JP6660057B2 - エレクトロポレーション用電極及び外来物質導入装置 - Google Patents

エレクトロポレーション用電極及び外来物質導入装置 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とするエレクトロポレーション用電極に関する。また、前記エレクトロポレーション用電極を備えてなる外来物質導入装置に関する。
従来、DNAやRNA等の核酸分子やタンパク質等の生体物質、薬剤の有効成分となる化合物等について、外来物質として標的細胞内に導入する手法として様々な方法が開発されている。特に核酸分子を細胞内に導入する遺伝子導入技術は遺伝子工学の基礎技術であり、遺伝子組み換え作物、遺伝子治療、ゲノム解析、ゲノム編集技術等の幅広い分野において必要とされる技術である。近年では、iPS細胞作製等の再生医療分野においても必要とされる技術である。
ここで、遺伝子導入技術を実現するための手法としては、大きく分けて生物学的手法、化学的手法、物理的手法に分類することができる。詳しくは、生物学的手法としてはウイルスを用いた方法等を挙げることができる。また、化学的手法としてはリン酸カルシウム法やリポフェクション法等が一般的に知られている。そして、物理的手法としては、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、パーティクルガン法(遺伝子銃法)、ソノポレーション法(超音波を使用する方法)等を挙げることができる。また、バクテリアに対しては、塩化カルシウム存在下でコンピテントセル化した菌に、ヒートショックでDNAを導入して形質転換を行う方法が広く一般的に行われている。
物理的手法は、上述の生物学的手法及び化学的手法に比べて、細胞に対する毒性を考慮する必要がなく、適用細胞の制限がないという利点を有する。特に、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)は、物理的手法の中で最も汎用性が高く普及している手法であり、細胞に高電圧の電気パルスを与え、細胞膜に外来物質が通過できる小孔を一過性に作ってDNA等を取り込ませる方法である。エレクトロポレーション法では、化学的手法と比較して高い導入効率が得られる上、操作が簡便で再現性及び安全性が高く、動物細胞、植物細胞、酵母等の真菌細胞、バクテリア等様々な生物種に対して適用可能な技術である。また、様々な種類の組織の細胞への適用も可能である。
しかしながら、従来のエレクトロポレーション法では、 i)試料の液量を比較的多く要する方法であるため、導入対象である細胞を多量に調製し準備する必要がある。このため、試料内の細胞が希少な細胞種である場合には、特に多検体処理の場合に細胞調製に大きなコストや労力が必要となる。また、細胞量を著しく減らした場合には分析自体が困難となる可能性がある。
また、ii)エレクトロポレーション法での電圧印加では、細胞膜の穿孔のために高電圧を与える必要があり、外来物質導入のために細胞に与えるエネルギー量の総量が大きくなる。そのため、刺激や損傷等に敏感なデリケートな細胞に対してエレクトロポレーション法を行う場合では、遺伝子導入効率と細胞生存率が両立するような電圧条件の設定が難しいという課題がある。
更に、iii)エレクトロポレーション法では高価なパルスジェネレーター等を備えたエレクトロポレーション装置が必要とされ、外来物質導入のための最適条件の検討が煩雑になることが多い。
加えて、iv)エレクトロポレーション法は細胞と外来物質とを含む懸濁液に電極が浸漬された状態で処理を行う方法であるため、同一の電極を用いて複数回の処理が行われた場合に、電極に付着した古い懸濁液によって新たな懸濁液にコンタミネーション汚染が発生する可能性が高い。電極を一回の処理ごとに使い捨てとすれば汚染は回避されるが、処理に要するコストが上昇するという課題が挙げられる。
特に、細胞自体が貴重で調製が困難な細胞や外的刺激に対して敏感な細胞等に対してエレクトロポレーション法を実行する場合においては、上記 i)とii)が原理的な課題として内在する。
そこで、本発明者らは、上記従来に係るエレクトロポレーション法に関する課題克服の可能性を秘めた液滴エレクトロポレーション法を着想し(非特許文献1)、更に当該技術に基づいた改良を行った(特許文献1)。具体的に、本発明者らは、特許文献1に係る技術として、容器内に一対の対向電極を設置し、当該容器内をオイル等の絶縁油である疎水性溶媒にて満たす態様を着想し、当該疎水性溶媒中にて油中液滴を形成させて、直流高電圧電源にて電極に電圧印加する装置を開発した(特許文献1)。
本発明者らは、特許文献1に係る装置内にDNAを含む細胞懸濁液である微小液滴を疎水性溶媒中の電極間に配置して、当該状態にて電圧を印加することによって、微小液滴が疎水性溶媒中の電極間を静電的引力によって往復運動する現象を見出した。
ここで、液滴が往復運動する原理は次の通りである。即ち、発生電界によって誘導帯電した液滴がクーロン力によって電気力線に沿って反対極性電極に移動するところ、電極接触と同時に電気刺激が付与されて反対極性に帯電し、元の極性側の電極に移動することが繰り返される。本発明者らは、当該往復運動中の液滴と電極との接触時において電気刺激が付与され、水系である液滴内にて細胞への遺伝子導入現象が起こることを見出した。
特許文献1に係る装置を用いた液滴エレクトロポレーション法においては、 i)液滴2μL程度という微量水系内にて極微量の細胞へのエレクトロポレーションが可能であった。また、ii)当該方法の電圧印加の原理は、液滴往復運動において微小電圧を接触時に与える電気刺激であるため、低電圧でのエレクトロポレーションで十分な導入効率の達成が可能であり、細胞へのダメージが著しく低減された方法であった。そのため、iii)当該方法においては、生存率と導入効率の両立について電気パルス条件等の最適条件等の検討の必要がなく、通常の直流電源にて高効率のエレクトロポレーションを実行可能とする方法であった。即ち、特殊な波形生成等を行うためのパルスジェネレーター等を用いることなく高効率のエレクトロポレーションを実行可能とする方法であった。
加えて、iv)電気処理後に反応系である液滴のみの回収が可能であるため、液滴が形成維持されている限りにおいては、容器全体がDNA試料等によって汚染されることがない方法であった。
しかしながら、特許文献1に係る装置を実用的に使用して上記 i)〜iV)に係る効果を安定して実現するためには、液滴往復運動を安定制御するための何等かの手段が必要であるところ、当該装置においては、液滴往復運動が不安定になることが少なからずあることが課題となっていた。つまり、特許文献1に係る装置では、安定した液滴往復運動が成立する確率が低いという課題があった。
より詳しくは、(1)特許文献1に係る装置を用いた液滴エレクトロポレーション法においては、液滴が電気力線から外れることを抑止して、ある程度安定して往復運動させるためには、液滴サイズに応じた一定値以上の電圧印加が必要となる。
ここで、液滴往復運動の安定化のために電圧を高く設定した場合、液滴自体が両電極に引っ張られて変形しやすくなる傾向があり、液滴破裂による電極間の短絡(ショート)を誘発しやすくなる問題が存在する。当該短絡現象が発生した場合、細胞の致死率が増大し、処理自体が中断することになる。また、液滴破裂により容器全体が細胞とDNA試料等が拡散した場合、細胞回収が困難となる。更に容器全体が試料等で汚染された状態となる。
ここで、「液滴が電気力線から外れる」とは、電気的作用によって誘導される電気力線に沿った液滴往復運動が停止することを意味する。
一方、(2)このような短絡現象を回避する手段としては、対向電極間の距離を物理的に長くする手段が挙げられる。しかし、対向電極間の距離を増加させた場合、電場中に露呈される容器壁面の面積が増加し、容器外壁が静電帯電されることになり、容器内壁からの静電誘導により液滴が電気力線から外れて容器内壁に補足される現象が発生しやすくなる。この場合、壁面での液滴補足により往復運動が停止し、処理自体が中断してしまう。
また、対向電極間距離を長くとった場合、液滴往復運動により高い電圧での電圧印加が必要であるが、この場合、強い電場に晒されることにより容器外壁の静電帯電も強められてしまい、結果として液滴補足現象が更に生じやすくなる。
上記(1)短絡現象及び(2)液滴補足現象の両方を回避するためには、液滴サイズに応じて印加電圧及び電極距離を適正に設定する必要であり、条件設定が非常に高度になる。印加電圧又は電極距離のいずれかが適正でない場合には、円滑な液滴往復運動を実行することができない。
ここで、近年の遺伝子工学では、複数の遺伝子やその他の外来物質を、一度のエレクトロポレーション操作で細胞中に導入したいとの要求が強い。この場合には、それぞれの外来物質を必要量、液滴に含ませるため液滴サイズが大きくなる。
液滴サイズが大きい程、円滑な液滴往復運動の安定制御はより困難となる。即ち、液滴サイズが大きい程、液滴往復運動に要するエネルギーが多く必要であるところであるが、電圧増加に伴う短絡現象が発生し易くなり、一方、対向電極間の距離を長くした場合には液滴補足現象に関する課題が発生し易くなる。
また、電極毎の僅かなばらつきによっても液滴往復運動に対する影響は大きく、同じ条件下で液滴往復運動を行わせても、電極毎に液滴の運動性が変化することが多く、形質転換処理の均質化に問題を残したままとなっていた。
以上に示すように、液滴エレクトロポレーション法においては、電極間での液滴往復運動を停止させることなく安定して実行させることが効率の点で重要となるところ、特許文献1に開示された技術においては、容易かつ高頻度で安定に液滴往復運動を実現することはできていなかった。
従って、液滴エレクトロポレーション法は、従来のエレクトロポレーション法に代替しえる可能性を有する優れた技術であるところ、液滴往復運動を液滴補足により中断させることなく、かつ、電極間で液滴が破裂するほどの短絡(ショート)を起こさない技術は確立されていなかった。即ち、液滴往復運動をより一層、安定して液滴往復運動を持続可能とする技術は確立されていなかった。
WO2014/092164号公報
A. Asada, H. Aoki, H. Kurita, A. Antoniu, H. Yasuda, K. Takashima, and A. Mizuno; A novel gene transformation technique using water-in-oil droplet in an electrostatic field; IEEE Transactions on Industry Applications, Jan 2013, vol. 49, p311-315
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みてなされたものでありその課題とする処は、液滴エレクトロポレーション法における安定した液滴往復運動の実現を可能とする技術であって、効率の良い外来物質導入を安定して実行可能とする技術を提供することを目的とする。これにより本発明は、極微量の細胞及び外来物質の使用により実行可能であって、低コストで且つ簡便な手法であり、多種多様な細胞に対して適用可能な外来物質導入技術を提供することを目的とする。
上記従来技術の状況において、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とするエレクトロポレーション用電極であって、芯電極及び周設電極を含んでなる電極配設に関する構造を着想し、本発明を想到した。
詳しくは、前記芯電極を前記周設電極の内側に周設電極と間隙を有して配設された第1極性電極部材とし、前記周設電極を前記芯電極の外側に芯電極と間隙を有して周設された第2極性部材とする部材構成に着想した。
本発明者らは、上記構造を有するエレクトロポレーション用電極を製造した。そして、当該電極の芯電極及び周設電極を絶縁性液体貯留容器内に配設して、電極部の少なくとも一部を前記容器に貯留した絶縁性液体に浸漬させ、電極間に液滴を投入して電圧印加したところ、芯電極及び周設電極の間にて液滴の往復運動が安定して繰り返される現象を見出した。
ここで、本発明に係る電極配設構造の特徴的な点は、上面視にて芯電極から周囲方向への電界発生が可能となる点である。本発明に係る電極配設構造においては、電気力線上を外れ難い電界構造となる。そのため、本発明に係る電極配設構造においては、従来技術の対向電極構造(特許文献1)のような液滴往復運動の停止が原理的に起こりにくい電界構造が実現される。この点は、従来技術の対向電極構造(特許文献1)では、電極構造的に実現困難であったところである。
また、本発明に係る電極配設構造においては、電極間距離を長くして印加電圧を高くした条件での液滴往復運動の実現が可能となる。これにより、本発明に係る電極配設構造においては、短絡現象(ショート)が誘発されにくく、更に液量サイズを増加した液滴に対しても安定した液滴往復運動の実行が可能となる。
更に、液滴エレクトロポレーション法では、細胞への電気刺激が小さい方法であることに加えて、本発明に係る電極配設構造においては、仮に短絡現象(ショート)が発生した場合であっても、液滴に内包した細胞への影響が軽微であり高い生存率が維持される。
以上に示すように本発明に係る電極構造により、液滴を電気力線に長時間乗せ続ける状態が実現され、液滴往復運動を中断させることなく安定して持続可能となる。即ち、安定した液滴エレクトロポレーションが実現可能となる。また、液滴サイズへの増加へも対応可能であって、細胞生存率への影響が小さい液滴エレクトロポレーション法が実現可能となる。
本発明は、具体的には以下に記載の発明に関する。
[項1]
絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とするエレクトロポレーション用電極であって、
(A)芯電極及び周設電極を含んでなる構造を有し、
(B)前記芯電極が、前記周設電極の内側に周設電極と間隙を有して配設された第1極性電極である電極部材であり、
(C)前記周設電極が、前記芯電極の外側に芯電極と間隙を有して周設された第2極性電極である電極部材である、
ことを特徴とする、エレクトロポレーション用電極。
[項2]
前記エレクトロポレーション用電極が、
(D)電極保持部を含んでなる構造を有し、(d−1)前記電極保持部が、芯電極及び周設電極の保定構造を備え、芯電極及び周設電極間の間隙配設を可能とする構造部材であり、(d−2)前記電極保持部が、絶縁性材質にて主として構成されてなる支持体部、前記芯電極と接続する第1極性通電部、及び前記周設電極と接続する第2極性通電部、を備えてなる構造体である、
ことを特徴とする、項1に記載のエレクトロポレーション用電極。
[項3]
前記エレクトロポレーション用電極が、
(E)(e−1)絶縁性材質にて構成されてなる容器内に芯電極及び周設電極を配設し、芯電極及び周設電極の少なくとも一部を前記容器に貯留した絶縁性液体に浸漬させて使用するものであって、(e−2)電圧印加により絶縁性液体中に形成された液滴に対する静電的作用を発生させ、芯電極及び周設電極の間での液滴往復運動を誘導し、前記液滴が電極と接触する際に細胞に電気穿孔にて外来物質を導入する反応を繰り返して行うことを可能とする、
項1又は2のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
[項4]
前記芯電極における絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部が、円状又は略円状の横断面を有する長軸状電極部材である、項1〜3のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
[項5]
前記周設電極における絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部が、円筒形状又は略円筒形状を有する電極部材である、項1〜4のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
[項6]
前記芯電極及び前記周設電極が、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、両電極間の間隙が水平方向にて芯電極から周囲方向に等距離又は略等距離になるように配設されたものである、項1〜5のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
[項7]
前記芯電極及び前記周設電極が、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、両電極の間隙が水平方向にて芯電極から周囲方向に5〜15mmになるように配設されたものである、項1〜6のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
[項8]
前記電極保持部が、芯電極と周設電極の間隙内への試料投入が可能となる位置に試料導入手段を備えたものである、項1〜7のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
[項9]
前記エレクトロポレーション用電極が、電極高を調節するための位置調整機構を備えたものである、項1〜8のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
[項10]
絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とする装置であって、
(F)絶縁性液体の貯留が可能な絶縁性液体貯留容器内に、項1〜9のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極の芯電極及び周設電極を配設した構造の装置であり、
(G)(g−1)前記絶縁性液体貯留容器が、絶縁性材質にて構成されてなる容器であって、(g−2)前記絶縁性液体貯留容器が、前記エレクトロポレーション用電極を前記容器内に配設した際に、当該エレクトロポレーション用電極に係る芯電極及び周設電極の少なくとも一部を、貯留した絶縁性液体中に浸漬可能とする形状の容器である、
ことを特徴とする、外来物質導入装置。
[項11]
前記外来物質導入装置が、
(H)(h−1)前記絶縁性液体貯留容器の底面を構成する材質の少なくとも一部が、透光性を有する材質にて構成されてなる容器であって、(h−2)前記容器の底面外側に、前記容器内部を観察するための手段を備えてなるものである、
項10に記載の外来物質導入装置。
[項12]
前記外来物質導入装置が、
(I)前記絶縁性液体貯留容器がマルチウェルプレート状の容器であって、
(J)項1〜9のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極を1以上配設した装置である、
項10又は11のいずれかに記載の外来物質導入装置。
[項13]
前記外来物質導入装置が、前記絶縁性液体貯留容器に水又は水溶液を相分離可能な絶縁性液体を貯留してなるものである、項10〜12のいずれかに記載の外来物質導入装置。
[項14]
前記芯電極及び前記周設電極を含んでなることを特徴とする、項1〜9のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極の組立用キット。
[項15]
項1〜9のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極を含んでなることを特徴とする、外来物質導入装置の組立用キット。
[項16]
項10〜13のいずれかに記載の外来物質導入装置を用いることを特徴とする、液滴エレクトロポレーションによる外来物質導入方法。
[項17]
項10〜13のいずれかに記載の外来物質導入装置を用いることを特徴とする、液滴エレクトロポレーションによる遺伝子導入方法。
本発明は、液滴エレクトロポレーション法における安定した液滴往復運動の実現を可能とする技術であって、効率の良い外来物質導入を安定して実行可能とする技術を提供することが可能となる。これにより本発明は、極微量の細胞及び外来物質の使用により実行可能であって、低コストで且つ簡便な手法であり、多種多様な細胞に対して適用可能な外来物質導入技術を提供することが可能となる。
特には、本発明では、細胞自体が貴重な細胞又は物理的刺激に対して脆弱で生存率が低い細胞に対して、細胞への安全性が高く且つ好適に適用可能な外来物質導入技術を提供することが可能となる。
実施例1にて製造したエレクトロポレーション用電極について、全体構造を示した斜視図である。図1A:上面斜視図。図1B:底面斜視図。
実施例1にて製造したエレクトロポレーション用電極について、分解図を示した底面斜視図である。
実施例1にて製造したエレクトロポレーション用電極について、内部構造を示した正面視からの縦断面図である。
実施例1にて製造したエレクトロポレーション用電極について、電極部材の構造を正面視から示した縦断面図である。図4A:周設電極に関する構造。図4B:芯電極に関する構造。
実施例1にて製造したエレクトロポレーション用電極について、全体構造を上面斜視から示した3次元CG図である。図5A:上面斜視図。図5B:底面斜視図。
実施例1にて製造したエレクトロポレーション用電極について、内部構造をX線撮影にて示した写真像図である。図6A:上面視図。図6B:正面図。
実施例2にて製造した多連式エレクトロポレーション用電極について、全体構造を3次元CGにて示した斜視図である。
実施例2にて製造した多連式エレクトロポレーション用電極を備えた外来物質導入装置について、上面斜視から撮影した写真像図である。
実施例3に係る液滴往復運動の安定性評価において、本発明に係る外来物質導入装置の液滴往復運動を底面視から撮影した写真像図である。
実施例3に係る液滴往復運動の安定性評価において、当該実施例で使用した本発明に係る外来物質導入装置の概略を示した模式図である。
実施例3で用いた本発明に係る外来物質導入装置について、液滴往復運動が行われる状態を上面視にて示した模式図である。
実施例3で用いた従来技術に係る対向電極構造を備えた外来物質導入装置について、液滴往復運動が停止する状態を上面視にて示した模式図である。図12A:短絡現象が発生した状態。図12B:液滴補足現象が発生した状態。
実施例5に係る短絡現象後の細胞評価において、短絡現象誘発後の細胞の生存率を示し結果図である。
実施例6に係るDNA導入による形質転換試験において、Venus蛍光タンパク質の発現を検出した写真像図である。図中における各Barの長さは20μmである。図14A:明視野。図14B:蛍光顕微鏡像。
実施例7に係るRNA導入による形質転換試験において、Venus蛍光タンパク質の発現を検出した写真像図である。図中における各Barの長さは20μmである。図15A:明視野。図15B:蛍光顕微鏡像。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明における符号番号は、図面中に使用した符号番号を意味する。
[用語等の説明]
本明細書中、「液滴エレクトロポレーション法」とは、絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とする方法である。疎水性である絶縁性液体中において、電極への電圧印加による液滴の静電誘導及び電極接触時の極性反転による電極間往復運動を誘起し、電極接触時の電気刺激によって液滴内微小水系における電気穿孔現象をエレクトロポレーションに利用する方法である。詳細は、後述の外来物質導入法の段落に記載した通りである。
本明細書中、「第1極性」及び「第2極性」とは、印加電圧の一方の電極極性(例えばプラス極性)を第1極性とした場合に、他方の電極極性(この場合はマイナス極性)を第2極性として表現したものである。第1極性及び第2極性は任意の電荷とすることが可能である。
本明細書中、「in vitro」とは試験管内を意味する。生体内を意味する「in vivo」に対比される用語である。
本明細書中、本発明に係るエレクトロポレーション用電極及び外来物質導入装置を指して「上側」と表現した場合は、別途に定義がない限り、電極保持部側を上側として表現したものである。また、本発明に係るエレクトロポレーション用電極を指して「下側」と表現した場合は、別途に定義がない限り、エレクトロポレーション対象物側である芯電極及び周設電極側を下側として表現したものである。
なお、本発明に係るエレクトロポレーション用電極及び外来物質導入装置の説明において「上側」、「下側」、「上部」、「下部」、「底部」、「水平」、「垂直」等の方向に関する表現は、電極構造の説明のために使用される用語であるところ、電極の実際の使用態様においては必ずしもこの通りの方向になるような使用態様に制限されるものではない。
なお、本発明に係るエレクトロポレーション用電極及び外来物質導入装置の説明において「液面に対して水平方向」という記載は、絶縁性液体の液面に対して上面視又は底面視からの方向を指す。また、本発明に係るエレクトロポレーション用電極及び外来物質導入装置の説明において「液面に対して垂直方向」という記載は、絶縁性液体の液面に対して側面視からの方向を指す。
本明細書中、「略」を付した角度や方向を表す表現は、対象角度や方向に対して±10°、好ましくは±5°の角度や方向を指す。
また、本明細書中、「略」を付した図形を表す表現は、円等の場合であれば、円周部分がやや歪んだ形状、長円や楕円等の変形図形を許容して指すことができる。例えば長円や楕円等としては、長軸径と短軸径の比率が0.8以上、好ましくは0.9以上のものであることが望ましい。また、角形等の場合であれば、対象図形に対して角が丸みを帯びた形状、外周がやや歪んだ形状等の変形図形を許容して指すことができる。立体の場合についても、全体形態や断面形態において同様に定義することができる。
1.エレクトロポレーション用電極
本発明は、絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とするエレクトロポレーション用電極に関する発明である。
本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)は、芯電極(11)及び周設電極(21)を含んでなる構造を有することによって、安定した液滴エレクトロポレーションの実行に適した電極構造が実現される。
詳しくは、本発明に係るエレクトロポレーション用電極は、電圧印加により絶縁性液体中に形成された液滴に対する静電的作用を発生させ、芯電極及び周設電極の間での液滴往復運動を誘導し、前記液滴が電極と接触する際に細胞に電気穿孔にて外来物質を導入する反応を繰り返して行うことを可能とする電極である。
本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)を構成する主たる部材について、本発明に係る外来物質導入装置(10)との関係を踏まえて、各構成部材の属性を整理した表を表1に示す。なお、表1は各構成部材の属性を整理した表であり、必須部材を表したものでない。この点、本発明に係る技術的範囲は表1に記載の部材を全て含む態様に限定されるものではない。
[電極部に関する構造]
本発明に係るエレクトロポレーション用電極の電極部(3)は、絶縁性液体の浸漬領域を含む部分において、絶縁性液体液面に対して水平方向で見た際に、第1極性である芯電極(11)と、その外周を一定の間隙を有するように配設された第2極性である周設電極(21)を備えた電極構造体である(図1〜6参照)。
本発明に係るエレクトロポレーション用電極に係る電極部(3)としては、安定した液滴エレクトロポレーションを実現するために、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、芯電極(11)及び周設電極(21)の間に一定の間隙(31)が形成されてなる電極構造体を用いること要する。
なお、電極部(3)に関する構造としては、電源と接続するための導線、強度や保定等のための支持部材、スペーサー部材、アダプター部材等を含める構造とすることも可能である。
芯電極
本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)は、第1極性電極に関する構造として、芯電極(11)を備えて構成される電極である。
本発明に係る芯電極(11)は、周設電極(21)の内側に周設電極と間隙(31)を有して配設された第1極性電極である電極部材である。芯電極(11)は、直接容器等に配設することも可能であるが、好ましくは電極保持部(4)に接続保持された態様とすることが好適である。
本発明に係る芯電極(11)とは、周設電極(21)に対する配設関係を示す用語であって、絶縁性液体液面に対して水平方向で見た際に、周設電極が形成する面の内側に配設されてなる電極である。
芯電極(11)の形状としては、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部が、長軸形状を有する電極部材であることが好適である。当該長軸形状の領域は液滴往復運動を可能とするための領域となる。
芯電極(11)における当該長軸形状としては、様々なバリエーションを想定することが可能であるが、例えば、円柱状、棒状、円筒状、針状、円錐状、逆円錐状、四角柱状、多角柱状、多角形状、矩形方体状、板状、凹面状(横断面が円弧状又は略円弧状となる曲板形状。以下、電極部材の説明において同じ。)等の電極部材を挙げることができる。また、これらに準ずる略形状のもの、これらを組み合わせ形状、電極先端や電極途中に球状やキューブ状等の形状を組み合わせた形状、段階的に異なる形状を組み合わせた形状、段階的に断面の大きさを変化させた形状、2以上の長軸電極部材を束ねた形状、分岐形状等、本発明に係る液滴往復運動の安定性が実現可能であれば、様々な芯電極の形状を採用することが可能である。
本発明に係る芯電極(11)として、特に好適な形態としては、周設電極(21)との間に形成される電気力線の均一性が担保されやすい形態であることが好適である。具体的には、芯電極(11)の外表面である凸面曲面について、絶縁性液体浸漬領域のうちの液滴運動が行われる領域のいずれの地点においても、水平方向にて周囲方向に周設電極と等距離又は略等距離となるような表面形状であることが望ましい。ここで略等距離とは、距離の差異が±2mm以内、好ましくは±1mm以内の範囲をいう。
当該形状を実現する芯電極(11)の形状としては、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、円状又は略円状の横断面を有する長軸状電極部材であることが好適である。
当該形状としては、円柱状、棒状、針状、円筒状、凹面状、これらの略形状等であることが好適である。より好ましくは、周設電極と等距離となる表面形状である円柱状、棒状、針状、円筒状、凹面状等の形状であることが好適である。
特に好ましくは、絶縁性液体の浸漬領域の全部において、上記好適な形状となるものであることが好適である。
なお、芯電極(11)として円筒形状等の内部が空洞の電極部材を採用した場合、プラスに帯電させた場合、外側表面部分から外側の周設電極側に向かって、電気力線が形成されることになる。また、マイナスに帯電させた場合は逆向きの電気力線が形成される。
芯電極(11)の横断面長としては、印加電圧の強度等や容器スケールに応じて好適なものを採用することができるが、例えば断面最長距離(円状の場合は直径)が0.5〜4mm、好ましくは1〜3mm、より好ましくは1〜2mm程度のものを用いることが好適である。
ここで、芯電極(11)の横断面長としては、横断面視にて徐々に又は断続的にサイズが変化した形状のものを採用することが可能であるが、好ましくは液滴運動が行われる領域、より好ましくは絶縁性液体に浸漬される領域についてはサイズが均一であることが好適である。芯電極(11)表面における均一な電気力線の形成は、安定した液滴運動の実現の点で好適に作用する。
本発明に係る芯電極(11)の長手方向の長さとしては、容器スケール等に応じて一概に決定できないが、本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)を絶縁性液体貯留容器(101)に配設した場合に、当該容器に充填した絶縁性液体への一定領域の浸漬が確保される長さであれば良く、液滴往復運動が行われる領域を担保できる長さであれば良い。
ここで、液滴往復運動が行われる領域としては、反応時間の長さや溶媒の粘度等によっても異なるものであるが、例えば、絶縁性液体の液面から垂直下方向に向かって1〜30mm、好ましくは5〜25mm、より好ましくは10〜20mm、更に好ましくは13〜18mm程度の領域を挙げることができる。従って、芯電極(11)の垂直方向の長さとしては、当該域を担保しえる長さであることが好適である。
芯電極の下端(12)の底面形状としては、特に制限はないが、電気力線への影響を考慮するとフラットな形状であることが好適である。
また、芯電極(11)としては、電極長の深度調整が可能な機構を備えたものを採用することも可能である。また、芯電極(11)の形状が変化する機構を備えたものを採用することも可能である。例えば、折り畳み機構、伸縮自在な摺動機構、電極自体が分離する機構等の構造を採用することもできる。
芯電極(11)を構成する部材の材質としては、印加電圧の一方の電極極性を示す部材であるため、導電性を有する材質で構成されていることが必要である。
芯電極(11)を構成する材質としては、通常の電極として使用可能な材質であれば良い。例えば、ステンレス鋼、白金、鉄鋼、銅、鉄、チタン合金、アルミニウム合金、カーボン、グラファイト、グラフェン等の材質のものが好適である。特に錆びにくく且つ細胞への影響が懸念されないステンレス鋼、白金、グラファイト、グラフェン等の材質のものが好適である。
本発明に係る芯電極(11)としては、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部について、上記の好適形態の電極形状を採用することが好適である。好ましくは、下端から1〜8mmを含む長さ、好ましくは下端から1〜18mmを含む長さについては、上記好適形態の電極形状を採用することが好適である。更に好ましくは、絶縁性液体の浸漬領域の全部において、上記好適な態様となるものであることが好適である。
周設電極
本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)は、第2極性電極に関する構造として、周設電極(21)を備えて構成される電極である。
本発明に係る周設電極(21)は、芯電極(11)の外側に芯電極と間隙(31)を有して周設された第2極性電極部材である。周設電極(21)は、直接容器等に配設することも可能であるが、好ましくは電極保持部(4)に接続保持された態様とすることが好適である。
本発明に係る周設電極(21)とは、芯電極(11)に対する配設関係を示す用語であって、絶縁性液体液面に対して水平方向で見た際に、芯電極の外側に配設されてなる電極である。
周設電極(21)の形状としては、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部が、芯電極(11)の周囲に配設可能な電極部材であることが好適である。当該部分は液滴往復の安定化を可能とするための領域となる。
周設電極(21)における当該部分の形状としては、様々なバリエーションを想定することが可能であるが、例えば、周設電極(21)の形状としては、i)芯電極との関係において、芯電極の長軸方向の上面視にて芯電極の周囲に配設されるような筒状形状を含む電極構造を挙げることができる。
ここで、筒状形状としては、底面開放型の管状構造を指すものである。例えば、円筒状、略円筒状、角筒状、略各筒状等を含む形状を挙げることができる。
また、当該筒状を構成する電極部材部分としては、周設電極の外形として筒型の形状を有するものであれば特に制限はなく、筒状の外形側面を構成する電極部材として開口構造等の隙間を有する構造体が含まれる。例えば、筒状の壁面に開口部を有する形状、孔配列を有する形状、スリッド形状を有する形状、格子状形状、網状の形状、メッシュ状の形状、ハニカム構造からなる形状等、空隙を内在して形成されるものであっても、外形として筒型形状を形成してなるものであれば、本明細書における筒状形状として用いることが可能である。
また、棒状や針金状の電極部材を巻いて筒状形状としたものであっても、外形として筒型形状を形成してなるものであれば、本明細書における筒状形状として用いることが可能である。
また、周設電極(21)の形状としては、別態様として次の形態のものを挙げることができる。
例えば、ii)芯電極との関係において、芯電極の上面視にて芯電極の周囲に配設されるような環状形状を含む電極構造を挙げることができる。ここで、環状としては、リング状等を挙げることができるが、環状、略環状、角環状、略管状等を挙げることができる。
当該環状態様においては、環状構造の数を2以上連なるように配設することも可能である。この場合、液滴が円滑に芯電極と環状態様の周節電極との間で往復運動する限りにおいて、2以上の環状構造は導線等にて連結された構造とすることができる。また、当該態様においては、周設電極を構成する環状電極の数は多く程良く、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であることが好適である。また、周設電極を構成する電極間の各電極間の距離は、等間隔又は略等間隔であることが好適である。
更に、周設電極(21)の形状としては、液滴が円滑に芯電極と環状態様の周節電極との間で往復運動する限りにおいて各種の形態をとり得るので、別態様として次の形態のものを挙げることができる。
例えば、iii)芯電極の長軸方向と平行になるように、長軸状の電極を3以上配設した電極構造とすることもできる。当該態様の場合、芯電極の上面視にて芯電極を取り囲むようにして、周設電極を構成する3以上の電極が環状配設される電極構造となる。
当該態様においては、周設電極を構成する電極の数は多い程良く、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であることが好適である。また、周設電極を構成する各電極間の距離としては、等間隔又は略等間隔であることが好適である。
本発明に係る周設電極(21)として、特に好適な形態としては、周設電極との間に形成される電気力線の均一性が担保される形態であることが好適である。具体的には、周設電極(21)の内側の凹面曲面の表面形状について、絶縁性液体浸漬領域のうちの液滴運動が行われる領域のいずれの地点においても、水平方向にて周設電極の内周から芯電極に向かって等距離又は略等距離となるような表面形状であることが望ましい。ここで略等距離とは、距離の差異が±2mm以内、好ましくは±1mm以内の範囲をいう。
当該形状を実現する周設電極(21)の形状としては、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、円筒形状又は略円筒形状であることが好適である。
特に好ましくは、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、円筒形状であることが好適である。更に好ましくは、絶縁性液体の浸漬領域の全部において、上記好適な形状となるものであることが好適である。なお、周設電極における当該円筒形状の部分においてプラスに帯電させた場合は、内側表面部分から内側の芯電極側に向かって電気力線が形成されることになる。また、マイナスに帯電させた場合は逆向きの電気力線が形成される。
周設電極(21)の水平方向の長さとしては、芯電極(11)との電極間距離や想定する電圧等に応じて好適なものを採用することができるが、例えば横断面の内壁間の最短距離(円筒状の場合は内径)が10〜50mm、好ましくは12〜30mm、より好ましくは16〜20mm程度のものを用いることが好適である。
ここで、周設電極(21)の水平方向長(円筒状の場合は内径)としては、断面に応じて徐々に又は断続的にサイズが変化した形状のものを採用することが可能であるが、好ましくは液滴運動が行われる領域、より好ましくは絶縁性液体に浸漬される領域については、少なくともサイズが均一のものであることが好適である。周設電極の内側表面における均一な電気力線の形成は、安定した液滴運動の実現の点で好適に作用する。
周設電極(21)の壁面厚としては、印加電圧の強度等や容器スケールに応じて好適なものを採用することができるが、例えば1〜3mm、好ましくは1〜2mm程度のものを用いることが好適である。
本発明に係る周設電極(21)の垂直方向の長さとしては、容器スケール等に応じて一概に決定できないが、本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)を絶縁性液体貯留容器(101)に配設した場合に、当該容器に充填した絶縁性液体への一定領域の浸漬が確保される長さであれば良く、液滴往復運動が行われる領域を担保できる長さであれば良い。
ここで、液滴往復運動が行われる領域としては、反応時間の長さや溶媒の粘度等によっても異なるものであるが、例えば、絶縁性液体の液面から垂直下方向に向かって1〜30mm、好ましくは5〜25mm、より好ましくは10〜20mm、更に好ましくは13〜18mm程度の領域を挙げることができる。従って、周設電極(21)の垂直方向の長さとしては、例えば当該域を担保しえる長さであることが好適である。
周設電極の下端(22)の底面形状としては、特に制限はないが、電気力線への影響を考慮するとフラットな形状であることが好適である。なお、底面形状がフラットでない場合であっても、垂直方向長にて、周設電極下端の位置が−5〜+5mm、好ましくは−2〜+2mm、より好ましくは−1〜+1mmの範囲にあることを許容するものである。好ましくは、周設電極の下端の位置は、垂直方向長にて同一又は略同一であることが好適である。即ち、本発明においては、電気力線の安定形成を踏まえると、周設電極の下端が垂直方向に揃っている電極配設構造であることが好適である。
また、周設電極(21)としては、電極長の深度調整が可能な機構を備えたものを採用することも可能である。例えば、折り畳み機構、伸縮自在な摺動機構、開閉機構、電極自体が分離する機構等の構造を採用することもできる。
周設電極(21)を構成する部材の材質としては、印加電圧の一方の電極極性を示す部材であるため、導電性を有する材質で構成されていることが必要である。
周設電極(21)を構成する材質としては、通常の電極として使用可能な材質であれば良い。例えば、ステンレス鋼、白金、鉄鋼、銅、鉄、チタン合金、アルミニウム合金、カーボン、グラファイト、グラフェン等の材質のものが好適である。特に錆びにくく且つ細胞への影響が懸念されないステンレス鋼、白金、グラファイト、グラフェン等の材質のものが好適である。
本発明に係る周設電極(21)としては、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部について、上記好適形態の電極形状を採用することが好適である。好ましくは、電極下端から1〜8mmを含む長さ、好ましくは下端から1〜18mmを含む長さについては、上記好適形態の電極形状を採用することが好適である。更に好ましくは、絶縁性液体の浸漬領域の全部において、上記好適な形状となるものであることが好適である。
芯電極と周設電極の配設構造
本発明に係るエレクトロポレーション用電極の電極部(3)は、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、芯電極(11)及び周設電極(21)の間に一定の間隙(31)を有して配設されてなる電極部材である。
ここで、間隙(31)は、芯電極と周設電極の間に形成される空間であって、本発明に係る液滴エレクトロポレーション反応を行う際には、少なくともその一部は絶縁性液体に浸漬される空間である。
当該電極部(3)における芯電極(11)及び周設電極(21)の配設構造によって、絶縁性液体に浸漬された間隙(31)においては、原理的に電気力線を外れることがなく安定した往復運動を行うことが可能となる。即ち、上面視にて芯電極から周囲方向に対して、均一又は略均一な電界を発生させることが可能となる。特に、上面視にて芯電極から360°全方位方向に対して均一な電界を発生させた場合にあっては、電気絶縁性液体中の液滴はより安定した往復運動が可能となる。
ここで、本発明に係る電極配設構造では、液面に対する水平方向において周設電極(21)が芯電極(11)を取り囲む電極配置となる。そのため、芯電極を中心とする周囲方向に、好ましくは全方位に向かって電気力線が形成される電界構造となる。
従って、本発明においては、ある電気力線上を往復運動中の液滴が跳躍現象によって電気力線から外れた場合であっても、他の電気力線へ即座にリカバーされやすい電界構造となっている。そのため、本発明においては、従来技術の対向電極構造の装置(特許文献1参照)のような自重落下による往復運動の停止が起こりにくい電界構造が実現される。
両電極間の間隙(31)が、液滴エレクトロポレーション反応に適した空間となるためには、芯電極(11)及び周設電極(21)の配設構造としては、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、両電極間の間隙が水平方向にて芯電極から周囲方向に等距離又は略等距離になるように配設されたものである。ここで略等距離とは、距離の差異が±2mm以内、好ましくは±1mm以内の範囲をいう。
更に好ましくは、両電極間の間隙が水平方向にて芯電極から周囲方向に等距離になるように配設されたものである。
当該構造を実現するためには、芯電極と周設電極との位置関係が、水平方向にて断面を連続視した際において、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、芯電極が周設電極の中心にくる位置になるように、電極保持部に保定された構造であることが望ましい。
芯電極(11)及び周設電極(21)の配設構造としては、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、両電極間の間隙が4〜25mm、好ましくは5〜20mm、より好ましくは6〜15mm、更に好ましくは6〜10mm、特に好ましくは8〜10mm、となるように配設されたものであることが好適である。両電極間の間隙(31)が短すぎる場合、液滴破裂による短絡現象(ショート)が発生しやすくなり好適でない。一方、間隙(31)が長すぎる場合、印加電圧を高く設定することが必要となり好適でない。
芯電極(11)及び周設電極(21)の両電極間の間隙(31)としては、垂直方向に徐々に又は断続的にサイズを変化させたものを採用することも可能であるが、好ましくは、液滴運動が行われる領域、より好ましくは絶縁性液体に浸漬される領域については、垂直方向においても間隙距離が均一又は略均一であることが好適である。特には、垂直方向においても、間隙距離が均一であることが好適である。
間隙距離が均一な場合、電気力線の形成の点で安定した液滴運動の実現の点で好適に作用する。
芯電極(11)及び周設電極(21)の配設構造としては、絶縁性液体の液面に対して垂直又は略垂直となる角度にて浸漬されるように配設された構造であることが望ましい。ここで略垂直とは具体的には、液面に対して90±10°、好ましくは90±5°、より好ましくは90±2°の範囲にある角度を指すものである。芯電極の浸漬角度が適切な範囲の角度でない場合、又は、周設電極の浸漬角度と一致しない場合、液滴の運動が不安定になり易いため好適でない。
芯電極(11)及び周設電極(21)としては、最も好ましくは絶縁性液体の液面に対して垂直になるように配置され固定されたものが好適である。
芯電極(11)及び周設電極(21)の配設構造としては、垂直方向長にて、芯電極下端に対して周設電極下端の位置が−5〜+5mm、好ましくは−2〜+2mm、より好ましくは−1〜+1mmの範囲にあることを許容するものである。好ましくは、芯電極と周設電極の下端の位置は、垂直方向長にて同一又は略同一であることが好適である。即ち、本発明においては、電気力線の安定形成を踏まえると、芯電極(11)及び周設電極(21)の下端が垂直方向に揃っている電極配設構造であることが好適である。
本発明に係る芯電極(11)及び周設電極(21)の配設構造としては、液滴の往復運動の安定した実行を考慮すると、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部について、上記好適形態の電極形状を採用することが好適である。
好ましく、発生電界の均一性を考慮して、電極下端から2〜8mmを含む長さ、好ましくは下端から1〜18mmを含む長さについては、上記好適形態の配設構造を採用することが好適である。更に好ましくは、絶縁性液体の浸漬領域の全部において、上記好適な形状となるものであることが好適である。
[電極保持部]
本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)は、芯電極(11)及び/又は周設電極(21)を物理的に保定し、両電極に電圧印加するための構造又は手段を備えた電極保持部(4)を有する構造体であることが好適である。
なお、実施態様によっては、芯電極(11)と周設電極(21)のいずれか一方のみを保定する構造体とすることも可能である。当該態様においては、電極保持部(4)に保持されない方の電極は、容器(101)等に直接固定する態様を採用することが可能である。本発明に係る電極保持部(4)としては、好ましくは、芯電極(11)及び周設電極(21)の両方を保定する構造を備えた部体であることが好適である。
電極保持部(4)の構造により、電極の物理的形状が保持され且つエレクトロポレーション用電極としての機能を発揮することが可能となる。
ここで、本発明に係る電極保持部(4)は、絶縁性材質にて主として構成されてなる支持体部(41)、芯電極と接続する第1極性通電部(51)、及び周設電極と接続する第2極性通電部(61)、を備えてなる構造体である。
なお、電極保持部(4)に関する構造としては、電源と接続するための導線、強度や保定等のための支持部材、スペーサー部材、アダプター部材等を含める構造とすることも可能である。
支持体部
電極保持部(4)は、本発明に係る電極本体の物理的外形を保持するための支持体部(41)を構成部材として含んでなる構造部材である。支持体部(41)は、絶縁性材質基材にて主として構成されてなる構造部材であって、電極部である芯電極(11)及び/又は周設電極(21)を物理的に保定し、芯電極及び周設電極間の間隙配設を可能とするための構造及び機能を備えた部材である。
支持体部(41)の全体的な形状としては、電極保持部の支持体としての上記機能を担保しえる形状であれば特に制限はないが、例えば厚板状、箱状、厚蓋状、円柱状、角柱状、ドーム形状を有する形状、方体状、多角体状、円錐状、角錐状、階段ピラミッド状、球状、これらの略構造等を如何なる形状を採用することも可能である。また、これらを組み合わせた構造体等、上記基本的な構造を充足する限りは、様々なバリエーションの形態を採用することが可能である。
支持体部(41)の全体的な形状として、より好適には絶縁性液体貯留容器(101)への配設に適した形状である点を考慮すると、好ましくは水平方向での断面形状が円状、略円状、環状、略環状、多角環状、略多角環状ものであるであることが好適である。具体的には、水平方向での断面形状が円状又は略円状のものが好適である。
支持体部(41)の水平方向での大きさとしては、電極配設構造を担保可能な構造を保持できるサイズであれば特に制限はないが、例えば、上面視にて外形幅(円状の場合は直径)10〜50mm程度、好ましくは16〜20mm程度のものを挙げることができる。
支持体部(41)の水平方向の大きさとしては、芯電極(11)及び周設電極(21)を物理的に保定するための一定の厚みを有する構造体であることが好適である。また、好ましくは、安全性の点で、第1極性通電部及び第2極性通電部を支持体部の基材構造内に備えることを可能とする構造であることが好適である。
支持体部(41)の具体的な厚みとしては、電極部(3)の保定及び通電部(5)の安全保持が担保できる構造であれば特に制限はないが、例えば1〜10mm程度を挙げることができる。
支持体部(41)の底面形状としては、底面側が容器への配設に適した形状であることが好適である。ここで、支持体部(41)の底面形状としては、絶縁性液体の液面との接触がし難いように曲率や高さが緩やかなものであることが好適である。好ましくは、支持体部(41)の底面部の形状としては、フラットな平面状や略平面状の形状、ゆるやかなすり鉢状、または逆円錐状の形状、等を採用することが好適である。
支持体部(41)は、芯電極(11)を保定するための構造(44:芯電極保定構造)を備えてなる構造体である。芯電極保定構造(44)としては、芯電極を物理的に保定することが可能であり、第1極性通電部(51)との接続を担保可能な構造であれば、特に制限はなく採用することが可能である。当該構造としては、例えば、芯電極を挿入保定するための保定孔構造、芯電極を取り付けて保定するための保定具構造、等を採用することが可能である。好ましくは、支持体部底面に保定孔を垂直方向に穿設し、保定具にて固定する構造等を採用することができる。
芯電極保定構造(44)としては、支持体部(41)の底面に備えられてなることが好適である、好ましくは、支持体部底面の中央部に配設されてなることが好適である。
芯電極(11)の保定角度としては、絶縁性液体の液面に対して垂直又は略垂直となる角度にて保定されることが好適である。好ましくは、支持体部底面に対して、垂直又は略垂直となる角度にて保定されることが好適である。
また、芯電極(11)と支持体部(41)の接触部分には、絶縁材質からなる弾性部材等のスペーサー部材を介して接触させることも可能である。
支持体部(41)は、周設電極を保定するための構造(45:周設電極保定構造)を備えてなる構造体である。ここで、周設電極保定構造(45)としては、周設電極を物理的に保定することが可能であり且つ第2極性通電部(61)との接続を担保可能な構造であれば、特に制限はなく採用することが可能である。
当該構造としては、例えば、周設電極を嵌合保定するための保定溝構造、周設電極を挟持保定する挟持保定構造、周設電極を取り付けて保定するための保定具構造等、を採用することが可能である。好ましくは、支持体部底面に周設電極の上端に嵌合可能な保定溝を垂直方向に穿設し、周設電極を当該溝に嵌合させて保定する構造等を採用することができる。また、支持体部を外枠側と内枠側に分離可能として、両部材の会合によって周設電極側面を挟持保定する構造を採用することもできる。
周設電極保定構造(45)としては、支持体部(41)の底面又は側面に備えられてなることが好適である。好ましくは、支持体部の底面外周付近にて、底面視にて芯電極が中央にくるように配設されてなることが好適である。
また、周設電極(21)の保定角度としては、絶縁性液体の液面に対して垂直又は略垂直となる角度にて保定されることが好適である。好ましくは、支持体部底面に対して、垂直又は略垂直となる角度にて保定されることが好適である。
また、周設電極(21)と支持体部(41)の接触部分には、絶縁材質からなる弾性部材等のスペーサー部材を介して接触させることも可能である。
支持体部(41)を構成する材質としては、芯電極(11)の接続部分付近、周設電極(21)の接続部分、及び電源接続部(52、62)の周辺部分については、少なくとも絶縁性材質で構成されてなるものである。好ましくは、安全性の観点から、支持体部(41)の全部又は実質的に全部が、絶縁性材質で構成されたものであることが好適である。
絶縁性材質としては、硬度及び耐久性を有する材質であれば良く、例えば、樹脂、ガラス、鉱石等の材質を挙げることができる。好ましくは、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリル、ポリメチルペンテン、ABS樹脂、アクリル樹脂、フッ化炭素樹脂(PTFE、PFA、FEPなど)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリイミド樹脂、セラミック(アルミナ、窒化アルミ等)、等の材質を挙げることができる。
支持体部(41)は、支持体部全体が一体化した構造部材として採用する態様が可能である。また、支持体部(41)を分離可能な2以上の集合構造体とすることも可能である。ここで、本発明に係る一態様として支持体部(41)を分離可能な2以上の集合構造体とした場合、芯電極及び/又は周設電極を含む電極保持部の一部を分離して着脱可能な態様とすることも可能である。例えば、電源接続部(52、62)を備えた上部構造体側と、電極部(3)と接続された下部構造体側に分離可能な態様とすることもできる。
当該態様を採用した場合、下部構造体を電極部と伴に分離して電極本体から脱着することが可能となり、電極部のカートリッジ的な付け替えが可能となる。
また、分離可能な2以上の集合構造体の別態様としては、芯電極(11)を備えた部分と周設電極(21)を備えた部分とを分離可能な態様とすることもできる。
通電部
電極保持部(4)は、電極部材に電圧印加を行うための通電部(5)を備えてなる構造部材である。本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)では、通電部(5)として第1極性通電部(51)と第2極性通電部(61)を備えてなる。
第1極性通電部(51)は、芯電極(11)と接続する導電性の通電部材であって、その一端が第1極性側の電源接続部(52)を形成する部材である。第1極性通電部(51)は、第2極性に関する電極や通電部とは通電しない位置及び形態にて配設されてなる部材である。
第2極性通電部(61)は、周設電極(21)と接続する導電性の通電部材であって、その一端が第2極性側の電源接続部(62)を形成する部材である。なお、第2極性通電部(61)は、第1極性に関する電極や通電部とは通電しない位置及び形態にて配設されてなる部材である。
通電部(5)としては、通常の導電性部材を採用することが可能である。例えば、芯電極(11)や周設電極(21)との接続部分等はリード線等の導線を採用することが可能である。また、電源接続部分は、通常の棒状電極等、電源ケーブル等の接続が可能な構造を採用することができる。
通電部(5)は、支持体部(41)に配設される通電部材である。ここで、通電部(5)が配設される位置としては、支持体部(41)の側面、底面、又は上面等に接続固定された態様とすることが可能であるが、安全性の観点から、支持体部(41)の基材内部に埋設された形態とすることが望ましい。
ここで、通電部(5)の支持体部(41)への埋設とは、支持体部を構成する構造部材の外観から見て当該部材内部に通電部が保持されている状態であれば埋設状態とすることができる。
本明細書において、通電部が埋設された状態とは、具体的には支持体部(41)の構造体の基材内に通電部(5)を物理的に埋め込まれた状態を挙げることができる。また、別態様においては、2以上の分離可能な支持体部(41)を嵌合した際に、当該部材間の隙間に通電部を挟持した状態を挙げることができる。
第1極性通電部と芯電極の接続部(53)、又は、第2極性通電部と周設電極との接続部(63)は、通常の接触通電が可能な手段で接続固定されたものであれば、如何なる接続手段を採用することも可能である。例えば、溶接や半田付け等での接続固定構造を採用することが可能である。
第1極性通電部と芯電極の接続部(53)、又は、第2極性通電部と周設電極との接続部(63)は、支持体部(41)の基材内部に埋設された状態であることが望ましい。
ここで、芯電極(11)及び/又は周設電極(21)を電極本体から分離可能な形態とする場合は、各通電部との接続部にて各電極を分離可能な接続状態とすることも可能である。例えば、各接続部においては、電極と通電部が単に接触通電している状態にて接続させる状態とすることも可能である。
第1極性通電部(51)及び第2極性通電部(61)の一端は、電源接続部(52、62、)が形成されてなる。電源接続部(52、62)は、支持体部(41)の上面又は側面に配設されてなることが望ましい。好ましくは、支持体部(41)の上面に配設されてなることが望ましい。
本発明に係る電源接続部(52、62)の好適な態様としては、例えば、第1極性通電部及び第2極性通電部を支持体部の内部に埋設させた態様とし、支持体部(41)の筐体外壁に貫通孔を形成させて、電源接続部(52、62)を外側に突出した構造とすることが好適である。
[操作性向上に関する構造等]
本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)は、上記電極部(3)及び電極保持部(4)に関する基本構造を備えてなるものであるが、液滴往復運動を効率良く実行するために操作性を向上させるための構造を備えた態様とすることが可能である。
試料導入手段
本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)は、芯電極と周設電極の間隙(31)内への試料投入が可能となる位置に、試料導入手段(71)が設けられた構造を有するものであることが好適である。
本発明において、試料導入手段(71)を有する形態を採用した場合、エレクトロポレーション用電極(1)を絶縁性液体貯留容器(101)に組立配設した状態にて試料投入操作を行うことが可能となる。そのため、試料投入後の迅速な電圧印加が可能となり、液滴が自重により底面に沈む前での確実な電圧印加が実現可能となり好適である。
試料導入手段(71)は、芯電極と周設電極の間隙(31)内への試料投入が可能となる位置に設けられた構造である。
試料導入手段(71)の具体的な構造としては、微量液滴の投入に好適なピペットやシリンジ針等の挿入に適した構造であれば、如何なる構造を採用することも可能である。例えば、ピペット等の挿入に適した開口構造、溝状の開口構造、スリッド状の開口構造、開閉可能な窓様の開口構造、シャッター構造等を採用することが可能である。また、所望に応じて、ピペットやシリンジ等の挿入や挿管が容易となるように、ガイド部材を噛ませた態様とすることもできる。
試料導入手段(71)の一態様としては、内径2〜8mm程度の開口構造を挙げることができる。開口構造の形状としては、例えば円状等を挙げることができる。
試料導入手段(71)の配設位置としては、電極を上面視した際に、芯電極と周設電極の間隙(31)内への試料投入が可能となる位置であることが好適である。当該位置は、ピペットやシリンジの挿入等が可能であって、芯電極と周設電極の間の間隙(31)内へ液滴落下を可能とする位置であれば良い。
具体的には、電極保持部における支持体部(41)の天井又は側壁、周設電極の側面部分等であって、当該間隙(31)内への試料投入が可能となる位置を挙げることができる。より好ましくは、支持体部(41)の天井部において、上面視にて芯電極と周設電極の間隙(31)上の位置に配設することが望ましい。なお、試料導入手段(71)の一態様としては、支持体部(41)の上面と底面を連通した構造を採用することができる。
位置調整機構
本発明に係るエレクトロポレーション用電極(1)は、電極高を調節するための位置調整機構(81、91)を備えた構造であることが好適である。
本発明において、位置調整機構(81,91)を有する形態を採用した場合、エレクトロポレーション用電極(1)を絶縁性液体貯留容器(101)に配設する際に、電極の位置を所望の高さに調節することが可能となる。
本発明に係る位置調整機構(81、91)としては、エレクトロポレーション用電極の芯電極(11)及び周設電極(21)を上方から絶縁性液体貯留容器(101)内に配設する際に、電極部の高さを位置調節可能であって、所望の高さにて固定可能な構造や部材等であれば、如何なるものを採用することができる。
位置調整機構の一態様としては、エレクトロポレーション用電極(1)に外枠部材(82)を取り付けて、当該外枠部材と容器上端を当接又は接続等させる態様(81:位置調整機構)を挙げることができる。
外枠部材(82)を使用した位置調整機構(81)の態様では、外枠部材(82)と電極保持部(4)の側面との垂直方向の固定位置を調節することによって、エレクトロポレーション用電極(1)を絶縁性液体貯留容器(101)に積載した際に電極高を所望の位置に調整することが可能となる。
当該外枠部材(82)を使用する態様としては、電極保持部(4)の側面を嵌合可能な外枠部材であって、電極保持部の側面に対する当該外枠位置を垂直方向に調整及び固定可能な部材を挙げることができる。より具体的には、電極保持部(4)の側面と嵌合可能であって任意位置にて外枠部材位置を固定可能であるナット状部材、リング状外嵌め部材、及び板状外枠部材、等を挙げることができる。
位置調整機構の別態様としては、エレクトロポレーション用電極(1)に支柱付きの外枠部材(92)を取り付けて、自立型にて電極の高さを調製する態様(91:位置調整機構)を挙げることができる。
当該自立型の位置調整機構(91)を使用した態様では、上記ナット状部材等の外枠部材が当接又は接続できない形状やサイズの様々な容器に対しても、エレクトロポレーション用電極(1)内に配設して使用することが可能となる。
当該自立型の一態様としては、電極保持部(4)の側面を嵌合可能な外枠部材(92)を有する構造体であって、当該外枠が支柱(93)等によって自立可能であり、支柱と外枠の垂直方向の高さ調節及び固定が可能な部材を挙げることができる。当該自立型の態様としては、例えば、図7に示す形態の部材を使用した態様を挙げることができる。
2.外来物質導入装置
本発明に係る外来物質導入装置(10)は、絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とする装置であって、絶縁性液体貯留容器(101)に、上記エレクトロポレーション用電極(1)を配設した構造の装置である。即ち、本発明に係る外来物質導入装置(10)は、上記エレクトロポレーション用電極(1)を含んでなることを技術的特徴とする外来物質導入装置である。
ここで、外来物質導入装置(10)を構成する部材としては、上記したエレクトロポレーション用電極(1)や絶縁性液体貯留容器(101)等以外の部材(例えば、電源ケーブルや弾性部材等)についても、当該装置を構成する部材に含ませることが可能である。
[絶縁性液体貯留容器]
本発明に係る外来物質導入装置(10)を構成する部材としては絶縁性液体の貯留が可能な容器(101:絶縁性液体貯留容器)を含んで構成されるものである。
絶縁性液体貯留容器(101)は、絶縁性液体(111)の貯留が可能な容器であって、容器内へのエレクトロポレーション用電極(1)の芯電極及び周設電極の配設を可能とする形状の容器である。
絶縁性液体貯留容器(101)としては、エレクトロポレーション用電極(1)を当該容器に係る開口部から容器内に配設した際に、当該エレクトロポレーション用電極に係る電極部である芯電極(11)及び周設電極(21)の少なくとも一部を、貯留した絶縁性液体中に浸漬可能とする形状の容器である。当該浸漬領域にて、電圧印加により電界が形成される電極間隙(31)が形成される。
また、絶縁性液体貯留容器(101)の容器内に配設されるエレクトロポレーション用電極(1)の部分としては、絶縁性液体と接触しない状態であれば電極保持部(4)を容器内に配設することも可能であるが、好ましくは、芯電極(11)及び周設電極(21)のみを容器内に配設する態様とすることが好適である。
絶縁性液体貯留容器(101)の形状としては、上方に開口部を有する容器形状であることが好適である。好ましくは蓋等の構造物を備えない上部開口構造の容器であることが好適である。また、蓋等の構造物を備えた構造であっても、使用時において上部が開口した状態となる容器であれば、本発明に係る容器として使用可能である。
当該開口部のサイズとしては、芯電極と周設電極の間隙(31)を十分に確保可能なサイズであることが好適である。即ち、上面視にて周設電極(21)の最大長が挿入可能なサイズであることが好適である。
当該条件を充足する開口部のサイズ(円状の場合は内径)としては、例えば、13〜53mm、好ましくは13〜21mm程度であることが好適である。
絶縁性液体貯留容器(101)としては、液体貯留を可能とする容器部分の水平方向において、一定サイズを有するものであることが好適である。
当該容器部分の水平方向サイズとしては、芯電極と周設電極の間隙(31)を十分に確保可能なサイズであることが好適である。即ち、上面視にて周設電極(21)の最大幅が挿入可能なサイズであることが好適である。
当該条件を充足する容器部分の水平方向のサイズ(円状の場合は内径)としては、上記開口部のサイズに準じたサイズを採用することが好適である。
また、絶縁性液体貯留容器(101)としては、側面構造として一定深度の電極挿入が可能な容器構造であることが好適である。液面からの電極部の浸漬領域が2〜30mm、好ましくは2〜10mm程度の深度を確保できる量を貯留可能な容器であることが好適である。好ましくは、側面構造の開口部から一定領域は垂直側面構造を有する容器であることが好適である。
絶縁性液体貯留容器(101)としては、上記形状の特徴を例示にて示すと、側面部分が筒状形状を有するコップ状、カップ状、シャーレ状、トレイ状、シリンダー状等の容器を挙げることができる。ここで、筒状形状としては、円筒、略円筒、四角筒、略四角筒、多角筒、略多角筒、等の通常の容器形状を挙げることができる。
また、垂直方向に沿って断面サイズが徐々に又は断続的に変化した形状であっても、電極部の挿入及び浸漬領域の確保に支障がない限りは、本発明に係る容器形状として許容される。例えば、上部が窄まった形状、中間部に括れを有する形状、底部が窄まった形状等であっても、本発明に係る容器形状として採用することが可能である。
絶縁性液体貯留容器の底部(102)としては、特に制限はなく採用することが可能であるが、液滴が底に落下した際に回収が容易な形状であることが好適である。例えば、フラットな平板形状、中央部が最低部となるドーム状、中央部が最低部となるラウンド状、中央部が下方向に窄まった略コーン型形状、等が採用できる。特には、底面中央部に向かって凹となる形状であれば、底面中央部に液滴を集中させることができ、例えばストロー状等の中空管状の部材により容易に液滴を吸い出す操作が可能となる。
ここで、本発明に係る液滴往復運動においては、投下直後の液滴(6)は自重により落下しながら往復を繰り返すところ、電極部の最下端(12、22)に達した後は、下に凸の電気力線に沿って芯電極と周設電極の間を安定して往復運動する。
そのため、本発明に係る外来物質導入装置(10)においては、絶縁性液体貯留容器(101)へのエレクトロポレーション用電極(1)の配設時において、電極部下端が容器底面と接触しない電極高に調節して配設することが好適である。
好ましくは、容器底部から電極部下端までの距離が2mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上となるように、電極部の位置を調節して配設することが好適である。容器底部(102)と電極部下端(12、22)が近接し過ぎる状態の場合、液滴が容器底部に接触して補足される現象が起こりやすくなる。特に、容器底部と電極部下端が接触した状態では、液滴エレクトロポレーションは可能ではあるものの、円滑な往復運動が担保されない点で好適ではない。
容器底部から電極部下端までの距離の上限については、容器形状が許容する範囲で設定可能であり特に制限はない。
絶縁性液体貯留容器(101)の容器部分を構成する材質としては、絶縁性液体(111)を貯留可能であって、絶縁性を示す材質であれば特に制限なく採用することが可能である。例えば、ガラス、プラスチック、樹脂、セラミック、陶器、ゴム等の材質のものを用いることが好適である。
また、外来物質導入装置に内部観察手段(106)を配設する態様においては、絶縁性液体貯留容器(101)の材質の少なくとも一部は、透光性を有する材質にて構成されてなるものであることが望ましい。透光性を有する材質としては、好ましくは絶縁性液体貯留容器に採用可能であって且つ透明度が高い材質であることが好適である。例えば、ガラス、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリル、ポリメチルペンテン、透明ABS樹脂、等の材質のものを用いることが好適である。
絶縁性液体貯留容器(101)として、上記特徴を備えた容器構造体を例示にて示すと、例えば、培養用ディッシュ、PCRチューブ、遠心チューブ、ビーカー、フラスコ、試験管、チューブ、キュベット等の形状の容器を挙げることができる。また、シングルウェル、4ウェル、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル等の各種マルチウェルプレートを用いることも可能である。底面形状については、平板状、ラウンド状、中央部が下方向に窄まった略コーン型形状であっても使用可能である。
[絶縁性液体]
本発明に係る外来物質導入装置(10)としては、絶縁性液体貯留容器(101)内に水又は水溶液を相分離可能な絶縁性液体(111)を貯留して使用するものである。
本発明における絶縁性液体(111)としては、液滴エレクトロポレーションが可能なように、常温付近で液体性を示す溶媒であって、水と相分離する溶媒であり、絶縁性を示す性質を有するものを用いる。即ち、常温にて水溶性の液体を微量滴下した場合にw/o型液滴が形成可能な液体であって、絶縁性を示す性質であるものを用いる。
このような性質を示す溶媒としては、好ましくは、疎水性の絶縁性液体を指す。例えば、石油由来のアルカン類である鉱油、アルキルベンゼンを主成分とする絶縁油、ポリブテンを主成分とする絶縁油、アルキルナフタレンを主成分とする絶縁油、アルキルジフェニルアルカンを主成分とする絶縁油、シリコーンオイル等を例示することができる。また、これらを1種又は複数種を混合して用いることもできる。
絶縁性液体(111)としては、水溶性の液滴よりも低比重のものを用いることが好適である。特には、液滴が絶縁性液体を沈降するものの、比較的緩慢に液滴沈降が起こるものを用いることが好適である。
比重としては、例えば比重0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3、より好ましくは0.9〜1.1程度のものを用いることが好適である。ここで、比重が小さすぎる場合、液滴が重力の効果により底面落下しやすくなり好適でない。また、比重が液滴より大きい場合、液滴が液面に浮上してしまい好適でない。
絶縁性液体(111)としては、適切な粘度のものを用いることが好適である。詳しくは、液滴が絶縁性液体を円滑に移動するものの、比較的緩慢に液滴沈降が起こるものを用いることが好適である
粘度としては、例えば、5〜300cSt、好ましくは10〜250cSt程度、より好ましくは10〜100cSt、更に好ましくは10〜50cStのものを用いることが好適である。ここで、粘度が大きすぎる場合、液滴の円滑な動きが妨げられてしまい好適でない。また、粘度が小さすぎる場合、比重との組み合わせによっては液滴が電気力線から外れて底面落下しやすくなり好適でない。
絶縁性液体の絶縁性液体貯留容器(101)への充填量としては、液滴エレクトロポレーションが可能な深度となるように、容器高に応じて適宜調整することが可能である。液滴往復運動が安定して確保される深度であれば良い。
例えば、液面からの電極部(3)の浸漬領域の深度を確保できる量を注入し充填することが好適である。液量の目安としては、通常のウェルプレート等であれば5〜8割程度の充填量があれば安定した液滴エレクトロポレーションが可能である。
[操作性向上に関する構造等]
本発明に係る外来物質導入装置(10)は、上記エレクトロポレーション用電極(1)や絶縁性液体貯留容器(101)等を基本構造として備えてなるものであるが、液滴往復運動を効率良く実行するために操作性を向上させるための構造を備えた態様とすることが可能である。
内部観察手段
本発明に係る外来物質導入装置(10)としては、絶縁性液体貯留容器(101)の内部における液滴往復運動を観察可能な手段を備えた装置であることが好適である。具体的には、絶縁性液体貯留容器の底面(102)外側に、前記容器内部を観察するための手段(106:内部観察手段)を備えた装置態様のものが好適である。
当該内部観察手段(106)を備えた態様とすることによって、内部間隙(31)における液滴往復運動の状態を容易に確認することが可能となる。また、周設電極(21)として側面からの内部視認が不可能な形状を採用した場合であっても、液滴往復運動の状態を容易に確認することが可能となる。
内部観察手段(106)としては、絶縁性液体貯留容器の底面(102)外側に、前記容器内部を観察するための手段を備えていることが好適である。当該手段として具体的には、絶縁性液体貯留容器の底面外側に配設可能な部材又は装置等であって、実験操作者が反射像又はモニター等を介して、容器内部の液滴運動を観察可能なものを挙げることができる。
当該部材又は装置等としては、ミラー、反射鏡、ビデオ、カメラ、各種撮影装置、等を挙げることができる。また、録画装置、PCでの動画ソフト等、液滴運動状態の解析等を可能とする部材や装置等を用いることもできる。
外来物質導入装置に内部観察手段(106)を配設した態様とする場合においては、絶縁性液体貯留容器(101)の材質の少なくとも一部は、透光性を有する材質にて構成されてなるものであることが望ましい。
具体的には、絶縁性液体貯留容器(101)の底面を構成する材質の少なくとも一部が、透光性を有する材質にて構成されてなる容器であることが望ましい。更に好ましくは、好ましくは底面の全部が、より好ましくは容器の全部が、透光性を有する材質にて構成されてなる容器であることが望ましい。透光性を有する材質としては、好ましくは絶縁性液体貯留容器(101)に採用可能であって且つ透明度が高い材質であることが好適である。具体的な材質の例示については、絶縁性液体貯留容器の説明段落にて記載した通りである。
試料導入手段
本発明に係る外来物質導入装置においては、絶縁性液体貯留容器(101)に試料導入手段(105)を備えた形状のものを採用することも可能である。
当該態様においては、エレクトロポレーション用電極の支持体部(41)等に試料導入手段を設けてない場合においても、絶縁性液体貯留容器(101)側に試料導入手段を備えた態様とすることによって、効率的な液滴投入を実行することが可能となる。
絶縁性液体貯留容器に備えられた試料導入手段(105)は、芯電極と周設電極の間隙(31)内への試料投入が可能となる位置に設けられた構造であることが望ましい。
当該試料導入手段(105)の一態様としては、容器側面上方に設けた内径2〜8mm程度の開口構造を挙げることができる。開口構造の形状としては、エレクトロポレーション用電極側の試料導入手段(71)の説明段落に記載した態様を採用することができる。
多連式形態
本発明に係る外来物質導入装置(10)としては、エレクトロポレーション用電極(1)を1以上配設した装置に加えて、当該電極を2以上配列した装置とすることが可能である。即ち、絶縁性液体貯留容器(101)に、エレクトロポレーション用電極を複数備えてなる多連式の態様(2)とすることも可能である。
当該多連式態様としては、エレクトロポレーション用電極(1)を保持及び固定可能な構造を複数配列して備えてなる外枠部材を用いる態様を挙げることができる。当該態様においては、エレクトロポレーション用電極を複数備えた多連式の電極態様(2)とすることが可能となる。
多連式形態の一態様としては、図7に示すように、外枠となる板状部材(92)にエレクトロポレーション用電極(1)を内嵌固定可能な開口部を直線上に連続配列して備えてなり、支柱(93)により自立した形態を挙げることができる。
エレクトロポレーション用電極(1)を連続配置させる数としては、2以上を挙げることができるが、絶縁性液体貯留容器(101)としてマルチウェルプレート状の容器を用いる態様の場合、ウェル形状及び数に適した配置及び数を採用することが可能である。
例えば、4ウェル、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル等の各種マルチウェルプレートの一列に配設可能なように、2連、3連、4連、6連、8連等に縦方向に連続配設された形状を採用することが可能である。また、各ウェルの全部又は一区画にみに対応するように、マトリックス状(2列×2行、2列×3行、3列×3行等)に配列した形状にすることも可能である。
[電源手段等]
本発明に係る外来物質導入装置(10)では、電源手段(131)として通常の直流高電圧発生装置を使用することが可能である。即ち、本発明に係る外来物質導入装置(10)では、特別なパルスジェネレーター等を使用することなく、効率の良いエレクトロポレーションを実行することが可能となる。
本発明に係る外来物質導入装置に接続する電源手段(131)としては、直流高電圧発生装置であれば如何なるものを使用することが可能である。例えば、電気泳動用、電圧印加用、等に使用する通常のものを使用することが可能である。
直流高電圧発生装置としては、具体的には、1〜5kV程度の高電圧を持続して印加が可能な装置であれば良い。
また、電源手段(131)とエレクトロポレーション用電極の電源接続部(52、62)を接続する部材として、通常の電源ケーブル等を使用することができる。
3.製品形態
本発明においては、上記したエレクトロポレーション用電極(1)について、液滴エレクトロポレーションを好適に行うための電極としての製品形態とすることができる。
更に、本発明においては、上記した芯電極(11)及び周設電極(21)を組み立て可能な状態にて含んでなる形態にして、エレクトロポレーション用電極の組立用キットの製品形態とすることができる。また、芯電極を備えた電極保持部(4)及び周設電極を備えた電極保持部(4)を、組み立て可能な状態にて含んでなるエレクトロポレーション用電極の組立用キットとすることも可能である。
当該組立用キットに含まれる構成部材としては、上記エレクトロポレーション用電極を構成する部材を含ませることができる。
また、本発明に係るエレクトロポレーション用電極の組立用キットを構成する部材としては、上記した部材以外のもの(例えば、電源ケーブルや弾性部材等)についても、構成部材として含ませることが可能である。
本発明においては、上記した外来物質導入装置(10)について、液滴エレクトロポレーションを好適に行うための装置としての製品形態とすることができる。
更に、本発明においては、上記したエレクトロポレーション用電極(1)と他の部材を組み立て可能な状態にて含んでなる形態にして、外来物質導入装置の組立用キットの製品形態とすることができる。当該組立用キットに含まれる構成部材としては、上記外来物質導入装置を構成する部材を含ませることができる。
また、本発明に係る外来物質導入装置の組立用キットを構成する部材としては、上記した部材以外のもの(例えば、電源ケーブルや弾性部材等)についても、構成部材として含ませることが可能である。
4.外来物質導入方法
本発明においては、上記したエレクトロポレーション用電極を含んでなる外来物質導入装置(10)を用いることによって、液滴エレクトロポレーションによる外来物質導入を効率良く行うことが可能となる。
[液滴エレクトロポレーション法の原理等]
本発明に係る外来物質導入法は、液滴エレクトロポレーションの原理を利用した外来物質導入方法である。ここで、液滴エレクトロポレーション法とは、絶縁性液体(111)中に形成された液滴(6)に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とする方法である。
詳しくは、次の手順及び原理により細胞への外来物質導入が実現される方法である。
i)細胞及び外来物質を含む水溶性の微小液滴を絶縁性液体中に形成させて、絶縁性液体中の電極間に配置する。
ii)ここで、前記電極に電圧を印加することによって、電極間を結ぶ電気力線を発生させる。この時、液滴が帯電している電荷とは反対電荷の電極方向に静電的作用によって移動する。
iii)液滴が電極と接触すると液滴はその電極が有する極性に誘導帯電され、反対側の極性の電極方向に移動する。
iv)液滴は電極接触のたびに反対極性に誘導帯電することを繰り返すため、電極間での液滴往復が繰り返される。ここで、液滴が電極に接触するたびに、液滴中に含まれる細胞への電気穿孔現象が生じ、エレクトロポレーションが行われる。
ここで、液滴エレクトロポレーション法は、数μL程度という液滴に含まれる極微量の細胞へのエレクトロポレーションを可能とする方法であり、幹細胞やT細胞等の貴重な細胞への応用に適した手法である。
また、液滴エレクトロポレーション法に係る電圧印加の原理は、数十〜数千回の液滴往復運動において電極接触時に電圧を与える電気刺激であり、微小電流によるエレクトロポレーションで十分な導入効率の達成が可能であり、細胞へのダメージが著しく低減された方法である。この点でも、損傷や外的刺激等にデリケートな幹細胞やT細胞等のへの応用に適した手法である。
更に、液滴エレクトロポレーション法は、生存率と導入効率の両立について電気パルス条件等の最適条件等の検討の必要がなく、通常の直流電源にて高効率のエレクトロポレーションを行うことを可能とする方法である。即ち、特殊な波形生成等を行うためのパルスジェネレーター等を用いることなく高効率のエレクトロポレーションを実行可能とする方法である。
以上が液滴エレクトロポレーション法の基本的原理及び作用である。なお、当該原理が示すように、液滴エレクトロポレーションにおいては、液滴往復運動での電極接触回数に比例してエレクトロポレーションによる外来物質導入が行われることになる。
そのため、液滴エレクトロポレーション法においては、電極間での液滴往復を停止することなく安定して実行させることが細胞の生存率と形質導入の効率の点で重要となるところ、従来技術においては、容易かつ安定に液滴往復運動を実現するために、大幅に改良すべき点があった。
この点、液滴エレクトロポレーションは、従来のエレクトロポレーション法に代替しえる可能性を有する優れた技術と認められるところ、液滴往復運動を高頻度で成立させ、中断させることなく、安定して持続可能とすることは未達成のままであった。
[外来物質導入工程]
本発明に係る外来物質導入方法は、上記したエレクトロポレーション用電極(1)を含んでなる外来物質導入装置(10)を用いて液滴エレクトロポレーションを行う方法である。
電極部浸漬
本発明に係る外来物質導入方法は、エレクトロポレーション用電極の電極部である芯電極(11)及び周設電極(21)の少なくとも一部を、絶縁性液体貯留容器(101)に貯留した絶縁性液体(111)に浸漬させた状態にて行われる。
ここで、絶縁性液体貯留容器への絶縁性液体(111)の注入量としては、液滴往復運動が安定して確保される深度が確保される体積を注入すれば良い。絶縁性液体の種類、絶縁性液体の注入量、及び電極部の浸漬領域の長さ、等に関する詳細については、詳しくは、上記外来物質導入装置の説明段落にて記載した通りである。
液滴
本発明における液滴とは、上記した絶縁性溶液中において相分離して形成されたw/o型の液滴を指すものである。微量体積を有する水溶性溶液にて構成されてなる液体である。具体的には、水、細胞培地、緩衝溶液、塩溶液等、水や水溶液を指すものである。
本発明に係る方法においては、実際に投入する試料である液滴としては、外来物質や培地成分を含んだ状態での細胞懸濁液の状態となる。
即ち、液滴として通常は、細胞、外来物質、緩衝液成分、塩成分、培地成分等が含まれた状態の水溶液の液滴となる。
ここで、液滴を構成する溶液成分の組成としては、従来のエレクトロポレーションに準じた組成とすることが好適である。例えば、動物細胞への導入の場合であれば、血清を含まない方が好適である。
本発明に係る方法での対象細胞としては、原理的にin vitro法でのエレクトロポレーションが可能な細胞であれば如何なる細胞を含ませることも可能である。例えば、バクテリア、古細菌等の原核生物だけでなく、植物細胞、動物細胞、菌類細胞等、あらゆる真核生物の細胞を対象として用いることができる。
特に対象細胞としては、本発明に係る方法の好適な特徴を考慮すると、従来の方法では適用が困難であった細胞に対しても適用が可能となる。例えば、細胞自体が貴重で外的刺激に敏感な幹細胞等に対して好適に適用可能となる。
ここで幹細胞としては、胚性幹細胞、胚性生殖幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、皮膚幹細胞、神経幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、等を例示することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明に係る方法での対象細胞としては、人工的に作製した多能性細胞である体細胞由来ES細胞やiPS細胞に対しても、好適に適用対象とすることが可能である。
液滴に含有させる細胞量としては、1×10〜1×10細胞/液滴を挙げることができるが特に制限されない。
なお、本発明に係る方法においては、必要な細胞の総量は、液滴のスケールが数μLであることを考慮すると、従来のエレクトロポレーションに比べて3桁低い量となり極めて少ない量での操作が可能となる。
本発明に係る方法で導入可能な外来物質導入としては、従来のエレクトロポレーション法で導入できる物質であれば如何なる物質を導入することが可能である。例えば、通常の状態では細胞膜を透過できない各種生理活性物質、薬剤、治療薬、核酸物質、ペプチド、及びタンパク質等が例示される。尚、本発明では、複数種類の外来物質を液滴に封入すれば、その封入した複数種類の外来物質が細胞中に導入されることとなる。
本発明に係る外来物質導入方法においては、外来物質として核酸又は核酸を含む物質を細胞に導入することによって、遺伝子導入を行うことが可能である。
ここで、核酸物質としては、例えば、DNA、RNA等が含まれる。DNAとしては、標的細胞内に導入したい核酸配列を備えたDNAが適宜選択され、例えば、遺伝子の全長配列(cDNA配列、ゲノム配列)、部分配列、調節領域、スペーサー領域、及び変異を加えた配列等、目的に応じて設計されたDNAが用いられる。また、ウイルスDNA、プラスミドDNA、オリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー)、およびペプチド核酸等も含まれる。RNAとしては、mRNA、siRNA等が含まれるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、これらを組み合わせて使用してもよい。例えば、導入を目的とする目的DNAが複数ある場合には、異なる蛍光タンパク質をコードする遺伝子をそれぞれに結合した上で、かかる複数のDNAを1つの液滴に含ませれば、一度の処理で複数種類の遺伝子を細胞に導入することができ、更に、その導入結果をそれぞれの蛍光タンパクの発現を目印として個別に観察できる。
外来物質の含有量としては、通常のエレクトロポレーション時の濃度を採用することが可能である。なお、本発明に係る方法においては、必要な外来物質の総量は、液滴のスケールが数μLであることを考慮すると、従来のエレクトロポレーションに比べて2桁低い量となり極めて少ない量での操作が可能となる。
本発明に係る液滴エレクトロポレーションによる遺伝子導入方法では、従来のin vitroによるエレクトロポレーション法に比べて生存率及び導入効率の高い方法であり、更に細胞量や核酸の調製量が微量で良いため、遺伝子導入を利用した様々な用途への応用が可能である。
本発明に係る液滴エレクトロポレーション方法の応用例として、例えば、iPS細胞調製時のT細胞に対して、4種類の山中因子と呼ばれるDNA(Oct3/4、Sox2、Klf4、及びc−Myc)を導入する際において好適に適用可能である。
また、ゲノム編集技術である、CRISPR/Casシステム、TALENs(Transcription Activator-Like Effector Nucleases)、及びZFNs(Zinc Finger Nucleases)等においても好適に適用することが可能である。
例えば、ゲノム編集技術の一例であるCRISPR/Casシステムにおいては、所望の対象ゲノムDNAの相補配列及びCas9との結合領域(crRNA:tracrRNA)を有するガイドRNA及びCas9コードmRNA等を対象細胞に対して導入処理する際に、好適に適用可能となる。また、CRISPR/Casシステムでは、これらのRNAをコードするDNA配列をプラスミド上に搭載したコンストラクトDNAを調製し、対象細胞内で発現可能な発現ベクターDNAとして導入することも可能である。
液滴投与
本発明に係る外来物質導入方法においては、上面視にて芯電極と周設電極の間隙上となるように外来物質を含む液滴投入を行うことが好適である。芯電極と周設電極の間で形成された液滴は、電極部への電圧印加により、芯電極と周設電極の間の往復運動が円滑に行われやすくなり好適である。
ここで、外来物質を含む試料の投入操作は、エレクトロポレーション用電極(1)を絶縁性液体貯留容器(101)に配設し、電圧印加の準備が整った状態にした後に、試料導入手段(71、105)を通して行うことが好適である。当該態様では、液滴(6)が自重により底面(102)に沈む前での確実な電圧印加が実現可能となる。
また、投与手段又は投与方法としては、ピペットやシリンジ等を用いて常法により行うことが可能である。
液滴の投与量としては、芯電極と周設電極の間隙(31)の距離によって決定することができるが、液量として1〜10μL程度、好ましくは2〜6μL、より好ましくは2〜5μLが好適である。本発明においては、液滴の総量が当該範囲内にあれば、短絡現象は発生しにくく好適である。一方、芯電極と周設電極の間隙距離に対して液量が多すぎる場合、短絡現象(ショート)が発生しやすくなり好適でない。
ここで本発明に係る電極配設構造においては、電極間距離を長くして高い電圧印加を行った場合でも液滴補足現象や短絡現象等が起こりにくいため、液滴サイズの増量が可能となる。例えば、10μL程度の液滴投入を行うことも可能となる。
ここで、液滴サイズの増加は、導入対象遺伝子の種類が多種類に及ぶようなエレクトロポレーション処理の場合に特に有利となる。例えば、iPS細胞調製時における4種類の山中因子の導入やその他のマーカータンパク遺伝子を構成する複数種の遺伝子導入等の際において、液滴サイズが増加可能となる点は手法として大きな利点となる。
液滴の投与形態としては、1回で投与することが好適であるが、2回以上に分けて投与することも可能である。また、往復運動中の液滴は、分裂と合体を繰り返すことがあるが、総量として上記範囲であれば短絡現象は発生しにくく好適である。
電圧印加
本発明においては、電極部(3)への電圧印加により、絶縁性液体(111)中に形成された液滴(6)に対する静電的作用による芯電極(11)及び周設電極(21)の間での液滴往復運動を誘導される。ここで、液滴(6)が電極と接触した際、液滴に発生する電流のため、電気穿孔による細胞への外来物質導入現象が起こる。当該液滴往復運動は電圧印加中継続されるので、外来物質を導入する反応が繰り返して行われる現象が実現される。
本発明に係る外来物質導入方法においては、芯電極(11)と周設電極(21)への電圧印加により、間隙(31)に電界が発生し電気力線が形成される。液滴(6)は、当該電気力線に沿って電極間の往復運動を繰り返す。
ここで、本発明に係る電極配設構造では、液面に対する水平方向において周設電極(21)が芯電極(11)を取り囲む電極配置となる。そのため、芯電極を中心とする全方位に向かって電気力線が形成される電界構造となる。
従って、本発明においては、ある電気力線上を往復運動中の液滴が、電気力線から外れた場合であっても、他の電気力線へ即座にリカバーされやすい電界構造となっている。そのため、本発明においては、従来技術の対向電極構造の装置(特許文献1参照)に比べて往復運動の停止が原理的に起こりにくい電界構造が実現される。
電極部への印加電圧としては、芯電極と周設電極の間隙(31)の距離によって決定することができるが、1〜5kV、好ましくは2〜4kV、より好ましくは2〜3.5kVの電圧を印加することが好適である。具体的には、直流電圧を印加することが好適である。また、電界強度に換算して、0.5〜10kV/cm、好ましくは2.2〜4.4kV/cm、より好ましくは2.2〜3.9kV/cmの電圧を印加することが好適である。
本発明においては、印加電圧が当該範囲内にあれば、短絡現象は発生しにくく好適である。一方、芯電極と周設電極の間隙距離に対して印加電圧が高すぎる場合、短絡現象(ショート)が発生しやすくなり好適でない。
なお、本発明においては、電極配設構造により電極間距離を長くとる構造が可能であるため、従来の対向電極では実現が困難であった高電圧印加が可能である。例えば、4〜5kVという高電圧の印加も実現可能である。
また、往復運動の円滑性としては、60〜180回/分程度の安定した液滴往復運動実現が可能である。
電圧印加時間としては、0.25〜60分、好ましくは0.5〜15分、より好ましくは1〜3分の電圧印加が可能である。印加時間が長い程、往復運動の回数が稼げるため、導入効率が高くなり好適である。本発明に係る方法においては、その電極配設構造による短絡現象や液滴補足等が発生しにくい構造であるため、0.5〜1時間程度での長時間のエレクトロポレーション反応を行うことも可能である。
本発明の方法では、原理として極めて微弱な電気刺激を数十〜数千回与える方法であるため、従来のエレクトロポレーション法に比べて、細胞に与える総エネルギー量が小さく、細胞へのダメージや影響が小さい方法である。
例えば、後述する実施例に示したように、電気的損傷に弱いT細胞等に3分間の液滴エレクトロポレーションを行った場合であっても、短絡現象が起こらなければ、ほぼ100%に近い生存率が実現される。
更に、原理的な詳細は不明であるが、本発明に係る電極配設構造の優れた効果の1つとして、短絡現象(ショート)が起こった場合の細胞生存率の高さが挙げられる。即ち、本発明においては、電極部で短絡現象が起きた場合でも、従来技術である対向電極での短絡現象が起きた場合よりも生存率は格段に高い値となる。
そもそも、本発明に係る電極配設構造では短絡現象自体が発生しにくい電極配置であるところであるが、仮に液滴過多や電圧過多の場合に短絡現象が発生した場合であっても、細胞へのダメージが弱くて済み、細胞の生存率に有利な方法と認められる。
本発明における液滴往復運動においては、投下直後の液滴(6)は自重により落下しながら往復を繰り返すところ、電極部の最下端(12、22)に達した後は、下に凸の電気力線に沿って芯電極と周設電極間を安定して往復運動する。
そのため、絶縁性液体貯留容器(101)へのエレクトロポレーション用電極(1)の配設は、電極部下端(12、22)が容器底面(102)と接触しない電極高に調節して配設することが好適である。
電極高の位置に関する詳細については、詳しくは、上記外来物質導入装置の説明段落にて記載した通りである。
絶縁性液体の重層
本発明に係る外来物質導入方法においては、別態様として、比重又は動粘度の異なる2種類の絶縁性液体を重層した状態になるように絶縁性液体貯留容器(101)に充填して、液滴エレクトロポレーションを行う態様を採用することができる。
絶縁性液体重層態様の一態様においては、比重が大きい絶縁性液体を下層に充填し、その上に比重の小さい絶縁性液体を重層した液体構造となる。ここで、上層絶縁性液体としては液滴の比重よりは小さいものを用いる。当該重層液体構造における比重関係を下記式(1)に示す。
式(1): 上層絶縁性液体の比重<下層絶縁性液体の比重<液滴比重
また、絶縁性液体重層態様の別態様においては、動粘度が大きい絶縁性液体を下層に充填し、その上に動粘度が小さい絶縁性液体を重層した液体構造となる。当該重層液体構造における下層絶縁性液体と上層絶縁性液体の動粘度の関係を下記式(2)に示す。
式(2): 上層絶縁性液体の動粘度<下層絶縁性液体の動粘度
本発明に係る絶縁性液体を重層する態様においては、式(1)及び式(2)のいずれの態様においても、上層絶縁性液体が液滴エレクトロポレーションを実行するための絶縁性液体となる。即ち、上層絶縁性液体は、上記外来物質導入装置の説明段落にて記載した絶縁性液体を指すものである。
一方、下層絶縁性液体は、その粘性又は比重によって液滴の沈降を遅くする液体層として機能し、結果として上層絶縁性液体側の電気力線での安定した液滴往復運動を促すように作用する層を形成する。
具体的には、外来物質導入装置(10)における電極部の下端を、上層絶縁性液体と下層絶縁性液体の境界面付近、又は、上層絶縁性液体側に位置するように配設することによって、液滴は比重又は動粘度の小さい境界面上側の電気力線に沿って往復運動を安定して繰り返す。
本発明に係る方法において、下層絶縁性液体として適した液体は、上層絶縁性液体と同様に、常温付近で液体性を示す溶媒であって、水と相分離する疎水性溶媒であり、絶縁性を示す性質を有するものであるが、比重0.96以上のもの又は動粘度500〜10000cStのものを用いることが好適である。ここで、比重又は動粘度が小さすぎる場合、液滴が電気力線から外れて底面落下しやすくなり好適でない。
下層絶縁性液体として用いるのに好適絶縁性液体を例示すると、比重0.96以上であるフルオロカーボンオイル、動粘度10000cStのシリコーンオイル、比重0.97〜0.98のフロリナート(商品名)等を挙げることができる。
回収
本発明に係る方法においては、電圧印加後に液滴を回収することによって、外来物質が導入された細胞を効率良く回収することが可能である。ここで、電圧印加後の液滴は、底面(102)に沈降した状態となるため、底面からピペット等を用いて吸い取ることによって容易に回収することが可能である。
本発明においては、液滴自体が数μLの微量液滴であるため、対象細胞として浮遊細胞や大腸菌等のバクテリア等を用いた場合であっても、遠心操作等を行うことなく細胞回収を容易に行うことが可能となる。
本発明に係る方法においては、細胞及び外来物質が液滴内に封入された形態であるため、電極や容器等の装置自体の汚染が原理的に生じない。そのため、本発明においては、処理済みの液滴を取出した後に新たな液滴を導入する操作により、異なる対象細胞等の検体への連続したエレクトロポレーション処理を迅速に実行することが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。以下、構造図や使用態様図等を参照して、本実施例にて製造したエレクトロポレーション用電極及び外来物質導入装置を説明する。
[実施例1]『エレクトロポレーション用電極』
本発明に係るエレクトロポレーション用電極の一態様として、図1〜6に示す電極構造体を製造した。
(1)「エレクトロポレーション用電極」
本実施例に係るエレクトロポレーション用電極(1)は、第1極性電極として円柱状の芯電極(11)を有し、芯電極(11)に対して間隙を有するように配設された第2極性電極である周設電極(21)を備えてなる電極構造体である。
ここで、芯電極(11)は、直径2mm及び電極長17mmの長円柱形状の電極であって材質がステンレス鋼にて構成されてなる。下端となる一端はフラットな形状を有し、上端となる他端は、電極保持部(4)中に埋設され接続保定されてなる。芯電極(11)が電極保持部(4)に保定される位置は、電極保持部(4)の底面部の中心付近に配設されてなる。
周設電極(21)は、外径21mm、内径20mm、及び側面視での電極高28mm円筒形状の電極で、円筒側壁厚は1mmの電極である。下端となる円筒の下端はフラットな形状を有し、上端は電極保持部(4)に埋設されて接続保定されてなる。周設電極(21)は、その円筒上端が電極底面視にて芯電極(11)が円筒の中心になる位置に、電極保持部(4)の底面部の外縁付近に埋設され接続保定されてなる。
当該電極の配置構成により、芯電極(11)と周設電極(21)との間に形成される間隙(31)間の距離は、円筒横断面視にていずれの方向に対しても9mmの等距離になる。また、芯電極(11)と周設電極(21)は側面視にて下端が均一に揃った長さになるように配設されてなる。
電極保持部(4)は、本体部分の材質がポリスチレンで主として構成されてなる絶縁製部材であって、平面円板状の形状を有する構造体であり、側面視部材高が19mmの構造部材であり、電極を物理的に固定支持する機能を発揮する部材となる。
本実施例に係る電極保持部(4)は、上部構造体(42)と下部構造体(43)の間に第1極性通電部(51)と第2極性通電部(61)が埋設され固定されてなる。ここで、上部構造体(42)は下方向に外淵を有する短円筒形状の構造体であり、下部構造体(43)は、上部構造体の円筒内の繰り抜き構造に対して、内嵌め可能な厚円板状部材である。
電極保持部に係る下部構造体(43)及び上部構造体(42)の中央部には、芯電極(11)を保定するための保定孔(44)を備えてなる。保定孔(44)は下部構造体(43)を貫通し、上部構造体(42)の途中まで穿設されてなる。芯電極(11)は保定孔(44)を通して上部構造体(42)の内部まで挿入保定され、上部構造体(42)と下部構造体(43)の間に埋設された第1極性通電部(51)であるリード線に接続されてなる。第1極性通電部(51)の上端は、電極保持部の上部構造体(42)の上面側に突出した棒状の電源接続部(52)を形成してなる。電極保持部(4)上面の電源接続部(52)が突出した貫通孔の隙間部分には、スペーサー部材である樹脂部材(54)が埋め込まれてなる。
電極保持部に係る下部構造体(43)の外縁と上部構造体(42)の内側内周部分には、周設電極(21)の円筒壁面の上端部分が挟持保定された構造となる。周設電極(21)は、上部構造体(42)と下部構造体(43)の間に埋設された第2極性通電部(61)であるリード線と接続されてなる。第2極性通電部(61)の上端は、電極保持部の上部構造体(42)の上面側に突出した棒状の電源接続部(62)を形成してなる。電極保持部(4)上面の電源接続部(62)が突出した貫通孔の隙間部分には、スペーサー部材である樹脂部材(64)が埋め込まれてなる。
本実施例に係る電極保持部(4)は、上部構造体(42)及び下部構造体(43)を貫通するように、平面円板状体の面に対して垂直方向に穿設されてなる試料導入口(71)を備えてなる。試料導入口(71)は、内径2.5mmの円孔形状の開口構造であり、電極保持部内側を保護する樹脂性カラー(72)を備えてなる。
当該試料導入口(71)は、電極保持部(4)が試料導入のガイド機能を発揮する構造となる。
本実施例に係るエレクトロポレーション用電極(1)においては、電極保持部(4)である円筒の外周にフリンジ構造(83)を有する。当該フリンジ構造(83)は、ナット様部材(82)と外嵌可能なボルト様の形状を有する構造である。ここで、ナット様部材(82)は、外径22mm、内径20mm、側面視部材高が26mmの円筒リング状構造体の部材である。
本実施例においては、フリンジ構造(83)とナット様部材(82)はお互いに嵌合し、ネジ状に回転させることによって、ナット様部材(82)のリング状構造の底面の位置を調整することが可能となる。ここで、ナット様部材(82)のリング状構造の底面は、絶縁性液体貯留容器の上端(104)淵部に当接させることが可能となるため、ナット様部材(82)の位置の調整により、電極高を調節することが可能となる。
(2)「製造品の形態」
本実施例にて製造したエレクトロポレーション用電極(1)の3Dイメージ図を図5に示す。エレクトロポレーション用電極の電源接続部(52、62)には、電源ケーブル(132)を介して直流高圧電源(131)に接続することが可能である。ここで、当該エレクトロポレーション用電極においては、第1極性と第2極性を+及び−のいずれか任意の電極として電圧印加することが可能である。
また、本実施例にて製造したエレクトロポレーション用電極(1)について、X線透過写真像図を図6に示す。
[実施例2]『エレクトロポレーション用電極の使用態様』
上記実施例で製造したエレクトロポレーション用電極は、液滴エレクトロポレーションを実行するための部材電極として好適に使用可能である。以下、当該エレクトロポレーション用電極の使用態様として、マルチウェルプレートへの使用例を示した。
(1)「外付け型位置調整機構」
本実施例に係る外付けの型位置調整機構(91)は、実施例1に係るエレクトロポレーション用電極(1)の外付け部材であって、電極高の高さを調節可能とする構造部材である。
本実施例における外付け型位置調整機構(91)は、板状部材(92)の両端付近にボルト様のフリンジ構造を2カ所有する部材と、前記フリンジ構造を嵌合可能なネジ様形状を有する支柱(93)2本とを、備えてなる構造部材である。当該板状部材(92)の中央には、エレクトロポレーション用電極(1)を内嵌保持可能な開口部を、板状部材(92)の長手方向に平行して3つ連続配列するように穿設されてなる。
本実施例においては、外付け型位置調整機構(91)の開口部に、実施例1に係るエレクトロポレーション用電極(1)を3連装着した態様にして、多連式エレクトロポレーション用電極(2)を組み立てた。上面斜視からのイメージ図を図7に示す。
(2)「マルチウェルプレート」
上記組立準備した多連式エレクトロポレーション用電極(2)について、ポリスチレン製12穴ウェルプレートに絶縁性溶媒を充填して、上記電極の芯電極(11)と周設電極(21)が絶縁性溶媒に浸漬するように上方から容器内に配設した。ここで、ポリスチレン製12穴ウェルプレートは、ウェルの形状は、内径23mm、円筒高20mmの平底の円筒形状のプレートであって、外来物質導入装置(10)を構成する絶縁性液体貯留容器(101)として機能する容器部材である。各エレクトロポレーション用電極(1)の電源接続部(52、62)は、電源ケーブル(132)を介して直流高圧電源(131)に接続されてなる。
次いで、ポリスチレン製12穴ウェルプレートに絶縁性液体である粘度10000cStのシリコーンオイル(比重0.98)0.5mLを下層絶縁性液体(112)として注入し、その上層に粘度20cStのシリコーンオイル(比重0.95)2mLを上層絶縁性液体(111)として注入し、上記(1)に係る多連式エレクトロポレーション用電極(2)を配設した。当該装置の使用状態を示す写真像図を図8に示した。
(3)「使用用途の説明」
本実施例にて組立準備した多連式エレクトロポレーション用電極(2)では、電極保持部に外嵌したナット様部材(82)が当接しない形状やサイズの様々な溶媒貯留容器に対しても実施例1に係るエレクトロポレーション用電極が使用可能となる。また、多連式アレイ態様を可能とする構造部材であるため、例えば、様々なサイズや形状のマルチウェルプレート等への使用が可能となる。
[実施例3]『液滴往復運動安定性評価』
実施例1で製造したエレクトロポレーション用電極について、液滴エレクトロポレーションを行った場合の液滴往復運動の安定性評価を行った。
実施例2(2)に記載の外来物質導入装置(電極間距離9mm、3連電極、ポリスチレン製12穴ウェルプレート)において、各ウェルプレートに粘度10000cStのシリコーンオイル(比重0.98)0.5mLを下層絶縁性液体として注入し、その上層に粘度20cStのシリコーンオイル(比重0.95)2mLを上層絶縁性液体として注入した。ここで、2種類の絶縁液体は、下層絶縁性液体が底面から2mm、上層絶縁性液体が境界から6mmの重層構造を形成した。
当該液体中に電極部を挿入し、エレクトロポレーション用電極の電極部下端が、上層絶縁性液体と下層絶縁性液体の境界面上約2mmの位置にくるように電極を上方から容器内に配設した。電極保持部上面の試料導入口を通して、溶媒貯留槽である各ウェル中に超純水(MilliQ、ミリポア社)を3μL滴下した。滴下した水滴は上層絶縁性液体中にて直径約3mmの球状の液滴となった。
芯電極をプラス電極、周設電極をマイナス電極にして、直流高電圧電源から電極部に電圧印加を行い、上層絶縁性液体中での液滴の挙動を観察した。液滴挙動の観察は、高速度カメラ(FASTCAM−1280PCI、Photron)で撮影し、撮影動画が低速で再生することで、液滴の往復回数が目視でカウントした。液滴の観察結果を表2に示した。また、液滴の挙動を撮影した底面視からの写真像図を図9に示した。また、本発明に係る液滴エレクトロポレーション法の概略を示した模式図を図10に示した。
比較対照として、電極構造を一対の針型対向電極とした液滴エレクトロポレーション装置を作製して、上記と同様の試験を行った。比較対照の対向電極とした液滴エレクトロポレーション装置としては、ウェルプレート上方から2本の針電極を液面に対して垂直配設して、同様の実験を行った。
その結果、本発明に係る芯電極及び周設電極を備えた電極(電極間距離9mm)にて液滴3μLに対して電圧印加したところ、3.5kVにて3分間の安定した往復運動が継続されることが確認された(試験区3−1、図11参照)。
一方、比較対照である対向電極構造を用いた装置(電極間距離6mm)では、上記サイズの液滴を滴下して同電圧での電圧印加を行った場合、いずれのウェルにおいても数秒で液滴が破裂して短絡が発生し、往復運動が停止した(試験区3−2、図12A参照)。
また、比較対照である対向電極構造を用いた装置(電極間距離9mm)では、上記サイズの液滴を滴下して同電圧での電圧印加を行った場合、いずれのウェルにおいても装置側壁に液滴が補足され、往復運動が停止した(試験区3−3、図12B参照)。
以上の結果が示すように、本発明に係る芯電極及び周設電極を備えた電極を用いた場合では、疎水性溶媒中にて水系液滴3μLに対して3.5kVという高電圧での電圧印加が可能であり、従来の対向電極構造に比べて格段に安定した液滴往復運動が実現可能となることが示された。
[実施例4]『細胞に対する安全性評価』
実施例1で製造したエレクトロポレーション用電極について、液滴エレクトロポレーションを行った場合の細胞に対する安全性評価を行った。
実施例2(2)に記載の外来物質導入装置(電極間距離9mm、3連電極、ポリスチレン製12穴ウェルプレート)を用いて、実施例3に記載の方法と同様にして絶縁性液体を充填した装置態様を準備した。
PBSバッファー3μLあたり細胞1×10細胞及びYFP発現プラスミド120ngが含まれる水溶液を調製し、電極保持部上面の試料導入口を通して、絶縁性液体貯留容器である各ウェル中に3μL滴下した。滴下した試料液は上層絶縁性液体中にて液滴となった。ここで、細胞としては、HEK293細胞(ヒト胎児由来腎臓細胞)又は血球T細胞を用いた。
試料投与後、芯電極をプラス電極、周設電極をマイナス電極にして、電極部に3.5kV(3.89kV/cm)にて3分間の電圧印加を行ったところ、電圧印加中の全てのウェルにおいて、電極下端付近の電極間での液滴往復運動が安定して行われていることを確認した。
電圧印加後、回収した液滴を培養培地に添加して37℃及びCO濃度3%にて1日間培養し、トリパンブルー染色法にて生存率を算出して平均値を求めた。試験は9反復(HEK293細胞:n=2、T細胞:n=1)にて行い、結果を表3に示した。
その結果、本実施例に係る芯電極及び周設電極を備えた電極を用いて液滴エレクトロポレーション法を行った場合、3.5kV(3.89kV/cm)という高電圧にて3分間の処理を行った場合でも、HEK293細胞及び血球T細胞のほとんどが生存しており、著しく高い生存率を示すことが示された。また、HEK293細胞を用いて確認したところ、20%程度の細胞でYFP蛍光が確認され、高生存率を達成した上で効率の良い遺伝子導入が実現可能であることが示された。
ここで、HEK293細胞及び血球T細胞は、電気的刺激に弱い細胞であり、通常のエレクトロポレーション法では電気条件の設定が困難な細胞種である。
また、本実施例で試験に供した細胞量は、通常のエレクトロポレーション法に比べて極めて微量であった。
以上のことから、本発明に係る電極構造を備えた外来物質導入装置を用いることによって、電気的刺激に弱い細胞を極微量用いた場合であっても、外来物質導入を安定して行うことが可能であることが示された。当該知見は、細胞調製や分取が困難な貴重な細胞又は物理的刺激に脆弱な細胞に対しても、好適に適用できることを示している。
[実施例5]『短絡現象後の細胞への影響評価』
実施例1で製造したエレクトロポレーション用電極について、短絡現象(ショート)が発生した後の細胞に対する評価を行った。
実施例2(2)に記載の外来物質導入装置(電極間距離9mm、3連電極、ポリスチレン製プレート)を用いて、実施例4に記載の方法と同様にしてHEK293細胞(ヒト胎児由来腎臓細胞)又は血球T細胞に対する電圧印加を行った。
電圧印加の条件としては、故意に短絡現象(ショート)を発生させるために、3μLの液滴を投入した際に短絡現象が発生する3.7kV(4.11kV/cm)での高電圧を印加した。電圧印加は、芯電極をプラス電極、周設電極をマイナス電極にして行った。
比較対照として、ウェルプレートに対して2本針型電極を垂直配設した針型対向電極の外来物質導入装置(電極間距離7mm、ポリスチレン製プレート)を作製した。そして、上記と同様の試験を行った。比較対照試験での電圧印加の条件では、3μLの液滴を投入した際に1.8kVを超えると短絡現象が発生してしまうため、2.0kV(2.22kV/cm)での電圧印加を行った。
短絡現象の発生後、即座に電圧印加を中止して液滴を回収した。回収した液滴を培養培地に添加して37℃及びCO濃度3%にて1日間培養し、トリパンブルー染色法にて生存率を算出して平均値を求めた。試験は9反復(n=2)にて行い、結果を表4及び図13に示した。
その結果、本実施例に係る芯電極及び周設電極を備えた電極を用いて液滴エレクトロポレーション法を行った場合(電界強度:4.11V/cm)、短絡現象が発生した場合であっても、細胞生存率が約7割以上の値を示した。特にT細胞の場合では、生存率が97%という極めて高い値を示した(試験区5−1及び5−3)。
なお、プラス電極とマイナス電極は、芯電極と周設電極どちらにしても同様の結果となることが確認された。
一方、比較対照である対向電極を用いた場合(電界強度:2.22V/cm)では、電界強度は本実施例に係る電極構造より低い(実際の印加電圧値も低い)にも関わらず、生存率は約44〜57%程度に激減することが示された(試験区5−2及び5−4)。
以上の結果が示すように、本発明に係る電極構造を備えた外来物質導入装置を用いることによって、短絡現象が起こった場合であっても細胞への損傷が極めて軽微で済むことが示された。当該作用効果は、本発明に係る電極構造に起因する効果と認められる。
当該知見は、細胞調製や分取が困難な貴重な細胞又は物理的刺激に脆弱な細胞に対しても好適に適用できることを示している。
[実施例6]『DNA導入による形質転換試験(遺伝子導入試験)』
実施例1で製造したエレクトロポレーション用電極を備えた外来物質導入装置を使用して、液滴エレクトロポレーション法によるDNA導入による形質転換試験を行った。
実施例2(2)に記載の外来物質導入装置(電極間距離9mm、3連電極、ポリスチレン製12穴ウェルプレート)を用いて、実施例3に記載の方法と同様にして絶縁性液体を充填した装置態様を準備した。
HEK293細胞1.6×10細胞及び蛍光タンパクVenusコードDNA200ngを、PBSバッファー2μLあたりに含まれるようにして細胞懸濁液を調製した。
細胞懸濁液である試料液を、電極保持部上面の試料導入口を通して絶縁性液体貯留容器である各ウェル中に2μL滴下した。滴下した試料液は上層絶縁性液体中にて液滴となった。
試料投与後、芯電極をプラス電極、周設電極をマイナス電極にして、電極部に3.5kV(3.89kV/cm)にて3分間の電圧印加を行ったところ、電圧印加中の全てのウェルにおいて、電極下端付近の電極間での液滴往復運動が安定して行われていることを確認した。
電圧印加後、回収した液滴を培養培地に添加して培養し、5日後に蛍光顕微鏡での観察を行った。その結果、Venus蛍光タンパク質が発現する細胞が得られていることを確認した。蛍光タンパク質の発現検出を行った蛍光顕微鏡像を図14に示した。
当該結果から、本発明に係るエレクトロポレーション用電極を備えた外来物質導入装置を用いて液滴エレクトロポレーション法を行うことによって、極微量の細胞に対してDNA導入による形質転換が可能であることが示された。
[実施例7]『RNA導入による形質転換試験(遺伝子導入試験)』
実施例1で製造したエレクトロポレーション用電極を備えた外来物質導入装置を使用して、液滴エレクトロポレーション法によるRNA導入による形質転換試験を行った。
実施例2(2)に記載の外来物質導入装置(電極間距離9mm、3連電極、ポリスチレン製12穴ウェルプレート)を用いて、実施例3に記載の方法と同様にして絶縁性液体を充填した装置態様を準備した。
導入対象である外来物質として、VenusコードDNAから強制発現させた細胞からTotal RNAを抽出し準備した。
HEK293細胞1.6×10細胞及び前記Total RNA260ngを、PBSバッファー2μLあたりに含まれるようにして細胞懸濁液を調製した。
細胞懸濁液である試料液を、電極保持部上面の試料導入口を通して絶縁性液体貯留容器である各ウェル中に2μL滴下した。滴下した試料液は上層絶縁性液体中にて液滴となった。
試料投与後、芯電極をプラス電極、周設電極をマイナス電極にして、電極部に3.5kV(3.89kV/cm)にて5分間の電圧印加を行ったところ、電圧印加中の全てのウェルにおいて、電極下端付近の電極間での液滴往復運動が安定して行われていることを確認した。
電圧印加後、回収した液滴を培養培地に添加して培養し、9日後に蛍光顕微鏡での観察を行った。その結果、Venus蛍光タンパク質が発現する細胞が得られていることを確認した。RNA導入による蛍光タンパク質の発現検出を行った蛍光顕微鏡像を図15に示した。
この結果から、本発明に係るエレクトロポレーション用電極を備えた外来物質導入装置を用いて液滴エレクトロポレーション法を行うことによって、極微量の細胞に対してRNA導入による形質転換が可能であることが示された。
本発明は、分子生物学、遺伝子工学、及び細胞生物学等の生命科学分野、再生医療及び創薬等の医歯薬学分野、農作物及び家畜等の農学分野、において利用されることが期待される。
1.エレクトロポレーション用電極
2.エレクトロポレーション用電極(多連式態様)
6.液滴
10.外来物質導入装置
3.電極部
11.芯電極
12.芯電極下端
21.周設電極
22.周設電極下端
31.間隙(芯電極と周設電極の間隙)
4.電極保持部
41.支持体部
42.上部構造体
43.下部構造体
44.芯電極保定構造、保定孔
45.周設電極保定構造、挟持部
5.通電部
51.第1極性通電部
52.電源接続部
53.芯電極接続部
54.樹脂部材
61.第2極性通電部
62.電源接続部
63.周設電極接続部
64.樹脂部材
71.試料導入手段、試料導入口
72.カラー部材、ガイド部材
81.位置調整機構
82.外枠部材、ナット状部材
83.フリンジ構造
91.位置調整機構(自立型)
92.外枠部材、板状部材
93.支柱
94.固定用部材
101.絶縁性液体貯留容器
102.容器底面、容器底部
103.容器側面
104.容器側壁上端
105.試料導入手段、試料導入口
106.内部観察手段
111.絶縁性液体、上層絶縁性液体
112.下層絶縁性液体
113.境界面
131.電源手段、直流高圧電源
132.電源ケーブル、導線
133.接地面(アース)
141.対向電極

Claims (16)

  1. 絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とするエレクトロポレーション用電極であって、
    (A)芯電極及び周設電極を含んでなる構造を有し、
    (B)前記芯電極が、前記周設電極の内側に周設電極と間隙を有して配設された第1極性電極である電極部材であり、
    (C)前記周設電極が、前記芯電極の外側に芯電極と間隙を有して周設された第2極性電極である電極部材であって、前記周設電極における絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部が円筒形状又は略円筒形状を有する電極部材である、
    ことを特徴とする、エレクトロポレーション用電極。
  2. 前記エレクトロポレーション用電極が、
    (D)電極保持部を含んでなる構造を有し、(d−1)前記電極保持部が、芯電極及び周設電極の保定構造を備え、芯電極及び周設電極間の間隙配設を可能とする構造部材であり、(d−2)前記電極保持部が、絶縁性材質にて主として構成されてなる支持体部、前記芯電極と接続する第1極性通電部、及び前記周設電極と接続する第2極性通電部、を備えてなる構造体である、
    ことを特徴とする、請求項1に記載のエレクトロポレーション用電極。
  3. 前記エレクトロポレーション用電極が、
    (E)(e−1)絶縁性材質にて構成されてなる容器内に芯電極及び周設電極を配設し、芯電極及び周設電極の少なくとも一部を前記容器に貯留した絶縁性液体に浸漬させて使用するものであって、(e−2)電圧印加により絶縁性液体中に形成された液滴に対する静電的作用を発生させ、芯電極及び周設電極の間での液滴往復運動を誘導し、前記液滴が電極と接触する際に細胞に電気穿孔にて外来物質を導入する反応を繰り返して行うことを可能とする、
    請求項1又は2のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
  4. 前記芯電極における絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部が、円状又は略円状の横断面を有する長軸状電極部材である、請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
  5. 前記芯電極及び前記周設電極が、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、両電極間の間隙が水平方向にて芯電極から周囲方向に等距離又は略等距離になるように配設されたものである、請求項1〜のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
  6. 前記芯電極及び前記周設電極が、絶縁性液体の浸漬領域の少なくとも一部において、両電極の間隙が水平方向にて芯電極から周囲方向に5〜15mmになるように配設されたものである、請求項1〜のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
  7. 前記電極保持部が、芯電極と周設電極の間隙内への試料投入が可能となる位置に試料導入手段を備えたものである、請求項1〜のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
  8. 前記エレクトロポレーション用電極が、電極高を調節するための位置調整機構を備えたものである、請求項1〜のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極。
  9. 絶縁性液体中に形成された液滴に含まれる細胞に電気穿孔にて外来物質を導入することを可能とする装置であって、
    (F)絶縁性液体の貯留が可能な絶縁性液体貯留容器内に、請求項1〜のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極の芯電極及び周設電極を配設した構造の装置であり、
    (G)(g−1)前記絶縁性液体貯留容器が、絶縁性材質にて構成されてなる容器であって、(g−2)前記絶縁性液体貯留容器が、前記エレクトロポレーション用電極を前記容器内に配設した際に、当該エレクトロポレーション用電極に係る芯電極及び周設電極の少なくとも一部を、貯留した絶縁性液体中に浸漬可能とする形状の容器である、
    ことを特徴とする、外来物質導入装置。
  10. 前記外来物質導入装置が、
    (H)(h−1)前記絶縁性液体貯留容器の底面を構成する材質の少なくとも一部が、透光性を有する材質にて構成されてなる容器であって、(h−2)前記容器の底面外側に、前記容器内部を観察するための手段を備えてなるものである、
    請求項に記載の外来物質導入装置。
  11. 前記外来物質導入装置が、
    (I)前記絶縁性液体貯留容器がマルチウェルプレート状の容器であって、
    (J)請求項1〜のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極を1以上配設した装置である、
    請求項又は10のいずれかに記載の外来物質導入装置。
  12. 前記外来物質導入装置が、前記絶縁性液体貯留容器に水又は水溶液相分離可能な絶縁性液体を貯留してなるものである、請求項11のいずれかに記載の外来物質導入装置。
  13. 前記芯電極及び前記周設電極を含んでなることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極の組立用キット。
  14. 請求項1〜のいずれかに記載のエレクトロポレーション用電極を含んでなることを特徴とする、外来物質導入装置の組立用キット。
  15. 請求項12のいずれかに記載の外来物質導入装置を用いることを特徴とする、液滴エレクトロポレーションによる外来物質導入方法。
  16. 請求項12のいずれかに記載の外来物質導入装置を用いることを特徴とする、液滴エレクトロポレーションによる遺伝子導入方法。
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