JP6665964B2 - 着色剤及び水性顔料分散体 - Google Patents

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Description

本発明は各種インクの製造に使用可能な着色剤及び水性顔料分散体に関する。
インクとしては、例えば着色剤と、有機溶剤や水等の溶媒とを含有するものが知られており、前記着色剤として顔料を含有する顔料インクが広く使用されている。
しかし、顔料は、通常、一次粒子径がサブミクロン以下の大きさであって凝集しやすいものであるため、前記顔料インクに含まれる顔料が経時的に凝集し、長期間にわたり良好な分散安定性を維持できない場合があった。
前記溶媒中で凝集しにくく、長期間にわたり良好な分散安定性を備えたインクとしては、例えば顔料、分散剤および水性媒体からなる筆記具用水性インキ組成物において、前記分散剤が親水性部分と親油性部分を併有する重合体であり、水性媒体が不揮発性の親水性有機溶剤を含有する筆記具用水性インキ組成物が知られている(例えば特許文献1参照。)。
しかし、前記特許文献1に記載のインクでは、インクの浸透性の高い記録媒体(例えば普通紙等)に印刷した場合に、光学濃度の高い画像等を形成することができない場合があった。
インクやその原料である水性顔料分散体中における顔料の分散安定性を向上させるためには、通常、顔料に分散性を付与することのできる分散樹脂の使用量を増加させる方法がある。しかし、前記分散樹脂の使用量を増加させると、相対的に顔料の含有量が減少するため、とりわけ浸透性の高い記録媒体に印刷される画像等の光学濃度が著しく低下する場合があった。
すなわち、インク中における顔料等の着色剤の分散安定性の向上と、普通紙等に形成された画像等の光学濃度の向上とは、トレードオフの関係にあるため、これらをより一層高いレベルで両立した着色剤等はいまだ見出されていなかった。
特開昭54−10023号公報
本発明が解決しようとする課題は、水や有機溶剤等の溶媒中における分散安定性に優れ、かつ、光学濃度の高い画像等の記録を形成可能なインクの製造に使用可能な着色剤及び水性顔料分散体を提供することである。
本発明は、酸基または酸無水基と、加水分解性シリル基またはシラノール基とを有する化合物(A)、及び、前記加水分解性シリル基またはシラノール基に対する反応性を有する官能基(b)を有する顔料(B)との反応物を含有することを特徴とする着色剤に関するものである。
本発明の着色剤は、水や有機溶剤等の溶媒中における分散安定性に優れ、かつ、光学濃度の高い画像等の記録を形成可能なインク等の製造に使用することができる。
本発明の着色剤は、酸基または酸無水基と、加水分解性シリル基またはシラノール基とを有する化合物(A)、及び、前記加水分解性シリル基またはシラノール基に対する反応性を有する官能基(b)を有する顔料(B)との反応物を含有することを特徴とする。
(化合物(A))
前記着色剤に使用する化合物(A)としては、酸基または酸無水基のいずれか一方または両方と、加水分解性シリル基またはシラノール基のいずれか一方または両方とを有する化合物を使用する。
前記化合物(A)は、前記顔料(B)に反応することで、着色剤に優れた分散安定性を付与する。前記化合物(A)であれば、前記顔料(B)に対する前記化合物(A)の使用量が、従来の分散樹脂の使用量と比較して少ない場合であっても、水性媒体に対する優れた分散安定性を付与することができる。
前記化合物(A)は、前記顔料(B)の質量に対して1質量%〜5質量%の範囲で使用することが好ましく、2質量%〜3質量%の範囲で使用することが、水性媒体中においてより一層分散安定性に優れ、かつ、インクの浸透性の高い記録媒体(例えば普通紙等)に対して光学濃度の高い画像を形成可能なインクや水性顔料分散体の製造に使用可能な着色剤を得るうえでより好ましい。
前記化合物(A)が有する酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。また、前記酸無水基としては、例えば無水コハク酸に由来する酸無水基等が挙げられる。
前記化合物(A)としては、分子中に酸基または酸無水基を1モル〜10モル有するものを使用することが好ましく、1モル〜5モル有するものを使用することが、水等の溶媒中における優れた分散安定性を備え、かつ、普通紙等に対して光学濃度の高い画像を形成可能な着色剤を得るうえでより好ましい。
また、化合物(A)としては、加水分解性シリル基またはシラノール基のいずれか一方または両方を有するものを使用する。前記加水分解性シリル基は、加水分解することによってシラノール基を形成し、これが、後述する顔料(B)が有する官能基(b)と反応し結合を形成する。
また、前記化合物(A)としては、分子中に加水分解性シリル基またはシラノール基を合計1モル〜10モル有するものを使用することが好ましく、1モル〜5モル有するものを使用することがより好ましく、1モル〜2モル有するものを使用することが、水等の溶媒中における優れた分散安定性を備えた着色剤を得るうえでより好ましい。
前記化合物(A)としては、具体的には、下記一般式(1)または一般式(2)で示される酸基または酸無水基含有シランカップリング剤を用いることができる。
Figure 0006665964
Figure 0006665964
[式(1)及び(2)中のRは二価の飽和炭化水素基または二重結合もしくは三重結合を有する二価の不飽和炭化水素基であり、Rは一価の炭化水素基または水酸基であり、Rは一価の炭化水素基であり、nは2または3である。
前記式(1)及び(2)中のRは、二価の飽和炭化水素基、または、二重結合もしくは三重結合を有する二価の不飽和炭化水素基である。
前記二価の飽和炭化水素基は、直鎖状のものであっても分岐したものであってもよく、アルキレン基を構成する水素原子の一部が他の原子に置換されたものであってもよい。
前記二価の飽和炭化水素基は、炭素原子数3〜12個のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数3〜8個のアルキレン基であることがより好ましく、炭素原子数3〜5個のアルキレン基であることが特に好ましい。
前記二価の飽和炭化水素基としては、例えばプロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基、シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基等の二価の非置換飽和炭化水素基、または、これらの水素原子の一部または全部がハロゲン原子等の他の原子で置換された構造を有する二価の置換飽和炭化水素基が挙げられる。
また、前記二重結合もしくは三重結合を有する二価の不飽和炭化水素基は、直鎖状または分岐状の構造を有するものであってもよく、前記二価の不飽和炭化水素基を構成する水素原子の一部が他の原子に置換されたものであってもよい。また、前記二価の不飽和炭化水素基は、二重結合または三重結合の一方または両方を、主鎖に有していてもよく、側鎖に有してもよい。
前記二重結合もしくは三重結合を有する二価の不飽和炭化水素基としては、例えばプロペニレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基等のアルケニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、オクチニレン基等のアルキニレン基等の二価の非置換不飽和炭化水素基、または、これらの水素原子の一部または全部がハロゲン原子等の他の原子で置換された構造を有する二価の置換不飽和炭化水素基が挙げられる。
前記Rとしては、前記したなかでも、プロピレン基であることが特に好ましい。
また、前記一般式(1)及び(2)中のRとしては、一価の炭化水素基を使用することができる。前記一価の炭化水素基としては、例えば炭素原子数1〜10個の炭化水素基を使用することが好ましく、炭素原子数1〜6個の炭化水素基を使用することがより好ましい。
前記一価の炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基、フェニル基であることが好ましい。
は炭素数1〜4の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基などが挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基が好ましい。
また、前記一般式(1)及び(2)中のRとしては、一価の炭化水素基を使用することができる。前記一価の炭化水素基としては、例えば炭素原子数1〜4個の炭化水素基を使用することが好ましく、炭素原子数1〜2個の炭化水素基を使用することがより好ましい。
前記一価の炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基等が挙げられ、メチル基、エチル基であることが好ましい。また、前記一般式(1)及び(2)中のnは、2または3であることが好ましく、3であることがより好ましい。
前記した好適なR、R、R及びnを有する化合物を用いることによって、水や有機溶剤等の溶媒中における分散安定性に優れ、かつ、光学濃度の高い画像等の記録を形成可能なインクの製造に使用可能な着色剤及び水性顔料分散体を得ることができる。
前記一般式(1)で示される構造を有する化合物は、無水コハク酸に由来する酸無水基と、後述する加水分解性シリル基またはシラノール基とを有する化合物であって、通常、無水コハク酸基含有シランカップリング剤といわれるものを使用することができる。
前記一般式(1)で示される構造の化合物としては、例えば3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸、メチルジメトキシシリルプロピル無水コハク酸、メチルジエトキシシリルプロピル無水コハク酸などを使用することができ、なかでも、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物を使用することが、入手しやすく、より優れた分散安定性を付与でき、かつ、前記化合物(A)が有する加水分解性シリル基等と前記顔料(B)が有する官能基(b)との反応によって生成する場合があるアルコールを除去しやすいため好ましい。
前記一般式(2)で示される構造を有する化合物は、カルボキシル基である酸基と、後述する加水分解性シリル基またはシラノール基とを有する化合物である。
前記一般式(2)で示される構造の化合物は、前記一般式(1)で示される化合物が有する無水コハク酸に由来する酸無水基を加水分解することによって得ることができる。
前記一般式(2)で示される構造を有する化合物は、前記一般式(1)で示される化合物を純水に投入し、100℃となるまで加熱撹拌し、加水分解反応によって発生したメタノール及び水分を除去することで得ることができる。
前記加水分解反応の温度及び時間は、好ましくは反応温度30〜130℃、より好ましくは80〜120℃で、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜3時間である。
(顔料(B))
本発明の着色剤を構成する前記反応物の製造に使用する顔料(B)としては、前記化合物(A)と反応し得る官能基(b)を有するものを使用する。
前記顔料(B)としては、無機顔料または有機顔料のうち、前記化合物(A)が有する加水分解性シリル基またはシラノール基と反応し得る官能基(b)を有する顔料を使用することができる。
前記顔料(B)が有する官能基(b)としては、例えば水酸基、カルボキシル基等が挙げられ、なかでも水酸基が、前記化合物(A)が有する加水分解性シリル基またはシラノール基に対する反応性に優れるため好ましい。
前記顔料(B)としては、例えばカーボンブラックであれば、従来知られるコンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものを使用することができる。
前記顔料(B)としては、予め前記官能基(b)を有する顔料を使用することもでき、また、任意の顔料に官能基(b)を導入することによって得られた顔料を使用することもできる。
前記顔料(B)のうち、例えばカーボンブラックとしては、官能基(b)として水酸基やカルボキシル基等の官能基を有するカーボンを使用することができる。前記カーボンとしては、例えば酸性を示すカーボンブラックを使用することができる。前記酸性カーボンブラックとしては、具体的には、三菱化学株式会社製の#970、#1000、#1000N、#2350、#2650、MA7、MA77、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA100S、MA230、MA14、MA220、オリオンエンジニアドカーボンズ社製ガスブラック製法のPRINTEXシリーズ、COLOUR BLACKシリーズ、NEROXシリーズ、SPECIAL BLACKシリーズ、NIPex150、160IQ、170IQ、180IQ、旭カーボン株式会社製のSUNBLACKシリーズなどが挙げられる。
なかでも、前記カーボンブラックとしては、水や有機溶剤等の溶媒中における分散安定性に優れ、かつ、光学濃度の高い画像等の記録を形成可能なインクの製造に使用できる着色剤を得るうえで、三菱化学株式会社製のMAシリーズ、オリオンエンジニアドカーボンズ社製のNEROXシリーズ、NIPex160IQ、旭カーボン株式会社製のSUNBLACK−XシリーズなどのpHが4.5以下のカーボンブラックを使用することが好ましい。
本発明の着色剤は、前記酸基または酸無水基と、加水分解性シリル基またはシラノール基とを有する化合物(A)、及び、前記加水分解性シリル基またはシラノール基に対する反応性を有する官能基(b)を有する顔料(B)との反応物を含有する。
前記反応物は、前記化合物(A)が有する加水分解性シリル基またはシラノール基のいずれか一方または両方と、前記顔料(B)が有する官能基(b)との反応物である。
前記反応物としては、前記化合物(A)と前記顔料(B)との合計質量に対する前記化合物(A)の質量が0.001〜0.5の範囲であるものを使用することが好ましく、0.01〜0.13の範囲であるものを使用することが、より一層優れた分散安定性と、普通紙に対する発色濃度をより一層向上させるうえで好ましい。なお、前記顔料(B)が有する官能基(b)は、全て前記化合物(A)が有する官能基と反応してもよく、前記反応物中に残存してもよい。
本発明の着色剤としては、前記着色剤の全量に対して0.1質量%〜100質量%の範囲で前記反応物を含むものを使用することが好ましく、50質量%〜100質量%の範囲で含むものを使用することがより好ましく、90質量%〜100質量%含むものを使用することがさらに好ましく、100質量%含むものを使用することが、未反応物や副生成物の含有量が少なく、優れた分散安定性を維持した着色剤を得るうえで特に好ましい。
前記化合物(A)と前記顔料(B)との反応は、例えば溶媒の存在下、前記化合物(A)と前記顔料(B)とを混合し、必要に応じて分散機を用いて分散させた後、その分散体を乾燥させることによって行うことができる。具体的には、前記反応は、前記乾燥後または乾燥過程で進行させることができる。
前記反応物を製造する際に使用可能な溶媒としては、例えば水を単独で使用してもよく、水と水溶性溶媒とを含む混合溶媒を使用することができる。
前記水溶性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素原子数が3〜6個のケトン及び炭素原子数が1〜5個のアルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
前記反応物を製造する際に使用可能な分散機としては、例えば二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、ヘンシェルミキサー、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機等が挙げられる。なかでも、前記分散機としては、超音波分散機を使用することが、短時間で顔料(B)の濡れ性を向上させる効果を得るうえで好ましい。
前記反応物を製造する際の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥法、減圧乾燥法、スチームチューブドライヤー、通気乾燥法、減圧下マイクロ波乾燥法、噴霧乾燥法、気流乾燥法、撹拌乾燥法、凍結乾燥法などが利用できる。前記乾燥温度は、前記化合物(A)と顔料(B)とを脱水縮合反応させる場合であれば、かかる反応が起こる80℃〜200℃の範囲あることが好ましい。
本発明では、前記方法で得られた反応物を含む本発明の着色剤を、後述する水性媒体に分散させることによって水性顔料分散体を製造することができる。
前記水性顔料分散体の製造に使用可能な水性媒体としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることができる。また、前記水としては、紫外線照射または過酸化水素の添加などにより滅菌した水を使用することが、水性顔料分散体やインク等を長期保存する場合にカビまたはバクテリアの発生を防止することができるため好ましい。
また、前記水性媒体としては、前記水の他に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールおよびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)2−ピロリジノンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンベンジルアルコールエーテルなど、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
なかでも、前記水性媒体としては、2−ピロリジノンを使用することが、より一層分散性に優れた着色剤を得るうえで好ましく、トリエチレングリコールやグリセリン等の湿潤性を有するものを使用することが、溶媒の揮発等を抑制するうえで好ましい。
前記水性顔料分散体を製造する際に、前記着色剤と前記水性媒体等の溶媒とを混合する方法としては、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、ヘンシェルミキサー、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機等が挙げられる。なかでも、前記分散機としては、超音波分散機を使用することが、着色剤である前記反応物の1次粒子を傷つけず、親水性や分散性をより一層向上させるうえで好ましい。
また、本発明の水性顔料分散体としては、前記反応物及び水性媒体のほかに必要に応じて添加剤を含有するものを使用することができる。
前記添加剤としては、例えば表面張力調整剤、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を使用することができる。
本発明の水性顔料分散体は、後述するインクや塗料の製造に使用するものである。前記水性顔料分散体は、水性顔料分散体の全量に対して前記着色剤に含まれる前記反応物を0.075質量%〜1質量%の範囲で含有するものを使用することが好ましい。
上記方法で得られた本発明の水性顔料分散体は、各種インクや塗料等の製造に使用することができる。
(印刷方法)
前記水性顔料分散体を用いた塗料またはインクを用いた印刷方法としては、例えばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機、インクジェット印刷等を用いる方法が挙げられる。
前記インクジェット印刷法で使用されるインクには、その他の印刷法で使用されるインクと比較してより一層高いレベルの分散安定性が求められる。本発明の着色剤を含有するインクは、非常に優れた分散安定性を有することから、インクジェット印刷法で使用されるインクとして好適に使用することができる。
また、インクジェット印刷法のうち、一般に、シングルパス方式といわれるインク吐出ヘッドを備えた印刷方法では、より一層高いレベルの分散安定性を備えたインクが求められる。本発明の着色剤を含有するインクは、非常に優れた分散安定性を有することから、シングルパス方式のインク吐出ヘッドを備えたインクジェット印刷法で使用されるインクとしても好適に使用することができる。
前記インクジェット印刷方式としては、従来公知の方式がいずれも使用できる。例えば圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法)や熱エネルギーを利用する方法が挙げられる。また印刷方法としても特に限定はない。
本発明の着色剤を含有する塗料やインクによって印刷が施される基材(印刷媒体)としては、特に限定されることはなく、紙、コート紙、インクジェット記録用専用紙の他、曲面や凹凸した不規則な形状を有するような、プラスチック成形体等を使用することができる。
前記プラスチック成形体としては、例えば食品包装用フィルム等として使用される熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンレテフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムが挙げられる。
前記紙としては、例えば普通紙が挙げられる。本発明の塗料及びインクに含まれる前記着色剤は、一般にインク等の吸収性が高い普通紙の表面に付着しやすいため、優れた光学濃度の印刷物を得ることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1 着色剤(VT−1))
「X−12−967C」(信越化学工業株式会社製、トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸無水物、前記一般式(1)中のRが炭素原子数3のアルキル基、Rがメチル基、nが3である化合物)1.2質量部、「MA11」(三菱化学株式会社製、酸性カーボンブラック、pH3.0、水酸基を有する)20.0質量部、イソプロピルアルコール77.8質量部及び純水1.0質量部を、ステンレス製容器に入れ、冷却しながらHielscher社製の超音波ホモジナイザーUP200Stを用いて3分間超音波分散処理を行った。前記方法で得られた分散液を120℃に設定した乾燥機に入れ、5時間乾燥させることによって、着色剤(VT−1)(固形分100質量%)を得た。
(実施例2 着色剤(VT−2))
反応容器に「X−12−967C」(信越化学工業株式会社製、トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸無水物、前記一般式(1)中のRが炭素原子数3のアルキル基、Rがメチル基、nが3である化合物)20質量部を供給した。次に、イオン交換水80質量部を投入し撹拌した後、反応容器内の温度が約100℃に到達するまで、メチルアルコール及び水を常圧留去することによって、前記「X−12−967C」の加水分解物を得た。
前記加水分解物1.2質量部、「MA11」(三菱化学株式会社製、酸性カーボンブラック、pH3.0、水酸基を有する)20.0質量部、イソプロピルアルコール77.8質量部及び純水1.0質量部を、ステンレス製容器に入れ、冷却しながらHielscher社製の超音波ホモジナイザーUP200St(最大出力200W、周波数20kHz)を用いて3分間超音波分散処理を行った。前記方法で得られた分散液を120℃に設定した乾燥機に入れ、5時間乾燥させることによって、着色剤(VT−2)(固形分100質量%)を得た。
(実施例3 水性顔料分散体(1))
前記着色剤(VT−1)15質量部、純水70質量部、「2−ピロール」(ISP社製の2−ピロリジノン)14.7質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液0.3質量部をステンレス製容器に入れたのちに冷却しながらHielscher社製の超音波ホモジナイザーUP200St(最大出力200W、周波数20kHz)で3分間超音波分散処理して水性顔料分散体(1)を調製した。
(実施例4 水性顔料分散体(2))
前記着色剤(VT−2)15質量部、超純水70質量部、「2−ピロール」(ISP社製の2−ピロリジノン)14.7質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液0.3質量部をステンレス製容器に入れたのちに冷却しながらHielscher社製の超音波ホモジナイザーUP200St(最大出力200W、周波数20kHz)で3分間超音波分散処理して水性顔料分散体(2)を調製した。
(比較例1 水性顔料分散体(H1))
「MA11」(三菱化学株式会社製、酸性カーボンブラック、pH3.0、水酸基を有する)15質量部、純水70質量部、「2−ピロール」(ISP社製の2−ピロリジノン)14.7質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液0.3質量部をステンレス製容器に入れたのちに冷却しながらHielscher社製超音波ホモジナイザーUP200St(最大出力200W、周波数20kHz)で3分間超音波分散処理して水性顔料分散体(H1)を調製した。
(比較例2 水性顔料分散体(H2))
「MA11」(三菱化学株式会社製、酸性カーボンブラック、pH3.0、水酸基を有する)15質量部、ジョンクリル683(BASF社製アクリル樹脂)を5質量部、純水62.9質量部、「2−ピロール」(ISP社製の2−ピロリジノン)14.7質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液2.4質量部をステンレス製容器に入れたのちに冷却しながらHielscher社製の超音波ホモジナイザーUP200St(最大出力200W、周波数20kHz)で3分間超音波分散処理して水性顔料分散体(H2)を作製した。
[光学濃度(OD値)]
水性顔料分散体(1)、(2)、(H1)、(H2)を、それぞれ顔料濃度が4質量%になるように水で希釈したインクを、ワイヤーバー#3を用いてPPC用紙(普通紙)に塗布した。前記塗布物を30分間自然乾燥した後、塗布部の光学濃度(OD値)を測定した。測定には「Gretag Macbeth Spectro Scan Transmission」(X−Rite社)を使用した。
[体積平均粒子径及び粘度変化による安定性の測定]
水性顔料分散体(1)、(2)、(H1)、(H2)をそれぞれポリエチレン容器に密封し、60℃雰囲気下に28日間保存した。前記保存前と保存後の水性顔料分散体中の分散物の体積平均粒子径を測定した。
測定にはナノトラックUPA−150EX(日機装社)を使用した。
また、前記保存前と保存後の水性顔料分散体の粘度を測定した。測定にはViscometerTV−20(東機産業社)を使用した。
Figure 0006665964

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)または一般式(2)で示される構造を有する化合物(A)、及び、一般式(1)または一般式(2)中の加水分解性シリル基またはシラノール基に対する反応性を有する官能基(b)を有する顔料(B)との反応物を含有することを特徴とするインクジェット印刷インクを用い、普通紙、コート紙、インクジェット記録用専用紙または熱可塑性樹脂フィルムに印刷する印刷物の製造方法
    Figure 0006665964

    Figure 0006665964
    [式(1)及び(2)中のRは二価の飽和炭化水素基または二重結合もしくは三重結合を有する二価の不飽和炭化水素基であり、Rは一価の炭化水素基または水酸基であり、Rは一価の炭化水素基であり、nは2または3である。]
  2. 前記一般式(1)中のRがプロピレン基である請求項1に記載の印刷物の製造方法
  3. 前記顔料(B)が有する官能基(b)が、少なくとも水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びスルホン酸基からなる群より選ばれる1種以上である請求項1または2に記載の印刷物の製造方法
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