JP6660053B2 - エンドリーク発生防止剤 - Google Patents

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本発明は、ステントグラフト内挿後の動脈瘤におけるエンドリークの発生防止効果を奏する薬剤に関する。
大動脈瘤の治療は、破裂の危険を伴う瘤径の大きなものに対しては観血的な治療(手術)が行われている。瘤の増大や破裂を防ぐ薬物はなく、手術が唯一の治療方法である。手術は従来、開腹又は開胸して人工血管を移植する人工血管置換術が主流であったが、近年、より低侵襲なステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair;EVAR)が増加している。
EVARでは、ステントグラフト内挿後も動脈瘤径が縮小せず、逆に増大する症例がある。動脈瘤が増大すると、内挿したステントグラフトと血管壁との間に隙間が生じてしまい、ステントグラフトの端や継ぎ目から瘤内部へ血液が流入する「エンドリーク」が発生する原因となる。エンドリークにより、最悪の場合には大動脈瘤破裂に至ることから、動脈瘤が増大してエンドリークが疑われる場合には再手術を余儀なくされることが問題となっている。エンドリークの発生防止等のため、EVAR後に動脈瘤を縮小させる効果を持つ薬剤が求められている。しかしながら、現時点においては、ステントグラフト内挿術後の動脈瘤縮小効果を持つ薬物は知られておらず、内挿されたステントグラフトにより瘤内部への血液の流入が遮断された動脈瘤の縮小の作用機序も明らかになってはいない。
動脈瘤に対して有効な薬剤の開発は、一般的に非常に困難である。その主な原因の1つとして、有用な病態モデル動物がないことが挙げられる。例えば、腹部大動脈瘤の病態モデル動物として、動脈をタンパク質分解酵素のエラスターゼにより処理したモデル動物が汎用されているが、当該モデル動物では大動脈瘤の治療に役立つような作用効果が得られた薬剤であっても、ヒトでは効果が得られない場合が多いことが報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。当該文献によれば、エラスターゼ処理病態モデル動物では、β−アドレナリン作動性受容体遮断薬であるプロプラノロールにより血圧低下作用が得られたが、ヒトではプロプラノロールによる血圧低下作用が得られないどころか、病態が悪化したり、死亡率が上昇する傾向があった。また、エラスターゼ処理病態モデル動物では、α−トコフェロールにより活性酸素が低減したが、ヒトではそのような効果は得られなかった。さらに、エラスターゼ処理病態モデル動物では、カルシウムブロッカーであるアゼルニジピンにより細胞浸潤やエラスチン劣化が抑制されたが、ヒトではアゼルニジピン投与によっても動脈瘤破裂リスクに影響はなかった。
一方で、シロスタゾール(Cilostazol)(物質名:6-[4-(1-cyclohexyl-1H-tetrazol-5-yl)butoxy]-3,4-dihydro-2(1H)-quinolinone)(CAS番号:73963-72-1)は、抗血小板作用、抗血栓作用、血管拡張作用、血管平滑筋細胞に対する作用(平滑筋細胞増殖抑制)、血管内皮細胞に対する作用を有するとされており、抗血小板薬として、慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感などの虚血諸症状の改善や、脳梗塞発症後の再発抑制するために、臨床的に用いられている。シロスタゾールはcAMPの分解に関わる3型ホスホジエステラーゼ(PDE3)を選択的に阻害する。このため、シロスタゾールによりcAMPの分解が抑制されてプロテインキナーゼA(PKA)の活性型が増える結果、血小板の凝集が抑制される。PKAには平滑筋の収縮に関わっているミオシン軽鎖キナーゼを抑える働きがあるため、シロスタゾールは血管拡張作用も引き起こすと考えられている。実際に、シロスタゾールは、ラットの頚動脈血管結紮モデルにおいて、内膜の肥厚を抑制し、頸動脈外膜の栄養血管の狭窄を抑制することが報告されている(非特許文献2参照。)。
シロスタゾールは、エラスターゼ処理の病態モデルラットにおいて、おそらくはタンパク質加水分解や炎症、酸化ストレスを抑制することによって、動脈瘤の形成を抑制したことが報告されている(非特許文献3参照。)。当該報告によれば、シロスタゾールが動脈瘤の形成を抑制し得る可能性が示唆されるものの、エラスターゼ処理の病態モデル動物における作用効果とヒトにおける作用効果は多くの場合一致しないことから、ヒトにおいても同様にシロスタゾールによって動脈瘤の形成が抑制され得るのかは定かではない。また、非特許文献3には、動脈瘤の形成過程についての検討はなされているものの、既に形成されており、内挿されたステントグラフトにより瘤内部への血液の流入が遮断された動脈瘤についてシロスタゾールがどのような作用効果を奏するかについては記載されていない。
その他、EVAR後に抗血小板薬を服用することにより、動脈瘤が縮小し難い傾向があること(非特許文献4)、EVAR後に抗凝固剤であるワルファリンを投与することにより、エンドリークのリスクが高くなること(非特許文献5)が報告されている。
Yoshimura,et al.,‘Development of pharmacological therapy for abdominal aortic aneurysms based on animal studies.’,"Aortic Aneurysms, New insights into an old problem"(ed.by Sakalihasan N.),Presses universitaires de Liege,2008,p.453−476. Tanaka,et al.,Journal of Vascular Surgery,2013,vol.58(5),p.1366−1374. Zhang,et al.,Journal of Surgical Research,2011,vol.167,p. e385−e393. Aoki,et al.,JOURNAL OF VASCULAR SURGERY,2011,vol.54(4),p.947−951. Bobadilla,et al.,JOURNAL OF VASCULAR SURGERY,2010,vol.52(2),p.267−271.
本発明は、内挿されたステントグラフトにより瘤内部への血液の流入が遮断された動脈瘤を縮小する動脈瘤縮小剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、既に抗血小板薬として臨床的に使用されているシロスタゾールをEVAR後に投与することにより、1年後までの経過観察で、動脈瘤の瘤径及び体積のいずれもが、同剤を投与しなかった場合に比べて有意に縮小することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のエンドリーク発生防止剤を提供するものである。
(1) シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩を有効成分とし、ステントグラフトを内挿された動脈瘤における瘤内への血液の流入を防止するために用いられる、エンドリーク発生防止剤。
(2) 1日当たりの投与量が、シロスタゾール換算で50〜300mgである、前記(1)のエンドリーク発生防止剤。
本発明に係る動脈瘤縮小剤は、EVAR後に服用するだけで、内挿されたステントグラフトにより瘤内部への血液の流入が遮断された動脈瘤を縮小させることができる。すなわち、当該動脈瘤縮小剤の服用により、エンドリークの発生や動脈瘤の体積の拡大、ひいては動脈瘤破裂を抑制することができる。
実施例1において、エンドリーク症例を除いたシロスタゾール群及び非シロスタゾール群について、EVARの術前と術後(シロスタゾール投与開始から)6ヶ月経過後におけるCT−volumeの測定値(図1(A))及び変化率(図1(B))を示した図である。 実施例1において、エンドリーク症例を除いたシロスタゾール群及び非シロスタゾール群について、術前と術後6ヶ月経過後におけるCT−DMAXの測定値(図2(A))及び変化率(図2(B))を示した図である。 実施例1において、エンドリーク症例を除いたシロスタゾール群及び非シロスタゾール群について、術前と術後1年経過後におけるCT−volumeの測定値(図3(A))及び変化率(図3(B))を示した図である。 実施例1において、エンドリーク症例を除いたシロスタゾール群及び非シロスタゾール群について、術前と術後1年経過後におけるCT−DMAXの測定値(図4(A))及び変化率(図4(B))を示した図である。 実施例1において、エンドリーク症例と脂質異常患者を除いたシロスタゾール群及び非シロスタゾール群について、術前と術後6ヶ月経過後におけるTG(図5(A))、T−Chol(図5(B))、HDL(図5(C))、LDL(図5(D))の測定値(mg/dL)を示した図である。 実施例1において、エンドリーク症例と脂質異常患者を除いたシロスタゾール群及び非シロスタゾール群について、術前と術後6ヶ月経過後におけるTG(図6(A))、T−Chol(図6(B))、HDL(図6(C))、LDL(図6(D))の変化率を示した図である。 実施例1において、エンドリーク症例と脂質異常患者を除いたシロスタゾール群及び非シロスタゾール群について、術前と術後1年経過後におけるTG(図7(A))、T−Chol(図7(B))、HDL(図7(C))、LDL(図7(D))の測定値(mg/dL)を示した図である。 実施例1において、エンドリーク症例と脂質異常患者を除いたシロスタゾール群及び非シロスタゾール群について、術前と術後1年経過後におけるTG(図8(A))、T−Chol(図8(B))、HDL(図8(C))、LDL(図8(D))の変化率を示した図である。
本発明に係る動脈瘤縮小剤は、シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩を有効成分とし、内挿されたステントグラフトにより瘤内部への血液の流入が遮断された動脈瘤を縮小する作用を有する。シロスタゾールの薬学的に許容される塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩が挙げられる。本発明に係る動脈瘤縮小剤の有効成分としては、シロスタゾールが特に好ましい。
シロスタゾールにより、内挿されたステントグラフトにより瘤内部への血液の流入が遮断された動脈瘤が縮小される理由は明らかではないが、シロスタゾールのもつ血管拡張作用や平滑筋細胞増殖抑制作用等により、瘤内部及び瘤外部等の血液の循環状態が改善されるためではないかと推察される。
本発明に係る動脈瘤縮小剤は、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤、徐放剤などの固形剤、溶液剤、シロップ剤などの液剤、注射剤、スプレー剤、貼付剤、軟膏剤などに製剤化することができる。本発明に係る拮抗剤としては、経口投与可能な固形剤又は注射剤であることが好ましい。
本発明に係る動脈瘤縮小剤は、有効成分であるシロスタゾール又はその薬理学的に許容される塩(以下、シロスタゾール等)に、製剤上の必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、流動化剤、溶剤、溶解補助剤、緩衝剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、着色剤等を配合して製剤化される。
賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトールなどの糖類、デンプン、結晶セルロースなどのセルロース類、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール類、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、カオリンなどが挙げられる。結合剤としては、α化デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、D−マンニトール、トレハロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。崩壊剤としては、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。流動化剤としては、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム化合物、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。溶剤としては、精製水、生理的食塩水などが挙げられる。溶解補助剤としては、デキストラン、ポリビニルピロリドン、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、サリチル酸アミド、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体などが挙げられる。緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物、炭酸水素ナトリウム、トロメタモール、ホウ酸、ホウ砂、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素ナトリウムなどが挙げられる。懸濁化剤あるいは乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。等張化剤としては、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトールなどの糖類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、尿素などが挙げられる。安定化剤としては、ポリエチレングリコール、デキストラン硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、クロロクレゾール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。抗酸化剤としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。矯味矯臭剤としては、医薬及び食品分野において通常に使用される甘味料、香料などが挙げられる。着色剤としては、医薬及び食品分野において通常に使用される着色料が挙げられる。
本発明に係る動脈瘤縮小剤は、そのまま使用してもよく、その他の成分も含む医薬用組成物として使用することもできる。該医薬用組成物に含まれるその他の成分としては、例えば、前記の賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、流動化剤、溶剤、溶解補助剤、緩衝剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、着色剤等が挙げられる。また、当該医薬用組成物は、本発明に係る動脈瘤縮小剤以外の他の有効成分を含有していてもよい。
本発明に係る動脈瘤縮小剤は、EVARが施された動脈瘤に対して効果を奏する。当該動脈瘤としては、ステントグラフトが内挿されたものであれば特に限定されるものではないが、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤等の大動脈瘤が好ましい。
本発明に係る拮抗剤は、哺乳動物に投与されるものであることが好ましく、ヒトや、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、サル、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、ロバ、イヌ、ネコ等の家畜や実験動物に投与されるものであることがより好ましく、ヒトに投与されるものであることがさらに好ましい。
本発明に係る動脈瘤縮小剤又はそれを含有する医薬用組成物(これらを製剤化したものも含む。)の投与量は、シロスタゾールによる動脈瘤縮小作用を奏するために充分な量であればよく、投与対象の生物種、性別、年齢、体重、食餌、投与の形態、動脈瘤の大きさ等によって異なる。例えば、成人(体重60kgとして)に対する有効成分の1日当たりの投与量は、シロスタゾールとして50〜300mgが好ましく、100〜300mgがより好ましく、150〜250mgがさらに好ましい。このような投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
腹部大動脈瘤にEVARを施行した患者94名をランダムに2群に分け、一方の群にシロスタゾールを投与し(シロスタゾール群)、他方の群にはシロスタゾールを投与せず(非シロスタゾール群)、2年間、エンドリークの有無、動脈瘤の大きさ、血液中の脂質(中性脂肪(TG)、総コレステロール(T−Chol)、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL))について経過観察を行った。なお、当該試験は、国立大学法人浜松医科大学の倫理委員会の承認を得て、予め試験内容の説明を行って試験参加の同意を得た患者に対して行った。各群の患者背景を表1に示す。各群の患者背景には特段の差はなかった。
Figure 0006660053
具体的には、シロスタゾール群(33名)に対しては、EVARを施行した日から7日後より、シロスタゾール(製品名「プレタール(登録商標)OD50錠50mg」、大塚製薬社製)を200mg/日、毎日2年間投与した。一方で、非シロスタゾール群(61名)に対しては、シロスタゾールを投与しなかった。全ての患者に対して、臨床検査を入院時、EVAR施行直後、退院時、シロスタゾール投与開始(非シロスタゾール群では、EVARを施行した日から7日後)から6ヶ月後及び24ヶ月後に行い、血清脂質検査を入院直前(術前)、EVAR施行直後、退院時、シロスタゾール投与開始から6ヶ月後、1年後、及び2年後に行い、CT(コンピュータ断層撮影)を入院直前(術前)、EVAR施行直後、退院時、シロスタゾール投与開始から3ヶ月後、6ヶ月後、1年後、及び2年後に行った。
動脈瘤の大きさは、CTの画像上で動脈瘤の最大短径(DMAX)を計測することと、CTデータを基に医療画像システム(Aquarius iNtuition(登録商標) Server、TERARECON社製)のワークステーション上で低位腎動脈直下から患者自身の血管の分岐部(native bifurcation)までの体積測定を行うことにより評価した。また、血液中のTG、T−Chol、HDL及びLDLは、酵素法により測定した。具体的には、それぞれ、体外診断用医薬品であるクオリジェントTG、クオリジェントCHO、クオリジェントHDL、及びクオリジェントLDL(いずれも、積水メディカル社製)を使用し、自動分析装置ラボスペクト008(日立ハイテクノロジー社製)により測定した。
経過観察中、エンドリークが発見された患者数を、タイプ別に表2に示す。シロスタゾール群と非シロスタゾール群において、エンドリークの発生率についてはあまり差がなかった。エンドリークが発見された患者は、以降の経過観察からは除いた。
Figure 0006660053
エンドリーク症例を除いた各群のCTから計測した動脈瘤の体積(CT−volume)及びDMAX(CT−DMAX)について、入院時(図中、「術前」)と6ヶ月経過後(図中、「6ヶ月」)を比較し、変化率を調べた。図1(A)にCT−volumeの測定値(cm)を示し、図1(B)にCT−volumeの変化率(術前のCT−volumeを1とした相対CT−volume値)を、それぞれ示す(シロスタゾール群:n=16、非シロスタゾール群:n=24)。また、図2(A)にCT−DMAXの測定値(cm)を示し、図2(B)にCT−DMAXの変化率(術前のCT−DMAXを1とした相対CT−DMAX値)を、それぞれ示す(シロスタゾール群:n=16、非シロスタゾール群:n=30)。同様に、エンドリーク症例を除いた各群のCT−volume及びCT−DMAXについて、入院時(図中、「術前」)と1年経過後(図中、「1年」)を比較し、変化率を調べた。図3(A)にCT−volumeの測定値(cm)を示し、図3(B)にCT−volumeの変化率を、それぞれ示す(シロスタゾール群:n=8、非シロスタゾール群:n=19)。また、図4(A)にCT−DMAXの測定値(cm)を示し、図4(B)にCT−DMAXの変化率を、それぞれ示す(シロスタゾール群:n=8、非シロスタゾール群:n=25)。この結果、EVAR後1年までの経過観察では、最大短径と体積測定のどちらの評価においても、シロスタゾール群では非シロスタゾール群と比べて有意に動脈瘤が縮小していることが判明した。
さらに、エンドリーク症例と脂質異常患者を除いた各群の血清中の脂質濃度について、入院時(図中、「術前」)と6ヶ月経過後(図中、「6ヶ月」)を比較し、変化率を調べた。図5(A)にTG、図5(B)にT−Chol、図5(C)にHDL、図5(D)にLDLの測定値(mg/dL)をそれぞれ示し、図6(A)にTG、図6(B)にT−Chol、図6(C)にHDL、図6(D)にLDLの変化率(術前の測定値を1とした相対値)をそれぞれ示した(シロスタゾール群:n=11、非シロスタゾール群:n=18)。同様に、エンドリーク症例と脂質異常患者を除いた各群の血清中の脂質濃度について、入院時(図中、「術前」)と1年経過後(図中、「1年」)を比較し、変化率を調べた。図7(A)にTG、図7(B)にT−Chol、図7(C)にHDL、図7(D)にLDLの測定値(mg/dL)をそれぞれ示し、図8(A)にTG、図8(B)にT−Chol、図8(C)にHDL、図8(D)にLDLの変化率をそれぞれ示した(シロスタゾール群:n=9、非シロスタゾール群:n=16)。この結果、EVAR後1年までの経過観察では、シロスタゾール群では非シロスタゾール群に比べて、TG及びLDLの血清濃度は低下し、HDLの血清濃度は上昇する傾向が観察され、シロスタゾールは、動脈硬化を惹起すると考えられている脂質(TG及びLDL)を低下させ、予防するとされるHDLを上昇させる効果も有していることが判明した。

Claims (2)

  1. シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩を有効成分とし、ステントグラフトを内挿された動脈瘤における瘤内への血液の流入を防止するために用いられる、エンドリーク発生防止剤。
  2. 1日当たりの投与量が、シロスタゾール換算で50〜300mgである、請求項1に記載のエンドリーク発生防止剤。
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