JP6668850B2 - ポリアセタール樹脂組成物の製造方法及びポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents

ポリアセタール樹脂組成物の製造方法及びポリアセタール樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法、及びそれによって得られるポリアセタール樹脂組成物に関する。
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性などのバランスに優れるため、電気機器、自動車部品、精密機械部品など、構造材料や機構部品として広く使用されている。しかし、ポリアセタール樹脂は、単独では熱安定性に乏しく、ポリマー末端からの解重合反応や熱分解反応による主鎖切断によって容易に分解することが知られている。また、解重合反応や熱分解反応で生じたホルムアルデヒドがさらに酸化されてギ酸が生成して、ポリアセタール樹脂の分解反応が促進されることも知られている。そのため、上述した解重合反応や熱分解反応を抑制する目的で、ポリアセタール樹脂は、通常、立体障害性フェノールなどの酸化防止剤を添加したポリアセタール樹脂組成物として使用されている。
特開2007−112959号公報 特開2006−282836号公報 特開2006−299107号公報 特開2006−257166号公報
しかし、そのような酸化防止剤を添加したポリアセタール樹脂組成物であっても、長期保管あるいは高温・多湿の環境下で保管すると、成形に使用した際にホルムアルデヒドが多量に発生して、臭気の原因となることがあり、市場において更なる改善が求められている。そのような改善方法のひとつとして、ポリアセタール樹脂中のギ酸エステル末端基の含有量を低減する検討が行われている。
例えば、特許文献1は、ギ酸エステル末端基(ホルミル末端基)を、ベタイン、ベタイン誘導体、アミンオキシド、及びヒドラジウム塩で分解処理して低減させる方法を開示している。
また、特許文献2は、ポリカルボン酸の四級アンモニウム塩及び/又はアミノカルボン酸の四級アンモニウム塩を用いて、ギ酸エステル末端基を分解処理する方法を開示している。
また、特許文献3は、炭酸モノエステル及び/又は炭酸水素金属塩、酸性エノール系化合物、フェノール系化合物、アルコール系化合物、酸性アゾール化合物、及び有機イオウ化合物、有機リン化合物、有機ホウ素化合物から選ばれた非カルボン酸系化合物の四級アンモニウム塩を用いてギ酸エステル末端基を分解処理する方法を開示している。
また、特許文献4は、酸性環状アミド化合物の四級アンモニウム塩を用いてギ酸エステル末端基を分解処理する方法を開示している。
しかし、本発明者らが検討したところ、上述した特許文献の方法では、高温・多湿の環境下で保管した際のホルムアルデヒドの発生量の低減は、十分ではなかった。
すなわち、本発明の課題は、ギ酸エステル末端基の含有量が少なく、高温・多湿の環境下で長期間保管しても、ホルムアルデヒドの発生量が少ない、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法、及びそれによって得られるポリアセタール樹脂組成物を提供することにある。また、製造安定性や着色の問題もない、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法、及びそれによって得られるポリアセタール樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリアセタール樹脂に対して、特定量のヒドリド還元剤を添加して溶融混練することで、ギ酸エステル末端基の含有量が少なく、高温・多湿の環境下で長期間保管してもホルムアルデヒドの発生量が少ないポリアセタール樹脂組成物が得られ、更に、製造安定性や着色の問題もないことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下である。
〔1〕ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドリド還元剤(B)0.001〜1.0質量部を添加して溶融混練する、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
〔2〕前記ヒドリド還元剤(B)が水素化ホウ素ナトリウムである、〔1〕に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
〔3〕ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)0.01〜10.0質量部を、更に添加する、〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
〔4〕〔1〕〜〔3〕に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物であって、かつ該ポリアセタール樹脂組成物中の前記ヒドリド還元剤(B)及びその分解生成物の合計含有量が、ヒドリド還元剤(B)換算量で、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.001〜1.0質量部である、ポリアセタール樹脂組成物。
〔5〕〔6〕に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体。
本発明によれば、ギ酸エステル末端基の含有量が少なく、高温・多湿の環境下で長期間保管してもホルムアルデヒドの発生量が少ない、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法、及びそれによって得られるポリアセタール樹脂組成物を提供できる。また、製造安定性や着色の問題もない、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法、及びそれによって得られるポリアセタール樹脂組成物を提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、ポリアセタール樹脂(A)に対して特定量のヒドリド還元剤(B)を添加して溶融混練する、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法、及びそれによって得られるポリアセタール樹脂組成物に関する。すなわち、ポリアセタール樹脂(A)に対して特定量のヒドリド還元剤(B)を添加して溶融混練することにより、高温・多湿の環境下で長期間保管してもホルムアルデヒドの発生量が少ないポリアセタール樹脂組成物とすることができる。その理由は限定されないが、主として次のような理由によると考えられる。
一般に、ポリアセタール樹脂は、酸化防止剤を添加したポリアセタール樹脂組成物であっても、長期保管あるいは高温・多湿の環境下で保管すると、成形に使用した際にホルムアルデヒドが多量に発生して、臭気の原因となることがある。また、高温・多湿の環境での使用の際に、ホルムアルデヒドの発生量が増加することがある。これは、ポリアセタール樹脂のポリマー末端に存在するギ酸エステル基(本明細書では、ポリマー末端に存在するギ酸エステル基のことを、「ギ酸エステル末端基」ということもある)に由来すると考えられる。
ギ酸エステル末端基がホルムアルデヒドの発生原因となるメカニズムとしては、例えば、以下のメカニズムが挙げられる(これだけに特定されるものではない)。通常、ポリアセタール樹脂は、ポリマー末端にギ酸エステル末端基を有する。このギ酸エステル末端基は、長期保管あるいは高温・多湿の環境下での保管により、徐々に加水分解され、ポリマー末端には新たにヘミホルマール基(ヘミホルマール末端基)が生成する。このヘミホルマール末端基は、熱的に不安定なので、高温・多湿の環境下で長期間保管した後に、さらに多くのホルムアルデヒドを発生させることになる。
したがって、長期保管あるいは高温・多湿の環境下で保管したポリアセタール樹脂、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを成形に用いると、成形時の加熱によって、ギ酸エステル末端基から生じたヘミホルマール末端基が分解し、成形品内にホルムアルデヒドを保持するため、ホルムアルデヒド臭気が問題となる。
これに対して、ポリアセタール樹脂(A)に対して特定量のヒドリド還元剤(B)を添加して溶融混練すると、ポリアセタール樹脂(A)中のギ酸エステル末端基が還元されて、高温・多湿の環境下でも分解しない形態になり、これによって、上述したギ酸エステル末端基の加水分解で始まるホルムアルデヒド発生のメカニズムが進まなくなると考えられる。また、ヒドリド還元剤(B)も、溶融混練によって高温・多湿の環境下でポリアセタール樹脂組成物の安定性を損なわない形態の分解生成物となることも、本発明の効果がより発揮される理由として考えられる。更に、溶融混練の際に添加するヒドリド還元剤(B)の量を特定量とすることにより、ポリアセタール樹脂組成物製造時の発泡や、得られるポリアセタール樹脂組成物の着色の点でも、良好となる。
以下、本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に使用できる各成分について説明する。
<ポリアセタール樹脂(A)>
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に使用できるポリアセタール樹脂(A)は、アセタール構造:−O−CRH−(ここで、Rは、水素原子、有機基を示す)を繰り返し単位に有する高分子であり、通常はRが水素原子であるオキシメチレン基(−OCH−)を主たる構成単位とするものである。すなわち、本発明のポリアセタール樹脂(A)は、この繰り返し単位のみからなるアセタールホモポリマー以外に、前記オキシメチレン基以外の構成単位を1種以上含むコポリマー(ブロックコポリマー)やターポリマー等も含み、更には線状構造のみならず、グリシジルエーテル化合物、エポキシ化合物、アリルエーテル化合物などをコモノマー及び/又はターモノマーに用いることで生成する分岐、架橋構造を有していてもよい。前記オキシメチレン基以外の構成単位としては、例えば、オキシエチレン基(−OCHCH−又は−OCH(CH)−)、オキシプロピレン基(−OCHCHCH−、−OCH(CH)CH−又は−OCHCH(CH)−)、オキシブチレン基(−OCHCHCHCH−、−OCH(CH)CHCH−、−OCHCH(CH)CH−、−OCHCHCH(CH)−、−OCH(C)CH−又は−OCHCH(C)−)等の炭素数2以上10以下の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が挙げられ、中でも炭素数2以上4以下の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が好ましく、特にオキシエチレン基(−OCHCH−)が好ましい。また、ポリアセタール樹脂(A)中における、オキシメチレン基以外の構成単位(オキシアルキレン基)の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
前記ポリアセタール樹脂(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の任意の方法によって製造すればよい。例えば、オキシメチレン基と、炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を構成単位とするポリアセタール樹脂(A)の製造方法としては、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のオキシメチレン基の環状アセタールと、エチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキソカン、1,3−ジオキセパン等の炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を含む環状アセタールとを共重合することによって製造することができる。中でも本発明に用いるポリアセタール樹脂(A)としては、トリオキサンやテトラオキサン等の環状アセタールと、エチレンオキサイド又は1,3−ジオキソランとの共重合体であることが好ましく、中でもトリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体であることが特に好ましい。
例えば、本発明のポリアセタール樹脂(A)は、オキシメチレン基の環状アセタールと、コモノマーである炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を含む環状アセタールとを、重合触媒を用いて塊状重合させる方法で得ることができる。重合触媒及び重合成長末端の失活処理のために、必要に応じて反応停止剤を用いてもよい。また、ポリアセタール樹脂(A)の分子量調節のために、必要に応じて分子量調節剤を用いてもよい。本発明のポリアセタール樹脂(A)の製造に用いることができる重合触媒、反応停止剤、分子量調節剤の種類や量は、本発明の効果を阻害しない限りにおいては特に限定されるものではなく、従来公知の任意の重合触媒、反応停止剤、分子量調節剤を適宜使用することができる。
前記重合触媒としては特に限定されるものではないが、例えば、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五塩化リン、五フッ化リン、五フッ化ヒ素、及び五フッ化アンチモンなどのルイス酸、並びにこれらルイス酸の錯化合物または塩化合物が挙げられる。また、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸などのプロトン酸;パークロル酸と低級脂肪族アルコールのエステルなどのプロトン酸のエステル;パークロル酸と低級脂肪族カルボン酸との混合無水物などのプロトン酸の無水物なども挙げられる。このほかに、トリエチルオキソニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルメチルヘキサフルオロアルゼナート、アセチルヘキサフルオロボラート、ヘテロポリ酸またはその酸性塩、イソポリ酸またはその酸性塩、パーフルオロアルキルスルホン酸またはその酸性塩などが挙げられる。中でも、三フッ化ホウ素を含む化合物が好ましく、エ−テル類との配位錯体である三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートが特に好ましい。
前記重合触媒の使用量は特に限定されるものではないが、トリオキサンとコモノマーの合計の全モノマー1molに対して、通常1.0×10−8〜2.0×10−3molであり、好ましくは5.0×10−8〜8.0×10−4mol、特に好ましくは5.0×10−8〜1.0×10−4molの範囲である。
前記反応停止剤としては特に限定されるものではないが、例えば、三価の有機リン化合物、アミン化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。これらの反応停止剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、三価の有機リン化合物、三級アミン、ヒンダードアミンが好ましい。
前記反応停止剤の使用量は、重合触媒を失活させるのに十分な量であれば特に制限はないが、重合触媒に対するモル比として、通常1.0×10−1〜1.0×10の範囲である。
前記分子量調節剤としては特に限定されるものではないが、例えば、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラール、オキシメチレンジ−n−ブチルエーテルなどが挙げられる。中でもメチラールが好ましい。これらの分子量調節剤の使用量は、目標とする分子量に応じて適宜決められる。通常、全モノマーに対して0〜0.1質量%の範囲で添加量が調整される。
<ヒドリド還元剤(B)>
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に使用できるヒドリド還元剤(B)は、ギ酸エステル末端基を還元することができる水素供与体であれば特に限定されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、シアン水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、ジボラン、水素化イソブチルアルミニウムが挙げられる。なかでも、水素化ホウ素ナトリウムが、ギ酸エステル末端基の還元処理を安定的に行え、高温・多湿の環境下で保管してもポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生量が少なくできるので、特に好ましい。また、水素化ホウ素ナトリウムの分解生成物は、ポリアセタール樹脂組成物の安定性を損なわない点でも、特に好ましい。上述したヒドリド還元剤(B)は、1種類を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
ポリアセタール樹脂(A)へのヒドリド還元剤(B)の添加量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜1.0質量部であり、好ましくは0.005〜0.5質量部であり、特に好ましくは0.01〜0.3質量部である。ヒドリド還元剤(B)の添加量が0.001質量部以上であれば、溶融混練の際にポリアセタール樹脂組成物の発泡を起こさずにギ酸エステル末端基の還元処理を完全に行うことができる。一方、添加量が1.0質量部以下であれば、ポリアセタール樹脂組成物の黄変色を伴わずにギ酸エステル末端基の還元処理を完全に行うことができる。
<立体障害性フェノール(C)>
本発明においては、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)を更に添加して溶融混練してもよい。これは、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)は、ポリアセタール樹脂にもともと含まれているヘミホルマール末端基並びにギ酸エステル末端基が加水分解して生じたヘミホルマール末端基の酸化分解を抑制できるからである。すなわち、ヒドリド還元剤(B)とエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)を併用することにより、得られるポリアセタール樹脂組成物におけるギ酸エステル末端基由来のホルムアルデヒドの発生と、ヘミホルマール末端基由来のホルムアルデヒドの発生の両方を相乗的に抑制することができる。
本発明の製造方法で使用できる、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)は、ヒドリド還元剤(B)で還元されるエステル基を有しない立体障害性フェノールであれば特に限定されないが、ヒドリド還元剤(B)で還元されるエステル基以外の官能基も有しない立体障害性フェノールが好ましい。そのような立体障害性フェノールとしては、例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(BASF社製、Irganox1330(登録商標))、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(ADEKA社製、AO−30)が挙げられ、これらの立体障害性フェノールが特に好ましい。これらは、1種類を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
ポリアセタール樹脂(A)へのエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)の添加量は、特に限定されるものではないが、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10.0質量部が好ましく、0.01〜2.0質量部がより好ましく、0.02〜1.0質量部が特に好ましい。エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)の添加量が0.01質量部以上であれば、熱安定性が改善され、添加量が10.0質量部以下であれば、顕著な金型汚染を伴わずに熱安定性を改善できる。
<その他の添加してもよい任意成分>
また、本発明を実施するとき、本発明の目的を損なわない範囲内で、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)(以下、「他の立体障害性フェノール」ともいう);窒素含有化合物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、脂肪酸塩、炭酸塩、無機酸塩、アルコキシド及び鉱物からなる群から選ばれる1種以上の金属含有化合物を更に添加することができる。
他の立体障害性フェノールは、特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が挙げられる。これら、他の立体障害性フェノールは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
他の立体障害性フェノールの添加量は、特に限定されるものではないが、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜3.0質量部であり、より好ましくは、0.05〜2.0質量部であり、特に好ましくは0.1〜1.0質量部である。他の立体障害性フェノールの添加量が0.01質量部以上であれば、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性が改善され、添加量が3.0質量部以下であれば、金型汚染を改善することができる。
窒素含有化合物は、特に限定されないが、例えば、アミノ置換トリアジン化合物、ポリアミド樹脂、ヒンダードアミン化合物が挙げられる。
窒素含有化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜5.0質量部であり、より好ましくは0.01〜3.0質量部であり、特に好ましくは0.02〜2.0質量部である。窒素含有化合物の添加量が0.01質量部以上であれば、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性が改善され、添加量が5.0質量部以下であれば、引張伸びや耐衝撃性の著しい低下を伴わずにポリアセタール樹脂組成物の熱安定性を改善することができる。
アミノ置換トリアジン化合物は、特に限定されないが、例えば、グアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N”−トリフェニルメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンなどのメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのアルキル化メラミン類、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)などが挙げられる。中でも、メラミン、メチロールメラミン、アルキル化メラミン、ベンゾグアナミン、及び水溶性のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。上記したアミノ置換トリアジン化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアミノ置換トリアジン化合物は、熱安定剤として使用される。
ポリアミド樹脂は、分子中に2個以上のアミド結合を有する樹脂であれば特に限定されないが、例えばナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、これらの3元共重合体、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマー等が挙げられる。これらの中では、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂又はポリアミドエラストマーが特に好ましい。これらのポリアミド樹脂は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂とは、重合脂肪酸とジアミンとの重縮合体で構成されるポリアミド樹脂を言う。
重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の重合体、又はこの重合体を水素添加して得られるものであり、重合脂肪酸としては、例えば10〜24の炭素数を有し、二重結合又は三重結合を1個以上有する一塩基性脂肪酸の二量体(ダイマー酸)又はその水素添加物が挙げられる。ダイマー酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸及びエルカ酸等の二量体が挙げられる。
ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン及びメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
ポリアミドエラストマーとは、ハードセグメントとソフトセグメントとを有し、ハードセグメントがポリアミドで構成され、ソフトセグメントがポリアミド以外のポリマーで構成されるポリアミド樹脂を言う。ハードセグメントを構成するポリアミドとしては、例えばナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、これらの3元共重合体、重合脂肪酸系ポリアミド樹脂等が挙げられる。ポリアミド以外のポリマーとしては、例えば脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリエーテルが挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。脂肪族ポリエーテルとしては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。
ヒンダードアミン化合物としては特に限定されないが、例えば、N,N’,N”,N’ ’ ’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(BASF,Chimassorb(登録商標) 2020 FDL)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ)ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物(BASF,Tinuvin(登録商標) 622 SF)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、及び1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられる。その中でも、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びコハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール(BASF,Tinuvin(登録商標) 622 SF)の重縮合物が好ましい。上記したヒンダードアミン化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのヒンダードアミン化合物は、光安定剤、酸化防止剤として使用される。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、脂肪酸塩、炭酸塩、無機酸塩、アルコキシド及び鉱物からなる群から選ばれる1種以上の金属含有化合物における無機酸塩としては、リン酸塩、ケイ酸塩、ほう酸塩などが挙げられ、アルコキシドとしてはメトキシド、エトキシドなどが挙げられる。これらの中で好ましいものは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、脂肪酸塩、炭酸塩、無機酸塩、あるいはアルコキシドであり、より好ましいものは、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、または炭酸マグネシウムである。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、脂肪酸塩、炭酸塩、無機酸塩、アルコキシド及び鉱物からなる群から選ばれる1種以上の金属含有化合物の添加量は特に限定されるものではないが、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.001〜5.0質量部、特に好ましくは0.01〜3.0質量部である。
また、本発明を実施するとき、本発明の目的を損なわない範囲内で、各種の酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、核剤、充填剤、顔料、界面活性剤、帯電防止剤などを更に添加してもよい。
<ポリアセタール樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、上述したポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドリド還元剤(B)0.001〜1.0質量部を添加して溶融混練するのであれば、特に限定されるものではなく、従来公知のポリアセタール樹脂組成物の製造方法を使用できる。例えば、上述したポリアセタール樹脂(A)、ヒドリド還元剤(B)、及び必要に応じて添加されるエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)や上述した任意成分(その他の添加してもよい任意成分)を、任意の順序で混合、溶融混練することによって製造できる。なかでも、ポリアセタール樹脂(A)、ヒドリド還元剤(B)、及び必要に応じてエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)を混合、溶融混練して得られる樹脂組成物に、必要に応じて上述した任意成分を添加、溶融混練することが、高温・多湿の環境下で長期間保管してもホルムアルデヒドの発生量が少ないというポリアセタール樹脂(A)とヒドリド還元剤(B)を溶融混練して得られる効果に加えて、必要に応じて添加したエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)や上述した任意成分がもたらす効果が加わることがあるので、より好ましい。なお、溶融混練とは、例えば、シリンダー温度をポリアセタール樹脂の融点以上に設定した二軸押出機内で、融解状態のポリアセタール樹脂と各種添加剤とを、混合して練ることを意味する。
溶融混練の温度、圧力の条件は、従来公知のポリアセタール樹脂組成物の製造方法にしたがって適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、溶融混練の温度は、ポリアセタール樹脂(A)の溶融温度以上、270℃以下が好ましく、190℃以上、250℃以下が特に好ましい。また、溶融混練時の圧力は、6.7KPa以上、66.7KPa以下が好ましく、13.3KPa以上、40.0KPa以下が特に好ましい。溶融混練を行う時間(溶融混練装置内の滞留時間)は特に限定されるものではなく、好ましくは、1〜60分、特に好ましくは1〜40分である。溶融混練の雰囲気は、特に限定されるものではなく、空気雰囲気下、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことができるが、窒素などの不活性ガスの雰囲気下、上述した圧力範囲となるように、脱気しながら行うのが好ましい。
溶融混練に用いられる装置は、特に限定されるものではなく、従来からこの種の樹脂組成物の製造に用いられている一軸又は二軸押出し機などの溶融混練装置などを用いることができる。溶融混練の方法も特に限定されるものではなく、例えば、上述した一軸又は二軸押出し機を用いて、上述した温度、圧力下で脱揮しながら、連続的に押出し成形して、ポリアセタール樹脂組成物(ペレット)を得ることができる。
具体的には、例えば、ポリアセタール樹脂(A)に対して、所定量のヒドリド還元剤(B)を添加し、所望により更に、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)や上述した任意成分等を添加した後、タンブラー型ブレンダー等によって混合する。次いで得られた混合物を1軸又は2軸押出し機で溶融混練してストランド状に押出し、ペレット化することにより、所望の組成のポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
また別法として、ポリアセタール樹脂(A)に対して、ヒドリド還元剤(B)を添加、混合した後、溶融混練してペレット化する。これに所望により更に、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)や上述した任意成分等を添加した後、再度混合、溶融混練してペレット化することにより、所望の組成のポリアセタール樹脂組成物を得ることもできる。また、ペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂組成物を直接、射出成形品、ブロー成形品、または押出成形品などにすることもできる。
<ポリアセタール樹脂組成物>
本発明の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物は、該ポリアセタール樹脂組成物中に上述したヒドリド還元剤(B)及びその分解生成物を含む。添加したヒドリド還元剤(B)は、すべて分解している必要はなく、本発明のポリアセタール樹脂組成物は未反応のヒドリド還元剤(B)を含んでいてもよい。ヒドリド還元剤(B)の分解生成物の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドリド還元剤が金属水素化物の場合、金属の酸化物、水酸化物、ギ酸塩などが挙げられる。また、ヒドリド還元剤(B)が水素化ホウ素ナトリウムの場合は、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムが部分的に酸化された化合物など、ナトリウム及びホウ素の酸化物、水酸化物、ギ酸塩等である。
また、本発明の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物中のヒドリド還元剤(B)及びその分解生成物の合計含有量は、ヒドリド還元剤(B)換算量で、上述したポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.001〜1.0質量部であり、好ましくは0.005〜0.5質量部であり、特に好ましくは0.01〜0.3質量部である。
本発明の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物は、更に、上述したエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)を含んでいてもよい。エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)の種類や、含有量は、上述したエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)の種類、添加量のところでの説明と同様である。
また、本発明の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、他の立体障害性フェノール、窒素含有化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、脂肪酸塩、炭酸塩、無機酸塩、アルコキシド及び鉱物からなる群から選ばれる1種以上の金属含有化合物を、更に含んでいてもよい。他の立体障害性フェノール、窒素含有化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、脂肪酸塩、炭酸塩、無機酸塩、アルコキシド及び鉱物からなる群から選ばれる1種以上の金属含有化合物の種類や、含有量は、上述と同様である。
<ポリアセタール樹脂組成物成形体及びその用途>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、公知のポリアセタール樹脂の成形加工法に従って、種々の形態に成形加工することができる。本発明のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体としては、ペレット、丸棒、厚板、シート、チューブ、円筒状や方形状の容器といった形状が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本発明のポリアセタール樹脂組成物及びその成形体は、従来からポリアセタール樹脂組成物の用途として知られる、機械、電気、自動車、建材その他の各種部品として使用できる。特に本発明の成形体は、高温・多湿の環境下においてもホルムアルデヒドの発生量が抑制できるので、高温・多湿環境下で使用される車載部品や建材への用途として好適である。
以下、本発明について実施例、比較例を示して、その実施形態と効果について具体的に説明をするが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
実施例および比較例のポリアセタール樹脂組成物は、以下のようにして製造した。
<ポリアセタール樹脂(A)の製造>
実施例および比較例で用いたポリアセタール樹脂(A)は次のようにして製造した。温度を65℃に設定したジャケットとセルフクリーニング型パドルを有する二軸の連続重合機に、トリオキサン100質量部と1,3−ジオキソラン4質量部、重合触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを全モノマー(トリオキサン及び1,3−ジオキソラン)1molに対して0.05mmolとなる量をベンゼン溶液として、並びに分子量調節剤としてメチラールを全モノマーに対して500ppmとなる量をベンゼン溶液として、連続供給し、これらの原料の連続重合機内の滞在時間が20分となるようにして、連続的に重合を行った。
得られた重合反応生成物に、重合触媒として使用した三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートの2倍モル量のトリフェニルホスフィンをベンゼン溶液として添加した。重合触媒を失活させた後、重合物を粉砕して、ポリアセタール樹脂(A)を得た。ポリアセタール樹脂(A)の収率は95%であり、メルトインデックス(MI)は、8.0g/10minであった
<実施例1〜8、比較例1〜7>
実施例および比較例のポリアセタール樹脂組成物は、次のようにして得た。上述した方法で得たポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、窒素含有化合物としてメラミン0.1質量部と、還元剤(B)及び立体障害性フェノール(C)を表1に示す割合で添加し、二軸押出機を用いて、シリンダー温度、200℃、21.3kPaの減圧下で脱揮しながら、連続的に押出し成形して、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを用いて、下記に示す方法にて評価した。なお、表1中の記号は、下記のとおりである。
<還元剤(B)>
B−1:水素化ホウ素ナトリウム(Sigma−Aldrich社製、試薬)
B−2:アルミニウムイソプロポキシド(Sigma−Aldrich社製、試薬)
<立体障害性フェノール(C)>
C−1:1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(BASF社製、Irganox1330(登録商標))
C−2:1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(ADEKA社製、AO−30)
実施例および比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物は、以下の方法で評価した。
<ギ酸エステル末端基量の測定>
ギ酸エステル末端基量は、実施例および比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール−d2に溶解して、NMRを用いて測定した。ギ酸エステル末端基量は、ポリアセタール樹脂組成物1g当たりのギ酸エステル末端基量のモル量で示した(単位:μmol/g)。なお、ギ酸エステル末端基量は、以下に述べる加湿処理を行う前のポリアセタール樹脂組成物を用いて測定した。結果を表1に示した。
<ホルムアルデヒド発生量>
表1に記載したホルムアルデヒド発生量は、加湿処理を行った試料におけるホルムアルデヒド発生量である。この方法で測定されるホルムアルデヒド発生量は、ポリアセタール樹脂中にもともと存在するヘミホルマール末端基に由来するホルムアルデヒド量と、ギ酸エステル末端基が加水分解されて生成するヘミホルマール末端基に由来するホルムアルデヒド量の合計と考えることができる。加湿処理後のホルムアルデヒド発生量は、実施例および比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物(ペレット)を、恒温恒湿機(タバイ製エスペック社製、PR-2K)を用いて、80℃、相対湿度98%雰囲気下で24時間処理した後、以下の手順で測定した。ホルムアルデヒド発生量は、ポリアセタール樹脂1g当たりの発生量(単位:μmol/g)として、評価した。
1)ポリアセタール樹脂組成物を80℃、3時間予備乾燥し、山城社製SAV−30−30成形機を用いて、シリンダー温度215℃にて、直径50mm×厚さ3mmの円板の試験片に成形した。
2)得られた試験片を用いて、成形翌日にドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品−改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して、測定した。
<押出し成形時の発泡及びペレットの着色>
実施例および比較例のポリアセタール樹脂組成物を押出し成形する際の発泡と、得られたペレットの着色を、以下の基準にて評価した。
発泡:ダイスから押出されてくる溶融ストランドに全く発泡が見られない場合を○(良)、発泡が見られるものを×(不良)として評価した。
着色:ペレットが、通常の製品ペレット(白色)と同程度と判断されたものを○、黄変色を伴うものを×と表記した。
Figure 0006668850
実施例1〜3と比較例1〜4より、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドリド還元剤(B)0.001〜1.0質量部を添加して溶融混練することで、ギ酸エステル末端基量が少なくなり、これによってギ酸エステル末端基に由来するホルムアルデヒドの発生量が少なくなること、また、製造安定性、製品着色の問題がないことがわかる。なお、アルミニウムイソプロポキシドは、ヒドリド還元剤(B)ではない。
また、実施例2及び4〜7より、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)を併用することで、ホルムアルデヒド発生量を、より顕著に抑制できることがわかる。

Claims (5)

  1. ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドリド還元剤(B)0.001〜1.0質量部を添加して溶融混練する、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記ヒドリド還元剤(B)が水素化ホウ素ナトリウムである、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  3. ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)0.01〜10.0質量部更に添加され
    前記立体障害性フェノール(C)は、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよび1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  4. 請求項1〜3に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物であって、かつ該ポリアセタール樹脂組成物中の前記ヒドリド還元剤(B)及びその分解生成物の合計含有量が、ヒドリド還元剤(B)換算量で、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.001〜1.0質量部である、ポリアセタール樹脂組成物。
  5. 請求項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体。
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