JP6666587B2 - m−キシレンの分離方法 - Google Patents

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Description

本発明は、m−キシレンの製造方法に関し、より詳細には、キシレン混合物からm−キシレンのみを分離して、m−キシレンを高純度で得る方法に関する。
石油改質油あるいは分解ガソリンから得られる混合キシレン中には、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、およびエチルベンゼンの4種類の異性体が含まれている。これら複数の異性体は、例えば、p−キシレン(以下、PXと略す場合がある。)は沸点が138℃であり、m−キシレン(以下、MXと略す場合がある。)は沸点が139℃であり、o−キシレン(以下、OXと略す場合がある。)は沸点が144℃であるため、沸点の差を利用して分離を行う通常の蒸留方法によっては異性体混合物の中から所望の化合物を得ることが困難である。
芳香族炭化水素の混合物から特定の芳香族炭化水素の製造方法は、特にキシレン類においてMXを製造する方法は工業的には次の2つのプロセスが知られている。一つは、MXに親和性のある吸着剤を使用した吸着分離プロセスである。(特許文献1)また、他の方法は、抽剤として、超強酸であるフッ化水素および三フッ化ホウ素を使用するプロセスであり、MXが他のC8芳香族炭化水素化合物よりも塩基性が高いことを利用した抽出分離プロセスである。
フッ化水素および三フッ化ホウ素を抽剤として用いて混合キシレンからMXを抽出分離する方法として、特許文献2には、抽出塔の中央部から混合キシレンを供給し、塔頂部から液状フッ化水素(以下、HFと略す場合がある。)および三フッ化ホウ素(以下、BFと略す場合がある。)を供給し、塔底部から希釈剤を供給して、−20℃〜+30℃の温度条件で、連続的に向流抽出を行い、MX−HF−BF錯体を、過剰のフッ化水素溶液中に抽出して、混合キシレンからMXを分離する方法が提案されている。
また、特許文献3には、抽出後のMX−HF−BF錯体を分解塔にて加熱分解し、フッ化水素および三フッ化ホウ素を単離して循環利用することが提案されている。この文献では、分解助剤としてヘキサンを蒸発還流し、圧力2〜10気圧、塔底温度131〜217℃で、接触時間15秒以下にて急速に錯体を分解することにより、MX−HF−BF錯体の熱による変質を抑え、分解塔の塔底よりMXを抜き出し、塔頂より抽剤であるフッ化水素および三フッ化ホウ素を回収して循環利用する方法が記載されている。
さらに、特許文献4には、MX−HF−BF錯体の部分分解法として、圧力2〜30気圧、滞留時間1〜120分の条件下で、MX−HF−BF錯体を加熱することにより、分解塔の塔頂より三フッ化ホウ素濃度の高められたガスを抜き出し、分解塔の塔底より実質的に三フッ化ホウ素を含まないフッ化水素とキシレン類を共に抜き出す方法が記載されている。
さらに、MX−HF−BF錯体等の芳香族炭化水素−HF−BF錯体に特定の塩基を添加すると、芳香族炭化水素と塩基との間で錯体状態を交換する平衡反応が起こるため、これを利用してキシレンに対する個々の芳香族炭化水素の相対塩基度が測定できることが知られている。(非特許文献1)
当該文献では、錯体形成反応として、下記のような反応が記載されている。
A + HF + BF → A・H+ BF
上記式中、「A」は芳香族炭化水素を表し、「A・H+BF 」は、芳香族炭化水素−HF−BF錯体を表している。
特許文献5には、混合キシレン等の複数の異性体を含むアルキル芳香族炭化水素から、フッ化水素および三フッ化ホウ素等の超強酸を用いて、MX等の特定のアルキル芳香族炭化水素を抽出分離する際に、特定の相対塩基度を有する脱離剤を用いてアルキル芳香族炭化水素と超強酸との錯体を分解することにより、アルキル芳香族炭化水素と超強酸とを分離する際の加熱をほぼなくすと共に、超強酸を脱離剤と超強酸との錯体の超強酸溶液として回収し、錯体状態のまま、再度、抽剤として循環利用する方法が記載されている。
特開平8−143485号公報 特公昭47−19256号公報 特公昭47−37408号公報 特公昭47−37618号公報 国際公開WO2014−003000号公報
McCaulay, D. A., and A. P. Lien, Tetrahedron, 1959,vol.5,pp.186-193
上記した特許文献2に記載された抽出分離方法においては、MX−HF−BF錯体を形成する際に、錯体を変質させないように、抽出塔を−20℃〜+30℃という低温に冷却しておく必要がある。一方、分解助剤を添加して、MX−HF−BF錯体を加熱分解し、フッ化水素および三フッ化ホウ素を回収する際には、MX−HF−BF錯体が熱により変質してしまうため、錯体の変質を抑制しながら素早く熱分解するためには、特許文献3に記載されているように分解塔の塔底を100℃以上の高温にしておく必要がある。しかしながら、フッ化水素の潜熱や分解助剤の潜熱、オイル成分の温度上昇による顕熱等を考慮すると、塔底を高温に維持しておくには、多量のエネルギーを要してしまうという問題があった。また、特許文献4に記載された方法では、分解塔の塔底温度を100℃以下にすることが可能であるが、MXの異性化反応が進行するため、高純度のMXを得ることは困難である。
さらに、特許文献5に記載された方法では、MX等のアルキル芳香族炭化水素と超強酸とを分離する際の加熱はほぼ必要なくなるものの、脱離剤の分離回収に追加の蒸留工程が必要となり、当該工程でエネルギーを必要とする。また、大量の脱離剤を使用する必要があるため抽出塔の処理負荷が大きくなること、および抽出の効率を高めるために抽出塔の段数を上げる必要があり、抽出塔に要する設備費用が高くなるため、必ずしも工業的に有利な製造方法ではない。
従って、本発明の課題は、抽剤としてフッ化水素および三フッ化ホウ素を用いて、混合キシレンからMXを抽出分離し、得られたMX−HF−BF錯体から、MXを分離してフッ化水素および三フッ化ホウ素を回収する際に、過大な抽出装置を必要とせず、入手が容易な低レベルのエネルギーを利用できると共にエネルギー使用量を大幅に低減できる方法を提供することである。
本発明者らは、工業的に有利なMXを製造する方法について鋭意検討を行ったところ、混合キシレンからフッ化水素および三フッ化ホウ素を抽剤としてMXを抽出分離した後、脱離剤としてm−キシレンに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンを使用することにより、MXとフッ化水素および三フッ化ホウ素との錯体状態を交換してMXを得ることが可能であり、さらに、形成した脱離剤とフッ化水素および三フッ化ホウ素との錯体は加熱条件下での変質が少ないため、100℃以下の温度範囲にて加熱分解をすることにより、フッ化水素および三フッ化ホウ素および脱離剤を回収し、抽剤および脱離剤として循環使用することが可能であることがわかった。本発明はかかる知見によるものである。
即ち本発明は、以下の通りである。
[1]
m−キシレンおよびその異性体を1種以上含む混合物からのm−キシレンの分離方法であって、下記(1)〜(3)の工程を含む、m−キシレンの分離方法。
(1)前記混合物に、フッ化水素および三フッ化ホウ素からなる抽剤、および第一の希釈剤を添加して、酸塩基抽出により、m−キシレン−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体を形成させた後、前記混合物から前記錯体溶液を分離する工程。
(2)前記錯体溶液に、第二の希釈剤、および脱離剤としてm−キシレンに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンを添加して、m−キシレンと脱離剤との錯体交換を行うことにより、m−キシレンを前記錯体溶液から分離する工程。
(3)前記錯体交換により形成された脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体と第三の希釈剤を加熱して前記錯体を分解し、フッ化水素、三フッ化ホウ素を含む流れと、脱離剤と希釈剤を含む流れに分離する工程。
[2]
前記(3)の工程で回収したフッ化水素、三フッ化ホウ素を、前記(1)の工程に循環使用する、[1]記載の分離方法。
[3]
前記脱離剤がメシチレンである、[1]または[2]に記載の分離方法。
[4]
前記(3)の工程において、圧力0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)、温度60〜100℃で、前記脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体を加熱分解する、[1]〜[3]のいずれかに記載の分離方法。
[5]
前記(3)の工程において、前記脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体の加熱時間が1〜30分である、[1]〜[4]のいずれかに記載の分離方法。
[6]
前記第一、第二、および第三の希釈剤が、それぞれ独立してイソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンからなる群より選択される1種または2種以上の混合物である、[1]〜[5]のいずれかに記載の分離方法。
[7]
前記(3)の工程において、前記脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体の分解を蒸留塔形式の設備で行い、該設備の塔底部で加熱して前記錯体を分解し、フッ化水素、三フッ化ホウ素を塔頂部より抜出し、塔底部より脱離剤と第三の希釈剤、および未分解の脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体溶液との混合物を抜き出す、[1]〜[6]のいずれかに記載の分離方法。
[8]
前記錯体分解を行う蒸留塔形式の設備の塔底部から抜出した脱離剤と第三の希釈剤、および未分解の脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体溶液との混合物をセトラーにて相分離することで脱離剤を前記錯体溶液から分離し、セトラーで相分離した錯体溶液を前記錯体分解を行う蒸留塔形式の設備へ循環させることで、未分解の脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体を加熱分解させる、[7]に記載の分離方法。
本発明によれば、混合キシレンに、希釈剤と、抽剤としてフッ化水素および三フッ化ホウ素を添加し、酸塩基抽出により混合キシレンから、MX−HF−BFから成る錯体が高純度に含まれる抽出液が得られる。その後、その抽出液に、脱離剤としてm−キシレンに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンを添加し、錯体交換を行うことにより、高純度のMXを前記抽出液から高い収率で単離できる。また、錯体交換により形成された脱離剤−HF−BFから成る錯体の分解において、容易に入手できる低レベルのエネルギーで脱離剤−HF−BFから成る錯体を加熱分解することが可能である。
本発明による製造方法を実施するための製造装置の一実施形態を示した概略図。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に記す位置関係に基づくものとする。装置や部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
<MXの分離方法>
本実施形態におけるMXの分離方法は、
(1)m−キシレンおよびその異性体を1種以上含む混合物に、フッ化水素および三フッ化ホウ素からなる抽剤、および第一の希釈剤を添加して、酸塩基抽出により、m−キシレン−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体を形成させた後、前記混合物から前記錯体溶液を分離する工程、
(2)前記錯体溶液に、第二の希釈剤、および脱離剤としてm−キシレンに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンを添加して、m−キシレンと脱離剤の錯体交換を行うことにより、m−キシレンを前記錯体溶液から分離する工程、
(3)記錯体交換により形成された脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体と第三の希釈剤を加熱して前記錯体を分解し、フッ化水素、三フッ化ホウ素を含む流れと、脱離剤と希釈剤を含む流れに分離する工程、
を含む、MXの分離方法である。
本実施形態の分離方法によれば、MXおよびその異性体を1種類以上含む混合物に、フッ化水素および三フッ化ホウ素から成る抽剤と第一の希釈剤を添加し、酸塩基抽出することにより、前記混合物からMX−HF−BFから成る錯体が高純度に含まれる抽出液を得る。その後、その抽出液に、第二の希釈剤と脱離剤としてm−キシレンに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンを添加し、錯体交換を行うことにより、高純度のMXを前記抽出液から分離できる。また、錯体交換により形成された脱離剤−HF−BF錯体は、加熱分解により、フッ化水素、三フッ化ホウ素および脱離剤を単離し、循環利用することができる。さらに、脱離剤−HF−BF錯体は、MX−HF−BF錯体よりも加熱による変質が起こりにくいことから、従来のように過剰な熱量の投与による素早い熱分解を行う必要はなく、脱離剤−HF−BF錯体を比較的低温で分解することができる。その結果、低レベルのエネルギーを利用してMXを分離することが出来、さらに投入するエネルギー量を低減できる。
[MXの酸塩基抽出工程]
本実施形態におけるMXの分離方法は、
m−キシレンおよびその異性体を1種以上含む混合物に、フッ化水素および三フッ化ホウ素からなる抽剤、および第一の希釈剤を添加して、酸塩基抽出により、m−キシレン−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体を形成させた後、前記混合物から前記錯体溶液を分離する工程(酸塩基抽出工程)を含む。
(m−キシレンおよびその異性体を1種以上含む混合物)
本実施形態のMXの分離方法の対象となるm−キシレンおよびその異性体を1種以上含む混合物は、m−キシレンの異性体としてp−キシレン(PX)、o−キシレン(OX)、およびエチルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種以上を含む。なお、該混合物中には異性体以外の化合物が含まれていてもよく、混合物全体に対して、m−キシレンの異性体が質量基準で90%以上含まれていることが好ましい。
本実施形態における分離方法は、上記混合物中で最も塩基性の強いMXを選択的に抽出して分離するものである。
(抽剤として使用される超強酸)
フッ化水素および三フッ化ホウ素からなる抽剤は、MX−HF−BF錯体や後記するような錯体交換反応後の脱離剤−HF−BF錯体が、ルイス酸(気体)を放出することなく錯体状態を維持できるような量で添加されることが好ましい。具体的には、フッ化水素に対する三フッ化ホウ素のモル比(フッ化水素のモル数/三フッ化ホウ素のモル数)が5〜50の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜20の範囲である。フッ化水素に対する三フッ化ホウ素のモル比が上記範囲にあれば、錯体形成する反応容器の容積効率を維持しながら、MX−HF−BF錯体および脱離剤−HF−BF錯体を安定的に維持することができるとともに、錯体溶液から三フッ化ホウ素が気体として放出されてしまうのを有効に抑制できるため、MXや脱離剤が、希釈剤や抽残物を含む油相側に移行してしまう量を低減することができる。
(酸塩基抽出工程で使用される希釈剤)
酸塩基抽出工程において添加される第一の希釈剤は、抽剤によって抽出された成分中の錯体以外の成分、即ち、錯体によって物理溶解した、MXの異性体をストリッピングするのに十分な量で添加されるのが好ましく、具体的には、BFモル数に対する容量で50〜300ml/molを使用するのが好ましい。
前記第一の希釈剤としては、キシレンと溶解するものであれば特に制限なく使用できるが、キシレンが超強酸の存在下で起こす不均化反応や重合等の副反応を抑制する観点から、脂肪族または脂環式の飽和炭化水素を用いることが好ましい。脂肪族または脂環式の飽和炭化水素としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルアダマンタン、デカヒドロアセナフテン等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いことができる。より好ましい希釈剤としては、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2-エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンが挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して用いことができる。
上記した飽和炭化水素に加えて、第4級の炭素原子を含まない他の飽和炭化水素を併用
してもよいが、この場合、装置の容積効率が低下する場合がある。上記した希釈剤には、不飽和結合を持つ不純物や、炭素、水素以外の原子を含む不純物が含まれていないことが
好ましい。
また、上記した飽和炭化水素の中でも、不均化反応の抑制効果の観点からは、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルアダマンタン、デカヒドロアセナフテンをより好ましく用いることができ、特に好ましくはメチルシクロペンタン、cis−デカリン、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルアダマンタン、デカヒドロアセナフテンである。
(酸塩基工程の操作条件)
酸塩基工程の操作温度は、好ましくは−50℃〜+20℃であり、より好ましい範囲は−30℃〜0℃である。温度を20℃以下にすることにより、超強酸であるHF−BFによる腐食を抑えることができ、−50℃以上とすることで過剰な冷却によるコスト増を抑えられる。
酸塩基工程の操作圧力は、好ましくは0.05MPa〜0.5MPa(ゲージ圧)の範囲であり、より好ましくは0.1MPa〜0.4MPa(ゲージ圧)の範囲である。操作圧力を低くし過ぎると、HF−BF3錯体から三フッ化ホウ素(気体)が放出してしまい、錯体状態が維持されない場合がある。また、内部圧力が高過ぎると、それに耐えうる材質や構造の塔を準備する必要があるため、分離コストの上昇を招く傾向にある。
[錯体交換工程]
本実施形態におけるMXの分離方法は、
前記MX−HF−BF錯体から成る溶液に、第二の希釈剤、および脱離剤としてm−キシレンに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンを添加して、m−キシレンと脱離剤の錯体交換を行うことにより、m−キシレンを前記錯体溶液から分離する工程を含む。
(脱離剤)
酸塩基抽出工程で抽出されたMX−HF−BF錯体は、特定の脱離剤を添加することにより錯体状態の交換が行われ、所望のアルキル芳香族炭化水素が分離される。即ち、アルキル芳香族炭化水素の錯体と、錯体交換された脱離剤の錯体とは、下記化1のような平衡反応が成立するものと考えられる。なお、上記した非特許文献1には、超強酸として、フッ化水素と三フッ化ホウ素の混合型超強酸を用いた場合の平衡反応が記載されている。
Figure 0006666587
(式中、AはMXであり、AはMX−HF−BF錯体であり、Aは脱離剤であり、Aは脱離剤−HF−BF錯体である。)
MXに対する相対塩基度が1.6以上の脱離剤を使用することにより、MX−HF−BF錯体と脱離剤との間の錯体状態の交換が容易に進行し、脱離剤の使用量を削減でき、経済的および生産効率の観点からも有利である。脱離剤のMXに対する相対塩基度は、2.0以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましい。
上述した非特許文献1には、詳細な測定法は省略されているが、p−キシレン(PX)の相対塩基度を1とした場合のアルキル芳香族炭化水素の相対塩基度が記載されている。この文献によれば、C8〜C10のアルキル芳香族炭化水素の相対塩基度は下記表1に示される通りである。
Figure 0006666587
本実施形態における脱離剤としては、MXに対する相対塩基度が高く、MXとの蒸留分離が可能で、非錯体状態においてHFと相分離が可能であることが必要である。具体的には、MXに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンが好ましい。より好ましい脱離剤としては、プソイドクメン、ヘミメリテン、メシチレン、デュレン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、およびイソデュレンが挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して用いことができる。さらに、後述する錯体分解工程において脱離剤−HF−BF錯体の変質がより起こりにくい脱離剤として、メシチレンおよびイソデュレンが更に好ましく、メシチレンが特に好ましい。MXに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンを脱離剤として使用することで、後述する錯体分解工程における余剰なエネルギーの投与は必要なく、経済的に有利なプロセスの構築が可能となる。なお、脱離剤として使用するMXに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンには本願の効果を損なわない範囲で他の有機化合物を含有していても良い。
添加される脱離剤の量は、MX−HF−BF錯体と錯体交換し得る量である必要がある。工業的にMXを製造するには、錯体交換を行う反応容器の理論段数が5段〜10段の範囲で錯体交換し得る量であることが好ましい。このような観点から、本実施形態においては、MX−HF−BF錯体溶液中の三フッ化ホウ素に対して、モル比で1〜10の範囲となるような量で、脱離剤が添加されることが好ましい。反応容器の規模、容積効率を考慮すると、1.1〜3.0の範囲であることがより好ましい。
(錯体交換工程で使用される第二の希釈剤)
また、脱離剤とともに第二の希釈剤を添加することにより、錯体交換により分離されたMXは、脱離剤および希釈剤との混合溶液として抽出分離され、蒸留等の公知の手段によりMXのみを高純度で得ることができる。従って、希釈剤は、錯体溶液と油相(MX、脱離剤および希釈剤との混合溶液)とを分離できる程度で添加されることが好ましく、具体的には、錯体交換工程に供給される脱離剤に対する重量比で0.01〜1倍を使用するのが好ましく、0.1〜0.5倍を使用するのがより好ましい。
前記第二の希釈剤としては、キシレンおよび脱離剤と溶解するものであれば特に制限なく使用できるが、キシレンが超強酸の存在下で起こす不均化反応や重合等の副反応を抑制する観点から、脂肪族または脂環式の飽和炭化水素を用いることが好ましい。脂肪族または脂環式の飽和炭化水素としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルアダマンタン、デカヒドロアセナフテン等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いことができる。より好ましい希釈剤としては、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2-エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンが挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して用いことができる。また、第二の希釈剤は、第一の希釈剤と同じ希釈剤を使用しても良いし、異なる希釈剤を使用することも出来る。
(錯体交換工程の操作条件)
錯体交換工程の操作温度は、好ましくは−50℃〜+20℃であり、より好ましい範囲は−30℃〜0℃である。温度を20℃以下にすることにより、超強酸であるHF−BFによる腐食を抑えることができ、−50℃以上とすることで過剰な冷却によるコスト増を抑えられる。
錯体交換工程の操作圧力は、好ましくは0.05MPa〜0・5MPa(ゲージ圧)の範囲であり、より好ましくは0.1MPa〜0.4MPa(ゲージ圧)の範囲である。操作圧力を低くし過ぎると、HF−BF3錯体から三フッ化ホウ素(気体)が放出してしまい、錯体状態が維持されない場合がある。また、内部圧力が高過ぎると、それに耐えうる材質や構造の塔を準備する必要があるため、分離コストの上昇を招く傾向にある。
[錯体分解工程]
本実施形態におけるMXの分離方法は、
前記錯体交換により形成された脱離剤−HF−BF錯体と第三の希釈剤を加熱して前記錯体を分解し、フッ化水素、三フッ化ホウ素を含む流れと、脱離剤と希釈剤を含む流れに分離する工程を含む。
(錯体分解工程の操作条件)
MX−HF−BF錯体から、錯体交換により得られた脱離剤−HF−BF錯体から成る溶液を加熱分解することにより、脱離剤、および抽剤であるフッ化水素、三フッ化ホウ素を分離する。MX−HF−BF錯体は、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の圧力範囲において、100℃以下の温度で分解可能であるが、MX−HF−BF錯体が熱により変質してしまうため、変質を抑制するためには短時間で熱分解を行う必要があり、100℃以上の温度で分解する必要がある。一方、脱離剤−HF−BF錯体は、MX−HF−BF錯体よりも加熱による変質が起こりにくく、また少量の変質が起きたとしても脱離剤として再使用出来ることから、100℃以下の分解温度でより長い加熱時間にて脱離剤−HF−BF錯体の加熱分解を行うことができる。
錯体分解工程の具体的な操作条件は、圧力は0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.15〜0.4MPa(ゲージ圧)がより好ましい、温度は60〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。錯体分解の加熱時間は1〜30分が好ましく、2〜20分がより好ましい。圧力を0.1〜1.0MPaとすることで、適度な温度で錯体分解を行うことが出来る。錯体分解を60〜100℃の温度で行うことで、容易に入手できる安価なエネルギーを加熱源として用いることができる。錯体の加熱分解の時間が1〜30分であることで、過大な装置を用いることなく錯体分解を実施できる。
脱離剤−HF−BF錯体の錯体分解により得られたフッ化水素および三フッ化ホウ素は、ガス状態で脱離剤と分離される。液相側は脱離剤と希釈剤、および未分解の脱離剤−HF−BF錯体から成る錯体溶液との混合物として分離される。
(錯体分解工程を行う装置)
錯体分解工程は、蒸留塔形式の装置(以下、錯体分解塔と記す)で行うことが好ましい。前記錯体交換工程において得られた脱離剤−HF−BF錯体から成る溶液は、第三の希釈剤と共に錯体分解塔へ供与され、塔底部からの加熱によって前記の温度、および圧力にて錯体分解が行われる。錯体分解により得られたフッ化水素および三フッ化ホウ素は、前記錯体分解塔の塔頂から排出し、塔底部より脱離剤と希釈剤、および未分解の脱離剤−HF−BF錯体から成る錯体溶液との混合物を排出する。
錯体分解塔の塔底おいて、脱離剤−HF−BF錯体から成る錯体溶液を完全に分解した場合、錯体分解塔の塔底成分は油相のみとなり、温度上昇による顕熱が必要となり、本来の錯体分解に必要な熱量よりも余剰な熱量を要してしまうと共により高い温度レベルの加熱源が必要になる。従って、分解塔塔底における前記錯体の分解率(分解塔塔底における全脱離剤に対する錯体分解した脱離剤のモル分率)は40〜80モル%が好ましく、50〜70モル%がより好ましい。錯体分解率が高くなるほど塔底温度が上昇する傾向があり、錯体分解率を40〜80モル%の範囲とすることで、分解塔底の温度を100℃以下に抑え効率的に錯体分解を行うことが出来る。
前記錯体分解塔の塔底から排出された脱離剤と希釈剤、および未分解の脱離剤−HF−BF錯体から成る錯体溶液との混合物は、セトラー槽に移送し、静置することで、脱離剤と希釈剤から成る油相と、未分解の脱離剤−HF−BF錯体から成る錯体溶液相とに分離する。前記セトラー槽で分離された前記油相、および前記錯体溶液相をそれぞれ排出し、前記油相中の脱離剤は脱離剤として循環利用する。前記錯体溶液相は、前記錯体分解塔へリサイクルして再度加熱することで、脱離剤−HF−BF錯体の錯体分解を行う。
前記錯体分解塔から前記セトラー槽との間で、未分解の脱離剤−HF−BF錯体から成る錯体溶液を循環させることで、錯体分解塔の塔底温度を、脱離剤−HF−BF錯体の分解温度に制御することが可能になる。
(錯体分解工程で使用される第三の希釈剤)
前記錯体分解塔に第三の希釈剤を添加することにより、錯体分解により単離した脱離剤は、セトラー槽にて脱離剤および希釈剤との混合溶液として相分離される。したがって、前記希釈剤は、脱離剤−HF−BF錯体溶液相と油相(脱離剤と希釈剤との混合溶液)とを分離できる程度で添加することが好ましい。また、希釈剤を添加することにより、錯体分解の際の脱離剤の不均化反応を抑制することができる。上記のように錯体溶液相と油相とを分離でき、脱離剤の不均化反応を抑制できる希釈剤の好ましい添加量としては、前記錯体分解塔へ供与される脱離剤−HF−BF錯体から成る溶液に対する重量比で0.001〜0,5の範囲であり、より好ましくは0.01〜0.25の範囲である。希釈剤の添加量を上記範囲内とすることにより、錯体溶液相と油相との相分離や脱離剤の不均化反応の抑制に有利であり、かつ経済的および生産効率の観点からも有利である。
前記第三の希釈剤としては、脱離剤と溶解するものであれば特に制限なく使用できるが脱離剤が超強酸の存在下で起こす重合等の副反応を抑制する観点から、脂肪族または脂環式の飽和炭化水素を用いることが好ましい。脂肪族または脂環式の飽和炭化水素としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルアダマンタン、デカヒドロアセナフテン等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いことができる。より好ましい希釈剤としては、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2-エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンが挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して用いことができる。また、第三の希釈剤は、第一の希釈剤または第二の希釈剤と同じ希釈剤を使用しても良いし、異なる希釈剤を使用することも出来る。
(脱離剤の循環使用)
前記セトラー槽で油相として得られた脱離剤および希釈剤との混合物は、蒸留等の公知の手段により脱離剤のみを単離しても良いが、脱離剤と希釈剤の混合物として、前記錯体交換工程へ循環使用することもできる。
(超強酸の循環使用)
また、前記錯体分解工程で単離されたフッ化水素、三フッ化ホウ素は、分解工程の圧力を0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)とすることで圧縮機等を使用せず、自圧にて前記酸塩基抽出工程へと循環使用することができる。
<m−キシレンの分離装置>
次に本実施形態におけるm−キシレンの分離装置を図1を参照しながら説明する。
図1は本発明の分離方法を実施するための装置の一実施形態を示した該略図である。図1において、酸塩基抽出塔1には塔中段部からは混合キシレンが、塔上部からはフッ化水素と三フッ化ホウ素が、塔下部からは第一の希釈剤がそれぞれ供給される。酸塩基抽出塔1内ではMX−フッ化水素−三フッ化ホウ素錯体が形成され、酸塩基抽出塔塔底の管5から抜出される。m−キシレン以外のキシレン異性体は希釈剤との混合液として酸塩基抽出塔塔頂の管6より抜出される。
酸塩基抽出塔1から抜出されたMX−フッ化水素−三フッ化ホウ素錯体から成る錯体溶液を管8により錯体交換塔7の上部に供給され、脱離剤と第二の希釈剤が錯体交換塔7の下部の管9より供給される。錯体交換塔7内では、MXと脱離剤の錯体交換が行われる。脱離剤と錯体状態を交換したMXは、MXと脱離剤と希釈剤との混合液として管11より、フッ化水素および三フッ化ホウ素は脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素錯体から成る錯体溶液として管10よりそれぞれ抜き出される。管11より抜き出されるMXを含む混合液は、蒸留等の方法によってMXを容易に単離することが出来る。
管10より抜出された脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素錯体から成る錯体溶液は、管13より錯体分解塔12に供給される。錯体分解塔12内では、管14から供給される第三の希釈剤の存在下で脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素錯体から成る錯体溶液が加熱分解され、錯体分解で得られたフッ化水素および三フッ化ホウ素は管16より抜出される。錯体分解で得られた脱離剤は、未分解の脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素錯体および希釈剤との混合物として管15より抜き出される。
管15より抜き出された混合物は、セトラー17にて静置・相分離を行うことで油相と錯体溶液相に分離される。脱離剤と希釈剤から成る油相は、管18より回収し、錯体交換塔7に循環することができる。未分解の脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素錯体から成る錯体溶液相は管19より抜き出される。管19から抜きだされた錯体溶液相は錯体分解塔12へリサイクルされ、再度加熱分解を行うことでフッ化水素および三フッ化ホウ素が管16より回収される。
本実施形態において使用される酸塩基抽出塔1および錯体交換塔7としては、液々抽出操作系に適用される公知の手段を特に制限なく使用することができ、充填塔、多孔板塔、多孔板パルス塔、攪拌機付酸塩基抽出塔、WINTRAY(登録商標)、ミキサーセトラー等を好適に使用できる。これらの中でも、単位断面積当りの処理量が高く、抽出効率が高い形式のものが好ましく使用できる。
本実施形態において使用される錯体分解塔12としては、蒸留操作に適用される公知の手段を特に制限なく使用することができ、充填塔、多孔板塔、泡鐘塔等を好適に使用できる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
後記する各工程でのMX−HF−BF錯体、MXの物質量は、各フッ化水素溶液相および油相を、それぞれ氷水中に抜き出し、得られたフッ化水素溶液相および油相にそれぞれ中和処理を行い、フッ化水素溶液に溶解していた油分および油相中から微量酸分を取り除いた油分をそれぞれ得て、ガスクロマトグラフィー(GC−2010、島津製作所製)を用いて、n−デカン(試薬グレード、和光純薬工業株式会社製)を内部標準物質として検量線を作成することにより、評価したものである。なお、キャピラリーカラムとして、信和化工株式会社製のULBON Xylene Master(内径0.32mmφ、長さ50m)を用いた。昇温プログラムは、70℃から2℃/分の割合で150℃まで昇温し、30分間保持した。
実施例1
[MXの酸塩基抽出工程]
原料として、エチルベンゼン、p−キシレン、MX、およびo−キシレン(それぞれ、試薬グレード、和光純薬工業株式会社製)を、それぞれ質量基準で14%、19%、41%、および24%含まれるように混合したキシレン混合物を用いた。
内部に合計52枚の回転円盤を備える内径45mm、全長2,000mmの回転円盤抽出塔(材質SUS316L製)を、塔内温度0℃、窒素圧で0.24MPaに保持し、抽出塔の下部に備えた管より、メチルシクロペンタンが39mol%含まれるヘキサン(株式会社ゴードー製)を希釈剤として524g/時の割合で供給した。また、抽出塔の上段に備えた管から、フッ化水素(森田化学工業株式会社製)、三フッ化ホウ素(ステラケミファ株式会社製)、エチルベンゼン、p−キシレン、MXおよびo−キシレンをモル比で、フッ化水素:三フッ化ホウ素:エチルベンゼン:p−キシレン:MX:o−キシレン=5:0.5:0.14:0.18:0.40:0.23で、1909g/時の割合の混合液として供給し、MXの抽出を行った。
フッ化水素および三フッ化ホウ素により抽出されたMXを、MX−HF−BF錯体のフッ化水素溶液として、抽出塔の塔底に備えた管から1429g/時の割合で連続的に排出した。また、抽出塔の塔頂に備えた管より、錯体溶液以外の混合成分を1005g/時の割合で連続的に排出した。塔底から排出された錯体溶液のMX、HFおよびBFのモル比は、0.39:5:0.5であった。この排出された錯体溶液(フッ化水素溶液)中のMX−HF−BF錯体のモル数は、錯体溶液中のキシレン混合物の総モル数に対して0.995であった。また、下記式よりMX抽出率を算出したところ、98.5%であった。
MX抽出率(%)=([抽出塔から排出されるMX−HF−BF錯体]のモル数)/([供給したキシレン混合物中のMX]のモル数)×100
[錯体交換工程]
錯体交換塔として、内部に合計26枚の回転円盤を備える内径45mm、全長1,000mmの回転円盤抽出塔(材質SUS316L)を塔内温度0℃、窒素圧で0.24MPaに保持し、抽出塔の上段に備えた管より、上記したMX抽出工程で排出された錯体溶液を、1261g/時の割合で供給した。また、希釈剤であるメチルシクロペンタンを39mol%含有するヘキサンを20wt%、および脱離剤であるメシチレン(試薬グレード、和光純薬工業株式会社製)を80wt%含む混合液を、抽出塔の下部に備えた管より1162g/時の割合で供給した。
錯体交換塔内でメシチレンと錯体交換したMXを、メシチレンと希釈剤との混合液として、錯体交換塔の塔頂に備えた管より580g/時の割合で連続的に排出した。排出された混合液中のMXの濃度、およびメシチレンの濃度は、質量基準でそれぞれ、42.4%および20.4%であった。また、メシチレン−HF−BF錯体のフッ化水溶液を、錯体交換塔の塔底に備えた管より1753g/時の割合で連続的に排出した。排出された錯体フッ化水素溶液には、MX−HF−BF錯体とメシチレン−HF−BF錯体とが含まれており、その割合は、モル比で5:95であった。また、下記式よりMX錯体交換率を算出したところ、88%であった。
MX錯体交換率(%)=100−([錯体交換塔から排出されたMX−HF−BF錯体]のモル数)/([錯体交換塔に供給されたMX−HF−BF錯体]のモル数)×100
[錯体分解工程]
圧力0.24MPa、塔底温度80℃に加熱した錯体分解塔(SUS316L製、内径760 mm、長さ1760 mm、1/2インチのテフロン製ラシヒリング充填)へ、上記で得られたメシチレン−HF−BF錯体溶液を600g/時の割合で、メチルシクロペンタンが39mol%含まれるヘキサンを希釈剤として135g/時の割合で供給し、塔頂よりフッ化水素および三フッ化ホウ素を365g/時の割合で連続的に排出した。また、メシチレンと希釈剤、および未分解のメシチレン−HF−BF錯体溶液との混合物を塔底部より1550g/時の割合で連続的に排出し、40℃へ冷却後、セトラー槽で静置して相分離を行い、メシチレンと希釈剤を含む油相を370g/時の割合で連続的に排出した。排出された未分解のメシチレン−HF−BF錯体溶液相は錯体分解塔へ再度供給し、加熱分解を行った。
以上の結果より、MX酸塩基抽出工程および錯体交換工程を経て、原料であるキシレン混合物からMXを製造した際のMX収率は87%であった。
従来技術では錯体分解時にMXの異性化反応を抑え、高純度なMXを得るために塔底温度を100℃以上へ加熱する必要があったが、本発明によるm−キシレンの製造方法によれば、80℃程度の温度で十分であり、熱源として温水などを利用することも可能であり、エネルギーコストを削減でき工業的に有利となった。
[MXの単離]
上記した錯体交換工程において、抽出塔の塔頂に備えた管より排出されたMXを含む混合液を蒸留して、MXの単離を行った。先ず、脱離剤と希釈剤とを含むMX約1kgを、93kPaで蒸留を行うことにより、ヘキサンとメチルシクロペンタンを主に含むMXの沸点未満の成分と、MXの沸点以上の成分とに分離を行った。続いて、31kPaで蒸留を行うことにより、MXを主に含む成分と、MXの沸点よりも高いメシチレンを主に含む成分とに分離を行った。この2段階の蒸留操作により、MX約300gを回収した。MXの純度は99.6%であった。なお、使用した蒸留塔の理論段数は約20段、各蒸留作業の還流比条件は30、MXの蒸留回収率は70%であった。
比較例1
[錯体分解工程]
圧力0.24MPa、塔底温度80℃に加熱した錯体分解塔(SUS316L製、内径760 mm、長さ1760 mm、1/2インチのテフロン製ラシヒリング充填)へ、実施例1の酸塩基抽出工程で得られたMX−HF−BF錯体溶液を600g/時の割合で、メチルシクロペンタンが39mol%含まれるヘキサンを希釈剤として140g/時の割合で供給し、塔頂よりフッ化水素および三フッ化ホウ素を460g/時の割合で連続的に排出した。また、MXと希釈剤、および未分解のMX−HF−BF錯体溶液との混合物を塔底部より1500g/時の割合で連続的に排出し、40℃へ冷却後、セトラー槽で静置して相分離を行い、MXと希釈剤を含む油相を280g/時の割合で連続的に排出した。排出された未分解のMX−HF−BF錯体溶液相は錯体分解塔へ再度供給し、加熱分解を行った。
上記した錯体分解工程において、セトラー槽から油相として排出されたMXと希釈剤を含む油相を、実施例1と同様の操作によりMXの単離を行った。得られたMXの純度は91%であり、MX−HF−BF錯体が熱により変質することで、o−キシレン,p−キシレンが生成し、高純度のMXを得ることは困難であった。
本発明の分離方法によれば、混合キシレンからMXを分離するプロセスにおいて、過大な抽出装置を必要とせず、容易に入手できる低レベルのエネルギーを用いることができると共に従来に比べエネルギー使用量を低減でき、工業的に有利に高純度のMXを得ることができる。
1 酸塩基抽出塔
2 循環フッ化水素・三フッ化ホウ素供給管
3 混合キシレン供給管 抽出キシレン供給管
4 第一の希釈剤供給管
5,10,15 塔底抜出し管
6,11,16 塔頂抜出し管
7 錯体交換塔
8 MX-HF-BF3錯体溶液供給管
9 脱離剤/第二の希釈剤供給管
12 錯体分解塔
13 脱離剤-HF-BF3錯体溶液供給管
14 第三の希釈剤供給管
17 セトラー槽
18 油相排出管
19 錯体溶液相排出管
20 循環脱離剤-HF-BF3錯体溶液供給管

Claims (8)

  1. m−キシレンおよびその異性体を1種以上含む混合物からのm−キシレンの分離方法であって、下記(1)〜(3)の工程を含む、m−キシレンの分離方法。
    (1)前記混合物に、フッ化水素および三フッ化ホウ素からなる抽剤、および第一の希釈剤を添加して、酸塩基抽出により、m−キシレン−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体を形成させた後、前記混合物から前記錯体溶液を分離する工程。
    (2)前記錯体溶液に、第二の希釈剤、および脱離剤としてm−キシレンに対する相対塩基度が1.6以上である炭素数9〜10のアルキルベンゼンを添加して、m−キシレンと脱離剤との錯体交換を行うことにより、m−キシレンを前記錯体溶液から分離する工程。
    (3)前記錯体交換により形成された脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体と第三の希釈剤を加熱して前記錯体を分解し、フッ化水素、三フッ化ホウ素を含む流れと、脱離剤と希釈剤を含む流れに分離する工程。
  2. 前記(3)の工程で回収したフッ化水素、三フッ化ホウ素を、前記(1)の工程に循環使用する、請求項1記載の分離方法。
  3. 前記脱離剤がメシチレンである、請求項1または2に記載の分離方法。
  4. 前記(3)の工程において、圧力0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)、温度60〜100℃で、前記脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体を加熱分解する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離方法。
  5. 前記(3)の工程において、前記脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体の加熱時間が1〜30分である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離方法。
  6. 前記第一、第二、および第三の希釈剤が、それぞれ独立してイソヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2−エチルヘキサン、cis−デカリン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンからなる群より選択される1種または2種以上の混合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離方法。
  7. 前記(3)の工程において、前記脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体の分解を蒸留塔形式の設備で行い、該設備の塔底部で加熱して前記錯体を分解し、フッ化水素、三フッ化ホウ素を塔頂部より抜出し、塔底部より脱離剤と第三の希釈剤、および未分解の脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体溶液との混合物を抜き出す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分離方法。
  8. 前記錯体分解を行う蒸留塔形式の設備の塔底部から抜出した脱離剤と第三の希釈剤、および未分解の脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体溶液との混合物をセトラーにて相分離することで脱離剤を前記錯体溶液から分離し、セトラーで相分離した錯体溶液を前記錯体分解を行う蒸留塔形式の設備へ循環させることで、未分解の脱離剤−フッ化水素−三フッ化ホウ素から成る錯体を加熱分解させる、請求項7に記載の分離方法。
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