JP6666702B2 - 測定方法および測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、測定方法および測定装置に関し、特に、ラマン分光法を用いる測定方法および測定装置に関する。
ラマン分光法を用いて生体試料を測定する装置が各種開発されている。このような生体試料を測定する技術の一例として、たとえば、特許文献1(特開2013−122437号公報)には、従来技術として以下のような技術が開示されている。すなわち、ラマン分光測定装置は、対象部分のラマンスペクトルから癌部分のラマンスペクトルを差し引くことにより得た差スペクトルであって、たんぱく質であるフェニルアラニンの残基に帰属される1003毎センチメートルのピーク強度で規格化した差スペクトルを、対象部分が癌であるか否かに判定に用いることが示されている。
特開2013−122437号公報
たとえば、ラマン分光法を用いて生体試料に含まれる各成分の濃度測定を行う場合、ある成分を標準物質とし、当該標準物質のピーク強度を用いて、その他の成分のラマンスペクトルの強度の規格化を行った後に、濃度の算出が行われる。
しかしながら、生体試料に含まれる成分の濃度は、時間によって変化したり、個体によって異なったりする。また、共存物質から受ける影響も変化する。このため、生体試料に含まれる成分の濃度の測定値は、一定の値とはならない。そのため、標準物質の濃度が時間変化または試料ごともしくは個体ごとに変化した場合、標準物質のピーク強度が変化してしまうので、試料に含まれる各成分の濃度を正しく測定することが困難になることがある。
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、生体試料の成分を精度よく測定することが可能な測定方法および測定装置を提供することである。
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる測定方法は、たんぱく質を含む生体試料の測定方法であって、前記生体試料のスペクトルをラマン分光法により検出するステップと、検出した前記スペクトルを、前記生体試料に含まれるたんぱく質を前記スペクトルにおいて示すピークに基づいて規格化するステップと、規格化した前記スペクトル、および検量線を用いて前記生体試料における目的成分の暫定濃度を算出するステップと、前記生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第1濃度を、前記ラマン分光法とは異なる測定方法により取得するステップと、取得した前記第1濃度、および前記検量線に関連するたんぱく質の濃度である第2濃度に基づいて、前記暫定濃度を補正するステップとを含む。
(2)好ましくは、前記第2濃度は、前記検量線の基準となるたんぱく質の濃度である。
(3)好ましくは、前記第1濃度および前記第2濃度は、総たんぱくの濃度である。
(4)好ましくは、前記スペクトルを規格化するステップにおいては、ラマンシフトがフェニルアラニンに由来する波数のピークに基づいて、前記スペクトルを規格化する。
(5)好ましくは、前記スペクトルを規格化するステップにおいては、ラマンシフトが略1002毎センチメートルのピーク、または略1003毎センチメートルのピークに基づいて前記スペクトルを規格化する。
(6)好ましくは、前記目的成分は、グルコースである。
(7)好ましくは、前記第1濃度は、比色法により取得される。
(8)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる測定装置は、測定装置であって、たんぱく質を含む生体試料のスペクトルをラマン分光法により検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記スペクトルを、前記スペクトルにおいて前記生体試料に含まれるたんぱく質を示すピークに基づいて規格化するスペクトル処理部と、前記スペクトル処理部によって規格化された前記スペクトル、および検量線を用いて前記生体試料における目的成分の暫定濃度を算出する算出部と、前記生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第1濃度を、前記ラマン分光法とは異なる測定方法により取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記第1濃度、および前記検量線に関連するたんぱく質の濃度である第2濃度に基づいて、前記暫定濃度を補正する補正部を備える。
(9)好ましくは、前記第2濃度は、前記検量線の基準となるたんぱく質の濃度である。
本発明によれば、生体試料の成分を精度よく測定することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置の構成を示す図である。 図2は、本発明の実施の形態に係る端末試料の構成を示す図である。 図3は、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置により測定された複数のラマンスペクトルの一例を示す図である。 図4は、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置により規格化処理が行われた複数のラマンスペクトルの一例を示す図である。 図5は、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置により測定されたグルコース濃度の検証結果の一例を示す図である。 図6は、本発明の実施の形態に係る生体試料の測定方法の手順を定めたフローチャートである。 図7は、本発明の実施の形態に係る生体試料の測定方法の手順を定めたフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
[生体試料測定装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置の構成の一例を示す図である。
図1を参照して、生体試料測定装置101は、分光器1と、光学系2と、端末装置3と、検出器(検出部)4と、分注部7と、光源10とを備える。分光器1は、スリット1aと、回折格子1bとを含む。光学系2は、コリメートレンズ31と、ハーフミラー33と、集光レンズ34と、バンドパスフィルタ36と、集光レンズ37とを含む。生体試料測定装置101には、たとえば試料6を格納するサンプルセル5が設けられる。
図2は、本発明の実施の形態に係る端末装置の構成の一例を示す図である。
図2を参照して、端末装置3は、制御部21と、算出部(スペクトル処理部)22と、補正部23と、表示部24と、受付部25と、検量線作成部26と、メモリ27と、TP濃度取得部28とを含む。受付部25は、ユーザによる操作を受け付ける。
[生体試料の作成]
図1および図2を参照して、まず、測定者は、総たんぱく(以下、TP(Total Protein)とも称する。)濃度の異なる3種類の検体について、グルコース濃度の異なる試料6を準備する。具体的には、測定者は、試料6の一例として、たんぱく質を含む生体試料である検体A,B,Cを準備する。
より詳細には、測定者は、3人の被験者の静脈から血液を採取し、採取した血液を1日放置することにより血液中のグルコースすなわちブドウ糖の濃度をゼロミリグラム/デシリットル(mg/dL)まで低下させる。
測定者は、グルコース濃度の低下を確認すると、3人分の血液30ミリリットルそれぞれに対して、3000回転毎分の遠心分離操作を10分間行った後、上澄みの血漿を採取し、採取した血漿を混合する。
測定者は、混合した血漿を検体A、検体Bおよび検体Cの3つに分け、これらの3つの検体A〜Cのうちの2つの検体に牛血清アルブミン(Bovine Serum Albumin,BSA)を添加することにより、TP濃度が異なる3種類の試料を作成した。検体A、BおよびCのTP濃度は、それぞれ6.9g/dL、7.3g/dLおよび7.5g/dLである。
そして、測定者は、検体A、BおよびCをそれぞれ1.2ミリリットルずつ5つの検体A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5に分けることにより15個の試料6を準備する。測定者は、たとえば、検体A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5にグルコースをそれぞれ添加することにより、各検体につきグルコースの濃度の異なる5つの試料を作成した。
測定者は、検量線の作成に用いる生体試料(以下、検量線生体試料とも称する。)の目的成分の濃度を測定する。具体的には、測定者は、検体B1〜B5のグルコース濃度を測定する。より詳細には、測定者は、従来法、たとえばGOD(グルコースオキシダーゼ)固定化酵素膜および過酸化水素電極によるアンペロメロメトリー法を用いて検体B1〜B5のグルコース濃度を測定する。以下、従来法を用いて測定されたグルコース濃度を、グルコース濃度Crefとも称する。
検体B1、B2、B3、B4およびB5の具体的なグルコース濃度Crefは、それぞれ134.4mg/dL、221.4mg/dL、402.8mg/dL、684.0mg/dLおよび831.1mg/dLである。
[実験の概要]
本願発明者は、生体物質測定装置101を用いて検体A、BおよびCについて実験を行い、検体Bの実験結果に基づいて検量線CCを作成した。本願発明者は、作成した検量線CCを用いて検体A,Cのグルコース濃度の暫定濃度を算出した。そして、本願発明者は、検体A、BおよびCのTP濃度に基づいて、検体A,Cのグルコース濃度の暫定濃度を補正した。
[検量線の作成]
測定者は、目的成分の濃度が未知の生体試料における当該濃度を測定するための検量線を作成するための操作を行う。この例では、グルコースが目的成分である。以下、検量線の作成処理について説明する。なお、測定者は、生体物質測定装置101におけるメモリ27において検量線、および後述する第2濃度があらかじめ保存されている場合、検量線の作成処理を行わなくてもよい。
測定者は、検体B1〜B5のうちのたとえば検体B1を試料6としてサンプルセル5に格納する。
図2を参照して、測定者は、たとえば、検量線を作成するための試料であってグルコース濃度Crefが既知の試料6の測定、および当該試料6のグルコース濃度Crefの入力を行うための操作を端末装置3における受付部25に対して行う。
受付部25は、測定者による操作を受けると、受けた操作内容を制御部21へ通知する。
制御部21は、受付部25から操作内容の通知を受けると、受けた操作内容に従って、ラマンスペクトル測定命令を光源10および検出器4へ出力する。
図1を参照して、光源10は、たとえば、自ら光を発する光源であり、具体的には単色光を出力するレーザーである。また、光源10は、たとえば、出力する光(以下、出力光とも称する。)の波長を変更することが可能である。なお、光源10は、LED(Light‐Emitting Diode)であってもよい。
光源10は、端末装置3における制御部21からラマンスペクトル測定命令を受けると、受けたラマンスペクトル測定命令に従って、たとえば波長が785nmのレーザー光を光学系2におけるコリメートレンズ31へ照射する。
光学系2は、光源10からの出力光を試料6に照射し、試料6からのラマン散乱光を分光器1へ導く。
より詳細には、光学系2におけるコリメートレンズ31は、光源10から受ける出力光を略平行の光に変換する。
コリメートレンズ31からの出力光は、ハーフミラー33によって反射されて集光レンズ34へ入射する。
集光レンズ34は、ハーフミラー33によって反射された出力光を試料6に集光する。
出力光の集光位置において、試料6におけるたんぱく質、脂質およびグルコース等は、当該出力光に基づく散乱光を生成する。この散乱光には、たとえばラマン散乱によるラマン散乱光が含まれる。
集光レンズ34は、出力光の集光位置から広がる散乱光を略平行の光に変換する。
バンドパスフィルタ36は、ハーフミラー33を透過した散乱光の波長成分のうち、上記出力光のスペクトルにおけるピークの波長成分を減衰させる。
集光レンズ37は、バンドパスフィルタ36を透過した散乱光を分光器1におけるスリット1aに集光する。
分光器1におけるスリット1aを通過した散乱光は、回折格子1bによって回折されて検出器4に照射される。
検出器4は、たとえば、たんぱく質を含む検量線生体試料、具体的には検体Bのスペクトルをラマン分光法により検出する。
より詳細には、検出器4は、ラマンスペクトル測定命令を端末装置3における制御部21から受けると、回折格子1bにより回折された散乱光の波長ごとの強度を所定の露光時間たとえば60秒間蓄積することによりラマンスペクトルを測定する。この際、検出器4は、ラマンスペクトルの測定を所定回数行う。
この例では、検出器4は、ラマンスペクトルを3回測定したが、ラマンスペクトルの測定は2回以下でもよいし、4回以上でもよい。
検出器4は、測定した各ラマンスペクトルを示す情報RSを端末装置3における制御部21へ出力する。
図2を参照して、制御部21は、たとえば、検出器4から情報RSを受けると、吸収スペクトル測定命令を分注部7、光源10、バンドパスフィルタ36および検出器4へ出力する。
図1を参照して、バンドパスフィルタ36は、制御部21から吸収スペクトル測定命令を受けると、受けた吸収スペクトル測定命令に従って、試料6からの反射光の光路から退避した位置へ移動する。バンドパスフィルタ36は、生体試料測定装置101において吸収スペクトルの測定が完了すると、退避する前の位置へ戻る。
分注部7は、制御部21から吸収スペクトル測定命令を受けると、受けた吸収スペクトル測定命令に従って、ビウレット試薬を試料6に分注する。
光源10は、制御部21から吸収スペクトル測定命令を受けると、受けた吸収スペクトル測定命令に従って、たとえば波長が546nmのレーザー光を光学系2におけるコリメートレンズ31へ照射した後、波長が700nmのレーザー光を光学系2におけるコリメートレンズ31へ照射する。
光学系2は、光源10からの出力光を試料6に照射し、試料6からの反射光を分光器1へ導く。
検出器4は、制御部21から吸収スペクトル測定命令を受けると、受けた吸収スペクトル測定命令に従って、たとえば546nmにおける反射強度S546、および700nmにおける反射強度S700を1または複数回測定し、測定結果を示す情報ASを端末装置3における制御部21へ出力する。
図2を参照して、制御部21は、検出器4から情報ASを受けると、受けた情報ASをTP濃度取得部28へ出力する。
TP濃度取得部28は、検量線CCの基準となるたんぱく質濃度、たとえば検量線CCの作成に用いた生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第2濃度を、ラマン分光法とは異なる測定方法により取得する。
具体的には、TP濃度取得部28は、第2濃度として、たとえば検体B1のTP濃度を比色法により取得する。
より詳細には、TP濃度取得部28は、試料6が格納されていない空のサンプルセル5が生体試料測定装置101に設けられている場合における、546nmにおける参照反射強度RS546、および700nmにおける参照反射強度RS700を保持している。
TP濃度取得部28は、情報ASの示す反射強度S546、および参照反射強度RS546に基づいて546nmにおける吸光度A546を算出する。また、TP濃度取得部28は、情報ASの示す反射強度S700、および参照反射強度RS700に基づいて700nmにおける吸光度A700を算出する。
TP濃度取得部28は、ビウレット法に従って、算出した吸光度A546およびA700の差分を算出し、算出した差分に基づいて検体B1のTP濃度を算出する。TP濃度取得部28は、算出したTP濃度を制御部21へ通知する。
制御部21は、TP濃度取得部28からTP濃度の通知を受けると、情報RSとグルコース濃度CrefおよびTP濃度とを対応づけてメモリ27に保存し、検体B1の測定が完了したことを表示部24に表示させる制御を行う。
測定者は、表示部24における表示を視認して検体B1の測定が完了したことを認識し、検体B2〜B4についても、検体B1と同様に生体試料測定装置101に測定させる。これにより、メモリ27には、検体B1〜B5についての情報RS、ならびに情報RSに対応するグルコース濃度CrefおよびTP濃度が保存される。
測定者は、たとえば、検体B1〜B5の測定が完了すると、検量線を作成するための操作を受付部25に対して行う。
受付部25は、測定者による操作を受けると、受けた操作内容を制御部21へ通知する。
制御部21は、受付部25から操作内容の通知を受けると、受けた操作内容に従って、検量線作成命令を検量線作成部26へ出力する。
検量線作成部26は、制御部21から検量線作成命令を受けると、受けた検量線作成命令に従って、検量線CCを作成する。
より詳細には、検量線作成部26は、たとえば、メモリ27から検体B1〜B5の情報RS、ならびに情報RSに対応するグルコース濃度CrefおよびTP濃度を取得する。
図3は、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置により測定された複数のラマンスペクトルの一例を示す図である。なお、図3において、横軸はラマンシフトの波数を示し、縦軸は強度を示す。図3では、検体A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5のラマンスペクトルが示されている。
図4は、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置により規格化処理が行われた複数のラマンスペクトルの一例を示す図である。なお、図4において、横軸はラマンシフトの波数を示し、縦軸は規格化強度を示す。
図4では、フェニルアラニン由来のピークである略1002毎センチメートルのピーク強度を基準に用いて強度が規格化された、検体A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5のラマンスペクトル(以下、規格化ラマンスペクトルとも称する。)が示されている。
図3および図4を参照して、検量線作成部26は、検出器4によって検出されたスペクトルを、当該スペクトルにおいて検量線生体試料に含まれるたんぱく質を示すピークに基づいて規格化する。
具体的には、検量線作成部26は、たとえば、図3に示す各ラマンスペクトルの、図4に示す各規格化ラマンスペクトルへの変換と同様に、検体B1〜B5の情報RSの示す各ラマンスペクトルの強度を、略1002毎センチメートルのピーク強度を基準に用いて規格化する、より詳細には、当該ピーク強度で除することにより、規格化する。
検量線作成部26は、たとえば、検体B1〜B5の規格化ラマンスペクトルおよび当該規格化ラマンスペクトルに対応するグルコース濃度Crefを用いてPLS(Partial Least Squares)解析を行うことにより検量線CCを作成する。このようにして作成された検量線CCにラマンスペクトルを入力することにより、暫定濃度である暫定グルコース濃度Cpreを出力値として得ることができる。
検量線作成部26は、たとえば、検量線CCに関連するたんぱく質の濃度である第2濃度の一例として、検量線CCの作成に用いた各TP濃度の平均を算出し、算出した濃度(以下、検量線TP濃度とも称する。)、および作成した検量線CCをメモリ27に保存する。
[目的成分の濃度が未知の生体試料の測定]
測定者は、目的成分の濃度が未知の生体試料における当該濃度を測定するための操作を行う。以下、目的成分の濃度の測定処理について説明する。また、検量線CCおよび検量線TP濃度がメモリ27に保存されている状況を想定する。
再び図1および図2を参照して、測定者は、たとえば、検量線を用いて目的成分の濃度を測定する対象となる生体試料(以下、対象生体試料とも称する。)をサンプルセル5に格納する。具体的には、測定者は、検量線CCを用いて暫定グルコース濃度Cpreを測定する対象となる検体A1〜A5,C1〜C5のうちのたとえば検体A1を試料6としてサンプルセル5に格納する。
図2を参照して、測定者は、グルコース濃度Crefが未知の試料6の測定を行うための操作を受付部25に対して行う。
受付部25は、測定者による操作を受けると、受けた操作内容を制御部21へ通知する。
制御部21は、受付部25から操作内容の通知を受けると、受けた操作内容に従ってラマンスペクトル測定命令を光源10および検出器4へ出力する。
図1を参照して、検出器4は、たんぱく質を含む対象生体試料のスペクトルをラマン分光法により検出する。具体的には、検出器4は、たとえば検体A1のスペクトルをラマン分光法により検出する。
具体的には、検出器4は、ラマンスペクトル測定命令を端末装置3における制御部21から受けると、回折格子1bにより回折された散乱光の波長ごとの強度を所定の露光時間蓄積することにより、たとえばラマンスペクトルを3回測定する。
検出器4は、測定した各ラマンスペクトルを示す情報RSを端末装置3における制御部21へ出力する。
図2を参照して、制御部21は、ラマンスペクトル測定命令の応答として、検出器4から情報RSを受けると、吸収スペクトル測定命令を分注部7、光源10、バンドパスフィルタ36および検出器4へ出力する。
制御部21は、吸収スペクトル測定命令の応答として、検出器4から情報ASを受けると、受けた情報ASをTP濃度取得部28へ出力する。
TP濃度取得部28は、対象生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第1濃度を、ラマン分光法とは異なる測定方法により取得する。
具体的には、TP濃度取得部28は、たとえば、第1濃度として、検体A1のTP濃度を比色法により取得する。そして、TP濃度取得部28は、取得したTP濃度を制御部21へ通知する。
制御部21は、情報ASの応答として、TP濃度取得部28からTP濃度の通知を受けると、情報RSを算出部22へ出力するとともに、通知されたTP濃度を補正部23へ通知する。
算出部22は、スペクトル処理部として、検出器4によって検出されたスペクトルを、当該スペクトルにおいて対象生体試料に含まれるたんぱく質を示すピークに基づいて規格化する。
具体的には、算出部22は、検体A1の情報RSの示すラマンスペクトルの強度を、たとえばラマンシフトが略1002毎センチメートルのピーク強度を基準に用いて規格化する、より詳細には、当該ピーク強度で除することにより、規格化する。
また、算出部22は、規格化したスペクトル、および検量線CCを用いて対象生体試料における目的成分の暫定濃度を算出する。
具体的には、算出部22は、たとえば、メモリ27から検量線CCを取得し、取得した検量線CCに、規格化ラマンスペクトルの目的成分の強度を入力する。算出部22は、たとえば、検量線CCの出力値として得られる暫定グルコース濃度Cpreを算出し、算出した暫定グルコース濃度Cpreを補正部23へ通知する。
補正部23は、TP濃度取得部28によって取得された第1濃度、および検量線CCに関連するたんぱく質の濃度である第2濃度に基づいて、暫定濃度を補正する。ここで、第2濃度は、検量線の基準となるたんぱく質濃度、たとえば検量線の作成に用いた生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である。
具体的には、補正部23は、TP濃度取得部28によって取得された対象生体試料のTP濃度、および検量線TP濃度を用いて、検体A1の暫定グルコース濃度Cpreを補正する。
より詳細には、補正部23は、算出部22から検体A1の暫定グルコース濃度Cpreの通知を受けると、制御部21から通知されたTP濃度を、メモリ27から取得した検量線TP濃度で除した値である補正係数を算出する。そして、補正部23は、算出した補正係数を検体A1の暫定グルコース濃度Cpreに乗じることにより当該暫定グルコース濃度Cpreを補正する。補正部23は、補正後の暫定グルコース濃度Cpreである補正グルコース濃度Ccalを表示部24へ通知する。
表示部24は、補正グルコース濃度Ccalを補正部23から通知されると、補正グルコース濃度Ccalを表示する。
測定者は、表示部24における表示を視認して検体A1の補正グルコース濃度Ccalを確認する。測定者は、検体A2〜A5,C1〜C5の補正グルコース濃度Ccalについても、検体A1と同様に生体試料測定装置101に測定させる。
[測定精度の検証]
図5は、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置により測定されたグルコース濃度の検証結果の一例を示す図である。なお、図5において、横軸は、従来法によって測定したグルコース濃度Cref(mg/dL)を示し、縦軸は、ラマン分光法によって測定した暫定グルコース濃度Cpreまたは補正グルコース濃度Ccal(mg/dL)を示す。また、直線Stは、Cpre=CrefおよびCcal=Crefを示す。図5において、補正グルコース濃度Ccalの値が、直線Stに近い位置にあれば、ラマン分光法によって精度の高い測定が行えたことが示される。
図5を参照して、測定者は、ラマン分光法により算出した検体A,Cの暫定グルコース濃度Cpreおよび補正グルコース濃度Ccalと、検体A,Cのグルコース濃度Crefとを比較することにより、グルコース濃度の測定精度の検証を行った。この結果、測定者は、対象生体試料のTP濃度、および検量線TP濃度を用いて暫定濃度の補正を行うことで、ラマン分光法によるグルコース濃度の測定精度を向上させることが可能であることを発見した。以下、上記検証の詳細について説明する。
たとえば、測定者は、ラマン分光法により算出したグルコース濃度の測定精度の検証を行うために、従来法を用いて検体A1〜A5,C1〜C5のグルコース濃度Crefを測定した。
検体A1、A2、A3、A4およびA5の具体的なグルコース濃度Crefは、それぞれ128.4mg/dL、258.2mg/dL、438.3mg/dL、651.6mg/dLおよび791.6mg/dLである。
検体C1、C2、C3、C4およびC5の具体的なグルコース濃度Crefは、それぞれ119.0mg/dL、207.0mg/dL、411.3mg/dL、583.0mg/dLおよび818.7mg/dLである。
図5には、TP濃度を用いた補正を行わない場合における、検体A1〜A5,C1〜C5のCrefおよびCpreの関係が○印により示される。
また、図5には、TP濃度を用いた補正を行った場合における、検体A1〜A5,C1〜C5のCcalおよびCpreの関係が×印により示される。
より詳細には、○印により示される検体AおよびCのCpreに対して、補正係数として(6.9/7.3)および(7.5/7.3)をそれぞれ乗じた場合における、検体A1〜A5,C1〜C5のCcalおよびCpreの関係が×印により示される。
図5において、×印は、○印より直線Stに近づいていることから、ラマンスペクトルから得られる暫定グルコース濃度Cpreの値を、従来法を用いて測定されたグルコース濃度Crefに、補正によって近づけることができ、測定精度が向上したことが分かる。
上記実施形態では、総たんぱくが、一種の内部標準物質として用いられている。また、ラマン分光法以外の測定法で測定した検体の内部標準物質の濃度と、検量線の基準となっている内部標準物質濃度とを用いて目的成分の濃度を補正することにより、測定精度が向上する。
また、上述の通り、ラマン分光法で測定する目的成分と、ラマン分光法以外の測定法で測定する成分とは、異なるものである。
なお、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置は、ラマン分光法とは異なる測定として、サンプルセル5に格納された液体の検体にビウレット試薬を分注し、当該検体の総たんぱくの吸収スペクトルを測定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。
生体試料測定装置101は、ラマン分光法とは異なる測定として、試薬を含浸させた試薬パッドに、検体を点着させ、当該試薬パッドの呈色反応を測定する構成であってもよい。
より詳細には、図1に示す生体試料測定装置101において、サンプルセル5の代わりに、上記試薬パッドが設けられた基材を載置するステージを設置し、上記試薬パッドに光源10の光を照射し、TP濃度取得部28において上記試薬パッドの呈色反応が測定されてもよい。
また、本発明の実施の形態に係る生体試料測定装置では、検量線の基準となるたんぱく質濃度、たとえば検量線の作成に用いた生体試料に含まれるたんぱく質の濃度を補正に用いたが、これに限定するものではない。検量線との直接的または間接的な対応関係が分かっているものであれば、検量線と関連性のあるたんぱく質濃度を補正に用いてもよい。
[方法]
生体試料測定装置101は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下に示すフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
図6は、本発明の実施の形態に係る生体試料の測定方法の手順を定めたフローチャートである。図6では、検量線CCの作成方法の手順が示されている。
図6を参照して、検体B1〜B5が測定者により準備されている状況を想定する。
まず、測定者は、検体B1〜B5のグルコース濃度Crefを測定する(ステップS102)。なお、グルコース濃度Crefは、たとえば、GOD(グルコースオキシダーゼ)固定化酵素膜および過酸化水素電極によるアンペロメロメトリー法等を用いて測定する。
次に、測定者は、検体B1〜B5のうちの未測定の検体を試料6としてサンプルセル5に格納する(ステップS104)。
次に、測定者は、検量線を作成するための試料であってグルコース濃度Crefが既知の試料6の測定、および当該試料6のグルコース濃度Crefの入力を行うための操作を生体試料測定装置101に対して行う(ステップS106)。
次に、生体試料測定装置101は、測定者の操作を受けて、ラマン分光法により試料6のラマンスペクトルを測定する(ステップS108)。
次に、生体試料測定装置101は、ビウレット試薬を試料6に分注する(ステップS110)。
次に、生体試料測定装置101は、検量線生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第2濃度を、ラマン分光法とは異なる測定方法により取得する。具体的には、生体試料測定装置101は、ビウレット法により、試料6の吸収スペクトルを測定し、測定結果に基づいて試料6のTP濃度を算出する。そして、生体試料測定装置101は、試料6の測定が完了したことを表示部24に表示する(ステップS112)。
次に、測定者は、表示部24の表示を視認して試料6の測定が完了したことを認識し、検体B1〜B5のうち未測定の検体がある場合(ステップS114でYES)、検体B1〜B5のうちの未測定の検体を試料6としてサンプルセル5に格納する(ステップS104)。
一方、測定者は、検体B1〜B5のうち未測定の検体がない場合(ステップS114でNO)、検量線を作成するための操作を生体試料測定装置101に対して行う(ステップS116)。
次に、生体試料測定装置101は、測定者の操作を受けて、検出したスペクトルを、当該スペクトルにおいて検量線生体試料に含まれるたんぱく質を示すピークに基づいて規格化する。具体的には、生体物質測定装置101は、測定した各ラマンスペクトルの強度を、ラマンシフトが略1002毎センチメートルのピーク強度を基準に用いて規格化する(ステップS118)。
次に、生体試料測定装置101は、検体B1〜B5の規格化ラマンスペクトルおよび対応のグルコース濃度Crefを用いてPLS解析を行うことにより検量線CCを作成する(ステップS120)。
次に、生体試料測定装置101は、検量線CCの基準となるたんぱく質濃度、たとえば検量線CCの作成に用いた検体B1〜B5のTP濃度の平均を検量線TP濃度として算出する(ステップS122)。
なお、上記ステップS118,S120とステップS122との順番は、上記に限らず、順番を入れ替えてもよい。
また、当該試料6のグルコース濃度Crefの入力を行うための操作は、上記ステップS106で行わずに、ラマン分光法とは異なる測定たとえば比色法による測定の終了後、または検量線の作成時において適宜行ってもよい。
また、生体試料測定装置101におけるメモリ27において、検量線CCおよび第2濃度等があらかじめ保存されている場合には、検量線CCの作成作業は不要である。
図7は、本発明の実施の形態に係る生体試料の測定方法の手順を定めたフローチャートである。
図7を参照して、検体A1〜A5,C1〜C5が測定者により準備されている状況を想定する。また、生体物質測定装置101のメモリ27において、検量線CCおよび検量線TP濃度が保存されている状況を想定する。また、メモリ27には、検量線CCに関連するたんぱく質の濃度である検量線TP濃度が、第2濃度として保存されている。
まず、測定者は、検体A1〜A5,C1〜C5のうちのいずれか1つを試料6としてサンプルセル5に格納する(ステップS202)。
次に、測定者は、グルコース濃度Crefが未知の試料6の測定を行うための操作を生体試料測定装置101に対して行う(ステップS204)。
次に、生体試料測定装置101は、対象生体試料のスペクトルをラマン分光法により検出する。具体的には、生体試料測定装置101は、測定者の操作を受けて、ラマン分光法により試料6のラマンスペクトルを測定する(ステップS206)。
次に、生体試料測定装置101は、検出したスペクトルを、対象生体試料に含まれるたんぱく質を当該スペクトルにおいて示すピークに基づいて規格化する。より詳細には、生体試料測定装置101は、ラマンシフトがフェニルアラニンに由来する波数のピークに基づいて、ラマンスペクトルを規格化する。具体的には、生体試料測定装置101は、ラマンシフトが略1002毎センチメートルのピークに基づいてラマンスペクトルを規格化する(ステップS208)。総たんぱくを示すフェニルアラニン残基に帰属するラマンシフトは、略1002〜1005毎センチメートルであることが多い。なお、ラマンシフトがフェニルアラニン残基に由来する波数であれば、規格化に用いるピークの波数は、上記波数範囲以外の波数であってもよい。
次に、生体試料測定装置101は、規格化したスペクトル、および検量線を用いて対象生体試料における目的成分の暫定濃度を算出する。具体的には、生体試料測定装置101は、規格化ラマンスペクトルを検量線CCに入力することにより暫定グルコース濃度Cpreを算出する(ステップS210)。
次に、生体試料測定装置101は、対象生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第1濃度を、ラマン分光法とは異なる測定方法により取得する。具体的には、生体試料測定装置101は、比色法の1種であるビウレット法による測定を行うため、ビウレット試薬を試料6に分注する(ステップS212)。
次に、生体試料測定装置101は、比色法により、試料6の吸収スペクトルを測定し、測定結果に基づいて試料6のTP濃度を第1濃度として算出する(ステップS214)。
次に、生体試料測定装置101は、取得した第1濃度、および第2濃度に基づいて、暫定濃度を補正する。具体的には、生体試料測定装置101は、算出したTP濃度と検量線TP濃度との比である補正係数を用いて、算出した暫定グルコース濃度Cpreを補正する(ステップS216)。
次に、生体試料測定装置101は、補正後の暫定グルコース濃度Cpreである補正グルコース濃度Ccalを表示部24に表示する(ステップS218)。
測定者は、検体A1〜A5,C1〜C5のうち、他の検体の測定を行う場合、当該他の検体を試料6としてサンプルセル5に格納する。
上記実施形態では、総たんぱくが、一種の内部標準物質として用いられている。また、ラマン分光法以外の測定法で測定した検体の内部標準物質の濃度と、検量線の基準となっている内部標準物質濃度とを用いて目的成分の濃度を補正することにより、測定精度が向上する。
なお、上記ステップS208,S210とステップS212,S214との順番は、上記に限らず、順番を入れ替え、ラマンスペクトルの規格化および暫定グルコース濃度Cpreの算出を行う前に、第1濃度の測定を行ってもよい。
また、生体試料測定装置101は、上記ステップS206〜S210において、ラマンスペクトルの測定、ビウレット試薬の分注および吸収スペクトルの測定を時間的に連続して行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。生体試料測定装置101は、ラマンスペクトルの測定を行った後、しばらく間を空けてからビウレット試薬の分注および吸収スペクトルの測定を行う構成であってもよい。しかしながら、検体におけるたんぱく質は、時間の経過とともに変性するため、ラマンスペクトルの測定、ビウレット試薬の分注および吸収スペクトルの測定を時間的に連続して行う構成が好ましい。
また、本発明に実施の形態に係る測定方法では、ラマンシフトが略1002毎センチメートルのピークに基づいてラマンスペクトルを規格化するとしたが、これに限定するものではない。測定方法は、ラマンシフトが略1003毎センチメートルのピークに基づいてラマンスペクトルを規格化してもよい。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、総たんぱくに帰属する、略1002毎センチメートルのピークに基づいてラマンスペクトルを規格化するとしたが、これに限定するものではない。測定方法は、略1460毎センチメートルのピーク、または略1660毎センチメートルのピークに基づいてラマンスペクトルを規格化してもよい。しかしながら、これらのピークでは、たんぱく以外の物質由来のピーク成分たとえば脂質由来のピーク成分が含まれること、およびピークのバンド幅が大きいことから、ラマンシフトが略1002毎センチメートルもしくは略1003毎センチメートルのピーク、またはラマンシフトがフェニルアラニンに由来する波数のピークに基づいて、ラマンスペクトルを規格化することが好ましい。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、第1濃度および第2濃度は、総たんぱく濃度であるとしたが、これに限定するものではない。この測定方法では、第1濃度および第2濃度は、総たんぱく以外の物質たとえばアルブミンの濃度であってもよい。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、第1濃度は、比色法により取得されるとしたが、これに限定するものではない。この測定方法において、第1濃度は、比色法以外の方法、たとえば屈折系の原理を用いる方法により取得されてもよい。この場合、ビウレット試薬を用いることなく第1濃度を取得することができる。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、検体として血漿を用いるとしたが、これに限定するものではない。検体は、血液、尿等の体外排出物、細胞または微生物といったたんぱく質を含む生体試料であればよい。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、目的成分の濃度として補正グルコース濃度Ccalを算出するとしたが、これに限定するものではない。ラマン分光法では、様々な成分の測定が可能であるので、この測定方法では、グルコースに限らず、たとえば、TP、コレステロール、アルブミン、アミラーゼもしくはトータルビリルビン等、または微生物における各成分の濃度を算出してもよい。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、目的成分が1種類であるとしたが、これに限定するものではない。ラマン分光法では、様々な成分の測定を一度に行うことが可能であるので、この測定方法では、目的成分が複数種類であってもよい。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、対象生体試料が複数であるとしたが、これに限定するものではない。この測定方法では、対象生体試料が1つであってもよい。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、フェニルアラニン等に由来するピークの波数を略A毎センチメートルと記載した。ここで、Aは数値である。具体的には、当該ピークの波数は、好ましくはA±A×0.01であり、また、より好ましくはA±A×0.005である。
また、本発明の実施の形態に係る生体物質測定装置は、検量線作成部26を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。生体物質測定装置101は、メモリ27において検量線および当該検量線に関連するたんぱく質の濃度である第2濃度が保存されている場合、検量線作成部26を備えない構成であってもよい。
ところで、たとえば、ラマン分光法を用いて生体試料に含まれる各成分の濃度測定を行う場合、ある成分を標準物質とし、当該標準物質のピーク強度を用いて、その他の成分のラマンスペクトルの強度の規格化を行った後に、濃度の算出が行われる。
しかしながら、生体試料に含まれる成分の濃度は、時間によって変化したり、個体によって異なったりする。また、共存物質から受ける影響も変化する、このため、生体試料に含まれる成分の濃度の測定値は、一定の値とはならない。そのため、標準物質の濃度が時間変化または試料ごともしくは個体ごとに変化した場合、標準物質のピーク強度が変化してしまうので、試料に含まれる各成分の濃度を正しく測定することが困難になることがある。
また、たとえば比色法を用いて各種成分の濃度測定を行う場合、ある成分の濃度の測定を行うたびに、当該成分に適合する試薬を個別に準備する必要がある。
これに対して、本発明の実施の形態に係る測定方法では、まず、たんぱく質を含む生体試料の測定方法であって、生体試料のスペクトルをラマン分光法により検出する。次に、検出したスペクトルを、生体試料に含まれるたんぱく質を当該スペクトルにおいて示すピークに基づいて規格化する。次に、規格化したスペクトル、および検量線を用いて生体試料における目的成分の暫定濃度を算出する。次に、生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第1濃度を、ラマン分光法とは異なる測定方法により取得する。次に、取得した第1濃度、および検量線に関連するたんぱく質の濃度である第2濃度に基づいて、暫定濃度を補正する。
このような方法により、ラマン分光法および検量線を用いて算出した暫定濃度が、規格化に用いるピークの示す物質の濃度変化によって正しい値から外れてしまう場合においても、暫定濃度は、第1濃度および第2濃度により補正されるので、より正しい結果を得ることができる。したがって、生体試料の成分を精度よく測定することができる。また、ラマン分光法を用いることによりスペクトルにおいて各種成分に由来するピークを一度に測定することができるので、各種成分についての検量線を作成しておけば、目的成分に適合する試薬を個別に準備することなく、第1濃度を測定するための1つの試薬を準備しておき、ラマン分光法とは異なる測定方法により第1濃度を測定するだけで、各種成分の濃度測定を精度よく行うことができる。これにより、利便性を高めることができる。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、第2濃度は、検量線の基準となるたんぱく質の濃度である。
このような第2濃度に基づいて暫定濃度を補正する方法により、暫定濃度をより正しく補正することができる。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、第1濃度および第2濃度は、総たんぱくの濃度である。
このような方法により、規格化に用いるピークの示すたんぱく質の濃度と、第1濃度および第2濃度とを関連づけることができるので、規格化したスペクトル、および検量線の作成に用いた規格化スペクトルにおいて、各ピーク強度を適切に比較することができる。これにより、暫定濃度の補正をより適切に行うことができる。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、スペクトルを規格化するステップにおいては、ラマンシフトがフェニルアラニンに由来する波数のピーク、たとえばラマンシフトが略1002毎センチメートルのピーク、または略1003毎センチメートルのピークに基づいて、スペクトルを規格化する。
このように、バンド幅が小さく、かつたんぱく質以外の物質由来のピーク成分をほとんど含まないフェニルアラニン由来のピークに基づいてスペクトルを規格化する方法により、スペクトルの強度の規格化を適切に行うことができ、また、規格化に用いるピークの示すたんぱく質の濃度と第1濃度との関連が低下することを防ぐことができるので、暫定濃度を適切に補正することができる。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、目的成分は、グルコースである。
このような方法により、規格化に用いるピークの示すたんぱく質の濃度がばらつく場合においても、ラマン分光法を用いて血糖値をより正しく測定することが可能な測定方法を提供することができる。
また、本発明の実施の形態に係る測定方法では、第1濃度は、比色法により取得される。
このように、技術的に確立された測定方法である比色法を用いる方法により、第1濃度を容易かつ精度よく取得することができる。
また、本発明の実施の形態に係る測定装置では、検出器4は、たんぱく質を含む生体試料のスペクトルをラマン分光法により検出する。算出部22は、検出器4によって検出されたスペクトルを、当該スペクトルにおいて生体試料に含まれるたんぱく質を示すピークに基づいて規格化し、規格化したスペクトル、および検量線を用いて生体試料における目的成分の暫定濃度を算出する。TP濃度取得部28は、生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第1濃度を、ラマン分光法とは異なる測定方法により取得する。そして、23は、TP濃度取得部28によって取得された第1濃度、および検量線に関連するたんぱく質の濃度である第2濃度に基づいて、暫定濃度を補正する。
このような構成により、ラマン分光法および検量線を用いて算出した暫定濃度が、規格化に用いるピークの示す物質の濃度変化によって正しい値から外れてしまう場合においても、暫定濃度は、第1濃度および第2濃度により補正されるので、より正しい結果を得ることができる。したがって、生体試料の成分を精度よく測定することができる。また、ラマン分光法を用いることによりスペクトルにおいて各種成分に由来するピークを一度に測定することができるので、各種成分についての検量線を作成しておけば、目的成分に適合する試薬を個別に準備することなく、第1濃度を測定するための試薬を準備しておき、ラマン分光法とは異なる測定方法により第1濃度を測定するだけで、各種成分の濃度測定を精度よく行うことができる。これにより、利便性を高めることができる。
また、本発明の実施の形態に係る測定装置では、第2濃度は、検量線の基準となるたんぱく質の濃度である。
このような第2濃度に基づいて暫定濃度を補正する構成により、暫定濃度をより正しく補正することができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 分光器
1a スリット
1b 回折格子
2 光学系
3 端末装置
4 検出器(検出部)
5 サンプルセル
6 試料
7 分注部
10 光源
21 制御部
22 算出部(スペクトル処理部)
23 補正部
24 表示部
25 受付部
26 検量線作成部
27 メモリ
28 TP濃度取得部
31 コリメートレンズ
33 ハーフミラー
34 集光レンズ
36 バンドパスフィルタ
37 集光レンズ
101 生体試料測定装置

Claims (8)

  1. たんぱく質を含む生体試料の測定方法であって、
    前記生体試料のスペクトルをラマン分光法により検出するステップと、
    検出した前記スペクトルを、前記生体試料に含まれるたんぱく質に由来するスペクトルピークに基づいて規格化するステップと、
    規格化した前記スペクトル、および検量線を用いて前記生体試料における目的成分の暫定濃度を算出するステップと、
    前記生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第1濃度を、前記ラマン分光法とは異なる測定方法により取得するステップと、
    取得した前記第1濃度、および前記検量線の作成に用いた生体試料に含まれる総たんぱく質の濃度である第2濃度に基づいて、前記暫定濃度を補正するステップとを含む、測定方法。
  2. 前記スペクトルを規格化するステップにおいては、ラマンシフトがフェニルアラニンに由来する波数のピークに基づいて、前記スペクトルを規格化する、請求項に記載の測定方法。
  3. 前記スペクトルを規格化するステップにおいては、ラマンシフトが略1002毎センチメートルのピーク、または略1003毎センチメートルのピークに基づいて前記スペクトルを規格化する、請求項1または請求項2に記載の測定方法。
  4. 前記目的成分は、グルコースである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の測定方法。
  5. 前記第1濃度は、比色法により取得される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の測定方法。
  6. 前記第1濃度はビウレット法により取得される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の測定方法。
  7. 測定装置であって、
    たんぱく質を含む生体試料のスペクトルをラマン分光法により検出する検出部と、
    前記検出部によって検出された前記スペクトルを、前記スペクトルにおいて前記生体試料に含まれるたんぱく質に由来するピークに基づいて規格化するスペクトル処理部と、
    前記スペクトル処理部によって規格化された前記スペクトル、および検量線を用いて前記生体試料における目的成分の暫定濃度を算出する算出部と、
    前記生体試料に含まれるたんぱく質の濃度である第1濃度を、前記ラマン分光法とは異なる測定方法により取得する取得部と、
    前記取得部によって取得された前記総たんぱく質の第1濃度、および前記検量線の作成に用いた生体試料に含まれる総たんぱく質の濃度である第2濃度に基づいて、前記暫定濃度を補正する補正部を備える、測定装置。
  8. 前記第1濃度は、ビウレット法により取得される、請求項7に記載の測定装置。
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