び方向が「左右方向」となる。
図1Bに示すように、本実施形態の光ファイバ付きフェルール1は、複数の光ファイバ6で構成される光ファイバテープ5が接続されたフェルールである。光ファイバ付きフェルール1は、光ファイバ6と、フェルール10とを有する。
図1Bに示すように、本実施形態の光ファイバ6は、光ファイバテープ5として構成されている。光ファイバテープ5は、複数(ここでは12心)の光ファイバ6をテープ状に並列させて連結した部材である。なお、光ファイバテープ5を構成する光ファイバ6の心数は、図1Bに示した例に限られない。例えば、光ファイバテープ5を構成する光ファイバ6の心数は4心であってもよい。また、光ファイバ6は、間欠固定型の光ファイバテープを採用することも可能である。さらに、光ファイバ6は、図1Bに示す光ファイバテープ5のようなテープ心線ではなく、単心の光ファイバであってもよい。
フェルール10は、光ファイバ6の端部を保持する部材である。フェルール10は、前述した光コネクタ50のハウジング51に後退可能に収容されている。また、フェルール10は、ハウジング51に収容されたスプリング(不図示)の反発によって前側に付勢されている。なお、フェルール10は、樹脂により一体成形されている。
フェルール10の後側には、ブーツ9が取り付けられている。ブーツ9は、光ファイバの曲がりを緩やかにするための部材である。ブーツ9は、例えばゴムやエラストマー等の可撓性を有する材料で構成することが好ましいが、樹脂や金属等の可撓性の低い材料で構成してもよい。ブーツ9によって、光の伝送損失が低減され、若しくは光ファイバ6自体が保護される。
フェルール10は、鍔部11と、本体部12とを備えている。
鍔部11は、後述する本体部12の外周面から外側に突出する部位である。鍔部11は、光コネクタ50のハウジング51の内壁に形成された突起物(不図示)に接触(当接)する。これにより、フェルール10の前抜けが規制されている。
本体部12は、光ファイバ6の端部を保持する部位である。本体部12の内部において、複数の光ファイバ6の端部が保持されることになる。本体部12は、2つのガイドピン穴121と、複数の光ファイバ穴122と、接続端面123とを有する。
ガイドピン穴121は、ガイドピン13(図1A及び図1Bでは不図示、後述する図2A及び図2B参照)の挿入される穴である。光コネクタ50が雄型の場合には、ガイドピン穴121からガイドピン13の端部が突出するように、ガイドピン穴121に予めガイドピン13が挿入されている。光コネクタ50が雌型の場合には、ガイドピン穴121に、相手方コネクタのガイドピン13が挿入されることになる。コネクタ接続時にガイドピン13とガイドピン穴121とが嵌合することによって、フェルール10の位置合わせが行われることになる。このため、ガイドピン穴121は、ガイドピン13とともに位置決め部を構成する部位である。
光ファイバ穴122は、光ファイバ6の端部を挿入するための穴である。各光ファイバ穴122には、それぞれ光ファイバ6の端部が固定されている。本実施形態では、光ファイバ穴122に挿入される光ファイバ6はシングルモード型光ファイバであるが、マルチモード型光ファイバでも良い。
接続端面123は、相手方のフェルール10と接続する接続端面である。接続端面123は、本体部12の前側の端面として形成されている。なお、接続端面123のことを、フェルール端面と称することがある。図1Bに示すように、接続端面123は、直角面124と、斜面125とが形成されている。
直角面124は、接続端面123の上部に形成された面である。直角面124は、光ファイバ穴122の中心軸方向に垂直な面と平行である。直角面124は、下部において斜面125に連続して設けられている。但し、直角面124は設けられなくてもよい。この場合、接続端面123は、後述する斜面125のみで構成されることになる。
斜面125は、光ファイバ穴122の中心軸方向に垂直な面に対して傾斜した端面である。斜面125は、左右方向から見たときに、上下方向に対して傾斜している。より具体的には、図1Bに示すように、斜面125は、直角面124の側(ハウジング51のキー511の側)ほど前側に突出するように、上下方向に対して角度θだけ傾斜している。なお、傾斜角度θは、例えば8度である。以下の説明では、斜面125を有する接続端面123を「傾斜端面」と称することがある。なお、本実施形態のフェルール10は、JIS C 5982やIEC 61754−7などで規定された傾斜端面を有するフェルールとほぼ同様の構成であり、ガイドピン穴121や光ファイバ穴122等の寸法や位置関係は、規格で規定された通りである。但し、本実施形態のフェルール10は、上記規格で規定された以外のガイドピン穴121や光ファイバ穴122等の寸法や位置関係を有してもよい。
<フェルール10のシフトについて>
図2A及び図2Bは、フェルールの軸ずれ(シフト)の説明図である。図2Aは、フェルール10A及びフェルール10Bがシフトする前の状態において、ガイドピン穴121の中心軸を含む面で切断した断面図である。図2Bは、図2Aにおいて、フェルール10A及びフェルール10Bがシフトした後の状態を示す要部拡大図である。
以下の説明では、一方の光ファイバ付きフェルール1の部材・部位には、符号に添え字「A」を付け、この光ファイバ付きフェルール1と接続する他方の光ファイバ付きフェルール1の部材・部位には、符号に添え字「B」を付けている。また、光ファイバ付きフェルール1A及び光ファイバ付きフェルール1Bに共通の部材・部位を指すときには、添え字を付けないことがある。例えば、フェルール10A及びフェルール10Bの両方のことを指して単に「フェルール10」と呼ぶことがある。
既に説明したように、光コネクタ50の接続時には、ガイドピン13とガイドピン穴121とが嵌合することによって、フェルール10の位置合わせが行われる。但し、ガイドピン穴121の直径はガイドピン13の直径よりも大きくなるように形成されており、ガイドピン穴121とガイドピン13との間にはクリアランス(隙間)が形成されている。一方、フェルール10は傾斜端面を有しており、光コネクタ50の接続時には、前側に押圧された状態で、フェルール10の傾斜端面同士が突き合わせられることになる。この結果、フェルール10が、相手方光コネクタ50の傾斜端面に沿って滑るように変位し、フェルール10は、上下方向に相対的にずれることになる。以下の説明では、このようにフェルール10が相対的にずれる動作のことを「シフト」と称することがある。
このため、本実施形態のフェルール10の光ファイバ穴122は、図2Bに示す位置ズレ量を予め見込んで、ガイドピン穴121の中心軸よりも上下方向にずれて配置されている。図2Bに示すように、ガイドピン13の下縁がガイドピン穴121の下縁に接触するまで、フェルール10が上下方向にシフトすることが見込まれるため、ガイドピン13の直径をD1、ガイドピン穴121の直径をD2としたとき、光ファイバ穴122は、ガイドピン穴121の中心軸よりも(D2−D1)/2に相当するオフセット量の分だけ上下方向にずれて配置されている。なお、光ファイバ穴122の開口部がガイドピン穴121に対して傾斜している場合には、斜め研磨時に生じる偏心分も考慮する必要があるため、オフセット量は、(D2−D1)/2に限られるものではない。
このように光ファイバ穴122が、フェルール10のシフト量を予め見込んだ位置に設けられているため、フェルール10の接続端面123同士を突き合わせた際に予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にシフトしない場合には、光ファイバ6の接続損失が増大してしまうことになる。例えば、光ファイバ6の端面の間に働く摩擦力によって、予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にシフトしないことがある。すなわち、前述したように、ガイドピン13の下縁がガイドピン穴121の下縁に接触するほど、フェルール10が上下方向にシフトしないことがある。
<光ファイバ6の突出部70について>
図3A〜図3Cは、第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1の接続時の様子を示すために、光ファイバ6の中心軸を含む面で切断した断面図である。図3Aは、光ファイバ6の突出部70同士が接触する前の状態を示す断面図である。図3Bは、光ファイバ6の突出部70同士が接触した後、各フェルール10がシフトする前の状態を示す断面図である。図3Cは、図3Bにおいて、各フェルール10がシフトした後の状態を示す断面図である。図4は、第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1における、光ファイバ6の突出部70の形状を示す説明図である。なお、図4では、図の右側には光ファイバ6の長手方向の断面図が示されており、図の左側には、光ファイバ6の突出部70を接続端面123に垂直な方向から見たときの平面図が示されている。
本実施形態の光ファイバ付きフェルール1では、光ファイバ6の端部において、平面部72を有している。すなわち、図3Aに示すように、本実施形態の光ファイバ付きフェルール1は、光ファイバ6の接続端面123から突出した突出部70を有し、その突出部70に平面部72が形成されている。平面部72は、光ファイバ6の突出部70における、平面状に形成された部位である。また、平面部72は、接続端面123と平行な面で形成されている。
本実施形態では、突出部70における平面部72の範囲は、突出部70の表面のうち、平面状に形成された部位の範囲である。この平面状に形成された部位の範囲は、突出部70の表面上で一定の平面度を有する部分の範囲である。一定の平面度を有する部分の範囲とは、突出部70の表面上のある点における、接続端面123からの高さをH(図4の右側の図参照)としたときに、突出部70の表面上の各点の高さHの差が100nm以内の範囲である。また、図4の左側の図に示すように、突出部70を接続端面123に垂直な方向から見たとき、突出部70は、略円形状又は略楕円形状に形成されている。そして、突出部70における平面部72の範囲は、突出部70を接続端面123に垂直な方向から見たとき、突出部70の中心に配置された円の範囲となる。本実施形態では、突出部70を接続端面123に垂直な方向から見たときの平面部72の範囲は、突出部70の中心C(円又は楕円の中心)から一定の半径Rを有する円の範囲である。
図3Aに示すように、コネクタ接続時に、作業者は、フェルール10の傾斜端面同士を突き合わせることになる。作業者は、接続する光コネクタ50(図1A参照)を両側からアダプタ(不図示)にそれぞれ嵌合することにより、双方の光コネクタ50のコネクタ接続を行う。この際、光コネクタ50のキーをアダプタのキー溝(不図示)に合わせることによって、光コネクタ50の上下の向きを合わせることになる。このアダプタのキー溝は、双方の光コネクタ50の上下方向が反転して突き合わさるように設けられている。つまり、一方の光コネクタ50A(フェルール10A)が嵌合する側のキー溝と、他方の光コネクタ50B(フェルール10B)が嵌合する側のキー溝とは、上下方向に反転して設けられている。したがって、作業者が光コネクタ50のキーをアダプタのキー溝(不図示)に合わせるように嵌合するだけで、図3Aに示すように双方のフェルール10の上下方向が反転して突き合わさるようになっている。既に説明したように、フェルール10の傾斜端面は、上側(キー511の側)ほど前側(相手方コネクタの側)に突出するように形成されている。このため、双方のフェルール10の上下方向が反転して突き合わさるようにすることで、双方のフェルール10の傾斜端面同士が面で接触するように突き合わせることができる。
図3Bに示すように、光ファイバ6の端面同士がはじめに接触する段階では、光ファイバ6の平面部72同士が接触する。既に説明したように、平面部72は、接続端面123と平行な面で形成されている。したがって、光ファイバ6の端面同士が接触するとき、突出部70の平面部72同士が面で接触する状態となる。この後、フェルール10がシフトする際に、突出部70の平面部72同士が面で接触したまま相対的に移動することになる。突出部70の平面部72同士が面で接触したまま相対的に移動することで、光ファイバ6の端面の間に働く摩擦力を抑制することができる。これは、フェルール10がシフトする方向の側に相手側の光ファイバ6の突出部70の頂点がないので、その頂点を乗り越える際の摩擦力の影響を受けないためである。この結果、図2Bに示すように、ガイドピン13の下縁がガイドピン穴121の下縁に接触するまでフェルール10を上側に変位させることができるので、予め見込んだ程度にフェルール10を上方向にずらすことができる。
<比較例の光ファイバ付きフェルール1について>
図5Aは、比較例の光ファイバ付きフェルール1における、光ファイバ6の突出部70の形状を示す説明図である。図5Bは、比較例の光ファイバ6の突出部70同士が接触した後、各フェルール10がシフトする前の状態を示す断面図である。図5Cは、図5Bにおいて、各フェルール10がシフトした後の状態を示す断面図である。図5Aでは、図の右側には光ファイバ6の長手方向の断面図が示されており、図の左側には、光ファイバ6の突出部70を接続端面123に垂直な方向から見たときの平面図が示されている。
比較例の光ファイバ付きフェルール1においても、対向させたフェルール10の接続端面123同士を突き当てて、光ファイバ6の端面同士を物理的に接続(Physical Contact)することによって、光ファイバ6同士を光接続する。そして、比較例の接続端面123は、光ファイバ穴122の中心軸方向に垂直な面に対して8度傾斜する斜面125を有している。また、光ファイバ6の端面同士を物理的に接続するために、光ファイバ6の端部は、光ファイバ突出研磨(PC研磨)により、突出部70が設けられている。
なお、以下の説明では、光ファイバ6の突出部70の表面上において、フェルール10の接続端面123から見て最も高い点を、突出部70の頂点71とする。図5Aに示すように、本比較例では、接続端面123に垂直な方向から突出部70を見たときに、頂点71が突出部70の略中心付近に形成されている。
図5Bに示すように、シフト前のフェルール10では、光ファイバ6の突出部70の頂点71とは別の点で接触している。具体的には、光ファイバ6同士の接触点は、光ファイバ6Aの頂点71Aから見て上側にあり、光ファイバ6Bの頂点71Bから見て下側にある。さらに、図5Bでは、シフトする方向を矢印で示している。これによれば、光ファイバ6Aの突出部70Aが、光ファイバ6Bの突出部70Bの頂点71Bを乗り越えるようにしてフェルール10Aをシフトさせることになる。一方、光ファイバ6Bの突出部70Bが、光ファイバ6Aの突出部70Aの頂点71Aを乗り越えるようにしてフェルール10Bをシフトさせることになる。
このとき、互いの光ファイバ6の突出部70の頂点71を乗り越えるようにシフトするため、光ファイバ6の端面の間に摩擦力により、予め見込んだ量ほどフェルール10がシフトしないことがある。前述の通り、フェルール10の光ファイバ穴122が、フェルール10の上下にずれる量を予め見込んだ位置に設けられているため、予め見込んだ量ほどフェルール10がシフトしないことになる。その結果、図3Cに示すように、シフト後のフェルール10は、依然として光ファイバ6のコア同士がずれたままであることがある。これにより、光ファイバ6の接続損失が増大してしまう。そして、光ファイバ6の接続損失にばらつきが生じてしまい、低損失を安定的に実現できない。
一方、先に述べた第1実施形態の光ファイバ付きフェルール1では、光ファイバ6の突出部70に平面部72が設けられているので、光ファイバ6の端面の間に働く摩擦力を抑制することができ、予め見込んだ程度にフェルール10をシフトさせることができる。
===第2実施形態===
図6は、第2実施形態の光ファイバ6の突出部70の形状を示す説明図である。なお、図6では、図の右側には光ファイバ6の長手方向の断面図が示されており、図の左側には、光ファイバ6の突出部70を接続端面123に垂直な方向から見たときの平面図が示されている。
第2実施形態の光ファイバ6は、第1実施形態の光ファイバ6と同様に、フェルール10によりその端部を保持され、接続端面123から突出部70が突出している。第2実施形態では、突出部70を接続端面123に垂直な方向から見たとき、突出部70における頂点71の位置が突出部70の中心から離れて設けられている。さらに、頂点71は、上側(傾斜端面の前側に突出している側)に形成されている。つまり、図6に示す頂点71の場所は、突出部70の中心Cからフェルール10のシフト方向(図6では下方向)とは逆の側に一定間隔(D)を空けて設けられている。これによれば、光ファイバ6の突出部70が、相手方の光ファイバ6の突出部70の頂点71を乗り越えずにフェルール10をシフトさせることができる。その結果、光ファイバ6の端面の間に働く摩擦力を抑制することができ、予め見込んだ程度にフェルール10をシフトさせることができる。
===実験例===
<平面部72の範囲と接続損失との関係>
表1は、光ファイバ6に平面部72を設けた場合(第1実施形態)の、平面部72の範囲と、接続損失との関係を示す表である。なお、光ファイバ付きフェルール1は、図1Bに示すものと同様の構成であり、光ファイバ6の直径が125μm、光ファイバテープ5の光ファイバ6の心数が12心、フェルール10が12心用のシングルモード用フェルールとする光ファイバ付きフェルール1とした。また、測定に使用した光信号の波長は1310nmであり、フェルール10を有する光コネクタ50同士を3回着脱した場合の接続損失の最大変動量を計測した。全ての複数の光ファイバ6の突出部70に平面部72を設け、平面部72の範囲の半径を10μm、30μm、50μm、70μmで変化させた。すなわち、図4に示す半径Rの値を、10μm、30μm、50μm、70μmで変化させた。なお、既に説明したように、平面部72の範囲は、接続端面123からの突出部70の表面における各点の高さの差が100nm以内である範囲とする。また、平面部72の範囲の半径とは、接続端面123に垂直な方向から突出部70を見たときの、突出部70の中心からの距離である。
Figure 0006672246
表1に示すように、平面部72の範囲の半径が50μm以上の場合、接続損失の変動特性が良好であった。これに対し、平面部72の範囲の半径が30μm以下の場合、接続損失の変動特性が不良であった。この理由は、平面部72の範囲が大きくなるほど、光ファイバ6の突出部70同士による摩擦力のフェルール10のシフトに対する影響が少ないためである。逆に、平面部72の範囲が小さくなるほど、光ファイバ6の突出部70同士による摩擦力のフェルール10のシフトに対する影響が大きくなり、フェルール10のシフトを阻害し、光ファイバ6のコア同士がずれたままであることがある。これにより、接続損失を抑制することができないからと考えられる。
<頂点71の突出部70中心からのずれと接続損失との関係>
表2は、光ファイバ6の突出部70における頂点71の位置を突出部70の中心から離れて設けた場合(第2実施形態)の、光ファイバ6の頂点71の突出部70中心からのずれ量と、接続損失との関係を示す表である。なお、光ファイバ付きフェルール1は、前述の表1で説明したものと同様である。また、フェルール10を有する光コネクタ50同士を3回着脱した場合の接続損失の最大変動量を計測した。全ての複数の光ファイバ6において、頂点71を突出部70中心からずれて設け、頂点71の突出部70中心からのずれ量を10μm、30μm、50μm、70μmで変化させた。
Figure 0006672246
表2に示すように、突出部70中心からのずれ量が50μm以上の場合、接続損失の変動特性が良好であった。これに対し、突出部70中心からのずれ量が30μm以下の場合、接続損失の変動特性が不良であった。この理由は、突出部70中心からのずれ量が大きくなるほど、光ファイバ6の突出部70同士による摩擦力のフェルール10のシフトに対する影響が少ないためである。逆に、突出部70中心からのずれ量が小さくなるほど、光ファイバ6の突出部70同士による摩擦力のフェルール10のシフトに対する影響が大きくなり、フェルール10のシフトを阻害し、光ファイバ6のコア同士がずれたままであることがある。これにより、接続損失を抑制することができないからと考えられる。
===光ファイバ付きフェルール1の製造方法===
図7は、光ファイバ付きフェルール1の製造方法(組み立て手順)のフロー図である。図8A及び図8Bは、光ファイバ付きフェルール1の製造方法における、研磨工程の手順を示す図である。
まず、作業者は、フェルール10を準備し(S101)、予めブーツ9を挿入させた光ファイバテープ5の各光ファイバ6をフェルール10の光ファイバ穴122にそれぞれ挿入する(S102)。また、ブーツ9をフェルール10のブーツ穴14(図3A〜図3C参照)に挿入する。このとき、光ファイバ6の端面を接続端面123から突出させる。
次に、作業者は、フェルール10の後部において光ファイバ6をフェルール10に対して固定する(S103)。具体的には、作業者は、フェルール10の充填部126(図3A〜図3C参照)に熱硬化性の接着剤を充填する。さらに、ブーツ9と光ファイバ6との間、ブーツ9とフェルール10(ブーツ穴14の内壁面)との間及び光ファイバ穴122と光ファイバ6との間の各部に熱硬化性の接着剤を浸透させる。作業者は、接着剤を加熱して硬化させ、これにより光ファイバ6をフェルール10に対して接着固定する。なお、接着剤の塗布方法は、充填部126を用いるものに限られるものではない。
次に、作業者は、フェルール10の接続端面123を研磨する(S104)。図8Aでは、研磨後の接続端面123の形状を示している。なお、図8Aにおいて斜線で示された部分は、研磨により取り除かれた部分である。研磨により、光ファイバ6の突出部70は略半球状となる。これは、比較例の光ファイバ6の突出部70の形状と同様である。
次に、作業者は、光ファイバ6の突出部70を研磨する(S105)。図8Bでは、研磨後の突出部70の形状を示している。なお、図8Bにおいて斜線で示された部分は、研磨により取り除かれた部分である。図8に示した突出部70は、前述の第1実施形態の平面部72を有するように形成されている。また、前述の第2実施形態で説明した突出部70における頂点71の位置を突出部70の中心からずらす場合でも、この工程により形成することができる。なお、インターフェロメーター等の光干渉計頂点71の位置を検出しつつ、頂点71の位置を突出部70の中心からずらす突出部70を形成する。
===その他の実施形態===
<付与部>
既に説明したように、フェルール10の接続端面123同士を突き合わせた際に予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にシフトしない場合には、光ファイバ6の接続損失が増大してしまうことがある。前述の実施形態では、光ファイバ6の端面の間に働く摩擦力によって、予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にシフトしない場合について説明した。しかし、フェルール10の傾斜端面の間に働く摩擦力によっても、予め見込んだ量ほどフェルール10が上下にシフトしないことがある。
そこで、本実施形態の光コネクタ50は、以下に説明するように、コネクタ接続時にフェルール10に上向きの力を付与する付与部をさらに備えていてもよい。付与部がフェルール10に上向きの力を付与することによって、予め見込んだ程度にフェルール10が上下方向にずれた状態(図2B参照)で光コネクタ50が相手方コネクタと接続できる。これにより、光ファイバの接続損失を抑制でき、低損失を安定的に実現することができる。
前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
1 光ファイバ付きフェルール、5 光ファイバテープ、6 光ファイバ、
9 ブーツ、10 フェルール、11 鍔部、
12 本体部、121 ガイドピン穴、122 光ファイバ穴、
123 接続端面、124 直角面、125 斜面、126 充填部
13 ガイドピン、14 ブーツ穴
50 光コネクタ、51 ハウジング、511 キー、52 カップリング、
70 突出部、71 頂点、72 平面部

Claims (2)

  1. 複数の光ファイバ穴が形成され、前記光ファイバ穴の中心軸方向に垂直な面に対して傾斜したフェルール端面を備えるフェルールと、
    前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ挿入された複数の光ファイバと
    を有する光ファイバ付きフェルールであって、
    前記複数の光ファイバは、それぞれ前記フェルール端面から突出する突出部を備え、
    前記突出部の表面において前記フェルール端面から最も高い点が、
    前記フェルール端面に垂直な方向から前記突出部を見たときに、前記突出部の中心からの距離が50μm以上となるように位置し、
    かつ、前記複数の光ファイバが並ぶ方向から前記突出部を見たときに、前記突出部の前記中心に対して、前記傾斜したフェルール端面の突出側に位置しており、
    前記最も高い点から前記突出部の前記中心に向かう方向に、前記傾斜したフェルール端面からの前記突出部の高さが徐々に低くなる
    ことを特徴とする光ファイバ付きフェルール。
  2. 複数の光ファイバ穴が形成され、前記光ファイバ穴の中心軸方向に垂直な面に対して傾斜したフェルール端面を備えるフェルールと、
    前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ挿入された複数の光ファイバと
    を有する光ファイバ付きフェルールの製造方法であって、
    前記複数の光ファイバの前記フェルール端面からそれぞれ突出する突出部とともに、前記フェルール端面を研磨すること、
    前記フェルール端面を研磨した後に、前記突出部を研磨すること、
    前記突出部を研磨することにより、
    前記突出部の表面において前記フェルール端面から最も高い点が、
    前記フェルール端面に垂直な方向から前記突出部を見たときに、前記突出部の中心からの距離が50μm以上となるように位置し、
    かつ、前記複数の光ファイバが並ぶ方向から前記突出部を見たときに、前記突出部の前記中心に対して、前記傾斜したフェルール端面の突出側に位置しており、
    前記最も高い点から前記突出部の前記中心に向かう方向に、前記傾斜したフェルール端面からの前記突出部の高さが徐々に低くなる
    を特徴とする光ファイバ付きフェルールの製造方法。
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