JP6671106B2 - 鉄道車両用ヨーダンパ装置 - Google Patents

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本発明は、鉄道車両に用いられるヨーダンパ装置に関する。特に、本発明は、鉄道車両が軌道の直線区間を高速走行する際に、車体の上下振動を容易に低減して鉄道車両の乗り心地を向上することが可能な鉄道車両用ヨーダンパ装置に関する。
従来、鉄道車両には、高速走行時の台車の蛇行動を抑制するためにヨーダンパが用いられる場合がある。ヨーダンパは、車体と台車とを連結するように台車の左右それぞれに取付けられ、軌道不整やレールの継ぎ目などの軌道からの加振によって発生するヨーイング(台車が車体に対して上下軸周りに回転振動する現象)を速やかに減衰させるために用いられている。
鉄道車両によっては、1つのヨーダンパが故障した場合等に備えて、台車の左右それぞれに1対のヨーダンパ(1台の台車に計4つのヨーダンパ)が取り付けられる場合がある。
従来、上記の場合におけるヨーダンパの配置態様として、図2に示すように、1対のヨーダンパ1a、1bの伸縮方向が水平方向(台車3の前後方向)となるようにして両者を上下方向に並設する態様と、図3に示すように、1対のヨーダンパ1a、1bの伸縮方向が水平方向(台車3の前後方向)となるようにして両者を台車3の前後方向に並設する態様とが知られている。
いずれの態様についても、ヨーダンパ1a、1bの減衰力は台車3の前後方向にのみ作用し、高速走行時の台車3の蛇行動が抑制される。
ここで、鉄道車両の乗り心地は、軌道不整やレールの継ぎ目などの軌道からの加振や、車輪の偏心による加振によって、台車を介して発生する車体の上下振動の影響が大きい。
ヨーダンパは、台車の回転振動を低減するのみならず、車体の上下振動を低減する役割をも果たすものの、車体の上下振動を低減するのに有効な配置態様は明らかになっていない。
鉄道車両の乗り心地を向上させる方法として、特許文献1には、車体曲げ振動低減のため、台車と輪軸の等価質量、軸箱前後支持剛性および車体と台車間の前後系結合剛性を所定の式に基づいて最適化することを特徴とする鉄道車両用車体の弾性振動低減方法が提案されている(特許文献1の請求項1等)。
具体的には、特許文献1の図2に示す鉄道車両モデルのパラメータのうち、台車の全等価質量と、回転慣性を考慮した輪軸の等価質量とを既知としたとき、軸箱の前後支持剛性、ヨーダンパとその緩衝ゴムや牽引リンクの緩衝ゴム等の車体と台車間の前後系合成結合剛性を調整して、特許文献1の[数1]の右辺に示す値を左辺に示す車体の曲げ振動の固有振動数fに一致させることで、車体の上下振動(車体の曲げ振動)を低減している。
この特許文献1に記載の方法は、ヨーダンパに関わる諸元のみならず、軸箱や牽引リンクの諸元についても適正化を考えなければならないため、パラメータの同定が難しいという問題がある。
特開2004−203171号公報
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、鉄道車両が軌道の直線区間を高速走行する際に、車体の上下振動を容易に低減して鉄道車両の乗り心地を向上することが可能な鉄道車両用ヨーダンパ装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明者は、車体と、車体に連結された前後一対の台車とを具備する鉄道車両において、車体と1対の台車のそれぞれとの間にヨーダンパが取り付けられている場合を想定し、この鉄道車両が、軌道不整を有する直線区間を高速走行する際の運動解析を行って鋭意検討を重ねた。具体的には、各台車の左右それぞれに1対のヨーダンパが取り付けられる場合を想定し、1対のヨーダンパの配置態様を変えて、それぞれの配置態様での上記の運動解析を行った。その結果、以下の知見を得た。
(1)1対のヨーダンパを上下方向に並設するよりも、台車の前後方向に並設する方が、車体の上下振動(具体的には、上下方向の振動加速度)を低減可能である。
(2)1対のヨーダンパを台車の前後方向に並設する場合において、各ヨーダンパの伸縮方向の両端部のうち、車体に取り付けられた端部の方を台車に取り付けられた端部よりも上方に位置させることで、車体の上下振動(具体的には、上下方向の振動加速度)を低減可能である。
本発明は、上記の本発明者の知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、1つの車体と該1つの車体のみに連結された前後1対の台車とを具備する鉄道車両に用いられるヨーダンパ装置であって、前記1対の各台車の前後方向に並設された1対のヨーダンパを前記各台車の左右それぞれに備え、前記1対のヨーダンパのそれぞれは、その伸縮方向の両端部のうち、一方の端部が前記車体に取り付けられ、他方の端部が前記各台車に取り付けられており、前記一方の端部の方が前記他方の端部よりも上方に位置し、前記1対のヨーダンパは、前記各台車の前後方向に直交する水平方向から見て、逆ハの字状に取り付けられていることを特徴とする鉄道車両用ヨーダンパ装置を提供する。
本発明に係るヨーダンパ装置においては、1対のヨーダンパのそれぞれが、その伸縮方向の両端部のうち、一方の端部が車体に取り付けられ、他方の端部が台車に取り付けられている。そして、一方の端部(車体に取り付けられた端部)の方が他方の端部(台車に取り付けられた端部)よりも上方に位置している。そして、1対のヨーダンパは、各台車の前後方向に直交する水平方向から見て、逆ハの字状に取り付けられている。これにより、図2、3を参照して前述したヨーダンパの配置態様に比べて、車体の上下振動を低減可能である。
本発明に係るヨーダンパ装置によれば、鉄道車両が軌道の直線区間を高速走行する際に、車体の上下振動を簡易に低減して鉄道車両の乗り心地を向上することが可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。 図2は、比較例1の鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。 図3は、比較例2の鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。 図4は、比較例3、4の鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。 図5は、各ヨーダンパ装置を用いた場合における鉄道車両の乗り心地レベルを比較した結果を示す。
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
<本実施形態に係るヨーダンパ装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る鉄道車両用ヨーダンパ装置(以下、適宜、単に「ヨーダンパ装置」という)100は、車体2と、車体2に連結された台車3とを具備する鉄道車両に用いられるものである。図1では、便宜上、1台の台車3のみを図示しているが、実際には、車体2に前後1対の台車3が連結されている。
台車3は、前後1対の輪軸3a、3bと、台車枠3cと、車体3と台車枠3cとを連結し車体3を支持する空気ばね3dとを備えている。台車100が備える上記の構成要素及びその他の構成要素は、周知慣用の台車と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
ヨーダンパ装置100は、各台車3の前後方向に並設された1対のヨーダンパ1a、1bを各台車3の左右それぞれに備えている(図1は、台車3の左右のいずれか一方に取り付けられた1対のヨーダンパ1a、1bを図示している)。
ヨーダンパ1a、1bは、内部で粘性流体が流通する際の粘性抵抗により、伸縮する際に抵抗力(減衰力)を付与するものである。ヨーダンパ1a、1bの更に具体的な構成は、公知のヨーダンパと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
なお、ヨーダンパ1a、1bとしては、減衰力可変型のヨーダンパを用いることも可能である。この場合、ヨーダンパ装置100は、ヨーダンパ1a、1bに加えて、ヨーダンパ1a、1bの減衰力を制御する制御手段(図示せず)を備えることになる。具体的には、この制御手段として、車体2に取り付けられたシーケンサ等から構成されるコントローラ(図示せず)と、ヨーダンパ1a、1bに取り付けられた電磁弁(図示せず)とを具備する構成を例示できる。電磁弁は、コントローラからの制御信号に基づき、ヨーダンパ1a、1b内部の粘性流体の流通をオン・オフすることで、ヨーダンパ1a、1bの減衰力を有効(減衰力が作用する状態)にしたり、無効(実質的に減衰力が作用しない状態)にする機能を果たす。
本実施形態に係るヨーダンパ装置100が備える1対のヨーダンパ1a、1bのそれぞれは、その伸縮方向の両端部E1、E2のうち、一方の端部E1が車体2に取り付けられ、他方の端部E2が台車3(台車枠3c)に取り付けられており、一方の端部E1の方が他方の端部E2よりも上方に位置することを特徴としている。
具体的には、1対のヨーダンパ1a、1bが、台車3の前後方向(図1の紙面の左右方向)に直交する水平方向(図1の紙面に垂直な方向)から見て、逆ハの字状に取り付けられている。
本実施形態に係るヨーダンパ装置100が備える1対のヨーダンパ1a、1bは上記のように配置されているため、車体2の上下振動を容易に低減可能である。
以下、本実施形態に係るヨーダンパ装置100の効果をより具体的に説明するため、比較対象とする比較例1〜4のヨーダンパ装置について説明する。
<比較例1のヨーダンパ装置の構成>
図2は、比較例1の鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。
図2に示すように、比較例1のヨーダンパ装置は、前述のように1対のヨーダンパ1a、1bの伸縮方向が水平方向(台車3の前後方向)となるようにして両者が上下方向に並設されている点が本実施形態に係るヨーダンパ装置100と異なる。比較例1のヨーダンパ装置では、各ヨーダンパ1a、1bの車体2に取り付けられた一方の端部E1と、台車3(台車枠3c)に取り付けられた他方の端部E2とが、上下方向について同一の位置に取り付けられている。
比較例1のヨーダンパ装置のその他の点については、本実施形態に係るヨーダンパ装置100と同様であるため、説明を省略する。
<比較例2のヨーダンパ装置の構成>
図3は、比較例2の鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。
図3に示すように、比較例2のヨーダンパ装置は、前述のように1対のヨーダンパ1a、1bの伸縮方向が水平方向(台車3の前後方向)となるようにして両者が台車3の前後方向に並設されている(一直線上に並設されている)点が本実施形態に係るヨーダンパ装置100と異なる。比較例2のヨーダンパ装置では、各ヨーダンパ1a、1bの車体2に取り付けられた一方の端部E1と、台車3(台車枠3c)に取り付けられた他方の端部E2とが、上下方向について同一の位置に取り付けられている。
比較例2のヨーダンパ装置のその他の点については、本実施形態に係るヨーダンパ装置100と同様であるため、説明を省略する。
<比較例3、4のヨーダンパ装置の構成>
図4は、比較例3、4の鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。
図4に示すように、比較例3、4のヨーダンパ装置では、各ヨーダンパ1a、1bの車体2に取り付けられた一方の端部E1が、台車3(台車枠3c)に取り付けられた他方の端部E2よりも下方に位置する。
具体的には、1対のヨーダンパ1a、1bが、台車3の前後方向(図4の紙面の左右方向)に直交する水平方向(図4の紙面に垂直な方向)から見て、ハの字状に取り付けられている。
比較例3のヨーダンパ装置では、一方の端部E1が他方の端部E2よりも60mm下方に位置し、比較例4のヨーダンパ装置では、一方の端部E1が他方の端部E2よりも120mm下方に位置している。
比較例3、4のヨーダンパ装置のその他の点については、本実施形態に係るヨーダンパ装置100と同様であるため、説明を省略する。
<本実施形態に係るヨーダンパ装置の評価>
以下、各ヨーダンパ装置を用いた場合における鉄道車両の乗り心地を実際に運動解析によって評価した結果について説明する。運動解析を行う鉄道車両のモデルとしては、いずれのヨーダンパ装置を用いる場合であっても、車体2に前後1対の台車3が連結され、台車3を剛体要素、車体2を弾性体要素としたモデルを用いた。そして、軌道不整を有する直線区間を高速走行する際の運動解析を行った。
図5は、各ヨーダンパ装置を用いた場合における鉄道車両の乗り心地レベルを比較した結果を示す。具体的には、運動解析によって、直線区間を走行中の鉄道車両における車体2の上下方向の振動加速度を算出し、この算出した振動加速度から乗り心地レベルを算出した。なお、運動解析は、汎用機構解析ソフトを利用して実施可能であり、例えば、シムパックジャパン(株)製マルチボディダイナミクス解析ツール「SIMPACK」を利用することが可能である。また、乗り心地レベルとしては、特許文献1や「鉄道車両のダイナミクス」(日本機械学会編)に記載の乗り心地レベルL(dB)を用いた。図5には、比較例1のヨーダンパ装置を用いた場合の乗り心地レベルを基準に正規化したものを示している。図5に示す「実施例1」は、本実施形態に係るヨーダンパ装置100において、一方の端部E1が他方の端部E2よりも60mm上方に位置し、「実施例2」は、本実施形態に係るヨーダンパ装置100において、一方の端部E1が他方の端部E2よりも120mm上方に位置している場合の結果を示す。
図5に示すように、本実施形態に係るヨーダンパ装置(実施例1、2)によれば、比較例1〜4のヨーダンパ装置を用いた場合に比べて、乗り心地レベルが2%程度低減されることが分かった。
1a、1b・・・ヨーダンパ
2・・・車体
3・・・台車
100・・・ヨーダンパ装置

Claims (1)

  1. 1つの車体と該1つの車体のみに連結された前後1対の台車とを具備する鉄道車両に用いられるヨーダンパ装置であって、
    前記1対の各台車の前後方向に並設された1対のヨーダンパを前記各台車の左右それぞれに備え、
    前記1対のヨーダンパのそれぞれは、その伸縮方向の両端部のうち、一方の端部が前記車体に取り付けられ、他方の端部が前記各台車に取り付けられており、前記一方の端部の方が前記他方の端部よりも上方に位置し、
    前記1対のヨーダンパは、前記各台車の前後方向に直交する水平方向から見て、逆ハの字状に取り付けられていることを特徴とする鉄道車両用ヨーダンパ装置。
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