以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。尚、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(本開示の一形態を得るに至った経緯)
従来のガス検出装置では、LDモジュールが、任意の波長を中心として波長変調したレーザ光を出射し、フォトダイオードが、検出領域で反射されたレーザ光を受光する。この際、検出領域内の検出対象物を除く反射率が均一な状態では、検出対象の物質が検出された場合には、LDモジュールによる波長変調の周波数の2倍の周波数がフォトダイオードの出力信号に現れ、検出対象の物質が検出されない場合には、上記波長変調の周波数の2倍の周波数がフォトダイオードの出力信号に現れない。反射率が均一な状態とは、例えば検出領域内の背景が一色である状態である。
一方、検出領域内の検出対象物を除く反射率が不均一な状態では、検出対象物が存在しなくても、フォトダイオードの入力信号に対して出力信号に変動が生じる。例えば、背景色が2色のストライプ状態であり、背景の反射率の周波数が入力信号の周波数の2倍に近似する場合、検出対象物が存在しなくても、入力信号の2倍の周波数の出力信号が現れ、検出対象物が存在すると誤検知される可能性がある。この場合、物質の検出精度が低下する。
以下、検出領域内における物質の検出精度を向上できる物質検出装置及び物質検出方法について説明する。
(第1の実施形態)
[構成等]
図1は実施の形態における非可視光センサNVSSを含む検出カメラ1の概要を説明する模式図である。検出カメラ1は、可視光カメラVSCと、非可視光センサNVSSとを含む構成である。
可視光カメラVSCは、例えば既存の監視カメラと同様に、所定の波長(例えば0.4〜0.7μm)を有する可視光に対する反射光RMを用いて、所定の検出空間Kに存在する人物HMや物体(不図示)を撮像する。以下、可視光カメラVSCにより撮像された出力画像データを、「可視光カメラ画像データ」という。
従って、検出カメラ1は、非可視光を検出する非可視光センサNVSSと、撮像により可視光カメラ画像データを得る可視光カメラVSCと、の両方の構成を含む。少なくとも非可視光センサNVSSを含む検出カメラ1は、物質検出装置の一例である。
非可視光センサNVSSは、可視光カメラVSCと同一の検出空間Kに対し、光学走査を用いた面照射により、所定の波長を有する非可視光(例えば赤外光)であるレーザ光LSを投射する。投射されたレーザ光LSは、検出対象の物質(特定物質ともいう)の吸収波長帯の波長を含む光である。
非可視光センサNVSSは、レーザ光LSが被検出物(例えば特定物質としてメタンガス等の気体GS)により反射されたレーザ光RVを用いて、検出空間Kにおける特定物質の検出の有無を判定する。
非可視光センサNVSSが検出の有無を判定する特定物質は、例えば可視光カメラVSCによる可視光カメラ画像データでは判別が困難な物質であり、ガス(気体)の他、液体や固体でもよい。ここでは、検出対象の物質がガスGSである場合について例示する。
また、検出カメラ1は、可視光カメラVSCが撮像した可視光カメラ画像データに、非可視光センサNVSSによる特定物質の検出の有無の判定結果を含む出力画像データ(以下、「物質位置画像データ」という)又は物質位置画像データに関する情報(物質の名称等)を合成した表示データを生成して出力する。
検出カメラ1からの表示データの出力先は、ネットワーク(不図示)を介して検出カメラ1に接続された外部接続機器であり、例えば図4に示すカメラサーバCS又はモニタ150である。検出カメラ1とモニタ150とを含んで物質検出システムが構成される。ネットワークは、有線ネットワーク(例えばイントラネット、インターネット)でもよいし、無線ネットワーク(例えば無線LAN(Local Area Network))でもよい。
図2は検出カメラ1の内部構成を示す模式図である。図2では、図1の上方から(z軸方向の下向きに)視た場合の検出カメラ1の内部構成が示される。
検出カメラ1は、例えば箱形の筐体1zを有する。筐体1zの前面には、非可視光センサNVSS用の開口部1wが形成される。なお、開口部1wには、防水・防塵のために、透明なガラスもしくは樹脂が嵌め込まれてもよい。また、筐体1zの前面には、可視光カメラVSCの撮像レンズV31(図4参照)が露出する。
筐体1zの内部には、センサスキャンユニット5が設けられる。センサスキャンユニット5は、雲台10及びパンチルトユニット15(図4参照)を有する。雲台10は、図2において矢印Pで表されるパン方向(図中xy平面に沿う方向)かつ図中矢印Tで表されるチルト方向(図中z軸方向)に旋回自在である。パンチルトユニット15は、雲台10を駆動するモータ機構(図示せず)を備える。
雲台10には、レーザダイオードLD、コリメートレンズPLZ、フォトダイオードPD及び集光レンズCLZが搭載される。パンチルトユニット15は、雲台10をパン方向及びチルト方向に旋回させることで、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSを用いて、検出領域SAR内を2次元的に走査(水平走査及び垂直走査)可能である。
レーザダイオードLDから出射されたレーザ光LSは、コリメートレンズPLZを透過して平行光となり、検出空間Kに向けて出射される。検出空間K内のガスGSによって反射したレーザ光RVは、検出カメラ1の筐体1zに形成された開口部1wを通って入射し、集光レンズCLZによって集光され、フォトダイオードPDで受光される。
フォトダイオードPDで受光されたレーザ光RVの吸収スペクトル(吸収特性)から検出空間K内に存在する検出対象の物質であるガスGSの有無が判定される。検出領域SARは、例えば、筐体1zに形成された開口部1wの形状によって設定される。検出領域SARは、レーザダイオードLDから出射されたレーザ光LSが検出空間Kにおいて走査可能な範囲(スキャン画角)に対応する。
ここで、レーザダイオードLDは、温度の影響を受け易く、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSの波長は僅かな温度変化によってずれてくる。このため、非可視光センサNVSSは、ガス検出の動作中、レーザ光LSの波長(波長変調における中心波長)が変化しないように、レーザダイオードLDが出射するレーザ光LSの温度を一定に保つように、温調制御(温度調節のための制御)を行う。
レーザダイオードLDが出射するレーザ光LSの温調制御を行うために、筐体1zの開口部1wに近接した検出領域SAR外には、拡散板DEFが配置される。また、拡散板DEFとレーザダイオードLDとの間には、参照セルCELが配置される。参照セルCELには、特定物質(ここでは、メタンガス)と同じ成分のガスが封入されている。
温調制御では、レーザダイオードLDから出射したレーザ光LSは、参照セルCELを透過し、拡散板DEFで拡散されると、拡散された光の一部が集光レンズCLZを通って、物質検出用のフォトダイオードPDで受光される。また、拡散板DEFによってレーザ光LSは拡散しているので、フォトダイオードPDで受光されるレーザ光RVの光量は減っており、フォトダイオードPDの許容受光量の範囲内に収まる。
図3は、センサスキャンユニット5による検出領域SARの走査例を示す模式図である。センサスキャンユニット5の雲台10が旋回することによって、雲台10に搭載されたレーザダイオードLDから出射されたレーザ光LSは、スキャン画角(検出領域SAR)内をパン方向(水平方向)及びチルト方向(垂直方向)に走査する。また、図3では、拡散板DEFは、レーザ光LSによる1走査が終了し、レーザ光LSが初期位置HPに戻る前の、走査終了位置EPを越えた水平方向の位置に、配置される。
温調制御では、レーザダイオードLDから出射されたレーザ光LSは、拡散板DEFによって拡散され、検出対象の物質であるガスが封入された参照セルCELを透過し、物質検出用の集光レンズCLZで集光され、物質検出用のフォトダイオードPDで受光される。
図4は検出カメラ1の構成を示すブロック図である。
検出カメラ1は、前述したように、非可視光センサNVSSと、可視光カメラVSCとを含む構成である。非可視光センサNVSSは、制御部11と、投射部PJと、受光処理部SAとを含む構成である。
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成される。制御部11は、例えば、非可視光センサNVSSの各部の動作制御を全体的に統括するための信号処理、他の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理及びデータの記憶処理を行う。また、制御部11は、非可視光センサNVSSの検出対象となる特定物質を検出するための検出閾値Mを検出処理部27に設定する。
また、制御部11は、AD変換するためのタイミング信号を、検出処理部27へ送る。制御部11は、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSを変調するための光源発光信号を、レーザダイオードLDへ送る。
制御部11は、波長検出温調制御部12を有し、検出処理部27から後述する温調状態信号を入力し、この温調状態信号を基に温調制御信号を生成し、温調制御信号をレーザダイオードLDへ送る。温調制御信号は、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSを温調するための信号であり、レーザダイオードLDが有するペルチェ素子(図示せず)に対し、吸熱又は発熱を指示する信号である。レーザダイオードLDは、温度の変化に応じて、出射するレーザ光LSの波長の中心波長を可変させる。
また、制御部11は、レーザ光LSの波長変調の周波数(変調周波数)を切り替える。制御部11は、変調周波数の切り替えに応じて、レーザ光LSが特定物質で反射されたレーザ光RVを検出するための周波数(検出周波数)を切り替える。検出周波数は、変調周波数の2倍である。また、制御部11は、メモリ13に保持された設定情報(例えば、どのタイミングで変調周波数や検出周波数を切り替えるか、等の情報)を参照し、変調周波数や変調周波数を切り替える。変調周波数の情報は、光源発光信号に含められ、レーザダイオードLDへ送られる。検出周波数の情報は、検出処理部27へ送られる。
投射部PJは、レーザダイオードLDと、コリメートレンズPLZと、パンチルトユニット15とを有する。
レーザダイオードLDは、レーザ光LSの波長が検出対象の物質であるガスGSの吸収波長帯のピークと一致するように波長調整されたレーザ光LSを出射する。ここでは、検出対象の物質であるガスとして、メタンガス(CH4)を一例として挙げる。
波長調整には、種々の方法が用いられる。例えば、制御部11は、半導体ダイオードとしてのレーザダイオードLDの駆動電流を変調させることで、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSを波長変調させる。駆動電流は半導体ダイオードの入力信号であり、駆動電流の周波数が変調周波数となる。また、レーザダイオードLDに備わるペルチェ素子Ptが、制御部11からの温調制御信号に従って吸熱又は発熱し、レーザダイオードLDの温度を変動させることで、レーザ光LSの波長の中心波長を調整する。
コリメートレンズPLZは、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSを平行光にする。
パンチルトユニット15は、レーザダイオードLD、コリメートレンズPLZ、集光レンズCLZ、及びフォトダイオードPDが搭載された雲台10を、パン方向及びチルト方向に旋回させる。パンチルトユニット15は、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSを用いて、検出領域SARを含む走査範囲内で2次元に走査する。
図5は、受光処理部SAの構成を示すブロック図である。
受光処理部SAは、集光レンズCLZ、フォトダイオードPD、信号加工部26、検出処理部27、及び表示処理部28を有する。信号加工部26は、I/V変換回路261、増幅回路262及びフィルタ処理回路263を含む。検出処理部27は、AD変換回路271、温調制御処理部272、及び物質検出処理部273を含む。
検出処理部27の温調制御処理部272及び物質検出処理部273並びに表示処理部28の各機能は、メモリ13に保持されたプログラムをプロセッサ20が実行することにより、実現される。
集光レンズCLZは、レーザダイオードLDから出射され、検出領域SAR内の特定物質で反射されたレーザ光RVを集光し、フォトダイオードPDに受光させる。フォトダイオードPDは、受光したレーザ光RVの光量に応じた電荷を生成し、電流信号として出力する。
I/V変換回路261は、フォトダイオードPDから出力される電流信号を電圧信号に変換する。増幅回路262は、I/V変換回路261で出力される電圧信号を増幅する。フィルタ処理回路263は、増幅回路262で増幅された信号に対しフィルタ処理を行い、物質検出に用いられる信号として検出処理部27内のAD変換回路271に出力する。
検出処理部27内のAD変換回路271は、特定物質の検出又はレーザダイオードLDの温調の際に、信号加工部26から入力される信号をデジタル信号に変換する。
温調制御処理部272は、温調動作においてAD変換回路271でデジタル値に変換された値を基に、温調状態を表す信号(温調状態信号)を生成し、制御部11に出力する。この温調状態信号は、レーザダイオードLDから出射される、波長変調されたレーザ光LSの信号(周波数1f)に対し、2倍の周波数(2f)の信号の大きさ(信号レベル)を示す信号である。
レーザダイオードLDの温度が変化しておらず、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSの変調波長幅が特定物質の吸収波長帯域からずれていないとする。この場合、温調状態信号は、周波数1fに対する2倍の周波数(2f)の信号の大きさ(信号レベル)が大きくなる。
一方、レーザダイオードLDの温度が変化し、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSの変調波長幅が特定物質の吸収波長帯域からずれているとする。この場合、温調状態信号は、周波数が変動する信号となり、フォトダイオードPD2からの信号を基に得られる、周波数1fに対する2倍の周波数(2f)の信号の大きさ(信号レベル)が小さくなる。
物質検出処理部273は、物質検出動作において受光処理部SA内の信号加工部26から出力され、AD変換回路271でデジタル値に変換された値を基に、特定物質を検出し、特定物質の検出結果を表す信号を表示処理部28に出力する。
ここでは、物質検出処理部273は、温調状態信号と同様、AD変換回路271でデジタル値に変換された値を基に、レーザダイオードLDから出射される、波長変調されたレーザ光LSの信号(周波数1f)に対し、2倍の周波数(2f)の信号の大きさ(信号レベル)を示す信号を得る。物質検出処理部273は、この2倍の周波数(2f)の信号の大きさ(信号レベル)を示す信号を基に、特定物質の検出結果を表す信号を生成する。
表示処理部28は、非可視光センサNVSSから、検出領域SAR内における特定物質の2次元位置を示す物質位置画像データを生成する。物質位置画像データは、特定物質を表す画像データと、検出領域SAR内の2次元位置情報(例えば、雲台10のパン角度及びチルト角度)と、を含む。表示処理部28は、この物質位置画像データを可視光カメラVSCの表示制御部37に出力する。
このように、検出領域SAR内の可視光画像データに、検出処理部27により得られた特定物質に関する情報が合成されて表示出力される。従って、非可視光センサNVSSは、検出領域SARのどこに特定物質が存在するかをユーザに対して視覚的に明らかに示すことができる。
尚、本実施形態において、表示処理部28は、物質位置画像データを可視光カメラVSC内の表示制御部37に送信する代わりに、例えば後述するモニタ150やカメラサーバCS、通信端末に送信してもよい。
図4に示すように、可視光カメラVSCは、撮像レンズV31と、イメージセンサV33と、信号処理部V35と、表示制御部37と、出力部38と、を有する。信号処理部V35及び表示制御部37の各機能は、メモリ39に保持されたプログラムをプロセッサV20が実行することにより、実現される。
撮像レンズV31は、非可視光センサNVSSによる検出領域SARを含む範囲を画角範囲とし、外部からの入射光(反射光RM)を集光し、イメージセンサV33の撮像面に結像させる。
イメージセンサV33は、可視光の波長(例えば0.4μm〜0.7μm)に対する分光感度のピークを有する。イメージセンサV33は、撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。イメージセンサV33の出力は、電気信号として信号処理部V35に入力される。
信号処理部V35は、イメージセンサV33の出力である電気信号を用いて、例えばRGB(Red Green Blue)又はYUV(輝度・色差)等により規定される可視光画像データを生成する。これにより、可視光カメラVSCにより撮像された可視光画像データが形成される。信号処理部V35は、可視光画像データを表示制御部37に出力する。
表示制御部37は、例えば、特定物質が可視光画像データにおける所定の位置で検出された場合に、信号処理部V35から出力された可視光画像データと、表示処理部28から出力された物質位置画像データと、を合成し、表示データを生成する。この表示データは、特定物質に関する情報の一例である。
出力部38は、この表示データを外部装置(例えばカメラサーバCS及びモニタ150)に出力する。
カメラサーバCSは、表示制御部37から出力された表示データを通信端末又は1つ以上の外部接続機器(不図示)に送信し、通信端末又は1つ以上の外部接続機器の表示画面における表示データの表示を促す。
モニタ150は、表示制御部37から出力された表示データを表示する。
[特定物質の吸収特性]
図6は、特定物質の吸収スペクトルに対し、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSの波長が最適である場合における、フォトダイオードPDの入力信号及び出力信号を説明するための模式図である。
図6では、検出対象の物質であるガスとして、メタンガス(CH4)を一例として挙げる。図6では、縦軸はフォトダイオードPDの受光電圧(単位は正規化された値)を表し、横軸はフォトダイオードPDが受光するレーザ光RVの波長(nm)を表す。受光電圧が低い程、特定物質によるレーザ光LSの吸収率が高い。尚、物質の吸収特性は、物質に応じて決まっている。
図6では、特定物質の吸収スペクトルは、1653.67nmを中心とする波長帯域を有する。これに対し、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光は、波長変調範囲WAR0に示すように、1653.67nmを中心波長とし、0.05nmの変調幅で変調される。
前述したように、レーザダイオードLDからレーザ光LSが出射され、検出領域SAR内の特定物質で反射されたレーザ光RV(入力信号)は、フォトダイオードPDにより、レーザ光RVの信号に対し、2倍の周波数を持つ信号(出力信号)として検出される。この場合、周波数が一定の正弦波信号が出力される。
また、制御部11は、変調周波数を、第1の変調周波数(f1)と第2の変調周波数(f2)の2つのいずれかに切り替えて、レーザ光を出射する。尚、変調周波数の数が3つ以上あり、その中のいずれかに切り替えられてもよい。
また、制御部11は、変調周波数の切り替えに応じて、検出周波数を、第1の検出周波数(2×f1)と第2の検出周波数(2×f2)の2つのいずれかに切り替える。尚、検出周波数の数が3つ以上あり、その中のいずれかに切り替えられてもよい。
つまり、フォトダイオードPDでは、波長変調された第1の入力信号(1×f1)に対し、2倍の周波数を持つ第1の出力信号(2×f1)が得られる。また、波長変調された第2の入力信号(1×f2)に対し、2倍の周波数を持つ第2の出力信号(2×f2)が得られる。
図7は、フォトダイオードPDの入力信号及び出力信号の時間変化例を示すグラフである。図7において、「LD出力」は、レーザダイオードLDの出力(つまりレーザ光LS)の信号を示し、縦軸は波長を示す。また、「PD出力」は、フォトダイオードPDから出力される信号を示す(以降の図8〜図10でも同様)。
フォトダイオードPDで受光される(フォトダイオードPDに入力される)信号は、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSの変調周波数に対して、検出対象物が存在する場合に2倍の周波数となる。
また、フォトダイオードPDから出力される信号の周波数、つまり検出周波数は、変調周波数の2倍となる。従って、レーザ光LSの変調周波数が第1の変調周波数f1である場合、第1の変調周波数f1で波長変調されたレーザ光RVを検出するための第1の検出周波数は、第1の変調周波数f1に対し、2倍の周波数(2×f1)となる。また、レーザ光LSの変調周波数が第2の変調周波数f2である場合、第2の変調周波数f2で波長変調されたレーザ光RVを検出するための第2の検出周波数は、第2の変調周波数f2に対し、2倍の周波数(2×f2)となる。
第2の変調周波数f2は、例えば、第1の変調周波数f1に対し、5/3倍に設定される。この5/3倍は一例であり、他の倍数でもよい。例えば、第1の変調周波数f1が1.5Hzに設定され、第2の変調周波数f2が2.5Hzに設定される。尚、第2の変調周波数f2が、第1の変調周波数f1の逓倍に設定されてもよい。
また、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光LSは、検出領域SAR内で物質により反射され、フォトダイオードPDで受光される。この場合、フォトダイオードPDへの入力信号は、検出領域SAR内に特定物質であるガス(一例としてメタンガス:CH4)が無い(存在しない)場合、信号レベルが値0となる。そのため、レーザダイオードLDの出力信号も信号レベルが値0となる。
検出領域SAR内にガスが有る(存在する)場合、第1の変調周波数f1に対し、第1の検出周波数は周波数(f1×2)となり、この周波数の信号を含む信号が得られる。同様に、第2の変調周波数f2に対し、第2の検出周波数は、周波数(f2×2)となり、この周波数の信号を含む信号が得られる。尚、2つの変調周波数が用いられることを例示したが、3つ以上の変調周波数が用いられてもよい。
[動作等]
次に、検出カメラ1の動作について説明する。
まず、3通りの物質検出動作について説明する。
図8は、物質検出動作におけるスポット検出を説明するための模式図である。スポット検出では、非可視光センサNVSSは、検出領域SAR内の1点に対しレーザ光LSを照射して、特定物質を検出する。
非可視光センサNVSSは、スポット検出する場合、特定物質(例えばメタンガス)が存在しないと、フォトダイオードPDの出力信号として、変調周波数の2倍の周波数(2f)を持たない信号sg1を得る。一方、特定物質が存在すると、非可視光センサNVSSは、フォトダイオードPDの出力信号として、変調周波数の2倍の周波数(2f)を持つ信号sg2を得る。
図9は、物質検出動作における背景変化無しの場合のエリア検出を説明するための図である。エリア検出では、非可視光センサNVSSが、検出領域SAR内を水平方向及び垂直方向にライン走査し、レーザ光LSを照射して、特定物質を検出する。
非可視光センサNVSSは、エリア検出する場合、特定物質が存在しないと、フォトダイオードPDの出力信号として、変調周波数の2倍の周波数(2f)を持たない信号sg3を得る。一方、特定物質が存在すると、非可視光センサNVSSは、フォトダイオードPDの出力信号として、変調周波数の2倍の周波数(2f)を持つ信号sg4を得る。
図10は、物質検出動作における背景変化有りの場合のエリア検出を説明するための模式図である。背景変化の一例として、壁面に塗られた白と黒のストライプ模様が挙げられる。尚、白は光の反射率が高く、黒は光の反射率が低い。
非可視光センサNVSSは、図10のストライプ模様に対して直交する方向にレーザ光を走査する場合、特定物質が無くても、フォトダイオードPDの出力信号として、背景変化に伴って変化する信号sg10を得る。そのため、非可視光センサNVSSは、背景変化率が第1の検出周波数(2×f1)に近似していると、特定物質が存在するものと誤検知される可能性のある信号を得ることになる。ここでは、背景変化率は、レーザ光の反射率と同じであり、背景反射率とも言える。
また、第2の検出周波数(2×f2)を用いて物質検出すると、背景変化率が第1の検出周波数(2×f1)に近似する場合、背景変化率が第2の検出周波数(2×f2)に近似しない。そのため、非可視光センサNVSSは、フォトダイオードPDの出力信号として、第2の検出周波数(2×f2)を持たない信号sg11を得る。
このように、特定物質が存在しない場合、少なくとも一方の検出周波数2×f1,2×f2は背景変化率に近似しない。そのため、非可視光センサNVSSは、異なる物質検出の結果を得る。従って、非可視光センサNCSSは、2つの変調周波数f1,f2を用いて検出された結果が異なる場合、一方の結果は誤検知であり、特定物質が存在しないと判定できる。
一方、特定物質が存在する場合、背景変化率が第1の検出周波数(2×f1)に近似する場合、第1の検出周波数(2×f1)の信号と背景変化率を表す信号とが加算される。そのため、非可視光センサNVSSは、フォトダイオードPDの出力信号として、第1の検出周波数(2×f1)且つ信号レベルの大きい信号sg12を得る。
また、第2の検出周波数(2×f2)を用いて物質検出すると、背景変化率が第1の検出周波数(2×f1)に近似する場合、背景変化率が第2の検出周波数(2×f2)に近似しない。そのため、第2の検出周波数(2×f2)の信号と背景変化率を表す信号とが区別され、非可視光センサNVSSは、フォトダイオードPDの出力信号として、第2の検出周波数(2×f2)且つ通常の信号レベルの信号sg13を得る。
従って、特定物質が存在する場合、2つの変調周波数f1,f2を用いて検出される物質検出の結果は同じとなる。
このように、非可視光センサNVSSは、特定物質が存在する場合、2つの変調周波数f1,f2を用いることで、一方の検出周波数1×2f,2×2fが背景変化率に近似していても、いずれも変調周波数の2倍の周波数(1×2f,2×2f)の信号を出力する。従って、非可視光センサNVSSは、特定物質が存在しないと誤検知されるような信号を出力せず、特定物質が存在すると判定できる。
図11は、物質検出結果の判定を説明するための模式図である。
非可視光センサNVSSの制御部11は、後述するように、所定の条件(例えば、フレーム毎、ライン毎、単位領域毎)に従って、変調周波数及び検出周波数を切り替える。図11では、フレーム毎に変調周波数及び検出周波数が切り替えられることを例示する。
尚、フレームとは、走査される検出領域SAR全体に相当する。ラインとは、走査される同一の行(ライン)である。単位領域とは、検出領域SARにおける走査対象の最小の領域である。検出領域SARにおいて1つのフレームについての走査が完了すると、同じ検出領域SARにおいて次のフレームの走査に移行する。
例えば、レーザダイオードLDは、前フレーム(第1のフレーム)では、第1の変調周波数f1でレーザ光LSを照射する。レーザダイオードLDは、現フレーム(第2のフレーム)では、第2の変調周波数f2でレーザ光LSを照射する。
図11では、検出領域SAR内の各ライン(L1,L2,・・・,Lm)に付される番号1,2,・・・,nは、レーザ光LSの照射位置を表す。検出処理部27は、各照射位置において、前フレームにおける変調周波数f1のレーザ光による特定物質の検出結果と、現フレームにおける変調周波数f2のレーザ光による特定物質の検出結果と、を比較する。
検出処理部27は、この両者の検出結果が不一致である場合、誤検知が発生し、特定物質が存在しないと判定する。一方、検出処理部27は、この両者の検出結果が一致している場合、誤検知は無く、特定物質が存在すると判定する。
図12は、物質検出結果の判定を詳細に説明するための模式図である。図12では、図11と同様に、フレーム毎に変調周波数及び検出周波数が切り替えられることを例示する。
図12に示す「入力データ」は、1つのフレームに対する特定物質の検出結果のデータである。この入力データは、他のフレームに対する特定物質の検出結果と比較されるため、メモリ13に格納される。この入力データは、例えば、特定物質の有無の情報と、信号加工部26を介して取得されるフォトダイオードPDの出力信号の信号レベルの情報と、を含む。尚、入力データに含まれる上記出力信号の信号レベルの情報を、単に入力データの信号レベルとも称する。
図12に示す「出力データ」は、一のフレームに対する特定物質の検出結果と他のフレームに対する特定物質の検出結果との比較の結果、検出処理部27が出力する検出結果である。出力データは、例えば、特定物質の有無の情報を含む。
検出処理部27は、複数の入力データを比較し、いずれかの入力データに基づく出力データを出力する。
図12では、番号1,2,・・・,10は、レーザ光LSの照射位置を表す。前述の通り、同じ照射位置で、前フレームの入力データDaに含まれる特定物質の有無と現フレームの入力データDbに含まれる特定物質の有無とが等しい場合、検出処理部27は、誤検知がなく、特定物質が存在する又は存在しないと判定する。検出処理部27は、出力データとして、現フレームの入力データDbに基づく特定物質の有無の情報を出力する。
一方、前フレームの入力データDaに含まれる特定物質の有無と現フレームの入力データDbに含まれる特定物質の有無とが異なり、且つ、入力データDaの信号レベルが入力データDbの信号レベルより小さいとする。この場合、検出処理部27は、出力データとして、信号レベルの小さい入力データDaに基づく特定物質の有無の情報を出力する。
また、前フレームの入力データDaに含まれる特定物質の有無と現フレームの入力データDbに含まれる特定物質の有無とが異なり、且つ、入力データDaの信号レベルが入力データDbの信号レベルより大きいとする。この場合、検出処理部27は、出力データとして、信号レベルの小さい入力データDbに基づく特定物質の有無の情報を出力する。
つまり、検出処理部27は、同じ照射位置で、前フレームの入力データDaに含まれる特定物質の有無と現フレームの入力データDbに含まれる特定物質の有無とが異なる場合、誤検知があり、特定物質が存在しないと判定する。そして、検出処理部27は、出力データとして、信号レベルの小さい入力データDa又はDbに基づいて、特定物質が存在しない旨の情報を出力する。
図13及び図14は、非可視光センサNVSSによる物質検出動作の一例を示すフローチャートである。
制御部11は、レーザ光LSの変調周波数を決定し、光源発光信号の初期設定を行う(S1)。初期設定では、変調周波数は、例えば第1の変調周波数f1(<f2)に設定される。設定された情報(設定情報)は、メモリ13に格納される。
投射部PJは、制御部11の制御により、設定された変調周波数に従って、レーザ光LSを出射する(S2)。出射されたレーザ光LSは、検出領域SAR内の物質で反射され、レーザ光RVがフォトダイオードPDに入射する。フォトダイオードPDは、入射されたレーザ光RVに基づく信号を出力する。
信号加工部26は、フォトダイオードPDからの信号(フォトダイオードPDの出力信号)を入力し、増幅する(S3)。
検出処理部27は、メモリ13に保持された設定情報を参照し、変調周波数が第1の変調周波数f1であるか否かを判別する(S4)。
変調周波数が第1の変調周波数f1である場合、検出処理部27は、第1の検出周波数(2×f1)を用いて、特定物質の検出処理を行い(S5)、特定物質であるガス検出の有無を判定する(S7)。ここでは、検出処理部27は、信号加工部26によって増幅された信号のうち、第1の検出周波数(2×f1)の信号を抽出し、特定物質の有無を判定する。ガスGSの有無は、例えば、第1の検出周波数(2×f1)の信号が検出閾値M以上であるか否かで判定される。尚、特定物質の検出処理は、単位領域毎に行われる。
検出処理部27は、検出領域SARにおける、前フレームでの特定物質の検出結果(図12に示した入力データDaに相当)をメモリ13から読み込む(S8)。また、検出処理部27は、現フレームでの特定物質の検出結果(図12に示した入力データDbに相当)をメモリ13へ書き込む(S8)。尚、メモリ13に保持された現フレームでの特定物質の検出結果は、次フレームでの特定物質の検出結果とともに、次回の特定物質の検出処理に用いられる。
検出処理部27は、前フレームに係る検出結果(ここでは特定物質の有無)と現フレームに係る検出結果(ここでは特定物質の有無)とが一致するか否かを判別する(S9)。
前フレームに係る検出結果と現フレームに係る検出結果とが一致する場合、検出処理部27は、現フレームに係る検出結果を採用し、現フレームに係る検出結果(ここでは特定物質の有無の情報)を表示処理部28へ送る(S10)。
一方、前フレームに係る検出結果と現フレームに係る検出結果とが不一致である場合、検出処理部27は、フォトダイオードPDの出力信号の信号レベルの低い方のフレームに係る検出結果を採用し、該当するフレームに係る検出結果(ここでは特定物質の有無の情報)を表示処理部28へ送る(S11)。
つまり、受光レベルの低いフレームに係る検出結果のデータが出力される場合、検出処理部27は、誤検知であるとして、特定物質が検出されなかった方のデータを正しい検出結果のデータとして使用する。
S4で変調周波数が第2の変調周波数f2である場合、検出処理部27は、第2の検出周波数(2×f2)を用いて、特定物質の検出処理を行い(S6)、特定物質であるガス検出の有無を判定する(S7)。非可視光センサNVSSは、第2の検出周波数(2×f2)を用いる場合も、第1の検出周波数(1×f1)を用いる場合と同様に、S8〜S11の処理を行う。
表示処理部28は、検出処理部27からの特定物質の検出結果を基に、物質位置画像データを生成し、表示制御部37に出力する(S12)。物質位置画像データには、例えば、特定物質であるガスGSが存在する場合、特定物質の位置(方向)を表す画像が含まれる。表示制御部37は、物質位置画像データを可視光カメラVSCで撮像された撮像データに重畳して表示データを生成し、出力部38を介してカメラサーバCS及びモニタ150に出力する。
続いて、制御部11は、変調周波数の切替タイミングであるか否かを判定する(S13)。制御部11は、例えば、フレーム、ライン、照射位置(単位領域)の切替タイミングにおいて、変調周波数の切替タイミングであると判定する。
切替タイミングでない場合、パンチルトユニット15は、走査位置を変更する(S17)。つまり、パンチルトユニット15は、雲台10を駆動し、雲台10に搭載された各機器を、次のレーザ光LSの走査位置に向ける。この各機器は、レーザダイオードLD、コリメートレンズPLZ、フォトダイオードPD及び集光レンズCLZを含む。
そして、制御部11は、物質検出動作を継続するか否かを判別する(S18)。物質検出動作を継続するか否かは、例えば、メモリ13に保持された設定情報、時刻、検出カメラ1や非可視光センサNVSSの電源オンオフの操作に基づく。
物質検出動作を継続する場合、非可視光センサNVSSは、S3の処理に進む。物質検出動作を継続しない場合、非可視光センサNVSSは、図13及び図14の処理を終了する。
また、S13において変調周波数の切替タイミングである場合、制御部11は、メモリ13を参照し、変調周波数が第1の変調周波数f1に設定されていたか否かを判別する(S14)。
変調周波数が第1の変調周波数f1に設定されていた場合、制御部11は、変調周波数を第2の変調周波数f2に設定し、この設定情報をメモリ13に格納する(S15)。一方、変調周波数が第2の変調周波数f2に設定されていた場合、制御部11は、変調周波数を第1の変調周波数f1に設定し、この設定情報をメモリ13に格納する(S16)。S15,S16の処理後、非可視光センサNVSSは、S17の処理に進む。
尚、図13及び図14では、変調周波数は、2つの周波数のいずれかに設定可能であることを例示したが、前述したように、3つ以上の中から任意の周波数に設定されてもよい。この場合、切替後の変調周波数は、予め決められた順番に従って設定されてもよいし、任意の順番で設定されてもよい。
[変調パターンの詳細]
変調周波数の切替方法として、複数のバリエーション(変調パターン)が想定される。図15及び図16は、変調パターンPT0〜PT5を示す模式図である。尚、図15及び図16では、L1,L2,L3,・・・,Lmは、水平方向のライン番号を示す。また、番号1,2,3,・・・,nは、検出領域SARにおけるレーザ光LSの照射位置を表す。制御部11がどの変調パターンを設定して変調周波数の切り替えを行うかを示す情報は、予めメモリ13に保持される。
尚、検出周波数の切替方法についても、複数のバリエーション(検出パターン)が想定される。検出パターンは、変調パターンに対応して同様に設定されるので、詳細な説明を省略する。
変調パターンPT0では、制御部11が、変調周波数を切り替えず、変調周波数を固定する場合を示す。変調パターンPT0では、いずれのフレームにおいても、変調周波数が第1の変調周波数f1に固定である。
変調パターンPT1では、制御部11が、フレーム単位(検出領域SAR全体で1回の検出動作)で、変調周波数を交互に切り替える場合を示す(フレーム順次)。
1フレーム目では、変調周波数は第1の変調周波数f1である。2フレーム目では、変調周波数は第2の変調周波数f2である。3フレーム目では、変調周波数は再び第1の変調周波数f1である。
変調パターンPT2では、制御部11が、水平方向のライン毎に変調周波数を交互に切り替え、フレーム毎に開始する変調周波数を変更する場合を示す(ライン順次)。
1フレーム目では、1行目のラインで変調周波数が第1の変調周波数f1に設定され、2行目のラインで変調周波数が第2の変調周波数f2に設定される。以後、ライン単位で交互に変調周波数が第1の変調周波数f1又は第2の変調周波数f2に設定される。
2フレーム目では、1行目のラインで変調周波数が第2の変調周波数f2に設定され、2行目のラインで変調周波数が第1の変調周波数f1に設定される。以後、ライン単位で交互に変調周波数が第1の変調周波数f1又は第2の変調周波数f2に設定される。3フレーム目以降は、1フレーム目と2フレーム目の繰り返しである。
変調パターンPT3では、制御部11が、変調周波数を照射位置(単位領域)毎に交互に切り替える(単位領域順次)。
1フレーム目の1行目のラインでは、第1の照射位置で、変調周波数が第1の変調周波数f1に設定され、第1の照射位置に隣接する第2の照射位置で、変調周波数が第2の変調周波数f2に設定される。第3以降の照射位置では、第1の照射位置及び第2の照射位置と同様に、変調周波数が交互に切り替えられる。
1フレーム目の2行目のラインでは、第1の照射位置で、変調周波数が第2の変調周波数f2に設定され、第2の照射位置で、変調周波数が第1の変調周波数f1に設定される。第3以降の照射位置では、第1の照射位置及び第2の照射位置と同様に、変調周波数が交互に切り替えられる。3行目以降のラインは、1行目と2行目のラインの繰り返しである。
2フレーム目の1行目のラインでは、第1の照射位置で、変調周波数が第2の変調周波数f2に設定され、第2の照射位置で、変調周波数が第1の変調周波数f1に設定される。第3以降の照射位置では、第1の照射位置及び第2の照射位置と同様に、変調周波数が交互に切り替えられる。
2フレーム目の2行目のラインでは、第1の照射位置で、変調周波数が第1の変調周波数f1に設定され、第2の照射位置で、変調周波数が第2の変調周波数f2に設定される。第3以降の照射位置では、第1の照射位置及び第2の照射位置と同様に、変調周波数が交互に切り替えられる。3行目以降のラインは、1行目と2行目のラインの繰り返しである。
3フレーム目以降は、1フレーム目と2フレーム目の繰り返しである。
変調パターンPT0〜PT3では、制御部11が、1つの照射位置に対し、1つの変調周波数でレーザ光LSを照射することを想定した。変調パターンPT4,PT5では、制御部11は、1つの照射位置を分割し、分割された各位置に対し、異なる2つの変調周波数でレーザ光LSを照射する。
変調パターンPT4では、制御部11が、全フレームの全ラインにおける各照射位置で、第1の変調周波数f1、第2の変調周波数f2の順でレーザ光を照射する。つまり、制御部11は、同一の単位領域において、フレーム毎に変調周波数を切り替えず、同一の位相としている。
変調パターンPT5では、制御部11が、各照射位置における変調周波数f1,f2の順を、フレーム毎に交互に切り替える。即ち、1フレーム目の各照射位置では、第1の変調周波数f1,第2の変調周波数f2の順でレーザ光が照射され、2フレーム目の各照射位置では、第2の変調周波数f2,第1の変調周波数f1の順でレーザ光が照射される。つまり、制御部11は、同一の単位領域において、フレーム毎に変調周波数を切り替え、位相を交互に切り替える。
このように、非可視光センサNVSSは、ライン単位や照射位置単位で変調周波数を切り替えることで、検出領域SARにおける背景の変化が大きい場所でも、背景変化率の影響を抑制して、特定物質を検出できる。同様に、同一の単位領域に複数の検出周波数を用いて物質検出することで、検出領域SARにおける背景の変化が大きい場所でも、背景変化率の影響を抑制して、特定物質を検出できる。
[効果等]
以上のように、検出カメラ1は、レーザダイオードLDと、フォトダイオードPDと、検出処理部27と、パンチルトユニット15と、制御部11と、を備える。レーザダイオードLDは、物質の検出領域SAR内へレーザ光LSを波長変調して出射する。フォトダイオードPDは、検出領域SAR内において、レーザ光LSが物質で反射された光であるレーザ光RVを受光する。検出処理部27は、レーザ光RVの波長特性に基づいて、物質(例えばガスGS)を検出する。パンチルトユニット15は、検出領域SAR内において、レーザ光LSの出射方向及びレーザ光RVの受光方向を変更する。制御部11は、レーザ光LSの波長変調の周波数である変調周波数と、検出処理部27により物質を検出するための変調周波数に対応する検出周波数と、を変更する。
レーザダイオードLDは、トランスミッタの一例である。フォトダイオードPDは、レシーバの一例である。検出処理部27は、ディテクタの一例である。パンチルトユニット15は、アクチュエータの一例である。制御部11は、コントローラの一例である。
これにより、制御部11は、変調周波数を変更して、レーザダイオードLDにレーザ光を照射させる。検出処理部27は、この変更された変調周波数に対応する検出周波数を用いて、レーザ光RVの波長特性に基づいて特定物質を検出する。従って、検出カメラ1は、背景反射率が均一でない場合でも、物質の検出精度を向上できる。また、検出カメラ1は、時分割で変調周波数及び検出周波数を切り替える場合、時分割で検出対象物としての特定物質(ターゲット)を変更できる。
また、レーザダイオードLDは、検出領域SARにおいて複数回、レーザ光LSを出射してもよい。フォトダイオードPDは、検出領域SARにおいて複数回、レーザ光RVを受光してもよい。検出処理部27は、検出領域SARにおいて複数回、特定物質であるガスGSを検出するための検出動作を反復してもよい。制御部11は、検出領域SAR全体(フレーム)での検出動作毎、検出領域SARにおける所定方向に沿うラインでの検出動作毎、又は検出領域SARにおける単位領域毎に、変調周波数及び検出周波数を変更してもよい。
これにより、検出カメラ1は、様々な方法で変調周波数及び検出周波数を切り替えでき、物質の検出精度を向上できる。検出カメラ1は、例えば、一の変調周波数及び検出周波数での波長変調における吸収特性と背景変化の特性とが似た特性となる場合でも、他の変調周波数及び検出周波数での波長変調における吸収特性と背景変化の特性とを区別可能に設定できる。
また、検出処理部27は、検出領域SARにおける任意の領域において、第1の検出周波数(2×f1)を用いた物質の検出と、第2の検出周波数(2×f2)を用いた物質の検出と、を反復して行ってもよい。
これにより、検出カメラ1は、同じ領域において、背景反射率と異なる検出周波数を用いた物質の検出結果を、任意のタイミングで少なくとも1つ取得でき、物質の検出精度を向上できる。
また、検出処理部27は、同一の単位領域において、第1の検出周波数(2×f1)を用いた前記物質の検出と、第2の検出周波数(2×f2)を用いた前記物質の検出と、を1回の検出動作で行ってもよい。
これにより、検出カメラ1は、同一の単位領域内で複数の検出周波数を用いて物質検出でき、物質の検出精度を向上できる。
また、検出処理部27は、検出領域SARにおける任意の領域において、第1の検出周波数(2×f1)を用いた物質の検出結果と第2の検出周波数(2×f2)を用いた物質の検出結果とが異なる場合、任意の領域に特定物質が存在しないと判定してもよい。
これにより、検出カメラ1は、特定物質の誤検知を抑制でき、物質の検出精度を向上できる。
(他の実施形態)
以上のように、本開示における技術の例示として、第1の実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。
第1の実施形態では、参照セルCELを透過したレーザ光が、物質検出用のフォトダイオードPDで受光され、受光処理部SAで処理されたが、物質検出用のフォトダイオードPDとは別に、温調ユニットを筐体内に設けてもよい。温調ユニットは、例えば、集光レンズ、フォトダイオード、I/V変換回路、増幅回路及びフィルタ処理回路を有する。温調ユニットは、温調用のフォトダイオードで受光した反射光の波長特性を基に、レーザダイオードLDから出射されるレーザ光の温調制御を行う。これにより、非可視光センサNVSSは、受光処理部SAの処理負荷を軽減できる。また、更に他の方法により、温調制御が行われてもよい。
第1の実施形態では、非可視光として赤外光を用いたが、検出対象の物質の吸収スペクトルによっては、紫外光を用いてもよい。これにより、検出カメラ1は、検出可能な物質の範囲を拡大できる。
第1の実施形態では、プロセッサやコントローラは、物理的にどのように構成してもよい。また、プログラム可能なプロセッサやコントローラを用いれば、プログラムの変更により処理内容を変更できるので、プロセッサやコントローラの設計の自由度を高めることができる。プロセッサやコントローラは、1つの半導体チップで構成してもよいし、物理的に複数の半導体チップで構成してもよい。複数の半導体チップで構成する場合、第1の実施形態の各制御をそれぞれ別の半導体チップで実現してもよい。この場合、それらの複数の半導体チップで1つのプロセッサやコントローラを構成すると考えることができる。また、プロセッサやコントローラは、半導体チップと別の機能を有する部材(コンデンサ等)で構成してもよい。また、プロセッサやコントローラが有する機能とそれ以外の機能とを実現するように、1つの半導体チップを構成してもよい。