JP6668850B2 - ポリアセタール樹脂組成物の製造方法及びポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
〔1〕ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドリド還元剤(B)0.001〜1.0質量部を添加して溶融混練する、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
〔2〕前記ヒドリド還元剤(B)が水素化ホウ素ナトリウムである、〔1〕に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
〔3〕ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)0.01〜10.0質量部を、更に添加する、〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
〔4〕〔1〕〜〔3〕に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物であって、かつ該ポリアセタール樹脂組成物中の前記ヒドリド還元剤(B)及びその分解生成物の合計含有量が、ヒドリド還元剤(B)換算量で、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.001〜1.0質量部である、ポリアセタール樹脂組成物。
〔5〕〔6〕に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体。
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に使用できるポリアセタール樹脂(A)は、アセタール構造:−O−CRH−(ここで、Rは、水素原子、有機基を示す)を繰り返し単位に有する高分子であり、通常はRが水素原子であるオキシメチレン基(−OCH2−)を主たる構成単位とするものである。すなわち、本発明のポリアセタール樹脂(A)は、この繰り返し単位のみからなるアセタールホモポリマー以外に、前記オキシメチレン基以外の構成単位を1種以上含むコポリマー(ブロックコポリマー)やターポリマー等も含み、更には線状構造のみならず、グリシジルエーテル化合物、エポキシ化合物、アリルエーテル化合物などをコモノマー及び/又はターモノマーに用いることで生成する分岐、架橋構造を有していてもよい。前記オキシメチレン基以外の構成単位としては、例えば、オキシエチレン基(−OCH2CH2−又は−OCH(CH3)−)、オキシプロピレン基(−OCH2CH2CH2−、−OCH(CH3)CH2−又は−OCH2CH(CH3)−)、オキシブチレン基(−OCH2CH2CH2CH2−、−OCH(CH3)CH2CH2−、−OCH2CH(CH3)CH2−、−OCH2CH2CH(CH3)−、−OCH(C2H5)CH2−又は−OCH2CH(C2H5)−)等の炭素数2以上10以下の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が挙げられ、中でも炭素数2以上4以下の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が好ましく、特にオキシエチレン基(−OCH2CH2−)が好ましい。また、ポリアセタール樹脂(A)中における、オキシメチレン基以外の構成単位(オキシアルキレン基)の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に使用できるヒドリド還元剤(B)は、ギ酸エステル末端基を還元することができる水素供与体であれば特に限定されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、シアン水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、ジボラン、水素化イソブチルアルミニウムが挙げられる。なかでも、水素化ホウ素ナトリウムが、ギ酸エステル末端基の還元処理を安定的に行え、高温・多湿の環境下で保管してもポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生量が少なくできるので、特に好ましい。また、水素化ホウ素ナトリウムの分解生成物は、ポリアセタール樹脂組成物の安定性を損なわない点でも、特に好ましい。上述したヒドリド還元剤(B)は、1種類を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
本発明においては、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)を更に添加して溶融混練してもよい。これは、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)は、ポリアセタール樹脂にもともと含まれているヘミホルマール末端基並びにギ酸エステル末端基が加水分解して生じたヘミホルマール末端基の酸化分解を抑制できるからである。すなわち、ヒドリド還元剤(B)とエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)を併用することにより、得られるポリアセタール樹脂組成物におけるギ酸エステル末端基由来のホルムアルデヒドの発生と、ヘミホルマール末端基由来のホルムアルデヒドの発生の両方を相乗的に抑制することができる。
また、本発明を実施するとき、本発明の目的を損なわない範囲内で、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)(以下、「他の立体障害性フェノール」ともいう);窒素含有化合物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、脂肪酸塩、炭酸塩、無機酸塩、アルコキシド及び鉱物からなる群から選ばれる1種以上の金属含有化合物を更に添加することができる。
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、上述したポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドリド還元剤(B)0.001〜1.0質量部を添加して溶融混練するのであれば、特に限定されるものではなく、従来公知のポリアセタール樹脂組成物の製造方法を使用できる。例えば、上述したポリアセタール樹脂(A)、ヒドリド還元剤(B)、及び必要に応じて添加されるエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)や上述した任意成分(その他の添加してもよい任意成分)を、任意の順序で混合、溶融混練することによって製造できる。なかでも、ポリアセタール樹脂(A)、ヒドリド還元剤(B)、及び必要に応じてエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)を混合、溶融混練して得られる樹脂組成物に、必要に応じて上述した任意成分を添加、溶融混練することが、高温・多湿の環境下で長期間保管してもホルムアルデヒドの発生量が少ないというポリアセタール樹脂(A)とヒドリド還元剤(B)を溶融混練して得られる効果に加えて、必要に応じて添加したエステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)や上述した任意成分がもたらす効果が加わることがあるので、より好ましい。なお、溶融混練とは、例えば、シリンダー温度をポリアセタール樹脂の融点以上に設定した二軸押出機内で、融解状態のポリアセタール樹脂と各種添加剤とを、混合して練ることを意味する。
本発明の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物は、該ポリアセタール樹脂組成物中に上述したヒドリド還元剤(B)及びその分解生成物を含む。添加したヒドリド還元剤(B)は、すべて分解している必要はなく、本発明のポリアセタール樹脂組成物は未反応のヒドリド還元剤(B)を含んでいてもよい。ヒドリド還元剤(B)の分解生成物の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドリド還元剤が金属水素化物の場合、金属の酸化物、水酸化物、ギ酸塩などが挙げられる。また、ヒドリド還元剤(B)が水素化ホウ素ナトリウムの場合は、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムが部分的に酸化された化合物など、ナトリウム及びホウ素の酸化物、水酸化物、ギ酸塩等である。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、公知のポリアセタール樹脂の成形加工法に従って、種々の形態に成形加工することができる。本発明のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体としては、ペレット、丸棒、厚板、シート、チューブ、円筒状や方形状の容器といった形状が挙げられるがこれに限定されるものではない。
<ポリアセタール樹脂(A)の製造>
実施例および比較例で用いたポリアセタール樹脂(A)は次のようにして製造した。温度を65℃に設定したジャケットとセルフクリーニング型パドルを有する二軸の連続重合機に、トリオキサン100質量部と1,3−ジオキソラン4質量部、重合触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを全モノマー(トリオキサン及び1,3−ジオキソラン)1molに対して0.05mmolとなる量をベンゼン溶液として、並びに分子量調節剤としてメチラールを全モノマーに対して500ppmとなる量をベンゼン溶液として、連続供給し、これらの原料の連続重合機内の滞在時間が20分となるようにして、連続的に重合を行った。
実施例および比較例のポリアセタール樹脂組成物は、次のようにして得た。上述した方法で得たポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、窒素含有化合物としてメラミン0.1質量部と、還元剤(B)及び立体障害性フェノール(C)を表1に示す割合で添加し、二軸押出機を用いて、シリンダー温度、200℃、21.3kPaの減圧下で脱揮しながら、連続的に押出し成形して、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを用いて、下記に示す方法にて評価した。なお、表1中の記号は、下記のとおりである。
B−1:水素化ホウ素ナトリウム(Sigma−Aldrich社製、試薬)
B−2:アルミニウムイソプロポキシド(Sigma−Aldrich社製、試薬)
<立体障害性フェノール(C)>
C−1:1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(BASF社製、Irganox1330(登録商標))
C−2:1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(ADEKA社製、AO−30)
<ギ酸エステル末端基量の測定>
ギ酸エステル末端基量は、実施例および比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール−d2に溶解して、NMRを用いて測定した。ギ酸エステル末端基量は、ポリアセタール樹脂組成物1g当たりのギ酸エステル末端基量のモル量で示した(単位:μmol/g)。なお、ギ酸エステル末端基量は、以下に述べる加湿処理を行う前のポリアセタール樹脂組成物を用いて測定した。結果を表1に示した。
<ホルムアルデヒド発生量>
表1に記載したホルムアルデヒド発生量は、加湿処理を行った試料におけるホルムアルデヒド発生量である。この方法で測定されるホルムアルデヒド発生量は、ポリアセタール樹脂中にもともと存在するヘミホルマール末端基に由来するホルムアルデヒド量と、ギ酸エステル末端基が加水分解されて生成するヘミホルマール末端基に由来するホルムアルデヒド量の合計と考えることができる。加湿処理後のホルムアルデヒド発生量は、実施例および比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物(ペレット)を、恒温恒湿機(タバイ製エスペック社製、PR-2K)を用いて、80℃、相対湿度98%雰囲気下で24時間処理した後、以下の手順で測定した。ホルムアルデヒド発生量は、ポリアセタール樹脂1g当たりの発生量(単位:μmol/g)として、評価した。
1)ポリアセタール樹脂組成物を80℃、3時間予備乾燥し、山城社製SAV−30−30成形機を用いて、シリンダー温度215℃にて、直径50mm×厚さ3mmの円板の試験片に成形した。
2)得られた試験片を用いて、成形翌日にドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品−改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して、測定した。
<押出し成形時の発泡及びペレットの着色>
実施例および比較例のポリアセタール樹脂組成物を押出し成形する際の発泡と、得られたペレットの着色を、以下の基準にて評価した。
発泡:ダイスから押出されてくる溶融ストランドに全く発泡が見られない場合を○(良)、発泡が見られるものを×(不良)として評価した。
着色:ペレットが、通常の製品ペレット(白色)と同程度と判断されたものを○、黄変色を伴うものを×と表記した。
Claims (5)
- ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドリド還元剤(B)0.001〜1.0質量部を添加して溶融混練する、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
- 前記ヒドリド還元剤(B)が水素化ホウ素ナトリウムである、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
- ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、エステル基を分子中に有しない立体障害性フェノール(C)0.01〜10.0質量部が更に添加され、
前記立体障害性フェノール(C)は、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよび1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1〜3に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法で得られるポリアセタール樹脂組成物であって、かつ該ポリアセタール樹脂組成物中の前記ヒドリド還元剤(B)及びその分解生成物の合計含有量が、ヒドリド還元剤(B)換算量で、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.001〜1.0質量部である、ポリアセタール樹脂組成物。
- 請求項4に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体。
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