〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、図1から図11に基づいて詳細に説明する。本発明の一実施形態において、本発明に係る移動観察システムは、観察対象としての高齢者の行動を観察し、異常事態が発生の有無を推定する高齢者見守りシステムに好適に用いられる。しかし、本発明の行動観察システムは、高齢者見守りシステムに限定されず、例えば、観察対象としての学童の登下校を見守る児童見守りシステムなどに適用することが可能である。なお、本発明に係る移動観察システムの観察対象は人間に限定されない。例えば動物(ペット)であってもよい。ただし、以降の実施形態では観察対象は高齢者、すなわち人間であるので、観察対象を「観察対象者」と記載する。
(高齢者見守りシステムの構成)
図2は、本発明の一実施形態に係る高齢者見守りシステム100(移動観察システム)の概要を示す図である。高齢者見守りシステム100は、高齢者などの観察対象者Uに携帯させる、センサ搭載ビーコン2(以下、ビーコン2と称す)と、近距離無線通信により、該ビーコン2が発信する信号を取得可能な複数のゲートウェイ3(以下、個々のゲートウェイを区別する必要がある場合には、ゲートウェイ3a、ゲートウェイ3b、ゲートウェイ3cと称す。それ以外は、総称としてゲートウェイ3を用いる)と、通信網を介してゲートウェイ3および確認用端末4(観察用装置)と情報の送受信を行うことが可能な情報収集サーバ1(データ収集装置)と、観察対象者Uを観察する観察者が所有する、観察対象者Uの位置および行動を確認するための確認用端末4と、GPS衛星5とを含む構成である。
ビーコン2(情報取得端末)は、観察対象者Uの状態を検知するセンサを備え、観察対象者Uの情報を取得するものである。ビーコン2は、電池で駆動し、見通し距離で10m程度の近距離で通信を行うための電波を発信することができるものを採用する。なお、ビーコン2の通信距離は10mに限定されるものではなく、これより長くても短くても構わない。例えば、通信距離が見通し距離で30m程度のビーコン2を採用してもよい。ビーコン2は、人(観察対象者U)が持ち歩けるように5グラム程度の軽い製品であることが好ましい。
図2に示すとおり、ビーコン2が発信する電波Wには、さまざまな情報を有するデータが含まれている。データには、少なくとも、ビーコン2によって取得または生成された観察対象者Uに関する情報が含まれている。
観察対象者Uに関する情報については、各実施形態および変形例にてそれぞれ詳細に説明するが、例えば、ビーコン2に備えられたセンサが検知したセンサ値(計測値)、当該センサ値を分析することによって得られる、観察対象者Uの行動を識別するための行動ID(行動識別情報、状態情報)などが上記情報に該当する。上記センサ値とは、例えば、加速度センサによって検知される加速度の値、または、気圧センサによって検知される気圧の値などである。上記センサ値の分析結果として得られる行動IDとは、観察対象者Uがとった行動の具体的内容、例えば、起立、歩行、走行などを一意に識別するための識別情報である。行動IDは、観察対象者Uがとり得る行動の種類ごとに1対1で紐付けられるものである。行動IDがゲートウェイ3を介してビーコン2から情報収集サーバ1に伝達されると、情報収集サーバ1は、伝達された行動IDに基づいて、ビーコン2を装着している観察対象者Uがとった行動を把握することができる。
なお本実施形態では、ビーコン2が上記データとして行動IDを発信する構成を説明する。また、詳細については後述するが、本実施形態のビーコン2は上記センサ値の分析結果として行動IDを取得し、行動IDを含む電波を発信する構成である。なお、電波の発信頻度は特に限定されない。
なお、ビーコン2が発信するデータには、上述の行動ID、および、観察対象者Uに関する情報のほか、ビーコン2の存在を示す信号(ビーコンID)が含まれていてもよい。このビーコンIDは、高齢者見守りシステム100において、観察対象者Uが複数人であって、データの発信元であるビーコン2が複数設けられる場合に、当該データがどのビーコン2から発信されたのかを識別するのに利用される。
ゲートウェイ3(中継装置)は、観察対象者Uに携帯されたビーコン2から近距離無線通信にて発信された電波Wを検知し、該電波Wに含まれるデータを取得するものである。ゲートウェイ3は、ビーコン2との近距離無線通信機能と、インターネット回線等の通信網を介して、情報収集サーバ1と通信を行う機能とを備えている。なお、ゲートウェイ3によってビーコン2から発信された電波が受信された場合、ビーコン2とゲートウェイ3との距離は、約10m以内であるということになる。なお、ビーコン2とゲートウェイ3との距離が0mより大きく、100m以下程度であれば、ゲートウェイ3はビーコン2からの電波を受信することができる。すなわち、本発明における「近距離無線通信」とは、ビーコン2とゲートウェイ3との距離が、0mより大きく100m以下である場合の無線通信を示す。
また、ゲートウェイ3は、受信した電波から取得したデータを情報収集サーバ1に対して転送するときに、自機の位置情報と自機を識別する情報であるゲートウェイIDとを併せて情報収集サーバ1に送信する。具体的には、ゲートウェイ3は、GPS衛星5と通信して自機の位置情報を取得し、ビーコンから受信したデータとゲートウェイIDとともに情報収集サーバ1に送信する。これにより、情報収集サーバ1は、ゲートウェイ3の位置情報に基づいて、ビーコン2の位置を把握することができる。
また、ゲートウェイ3は、図示のように、観察者による観察対象者Uの見守りに協力する協力者A、協力者Cが携帯するスマートフォン(情報通信端末)であってもよいし、バスBなどの車両に搭載されていてもよい。すなわち本発明に係るゲートウェイ3は、高齢者見守りシステム100において複数設けられた、移動可能なゲートウェイである。なお、高齢者見守りシステム100において、位置が固定されたゲートウェイが設けられていてもよい。また、ゲートウェイ3として機能する情報通信端末はスマートフォンに限定されない。例えば、携帯電話(フィーチャーフォン)であってもよい。また、ゲートウェイ3を搭載する車両は、図示のバスBに限定されず、例えば、協力者が乗車する自家用車や、バス以外の公共交通機関(電車、タクシーなど)であってもよい。
また、スマートフォンをゲートウェイ3として使用する場合、協力者は高齢者見守りのためのアプリケーションをスマートフォンにインストールする。該アプリケーションは、特定の観察対象者Uが所持するビーコン2からのデータを受信した場合のみ、行動データを情報収集サーバ1に送信する構成であってもよいし、観察対象者Uを問わず、データを受信した場合、行動データを情報収集サーバ1に送信する構成であってもよい。前者の場合、スマートフォンは行動IDとともに発信されるビーコンIDが、登録してあるビーコンIDと一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合のみ、行動データを情報収集サーバ1に送信する。
なお、屋外での高齢者の見守りを実現する場合、ビーコンからの行動IDの取得漏れを防ぐためには、なるべく多くのゲートウェイ3が屋外にあることが好ましい。そのため、ゲートウェイ3を自家用車に搭載する場合、自家用車の出荷前にゲートウェイ3を搭載しておくことが好ましい。また、スマートフォンをゲートウェイ3として使用する場合、高齢者見守りのためのアプリケーションはスマートフォンにプリインストールされていることが好ましい。
情報収集サーバ1は、ゲートウェイ3と通信し、上記位置情報、上記ゲートウェイID、および上記行動IDを含む行動データを収集する。そして、情報収集サーバ1は、位置情報と行動IDとを対応付けて、確認用端末4に送信する。これにより、観察者は確認用端末4を用いて、観察対象者Uの位置情報と行動IDとを確認することができるので、観察対象者Uがどこにいるか、および、どのような行動をとっているかを把握することができる。
なお、図示の例では、屋外での高齢者の見守りを行う高齢者見守りシステム100を説明しているが、高齢者見守りシステム100を屋内での高齢者の見守りに適用してもよい。
(本発明の概要)
上述したとおり、従来の技術では、情報収集サーバ1が、直前に取得した位置情報と異なる位置情報を取得した場合、該位置情報の違いが、観察対象者Uの移動に起因するのか、または、ゲートウェイ3の移動に起因するのかを判断することができない。次に、この問題を解決する本発明の概要について、図3に基づいて説明する。図3は、情報収集サーバ1が実行する行動履歴の更新の一例を示す図である。
本実施形態に係る情報収集サーバ1は、ゲートウェイ3から受信した位置情報、ゲートウェイID、および行動IDを対応付けた情報(以降、これらを総称して行動データと称する場合がある)を時系列(受信した順)で並べた行動履歴131(図3の(b)および(e)参照)を記憶している。そして、情報収集サーバ1は、ゲートウェイ3から上記の情報を受信する度に、図示のように行動履歴131を更新する。
ここで、情報収集サーバ1が図3の(a)に示す行動データを受信し、その時点での行動履歴131が、図3の(b)に示すものであったとする。この例の場合、行動履歴131における最新の行動データ(レコード311、直前データ)と、受信した行動データとを比較すると、ゲートウェイ3の位置情報が変化している。また、受信した行動データの行動IDは「1(歩行)」である。以上より、受信した行動データからは、観察対象者Uが徒歩で移動していることが想定される。この場合、受信した行動データの位置情報と、レコード311の位置情報との違いは観察対象者Uの移動によるものと想定されるので、図3の(c)に示すように、受信した位置情報をそのまま用いて、行動履歴131を更新(レコード312を追加)すれば、観察対象者Uの位置および行動を性格に示す行動履歴131となる。
一方、情報収集サーバ1が図3の(d)に示す行動データを受信し、その時点での行動履歴131が、図3の(e)に示すものであったとする。この例の場合、行動履歴131における最新の行動データ(レコード311)と、受信した行動データとを比較すると、ゲートウェイ3の位置情報が変化しており、一見するとユーザが移動しているように見える。しかしながら、受信した行動データの行動IDは「0(起立)」である。これは、観察対象者Uは移動していないが、先に通信したゲートウェイ3が観察対象者Uから離れ、その後、別のゲートウェイ3が観察対象者Uに近づいて、先に通信したゲートウェイ3と異なる位置でビーコン2と通信したために、図3の(d)に示す行動データのように位置情報が変化したと想定される。すなわち、この例では観察対象者Uは移動していないため、受信した行動データをそのまま行動履歴131に追加すると、観察対象者Uの位置および行動を正確に示す行動履歴131とならないおそれがある。
この問題を解決するために、本実施形態に係る情報収集サーバ1は、受信した行動データの位置情報と、行動履歴131における最新の行動データの位置情報とが異なるにもかかわらず、受信した行動データの行動IDが、ユーザの徒歩による移動を示していない場合、受信した行動データの位置情報を、行動履歴131における最新の行動データ(レコード311)の位置情報に変更し、位置情報を変更した後の行動データを用いて行動履歴131を更新する。例えば、図3の(d)〜(f)に示すように、受信した行動データの位置情報である位置A−1を、行動履歴131におけるレコード311の位置情報である位置B−1に変更して、行動履歴131を更新する(行動履歴131にレコード313を追加する)。これにより、行動履歴131を観察対象者Uが移動していないことを示す行動履歴とすることができる。
なお、「徒歩による移動」とは、観察対象者Uが乗り物を使わずに移動することを示し、その速度を問わない。すなわち、「徒歩による移動」には上述した「歩行」の他、「走行」も含まれる。また、図3に示す行動データおよび行動履歴131の行動IDの括弧書きは、行動IDとしての数字がどのような行動を示すかを理解しやすくする目的で記載されたものであり、行動IDのデータ構造をこの例に限定する意図はない。
(情報収集サーバ1の要部構成)
次に、図1に基づいて情報収集サーバ1の要部構成について説明する。図1は、情報収集サーバ1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、情報収集サーバ1は、ゲートウェイ3および確認用端末4と情報の送受信をおこなう通信部11、情報収集サーバ1の各部を統括して制御する制御部12、および、情報収集サーバ1で使用する各種データを記憶する記憶部13を備えている。
また、図示のように、制御部12は、通信制御部121(送信部)、移動判定部122(判定部)、位置情報決定部123(位置変更部)、およびデータ管理部124を含んでいる。また、記憶部13は、上述した行動履歴131を少なくとも記憶している。
通信制御部121は、通信部11を制御して、通信網を介したゲートウェイ3および確認用端末4との情報の送受信を行わせる。具体的には、通信制御部121は、通信部11から行動ID、位置情報、およびゲートウェイID(行動データ)を取得すると、行動データを移動判定部122に出力する。また、通信制御部121は、データ管理部124から行動IDおよび位置情報を取得すると、通信部11を制御してこれらの情報を確認用端末4に送信させる。
移動判定部122は、受信した行動データ、および、行動履歴131における最新の行動データ(以降、最新履歴データと称する)に基づいて、最新履歴データの位置情報が示す位置から観察対象者Uが移動したか否かを判定する。
具体的には、移動判定部122は、通信制御部121から行動データを取得すると、行動履歴131から最新履歴データを読み出す。そして、移動判定部122は、取得した行動データに含まれる位置情報と、最新履歴データに含まれる位置情報とが異なるか否かを判定する。2つの位置情報が一致する場合、移動判定部122は、観察対象者Uは移動していないと判定する。
一方、2つの位置情報が異なる場合、移動判定部122はさらに、取得した行動データに含まれる行動IDが、観察対象者Uが徒歩によって移動していることを示しているか否かを判定する。具体的には、移動判定部122は、取得した行動データに含まれる行動IDが、歩行または走行を示す行動IDと一致しているか否かを判定する。一致していると判定した場合、移動判定部122は、観察対象者Uは移動していると判定する。
一方、取得した行動データに含まれる行動IDが、歩行または走行を示す行動IDと一致していないと判定した場合、移動判定部122は、観察対象者Uは移動していないと判定する。
最新履歴データの位置情報が示す位置から観察対象者Uが移動したか否かの判定が終了すると、移動判定部122は、判定結果を位置情報決定部123に出力する。
位置情報決定部123は、移動判定部122の判定結果に基づいて、行動履歴131に追加する行動データの位置情報を決定する。具体的には、位置情報決定部123は、移動判定部122が、最新履歴データの位置情報が示す位置から観察対象者Uが移動していると判定した場合、観察対象者Uの現在位置は、ゲートウェイ3から受信した位置情報が示す位置であると決定する。換言すれば、行動履歴131に追加する行動データの位置情報を、ゲートウェイ3から受信した位置情報に決定する。つまり、位置情報決定部123は、移動判定部122が、最新履歴データの位置情報が示す位置から観察対象者Uが移動していると判定した場合、ゲートウェイ3から受信した行動データを変更せず、該行動データをデータ管理部124に出力する。
一方、最新履歴データの位置情報が示す位置から観察対象者Uが移動していないと判定した場合、位置情報決定部123は、観察対象者Uの現在位置は、最新履歴データに含まれる位置情報が示す位置であると決定する。換言すれば、行動履歴131に追加する行動データの位置情報を、最新履歴データに含まれる位置情報に決定する。そして、受信した行動データの位置情報を最新履歴データに含まれる位置情報に変更し、位置情報を変更した行動データをデータ管理部124に出力する。
なお、受信した行動データの位置情報と、最新履歴データの位置情報とが一致したことにより、移動判定部122が観察対象者Uは移動していないと判定した場合、位置情報決定部123は、ゲートウェイ3から受信した行動データの位置情報を最新履歴データに含まれる位置情報に変更するが、2つの位置情報は一致しているので、変更前後で位置情報が変わらないこととなる。
データ管理部124は、行動データおよび行動履歴131を管理する。具体的には、データ管理部124は、位置情報決定部123から取得した行動データを行動履歴131に追加し、行動履歴131を更新する。また、データ管理部124は、位置情報決定部123から取得した行動データのうち、位置情報および行動IDを通信制御部121に出力する。これにより、位置情報および行動IDが確認用端末4に送信され、観察対象者Uの最新の位置および行動を観察者に把握させることができる。
(行動判定処理の詳細)
続いて、ビーコン2が行う観察対象者Uの行動判定処理について、図4〜図9に基づいて説明する。図4は、一例として、ビーコン2が判定可能な行動の種類の一覧と、各種行動に対応する行動IDとを示す表である。図5〜図9は、図4に示す各種行動を判定するときにビーコン2が処理する、センサの測定結果、すなわち、センサ値を示す図である。
なお、本実施形態では、ビーコン2は、観察対象者Uの胸に装着され、観察対象者Uの動きによって当初の装着位置からずれないよう、観察対象者Uに密着するように固定されている。
本実施形態に係るビーコン2は、上述したように加速度センサおよび気圧センサを備えている。なお、これらのセンサとしては既存の加速度センサおよび気圧センサを用いることができる。加速度センサおよび気圧センサはそれぞれ、定期的にビーコン2にかかる加速度の値(加速度データ)およびビーコン2にかかる大気圧の値(気圧データ)を測定する。例えば、加速度センサおよび気圧センサはそれぞれ、20ミリ秒ごとに加速度データおよび気圧データを測定するが、測定間隔はこの例に限定されるものではなく、これより長くても短くても構わない。また、ビーコン2は、所定時間間隔で取得された1つの加速度値および1つの気圧値に基づいて行動を判定してもよいし、特定の期間に所定時間間隔で取得された複数の加速度値および複数の気圧値に基づいて行動を判定してもよい。そして、ビーコン2は、測定された加速度データおよび気圧データと、行動テーブルとに基づいて、観察対象者Uの行動を判定する。
なお、加速度センサは、観察対象者Uが起立した状態で装着したビーコン2の左右方向、上下方向、および前後方向の加速度を測定する、いわゆる三軸加速度センサである。また以降、ビーコン2の左右方向、上下方向、および前後方向をそれぞれ、X方向、Y方向、およびZ方向と称する場合がある。
続いて、図4に示す行動テーブルの詳細について説明する。行動テーブルは、ビーコン2が観察対象者Uの行動を判定するために使用するテーブルであり、ビーコン2の不揮発性の記憶部(不図示)に記憶されている。具体的には、行動テーブルは、ビーコン2が判定可能な行動の種類と、その各種行動を識別するための行動IDとの対応付けを記憶するとともに、当該行動がなされたと判定する際の条件を格納するルックアップテーブルであり、行動判定処理の実行時に参照される。行動テーブルのデータ構造は、これを参照することにより、ビーコン2が、加速度センサおよび気圧センサの測定結果から観察対象者Uの行動を判定することができるように構成されていれば何でもよい。例えば、図4に示すものであってもよい。すなわち行動テーブルは、上記行動テーブルのデータ構造として、図4に示すテーブルのうち、少なくとも、「行動」の行と「行動ID」の行と条件の行とが該行動テーブルに含まれていればよい。条件の行は、図4に示す例では、「加速度データ」の行、および、「気圧データ」の行として、発明の理解を促進する目的で簡潔に記載されているが、実際には、ビーコン2が判定を可能とするための、変動、変化、増加の閾値などが判定の条件として詳細に記述されている。なお、その他の行、すなわち、観察対象者Uの姿勢を図解する行は、ビーコン2が判定可能な行動を理解しやすくする目的で記載したものであり、該行動テーブルのデータ構造を限定する意図はない。
図4に示すとおり、ビーコン2は、6種類の行動(起立、歩行、走行、お辞儀、しゃがみ、および転倒)を判定することができる。図示の例では、行動テーブルにおいて、6種類の行動ごとに、当該行動を判定するための条件、すなわち、加速度センサが測定した加速度データがどのような値である場合に当該行動であると判定するのかを示す情報(「加速度データ」の行)、気圧センサが測定した気圧データがどのような値である場合に当該行動であると判定するのかを示す情報(「気圧データ」の行)、並びに、当該行動を識別するための行動IDが対応付けられている。なお、図示の行動テーブル内の「−」は、加速度データおよび気圧データがどのような値であってもよい、すなわち、その値を判定条件に用いないことを示している。
図4の各種行動について詳細に説明すると、行動「起立」は、観察対象者Uが起立したまま静止している行動を指す。行動「歩行」は、観察対象者Uが歩いている行動を指す。行動「走行」は、観察対象者Uが走っている行動を指す。行動「お辞儀」は、観察対象者Uが上半身を前にかがめる行動を指す。行動「しゃがみ」は、観察対象者Uが、座り姿勢をとっている行動を指す。すなわち、観察対象者Uが椅子、ざぶとんなどに座っている状態、および、ひざをついて(あるいはつかずに)しゃがんでいる状態なども含めてこれらの行動を「しゃがみ」と判定する。最後に、行動「転倒」は、観察対象者Uが転ぶこと(立ち姿勢から急速に座り姿勢または寝姿勢をとる行動、もしくは、座り姿勢から急速に寝姿勢をとる行動)を指す。
続いて、各行動を判定する手順について説明する。まず、ビーコン2が、観察対象者Uの行動を「0:起立」と判定する場合について説明する。観察対象者Uが起立しているとき、加速度センサには地面方向の加速度(重力加速度、換言すれば1.0Gの加速度)がかかる。前後方向(Z方向)および左右方向(X方向)の加速度並びに気圧については目立った変動は見られない。したがって、ビーコン2は、自機に、重力に起因した加速度が主としてかかっていることを示す加速度データが取得された場合(図4に示す条件は「重力のみ」)、具体的には、ビーコン2の下方向(地面方向)に1.0Gの加速度がかかり、かつ、X方向およびZ方向には加速度がほとんどかかっていないと判定した場合、観察対象者Uの行動を「0:起立」であると判定する。
より具体的には、ビーコン2は地面方向の加速度が1.0G以上1.1G以下であり、X方向およびZ方向の加速度が−0.1G以上0.1G以下である場合に、観察対象者Uの行動を「0:起立」であると判定する。なお、負の数で表される加速度は、正の数で表される加速度の方向と逆方向の加速度を示す。例えば、観察対象者Uが起立した状態で装着したビーコン2の右方向の加速度を正の数で表した場合、負の数で表される加速度は左方向の加速度である。なお本実施形態では、観察対象者Uが起立した状態で装着したビーコン2の下方向、右方向および前方向の加速度を正の数で表し、上方向、左方向および後方向の加速度を負の数で表すが、この例に限定されるものではない。そして、ビーコン2は、行動テーブルから、行動「起立」に対応付けられた行動ID(図示の例では「0」)を読み出し、該行動IDを外部へ発信する。
続いて、図5に基づいて、ビーコン2が観察対象者Uの行動を「歩行」と判定する場合について説明する。図5は、ビーコン2の加速度センサが検出した加速度データ(センサ値(加速度値)の推移)の変化を示すグラフである。
観察対象者Uが歩いている場合、歩行に合わせてビーコン2はY方向に(上下に)揺れる。このとき、図5に示すように、加速度センサはY方向の加速度値が他の方向と比較してより変動する加速度データを取得することとなる。したがって、ビーコン2は、加速度データが変動している場合(図4に示す条件は「変動」)、具体的には、ビーコン2の、主としてY方向において加速度データが変動している場合に、観察対象者Uの行動を「1:歩行」であると判定する。
より具体的には、ビーコン2は、図5に示すように、Y方向の加速度データにおいて、極小値から極大値へ(または極大値から極小値へ)の変化をおおよそ500msから700msの間隔で繰り返している場合に、観察対象者Uの行動を「歩行」であると判定する。なお、図示の例では、極小値は約0.5Gであり、極大値は約1.5Gであるが、極小値および極大値はこの例に限定されない。また、上述した極小値から極大値へ(または極大値から極小値へ)の変化が生じる間隔は、加速度データおよび気圧データを100ミリ秒ごとに取得する場合の間隔の一例であり、この例に限定されるものではない。加速度データおよび気圧データは、高齢者見守りシステム100の用途や、高齢者見守りシステム100を構成する各装置の仕様等に応じて、20〜100ミリ秒の任意の間隔で取得されればよい。例えば、加速度データおよび気圧データを20ミリ秒ごとに取得する場合には、極小値から極大値へ(または極大値から極小値へ)の変化をおおよそ100msから140msの間隔で繰り返している場合に、観察対象者Uの行動を「歩行」であると判定する。そして、ビーコン2は、上記行動テーブルから、行動「歩行」に対応付けられた行動ID(図示の例では「1」)を読み出し、該行動IDを外部へ発信する。なお、ビーコン2は、1.1Gより大きく1.5G以下、または、0.9Gより小さく0.5G以上という条件を満たす加速度値が検知された回数を歩数としてカウントし、行動IDとともに発信してもよい。
続いて、図6に基づいて、ビーコン2が観察対象者Uの行動を「走行」と判定する場合について説明する。図6は、ビーコン2の加速度センサが検出した加速度データ(加速度値の推移)を示すグラフである。
観察対象者Uが走っている場合、ビーコン2は歩行時と同様にY方向に揺れるが、その揺れは歩行時に比べて激しくなる。このとき、図6に示すように、加速度センサはY方向の加速度値が他の方向と比較してより大きく、かつ、歩行時よりさらに大きく変動する加速度データを取得することとなる。したがって、ビーコン2は、加速度データの変動が歩行時よりも大きい場合(図4に示す条件は「変動大」)、具体的には、ビーコン2の、主としてY方向における加速度データが歩行時以上に大きく変動している場合に、ビーコン2は、観察対象者Uの行動を「2:走行」であると判定する。
より具体的には、ビーコン2は、図6に示すように、Y方向の加速度データにおいて、極小値から極大値へ(または極大値から極小値へ)の変化をおおよそ300msから500msの間隔で繰り返している場合に、観察対象者Uの行動を「走行」であると判定する。なお、図示の例では、極小値はおおよそ−0.5Gから0Gの範囲の値であり、極大値は約2.0Gであるが、極小値および極大値はこの例に限定されない。また、上述した極小値から極大値へ(または極大値から極小値へ)の変化が生じる間隔は、加速度データおよび気圧データを100ミリ秒ごとに取得する場合の間隔の一例であり、この例に限定されるものではない。加速度データおよび気圧データは、高齢者見守りシステム100の用途や、高齢者見守りシステム100を構成する各装置の仕様等に応じて、20〜100ミリ秒の任意の間隔で取得されればよい。例えば、加速度データおよび気圧データを20ミリ秒ごとに取得する場合には、極小値から極大値へ(または極大値から極小値へ)の変化をおおよそ60msから100msの間隔で繰り返している場合に、観察対象者Uの行動を「走行」であると判定する。そして、ビーコン2は、上記行動テーブルから「走行」に対応付けられた行動ID(図示の例では「2」)を読み出し、該行動IDを外部へ発信する。なお、ビーコン2は、1.5Gより大きい、または、0.5Gより小さいという条件を満たす加速度値が検知された回数を歩数としてカウントし、行動IDとともに発信してもよい。
続いて、図7に基づいて、ビーコン2が観察対象者Uの行動を「お辞儀」と判定する場合について説明する。図7の(a)は、ビーコン2の加速度センサが検出した加速度データ(加速度値の推移)を示すグラフである。図7の(b)は、ビーコン2の気圧センサが検出した気圧データ(気圧値の推移)を示すグラフである。
観察対象者Uがお辞儀をすると、観察対象者Uの胸部に取り付けられたビーコン2の向きが垂直方向から水平方向へ変化する。したがって、ビーコン2の向きが垂直のとき、Y方向のセンサが重力加速度を検知していたのが、ビーコン2が水平方向に変化したことにより、Z方向(具体的には、観察対象者Uが起立した状態で装着したビーコン2の前方向)のセンサが重力加速度を検知するようになる。このとき、図7の(a)に示すように、加速度センサによって計測される加速度値は、Z方向の加速度が1.0G程度まで増加するとともに、Y方向の加速度が0G程度まで減少することとなる。したがって、ビーコン2は、重力加速度の方向が変化した場合(図4に示す条件は「方向が変化」)、具体的には、ビーコン2のZ方奥の加速度が1.0G程度まで増加するとともに、Y方向の加速度が0G程度まで減少している場合に、ビーコン2は、観察対象者Uの行動を「3:お辞儀」と判定する。そして、ビーコン2は上記行動テーブルから行動「お辞儀」に対応付けられた行動ID(図示の例では「3」)を読み出し、該行動IDを外部へ発信する。
なお、図7の(b)に示すように、気圧センサ242が測定する大気圧は、重力加速度が検知される方向が変化するタイミングで若干上昇している。これは、観察対象者Uがお辞儀(またはそれに類する行動)をとることによって、ビーコン2が装着された観察対象者Uの胸部が地面に近づき、ビーコン2の地面からの距離が若干短くなったためである。
続いて、図8に基づいて、ビーコン2が観察対象者Uの行動を「しゃがみ」と判定する場合について説明する。図8の(a)は、ビーコン2の加速度センサが検出した加速度データ(加速度値の推移)を示すグラフである。図8の(b)は、ビーコン2の気圧センサが検出した気圧データ(気圧値の推移)を示すグラフである。
観察対象者Uが、例えばしゃがむなどして、立ち姿勢から座り姿勢に移行した場合、図8の(a)に示すように、しゃがんだ瞬間にビーコン2のY方向の加速度が変化する(図8の(a)の破線で囲んだ部分)。また、観察対象者Uがしゃがんだ後は、ビーコン2の地面からの距離が短くなるため、図8の(b)に示すように、ビーコン2が検出する大気圧が上昇する(図8の(b)の破線と両矢印とで示す部分)。したがって、ビーコン2は、加速度データが変化し(図4に示す条件は「変化」)、かつ気圧データが上昇している場合(図4に示す条件は「増加」)、観察対象者Uの行動を「4:しゃがみ」であると判定する。
具体的には、ビーコン2は、検出された加速度値が、直前に検出された加速度値より0.4G以上減少したとき、立ち姿勢から座り姿勢に移行したと判定する。すなわち、観察対象者Uの行動を「しゃがみ」と判定する。この判定以降、ビーコン2は、姿勢が移行した時点(すなわち、「しゃがみ」の判定を開始した時点)で取得した気圧値と、最新の気圧値との差を都度算出し、気圧が2Pa(0.02hPa)より大きくかつ4Pa未満で増加している場合、観察対象者Uの行動を「しゃがみ」とする判定を継続する。そして、ビーコン2は、上記行動テーブルから行動「しゃがみ」に対応付けられた行動ID(図示の例では「4」)を読み出し、その都度、上記行動IDを含むデータを外部へ発信する。なお、観察対象者Uの行動を「しゃがみ」と判定した後、「しゃがみ」の判定を開始した時点で取得した気圧値からの、最新の気圧値の増分が2Pa以下となった場合、ビーコン2は、観察対象者Uが立ち姿勢に移行した(しゃがむ動作を終了させた)として、観察対象者Uの行動を「しゃがみ」とする判定を終了する。
最後に、図9に基づいて、ビーコン2が観察対象者Uの行動を「転倒」と判定する場合について説明する。図9の(a)は、ビーコン2の加速度センサが検出した加速度データ(加速度値の推移)を示すグラフである。図9の(b)は、ビーコン2の気圧センサが検出した気圧データ(気圧値の推移)を示すグラフである。
観察対象者Uが転倒した場合、すなわち、立ち姿勢から座り姿勢または寝姿勢に(または、座り姿勢から寝姿勢に)、急速に移行した場合、図9の(a)に示すように、姿勢移行の瞬間に、ビーコン2のY方向の加速度が大きく変化する(図9の(a)の破線で囲んだ部分)。この変化は、観察対象者Uがしゃがんだ場合の変化(図8の(a)参照)よりも大きい変化となる。また、観察対象者Uが転倒してから起き上がるまでの間は、ビーコン2の地面からの距離が、しゃがんでいるときよりもさらに短くなるため、図9の(b)に示すように、ビーコン2が検出する大気圧が、観察対象者Uがしゃがんでいるときよりもさらに上昇する(図9の(b)の破線と両矢印とで示す部分)。したがって、ビーコン2は、加速度データ(特に、Y方向の加速度値)が所定以上、少なくとも「しゃがみ」時以上に大きく変化し(図4に示す条件は「大きく変化」)、かつ、「しゃがみ」時より気圧データが大きく上昇した場合(図4に示す条件は「大きく増加」)、観察対象者Uの行動を「5:転倒」と判定する。
具体的には、ビーコン2は、検出された加速度値が、直前に検出された加速度値より1G以上減少したとき、立ち姿勢から寝姿勢に移行したと判定する。すなわち、観察対象者Uの行動を「転倒」と判定する。この判定以降、ビーコン2は、姿勢が移行した時点(すなわち、「転倒」の判定を開始した時点)で取得した気圧値と、最新の気圧値との差を都度算出し、気圧が4Pa(0.04hPa)以上増加している場合、観察対象者Uの行動を「転倒」とする判定を継続する。そして、ビーコン2は、上記行動テーブルから行動「転倒」に対応付けられた行動ID(図示の例では「5」)を読み出し、その都度、上記行動IDを含むデータを外部へ発信する。なお、観察対象者Uの行動を「転倒」と判定した後、「転倒」の判定を開始した時点で取得した気圧値からの、最新の気圧値の増分が4Pa未満となった場合、ビーコン2は、観察対象者Uが立ち姿勢または座り姿勢に移行した(転倒動作を終了させた)として、観察対象者Uの行動を「転倒」とする判定を終了する。
なお、上述した判定条件、具体的には、観察対象者Uの行動を判定するときに、加速度データおよび気圧データにおいて設定された閾値は一例であり、該閾値はこれらの例に限定されない。
(高齢者見守りシステム100が実行する処理の流れ)
次に、図10に基づいて、高齢者見守りシステム100が実行する処理の流れについて説明する。図10は、高齢者見守りシステム100が実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
まず、ビーコン2は判定タイミングを待機している(ステップS1、以降、「ステップ」を省略)。判定タイミングとなった場合(S1でYES)、ビーコン2は、各センサが検知したセンサ値を取得する(S2)。具体的には、加速度センサが検知した加速度値および気圧センサが検知した気圧値を取得する。続いて、ビーコン2はセンサ値に基づいて観察対象者Uの行動を判定する(S3)。そして、判定した行動に対応する行動IDを取得し(S4)、行動IDを発信する(S5)。ビーコン2は、電源がオフ状態となるまで(S6でYES)、S1〜S5の処理を繰り返す。
続いて、ゲートウェイ3は、ビーコン2を検知するまで待機している(S11)。ビーコン2を検知した場合(S11でYES)、ゲートウェイ3は行動IDを受信する(S12)。続いてゲートウェイ3はGPS衛星5と通信して、自機の位置情報を取得する(S13)。そして、ゲートウェイ3は行動ID、位置情報、ゲートウェイID(すなわち行動データ)を情報収集サーバ1に送信する(S14)。
続いて、情報収集サーバ1は、行動データを受信すると(S21)、行動履歴更新処理を実行する(S22)。なお、行動履歴更新処理については後述する。そして、情報収集サーバ1は、行動履歴更新処理が終了すると、行動履歴に追加した位置情報および行動IDを確認用端末4に送信する(S23)。以上で、高齢者見守りシステム100が実行する処理は終了する。
(行動履歴更新処理の流れ)
次に、図11に基づいて、情報収集サーバ1が実行する行動履歴更新処理の流れについて説明しる。図11は、情報収集サーバ1が実行する行動履歴更新処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、通信制御部121は行動データを受信すると、該行動データを移動判定部122に出力する。移動判定部122は、行動データを取得すると、行動履歴131を読み出す(S31)。そして、移動判定部122は、受信した行動データの位置情報が、行動履歴131の最新の位置情報と異なるか否かを判定する(S32、判定ステップ)。異なると判定した場合(S32でYES)、続いて移動判定部122は、受信した行動IDが移動を示しているか否かを判定する(S33、判定ステップ)。移動を示していないと判定した場合(S33でNO)、すなわち、受信した行動IDが歩行または走行を示す行動IDと一致していないと判定した場合、移動判定部122は、観察対象者Uは移動していないと判定する。そして、判定結果を位置情報決定部123に出力する。
一方、受信した行動データの位置情報が、行動履歴131の最新の位置情報と一致すると判定した場合(S32でNO)、および、受信した行動IDが移動を示していると判定した場合(S33でYES)、移動判定部122は、観察対象者Uは移動していると判定する。そして、判定結果を位置情報決定部123に出力する。
続いて、位置情報決定部123は、移動判定部122の判定結果が、観察対象者Uが移動していないことを示している場合、受信した行動データの位置情報を、行動履歴131の最新の位置情報に変更する(S34、位置変更ステップ)。なお、移動判定部122の判定結果が、観察対象者Uが移動していることを示している場合、位置情報決定部123はS34の処理を省略する。そして、位置情報決定部123は、行動データをデータ管理部124に出力する。最後に、データ管理部124は、取得した行動データを行動履歴131に追加する(S35)。以上で、行動履歴更新処理は終了する。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図12および図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
(本実施形態の概要)
実施形態1の構成では、受信した行動データの位置情報と、最新履歴データの位置情報とが異なり、かつ、受信した行動データの行動IDが移動を示していない場合に、観察対象者Uは移動していないと判定していた。しかしながら、この構成では、実際には観察対象者Uが移動しているにもかかわらず、情報収集サーバ1が移動していないと誤判定をしてしまう可能性がある。具体的には、観察対象者Uがバスなどの車両に乗って移動したり、車いすに座って移動したりする場合、受信した行動データの位置情報と、最新履歴データの位置情報とは異なることとなる。また、観察対象者Uは起立したり座ったりしているため、受信した行動IDは移動を示していないこととなる。つまりこの場合、実施形態1の構成では観察対象者Uは移動していないと判定されるが、観察対象者Uは実際には移動しており、誤判定となってしまう。
本実施形態では、この誤判定を防ぐ構成について説明する。以下、本実施形態の概要について図12に基づいて説明する。図12は、本実施形態に係る情報収集サーバ1が実行する行動履歴の更新の一例を示す図である。
上述のように、観察対象者Uがバスなどの車両に乗って移動したり、車いすに座って移動したりする場合において、バスにともに乗ったり、車いすを押したりする協力者のスマートフォンがゲートウェイ3の機能を有している場合、または、バス自体にゲートウェイ3が搭載されている場合、観察対象者Uは同一のゲートウェイ3とともに移動することになる。
そこで、本実施形態に係る移動判定部122は、取得した行動データに含まれる位置情報と、最新履歴データに含まれる位置情報とが異なると判定し、取得した行動データに含まれる行動IDが、歩行または走行を示す行動IDと一致していないと判定した場合、さらに、行動データおよび行動履歴131を参照して、少なくとも2回連続して同一のゲートウェイIDを受信しているか否かを判定する。そして、少なくとも2回連続して同一のゲートウェイIDを受信していると判定した場合、観察対象者Uは移動していると判定する。これにより、上述したような、実施形態1において観察対象者Uが移動していないと誤判定されるような状況を、移動していると正しく判定することができる。なお、換言すれば、「本実施形態に係る移動判定部122は、少なくとも2回連続して同一のゲートウェイ3からデータを受信している場合、観察対象者Uが移動していると判定する」と表現することもできる。
例えば、情報収集サーバ1が図12の(a)に示す行動データを受信し、その時点での行動履歴131が、図12の(b)に示すものであったとする。この例の場合、行動データの位置情報と、行動履歴131のレコード314の位置情報とが異なり、また、行動データの行動IDは4(しゃがみ)であって歩行または走行を示す行動IDと一致していないので、実施形態1に係る移動判定部122は、観察対象者Uは移動していないと判定する。
一方、本実施形態に係る移動判定部122は、このような場合、行動データおよび行動履歴131を参照して、所定期間連続して同一のゲートウェイIDを受信しているか否かを判定する。図12の(a)および(b)によれば、行動データ、レコード314およびその直前のレコードにおいて、ゲートウェイIDはG003であり、情報収集サーバ1は少なくとも2回連続して同一のゲートウェイIDを受信している。このため、本実施形態に係る移動判定部122は、所定期間連続して同一のゲートウェイIDを受信していると判定し、観察対象者Uは移動していると判定する。
これにより、位置情報決定部123は、ゲートウェイ3から受信した行動データを変更せず、該行動データをデータ管理部124に出力する。そのため、図12の(c)に示すように、行動履歴131が更新された結果、行動データと同じレコード315が行動履歴131に追加される。
(行動履歴更新処理の流れ)
次に、図13に基づいて、本実施形態に係る情報収集サーバ1が実行する行動履歴更新処理の流れについて説明しる。図13は、情報収集サーバ1が実行する行動履歴更新処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、行動履歴更新処理以外の高齢者見守りシステム100が実行する処理は、図10に基づいて実施形態1で説明したものと同様であるため、ここでの説明を省略する。また、図13に示すS41〜S43、S45、およびS46の処理については、それぞれ図11に示すS31〜S35と同様であるため、ここでの説明を省略する。
移動判定部122が、受信した行動データの位置情報が、行動履歴131の最新の位置情報と異なるか否かを判定し(S42でYES)、また、受信した行動IDが移動を示していないと判定した場合(S43でNO)、移動判定部122はさらに、少なくとも2回連続して同一のゲートウェイIDを受信しているか否かを判定する(S44)。同一のゲートウェイIDを受信していると判定した場合(S44でYES)、移動判定部122は、観察対象者Uは移動していると判定する。一方、同一のゲートウェイIDを受信していないと判定した場合(S44でNO)、移動判定部122は、観察対象者Uは移動していないと判定する。
なお、移動判定部122は、少なくとも2回連続して同一のゲートウェイIDを受信しているか否かを判定するために、所定時間連続して同一のゲートウェイIDを受信しているか否かを判定してもよい。ここで、「所定時間連続して同一のゲートウェイIDを受信している」の「所定時間」は、観察対象者Uがバスなどの車両に乗って移動したり、車いすに座って移動したりしていると想定される時間であれば、特に限定されない。また、移動判定部122が実行する「所定時間連続して同一のゲートウェイIDを受信しているか否かの判定」は、行動データおよび行動履歴131のレコードにおいて、同一のゲートウェイIDを有するものが連続して所定数あるか否かで判定してもよいし、行動データを受信した時刻を行動データに対応付ける構成とし、同一のゲートウェイIDを有する行動データを連続して受信したとき、最初に受信した行動データに対応付けられた時刻と、最新の行動データに対応付けられた時刻とから算出される時間が、閾値を超えたか否かで判定してもよい。
〔実施形態3〕
本発明のさらに別の実施形態について、図14および図15に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
(本実施形態の概要)
高齢者見守りシステム100において、観察対象者Uに何らかの異常が発生した場合、観察者になるべく早くその旨を伝えることが好ましい。一方で、高齢者見守りシステム100にて使用するビーコン2は、電力消費を抑えるために、周囲に存在するゲートウェイ3との距離や数を特定する構成を有していない場合がある。そのため、本実施形態に係るビーコン2は、観察対象者U(高齢者)に異常が発生した場合、近距離無線通信の発信強度の強化、および、近距離無線通信の発信頻度の増加の少なくとも一方を行う。
本実施形態の具体例について図14に基づいて説明する。図14は、観察対象者Uの行動に応じた近距離無線通信の発信強度および発信頻度を示す図である。図14の(a)に示すように、観察対象者Uが起立している場合、該観察対象者Uに異常は発生していない状況であるといえる。このような場合、図14の(a)に示すように、ビーコン2は通常の発信強度および発信頻度にて近距離無線通信を行う。
一方、図14の(b)に示すように、観察対象者Uが転倒した場合、該観察対象者Uに異常が発生している状況であるといえる。このような場合、図14の(b)に示すように、ビーコン2は近距離無線通信の発信強度を強くし、また、発信頻度を多くする。これにより、行動IDが周囲に存在するゲートウェイ3に受信される可能性を上げることができ、観察対象者Uに異常が発生したことを迅速に観察者に把握させることができる。
(ビーコン2の要部構成)
次に、図15を参照してビーコン2の要部構成について説明する。図15は、本実施形態に係るビーコン2の要部構成の一例を示すブロック図である。ビーコン2は、データを無線電波に乗せて発信する近距離無線通信部21、ビーコン2の各部を統括して制御するビーコン制御部22、ビーコン2で使用する各種データを記憶するビーコン記憶部23、および、ビーコン2本体または本体周囲における環境の物理量を計測するセンサ24を備えている。
また、図示のように、ビーコン制御部22は、ビーコン通信制御部221、センサ制御部222、行動判定部223、および通信強度制御部224を含んでいる。また、ビーコン記憶部23は、行動ID231を少なくとも備えている。なお、行動ID231は、実施形態1にて説明した行動IDを格納する。ここでの説明を省略する。また、センサ24は、加速度センサ241および気圧センサ242を含んでいる。なお、加速度センサ241および気圧センサ242は、実施形態1にて説明した加速度センサおよび気圧センサと同様であるため、ここでの説明を省略する。
ビーコン通信制御部221は、近距離無線通信部21を制御して、ビーコン制御部22が処理したデータ(行動判定部223が判定した行動ID)をビーコン信号として無線電波にのせて外部に発信させる。
センサ制御部222は、センサ24を制御し、センサ24が計測した物理量に対応する信号を、ビーコン制御部22の各部が情報処理可能なセンサ値に変換して、ビーコン2に本体に供給する。具体的には、センサ制御部222は、加速度センサ241が取得した信号を加速度値に、気圧センサ242から取得した信号を気圧値にそれぞれ変換して、これらの値を、ビーコン記憶部23に格納する。センサ制御部222は、常時計測を行うセンサ24から、所定時間間隔で(例えば、20〜100ミリ秒ごとに)センサ値を取得するものであってもよいし、所定時間間隔で、センサ24に計測を行うように指示し、そのときに計測されたセンサ値を取得するものであっても構わない。ビーコン記憶部23に格納されたセンサ値は、ビーコン制御部22の各部によって読み出され、処理される。
行動判定部223は、センサ24が計測したセンサ値を分析して、観察対象者Uがとった行動を判定するものである。ビーコン記憶部23には、観察対象者Uがとり得る行動について、その行動を定義した行動テーブル(図15において図示せず、図4参照)が記憶されている。行動判定部223は、上記行動テーブルにおいて定義された複数種類の行動の中から、観察対象者Uがとった行動を1つ選択することにより、行動を判定する。実施形態2では、行動判定部223は、最終的に、選択した1つの行動を一意に識別する行動IDを行動ID231に格納する。行動ID231に格納された行動IDは、ビーコン通信制御部221によって読み出され、観察対象者Uに関する情報として、データに含められ、近距離無線通信部21を介して外部に発信される。また、行動判定部223は、行動ID231に格納した行動IDを、通信強度制御部224に出力する。なお、行動判定部223が実行する行動判定処理の詳細については、図4〜図9を参照して実施形態1にて説明しているため、ここでの説明を省略する。
通信強度制御部224は、観察対象者Uがとった行動に基づいて近距離無線通信の発信強度を制御する。具体的には、通信強度制御部224は、取得した行動IDが転倒を示す行動ID(図4の例の場合、「5」)である場合、無線電波の発信強度を強化させるとともに、発信頻度を増加させるようビーコン通信制御部221に指示する。
なお、通信強度制御部224は、取得した行動IDが走行を示す行動ID(図4の例の場合、「2」)である場合にも、無線電波の発信強度を強化させるとともに、発信頻度を増加させるようビーコン通信制御部221に指示してもよい。これにより、観察対象者Uの位置が頻繁に変わることによってビーコン2と通信するゲートウェイ3が頻繁に変わる場合であっても、ビーコン2とゲートウェイ3との間の安定した近距離無線通信を実現することができる。つまり、本実施形態に係る通信強度制御部224は、行動識別情報のうち、特定の行動識別情報を発信する場合、近距離無線通信の発信強度の強化、および、近距離無線通信の発信頻度の増加の少なくとも一方を行う。
また、通信強度制御部224は、取得した行動IDが、観察対象者Uが移動していないことを示す行動ID、具体的には、起立またはしゃがみを示す行動ID(図4の例の場合、それぞれ「0」、「4」)である場合、無線電波の発信強度を弱くさせ、発信頻度を減少させるようビーコン通信制御部221に指示してもよい。これにより、ビーコン2の消費電力を抑えることができ、電池交換の頻度を少なくすることができる。
〔変形例〕
上述した実施形態1〜3では、ビーコン2が行動IDを発信する構成を説明した。しかしながら、ビーコン2が発信するデータは行動IDに限定されない。例えば、加速度センサおよび気圧センサによって検知されたセンサ値(状態情報)を発信してもよい。この例の場合、情報収集サーバ1が、行動テーブル(図4参照)を記憶しており、受信した上記センサ値から行動IDを特定する。
また、上述した実施形態1〜3では、ビーコン2における行動IDを取得する度に該行動IDを含む電波を発信する構成であったが、行動IDの取得頻度と電波の発信頻度とが異なってもよい。
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報収集サーバ1およびビーコン2の制御ブロック(特に制御部12およびビーコン制御部22に含まれる各部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、情報収集サーバ1およびビーコン2は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るデータ収集装置(情報収集サーバ1)は、観察対象に携帯された情報取得端末(ビーコン2)との近距離無線通信によって該観察対象の行動を識別する行動識別情報を受信する、移動可能な複数の中継装置(ゲートウェイ3)と通信し、上記行動識別情報を受信したときの上記中継装置の位置を示す位置情報および上記行動識別情報を少なくとも含むデータを収集するデータ収集装置であって、上記データおよび該データの直前に収集された直前データの位置情報、並びに、上記データの行動識別情報に基づいて、上記直前データの位置情報が示す位置から上記観察対象が移動したか否かを判定する判定部(移動判定部122)と、移動していないと判定された場合、上記データの位置情報を、上記直前データの位置情報に変更する位置変更部(位置情報決定部123)と、を備える。
上記の構成によれば、収集したデータおよびその直前のデータの位置情報だけでなく、収集したデータの行動識別情報に基づいて、観察対象が移動したか否かを判定する。そして、移動してないと判定された場合、収集したデータの位置情報をその直前のデータの位置情報に変更する。
これにより、観察対象(換言すれば、情報取得端末)が移動したのか、または、中継装置が移動したのかを正確に判定することができる。例えば、収集したデータの位置情報とその直前の位置情報とが異なる場合、観察対象が移動したことにより位置情報が変わったパターンと、観察対象は移動していないが、情報取得端末と通信した中継装置が変わったことにより位置情報が変わったパターンとが考えられる。このような場合において、上記の構成によれば、収集したデータの行動識別情報を参照するので、観察対象が移動を示す行動をとっているか否かを判定することができる。その結果、観察対象(情報取得端末)が移動したのか、または、中継装置が移動したのかを正確に判定することができる。
本発明の態様2に係るデータ収集装置は、上記態様1において、上記判定部は、上記データの位置情報が上記直前のデータの位置情報と異なり、かつ、上記データの行動識別情報が、上記観察対象が徒歩で移動していないことを示している場合、上記観察対象が移動していないと判定してもよい。
上記の構成によれば、収集したデータの位置情報とその直前の位置情報とが異なる場合において、収集したデータの行動識別情報が、観察対象が徒歩で移動していないことを示している場合、観察対象が移動していないと判定する。すなわち、位置情報が変化していても、観察対象が徒歩で移動していないことを示す行動をとっている場合は、観察対象は移動していないが、情報取得端末と通信した中継装置が変わったことにより位置情報が変わった可能性が高いため、観察対象が移動していないと判定する。これにより、中継装置が移動したことによる位置情報が変化したことを正確に判定することができる。なお、観察対象が徒歩で移動していないことを示す行動とは、例えば立ち姿勢や座り姿勢で静止する行動などである。また、徒歩で移動していることを示す行動とは、例えば歩行や走行などである。
本発明の態様3に係るデータ収集装置は、上記態様2において、上記判定部は、少なくとも2回連続して同一の上記中継装置からデータを受信している場合、上記観察対象が移動していると判定してもよい。
上記の構成によれば、観察対象が徒歩で移動していないことを示す行動をとっている場合であっても、少なくとも2回連続して同一の中継装置からデータを受信している場合、観察対象が移動していると判定する。すなわち、情報取得端末と通信した中継装置が変わっておらず、同一の中継装置とともに移動していることが明らかである場合は、観察対象者が移動していると判定する。これにより、観察対象が徒歩で移動していないことを示す行動をとりながらも、実際は移動している場合を正確に判定することができる。なお、観察対象が徒歩で移動していないことを示す行動をとりながらも、実際は移動している場合とは、例えば、中継装置を備える車両に乗っている場合や、中継装置を所持する人間の押す車いすで移動している場合などが挙げられる。
本発明の態様4に係るデータ収集装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、上記位置情報および上記行動識別情報を、上記観察対象の行動を観察する観察者が所有する観察用装置(確認用端末4)に送信する送信部(通信制御部121)をさらに備えてもよい。
上記の構成によれば、位置情報および行動識別情報を、観察用装置に送信するので、観察対象の位置や行動を観察者が知ることができる。これにより、観察対象がどのような状況にあるかを観察対象が正確に知ることができる。
本発明の態様5に係る移動観察システム(高齢者見守りシステム100)は、観察対象に携帯された情報取得端末(ビーコン2)と、移動可能な複数の中継装置(ゲートウェイ3)と、上記中継装置と通信し、データを収集するデータ収集装置(情報収集サーバ1)と、を含み、上記情報取得端末は、上記観察対象の状態に関する状態情報を近距離無線通信にて発信し、上記中継装置は、上記情報取得端末との近距離無線通信によって上記状態情報を受信したときの自装置の位置を特定し、上記位置を示す位置情報および上記状態情報を少なくとも含むデータを上記データ収集装置に送信し、上記データ収集装置は、上記データおよび該データの直前に収集された直前データの位置情報、並びに、上記データの状態情報に基づいて、上記直前データの位置情報が示す位置から上記観察対象が移動したか否かを判定し、移動していないと判定された場合、上記データの位置情報を、上記直前データの位置情報に変更することを特徴とする移動観察システム。
上記の構成によれば、収集したデータおよびその直前のデータの位置情報だけでなく、収集したデータの状態情報に基づいて、観察対象が移動したか否かを判定する。そして、移動してないと判定された場合、収集したデータの位置情報をその直前のデータの位置情報に変更する。
これにより、観察対象(換言すれば、情報取得端末)が移動したのか、または、中継装置が移動したのかを正確に判定することができる。例えば、収集したデータの位置情報とその直前の位置情報とが異なる場合、観察対象が移動したことにより位置情報が変わったパターンと、観察対象は移動していないが、情報取得端末と通信した中継装置が変わったことにより位置情報が変わったパターンとが考えられる。このような場合において、上記の構成によれば、収集したデータの状態情報を参照するので、観察対象が移動している状態であるか否かを判定することができる。その結果、観察対象(情報取得端末)が移動したのか、または、中継装置が移動したのかを正確に判定することができる。
なお、状態情報としては、観察対象がとった行動の具体的内容を一意に識別するための識別情報(行動識別情報)や、情報取得端末の本体または本体周囲における環境の物理量が挙げられる。また、該物理量としては、例えば、情報取得端末にかかる加速度や情報取得端末の周囲の気圧などが挙げられる。
本発明の態様6に係る移動観察システムは、上記態様5において、上記情報取得端末は、上記観察対象の状態を検知する複数のセンサ(加速度センサ241、気圧センサ242)を備え、該複数のセンサのそれぞれによって検知された各計測値に基づいて上記観察対象の行動を判定し、上記状態情報として、判定された行動を識別するための行動識別情報を近距離無線通信にて発信してもよい。
上記の構成によれば、複数のセンサによって検知された計測値に基づいて観察対象の行動を判定し、判定された行動を識別するための行動識別情報を近距離無線通信にて発信する。行動識別情報は、行動を識別することができればよいため、データ量を少なくすることができる。つまり上記の構成により、発信するデータ量を少なくすることができ、情報取得端末における消費電力を抑えることができる。
本発明の態様7に係る移動観察システムは、上記態様6において、上記情報取得端末は、上記行動識別情報のうち、特定の行動識別情報を発信する場合、近距離無線通信の発信強度の強化、および、近距離無線通信の発信頻度の増加の少なくとも一方を行ってもよい。
上記の構成によれば、特定の行動識別情報を発信する場合、近距離無線通信の発信強度の強化、および、近距離無線通信の発信頻度の増加の少なくとも一方を行う。これにより、観察対象が特定の行動をとった場合に、該行動を示す行動識別情報が中継装置によって受信される可能性を向上させることができる。なお、特定の行動識別情報としては、例えば、観察対象が走っていることや観察対象が転倒したことを示す情報が挙げられる。すなわち、観察対象が走っている場合を考えたとき、上記構成によれば、観察対象が走ることにより観察対象の位置が頻繁に変わっても、情報取得端末と中継装置との安定した近距離無線通信を実現することができる。また、観察対象が転倒している場合を考えたとき、上記の構成によれば、転倒したことを示す状態情報がデータ収集装置に送信される可能性が高くなる。よって、観察対象に転倒という異常が発生したことを観察者に迅速に把握させることができる。
本発明の態様8に係る移動観察システムは、上記態様5から7のいずれかにおいて、上記中継装置として情報通信端末を用いてもよい。
上記の構成によれば、中継装置として情報通信端末を用いるので、観察対象が外出している場合において、観察対象の近傍にいる人が所持する情報通信端末から、データ収集装置に該情報通信端末の位置を示す位置情報を送信することができる。よって、観察対象の外出先での位置を把握することができる。なお、情報通信端末としては、スマートフォンや携帯電話(フィーチャーフォン)などが挙げられる。
本発明の態様9に係る移動観察システムは、上記態様5から8のいずれかにおいて、上記中継装置として車両に搭載されているゲートウェイを用いてもよい。
上記の構成によれば、中継装置として車両に搭載されているゲートウェイを用いるので、観察対象が外出している場合において、観察対象の近傍にある車両や、観察対象が乗車している車両から、データ収集装置に上記ゲートウェイの位置を示す位置情報を送信することができる。よって、観察対象が外出していたとしても、観察対象の外出先での位置を把握することができる。
本発明の態様10に係るデータ収集装置の制御方法は、観察対象に携帯された情報取得端末との近距離無線通信によって該観察対象の行動を識別する行動識別情報を受信したときに自装置の位置を特定する、移動可能な複数の中継装置と通信し、上記位置を示す位置情報および上記行動識別情報を少なくとも含むデータを収集するデータ収集装置の制御方法であって、上記データおよび該データの直前に収集された直前データの位置情報、並びに、上記データの行動識別情報に基づいて、上記直前データの位置情報が示す位置から上記観察対象が移動したか否かを判定する判定ステップ(S32、S33)と、移動していないと判定された場合、上記データの位置情報を、上記直前データの位置情報に変更する位置変更ステップ(S34)と、を含む。
上記の構成によれば、態様1に係るデータ取集装置と同様の作用効果を奏する。
本発明の各態様に係るデータ収集装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記データ収集装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記データ収集装置をコンピュータにて実現させるデータ収集装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。